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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1149288 |
審判番号 | 不服2004-12780 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-12-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-22 |
確定日 | 2006-12-21 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第139037号「ネットワーク型教育システム、ネットワーク型教育システムのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、およびネットワーク型教育方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月18日出願公開、特開平10-333538〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成9年5月29日の出願であって,平成16年5月21日付けで拒絶の査定がされたため,これを不服として同年6月22日付けで本件審判請求がされるとともに,同年7月9日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成16年7月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり,補正後の請求項5に対応する補正前の請求項は請求項7であって,それぞれの記載は次のとおりである。この補正を本件補正事項という。 (補正前請求項7)コンピュータ・ネットワークを利用して複数の受講者を相手に講師が講義を行うネットワーク型教育システムのコンピュータプログラムを記録した記録媒体において, コンピュータを, 講義に関する受講者の理解度についてのアンケートを実行するアンケート実行手段, 前記受講者からのアンケートの応答データに含まれる理解度を集計し,前記理解度別の人数を画面表示する理解度データ表示手段, 前記理解度の基準値を画面上で設定可能にする理解度設定手段, 前記理解度のそれぞれに対応した復習教材が設定されている復習教材テーブル, 前記理解度設定手段によって設定された基準値以下の理解度で応答した前記受講者に前記復習教材テーブルに設定された前記理解度に対応する復習教材を提示する復習教材提示手段, として機能させるためのネットワーク型教育システムのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。 (補正後請求項5)コンピュータ・ネットワークを利用して複数の受講者を相手に講師が講義を行うネットワーク型教育システムのコンピュータプログラムを記録した記録媒体において, コンピュータを, 前記講義に関する前記受講者の理解度についてのアンケートを実行するアンケート実行手段, 前記アンケート実行手段により実行された前記理解度についてのアンケートに対する前記受講者の理解度を応答データとして出力するとともに前記受講者によって入力された前記講義に対するコメントを前記応答データに付加するように構成されたアンケート応答手段, 前記受講者からのアンケートの前記応答データに含まれる前記理解度を集計し,前記理解度別の人数を画面表示する理解度データ表示手段, 前記理解度の基準値を画面上で設定可能にする理解度設定手段, 前記理解度のそれぞれに対応した復習教材が設定されている復習教材テーブル, 前記理解度設定手段によって設定された基準値以下の理解度で応答した前記受講者に前記復習教材テーブルに設定された前記理解度に対応する復習教材を提示する復習教材提示手段, として機能させるためのネットワーク型教育システムのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。 2.補正目的 要するに本件補正事項は,記録媒体に記録したプログラムが,「前記アンケート実行手段により実行された前記理解度についてのアンケートに対する前記受講者の理解度を応答データとして出力するとともに前記受講者によって入力された前記講義に対するコメントを前記応答データに付加するように構成されたアンケート応答手段」として機能させるためのプログラム(以下「本件補正プログラム」という。)を含む旨補正するものである。本件補正事項が,請求項削除,誤記の訂正または明りようでない記載の釈明の何れにも該当しないことは明らかである。 本件補正事項が,特許請求の範囲の減縮に該当するか検討する。特許法17条の2第4項2号は,「第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。」と定めている。補正前請求項7に係る発明は「コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」であるから,その発明は記録した「コンピュータプログラム」により特定される。 