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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1147611
審判番号 不服2005-10385  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-06 
確定日 2006-11-22 
事件の表示 平成 7年特許願第123023号「スレショルド・アレイの生成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月12日出願公開、特開平 8- 70384〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年4月25日(パリ条約による優先権主張平成6年4月29日、米国)の出願であって、平成17年2月28日付けで拒絶の査定がされ、同年6月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
同手続補正は、補正前の請求項2を削除したものであるので、特許法第17条の2第3項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当し、適法な補正である。
そして本願の請求項1に係る発明は、同手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】 デジタル表示装置のために使用されるスレショルド・アレイを作成する方法であって、該スレショルド・アレイは複数の白または黒の画素から成る複数のドット・プロファイルであって、そのいくつかのドット・プロファイルのいくつかの画素は白または黒とされている複数のドット・プロファイルから成っているスレショルド・アレイの生成方法において、
(1)値割り当て手段により、1つのドット・プロファイルの白または黒とされていない各画素に、白黒2色の内の一方の色を示す値を割当てるステップと、
(2)デジタルフィルタ適用手段により、所定の画素におけるデジタルフィルタをかけた値が当該画素における所望の値と異なるか否かに基づいて、その画素に割り当てられた値を前記2色の内の他方の色を表す値に調整するステップと、
(3)実行制御手段の命令により前記デジタルフィルタ適用手段を繰り返し動作させて、ドット・プロファイル全体がカバーされるまでそのドット・プロファイルの残りの画素に関してステップ(2)を繰り返すステップと、
(4)実行制御手段によりデジタル・フィルタを変更して前記ドット・プロファイルと同じドット・プロファイルについてステップ(2)と(3)とを繰り返して望ましくない可視パターンを最小にするドット・プロファイルを得るステップと、
(5)実行制御手段により前記スレショルド・アレイ内の各ドット・プロファイルについてステップ(1)?(4)を繰り返して前記作成されたドット・プロファイルとは異なるグレイ値を有するドット・プロファイルを作成するステップと、
(6)アセンブル手段により、1組の基準グレイ値からなるスレショルド・アレイを作るよう前記作成された複数のドット・プロファイルをアセンブルするステップと、から成るスレショルド・アレイの生成方法。」

2 原査定の理由
原査定の理由の概要は、本願発明に記載された「(2)デジタルフィルタ適用手段により、所定の画素におけるデジタルフィルタをかけた値が当該画素における所望の値と異なるか否かに基づいて、その画素に割り当てられた値を前記2色の内の他方の色を表す値に調整するステップ」が発明の詳細な説明のどの部分に対応したものであるのか不明であり、発明の構成を特定できず、特許法36条4項及び同5項に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない、というものである。

3 審判請求人の主張
審判請求人の主張は次のとおりである。
「本願請求項1記載の発明は、本願明細書段落0012、0020以外に、0089に詳細に述べられております。」

4 当審の判断
特許法は、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、を要求している。
原査定が指摘する「(2)デジタルフィルタ適用手段により、所定の画素におけるデジタルフィルタをかけた値が当該画素における所望の値と異なるか否かに基づいて、その画素に割り当てられた値を前記2色の内の他方の色を表す値に調整するステップ」が、出願当初の明細書中のどこに記載されているのかを検討する。
審判請求人が主張する本願明細書段落【0012】には、
「【0012】
【課題を解決するための手段】
簡単にいって、本発明は、複数のドット・プロファイルで作られたスレショルド・アレイの生成方法に関する。その際、各ドット・プロファイルは、複数の黒又は白の画素でできており、特定のプロファイルの特定の画素は、黒又は白に限定される。生成されたドット・パターンでは、実質的に不快な可視パターンは見られない。この方法は、1つのドット・プロファイルの限定されていない各画素に1つの値を与える第1のステップで始まる。この値は、黒又は白として変換され得るものである。第2のステップにおいて、ドット・プロファイルの所定領域内の画素値の関数が、所定の所望値と異なっているかどうかに基づいて、所定領域内の特定の画素に割り当てられた値を調整し、ごくわずかの場合に、調整後の値が無調整の値から反対の色に変換できるようにするものである。」
と記載され、ドット・プロファイルの所定領域内の画素値の関数が、所定の所望値と異なっているかどうかに基づいて、所定領域内の特定の画素に割り当てられた値を調整し、ごくわずかの場合に、調整後の値が無調整の値から反対の色に変換する構成が示されている。
また、審判請求人が主張する本願明細書段落【0020】には、
「【0020】
本発明の方法の次のステップでは、ドット・プロファイルに関するグレイ・レベルとフィルタをかけたドット・プロファイル・アレイの値の差に比例する量によって、状態アレイの各値が調整される。後で説明するように、この調整に対して、追加項目を加えても良い。この調整の正味の効果は、フィルタをかけたドット・プロファイルが暗すぎる場合には、状態値は高く調整され、明るすぎる場合には、低く調整されると云うことである。この調整のために、次に状態アレイからドット・プロファイルを得たとき、任意の点での局所的平均グレイ値は、関連グレイ値に近くなる。」
と記載され、ドット・プロファイルに関するグレイ・レベルとフィルタをかけたドット・プロファイル・アレイの値の差に比例する量によって、状態アレイの各値が調整される構成が示されている。
そして、審判請求人が主張する本願明細書段落【0089】には、
「【0089】
ライン9は、現在の位置での状態アレイに対する調整を計算する。この調整は2つの部分からなる。第1の部分は、所望のフィルタをかけた値と実際のフィルタをかけた値の差、grayAvg-*filtPtrである。この調整部分は、暗すぎるドット・プロファイルの領域を明るくし、その逆も行う修正作用を構成する。第2の調整部分は、hyst*(2*dotColor -1)であり、白いドットを白く、黒いドットを黒く維持しようとする保守的作用を構成する。変数hystは、この作用の大きさを制御する履歴定数である。この修正作用の必要性は明白である。これは、暗すぎたり、明るすぎたりするドット・プロファイルの領域をならし、従って最終的に不快なパターンがないドット・プロファイルを生成する。」
と記載され、所望のフィルタをかけた値と実際のフィルタをかけた値の差、grayAvg-*filtPtrで調整を計算し、暗すぎるドット・プロファイルの領域を明るくし、その逆も行う修正作用を行う構成が示されている。
しかしながら、上記段落【0012】【0020】及び【0089】に記載の構成が、本願発明の構成である、所定の画素におけるデジタルフィルタをかけた値が当該画素における所望の値と異なるか否かに基づいて、その画素に割り当てられた値を前記2色の内の他方の色を表す値に調整する構成に対応するとは認められない。
したがって、本願請求項1記載の発明は、本願明細書段落【0012】、【0020】及び【0089】には記載されておらず、当該請求人の主張は採用できない。

