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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1149293
審判番号 不服2004-15167  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-21 
確定日 2006-12-21 
事件の表示 平成 7年特許願第102802号「分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月12日出願公開、特開平 8-298544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年4月26日の出願であって、平成16年6月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年8月18日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成16年8月18日付けの手続補正について
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲が次のように補正された。
(補正前)
【請求項1】 在宅勤務やサテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する場合のコミュニケーション方法であって、通信希望を持って意識通信するに際し、繁忙度を判断するためにビジィレベルを定めて登録すると共に、通信する者のビジィレベルを自動検索することにより、前記通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時に相互間を自動接続することを特徴とした分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。
【請求項2】 在宅勤務やサテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する場合のコミュニケーション方法であって、ソシアルブロウジング又はビデオウインドウなどの仮想環境における無意識通信をするに際し、繁忙度を判断するためにビジィレベルを定めて登録すると共に、通信する者のビジィレベルを自動検索することにより前記通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時に相互間を自動接続することを特徴とした分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。
【請求項3】 ビジィレベルは、暇のとき、普通のとき及び多忙のときをアイコンとしてメイン画面に表わすと共に、呼びかけられた方にも画面に表わすようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。
【請求項4】 ビジィレベルは、コンピュータ使用頻度、頭脳使用度、コミュニケーション内容の重要度及び人間関係の重要度並びに設定日時の近接度により所定の基準に基づき登録されることとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。

(補正後)
【請求項1】 在宅勤務やサテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する場合のコミュニケーション方法であって、通信希望を持って意識通信するに際し、繁忙度を判断するために予めビジィレベルを定めて登録すると共に、該ビジィレベルは、暇のとき、普通のとき及び多忙のときをアイコンとしてメイン画面に表わし、呼びかけられた方にも画面に表わすようにし、かつ通信する者のビジィレベルを自動検索することにより、前記通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時に相互間を自動接続することを特徴とした分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。
【請求項2】 在宅勤務やサテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する場合のコミュニケーション方法であって、ソシアルブロウジング又はビデオウインドウなどの仮想環境における無意識通信をするに際し、繁忙度を判断するために予めビジィレベルを定めて登録すると共に、該ビジィレベルは、暇のとき、普通のとき及び多忙のときをアイコンとしてメイン画面に表わし、呼びかけられた方にも画面に表わすようにし、かつ通信する者のビジィレベルを自動検索することにより前記通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時に相互間を自動接続することを特徴とした分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。
【請求項3】 ビジィレベルは、コンピュータ使用頻度、頭脳使用度、コミュニケーション内容の重要度及び人間関係の重要度並びに設定日時の近接度により所定の基準に基づき登録されることとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。

本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであるが、補正により請求項の数が4から3に減少した。
そこで、補正後の請求項(以下、「新請求項」という。)と補正前の請求項(以下、「旧請求項」という。)との対応をみると、旧請求項1,2は削除されており、新請求項1,2は、旧請求項1および旧請求項2を引用する旧請求項3にそれぞれ対応する。
なお、旧請求項3で引用された旧請求項1では「繁忙度を判断するためにビジィレベルを定めて登録する」と記載されていたのが、新請求項1においては「繁忙度を判断するために予めビジィレベルを定めて登録する」と「予め」という用語が付加されているが、これは旧請求項1を引用する旧請求項3を新請求項1として独立形式で記載する際に付加されたものであって、「登録」が予め行われていることは明らかであるから、実質的変更は無い。
したがって、本件補正は特許法第17条の2第2項(新規事項)及び第3項第1号(補正の目的)の規定に適合している。

第3.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年8月18日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「在宅勤務やサテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する場合のコミュニケーション方法であって、通信希望を持って意識通信するに際し、繁忙度を判断するために予めビジィレベルを定めて登録すると共に、該ビジィレベルは、暇のとき、普通のとき及び多忙のときをアイコンとしてメイン画面に表わし、呼びかけられた方にも画面に表わすようにし、かつ通信する者のビジィレベルを自動検索することにより、前記通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時に相互間を自動接続することを特徴とした分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法。」

