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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1149000
審判番号 不服2004-18652  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-09 
確定日 2006-12-11 
事件の表示 平成 7年特許願第158429号「道路交通情報通信システム用車載アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開,特開平8-330834〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
出願日: 平成 7年 5月31日
拒絶査定日:平成16年 8月 2日
審判請求日:平成16年 9月 9日
手続補正書:平成16年10月12日

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成16年10月12日付けの手続補正は,特許請求の範囲の請求項1(以下「補正発明」という。)を次のように補正することを含むものである。

「道路交通情報通信システム用の電波の受信を行う為のアンテナ本体に,該アンテナ本体を自動車の車体に取付ける為の取付部材を付設している道路交通情報通信システム用車載アンテナにおいて,
上記アンテナ本体はループアンテナの形態に構成された放射器を保持する為の保持体と,その保持体に内蔵又は保持体の表面に付着させたループアンテナの形態に構成された放射器とから構成すると共に,上記アンテナ本体は自動車の装飾用付属品の外観に構成し,
自動車の車体に対しては,上記ループアンテナの形態に構成された放射器が,上記車体に取付ける取付部材でもって下側から支えられる状態に装着されるようにしてあり,車体内に備えさせた同軸ケーブルにおける端部に備えさせる中心導体及び外部導体は,上記車体に設けた透孔よりも上方の外部に位置する放射器の二つの接続部に対して夫々接続してあることを特徴とする道路交通情報通信システム用車載アンテナ。」(下線部は,補正箇所。)

2.新規事項の有無,補正の目的要件について
上記補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内になされたものであるから,平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に適合している。
また,上記補正は次の限定を付加するものであるから,同法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
ア.「車体内に備えさせた同軸ケーブルにおける端部に備えさせる中心導体及び外部導体は,上記車体に設けた透孔よりも上方の外部に位置する放射器の二つの接続部に対して夫々接続してある」

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,上記補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.1 補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

3.2 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特表平3-501433号公報(以下「引用例」という。)には,「自動車の無線装置」の発明に関し,図面(第4A図,第4B図)とともに次の事項A?Cが記載されている。

・摘記事項A (2頁右下欄23行?3頁左上欄12行)
「本発明の主要な目的は,アンテナ装置が,美しい,あるいは装飾装置としての外観を持ち,アンテナ装置を自動車の外面の前方の位置に配置することのできる,移動無線システムを提供することにある。・・[中略]・・
もう一つの目的は,すでに完成した自動車に取り付けられて,美しい外観を損なうことなく,そして,アンテナの機能をかくすために装飾装置の形で取り付けられる,移動無線用アンテナ装置を提供することにある。
本発明の特徴は,自動車で伝統的に使われる前頭部に取り付けられる装飾装置の形状をした移動無線システムのアンテナで,アンテナとしての機能が匿されているものを提供する点にある。」

・摘記事項B (4頁左上欄15行?同頁左下欄21行)
「第4A図と第4B図は,基本的には巧く動作している装飾アンテナ・システムに対応するものであるが,若干の改善がなされている。装飾部品14は,・・[中略]・・ 固定された台座14-1,装飾部品の柱脚14-2,装飾部品の全体構造14-3から組み立てられている。・・[中略]・・
装飾部品14-3は,格子12および自動車の全体のプロポーションと輪郭に美的観点から調和するようにデザインされている。・・[中略]・・
部品14-1および一体となった部品14-2とl4-3は,それぞれ,すべての外部表面に,艶のある厚い金属コーティングが施され,その結果,フランジ14-2aと,台座14-1の上部の輪状の脚柱受け部表面は,通常の状態では,スプリング14-4によって,良い導電性接点が得られるように,しっかりと押しつけられている。
装飾部品は,第4B図に示されるように,車両の横方向の壁15にあらかじめあけられている穴15aを貫通して伸びる。前面部の壁15は誘電絶縁体材料で形成されており,台座の上部の拡がった直径を持つ管状の端部14-1aは,壁15の外部の仕上げコーティング15bに,直接,収まるようになっている。さらに,台座部14-1は,穴15aにぴったりとはまりあう管状の軸部14-1bと,壁15の下部表面14cの下方にぶら下がる螺旋状の溝のついた管状部14-1cを持つ。
図示されている本発明の実施例にしたがって商品として提供される自動車に適用するためには,第4B図に示されるように,一対の電気的導電性のグランド平板ストリップ31と32が,誘電体でできた横方向の壁15の下側表面15cで,穴15aの両側に取り付けられている。特に,裏に接着剤のついた銅のシートが使用され,その接着剤の層は33と34で示されている。
実際に装備された最初の例では,フレキシブル同軸ケーブル22の中心導体38の延長部が台座14-1の周りにラップして固定され,台座は誘電体製の横方向の壁15の下方表面15cの下に突き出し,台座14-1の外部に施されている金属コーティングに恒久的な電気接触を行うようになっている。ストリップ31と32で形成されるグランド平板よりも上部にある装飾部品14の電気的導電性表面は,800MHzのバンドの送受信無線信号の効果的なアンテナとして機能することかわかる。同軸ケーブル22との結合は,中心導体38とアンテナの金属表面の接続,およびケーブルのフレキシブルな外側導体の鞘39とグランド平板ストリップ31と32との接続によって行われる。」

・摘記事項C (5頁左下欄5,6行)
「音声およびデータ信号は,825MHzから845MHzの周波数帯域の電波によって伝達される。」

上記摘記事項Bに記載された,台座部14-1における,「穴15aにぴったりとはまりあう管状の軸部14-1bと,壁15の下部表面14cの下方にぶら下がる螺旋状の溝のついた管状部14-1c」等は,アンテナを取り付けるための取付部材であると言える。

