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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1147607
審判番号 不服2004-17471  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-24 
確定日 2006-11-22 
事件の表示 平成 7年特許願第176677号「生物処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月 7日出願公開、特開平 9- 1172〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月20日の出願であって、平成16年6月29日付で拒絶査定がされ、これに対し、平成16年8月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月24日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月24日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月24日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の
「窒素を栄養源として添加する排水のBODを除去する生物処理装置において、生物処理槽内または処理水中のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度計と、注入量を制御可能な窒素源注入装置と、測定したアンモニア濃度を所定値以下に維持するように窒素源注入量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする生物処理装置。」
を、
「窒素を栄養源として添加する排水のBODを除去し、硝化を行わない生物処理装置において、生物処理槽内または処理水中のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度計と、注入量を制御可能な窒素源注入装置と、測定したアンモニア濃度を所定値以下に維持するように窒素源注入量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする生物処理装置。」
と補正することを含むものである。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「窒素を栄養源として添加する排水のBODを除去する生物処理装置」について、「硝化を行わない」との限定を新たに付加するものである。
そこで、本件補正の適否について以下に検討する。
(2)本件補正に対する判断
本願の出願当初の明細書の段落【0004】に、「本発明は、上述のような従来の装置の問題点を解決するものであり、窒素、リンなどの栄養塩を必要量含まない有機性排水を対象とした好気性または嫌気性処理において、処理に必要な最低限のN、P塩を添加することにより、薬剤の添加コストを抑え、また排出するN、P量も最小限に抑えるためのシステムを提供する。」と、同段落【0012】に、「50L容量の曝気槽、直径30cmの沈澱槽の標準活性汚泥装置を2系列(A系列、B系列)用い、フェノール製造プラントから排出される総合排水を生物処理をした。排水水質は懸濁固形物(SS)濃度は25?48mg/L、BOD濃度は150?220mg/Lであり、窒素濃度は全窒素(T-N)として3mg/L以下であった。A系列では、処理水のアンモニア濃度をイオンメーターで連続測定し、処理水のアンモニア濃度が1mg/Lになるように硫酸アンモニウムを添加して調整した。・・・この試験の結果、A系列、B系列とも原水BOD195mg/L(平均値)が処理水ではBOD5mg/L以下となった」と記載されていることからみて、本願の出願当初の明細書又は図面には、窒素などの栄養源を必要量含まない有機性排水に、窒素を栄養源として添加して排水のBODを除去する生物処理装置は記載されていたが、本件補正によって新たに付加された「硝化を行わない」について、有機性排水の好気性生物処理又は嫌気性生物処理に関するいずれの記載部分をみても、記載されていないし、示唆もされていない。
また、本件補正が、先行技術として後記する引用例に記載された事項と重なるために新規性等(特許法第29条第1項第3号第29条の2又は39条)を失うおそれがある場合に、補正前の請求項に記載した事項を残したままで、当該重なりのみを除く補正である、いわゆる「除くクレーム」とする補正として、例外的に当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でするものに該当するかを検討すると、「除くクレーム」とすることにより特許と受けることができるのは、先行技術と技術的思想として顕著に異なり本来進歩性を有する発明であるが、本願発明は、後記するように、先行技術と同様の技術思想に基づくものであって、先行技術に対して進歩性を有する発明ではないことから、いわゆる「除くクレーム」とする補正に該当するとはいえず、このため、本件補正によって新たに付加された「硝化を行わない」は、例外的に当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でするものに該当しない。
したがって、本件補正において、付加された「硝化を行わない」は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項ではないばかりか、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項から自明のこととも認められないから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえない。
