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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F |
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管理番号 | 1148807 |
審判番号 | 不服2003-19847 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-03-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-09 |
確定日 | 2006-12-14 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第214349号「スイッチング電源回路」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月 8日出願公開、特開平 8- 64439〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
一.手続の経緯 本願は、平成6年8月17日を出願日とする出願であって、審判請求後下記の手続きがなされた。 審判請求 平成15年10月 9日 手続補正書提出 平成15年11月10日 上記補正の却下の決定 平成18年6月19日 拒絶理由通知(最後) 平成18年6月19日 意見書提出 平成18年8月16日 手続補正書提出 平成18年8月16日 二.平成18年8月16日付の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年8月16日付の手続補正を却下する。 [平成18年8月16日付の手続補正の却下の理由] 本件補正は、下記の理由1により、特許法第17条の2第2項において準用する特許法第17条第2項の規定に適合しない。 さらに、本件出願は、下記の理由2、3により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 ゆえに、本件補正は、特許法第17条の2第4項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合しない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 記 理由1 今回の平成18年8月16日付の手続補正の下記の点は、願書に最初に添付した明細書等に記載されていない。 記 請求項1の「周波数変化量を最小とした」点。 理由2 本件出願は、下記請求項が下記の点で不備のため、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1の以下の記載が明確でなく、発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていない。 (1)「最大」、「最小」は、どういう範囲の内の「最大」、「最小」か記載が明確でない。 (2)「最小にされた前記1次巻線のインダクタンスを、」は、文のどこに続くか明確でない。(「前記前記」も、誤記である。) 理由3 本件出願の下記請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 原審で引用した引用例1 実願平3-29385号 (実開平5-85022号)のCD-ROM 前置報告書で引用した引用例3 特開平4-338615号公報 前置報告書で引用した引用例4 特開平5- 74638号公報 前回拒絶理由で引用した引用例A 特開平6- 30557号公報 請求項1に係る発明について 上記引用例3には、図面と共に以下の事項が記載されている(明瞭化のため下線を引いた。以下同じ。)。 「【0004】図5において、・・商用交流電源1から・・直流電圧が得られるようになっている。5はスイッチング素子であり、・・共振コンデンサ7が接続されて共振型スイッチング回路が構成されている。8が高周波のインバータトランスであり、1次巻線9、2次巻線12・・が備えられている。・・スイッチング素子5がオン・オフされ、・・高周波に変換される。・・2次巻線12には、倍電圧コンデンサ15と高圧整流ダイオード16で構成された倍電圧整流回路が接続されている。・・18はマグネトロン17のアノード電流の平均値を検出するカレントトランスであり、その検出電流値はインバータ制御回路19に入力されている。インバータ制御回路19でマグネトロン17への入力電力が一定値に制御されるとともに、スイッチング素子5の駆動タイミングが制御されるようになっている。」 「【0005】図7は、上述のインバータトランス8の構成例を示している。空気ギャップ27を介して対向する1対のコの次型フェライトからなるコア25,26、・・からなっている。1次巻線9は、そのほぼ中心がギャップ位置となるように巻回されている。」 従って、引用例3には、以下の発明が記載されている。 (i)直流電圧に対して、スイッチング素子5がオン・オフされるスイッチング手段と、 (ii)ギャップを有する開磁路を構成するコアと、1次巻線9、2次巻線12とを有し、1次巻線9のコアのほぼ中心にギャップが形成され、スイッチング素子5がオン・オフされ、当然1次巻線に流れる交番電流により前記2次巻線に交番電圧が誘起されるトランスと、 (iii)図5のように1次巻線に直列接続した共振コンデンサ7からなる共振型スイッチング回路と、 (iv) 2次巻線12に設けた倍電圧整流回路と、 (v)スイッチング素子5の駆動タイミングが制御される制御手段とを備えたスイッチング電源回路。 