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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1147943
審判番号 不服2004-23349  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-15 
確定日 2006-11-28 
事件の表示 平成 7年特許願第170423号「単層レーザーラベル」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月27日出願公開、特開平 8- 54823〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月14日(パリ条約による優先権主張1994年6月22日、ドイツ)の出願であって、平成16年8月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年11月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.平成16年11月15日手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 単層レーザーラベルにおいて、同ラベルが
a)塗料材料からなる支持層、および、
b)有色顔料および水酸化燐酸銅からなる群から選択されるレーザー照射下に色が変わる添加物を含み、
c)支持層の一面に粘着性組成物が塗布され、
d)随時剥離紙又は剥離フィルムで覆われていて良い
ことからなる単層レーザーラベル。」
と補正された(審決注:下線は当審にて付与した)。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について、技術的限定を付加したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
ここで、上記a)では「塗料材料からなる支持層」と特定され、該支持層の一面に上記c)の粘着性組成物を塗布させたものが「単層レーザーラベル」であることが把握できるけれども、上記b)における「有色顔料および水酸化燐酸銅からなる群から選択されるレーザー照射下に色が変わる添加物を含」むこととの関係が不明確になっているところ、本願明細書の記載から参酌するに、塗料材料からなる支持層自体に有色顔料および水酸化燐酸銅からなる群から選択されるレーザー照射下に色が変わる添加物が含まれているとの意味に解される。
したがって、本件補正後の上記請求項1に記載された発明は、
「【請求項1】 単層レーザーラベルにおいて、同ラベルが
a’)塗料材料、および、
b’)有色顔料および水酸化燐酸銅からなる群から選択されるレーザー照射下に色が変わる添加物を含む支持層であって、
c)支持層の一面に粘着性組成物が塗布され、
d)随時剥離紙又は剥離フィルムで覆われていて良い
ことからなる単層レーザーラベル。」(以下、「補正発明」という。)
であるものと捉えて、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)独立特許要件欠如
(2-1)引用例の記載事項
本願の出願前である平成3年7月23日に頒布された特開平3-169673号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「2.特許請求の範囲
(1)シート状支持体上に、レーザービームを吸収し、変色を生じる無機化合物を含有する記録層を形成してなるレーザービーム用記録媒体。」(第1頁左下欄第4行?同第7行)

イ.「一方、近年では、樹脂封止型電子部品の表面に、製品名や、部品番号をレーザーマーキングするために、レーザービームを吸収し、変色を生じる無機化合物をあらかじめ樹脂中に混入することが知られている。この場合、変色性無機化合物としては、2PbCO2・Pb(OH)2(特開昭61-69488号公報)、黄色酸化鉄(特開昭60-155493号公報)等が用いられている。しかし、このようなレーザーマーキング技術は、あくまでも樹脂成形体に対して適用されるもので、記録媒体として利用されるものではなかった。」(第1頁右下欄第11行?第2頁左上欄第1行)

ウ.「本発明において、シート支持体に形成する記録層は、レーザービームを吸収し、その際の発熱で変色する無機化合物(以下、単に変色性無機化合物とも言う)を含有する。このような変色性無機化合物としては、PbCO2・Pb(OH)2、黄色酸化鉄の他、レーザービーム吸収性無機顔料、例えば、リトポン、チタニウムイエロー、クロムイエロー、二酸化チタン、チタン酸塩等が挙げられる。記録層を構戊する変色性無機化合物としては、常温において白系統色を示し、レーザービームを吸収して黒系統色に変色するものがコントラストの大きい画像を得る上で有利である。(審決注:「PbCO2・Pb(OH)2」は「2PbCO2・Pb(OH)2」の誤記と認める。)」(第2頁左上欄第17行?同右上欄第8行)

エ.「本発明の記録媒体は、シート状支持体上に、変色性無機化合物及び高分子バインダーを含む塗布液を塗布乾燥することによって製造することができる。シート状支持体としては、紙や合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリサルファン等の各種高分子からなるフイルムが用いられる。高分子フィルムは、コントラストの大きい画像を得る点からは、フイルム中に顔料を混入して不透明、特に白色不透明にするのが好ましい。また、金属フィルムも使用可能である。」(第2頁右上欄第14行?同左下欄第6行)