(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条第2項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年9月24日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年5月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「窒素を栄養源として添加する排水のBODを除去する生物処理装置において、生物処理槽内または処理水中のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度計と、注入量を制御可能な窒素源注入装置と、測定したアンモニア濃度を所定値以下に維持するように窒素源注入量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする生物処理装置。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-986号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の点が記載されている。
(ア)「【請求項1】世代交替時間が比較的短い微生物が増殖する第1の生物活性炭層と、世代交替時間が比較的長い微生物が増殖する第2の生物活性炭層と、前記第1の生物活性炭層に設けられ、所定の第1の間隔で第1の生物活性炭層を逆洗浄する第1の逆洗装置と、前記第2の生物活性炭層に設けられ、第1の間隔より長い第2の間隔で第2の生物活性炭層を逆洗浄する第2の逆洗装置と、を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】第2の生物活性炭層の上流側に、第2の生物活性炭層の微生物に栄養源を供給するための栄養源供給部を設けたことを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】第2の生物活性炭層の上流側および下流側に、第2の生物活性炭層の微生物に供給する栄養源の濃度計を設け、各濃度計からの信号に基づいて栄養源供給部からの供給量を制御する制御装置を設けたことを特徴とする請求項2記載の水処理装置。」(特許請求の範囲)、
(イ)「本発明は汚染された原水を浄化して飲料水を生成するために上水道設備などに利用される水処理装置に係わり、とりわけアンモニア性窒素が変動する原水に対して安定した処理効果を得ることができる水処理装置および水処理方法に関する。」(第2ページ第1欄29?33行)、
(ウ)「一般に上水道の水源は、湖沼および河川の表流水または伏流水あるいは地下水などから得られ、これらは原水と呼ばれる。通常、この原水には種々の物質が溶解されており、また原水中には個体の微粒子、微生物などが浮游しており、濁り、色および臭気などが混入しているため、このままでは飲料水の用には供さない。そこで近年、原水に対する凝集沈澱、ろ過などの後に高度浄水処理としてオゾン酸化を行い、原水中に含まれる有機物の酸化、脱臭、脱色などを行い、ついで活性炭を用いてオゾン酸化生成物を除く方法が進められている。特に、原水に対するオゾン処理後の活性炭処理において、オゾン酸化生成物を栄養源とした微生物が生育し、活性炭がいわゆる生物活性炭となり、原水中の多くの有機物が除去される。」(第2ページ第1欄35?48行)、
(エ)「図3に示す水処理装置において、第1の生物活性炭層3では主に世代交替時間が比較的短いBOD資化菌が増殖し、第2の生物活性炭層4では主に世代交替時間が比較的長い硝化菌が増殖する。この場合、生物活性炭による汚染物質の吸着除去だけでなく、原水中の汚染有機物あるいはオゾン酸化を受け生物分解性に変化した溶存有機物が第1の生物活性炭層3内でBOD資化菌により浄化され、汚染物質の一つであるアンモニア性窒素が第2の生物活性炭層4内で硝化される。」(第3ページ第4欄19?27行)、
(オ)「次に図5により本発明の第3の実施例について説明する。図5に示す第3の実施例は、中間室14内に第2の生物活性炭層内の硝化菌に栄養源を供給するための栄養源供給配管12を配置したものであり、他は図3に示す第1の実施例と略同一である。」(第4ページ第6欄6?10行)、
(カ)「本実施例によれば、特に原水中のアンモニア濃度が変動したり、微生物の代謝について必須な条件であるリン濃度が変動した場合に有効である。また、生物活性炭の運転立ち上げ、若しくは逆洗浄後の運転立ち上げ再開時に、増殖の遅い硝化菌を活性化させることができる。すなわち、必要時栄養源供給配管12からアンモニア性窒素源として塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどの塩水溶液を供給したり、アンモニア水あるいはアンモニアガスを添加することにより、原水中に長時間アンモニア性窒素が含まれない場合、この添加した栄養源にて硝化菌を第2の生物活性炭層4内で最低限生育、訓養させることができる。」(第4ページ第6欄11?22行)、
(キ)「次に図6により本発明の第4の実施例について説明する。図6に示す第4の実施例は、第2の中間室14B内にアンモニア性窒素またはリンを供給するための栄養源供給配管12を配置したものであり、他は図4に示す第2の実施例と略同一である。」(第4ページ第6欄31?35行)、