補正前請求項7では,記録した「コンピュータプログラム」を,「アンケート実行手段」として機能させるためのプログラム,「理解度データ表示手段」として機能させるためのプログラム,「理解度設定手段」として機能させるためのプログラム,「復習教材テーブル」として機能させるためのプログラム及び「復習教材提示手段」として機能させるためのプログラムであり,これら個別のプログラムが補正前請求項7を特定するのであり,本件補正プログラムはこれらプログラムの何れかを限定するものではない。すなわち,本件補正事項は「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」には該当しない。 加えて,補正前請求項7記載のプログラムはすべて「講師側プログラム」というべきものであるのに対し,本件補正プログラムは「受講者側プログラム」いうべきものである。願書に最初に添付した明細書には「教育システムのソフトウェアについては,講師側の端末装置21,および受講者側の端末装置31等がそれぞれ予め保持していてもよいし,あるいは講師側の端末装置21側からネットワーク10を介して送信するようにしてもよい。」(段落【0050】。下線は当審で付加。)との記載があり,この記載(特に下線部分)から講師側プログラムと受講者側プログラムを同一記録媒体に記録することが自明であることは認めることができるが,それは「受講者側プログラム」の配布形態を「ネットワーク10を介して送信」するためであるから,本件補正事項は課題を追加するものである。この点からも,本件補正事項は特許請求の範囲の減縮に該当しない。 以上のとおりであるから,本件補正事項を含む本件補正は,特許法17条の2第4項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反しているから,特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから,本願の請求項1?請求項3に係る発明(以下,順に「本願発明1」?「本願発明3」という。)は,平成15年12月16日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】?【請求項3】に記載された事項によって特定されるものと認めることができ,これら請求項の記載は次のとおりである。 【請求項1】コンピュータ・ネットワークを利用して複数の受講者を相手に講師が講義を行うネットワーク型教育システムにおいて, 講義に関する前記受講者の理解度についてのアンケートを実行するアンケート実行手段と, 前記受講者からのアンケートの応答データに含まれる前記理解度を集計し,前記理解度別の人数を画面表示する理解度データ表示手段と, 前記理解度の基準値を画面上で設定可能にする理解度設定手段と, 前記理解度のそれぞれに対応した復習教材が設定されている復習教材テーブルと, 前記理解度設定手段によって設定された基準値以下の理解度で応答した前記受講者に前記復習教材テーブルに設定された前記理解度に対応する復習教材を提示する復習教材提示手段と, を有することを特徴とするネットワーク型教育システム。 【請求項2】前記アンケート実行手段による前記理解度のアンケートに対して前記受講者の応答を前記応答データとして送信するアンケート応答手段を有することを特徴とする請求項1記載のネットワーク型教育システム。 【請求項3】前記アンケート応答手段は,前記受講者によって入力された前記講義に対するコメントを前記応答データに付加して送信するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のネットワーク型教育システム。 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-101633号公報(以下「引用例1」という。)には,以下のア?エの記載が図示とともにある。 ア.「近年,コンピュータの処理技術を利用したCAI装置が各種の教育や学習を行う上で広く使用されるようになった。」(段落【0002】) イ.「図8は従来例の構成図,図9は従来例の処理フローを示す図である。図8には従来のCAI装置のブロック構成が示され,CAI装置70内には学習内容の選択,理解度の診断,学習の進行の処理を行う学習診断プロセッサ71,教えようとする学習項目毎の各指導項目について学習の順番(進め方)を指示する診断プログラム72,各学習内容や診断評価のためのデータを含む学習データ73,MMI(マン・マシン・インタフェース)74,ディスプレイ等の表示装置75,キーボード等の入力装置76とが設けられている。」(段落【0005】) ウ.「学習データ73には学習項目についての各指導項目毎に解説,問題,問題解答の画面データや診断評価のためのデータが用意され,各学習の解説(説明)が表示装置75の画面に表示され,学習した内容に関する問題が表示されると学習者は入力装置76から解答(選択肢の番号や文字列)を入力する。」(段落【0006】) エ.