オ.「高分子バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種合或樹脂や、樹脂エマルジョン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、殿粉、アルギン酸ソーダ等の天然物由来の高分子バインダーが用いられる。塗布液は、水性溶液、有機溶媒溶液、乳化液等であることができる。」(第2頁左下欄第7行?同第13行)

カ.「本発明の記録媒体は、その記録層に対し、レーザービームをマスクを通して画像状に照射するか、レーザービームを画像状に走査することによって、所要の画像を記録することができる。この場合、レーザービームとしては、波長190?1100nmの光線が用いられる。またこのようなレーザービーム発生装置としては、炭酸ガスレーザービーム発生装置を初めとし、アルゴンレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー等の従来公知の各種のものが用いられる。」(第2頁右下欄第17行?第3頁左上欄第6行)

キ.「本発明の記録媒体に形威される記録画像は、無機化合物が高温熱変色したものであることから、非常に安定性の良いもので、従来の感熱記録材料に比べて、耐候性、耐薬品性において著しくすぐれたものである。本発明の記録媒体は、従来の感熱記録材料と同様に、各種情報記録装置の記録紙として用いられる他、その裏面に粘着層を形或して各種ラベルとして使用することができ、さらに磁気層を形成することにより、磁気券紙として使用することも可能である。」(第3頁左上欄第7行?同第16行)

ク.「実施例1
厚さ50μmのポリエステルフィルム上に、表-1に示す成分組或の塗布液を、直径0.8mmのワイヤーを巻いたワイヤーバーにて膜厚9μmで塗布し、温度130℃で1分間加熱して乾燥した。」(第3頁左上欄第20行?同右上欄第4行)

摘記ア乃至ク及び引用例1の明細書全体から、引用例1には、
「シート状支持体上に、黄色酸化鉄やクロムイエロー等のレーザービーム吸収性無機顔料等の変色性無機化合物、および高分子バインダーを含む記録層を有し、裏面に粘着層を形成して各種ラベルとして使用することができるレーザービーム用記録媒体。」(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(2-2)対比
補正発明と引用発明とを比較する。
(i)引用発明の「レーザービーム用記録媒体」は、該記録媒体を構成するシート状支持体の裏面に粘着剤を形成して各種ラベルとして使用することができるものであるから「レーザービーム用ラベル」であって、補正発明の「レーザーラベル」に相当する。そして、補正発明の「レーザーラベル」は支持層の一面に粘着性組成物が塗布されることで構成されているものであるから、引用発明と補正発明とは「粘着性組成物の層を有するレーザーラベル」である点で一致する。
(ii)引用発明の「記録層」が、「黄色酸化鉄やクロムイエロー等のレーザービーム吸収性無機顔料等の変色性無機化合物」と「高分子バインダー」とを含み、レーザー照射によりマーキングができる層であって、補正発明の「支持層」が、「有色顔料および水酸化燐酸銅からなる群から選択されるレーザー照射下に色が変わる添加物」と「塗料材料」とを含み、レーザー照射によりマーキングができる層であるから、両者とも「レーザー照射によりマーキングができる層」で一致する。
(iii)上記(ii)の「レーザー照射によりマーキングができる層」を構成する、引用発明の「黄色酸化鉄やクロムイエロー等のレーザービーム吸収性無機顔料等の変色性無機化合物」において、「黄色酸化鉄」及び「クロムイエロー」は有色顔料として周知なものである(社団法人有機合成化学協会、カラーケミカル事典、株式会社シーエムシー、1988年3月28日)から、補正発明の「有色顔料」であって、「レーザー照射下に色が変わる添加物」に相当する。
(iv)上記(ii)の「レーザー照射によりマーキングができる層」を構成する、引用発明の「高分子バインダー」が「黄色酸化鉄やクロムイエロー等のレーザービーム吸収性無機顔料等の変色性無機化合物」を担持するものであり、補正発明の「塗料材料」が「有色顔料および水酸化燐酸銅からなる群から選択されるレーザー照射下に色が変わる添加物」を担持するものであり、両者共に同様の機能を有するものであるから、引用発明の「高分子バインダー」と補正発明の「塗料材料」とは呼称上の差異でしかない。
(v)補正発明では「粘着性組成物」が「随時剥離紙又は剥離フィルムで覆われていて良い」ことから、補正発明の「随時剥離紙又は剥離フィルム」の有無が問題とならないことは明らかである。