(ク)「図6において、入口室13への流入管2、連結管17、および出口室15からの流出管5の各々に、アンモニア濃度およびリン濃度を測定する濃度計23A、23B、23Cが各々取付けられている。これら濃度計23A、23B、23Cは、制御装置24に接続されている。そして、この制御装置24は濃度計23A、23B、23Cからの信号に基づいて注入器25を制御して,所定量のアンモニア性窒素またはリンを栄養源供給配管12から第2の中間室14B内に供給することができる。この場合、濃度計23Aおよび23Bからの信号によって連続的に測定して濃度変化を調べ、不足分を制御装置24で計算し栄養源供給配管12よりアンモニア性窒素、もしくはリンを添加するとともに、硝化菌の増殖および活性などを、濃度計23Cによって測定し制御装置23によりフィードバック制御することにより、天候、水運用などによって大きく変動する原水水質にアンモニア性窒素およびリンを適切に供給することができる。」(第4ページ第6欄36?第5ページ第7欄3行)、
と記載され、図6には、第1の水槽1A内に第1の生物活性炭層3を配置するとともに、第1の水槽1Aと別個独立した第2の水槽1B内に第2の生物活性炭層4を配置し、第2の中間室14B内にアンモニア性窒素またはリンを供給するための栄養源供給配管12を配置した水処理装置が記載されている。
(2)対比
引用例1には、記載事項(ア)?(ク)から、水処理装置において、第1の生物活性炭層では主に世代交替時間が比較的短いBOD資化菌が増殖し、第2の生物活性炭層では主に世代交替時間が比較的長い硝化菌が増殖して、原水中の汚染有機物が第1の生物活性炭層内でBOD資化菌により浄化され、汚染物質の一つであるアンモニア性窒素が第2の生物活性炭層内で硝化菌により硝化されること、原水中のアンモニア濃度が変動したり、微生物の代謝に必須な条件であるリン濃度が変動した場合に、第2の生物活性炭層の上流側に、第2の生物活性炭の微生物である硝化菌に栄養源であるアンモニア性窒素又はリンを供給するための栄養源供給部である栄養源供給配管を配置すること、第2の生物活性炭層の上流側及び下流側に、第2の生物活性炭層の微生物に供給する栄養源であるアンモニア及びリン濃度を測定する濃度計を設け、各濃度計からの信号に基づいて注入器を制御して、栄養源供給部からの供給量を制御する制御装置を設けることにより、天候、水運用などによって大きく変動する原水水質にアンモニア性窒素およびリンを適切に供給すること及び図6に示す装置を使用して、濃度計23Aおよび23Bからの信号によって連続的に測定して濃度変化を調べ、不足分を制御装置24で計算し栄養源供給配管12よりアンモニア性窒素又はリンを添加するとともに、硝化菌の増殖および活性などを、濃度計23Cによって測定し制御装置23によりフィードバック制御することが記載されているものといえるので、引用例に記載された事項を本願発明に則して整理し直すと、
「汚染された原水中の有機物を第1の生物活性炭層内でBOD資化菌により浄化し、汚染物であるアンモニア性窒素を第2の生物活性炭層内で硝化する硝化菌に栄養源であるアンモニア性窒素又はリンを供給する水処理装置において、第2の生物活性炭層の上流側及び下流側にアンモニア濃度及びリン濃度を測定する濃度計を取り付け、濃度計からの信号に基づいて注入器を制御して、所定量のアンモニア性窒素又はリンを栄養源供給配管から第2の生物活性炭層の上流側に供給する制御装置を設けた水処理装置」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「栄養源であるアンモニア性窒素又はリン」は、本願発明の「窒素を栄養源として」に相当し、引用発明の「水処理装置」は、引用例の記載事項(ウ)に、「水処理装置において、第1の生物活性炭層3では主に世代交替時間が比較的短いBOD資化菌が増殖し、第2の生物活性炭層4では主に世代交替時間が比較的長い硝化菌が増殖する。」とあるように、第1の生物活性炭層と第2の生物活性炭層を有する水処理装置は、生物処理を行うものであることが明らかであるから、本願発明の「生物処理装置」に相当する。以下同様に、「アンモニア濃度及びリン濃度を測定する濃度計」は「アンモニア濃度計」に、「注入器」は「窒素源注入装置」に、「制御装置」は「制御手段」にそれぞれ相当するから、両者は、
「窒素を栄養源として添加する汚染された水の生物処理装置において、水中のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度計と、注入量を制御可能な窒素源注入装置と、測定したアンモニア濃度に基づいて窒素源注入量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする生物処理装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明の生物処理装置は、「窒素を栄養源として添加する排水のBODを除去する」ものであるのに対し、引用発明の生物処理による水処理装置は、汚染された原水中の有機物を第1の生物活性炭層内でBOD資化菌により浄化し、汚染物であるアンモニア性窒素を第2の生物活性炭層内で硝化する硝化菌に栄養源であるアンモニア性窒素を供給するものである点。
[相違点2]本願発明は、「生物処理槽内または処理水中のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度計」で、「測定したアンモニア濃度を所定値以下に維持する」のに対し、引用発明は、第2の生物活性炭層の上流側及び下流側に取り付けたアンモニア濃度を測定する濃度計からの信号に基づいて、所定量のアンモニア性窒素を栄養源供給配管から第2の生物活性炭層の上流側に供給する点。
(3)判断
[相違点1]について
引用発明の水処理装置が、第1の生物活性炭層のBOD資化菌に栄養源を供給していない理由をみてみると、引用例の記載事項(エ)に、「原水中の汚染有機物あるいはオゾン酸化を受け生物分解性に変化した溶存有機物が第1の生物活性炭層3内でBOD資化菌により浄化され」と記載されていることから、BOD資化菌が浄化する汚染された原水には、BOD資化菌を増殖させるのに充分な栄養源が汚染物質として含まれていることによるのは明らかである。
