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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1148959
審判番号 不服2004-10524  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-20 
確定日 2006-12-08 
事件の表示 平成 6年特許願第279761号「レンズ移動機構の構造」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月17日出願公開、特開平 8-122613〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月20日の出願であって、平成16年3月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月18日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年6月18日付の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成16年6月18日付の手続補正を却下する。
〔理由〕
平成16年6月18日付手続補正の内容は、請求項1、及び発明の詳細な説明を「・・・軸押圧腕の回動軸に対する作用部と押付手段のレンズ枠に対する作用部とを共通の直方体内に位置させた・・・」と補正しようとする点を含むものである。
しかしながら、上記補正の内容は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。
さらに、上記補正が、特許請求の範囲の限定的減縮であるとしても、請求項1の「・・・軸押圧腕の回動軸に対する作用部と押付手段のレンズ枠に対する作用部とを共通の直方体内に位置させた・・・」の記載では、その具体的構成が不明確で、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項を記載したものとは言えないので、特許法第36条第5項第2号の規定に違反し、平成16年6月18日付で手続補正された本願は独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項の規定に違反しており、かつ、平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年6月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年7月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
レンズを保持し該レンズの光軸方向と平行な方向に伸長したガイド棒に案内されて摺動自在なレンズ枠と、上記光軸方向と平行な方向に伸長した案内棒に案内されて移動しながら上記レンズ枠を上記光軸方向に移動させる移動コマとからなるレンズ移動機構において、
前記移動コマに該移動コマと一体の板バネからなり、その付勢力を前記レンズ枠の外側から付勢させて、該レンズ枠を前記ガイド棒に押し付ける押付手段を設けたことを特徴とするレンズ移動機構の構造。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1〔実願平4-29745号(実開平5-90417号)のCD-ROM〕には、次の事項が記載されている。
「本レンズ駆動機構は、駆動源のフォーカシングモータで駆動されるスクリューシャフト18により、キャリッジ11を介してフォーカシングレンズ19用の鏡枠であるレンズ保持枠15を光軸方向に進退駆動するものである。なお、図2,3に示すように、上記保持枠15は、図示しないカメラ本体に固着されているガイド部材である基準ガイド軸16と回転規制ガイド軸17に摺動自在に支持されているものとする。そして、基準ガイド軸16は、レンズ保持枠15のスリーブ部に設けられたガイド孔に嵌入されており、回転規制ガイド軸17の方は、レンズ保持枠15の切り欠き部に嵌挿されている。
【0018】
上記キャリッジ部を構成するキャリッジ11は、図1?3に示すように駆動源となるフォーカシングモータにより回転駆動されるスクリューシャフト18のスクリュー部に螺合する半月状の雌ネジ部11a,11bを両端部に有している。
なお、上記雌ネジ部11a,11bの間の部分は成形精度、または、ネジの逃げ部とするため、肉ヌスミが施されている。そして、雌ネジ部11a,11bと対向して該スクリュー部を挟持する板バネ12a,12bがキャリッジ11に一体的に固着されている。
更に、キャリッジ11は、装着状態で基準ガイド軸を跨ぐフォーク状の突起11c,11dを有している。更に、その突起11c,11dの光軸方向に対向してフォーク状の板バネ13が一体的に固着されている。また、上記突起11c側には、スクリューシャフト18の軸と交差する方向に付勢力を作用せしめる弾性体の板バネ14が固着されている。
【0019】
そして、図3に示すように、キャリッジ11のレンズ保持枠15との組み付け状態では、上記板バネ13とキャリッジ突起11c,11dは、レンズ保持枠15のスリーブ部に設けられた、キャリッジ11との係合部となる光軸方向の当接部15c,15dに当接して嵌挿されている。また、図2に示すように、上記板バネ14は、基準ガイド軸16と交差する方向に付勢した状態で、レンズ保持枠15のスリーブ部の光軸と直交する方向に設けられる受圧部15bに当接しいる。そして、その付勢力によりキャリッジ11の突起11cは上記基準ガイド軸16と当接した状態になる。
【0020】
以上のように構成された本実施例のレンズ駆動機構のレンズ駆動動作は、スクリューシャフト18がフォーカシングモータによって回転駆動されると、そのスクリュー部に螺合するキャリッジ11が光軸方向に進退する。そして、キャリッジ11は、レンズ保持枠15をその当接部15c,15dを介して光軸方向に進退駆動させる。
そして、本レンズ駆動機構においては、被駆動部材であるレンズ保持枠15が板バネ13の付勢力によりキャリッジ11に対して光軸方向のガタのない状態で駆動される。また、板バネ14がレンズ保持枠15の受圧部15bを付勢することにより、キャリッジ11のスクリューシャフト18の軸回りのガタがなくなり、同時に基準ガイド軸16とレンズ保持枠15の嵌入孔とのガタもない状態となる。更には、キャリッジ11がスクリューシャフト18のスクリュー部に対して板バネ12a,12bの2箇所で支持されることからキャリッジ11の光軸方向の位置ずれも規制される。
【0021】
また、組立についても、キャリッジ11をレンズ保持枠15に嵌挿する場合、キャリッジ11の突起11cと11dの間に前記基準ガイド軸16を挿入しながら、板バネ13,14を挿入しなければならないが、突起11cと11dの間は該軸16より広く、更に、板バネ13,14の先端を斜めに形成しているので簡単に組み立てることができる。更には、従来例のもののように回転規制ガイド軸の嵌入の手間もなく、非常に組立性が改善される。
このように本駆動機構においては、回転規制専用の軸部材等を設けることなく、キャリッジの回転規制やガタ取りが行われ、しかも、スリップスティック等の現象も生じることなく、精度の高いレンズの進退駆動が実行される。そして、上記回転規制用の軸部材等を不要とすることから、組立工数上、スペ-ス上も有利になる。
【0022】
図4は、本考案の第2実施例を示すレンズ駆動機構の縦断面を示したものである。
本実施例のレンズ駆動機構は、前記第1実施例のものに対して、キャリッジの回転規制用のガイド軸を追加して設けている点が異なる。即ち、図4に示すようにスクリューシャフト28に螺合するキャリッジ21には、光軸方向に支持される回転規制用のガイド軸29が摺動自在に嵌入されている。
その他の構成は、前記第1実施例のものと同様であり、キャリッジ21には、スクリューシャフト28を半月状の雌ネジ部とで挟持する板バネ22と、レンズ20を保持するレンズ保持枠25のスリーブ部に設けられた受圧部25aに対して、スクリューシャフト28の軸方向と交差する方向に付勢力を与える弾性体の板バネ24と、更に、レンズ保持枠25との係合部には、光軸方向のガタ取りのための付勢力を与える図示しない板バネを有している。なお、レンズ保持枠25は、基準ガイド軸26と、回転規制ガイド軸27により光軸方向に摺動自在に支持されるものとする。
【0023】
以上のように構成された本実施例のレンズ駆動機構の動作、および、その特徴は、前記第1実施例のものと同様であるが、特に本実施例のものでは、板バネ24,ガイド軸29,スクリューシャフト28を図4に示す配置とすることにより、キャリッジ21の回転方向の付勢用の板バネ24の付勢力が、スクリューシャフト28のスクリュー部をキャリッジ21の雌ネジ部が押圧するように作用することになる。従って、該スクリュー部と該雌ネジ部の隙間がなくなることになる。また更に、板バネ24の付勢力は、レンズ保持枠25をスクリューシャフト28と交差する方向に付勢するので、第1実施例のものと同様にレンズ保持枠25と基準ガイド軸26のガタ取りもなされることになる。このように本実施例のレンズ駆動機構は、更に精度の高いレンズ保持枠の駆動機構といえるものである。
【0024】
【考案の効果】
上述のように本考案のレンズ駆動機構は、キャリッジと鏡枠間にスクリューシャフトの軸方向と交差する方向に付勢される弾性体を配設したので、キャリッジのスクリューシャフト回りのガタのない状態で鏡枠の高精度の駆動を可能とする。更に、基準ガイド軸と鏡枠の嵌入孔とのガタも少なくすることができるので光学特性上有利である。」(第8頁第22行?第11頁末行)