してみると、補正発明と引用発明とは、
「有色顔料であって、レーザー照射下に色が変わる添加物と塗料材料とを含む層と粘着性組成物の層を有するレーザーラベル。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
有色顔料であって、レーザー照射下に色が変わる添加物と塗料材料とを含む層において、補正発明では該層を支持層とする単層からなるレーザーラベルであるのに対し、引用発明では該層が記録層であり、この記録層を支持するシート状支持体が更に設けられたレーザーラベルである点。
[相違点2]
粘着性組成物の層を有するレーザーラベルにおいて、補正発明では支持層の裏面に粘着性組成物を塗布して形成しているのに対し、引用発明では単に形成したものであって、そのような特定がない点。

(2-3)判断
*[相違点1]について
補正発明は単層レーザーラベルであって、本願明細書の実施例1によれば支持層は放射線硬化性塗料を硬化させてなる約60μmの厚さを有するフィルムであるのに対し、引用発明のレーザーラベルは、厚さ50μmのポリエステルフィルム(シート状支持体)上に、変色性無機化合物と高分子バインダーを含有する塗布液を膜厚9μmで塗布し、加熱乾燥して記録層を得たものである(引用例1の摘記ク)。
ここで、補正発明の「支持層」は、レーザーラベル自体であって、該支持層を支持する支持体が存在しないものであり、他方引用発明の「記録層」は、9μmと薄く、これを支持するシート状支持体が存在し、シート状支持体に記録層を重ねて、レーザーラベルとしているものであるところ、レーザーラベルとしてみた場合、補正発明(支持層である単層レーザーラベル)及び引用発明(ポリエステルフィルムと記録層との積層レーザーラベル)は、いずれも約60μmの厚みを有するものであって、補正発明の「支持層」及び引用発明の「記録層」はいずれもレーザー照射下に色が変わる添加物と塗料材料とを含む層である。
このようなラベルは、見栄えの観点からは薄ければ薄いほど目立ちにくいので好ましいけれども、貼り付け後に他の物品と擦れることがあってもマーキングに影響を与えることがなく、製造時又は貼り付け時に皺になったり、切れたりしないなどの取り扱い性や耐久性に優れた物理特性が要求され、そのために薄すぎず、厚すぎないといった特定の厚みが要請される。
ここでいうところの厚みが、補正発明及び引用発明のいずれも約60μmであって、その特定の厚みを有するラベルを、シート状支持体と記録層とを積層して形成される場合(引用発明)と記録層(支持層)のみから形成される場合(本願発明)とがあることを考慮すれば、引用発明におけるシート状支持体を、記録層を構成する変色性無機化合物と高分子バインダーを含む層でもって代替できる(約60μmの厚みを有する記録層とすることができる)か否かというところに相違点1は帰結する。
そこで検討するに、層構成をなす部材に特定の機能を与えようとする場合に、与える機能を複数の個別層において実現し、これらを積層構成とするか、或いは単層にすべての機能を与えるかは、用途からの要請或いは使用し得る材料の制限を考慮して、好適な層構成を採用すべく、設計段階で検討・考慮されていることである。
ちなみに、積層構成をなす記録体においても、それぞれ異なる個別の層に独自の機能を与えた場合には、個別層の設計は容易となるものの、単層構成に比較して積層する工程が増加すること、形成された積層体が使用時に剥離しないこと(製品の安定性及び経時的安定性)が要請される。
他方、本願発明のように、ラベルを構成する支持層のみからなる(記録層と支持層を兼用する)場合、前記積層構成に対する要請に比較すれば、扱いやすい点はあるものの、マーキングが良好に行われるように塗料材料と有色顔料等の添加物を均一分散させること、また、添加物を加えても必要とされる強度・硬さを確保することが要請される。
そして、このような単層構成の記録体は、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前である平成6年2月8日に頒布された特開平6-32049号公報(特に、【0002】、【0003】、実施例1参照のこと)に記載されているように周知である。
してみると、補正発明においては、記録層が、塗料材料、及び有色顔料および水酸化燐酸銅からなる群から選択されるレーザー照射下に色が変わる添加物から成ることが特定されているものの、支持層を構成する上で塗料材料と添加物とが単層構成を採用する上で好適な組み合わせであることが本願明細書中で裏付けられるものでもないのであって、記録層を単層構成とするか、二層構成とするかは、用途の要請に応えて当業者が容易に選択し得た程度のことである。
そうであれば、マーキングに影響を与えることがなく、製造時の取り扱い性や使用時の耐擦性等の物理的特性を向上させるために、シート状支持体と記録層とを積層せずに特定の厚みを持たせること、すなわち引用発明におけるシート状支持体に相当する厚み分(体積分)を記録層単層で形成して、相違点1のような構成にすることは当業者には容易になし得た程度のことである。