引用例3に記載された発明に対して、本願請求項1に係る発明は、以下の構成を備えた点で相違する。 相違点1 (以下、明瞭化のため、符号を付して項分けした。) 「(ア)前記前記1次巻線が巻回されているコア領域の中央部に磁気ギャップが形成されることによって最小にされた前記1次巻線のインダクタンスを、 (イ)前記1次巻線に必要とされるインダクタンスを得るために前記1次巻線の巻線数を最大とし、 (ウ)前記2次巻線に所要の交番電圧を得るための前記1次巻線にかかる電圧を最大としたトランス」を備えた点 相違点2 「前記整流手段により整流された電圧を平滑して直流出力電圧を負荷に供給する平滑手段と、 前記平滑手段からの直流出力電圧に対応して前記スイッチング素子をオン・オフ駆動するスイッチング周波数を、前記共振回路の共振周波数より高い周波数領域において可変制御することで前記平滑手段からの直流出力電圧の変動に対して定電圧化する制御手段」を備えた点 相違点3 「前記入力された直流電圧や前記負荷の変動に対して前記1次巻線にかかる電圧を一定に保つために要する周波数変化量を最小とした」点 以下、相違点について検討する。 相違点1の(ア)について 引用例3には、「【0005】図7は、上述のインバータトランス8の構成例を示している。空気ギャップ27を介して対向する1対のコの次型フェライトからなるコア25,26、・・からなっている。1次巻線9は、そのほぼ中心がギャップ位置となるように巻回されている。」と記載されている。 このトランスは、実質的に相違点1の「1次巻線が巻回されているコア領域の中心部にギャップが形成」されたトランスに相当する。 また、上記引用例1には、図1、2と共に以下の事項が記載されている。「【請求項1】 中空のコイルボビンの長手方向に関して分割して順次に巻回された一次巻線及び二次巻線を有するコイルと、互いに平行に延びている3本のコア部のうち中央のコア部が、該コイルボビンの中空部内に対して、その両端から挿入される、一対のE型コアとから成るトランスにおいて、該E型コアのうち一方のE型コアのコア部の長さが、他方のE型コアのコア部の長さより短く形成されており、上記コイルボビンの中空部内にそれぞれ中央のコア部を挿入したとき、双方の各コア部の先端が当接することにより構成される、所謂コアギャップが、該コイルボビンの一次巻線に対応する領域内に位置することを特徴とする、トランスコア。」 すなわち、本願図1のE型コアと同じ上記E型コアは、コアギャップがある開磁路を形成し、該コアに巻かれる一次巻線と二次巻線とを有し、前記一次巻線が巻回されているコア領域にギャップが形成されている。 そして、図1、図2では、1次巻線が巻回されているコア領域のほぼ中心部にコアギャップGが形成されている。 引用例1のトランスは、適宜、スイッチング電源回路等にも用いられることは、明白である。 また、引用例4の図2、5にも、1次巻線が巻回されているコア領域のほぼ中心部にギャップ15、17を形成することが図示されている。 上記トランスは、実質的に相違点1の「1次巻線が巻回されているコア領域の中心部にギャップが形成」されたトランスに相当する。 すなわち、引用例3、1、4でも、1次巻線が巻回されているコア領域の中央部に磁気ギャップが形成されている。 そうすることによって1次巻線は所定のインダクタンスになっている。 このインダクタンスと、相違点1の(ア)でいう「最小にされた前記1次巻線のインダクタンス」と区別がつかず、実質的に差がない。 さらに、相違点1の(ア)は、 (ア’)前記前記1次巻線が巻回されているコア領域の中央部に磁気ギャップが形成されることによって(コア領域の端部に磁気ギャップが形成された場合との比較で)最小にされた前記1次巻線のインダクタンス、 という意味と解されるから、中央部に磁気ギャップが形成されている引用例3、1、4の場合と実質的に差はない。 相違点1の(イ)、(ウ)について 引用例3、1、4では、1次巻線に必要とされるインダクタンスを得るために1次巻線の巻線数が所定数巻かれている。 この巻線数と、相違点1の(イ)でいう最大巻線数と、区別がつかず、実質的に差がない。 また、相違点1の(イ)は、上記(ア’)の(コア領域の端部に磁気ギャップが形成された場合)に設定される巻線数との比較で、最大と言っていると解されるから、引用例3、1、4の場合と実質的に差はない。 同様に、相違点1の(ウ)の「1次巻線にかかる電圧を最大」の意味も、上記(ア’)の(コア領域の端部に磁気ギャップが形成された場合)に設定され、定まる値との比較で、最大と言っている意味と解され、引用例3、1、4の場合と実質的に差はない。 又、(引用例3、1、4のコアを用いた)引用例3の2次巻線に所要の交番電圧を得るための1次巻線にかかる電圧として所定電圧がかけられている。この所定電圧は、相違点1の(ウ)でいう最大電圧と、区別がつかず、実質的に差がない。 結局、本願請求項1に係る発明の相違点1の(ア)?(ウ)の構成は、引用例3の発明において、単に上記引用例3、1、4記載のようなトランスを用いて適宜設計したにすぎない。 相違点2について 引用例Aには、「【0024】また、全波整流器10および平滑用コンデンサ11で整流平滑」されることが記載されている。 引用例4の段落0002に、図4と共に平滑回路4Aが記載されている。 このように、整流された電圧を平滑するために、単に平滑手段を用いることは周知である。 さらに、引用例Aには、図1、7と共に、以下の事項が記載されている。 