2.引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された特開平6-46161号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の端末がネットワークで接続され、これらの端末間でメッセージを送受信する通信方式に関する。」(第2頁第1欄、段落1)
ロ.「【0012】緊急度調停装置6は送り手からメッセージと共に送られてきた送り手の緊急度と受け手状態判別装置によって得られた受け手の状態とを比較して、送られてきたメッセージが受け手にとってどの程度の重要性を持つものであるかを判断するためのものである。
【0013】メディア変換装置7は、緊急度調停装置によって得られたメッセージの重要度に応じ、送られてきたメッセージの伝達方法を変換するためのものである。例えば、重要度が非常に高く緊急性が高いメッセージの場合は電話など受け手に対し割り込みをかけられるメディアに変換したり、重要性が低いメッセージは伝言板など受け手が任意の時間にアクセスすることができるメディアに変換したりする。
【0014】情報提示装置8はメディア変換装置によって変換されたメッセージを受け手に対して提示するための物で、音声信号に対してはスピーカや電話、文字に対してはCRTディスプレイ、画像に対してはビットマップディスプレイ、TVモニタ等を用いるほか、受け手が装着するゴーグルや壁面などへの投影を行ってもよい。 次に、図1に示す本発明の一実施例の動作を送り手(A)が受け手(B)にメッセージを送る例を用いて説明する。
【0015】送り手は、メッセージ作成装置2を用いて、メッセージを作成し、完成後、受け手に対し送信を行うために、送信指示を行う。この際、緊急度判別装置1はAのメッセージ作成中、あるいは、メッセージ作成時の送り手の状況を観察し、送信するメッセージに緊急度Paを付加する。緊急度を付加されたメッセージは、センダ3に送られる。そして、通信経路の混雑状況やメッセージの緊急度によって送信するメディアや送信経路を選択し送信される。Bのレシーバ4はメッセージを受信すると、それを緊急度調停装置5に転送する。緊急度調停装置では、受け手状態判別装置8によって得られたBの状態とメッセージに付加されて送付されてきたAの緊急度とを比較することによって、Bにとってのメッセージの重要性を判断し、メディア変換装置6では、この重要性に応じメディアを変換する。メディア変換されたメッセージは、情報提示装置7に転送され、メディアに適した方法でBに対して提示される。次に具体例を示して、図1に於ける緊急度調停機能付きの通信装置の動作を説明する。」(第3頁第3欄、段落12?段落15)
ハ.「【0024】また、このような緊急度を判別するための情報は、緊急度判別装置に対して送り手が直接指示を行うことによって与えても良い。また、緊急度は1次元の値として、設定しても良いし、あるいは、上記各項目を各次元とした、ベクトル値として設定することもできる。この処理の様子を図2?図4に示す。」(第4頁第5欄、段落24)
ニ.「【0031】図1に於ける受け手状態判別装置8は、受け手の現在の状態を確認するための装置である。この装置は受け手の状況を判断するために例えば以下のような処理を行う。
・時刻が早朝・深夜の場合はbusy状態とする。
・外出中など、メッセージを受け取れない場所にいる場合はbysy状態とする。
・会議中など、メッセージを受け取れない状況にある場合はbusy状態とする。
・スケジューラ9から情報を得、スケジュールが詰まっている場合はbusy状態とする。
・現在、緊急度が高いjobを実行中の場合はbusy状態とする。
・同一のjobを長時間連続して行っている場合には、そのjobは緊急度が高いと判断し、busy状態とする。
・早朝・深夜にかからわずjobを行っている場合には、そのjobは緊急度が高いと判断し、busy状態とする。
・緊急度の高いメッセージに起因するjobは緊急度が高いと判断し、busy状態とする。
【0032】・送り手緊急度判別装置と同様なユーザ観察手段を用いて、受け手をモニターし、キー入力の速度、応答速度の低下、あるいは、入力誤りの増加が見られる場合には、体調が悪いと判断し、busy状態とする。
・仕事中か否かを判定し、仕事中の場合は使用メッセージに対してbusy状態、仕事中でない場合は公用メッセージに対してbusy状態とする。
【0033】また、この他に、受け手が現在の状態を指示する事によってあるいはスケジューラ参照を指示する事によって受け手の状態を判断することができる。さらに、受け手の状態は、一次元の値ではなく多次元の値として設定することもできる。この処理の様子を図7に示す。」(第5頁第7欄?第8欄、段落31?段落33)
ホ.「【0035】図1に於ける緊急度調停装置6は送り手緊急度判別装置によって付加されメッセージと共に送付されてきた緊急度情報と、受け手状態判別装置によって得られた受け手の状態を(busy度)を元に送られてきたメッセージの受け手にとっての重要度を決定する装置である。この装置は、その重要度を決定するために例えば以下の様な処理をおこなう。
・送り手が受け手の上司である場合は、送り手側の緊急度を重視するなど、受け手と送り手の関係によって、重要度を決定する。
・受け手の興味・仕事内容などを予め登録しておきこれと合致しない内容のメッセージは重要度を低くする。
・以前に受け手が送付した内容に対する返事・回答であるメッセージは重要度を高くする。
【0036】・以前同じ送り手から、緊急でないにもかかわらず高い緊急度で送付されたメッセージが多い場合を、送り手と過去のメッセージの緊急度と受け手が妥当と思う緊急度あるいは重要度(受け手が入力)とを蓄積したファイルに基づいて検出し、この場合には、メッセージの重要度を低くする。