*[相違点2]について
感熱発色方法で記録できる感熱記録体に粘着性組成物を塗布してラベルとして使用することは周知慣用技術である(必要であれば、実願昭63-167116号(実開平2-87269号)のマイクロフィルム、特開平3-133626号公報参照のこと。)。
したがって、相違点2のような構成にすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

よって、補正発明は、引用発明及び周知慣用技術から当業者が容易に発明することができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本件審判請求についての当審の判断
3-1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】 単層レーザーラベルにおいて、同ラベルが
a)プラスチック製支持層、そして同支持層は
b)レーザー照射下に色が変わる添加物を含み、そして
c)支持層の一面に粘着性組成物が塗布され、
d)随時剥離紙又は剥離フィルムで覆われていて良い
ことからなる単層レーザーラベル。」

3-2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成6年2月8日に頒布された特開平6-32049号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

a.「【請求項1】 剥離可能な基体上に、感熱記録層を設けた後、感熱記録層を基体から剥がすことにより、感熱記録体を得ることを特徴とする感熱記録体の製造方法。」(【特許請求の範囲】)

b.「本発明の感熱記録層を構成する反応系については、特に限定されず、熱によって接触して呈色反応を起こすような組合せであれば何でも使用可能であり、例えば有機燐酸塩と配位子化合物との組合せ、ジアゾニウム塩およびカプラーと塩基性化合物との組合せ、無色ないし淡色の塩基性染料と呈色剤との組合せ等が使用できるが、特に無色ないし淡色の塩基性染料と呈色剤との組合せを使用した系で、より優れた効果が得られる。」(【0007】)

c.「感熱記録層を構成する塗液中には、上記発色成分以外に水可溶性または水分散性の樹脂として、例えばデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン基変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体とアクリルアミド・アクリル酸アリルアセトアセテートとのグラフト共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、スチレン-アクリレート系共重合体ラテックス等のラテックス類等の接着剤が一種以上配合される。中でも、フィルム形成能の高いポリビニルアルコール類およびラテックス類が好ましい。なお、接着剤の配合割合は感熱記録層形成用塗液の全固形分に対して10?50重量%、好ましくは15?40重量%の範囲で調節するが望ましい。」(【0009】)

d.「本発明において、感熱記録層、中間層、および保護層の形成方法については特に限定するものではなく、従来から周知慣用の技術に従って形成することができ、例えば各層用の塗液を、剥離可能な基体上にエアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ショートドウェルコーター等の適当な塗布装置によって塗布・乾燥する等の方法が挙げられる。 また、塗液の塗布量についても特に限定されるものではなく、全塗布量が乾燥重量で10?50g/m2、好ましくは15?30g/m2の範囲で調節される。更に、本発明において、保護層上に感圧接着層を設けたり、或いは基体上に再剥離性感圧接着層を設けた後、中間層、感熱発色層、保護層を設けることもできる。」(【0017】)