「【0024】また、全波整流器10および平滑用コンデンサ11で整流平滑されて得られる直流出力電圧が・・コンパレータ18に供給されて基準電圧Vrefと比較される。このコンパレータ18より出力される誤差電圧は発振駆動回路17に発振周波数(スイッチング周波数)の制御信号として供給される。 【0025】また、本例においては、絶縁コンバータトランス7の1次側の共振インピーダンス曲線のアッパーサイドが使用されて(図7参照)、直流出力電圧の安定化のための制御が行なわれる。 【0026】すなわち、直流出力電圧が一定値より大きくなるとき、コンパレータ3より出力される誤差電圧に基づいて発振駆動回路17の発振周波数fBが高くされる。これにより、絶縁コンバータトランス7の1次側の共振インピーダンスZ1が大きくなって励磁電流が小さくなり、直流出力電圧が小さくなるように制御される。一方、直流出力電圧が一定値より小さくなるときは、逆の動作によって直流出力電圧が大きくなるように制御される。」 上記制御では、要するに、 (a)平滑されて得られる直流出力電圧に対応して(スイッチング周波数)を、 (b)アッパーサイドを使用して(図7参照)、可変制御し、 (c)直流出力電圧の安定化のための制御が行なわれる、のであるから、 相違点2の (A)前記平滑手段からの直流出力電圧に対応して前記スイッチング素子をオン・オフ駆動するスイッチング周波数を、 (B)前記共振回路の共振周波数より高い周波数領域において可変制御することで、 (C)前記平滑手段からの直流出力電圧の変動に対して定電圧化する制御手段、 に相当する。 結局、本願請求項1に係る発明の相違点2の構成は、引用例3の発明において、引用例A、引用例4記載の周知の平滑手段を用い、上記引用例A記載のような直流出力電圧の安定化のための制御手段を備えたにすぎない。 相違点3について (引用例3、1、4のコアを用いた)引用例3でも、入力された直流電圧や負荷の変動に対して、1次巻線にかかる電圧を一定に保つために要する周波数が、所定の変化量の範囲にしている。 この変化量は、相違点3でいう周波数変化量を最小としたことと、区別がつかず、実質的に差がない。 又、相違点3の「周波数変化量を最小としたこと」の意味は、上記(ア’)の(コア領域の端部に磁気ギャップが形成された場合)に設定され、定まる変化量との比較で、最小と言っている意味と解され、(引用例3、1、4のコアを用いた)引用例3と実質的に差はない。 結局、本願請求項1に係る発明は、引用例3の発明において、引用例3、1、4のトランスと、引用例A、引用例4の整流平滑手段を用い、引用例Aのアッパーサイド制御をして、直流出力電圧を定電圧化すべく、1次巻線にかかる電圧を一定に保つようにして適宜設計したにすぎない。 そして、これらの寄せ集めに阻害要因がなく、当業者であれば、必要に応じて容易になし得たものである。 請求項2に係る発明について 引用例Aに、「【0024】また、全波整流器10および平滑用コンデンサ11で整流平滑されて」と記載されているように、請求項2記載のような全波整流回路は、周知である。 請求項2に係る発明は、単にこの全波整流回路を付加して適宜設計したにすぎない。 その他の点は、上記請求項1に係る発明についての判断と同じである。 以上 ---------------------------------- 三.上記手続補正は上記のとおり却下されたので、本件請求項1ないし3に係る発明は、平成15年7月25日付手続補正書の、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたものであるところ、この内、請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。 「直流入力電圧を入力してスイッチング動作を行うスイッチング素子を備え、該スイッチング素子が所要のスイッチング周波数で駆動されるスイッチング手段と、 開磁路を形成するコアと、該コアに巻かれる1次巻線と2次巻線とを有し、前記1次巻線が巻回されているコア領域の中心部にギャップが形成されたトランスと、 前記2次巻線に誘起される2次側交番電圧を整流平滑して直流出力電圧を生成する整流平滑手段と、 前記直流出力電圧の変動に対応して前記スイッチング周波数を可変制御することで前記整流平滑手段からの直流出力電圧を定電圧化する制御手段と、 を備えたことを特徴とするスイッチング電源回路。」 請求項1に係る発明に対する先の平成18年6月19日付の拒絶理由通知書の理由は妥当なものと認められ、これに対する意見書の主張は、上記却下された補正書の請求項1に係る発明を前提とするもの等であり、理由がないから、本願は、請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-27 |
結審通知日 | 2006-10-03 |
審決日 | 2006-10-27 |
出願番号 | 特願平6-214349 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(H01F)
P 1 8・ 121- WZ (H01F) P 1 8・ 572- WZ (H01F) P 1 8・ 537- WZ (H01F) P 1 8・ 561- WZ (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹井 文雄 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
山本 一正 橋本 武 |
発明の名称 | スイッチング電源回路 |
代理人 | 鈴木 伸夫 |
代理人 | 脇 篤夫 |