【0037】また、メッセージの緊急度または受け手の状態が多次元のベクトル値で示されている場合には、各軸の重要性に応じて重要度を決定することができる。この処理の流れおよび詳細な構成を図8および図9(a)に示す。緊急度調停装置はメッセージと共に送られてきた緊急度Aをメッセージ緊急度受信部31を介して読み込むことにより動作を開始する(ステップ501)。つぎに、受け手状態判別部によって決定された受け手の状態Bを受け手状態受信部32を介して読み込む(ステップ502)。そして、予め設定されている緊急度の各軸の重さWを緊急度各軸重さ記録部33から読み込む。そして、重要度計算部34によってAの各軸の重要度にその軸の重さを掛け、Bの値を引いたものをそのメッセージの受け手にとっての重要度Cとする(ステップ504)。そして、その値をメッセージと共にメディア変換装置7へと転送する(ステップ505)。図9(b)に各軸の重さの例を示す。図9(b)において、通常の送り手からのメッセージは一般の項の重みを用いて重要度の調停を行うが、送り手がAの場合(あるいはAというブロックに所属する場合)にはAの、Bの場合にはBの項の重みを用いて調停を行う。
【0038】図1に於けるメディア変換装置7は、緊急度調停装置によって得られたメッセージの重要性に応じ、送られてきたメッセージの伝達方法を変換するためのものである。重要度が非常に高いメッセージに対しては受け手に強い割り込みを行う。例えば、受け手の移動先に電話を自動転送したり、メッセージを留守番電話に入れ同時にポケットベルも鳴動させたり、受け手と担当分野が同じ人を組織表ファイルから検索しその人へ転送(検索できなければ「担当者不明」というメッセージを送り手に返送)したりする。また、重要度が比較的低いメッセージは受け手に弱い割り込みを行う。例えば、留守番電話へのメッセージ録音、あるいはメッセージボードへの書き込みなどである。さらに、重要度が非常に低いメッセージの場合は、受けとり拒否を行い送り手に送り返したり、破棄したり、受け手のスケジューラを調べて「何時までは受け取り拒否」というメッセージだけを返送し送られてきたメッセージは破棄したりすることができる。この処理の流れおよび詳細な構成を図10および図11に示す。
【0039】図10において、メディア変換装置は緊急度調停装置からメッセージと緊急度Cをメッセージ及び重要度受信部41を介して受けとることにより動作を開始する(ステップ601)。メディア変換装置では、重要度判断部42においてこの緊急度の値を検査し(ステップ602)、これが負の値である場合には、受け手の状態はこのメッセージを受け取れる場合ではないため、受信したメッセージに「受取拒否」と付加し、返送部44を通じ送信者に返送する(ステップ60 3)。また、緊急度の値が正の場合には、受信したメッセージをメッセージボード48に書き込み(ステップ604)、更にその値が前もって境界値記録部43に設定されている境界値以下である場合にはそのままにし、受け手が自分の都合に合わせてこのメッセージにアクセスするのを待つ(ステップ605)。しかし、境界値以上の場合には、受け手に対しメッセージ到着をアラーム発生部45により知らせる。このために、受け手が端末の前に居るか居ないかを検査し(ステップ606)、居る場合には計算機のアラームを鳴らし(ステップ608)、居ない場合にはポケットベルを鳴らして受け手にメッセージの到着を知らせる(ステップ607)。
【0040】また、音声で送信されてきた緊急度の低いメッセージを音声確認機能47を用いて文字に変換しスプールに保存したり(受け手の都合のいいときに斜め読みできるようにする)、文字データを朗読装置46により音声データに変換し、割り込みをかけたり(受け手は他の仕事をしながら耳だけ傾けることができる)することもできる。」(第5頁第8欄?第6頁第10欄、段落35?段落40)
ヘ.「【0041】以下、図面の図を用いて、緊急度調停機能付きの通信装置の一実施例に於ける動作例を示す。送り手Aが受け手Bに対し、計算機を用いてメッセージを送付する例で説明する。
【0042】図12(a)は、AがBに対して送付するメッセージ「本日午後1時より、プロジェクトCに関する緊急会議を行う。資料を揃え、必ず参加すること」をメッセージ作成装置を用いて、午前8時に作成した状態を示す画面の例である。メッセージに対する送付指示を行うと、送り手緊急度判別装置は、メッセージから、期限を示す言葉「本日午後1時」と厳密性を示す言葉「必ず」を発見する。また、「資料を揃え」という言葉より労力が大きいこと、「プロジェクトC」という言葉より仕事上の重要性があることを判断する。このため、非常に高い緊急度を付加してメッセージをセンダへ送る。センダでは送られて来たメッセージが非常に高い緊急度を有しているので、コストがかかっても安全な転送路を使用してBへメッセージを送付する。一方、Bは午前8時という時刻はまだ早朝であると状態判別装置に登録し、現在はbusy状態であるとしている(b)。受け手Bの通信装置では、レシーバがメッセージを受信し、緊急度調停装置に転送を行う。緊急度調停装置では、Bの状態はBusyではあるが、上司からの緊急度が非常に高いメッセージであるので、受け手にとっては重要性が高いと判断し、メッセージに高い重要度を付加してメディア変換装置へ転送する。メディア変換装置では、Bに対して強い割り込みをかけるために、Bが向っている計算機に呼び出し音を鳴らすとともに、メッセージを強制的に表示する(c)。」(第6頁第10欄、段落41?段落42)