さらに、本願明細書を検討してみると、
本願出願当初の明細書段落【0094】には、
「【0094】
ドット・プロファイルにおける画素が黒で、フィルタをかけたアレイで計算された平均が「明るすぎ」であると、調整は、ドット・プロファイルにおける画素は、黒にとどまることにも留意されたい。同じことは、平均が「暗すぎ」の領域における白い画素についても云える。暗すぎる領域における黒又は明るすぎる領域における白の画素のみが変わり得る。また、限定されていない画素のみが変わりうる。これらの画素のうち、上の調整によって、状態アレイの対応するエレメントが符号を変えるわずかな部分のみが選択されて、その色を逆にする。状態アレイにおける初期値はランダムであるので、この選択は、決定論的成分に加えてランダム成分を有する。」
と記載され、暗すぎる領域における黒又は明るすぎる領域における白の画素のみが変わり得る構成が示されている。
第1図(C)には、ディジタル・フィルタをドット・プロファイルに適用することによって得られた、暗い色調で小さな実数値を表し、明るい色調で大きな実数値を表しているアレイが示されている。
第3図には、中央の白の画素(以前は1)を、0.64に調整し、中央の黒の値(以前は0)を、0.18に調整した図が示されている。
しかしながら、上記段落【0094】、第1図(C)及び第3図に記載の構成が、本願発明の構成である、所定の画素におけるデジタルフィルタをかけた値が当該画素における所望の値と異なるか否かに基づいて、その画素に割り当てられた値を前記2色の内の他方の色を表す値に調整する構成に対応するとは認められない。
以上のとおり、原査定が指摘する「(2)デジタルフィルタ適用手段により、所定の画素におけるデジタルフィルタをかけた値が当該画素における所望の値と異なるか否かに基づいて、その画素に割り当てられた値を前記2色の内の他方の色を表す値に調整するステップ」が発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められない。

さらに、本願発明の構成の「(4)実行制御手段によりデジタル・フィルタを変更して前記ドット・プロファイルと同じドット・プロファイルについてステップ(2)と(3)とを繰り返して望ましくない可視パターンを最小にするドット・プロファイルを得るステップ」についても、審判請求人が平成17年1月31日付け意見書で主張している2つの段落、
「【0013】
この第2のステップは、ドット・プロファイル全体がカバーされるまで、同一ドット・プロファイルの別の所定領域についてくり返される。この第2ステップは、同一ドット・プロファイル内を循環して何回もくり返される。この処理全体は、スレショルド・アレイのドット・プロファイルのそれぞれに対してくり返される。結果のスレショルド・アレイにおけるドット・プロファイルには、不快な可視的パターンはない。本発明は、比較的小さなスレショルド・アレイを構築する従来技術を改良するもので、エラー拡散によるハーフ・トーンのテクニックと同様の結果を生ずる。これによって、高速性とスレショルド・アレイに基づいたハーフ・トーンに関するハードウェアの利用性が得られ、併せて確率論的ハーフ・トーンと同様のスクリーニング結果が得られる。」
「【0021】
上で概説した処理は、何回もくり返され、状態アレイ及び結果的に生じるドット・プロファイルに対してより良い修正が行われる。ある時点以後は、状態アレイに対する修正は、結果のドット・プロファイルに何ら有意差を生じなくなる。この時点で、異なったディジタル・フィルタが用いられ、修正が必要でなくなるまで処理が再度くり返される。多くの異なったディジタル・フィルタが連続して用いられ、スレショルド・アレイが様々な方法で修正される。特に、遮断周波数変動型ロー・パス・フィルタを用いることが有益であることが分かっている。遮断周波数が高いロー・パス・フィルタは、3から5画素のスケールで平均グレイ値の変動を無視するように働くため、初めに用いられる。遮断周波数が低いロー・パス・フィルタは、全体的平均グレイ値が正確であることを保証するように働くため、後で用いられる。少なくとも1つのフィルタが用いられる。フィルタの数には制限はない。」
に望ましくない可視パターンを最小にするための具体的構成が記載されているとは認められない。

以上のとおり、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められない。

5 むすび
したがって、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法36条5項1号に規定する要件を満たしておらず、他の拒絶の査定の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-21 
結審通知日 2006-06-27 
審決日 2006-07-10 
出願番号 特願平7-123023
審決分類 P 1 8・ 534- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 稔  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 岡本 俊威
鈴木 明
発明の名称 スレショルド・アレイの生成方法  
代理人 山川 政樹  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 西山 修  
代理人 紺野 正幸  
代理人 山川 茂樹  
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