したがって,上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると,上記引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「電波を送受信するアンテナの機能を有し,車両の横方向の壁に取り付けるための取付部材を備える自動車の移動無線用アンテナにおいて,
上記アンテナは自動車の装飾装置としての外観を持ち,自動車の外面の前方に配置され,アンテナの機能を有する装飾装置の下方が,車両の横方向の壁に収まり,はまりあって,取付部材で取り付けられており,
車体内の同軸ケーブルの中心導体がアンテナの金属表面に接続され,外側導体がグランド平板ストリップに接続された,移動無線用のアンテナ。」

3.3 対比・判断
補正発明と引用発明を対比すると,引用発明の「アンテナ」は,放射器であり,かつ,アンテナ本体であると言える。また,引用発明の「アンテナの機能を有する装飾装置の下方が,車両の横方向の壁に収まり,はまりあって,取付部材で取り付けられて」いることから,放射器が,車体に取付ける取付部材でもって下側から支えられる状態に装着されていると言える。

したがって,両者の一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「電波の受信を行う為のアンテナ本体に,該アンテナ本体を自動車の車体に取付ける為の取付部材を付設している車載アンテナにおいて,
上記アンテナ本体は自動車の装飾用付属品の外観に構成し,
自動車の車体に対しては,放射器が,上記車体に取付ける取付部材でもって下側から支えられる状態に装着されるようにしてあり,車体内に備えさせた同軸ケーブルの端部の中心導体が放射器の接続部に接続してあることを特徴とする車載アンテナ。」

<相違点1>
補正発明のアンテナ及びアンテナ本体は「道路交通情報通信システム用」であるのに対し,引用発明は「移動無線用」である点。
<相違点2>
放射器に関して,補正発明は「ループアンテナ」であるのに対し,引用発明は,ループアンテナではない点。
<相違点3>
補正発明は「放射器を保持する為の保持体」を有するに対し,引用発明は,該保持体を有さない点。
<相違点4>
補正発明は「車体内に備えさせた同軸ケーブルにおける端部に備えさせる中心導体及び外部導体は,上記車体に設けた透孔よりも上方の外部に位置する放射器の二つの接続部に対して夫々接続してある」のに対し,引用発明においては,中心導体は,放射器であるアンテナに接続されているものの,外側導体(外部導体)は,グランド平板ストリップに接続されている点。

上記相違点について検討する。
<相違点1について>
引用発明のアンテナを,「道路交通情報通信システム用」の電波の受信に用いることは,当業者が必要に応じて適宜なし得る事項にすぎない。

<相違点2,3について>
自動車用のアンテナとして,ループアンテナを使用する点は,特開平5-291809号公報,実願平4-89721号(実開平6-48208号)のCD-ROM,特開昭62-102605号公報,特開昭62-112404号公報,実願平5-54448号(実開平7-20706号)のCD-ROM,実願昭63-20181号(実開平1-124704号)のマイクロフィルムのそれぞれに記載されたように,周知技術である。また,上記各周知例においても,ループアンテナを絶縁板等の基板に固定しているから,ループアンテナつまり放射器を保持(付着)する保持体を備えることも周知技術であり,これら周知技術を引用発明に適用する上で,特段の阻害要因も見あたらないから,引用発明において,ループアンテナを採用し,保持体で保持することは,当業者が容易に想到し得るものである。

<相違点4について>
車体に設けた穴から,同軸ケーブルを通し,車体の上部に取りつけたループアンテナ等の放射器と接続することは,特開平2-86201号公報,特開平4-372208号公報に記載されたように,周知技術であり,また,ループアンテナの接続部に対して,同軸ケーブルの中心導体と外部導体のそれぞれを接続することも,ループアンテナの給電における常套手段(前掲の特開昭62-102605号公報,前掲の特開平2-86201号公報)であるから,引用発明において,上記相違点2,3で検討したループアンテナを採用した際に,ループアンテナ(放射器)の接続において「車体内に備えさせた同軸ケーブルにおける端部に備えさせる中心導体及び外部導体は,上記車体に設けた透孔よりも上方の外部に位置する放射器の二つの接続部に対して夫々接続」することは,当業者が普通になし得る程度のことである。

そして,補正発明の作用効果も,引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

したがって,補正発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.4 むすび
以上のとおり,本件手続補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項〔独立特許要件〕の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項〔補正却下〕の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成16年10月12日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成16年6月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「道路交通情報通信システム用の電波の受信を行う為のアンテナ本体に,該アンテナ本体を自動車の車体に取付ける為の取付部材を付設している道路交通情報通信システム用車載アンテナにおいて,
上記アンテナ本体はループアンテナの形態に構成された放射器を保持する為の保持体と,その保持体に内蔵又は保持体の表面に付着させたループアンテナの形態に構成された放射器とから構成すると共に,上記アンテナ本体は自動車の装飾用付属品の外観に構成し,自動車の車体に対しては,上記ループアンテナの形態に構成された放射器が,上記車体に取付ける取付部材でもって下側から支えられる状態に装着されるようにしてあることを特徴とする道路交通情報通信システム用車載アンテナ。」

2.引用発明
引用発明は,上記「第2 補正却下の決定」の「3.2 引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」で検討した補正発明において,「車体内に備えさせた同軸ケーブルにおける端部に備えさせる中心導体及び外部導体は,上記車体に設けた透孔よりも上方の外部に位置する放射器の二つの接続部に対して夫々接続してある」との限定を削除したものである。

そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加又は限定した補正発明が,上記「第2 補正却下の決定」の「3.3 対比・判断」の項に記載したとおり,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-26 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-16 
出願番号 特願平7-158429
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右田 勝則  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 小林 紀和
中木 努
発明の名称 道路交通情報通信システム用車載アンテナ  
代理人 中島 知子  
代理人 佐竹 弘  

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