上記摘記事項ロの【0015】には「送り手は、メッセージ作成装置2を用いて、メッセージを作成し、完成後、受け手に対し送信を行うために、送信指示を行う。」と記載されていることから「通信希望を持って意識通信する」ことは明らかである。
上記摘記事項ハの【0024】において「緊急度判別装置に対して送り手が直接指示を行うことによって与えても良い。」と記載され、上記摘記事項ニの【0033】には「受け手が現在の状態を指示する事によって…受け手の状態を判断することができる。」と記載されていることから「予めメッセージの緊急度と受け手の状態を定めて登録する」ことを行うことは明らかである。
さらに上記摘記事項ヘの記載および図12(b),(c)において「受け手の状態は、アイコンとして計算機の画面に表わ」していることは明らかである。
上記摘記事項ロおよび上記摘記事項ホから「送り手のメッセージの緊急度と受け手の状態を自動検索することにより、メッセージの緊急度と受け手の状態を比較してメッセージに重要性がある場合に相互間を自動接続する」ことは明らかに行われている。

したがって、上記引用例1の記載及び図面を考慮すると、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。
「通信方法であって、通信希望を持って意識通信するに際し、予めメッセージの緊急度と受け手の状態を定めて登録すると共に、該受け手の状態は、アイコンとして計算機の画面に表わし、かつ送り手のメッセージの緊急度と受け手の状態を自動検索することにより、メッセージの緊急度と受け手の状態を比較してメッセージに重要性がある場合に相互間を自動接続する通信自動開始方法。」