しかし、引用例の記載事項(ア)に、「【請求項2】第2の生物活性炭層の上流側に、第2の生物活性炭層の微生物に栄養源を供給するための栄養源供給部を設けた」と記載されていることから、「第2の生物活性炭層の微生物に栄養源を供給するための栄養源供給部」は、第2の生物活性炭層の上流側であれば、必ずしも第1の生物活性炭層と第2の生物活性炭層との間に設けるのみならず、場合によっては、第1の生物活性炭層の上流側に設けても構わないものと解され、このことは、引用例の記載事項(ク)及び図6に記載されているように、アンモニア濃度及びリン濃度を測定する濃度計が、第1の生物活性炭層と第2の生物活性炭層とを結ぶ連結管だけでなく、第1の生物活性炭層の上流側の流入管にも設けられ、第1の生物活性炭層に流入する原水のアンモニア濃度及びリン濃度も測定していることからも示唆されているものとみれる。
してみると、引用発明の水処理装置は、第一義的には、第2の生物活性炭層の硝化菌に栄養源としてアンモニア性窒素又はリンを供給するものであるとしても、水中に必要量の窒素、リンを含まない場合には、第1の生物活性炭層のBOD資化菌にも栄養源としてアンモニア性窒素又はリンを供給することを除外するものではないといえる。
一方、有機性排水中のBODを生物処理する際に生物活性を維持していくために栄養源である窒素、リンが不可欠であり、排水中に必要量の窒素、リンを含まない場合には、不足分の窒素、リンを供給して生物処理を行うことは、本願明細書の【従来の技術】の項の記載を見るまでもなく、例えば、特開平5-317871号公報、特開平6-254583号公報に記載されているように、本願の出願前から周知の技術であるから、引用発明の水処理装置を必要量の窒素又はリンを含まない排水の処理に適用し、BOD資化菌に窒素を栄養源として添加することは、当業者が必要に応じて容易になし得ることであり、このことにより格別の効果を奏するものともいえない。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点2]について
まず、引用発明における濃度計によるアンモニア濃度の測定位置について検討すると、引用発明のアンモニア濃度を測定する濃度計は、第2の生物活性炭層の上流側及び下流側に取り付けられ、その下流側に取り付けられた濃度計は、第2の生物活性炭層によって処理された水のアンモニア濃度を測定しているのであるから、引用発明のアンモニア濃度を測定する濃度計は、処理水中のアンモニア濃度を測定するものであり、この点において本願発明と相違するとはいえない。
つぎに、本願発明の窒素源注入量を制御する制御手段による「測定したアンモニア濃度を所定値以下に維持する」については、「所定値以下」では下限値がゼロを含むことになり必ずしも明確といえないが、本願明細書の段落【0006】に、「本発明においてはアンモニア濃度計により残留アンモニア濃度を検出し、その濃度を所定値に維持するように窒素源注入量を制御する。」と記載されるとともに、同段落【0010】に、「所定値は任意に設定できるが、添加窒素量を必要最小限にするために、アンモニア濃度として0.1?5mg/L、好ましくは0.5?1mg/Lとするのがよい。・・・アンモニア濃度計4による残留アンモニア濃度が設定した所定値内であれば、窒素源の供給速度を現状で維持し、所定値から外れた場合は所定値内となるように、窒素源注入ポンプ7の吐出流量を増減して制御する。」と記載されていることから、上記「所定値以下」の意味するところは、「所定値内」と解され、以下、本願発明の「測定したアンモニア濃度を所定値以下に維持する」は、「測定したアンモニア濃度を所定値内に維持する」として議論する。
そこで、引用発明におけるアンモニア濃度の制御手法について検討すると、引用例の記載事項(キ)に、「濃度計23Aおよび23Bからの信号によって連続的に測定して濃度変化を調べ、不足分を制御装置24で計算し栄養源供給配管12よりアンモニア性窒素、もしくはリンを添加するとともに、硝化菌の増殖および活性などを、濃度計23Cによって測定し制御装置23(ここで、「23」は「24」の誤記である。)によりフィードバック制御することにより、天候、水運用などによって大きく変動する原水水質にアンモニア性窒素およびリンを適切に供給することができる。」と記載され、制御装置は、第2の生物活性炭層の上流側に取り付けられた濃度計で第2の生物活性炭層に供給される原水のアンモニアの濃度変化を測定し、濃度計による測定結果に基づいてアンモニア性窒素の不足分を添加するとともに、第2の生物活性炭層の下流側に取り付けられた濃度計で残留アンモニア濃度を測定して硝化菌の増殖及び活性などに応じて必要以上にアンモニア性窒素を添加しないように制御しているものと解される。
してみると、引用発明において、第2の生物活性炭層の硝化菌の増殖及び活性などに応じて必要以上にアンモニア性窒素を添加しないようにするには、第2の生物活性炭層の下流側に取り付けられた濃度計で測定される残留アンモニア濃度を所定値内に維持するように制御装置を制御すればよいことは、当業者が容易に想到し得ることであり、これによって格別の効果を奏するとはいえない。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-08 
結審通知日 2006-08-29 
審決日 2006-09-13 
出願番号 特願平7-176677
審決分類 P 1 8・ 561- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹櫛引 明佳  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 斉藤 信人
増田 亮子
発明の名称 生物処理装置  
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