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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1147849 |
審判番号 | 不服2004-3257 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2003-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-19 |
確定日 | 2006-11-30 |
事件の表示 | 特願2002-357228「液晶表示パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月25日出願公開、特開2003-207809〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年9月28日(優先権主張平成6年10月7日、平成6年12月27日、平成7年2月7日)に出願した特願平7-251527号の一部を平成14年12月9日に新たな特許出願としたものであって、平成16年1月14日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年2月19日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年3月22日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。 2.平成16年3月22日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年3月22日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、請求項1、2を補正するものであり、請求項2を以下のように補正することを含むものである。 「【請求項2】 透明電極及び配向面を有する一対の基板の間に配列され、正の屈折率異方性を有するツイストネマチック液晶と、光学異方性を有する高分子フィルムを備えた液晶表示パネルであって、前記液晶のリターデーションが0.55μm?0.75μmに設定され、ツイスト角が180°?270°に設定され、前記高分子フィルムは前記液晶を挟むように一対配置され、前記一対の高分子フィルムは、リターデーションがともに150nmに設定されるとともに、厚み方向の屈折率が厚み方向と直交する面内方向の屈折率より小さいことを特徴とする液晶表示パネル。」 (2)当審の判断 上記補正の請求項2の 「透明電極及び配向面を有する一対の基板の間に配列され、正の屈折率異方性を有するツイストネマチック液晶と、光学異方性を有する高分子フィルムを備えた液晶表示パネルであって、前記液晶のリターデーションが0.55μm?0.75μmに設定され、ツイスト角が180°?270°に設定され、前記高分子フィルムは前記液晶を挟むように一対配置され、前記一対の高分子フィルムは、リターデーションがともに150nmに設定されるとともに」の記載からみて、請求項2は、主に本件明細書の【0049】、【0050】に開示された第4実施例について記載されていると理解できる。 しかしながら、本件明細書の第4実施例について、願書に最初に添付した明細書又は図面には、高分子フィルムについて、「厚み方向の屈折率が厚み方向と直交する面内方向の屈折率より小さい」との明示の記載はなく、また、その旨を示唆する記載もない。 したがって、願書に最初に添付した明細書又は図面には、「リターデーションがともに150nm」であり、かつ、「厚み方向の屈折率が厚み方向と直交する面内方向の屈折率より小さい」一対の高分子フィルムは記載されておらず、また、当初明細書から自明な事項でもない。 そうしてみると、上記補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年3月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年10月20日付手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「【請求項1】 透明電極及び配向面を有する一対の基板の間に配列され、正の屈折率異方性を有するツイストネマチック液晶を備え、光学異方性を有する高分子フィルムを備えた液晶表示パネルであって、前記液晶のリターデーションが0.55μm?0.75μmに設定され、ツイスト角が180°?270°に設定され、前記高分子フィルムのリターデーションが200nm以下に設定されたことを特徴とする液晶表示パネル。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用刊行物記載の発明 原査定の拒絶理由に引用した特開平1-120527号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、下記の事項が記載されている。 (ア)「<産業上の利用分野> 本発明は、ツイステッド・ネマチック(TN)型液晶表示装置の改良に関する。」(1頁左欄16?18行) (イ)「<問題点を解決するための手段> 上記問題点に鑑み、本発明者は、表示の色づきがなく且つ高品位の白黒表示を得るための条件について種々検討を行なった。