前記記載事項と図面の記載からみて、引用例1には、
「レンズを保持し該レンズの光軸方向と平行な方向に伸長した基準ガイド軸(26)に案内されて摺動自在なレンズ保持枠(25)と、上記光軸方向と平行な方向に伸長したガイド軸(29)に案内されて移動しながら上記レンズ保持枠(25)を上記光軸方向に移動させるキャリッジ(21)とからなるレンズ移動機構において、
前記キャリッジ(21)は、レンズ保持枠(25)に対して、スクリューシャフト(28)の軸方向と交差する方向に付勢力を与える板バネ(24)を有し、レンズ保持枠(25)と基準ガイド軸(26)のガタ取りがなされることを特徴とするレンズ移動機構の構造。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)対比
引用発明における「基準ガイド軸(26)」、「レンズ保持枠(25)」、「ガイド軸(29)」、及び「キャリッジ(21)」は、本願発明の「ガイド棒」、「レンズ枠」、「案内棒」、及び「移動コマ」にそれぞれ相当するものであり、引用発明における「板バネ(24)」と押付手段とは上位概念で一致する。
また、引用発明の板バネを有することと、本願発明の一体の板バネであることは、固定されている板バネである点で一致する。
本願発明と引用発明とを対比すると、「レンズを保持し該レンズの光軸方向と平行な方向に伸長したガイド棒に案内されて摺動自在なレンズ枠と、上記光軸方向と平行な方向に伸長した案内棒に案内されて移動しながら上記レンズ枠を上記光軸方向に移動させる移動コマとからなるレンズ移動機構において、
前記移動コマに該移動コマに固定された板バネからなり、その付勢力を前記レンズ枠に付勢させて、該レンズ枠を前記ガイド棒に押し付ける押付手段を設けたことを特徴とするレンズ移動機構の構造。」で両者の構成は一致し、次の点で両者の構成は相違する。