B.岡田謙一,松浦宣彦,藤野 剛,松下 温(慶大),情報空間における対話環境の必要性 -概念と実験システム,1992年1月23日発行,情報処理学会研究報告,92-DPS-53,情処研報Vol.92,No6,マルチメディア通信と分散処理 53-1,p1?8(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項イが記載されており、また、松浦宣彦,岡田謙一,松下温,仮想的な出会いを実現したインフォーマルコミュニケーション支援インタフェースの提案,1994年2月,電子情報通信学会論文誌 (J77-D-II) 第2号,p388?396(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ロ?ハが記載されている。
イ.「空間的に離れたサテライトオフィスや、時間的にも離れた海外支社勤務者との共同作業で、このようなインフォーマルコミュニケーションを実現するためには、空間的そして時間的な壁を克服しなければならない。」(周知例1,第2頁左欄,第33行?第37行)

ロ.「組織における協調作業は,人間同士のコミュニケーションの上に成立している。」(周知例2、第388頁左欄、第2行?第3行)
ハ.「一方,ワークステーションの低価格化とネットワークの発達,そしてグループウェアの研究の進ちょくにより,分散環境で協調作業する形態が徐々に現実のものとなってきた」(周知例2、第388頁左欄、第2行?第3行)

上記周知例1?2に開示されているように、「サテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する」ことは周知である。

C.特開平6-311177号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項イが記載されており、また、特開平6-44170号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項ロが記載されている。
イ.「【0058】図12はA氏とは特に近くも遠くもない「普通」の関係にあるC氏の場合を示した図で、C氏はA氏の行っている仕事の大分類とその忙しさをアニメーションによって知ることができる。図12では仕事の大分類をアニメーションのキャラクタが乗っている台に書かれたラベルでその仕事の忙しさをアニメーションのキャラクタの顔で表しており、忙しい場合には怒った顔となり、暇になるほど穏やかな顔となる。ライブビデオほど正確ではないが、A氏の大体の状態をアニメーションとメッセージより入手し、自分なりに相手の今ある状態を推測・判断し、会話しようと決心したときには、会話の目的を相手、今の場合は、A氏に会話前に知らせるために手続きをしなければならず、手続き終了後A氏が会話を許可した場合のみ会話が実現する。」(周知例3、第8頁第13欄、段落58)

ロ.「【0040】また、他のワークステーションのユーザが何をしているかも知ることができる。この場合、各人の作業状況が情報放送局からブロードキャストされると、仮想執務室の座席表が画面表示され、席にいるかいないか多忙か手すき状態かなどを色表示で知らせるようにもできる。」(周知例4、第6頁第9欄,段落40)