その結果、本発明の液晶表示装置は、SBE型液晶セルにおいて検光子と電極基板との間あるいは偏光子と電極基板との間の少なくとも一方に、面内方向に光学的な一軸性を示すフィルム状シート(以下、補償板と称す)を設けた構造をもつ。 <作用> 本発明の液晶表示装置は、上述の構造によって、SBE型液晶セルにおける透過率特性が波長に対してほぼ平坦になり、白黒の良好な表示が得られると共に、電圧-透過率特性において鋭い閾値特性が得られる。」(2頁右上欄10行?左下欄4行) (ウ)「<実施例> 以下、実施例に基づいて本発明を詳述する。 第1図は本発明に係る液晶表示装置の一実施例の模式的断面構造を示す。図において、1は上側ガラス基板、2は下側ガラス基板、3は補償板、4、5は透明電極、6、7は配向膜、8は液晶層、9は検光子(上側偏光板)、10は偏光子(下側偏光板)、11は光源である。 上側ガラス基板1と下側ガラス基板2は上下-対の電極基板を構成し、上側ガラス基板1の下面と下側ガラス基板2の上面に酸化インジウムからなる透明電極4、5がそれぞれパターン化して形成されている。この透明電極4、5の表面には、ポリイミドシラン系高分子被膜からなる配向膜6、7がそれぞれ形成されており、この配向膜6、7の表面には布による一定方向のラビング処理が施されている。 上下の配向膜6、7の間に液晶層8が存在する。この液晶層8は、光学活性物質が添加された正の誘電率異方性を有するネマチック液晶層であり、上下の配向膜6、7によって液晶層の厚さ方向に液晶分子が90°より大きいねじれ角度でねじれたらせん構造を形成するように挟持されている。液晶層8は、PCH系でその組成比が表1に示すものが好適であるが、PCH系以外にはビフェニール系、ピリミジン系、エステル系などでもよい。 上側ガラス基板1とその上側の検光子9との間には、複屈折性を有する補償板3が配設されている。この補償板3は、第2図に示すように面内方向に光学的な一軸性をもったフィルム状シートにより形成されている。この補償板3は、材質としてはポリエステル系のものが好適であるが、ポリエステル系以外には面内方向に光学的な一軸性を示すポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロン、アセテートなどのフィルム状シートが用いられる。この補償板3は、下側ガラス基板2とその下側の偏光子10の間に配設してもよいし、上側ガラス基板1と検光子9の間と下側ガラス基板2と偏光子10の間の両方に配設してもよい。 第3図は上述の構成の液晶セルにおけるラビング角度ψ、液晶分子のねじれ角度φ、検光子(上側偏光板)9の設定角度β、偏光子(下側偏光板)10の設定角度γ、補償板3の設定角度θの関係を示している。図において、ψは、上側ガラス基板1のラビング方向12すなわら上側ガラス基板1上の液晶分子の長軸方向と下側ガラス基板2のラビング方向13すなわち下側ガラス基板2上の液晶分子の長軸方向とのなす角度を表す。φは、液晶分子のねじれ角度を表し、ψ=360°-φを満たすように調節されている。ところで、液晶分子のねじれ角度φは、ネマチック液晶に光学活性物質を添加することにより誘起される固有のらせんピッチPと液晶層の層厚dとの比d/Pに依存し、液晶分子のねじれ角度をψにするためには(φ/2π-1/4)<d/P< (φ/2π+1/4)の範囲に調節する必要があることは周知の事実である。具体的には、ねじれ角度φは、180°≦φ≦300°の範囲である。βとγについては、検光子9の偏光軸方向14と検光子9側の電極基板1上の液晶分子の長軸方向12とのなす角度がβであり、偏光子10の偏光軸方向15と偏光子10側の電極基板2上の液晶分子の長軸方向13とのなす角度がγである。θは、一軸性を示すフィルム状シートからなる補償板3の光学軸方向16と電極基板1上の液晶分子の長軸方向12とのなす角度である。 第4図は補償板を設けた上述の構造のSBE型液晶セルにおける透過率の波長依存性を示す。この場合、液晶材料はPCH系であり、この液晶の屈折率異方性Δnは0.13、液晶N8の層厚dは5μmであり、したがってΔn・dの値は0.65μmである。また、補償板3は、その材質がポリエステルであり、面内方向における屈折率異方性Δn’は0.04、膜厚d’は6μmであり、したがってΔn’・d’の値は0.24μmである。この図から、補償板を設けたSBE型液晶セルにおける透過率特性が波長に対して充分に乍坦になっていることがわかる。さらに、この場合におけるα値は1.04であり、これに対して前述のよに補償板を設けない場合のα値が1.08であったことから、マルチプレックス駆動特性も向上していることがわかる。 この構造の液晶表示素子において実用的な観点から十分に平坦な透過率特性を得るためには、Δn・dの値としては0.3μm≦Δn・d≦0.9μmの範囲に設定することが望ましい。また、補償板3のΔn’・d’の値としては、0.1μm≦Δn’・d’≦0.9μmの範囲に設定することが望ましい。 また、偏光子10と検光子9の設定角度β、γ及び補償板3の光学軸の設定角度θについては、偏光子10側の電極基板2から検光子9例の電極基板1に向って液晶分子がねじれていく方向を正にしたとき、角度β、γ、θをそれぞれ30°≦β≦100°、-10°≦γ≦70°、40°≦θ≦120°あるいは-60°≦β≦10°、-100°≦γ≦-20°、-50°≦θ≦30°の範囲に設定することが望ましい。これによって、透過率特性の波長依存性が少なくなり、白黒の良好な表示が可能となる。 