相違点(A):
本願発明は、移動コマと板バネが一体であるのに対して、引用発明は、移動コマが板バネを有する点。

相違点(B):
本願発明は、板バネの付勢力をレンズ枠の外側から付勢させているのに対して、引用発明は、板バネ(24)の付勢力をレンズ枠〔レンズ保持枠(25)〕のスリーブに設けられた受圧部(25a)から付勢させている点。

(3)判断
相違点(A)について:
移動コマに板バネが固定されている点では、本願発明も引用発明も同じであり、一体としたことによる格別の作用・効果を奏するとも認められないので、本願発明のように移動コマと板バネを一体とすることは、引用発明の単なる設計変更にすぎない。

相違点(B)について:
板バネがレンズ枠を付勢・押圧することで、レンズ枠とガイド棒のガタを防止することでは、本願発明も引用発明も同じであるので、板バネの付勢力を、本願発明のようにレンズ枠の外側から付勢させるか、引用発明のように、レンズ枠のスリーブに設けられた受圧部(25a)から付勢させるかは、レンズ枠の形状に伴い、当業者が容易にできる設計変更にすぎない。

そして、相違点(A)、(B)における本願発明の構成による効果は、引用例1の記載から予測される範囲のものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-18 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-27 
出願番号 特願平6-279761
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 吉美森口 良子  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 柏崎 正男
青木 和夫
発明の名称 レンズ移動機構の構造  
代理人 望月 秀人  
代理人 望月 秀人  

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