「学習者に学習項目に対応する指導項目の学習データ73から解説や問題が取り出されて表示される(図9のS1)。問題に対する学習者の解答が正解かを識別する等により学習項目に対する理解度が判定され(同S2),判定結果で現在の学習項目の理解度を更新する(同S3)。次に現在までの理解度を参照して全ての学習項目が最終目標に達したか判定し(同S4),達したと判定されると学習を終了し(同S7),達しない場合は理解度と最終目標を元に学習項目を選択する(同S5)。次に学習項目と指導項目の持つ最終目標を元に指導項目を選択し(同S6),その解説や問題が表示される(同S1)。なお,この時指導項目が選択されても,その指導項目にはレベル等に応じて複数の項目が用意されており,その中から学習項目の理解度や指導目標を元に指導する価値のある指導項目(教材)が選択される。」(段落【0008】) 2.引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載イ?エは,従来技術としてのCAI装置の説明であり,そのCAI装置は次のようなものと認めることができる。 「学習内容の選択,理解度の診断,学習の進行の処理を行う学習診断プロセッサ,教えようとする学習項目毎の各指導項目について学習の順番(進め方)を指示する診断プログラム,各学習内容や診断評価のためのデータを含む学習データ,MMI(マン・マシン・インタフェース),ディスプレイ等の表示装置及びキーボード等の入力装置を備えたCAI装置であって, 問題に対する学習者の解答が正解かを識別する等により学習項目に対する理解度を判定し,理解度を参照して全ての学習項目が最終目標に達したか判定し,達したと判定されると学習を終了し,達しない場合は理解度と最終目標を元に学習項目を選択し,次に学習項目と指導項目の持つ最終目標を元に指導項目を選択し,その解説や問題を表示するCAI装置。」(以下「引用発明」という。) 3.本願発明1と引用発明との一致点及び相違点の認定 以下,本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。 引用発明では,学習者(本願発明1の「受講者」に相当)の理解度を診断し,理解度に基づいて,次の学習項目及び指導項目の解説や問題(本願発明1の「教材」に相当)を選択している。理解度がかんばしくない場合には,その解説や問題は「復習教材」ということができ,引用発明は,本願発明1の「理解度に対応する復習教材を提示する復習教材提示手段」を有するものと認めることができる。 本願発明1の「アンケート実行手段」は,受講者の理解度を把握するための手段であり,受講者の理解度を把握するための手段を有する点では,本願発明1と引用発明に相違はない。 また,本願発明1は「ネットワーク型教育システム」であるが,「コンピュータ・ネットワークを利用」,すなわちコンピュータを利用するのだから,「CAI装置」の1つと見ることができる。 したがって,本願発明1と引用発明とは, 「受講者の理解度を把握するための手段及び理解度に対応する復習教材を提示する復習教材提示手段を有するCAI装置。」である点で一致し,以下の各点で相違する。 〈相違点1〉本願発明1が「コンピュータ・ネットワークを利用して複数の受講者を相手に講師が講義を行うネットワーク型教育システム」であるのに対し,引用発明は「ネットワーク型教育システム」とはいえない点。 〈相違点2〉「受講者の理解度を把握するための手段」につき,本願発明1が「講義に関する前記受講者の理解度についてのアンケートを実行するアンケート実行手段」としているのに対し,引用発明では「問題に対する学習者の解答が正解かを識別する等により学習項目に対する理解度を判定」する手段である点。 〈相違点3〉本願発明1が「前記受講者からのアンケートの応答データに含まれる前記理解度を集計し,前記理解度別の人数を画面表示する理解度データ表示手段」を有するのに対し,引用発明1が同手段を有するかどうか明らかでない点。 〈相違点4〉本願発明1が「前記理解度の基準値を画面上で設定可能にする理解度設定手段」及び「前記理解度のそれぞれに対応した復習教材が設定されている復習教材テーブル」を有し,復習教材提示に当たっては「前記理解度設定手段によって設定された基準値以下の理解度で応答した前記受講者に前記復習教材テーブルに設定された前記理解度に対応する復習教材を提示する」としているのに対し,引用発明がこれら構成を有するかどうか明らかでない点。 4.相違点についての判断及び本願発明1の進歩性の判断 (1)相違点1について 引用例1には「学習進度を学習者または学習指導者が入力装置の操作により設定」(【請求項4】)との記載がある。引用発明は,引用例1に従来技術として記載されたものであるから,上記記載は直接的には引用発明の説明ではないけれども,引用発明においても,学習進度の設定を学習指導者が行うことは排除されておらず,そのようにすることは設計事項というべきである。 また,学習指導者が存する場合,コンピュータを利用した教育を行うに際し,「複数の受講者を相手に講師が講義を行うネットワーク型教育システム」とすることは,原査定の拒絶の理由に引用された「NTT技術ジャーナル」第9巻第5号,第118?120頁(1997年5月1日発行。