なお、以上の結果は、PCH系以外の他の正の誘電率異方性を有するネマチック液晶を用いても、また、光学的に一軸性を有するフィルム状シートとしてはポリエステル系以外の他の材質を用いても同様の結果であった。さらに、-軸性フィルムシートを偏光子10と電極基板2の間に設けても同様の結果であった。 次に、具体例について説明する。 液晶材料として表2に示す組成の液晶を用い、液晶分子のねじれ角度φを270°、液晶層の層厚dを5.0μmとした。さらに、この液晶には、ねじれ角度φが270°になるように光学活性物質としてS-811(メルク社製)が1.17wt%添加されている。この場合のd/Pの値は約0.65になる。また、表2に示したネマチック液晶の屈折率異方性Δnは0.12であるので、Δn・d=0.6μmとなる。偏光板9の設定角度βを60°、偏光板10の設定角度γを20°に設定し、補償板3の光学軸の角度θを30°に設定した。補償板3の面内方向における屈折率異方性Δn’は0.04であり、補償板3の膜厚d’は6μmである。したがって、Δn’・d’の値は0.24μmとなる。以上のような条件のもとで液晶表示装置の透過率特性は第4図に示すように十分に平坦なものであった。さらに、この場合のα値は1.04であり、印加電圧-透過率特性における閾値特性が改善されていることが確認された。」(2頁左下欄5行?4頁11行) (エ)「<発明の効果> 以上発明したように本発明においては、SBE型液晶セルにおいて検光子と電極基板との間あるいは偏光子と電極基板との間の少なくとも一方に面内方向に光学的な一軸性を有するフィルム状シートを配設した構造としたことにより、透過率特性が波長に対してほぼ平坦になり、表示品質に優れた高コントラストの白黒表示が得られる。さらに、印加電圧-透過率特性において鋭い闇値特性が得られる。したがって、グラフィックデイスプレィやキャラクタ-用デイスプレィ、さらに液晶テレビなどへの適用にも極めて有効である。」(4頁左欄12行?右欄3行) 摘記(ウ)の「この液晶の屈折率異方性Δnは0.13」、及び「この構造の液晶表示素子において実用的な観点から十分に平坦な透過率特性を得るためには、Δn・dの値としては0.3μm≦Δn・d≦0.9μmの範囲に設定することが望ましい。」の記載からみて、引用刊行物に記載された液晶は正の屈折率異方性を有すると理解できる。 これらの記載並びに図面に示された内容を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「透明電極及び配向膜を有する一対のガラス基板の間に配列され、正の屈折率異方性を有するツイストネマチック液晶を備え、複屈折性を有する補償板を備えた液晶表示パネルであって、前記液晶のΔn・dが0.3μm?0.9μmに設定され、ねじれ角度が180°?300°に設定され、前記補償板のΔn’・d’が0.1μm?0.9μmに設定された液晶表示パネル。」 (3)対比、判断 本願発明と引用発明を対比する。 (a)引用発明の「配向膜」、「ガラス基板」、「ねじれ角度」、「Δn・d(Δn’・d’)」が、本願発明の「配向面」、「基板」、「ツイスト角」、「リターデーション」に相当することは明らかである。 (b)摘記(ウ)の「上側ガラス基板1とその上側の検光子9との間には、複屈折性を有する補償板3が配設されている。この補償板3は、第2図に示すように面内方向に光学的な一軸性をもったフィルム状シートにより形成されている。この補償板3は、材質としてはポリエステル系のものが好適であるが、ポリエステル系以外には面内方向に光学的な一軸性を示すポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロン、アセテートなどのフィルム状シートが用いられる。」の記載からみて、引用発明の「補償板」 は、光学異方性を有する高分子フィルムであることは明らかである。 (c)引用発明の液晶のΔn・d、ねじれ角度、及び補償板のΔn’・d’の範囲は、本願発明の液晶のリターデーション、ツイスト角、及び高分子フィルムのリターデーションの範囲と完全に重複しているので、引用発明は、本願発明の「前記液晶のリターデーションが0.55μm?0.75μmに設定され、ツイスト角が180°?270°に設定され、前記高分子フィルムのリターデーションが200nm以下に設定された」との技術的事項を有するということができる。 よって、両者は、全ての点で一致し、相違するところがないから、両者は同一である。 なお、原査定の拒絶の理由は、特許法第29条第1項第3号に該当するというものではないが、審判請求人は、審判請求書において、本願発明と上記引用刊行物とを対比し、容易性のみならず、同一性についても検討していることは明らかである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-28 |
結審通知日 | 2006-10-03 |
審決日 | 2006-10-16 |
出願番号 | 特願2002-357228(P2002-357228) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G02F)
P 1 8・ 113- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 裕之 |
特許庁審判長 |
向後 晋一 |
特許庁審判官 |
鈴木 俊光 井上 博之 |
発明の名称 | 液晶表示パネル |
代理人 | 松下 義治 |