e.「〔実施例1〕
A液調製
無色の塩基性染料として3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-フェニルアミノフルオラン10部、熱溶融性芳香族化合物としてベンジルテレフタレート20部、メチルセルロースの5%水溶液5部、および水65部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が2μmになるまで粉砕してA液を得た。
B液調製
呈色剤として4-ヒドロシ-4′-イソプロポキシジフェニルスルホン30部、メチルセルロースの5%水溶液5部、および水65部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が2μmになるまで粉砕してB液を得た。
感熱記録層用塗液の調製
A液100部、B液100部、無定形シリカ20部、珪素変成ポリビニルアルコールの10%水溶液100部、ポリウレタン系ラテックス(固形濃度50%)30部、および水25部を混合・攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
感熱記録体の形成
剥離可能な基体として、厚さ60μmのコロナ放電処理されたポリエステルフィルム上に、上記の感熱記録層用塗液を乾燥後の塗布量が20g/m2となるように塗布・乾燥した後、ポリエステルフィルムから感熱記録層を連続的に剥がすことにより、厚さが約20μmの基体のない感熱記録体を得た。」(【0019】)

摘記a?e及び引用例2の明細書全体から、引用例2には、
「無色ないし淡色の塩基性染料と呈色剤との組合せを使用した発色成分と、水可溶性または水分散性の樹脂とを含む塗液から形成された感熱記録体。」(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。

3-3.本願発明と引用発明2との一致点及び相違点の認定
(1)引用発明2の「無色ないし淡色の塩基性染料と呈色剤との組合せを使用した発色成分」は熱により発色する感熱記録に寄与するものであるから、本願発明の「レーザー照射下に色が変わる添加物」に相当する。
(2)引用発明2の「水可溶性または水分散性の樹脂」を含む塗液から形成された「感熱記録体」は単層であって、プラスチックの記録体からなるものであるから、本願発明の「単層」の「プラスチック支持層」とは、単層のプラスチックの記録体である点で共通する。
(3)本願発明では「粘着性組成物」が「随時剥離紙又は剥離フィルムで覆われていて良い」ことから、本願発明の「随時剥離紙又は剥離フィルム」の有無が問題とならないことは明らかである。

してみると、本願発明と引用発明2とは、
「レーザー照射下に色が変わる添加物を含む単層のプラスチックの記録体。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点A]
単層のプラスチックの記録体において、本願発明が「単層」の「プラスチック支持層」の一面に粘着性組成物が塗布されたラベルであるのに対し、引用発明2では単層のプラスチックの感熱記録体であって、ラベルのような特定がなされていない点。
[相違点B]
本願発明がレーザーによる記録されるものであるのに対し、引用発明2ではそのような特定がなされていない点。

3-4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
*[相違点A]について
感熱記録体に粘着性組成物を塗布により設けること、及び粘着性組成物を設けた感熱記録体をラベルとして使用することは周知慣用技術である(必要であれば、実願昭63-167116号(実開平2-87269号)のマイクロフィルム、特開平3-133626号公報参照のこと。)から、当業者であれば容易に想到しうることである。
したがって、相違点Aのような構成にすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

*[相違点B]について
感熱発色方法に用いられる感熱記録体において、熱源である記録手段としてレーザーを使用することは周知慣用技術である(必要であれば、特開平5-58031号公報、特開平5-139046号公報参照のこと)。
したがって、相違点Bのような構成にすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び周知慣用技術から当業者が容易に想到しうるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-22 
結審通知日 2006-06-27 
審決日 2006-07-10 
出願番号 特願平7-170423
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 藤本 義仁
藤井 勲
発明の名称 単層レーザーラベル  
代理人 小田島 平吉  

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