以下「引用例2」という。)に記載されているほか,多数の文献にも記載があり(例示文献として,国際公開パンフレットWO93/16454をあげておく。),周知であると認める。 そして,受講者の理解度を把握し,理解度に対応する復習教材を提示することは,ネットワーク型教育システムであるかどうかに関係なく,有用なことであるから,相違点1に係る本願発明1の構成を採用することは設計事項というべきである。 (2)相違点2について 広辞苑第五版には「アンケート」の説明として「(調査の意)調査のため多くの人に一定の様式で行う問合せ。意見調査。また,その調査に対する回答。」とある。 引用発明では「問題に対する学習者の解答が正解かを識別する等により学習項目に対する理解度を判定」しており,これは通常「テスト」と呼ばれるものである。ところで,相違点1に係る本願発明の構成(複数の受講者を対象としたネットワーク型教育システム)を採用する場合であっても,当然「テスト」によって理解度を把握することは可能であり(引用例2にもテストを行う旨の記載がある。),通常複数の受講者に対して同一問題を課すのであるから,テストは「調査のため多くの人に一定の様式で行う問合せ」に該当し,アンケートと格別異ならない。 仮に,テストとアンケートが異なるとした場合,アンケートは理解度についての自主申告である。理解度を自主申告すれば,理解度を把握することが簡便である反面,受講者が理解しているつもりでも実際には理解していないという状況が想定できるから,正確性に欠けるおそれが十分ある。そうであれば,理解度把握に当たり,テストとアンケートのどちらを採用するかは,簡便性と正確性のどちらに重きを置くかによって定まる設計事項というべきである。 すなわち,相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは設計事項である。 (3)相違点3について 複数の受講者を対象として教育を行う場合,受講者全体の概況を把握するためにテスト等(テスト等にはアンケートを含む。)の結果を集計し,講師が視認可能な状態にすることは,ネットワーク型教育システムであるかどうかにかかわらず,従来から行われている。コンピュータを利用する場合には,視認可能な状態にするため「画面表示」することはありふれた態様であるし,受講者全体の概況として「理解度別の人数」とすることもありふれている。そのことは,引用例2にも「結果はリアルタイムに集計しインストラクタのプレゼンテーション用端末にグラフ表示できるため,インストラクタは,テストの場合には研修生全体の理解状況を,アンケートの場合には,研修生の考え・意見の全体傾向を即座に把握でき,反映しながら講義を進めることが可能です。」(119頁本文左欄4行?右欄1行)と記載されていることによっても裏付けられる。 したがって,相違点3に係る本願発明1の構成を採用することは設計事項である。 (4)相違点4について 引用発明においても「理解度を参照して全ての学習項目が最終目標に達したか判定」するのであるから,「最終目標に達したか判定」するための基準値と理解度(テストの場合は得点により定まる)を比較するものと解される。ところで,学習内容や問題(テストの場合)が易しければ,理解度が高く評価されることが多く,逆に学習内容や問題(テストの場合)が難しければ,理解度が低く評価されることが多いことは容易に予測できる。学習内容や問題にかかわらず,上記基準値を定めることも1つの考え方ではあるが,学習内容や問題の難易度に応じて,基準値を設定可能とすることも1つの合理的な考え方である。とりわけ,相違点3に係る本願発明1の構成を採用する場合には,「理解度別の人数を画面表示する」のであるから,それによって学習内容や問題の難易度を講師が把握することができ,そうである以上,「前記理解度の基準値を設定可能にする理解度設定手段」を有することが,適切な基準値の設定を行う上での設計事項というべきであり,その設定を「画面上で設定可能」とすることも設計事項である。 また,上記基準値に達しない場合であっても,その度合いはさまざまであるから,「理解度のそれぞれに対応した復習教材」を設定することも設計事項というべきである。「復習教材テーブル」とは,理解度と復習教材の対応関係を定めるテーブルであるから,「理解度のそれぞれに対応した復習教材」を設定することが設計事項である以上,「復習教材テーブル」を有することも同様である。理解度に対応した教材を設定する点については,例えば特開平2-143289号公報に「学習条件は,次のような意味を持っている。指導項目i1は,「入出力」の学習項目iの習熟度(理解度)が2以上で,「変数」の学習項目2の習熟度が3以上の者を対象とした学習である。指導項目i2は,学習項目1が4以上,学習項目2が5以上,学習項目4が2以上…の習熟度を持つ学習者を対象とした学習である。」(4頁右上欄12?18行)と記載されていることからも,教育を行う上での常套的手法と理解できる。 