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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1147696
審判番号 不服2004-19280  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2006-11-24 
事件の表示 平成10年特許願第319362号「発光ダイオード」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月30日出願公開、特開2000-150962〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年11月10日に特許出願したものであって、平成16年8月6日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年9月16日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年10月18日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月18日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のように補正することを含むものである。
「【請求項1】 発光層に3族窒化物半導体を用いた発光素子を有する発光ダイオードであって、前記発光素子に対してn基板ツェナーダイオードが逆並列に電気接続され、
前記発光素子が接合された第1リードフレームと、前記ツェナーダイオードがAgペーストにより接合された第2リードフレームと、が電気的に絶縁されており、前記発光ダイオードが収納部を有し、該収納部には、発光素子と前記ツェナーダイオードが接合されて、樹脂モールドが充填され、前記収納部の断面において、収納部における前記第1,2リードフレーム露出部の互いに隣接する端部に、前記発光素子とツェナーダイオードとがそれぞれ接合されると共に、前記断面において、前記第1リードフレームが、前記端部と、収納部から露出された第1の露出部とを有し、且つ前記発光素子のn側取出電極とツェナーダイオードのp側取出電極とが、それぞれ該第1の露出部にワイヤーボンディングにより接続され、前記発光素子のp側取出電極が前記第2リードフレームにワイヤーボンディング接続されていることを特徴とする発光ダイオード。」(なお、下線は、平成15年10月14日付手続補正書に対する補正箇所を当審で明示したものである。)

(2)補正に対する当審の判断
上記補正事項のうち「前記収納部の断面において、・・・前記第1リードフレームが、前記端部と、収納部から露出された第1の露出部とを有し、且つ前記発光素子のn側取出電極とツェナーダイオードのp側取出電極とが、それぞれ該第1の露出部にワイヤーボンディングにより接続され、」(以下、「補正事項A」という。)という記載の「第1の露出部」なる用語については、出願当初明細書に一切記載がない。
仮にこの点が、平成16年10月18日付け手続補正書で補正された審判請求書3頁7?13行において請求人が主張するように、当初明細書の実施例2及び図面の断面図4に基づき補正したものであるとしても、補正後の明細書の発明の詳細な説明(特に、実施例2に関しては、【0029】?【0032】。)には、「第1の露出部」について何ら説明がなされていない。また、上記補正事項Aでは、「収納部の断面において、」と断面図でみた場合を特定しているが、収納部を平面からみると第1リードフレームはどのような形状であるのか、さらに、「第1の露出部」は第1リードフレームのどの箇所を指すのかなど、請求項1の記載事項と断面図である図4の記載の関係が明確に把握できないことからみても、上記補正事項Aは、特許を受けようとする発明を、むしろ、不明りょうにするものである。
(なお、プラスチックパッケージ42収納部は、エポキシ樹脂が充填されることから、収納部内のリードフレームは露出部を有しておらず、この点からも、「収納部から露出された第1の露出部」が何を示すのかが不明である。)
よって、本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないから、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年10月18日付の手続補正は上記のとおり却下された(なお、平成16年4月8日付手続補正は平成16年8月6日付で補正却下されている。)ので、本願の請求項に係る発明は、平成15年10月14日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「【請求項1】発光層に3族窒化物半導体を用いた発光素子を有する発光ダイオードであって、前記発光素子に対してn基板ツェナーダイオードが逆並列に電気接続され、前記発光素子が接合されたリードフレームと、前記ツェナーダイオードがAgペーストにより接合されたリードフレームと、が電気的に絶縁されていることを特徴とする発光ダイオード。」(以下、「本願発明」という。)

