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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1149282
審判番号 不服2004-8954  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-30 
確定日 2006-12-21 
事件の表示 平成7年特許願第86772号「弁装置および弁装置を有する薬液供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年11月1日出願公開、特開平8-285125〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年4月12日の出願であって、平成16年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月31日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成16年5月31日付けの手続補正(明細書についての手続補正であって、以下、「本件補正」ともいう。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年5月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、
「薬液貯留槽に収容された薬液が第1流路を介して流入し、薬液吐出部に第2流路を介して薬液を流出するポンプ室を備えたポンプと、前記第1流路を開閉する第1弁体と、前記第2流路を開閉する第2弁体とを有する薬液供給装置に設けられる弁装置であって、
前記第2弁体を収容する弁室と、前記弁室内に薬液が流入する流入側流路と、前記弁室から薬液が流出するとともに前記流入側流路とにより前記第2流路を形成する流出側流路とをバルブハウジングに設け、
前記第2弁体の内部に従動側の磁石を組み込み、
前記従動側の磁石に磁界を作用させて前記第2弁体を開位置と閉位置とに設定するとともに、前記第1弁体により前記第1流路が閉じられた状態のもとで前記ポンプ室を膨張させてサックバックを行うときに第2弁体を開く駆動手段を前記バルブハウジングに設けることを特徴とする弁装置。」と補正された。

2.補正の適否についての当審の判断
本件補正後の請求項1の記載と、本件補正前の請求項1の記載とを対比すれば、本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1に、「薬液貯留槽に収容された薬液が第1流路を介して流入し、薬液吐出部に第2流路を介して薬液を流出するポンプ室を備えたポンプと、前記第1流路を開閉する第1弁体と、前記第2流路を開閉する第2弁体とを有する薬液供給装置に設けられる弁装置であって、」という限定と、「前記流入側流路とにより前記第2流路を形成する流出側流路」という限定と、「前記第1弁体により前記第1流路が閉じられた状態のもとで前記ポンプ室を膨張させてサックバックを行うときに第2弁体を開く駆動手段」という限定を加えることにより、実質的に、補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項の範囲を超える新たな構成要件を備えるものとなった。
してみれば、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において、補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものとは認められないから、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第3項第2号に適合せず、また、同項の他の各号にも適合しないことが明らかである。

3.むすび
以上のとおりであって、平成16年5月31日付けの手続補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について
平成16年5月31日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成15年8月25日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「請求項1】 流体が流入する流入側流路と流体が流出する流出側流路を有するバルブハウジングと、
前記流入側流路と前記流出側流路とを接続する弁室内に配置され流路を開閉する弁体と、
前記弁体内の内部に組み込まれた従動側の磁石と、
前記従動側の磁石に磁界を作用させて前記弁体を開位置と閉位置とに設定する駆動手段とを有することを特徴とする弁装置。」

【4】引用刊行物およびその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された実願昭46-119931号(実開昭48-74321号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には「磁石弁」に関して、第1,2図とともに以下の記載がある。
A)「1は縦円筒状の弁箱であつて、その周壁下部に給入口2を突設するとともに、その底壁中央部に送出口3を突設し、該送出口3の基部に形成した弁受座6にOリング7を嵌着し、弁箱1の上壁下面の中央部から有底円筒隔壁4を弁箱1内の弁室5の内部に一体的に侵入連出するとともに、該弁室5を給入口2と送出口3とを除いて完全気密状に形成する。弁室5内で、円筒隔壁4に外嵌する状態に位置させた有底筒状の弁子8を、その下端面の弁面9が送出口3に対向する状態で、上下摺動可能に設けるとともに、該弁子8の上半大径部に円筒隔壁4に外嵌する環状の従動永久磁石10を、その上面がN極となる状態に嵌着する。また、円筒隔壁4内に主動永久磁石11をその上面がN極となる状態で上下移動可能に挿入し、該主動永久磁石11を主動操作用フレキシブルワイヤー12の下端部に固着してなるものである。」(第2頁13行?第3頁9行)
B)「第1図は閉弁状態であり、主動磁石11が上方に引き上げられ、従動磁石10がこれに同極反撥して下方に押し下げられ、その反撥力により弁面9がOリング7に圧接している。この閉弁状態からワイヤー12を押し下げてゆくと、これにつれて下降する主動永久磁石11の磁力中心点11aが従動永久磁石10の磁力中心点10aを越えて下側に至るや否や両磁極11-10間の同極反撥方向が逆転し、従動永久磁石10が迅速に押し上げられて弁子が開弁状態となる。また、この開弁状態から閉弁状態に切換えるには、主動永久磁石11を元の上側位置に引き上げてその磁力中心点11aを従動永久磁石10の磁力中心点10aよりも稍上方に越えさせればよい。」(第3頁10行?第4頁3行)
C)「本考案磁石弁は上記の構成となつているから、主動永久磁石及びこれを作動させる主動操作具は弁室の外側で作動するものであり、弁室内に導入する必要がないので、その導入の為の透孔を省略して弁室を完全密閉状態にして、弁室からの流体漏れのおそれを皆無にすることができるうえ、主動永久磁石及び主動操作具を弁室に対して摺動気密を保つ必要が全くないから、その摺動気密保持のためのシール材の着用、点検、交換を省略できる。また、シール材による主動操作具の気密摺動摩擦がないから、その主動操作具を軽く操作できるうえ、両磁石間の反撥方向逆転作用でもつて弁子をシビヤーに迅速に開閉作動することができる。さらに、その構成は2つの永久磁石を弁室の内外に行き違い移動可能に相対応させて設けるだけでよいので、極めて簡単な構造にまとめあげることができ、これにより極めて安価に製造できるうえ、故障が発生するおそれが殆んどない優れた効果を有するものである。」(第4頁3行?第5頁2行)