そして,「前記理解度の基準値を画面上で設定可能にする理解度設定手段」及び「前記理解度のそれぞれに対応した復習教材が設定されている復習教材テーブル」を有する場合には,復習教材提示に当たって「前記理解度設定手段によって設定された基準値以下の理解度で応答した前記受講者に前記復習教材テーブルに設定された前記理解度に対応する復習教材を提示する」ことは当然の結果にすぎない。 以上のとおりであるから,相違点4に係る本願発明1の構成を採用することも設計事項というべきである。 (5)本願発明1の進歩性の判断 相違点1?4に係る本願発明1の構成を採用することは設計事項であり,これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって,本願発明1は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 5.本願発明2の進歩性の判断 本願発明2は,本願発明1を「前記アンケート実行手段による前記理解度のアンケートに対して前記受講者の応答を前記応答データとして送信するアンケート応答手段を有する」と限定するものである。 しかし,本願発明1は「前記受講者からのアンケートの応答データに含まれる前記理解度を集計し,前記理解度別の人数を画面表示する理解度データ表示手段」を有しており,理解度に基づいて諸々の措置を講じているのだから,「アンケート応答手段」は備わっていなければならない。 そして,本願発明1が「ネットワーク型教育システム」であることを考慮すれば,「アンケート応答手段」は「受講者の応答を前記応答データとして送信する」ものと解するのが自然である。 すなわち,本願発明2は本願発明1と実質的に同一発明であり,仮にそうでないとしても請求項2記載の上記限定事項はせいぜい設計事項にすぎないから,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとして,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 6.本願発明3の進歩性の判断 本願発明3は,本願発明2に「前記アンケート応答手段は,前記受講者によって入力された前記講義に対するコメントを前記応答データに付加して送信するように構成されている」との限定を加えたものである。 紙を用いた従来からのテスト又はアンケートにおいては,回答者が自由に意見・感想等を記述できるコメント欄を設けることが広く行われている(入学試験等,単に順位をつけるためのテストであればコメント欄はないが,通信添削等学習指導の一環として行われる場合には,コメント欄を設けることが多い。) 上記の事情は,コンピュータを用いた場合にも当然当てはまる。なお,請求項3では「コメントを前記応答データに付加して送信」とあるから,「応答データ」はコメント形式ではない(ラジオボタン又はチェックボックスを用いた選択式と解される。ただし,請求項2の記載だけではそのように認定できないので,前項では「応答データ」の内容については触れなかった。)。しかし,テスト及びアンケートに共通して,選択式とコメント欄の組み合わせは周知であるから,そのように「応答データ」を限定したとしても,講義に対するコメントを応答データに付加して送信することは設計事項の域を出ない。 すなわち,請求項3の限定事項を採用することは設計事項にすぎないから,本願発明3は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとして,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 ところで,本願発明3が本件補正後の請求項1に係る発明と同一発明であることは一見して明らかであるから,本件補正を却下しないとしても,本件補正後の請求項1に係る発明の進歩性が否定されるから,審決の結論は変わらない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず,本願発明1?3が特許を受けることができない(本件補正を却下しない場合の請求項1に係る発明も同様)以上,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶を免れない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-20 |
結審通知日 | 2006-10-24 |
審決日 | 2006-11-07 |
出願番号 | 特願平9-139037 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G09B)
P 1 8・ 121- Z (G09B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
尾崎 俊彦 長島 和子 |
発明の名称 | ネットワーク型教育システム、ネットワーク型教育システムのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、およびネットワーク型教育方法 |
代理人 | 服部 毅巖 |