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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1148996
審判番号 不服2004-18111  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-02 
確定日 2006-12-07 
事件の表示 特願2000-389724「表示器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月24日出願公開、特開2001-228812〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年5月23日に出願した特願平7-123878号の一部を平成12年12月22日に新たな特許出願としたものであって、平成16年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月1日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「光源および平面部に凹状または凸状の光取出体を有する導光板を備えた面照明装置と、該面照明装置の平面部の一側に重ね合わされた図柄表示板と、前記平面部の他側に配された反射板とが設けられ、前記図柄表示板は、光が透過する光透過部と光が透過しない光不透過部とを有し、前記光透過部は、前記導光板から出射された光が通過するとともに外部から照射された光が前記導光板に入射した後、再び外部に出射するように、透明または貫通孔とされ、前記光不透過部の前記導光板と対向し導光板から出射された光が当たる側面は反射面とされ、その反対側に位置し外部から照射された光が当たる側面は可視光に対して低反射率の散乱面とされたことを特徴とする表示器。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明の構成要件である「光取出体」について、「凹状または凸状の」と限定し、「面照明装置の平面部の一側の図柄表示板」について、「面照明装置の平面部の一側に重ね合わされた」と限定し、「光透過部」について、「導光板から出射された光が通過するとともに外部から照射された光が前記導光板に入射した後、再び外部に出射するように」と限定したものであって、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
(a)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-115922号(実開平2-36885号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「表示用シート10は粘着糊11と熱接着テープ12を介して積層配置された透光性シート13と、光不透過シート14とで構成され、その上下端縁には位置決め用の切欠凹部15が形成されている。
前記透光性シート13は、厚さ0.3mm程度の透明なポリエステルまたはポリカーボネートシートによって形成される」(第4頁第4?11行)
イ.「前記光不透過シート14は、厚さ0.1mm程度の黒色ポリエステルシート,紙等で形成され、その表面が艶消処理され、かつデザインガイド用の格子縞16と、上下方向を示す矢印および文字17が黒色艶有インクによつて印刷表示されている。」(第4頁第17行?第5頁第1行)
ウ.「このような構成からなる表示用シート10を表示装置に組込み使用する場合は、自分の好みの文字,マーク,絵柄等、例えば「JA2FYO」の文字18を格子縞16をガイドして鉛筆等の筆記具で書く。この場合、光不透過シート14は艶消処理されているので、文字18を書き易くし、また外光反射を少なくするため、昼間の見え方を良好にする。」(第5頁第14行?第6頁第1行)
エ.「次に、カツター20により文字18の輪郭線に沿つて切れ目を入れる。この時の切れ目の深さは、熱接着テープ12を完全に切り取れ、透光性シート13の接合面、すなわち粘着糊11が塗布されている面にまで達する深さとされる。そして、光不透過シート14の文字部分18をその切れ目に沿つて剥すと、該文字部分に対応する熱接着テープ12も剥れて透光性シート13が露呈し、透光性の表示部21を形成する。」(第6頁第8?16行)
オ.「すべての文字18を剥した後、アイロンで表示用シート10を加熱加圧することにより、粘着糊11と熱接着テープ12により透光性シート13と光不透過シート14とを一体的に接合し、もつて表示用シート10の製作を終了する。」(第7頁第5?9行)
カ.「これらの図において、オーナーズマークランプ30は、左右方向に長い浅箱形のケース31と、このケース31の前面開口部32を被うカバー33とを備え、これらケース31およびカバー33間に形成された密閉空間内に左右一対の光源34A,34Bと、導光体35と、表示用シート10(10A,10B)等を収納配置して構成したものである。」(第7頁第16行?第8頁第2行)
キ.「前記導光体35は前記一対の光源34A,34B間に配設されるもので、表面が平坦面をなし、裏面が略V字状に折曲されることにより第5図に示すように左右両端部の板厚が最も厚く、中央部に向うにしたがつて徐々に薄くなるように形成され、また両側端面には半円形の溝からなる入光部44が前記各光源34A,34Bにそれぞれ対応して形成され、さらに裏面には小さなV字状凹部からなる無数の点刻45が形成されている。点刻45は各入光部44から導光体35内に入射した各光源34A,34Bからの光を前方に反射させるもので、前記入光部44より導光体35の裏面中央に至るにしたがつて点刻密度が徐々に増大し、単位面積当りの照射量が各部一定になるようにしている。」(第9頁第1?14行)