上記A)?C)の記載と第1,2図とからみて、上記引用例の「磁石弁」は、流体が流入する給入口2側の流路と流体が流出する送出口3側の流路を有する弁箱1に、該給入口2側の流路と送出口3側の流路とを接続する弁室5が形成されるとともに、弁室5内に流路を開閉する弁子8が配置された弁装置であって、前記弁子8内に従動永久磁石10が組み込まれるとともに、弁箱1の上壁下面の中央部から弁室5に向けて形成された有底円筒隔壁4内に、前記従動永久磁石10に磁界を作用させて前記弁子8を開位置と閉位置とに設定する主動永久磁石11が、主動操作用フレキシブルワイヤー12により上下移動可能に挿入されているものと認められる。
そして、上記主動永久磁石11と主動操作用フレキシブルワイヤー12とは、協同して前記従動永久磁石10に磁界を作用させて前記弁子8を開位置と閉位置とに設定する駆動手段を構成していると認められるから、上記引用例には、
「流体が流入する給入口2側の流路と流体が流出する送出口3側の流路を有する弁箱1と、
前記給入口2側の流路と前記送出口3側の流路とを接続する弁室5内に配置され流路を開閉する弁子8と、
前記弁子8内に組み込まれた従動永久磁石10と、
前記従動永久磁石10に磁界を作用させて前記弁子8を開位置と閉位置とに設定する駆動手段とを有する弁装置。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

【5】本願発明と引用例記載の発明との対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すれば、引用例記載の発明の「給入口2側の流路」は本願発明の「流入側流路」に対応しており、以下同様に「送出口3側の流路」は「流出側流路」に、「弁箱1」は「バルブハウジング」に、「弁室5」は「弁室」に、「弁子8」は「弁体」に、「従動永久磁石10」は「従動側の磁石」に、それぞれ対応している。
したがって、本願発明と引用例記載の発明は、
「流体が流入する流入側流路と流体が流出する流出側流路を有するバルブハウジングと、
前記流入側流路と前記流出側流路とを接続する弁室内に配置され流路を開閉する弁体と、
前記弁体内に組み込まれた従動側の磁石と、
前記従動側の磁石に磁界を作用させて前記弁体を開位置と閉位置とに設定する駆動手段とを有する弁装置。」
である点で一致し、以下の相違点で相違しているものと認める。
<相違点>
本願発明の従動側の磁石は、弁体内の内部に組み込まれているのに対し、引用例記載の発明の従動側の磁石である従動永久磁石10は、弁体である弁子8内に組み込まれてはいるものの、弁子8内の内部に組み込まれているようには構成されていない点。

【6】相違点の検討
弁体内に組み込まれた従動側の磁石に磁界を作用させて、弁体を開位置と閉位置とに移動させる弁装置において、該従動側の磁石を弁体内の内部に組み込むようにすることは、原査定において周知の手段であるとして引用された、特開平4-136580号公報にみられるように従来周知技術である。
してみれば、引用例記載の発明において、弁体内に組み込まれた従動側の磁石である弁子8内に組み込まれた従動永久磁石10を、弁子8内の内部に組み込まれるように構成することは、引用例記載の発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。

そして、本願発明が奏する作用効果は、上記引用例記載の発明と上記周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。

【7】むすび
以上詳述したとおり、本願発明は、上記引用例記載の発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、本願の請求項2?6に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-23 
結審通知日 2006-10-24 
審決日 2006-11-08 
出願番号 特願平7-86772
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
P 1 8・ 572- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三澤 哲也  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 山内 康明
ぬで島 慎二
発明の名称 弁装置および弁装置を有する薬液供給装置  
代理人 筒井 大和  

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