(2)先願明細書記載の発明
原査定における最後の拒絶理由に引用した、特願平9-204684号(特開平11-54804号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、下記の事項が記載されている。
「【0015】本発明の半導体発光素子は、その一実施形態の平面および断面の説明図が図1に示されるように、絶縁性基板10の表面の両端部に第1および第2の端子電極1、2が設けられ、第1の端子電極1の一端部は絶縁性基板10の中央部付近まで延びている。そして、第1の端子電極1の先端部側にLEDチップ3がボンディングされている。LEDチップ3のn側電極39は第1の端子電極1と、p側電極38は第2の端子電極2と一体に形成されたパッド2aと、それぞれ金線4により接続されている。さらに、第2の端子電極2の先端部に保護素子であるツェナーダイオードチップ5がボンディングされ、第1および第2の端子電極1、2間にLEDチップ3と逆方向になるように電気的に接続されている。そして、その周囲が樹脂パッケージ6により覆われている。図1に示される例では、樹脂パッケージ6の外周にさらに反射ケース9が設けられている。
【0016】絶縁性基板10は、たとえばガラスクロスに耐熱性のBT樹脂を含浸させたBTレジンなどの絶縁性の基板からなっている。また、LEDチップ3は、たとえば青色系(紫外線から黄色)の発光色を有するチップの一例の断面図が図3に示されるように形成される。すなわち、たとえばサファイア(Al2O3単結晶)などからなる基板31の表面に、GaNからなる低温バッファ層32が0.01?0.2μm程度、クラッド層となるn形層33が1?5μm程度、InGaN系(InとGaの比率が種々変わり得ることを意味する、以下同じ)化合物半導体からなる活性層34が0.05?0.3μm程度、p形のAlGaN系(AlとGaの比率が種々変わり得ることを意味する、以下同じ)化合物半導体層35aおよびGaN層35bからなるp形層(クラッド層)35が0.2?1μm程度、それぞれ順次積層されて、その表面に電流拡散層37を介してp側電極38が形成されている。また、積層された半導体層33?35の一部が除去されて露出したn形層33にn側電極39が設けられることにより形成されている。
【0017】ツェナーダイオードチップ5は、通常のシリコン半導体などからなり、不純物濃度の高い半導体のpn接合に大きい逆方向電圧を印加すると電子がトンネル効果によってpn接合を通って流れる現象を利用したものである。この逆方向の電流が流れ始める電圧(ツェナー電圧)はその不純物濃度により設定される。したがって、このツェナー電圧をLEDチップ3の動作電圧より高い所定の電圧に設定しておき、LEDチップ3とツェナーダイオード5とが並列で逆方向になるように第1および第2の端子電極1、2に接続することにより、LEDチップ3の動作に支障を来すことはない。
【0018】このLEDチップ3を図1に示されるように、第1の端子電極1の先端部にボンディングし、n側電極39およびp側電極38がそれぞれ第1の端子電極1および第2の電極2と一体に形成されたパッド部2aと電気的に接続されるように、金線4によりワイヤボンディングをする。また、ツェナーダイオードチップ5を第2の端子電極2の先端部にボンディングし、その正電極を第1の端子電極と一体に形成されたパッド部1aと金線4により電気的に接続する。このとき、負電極はダイボンディングの際の導電性接着剤により第2の端子電極2と電気的に接続されている。なお、LEDチップ3も上下両面にそれぞれn側電極およびp側電極が設けられる構造のものであれば、ツェナーダイオードチップ5と同様に一方の電極はワイヤボンディングによらなくても導電性接着剤により電気的に接続される。そして、絶縁性基板10の周囲に反射ケース9を形成し、その内部のLEDチップ3やツェナーダイオードチップ5を含めたこれらの周囲がLEDチップ3により発光する光を透過する透明または乳白色のエポキシ樹脂などによりモールドすることにより、樹脂パッケージ6で被覆された本発明のチップ型発光素子が得られる。」

また、図1(a),(b)には、第1の端子電極1および第2の端子電極2の先端部は絶縁性基板10を介して離隔されており、両端子電極1および2自体は電気的に絶縁されていることが見て取れる。

上記によれば、先願明細書には、
「InGaN系化合物半導体からなる活性層を有するLEDチップ3を含む半導体発光素子であって、絶縁性基板10の表面の両端部に第1および第2の端子電極1、2が設けられ、該第1の端子電極1および第2の端子電極2の先端部は絶縁性基板10を介して離隔され、電気的に絶縁されており、前記第1の端子電極1の一端部は絶縁性基板10の中央部付近まで延びており、その先端部側にLEDチップ3がボンディングされ、LEDチップ3のn側電極39は第1の端子電極1と、p側電極38は第2の端子電極2と、それぞれ金線4により接続され、さらに、ツェナーダイオードチップ5の負電極を前記第2の端子電極2の先端部に導電性接着剤によりボンディングし、その正電極を第1の端子電極と金線4により電気的に接続し、前記LEDチップ3とツェナーダイオード5とが並列で逆方向になるように第1および第2の端子電極1、2に接続されている半導体発光素子。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明と先願発明とを対比する。
(イ)先願発明の「InGaN系化合物半導体からなる活性層を有するLEDチップ3」及び「第1および第2の端子電極1、2」は、それぞれ、本願発明の「発光層に3族窒化物半導体を用いた発光素子」及び「リードフレーム」に相当する。
(ロ)先願発明において、「ツェナーダイオードチップ5」は、その負電極を前記第2の端子電極2の先端部に導電性接着剤によりボンディングされているのであるから、本願発明の「n基板ツェナーダイオード」に相当することは明らかである。
また、先願発明は、「LEDチップ3とツェナーダイオード5とが並列で逆方向になるように第1および第2の端子電極1、2に接続されている」のであるから、本願発明の「発光素子に対してn基板ツェナーダイオードが逆並列に電気接続され」た点を有する。
(ハ)先願発明は、「ツェナーダイオードチップ5の負電極を前記第2の端子電極2の先端部に導電性接着剤によりボンディング」しているが、「Agペースト」は、この種の半導体チップを接合する導電性接着剤の代表的なものとして慣用されているものであるから、本願発明の「ツェナーダイオードがAgペーストにより接合された」点は先願明細書に実質的に記載されているに等しい事項である。

してみると、本願発明は、先願発明と相違しないので、先願発明と同一である。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-20 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-10 
出願番号 特願平10-319362
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 16- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 吉田 禎治
吉野 三寛
発明の名称 発光ダイオード  

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