キ.「前記表示用シート10は第1図?第3図に示したもので、表示文字の異なる例えば2つのシート10A,10Bで構成され、そのいずれか一方が前記ケース31内に選択的に組込まれ、前記カバー33と前記導光体35とで挾持される。」(第9頁末行?第10頁第4行)
ク.第1図から、光不透過シート14の文字部分18が剥がされ、透光性シート13が露呈する表示部21と、光不透過シート14が残存する残存部が看取できる。
ケ.第5図から、平坦部である導光体(符号15は符号35の誤記と認める。)の表面側に表示用シート10が重ね合わされていることが看取できる。

上記刊行物1の光源34A,34Bと導光体35で表示用シート10を照射しているから、光源34A,34Bと導光体35は、面照明装置と認められ、記載イ.に、光不透過シート14は黒色で艶消処理され、記載ウ.に外光反射を少なくするため、昼間の見え方を良好にする旨記載されており、昼間には外部から照射される光が存在するから、該外部から照射される光により、表示部21の方が残存部より明るく視認されることは明らかである。また、表示部21は透光性シート13が露呈し、記載ア.には透光性シート13が透明なポリエステルシートであることが記載されているから、透明であることは明らかである。よって、上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「光源34A,34Bおよび略V字状に折曲された裏面にV字状凹部からなる点刻45を有する導光体35を備えた面照明装置と、該面照明装置の平坦部である導光体35の表面側に重ね合わされた表示用シート10と、前記表示用シート10は、透光性の表示部21と残存部とを有し、前記表示部21は、前記導光体35から出射された光が通過するとともに、外部から照射された光で残存部より明るく視認され、透明とされ、前記残存部の外部から照射された光が当たる側面は黒色で艶消処理されたオーナーズマークランプ30。」

(b)原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-85588号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
コ.「第1図および第2図において、色部材1は赤色で矩形の透明色板である。但し、この色部材としてセロハン紙等の他の透明な部材を用いても良い。
この色部材1の手前には黒色の表示部材2が配設されている。この実施例ではこの表示部材2は前記色部材1の表面に密着形成した薄い樹脂膜でなる。この表示部材2には例えば第1図に示すような文字等の図柄2aがヌキ形成されている。すなわち、この図柄2a部分では前記色部材1が正面側に露出している。尚、前記表示部材2は樹脂あるいは金属等でなる板あるいはシートであってもよいが、いずれにしても色部材1に貼着等の手段により付設させておくことが好ましい。
前記色部材1の後方には白色の反射部材3が配設されている。この反射部材3も前記表示部材2と同様、色部材1の表面に密着形成した薄い樹脂膜でなる。そして、この反射部材3には、第3図に示すように、前記表示部材2に形成された図柄2aと同一の図柄3aがヌキ形成されている。そして、この反射部材3は、自身に形成された図柄3aが表示部材2の図柄2aと重なるようにして前記色部材1に付設されている。」(第2頁右下欄第1行?第3頁左上欄第2行)
サ.「反射部材3の後方に導光板5が配設されている。この導光板5は側方から導入した光を正面において均一に照射するものである。図示例の導光板5は、両面が斑点面であるアクリル板5aの正面に光拡散シート5bを重合しているとともに、背面には白色あるいは白色系統に塗装された反射板6を重合してなる。」(第3頁左上欄第11?17行)

(3)対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「V字状凹部からなる点刻45」、「導光体35」、「表示用シート10」、「透光性の表示部21」、「残存部」、「オーナーズマークランプ30」は、それぞれ本願補正発明の「凹状または凸状の光取出体」、「導光板」、「図柄表示板」、「光が透過する光透過部」、「光が透過しない光不透過部」、「表示器」に相当し、刊行物1記載の発明の「面照明装置の平坦部である導光体35の表面側」は、本願補正発明の「面照明装置の平面部の一側」に相当し、刊行物1記載の発明の「黒色で艶消処理され」ることは、本願補正発明の「可視光に対して低反射率の散乱面とされ」ることに相当するから、両者は、
「光源および凹状または凸状の光取出体を有する導光板を備えた面照明装置と、該面照明装置の平面部の一側に重ね合わされた図柄表示板と、前記図柄表示板は、光が透過する光透過部と光が透過しない光不透過部とを有し、前記光透過部は、前記導光板から出射された光が通過するとともに、透明とされ、前記光不透過部の外部から照射された光が当たる側面は可視光に対して低反射率の散乱面とされた表示器。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]光取出体が設けられる面に関し、本願補正発明は、平面部に設けられるのに対し、刊行物1記載の発明は、略V字状に折曲された裏面に設けられる点。
[相違点2]本願補正発明は、図柄表示板が重ね合わされた平面部の他側に反射板が配されているのに対し、刊行物1記載の発明は、反射板についての明示がない点。
[相違点3]光不透過部に関し、本願補正発明は、導光板と対向し導光板から出射された光が当たる側面は反射面とされるのに対し、刊行物1記載の発明は、反射面についての明示がない点。
[相違点4]光透過部に関し、本願補正発明は、外部から照射された光が導光板に入射した後、再び外部に出射するのに対し、刊行物1記載の発明は、外部から照射された光で残存部より明るく視認されるものの本願補正発明のような明示がなされていない点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
導光板の光取出体を設ける面の形状をどのようにするかは必要に応じ適宜決定し得るものであり、刊行物2にも示されるように、平面部に光取出体(刊行物2記載の「斑点」が相当。記載サ.参照。)を設けることは周知技術でもあるから、該周知技術を適用し、本願補正発明の上記相違点1のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
刊行物1記載の発明において、面照明装置は、表示用シート10(本願補正発明の「図柄表示板」に相当。)を照射するものであり、光源からの光を有効に表示用シート10に照射することは、自明の課題である。照射面の反対側から出る光が照射に利用されなければ無駄であるので、その光を照射に有効に利用しようとすることは当然想到することであり、照射面の反対側に反射板を設けることは刊行物2に記載されているから、該事項を刊行物1記載の発明の適用し、本願補正発明の上記相違点2のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点3について検討する。
面照明装置の光源からの光を有効に表示用シート10に照射することが自明の課題であることは、前述のとおりであり、面照明装置から光不透過部へ照射する光が吸収されてしまうと無駄であるので、その光を照射に有効に利用しようとすることは当然想到することであり、刊行物2には、図柄2aをヌキ形成後の表示部材2と透明な色部材1からなる残存部(本願補正発明の「光不透過部」に相当。)の導光板と対向し導光板から出射された光が当たる側面に反射部材3を設ける(同「反射面とする」に相当)ことが記載されているから、該事項を刊行物1記載の発明の適用し、本願補正発明の上記相違点3のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点4について検討する。
刊行物1記載の発明の表示部21(本願補正発明の「光透過部」)は、透明であるから、外部から照射された光は表示部を通過し、導光板に入射することは明らかである。導光板の図柄表示板と反対側に反射板が配したり、光不透過部の導光板側に反射面を設ければ、導光板に入射した光は、反射を繰り返すうちに再び外部に出射することは明らかである。そうすると、相違点4は、相違点2、3の結果生ずることであり、相違点2、3は、いずれも光源からの光の有効利用に関するものであるから、いずれをも採用することは当業者が容易になし得る程度のことであり、その結果、相違点4は必然的に生じる機能を表現したものにすぎないものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1、2記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年10月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年7月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「光源および平面部に光取出体を有する導光板を備えた面照明装置と、該面照明装置の平面部の一側に配された図柄表示板と、前記平面部の他側に配された反射板とが設けられ、前記図柄表示板は、光が透過する光透過部と光が透過しない光不透過部とを有し、前記光透過部は透明または貫通孔とされ、前記光不透過部の前記導光板と対向し導光板から射出された光が当たる側面は反射面とされ、その反対側に位置し外部から照射された光が当たる側面は可視光に対して低反射率の散乱面とされたことを特徴とする表示器。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「光取出体」についての限定事項である「凹状または凸状の」との構成を省き、面照明装置と図柄表示板の配置状態についての限定事項である「重ね合わされた」との構成を省き、「光透過部」についての限定事項である「導光板から出射された光が通過するとともに外部から照射された光が前記導光板に入射した後、再び外部に出射するように」との構成を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する構成要件を全て含み、さらに他の発明を特定する構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-05 
結審通知日 2006-10-10 
審決日 2006-10-23 
出願番号 特願2000-389724(P2000-389724)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 長島 和子
島▲崎▼ 純一
発明の名称 表示器  
代理人 後藤 誠司  
代理人 大島 泰甫  
代理人 稗苗 秀三  

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