上記周知例3?4に開示されているように、「多忙以外に暇なことも画面に表す」ことは周知である。

D.特開昭58-146170号公報(以下、「周知例5」という。)には図面とともに以下の事項イが記載されており、また、特開平4-81058号公報(以下、「周知例6」という。)には図面とともに以下の事項ロが記載されている。
イ.「発信時においては、第3図に操作手順の例を示すとおり、相手加入者番号を押ボタンダイヤル22により入力し、ついでキーボード18を用いて区切り信号、発呼者名、被呼者名、緊急度をあらかじめ定められた桁数だけ入力し、これについで発信ボタン19を操作すると、これらの相手加入者番号、発呼者名、被呼者名、緊急度に対応する信号が信号発生回路13において作成され、表示回路15へ送られて表示器17によりモニター表示されると共に、回線終端部12へ送られて伝送終端部11を介し交換機3へ送られる。
一方着信時においては、交換機4から送られてきた制御信号は、伝送終端部11を介して回線終端部12へ送られ、制御信号が分離されたうえ信号受信回路14へ送られる。
信号受信回路14では送られてきた制御信号のうち呼出信号以外を表示回路15へ送るため、表示器17においては、発呼者番号、発呼者名、被呼者名、緊急度があらかじめ定められた表示位置により表示される。」(周知例5、第3頁右上欄第5行?左下欄第5行)

ロ.「このようにして、移動局1から送られた電波は、基地局2で音声帯域のDTMF信号に変換され、無線回線制御局3,電話交換局4,公衆回線5,および構内交換機11を介して、再び網制御部13に到達する。そして、DTMF信号は、DTMF信号受信部15に入力される。DTMF信号受信部15では、入力されるDTMF信号を元のID番号および緊急レベルのコード番号に変換して演算制御部27に送る。
…中略…したがって、演算制御部27は、電話番号ファイル25を検索することにより、当該ID番号に対応する移動局1の所持者の氏名および移動局1の電話番号を取出し、第3図に示すように表示部24に表示する。…中略…そして、「緊急度」は移動局lから送られた緊急レベルのコード番号である。」(周知例6、第5頁左上欄第16行?左下欄第1行)

上記周知例5?6に開示されているように、「緊急度を呼びかけられた方の画面に表わす」ことは周知である。

3.対比・判断
(3-1)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「通信方法」とはコミュニケーションを行う方法であるから、本願発明の「コミュニケーション方法」に相当する。
引用発明1の「メッセージの緊急度」および「受け手の状態」と本願発明の「ビジィレベル」とは「接続判断のレベル」である点で一致し、
引用発明1の「計算機の画面」は本願発明の「メイン画面」に相当し、
引用発明1の「送り手」と「受け手」は本願発明の「通信する者」に相当する。
また、引用発明1の「メッセージの緊急度と受け手の状態を比較してメッセージに重要性がある場合」と本願発明の「通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時」とは「通信する者の両者が通信が可能である時」で一致する。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「コミュニケーション方法であって、通信希望を持って意識通信するに際し、予め接続判断のレベルを定めて登録すると共に、該接続判断のレベルは、アイコンとしてメイン画面に表わし、かつ通信する者の接続判断のレベルを自動検索することにより、通信する者の両者が通信が可能である時に相互間を自動接続するコミュニケーション自動開始方法。」

(相違点1)本願発明では「在宅勤務やサテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する場合のコミュニケーション方法」であるのに対し、引用発明1では環境について規定されていない点。

(相違点2)「接続判断のレベル」が、本願発明では「繁忙度を判断するため」の「ビジィレベル」であるのに対し、引用発明1では「メッセージの緊急度」と「受け手の状態」であり、「通信する者の両者が通信が可能である時」が、本願発明では「通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時」であるのに対し、引用発明1では「メッセージの緊急度と受け手の状態を比較してメッセージに重要性がある場合」である点。

(相違点3)アイコンについて、本願発明では「ビジィレベルは、暇のとき、普通のとき及び多忙のとき」を表わすのに対し、引用発明1では「busy状態」を表わすという構成に止まる点。

(相違点4)ビジィレベルについては、本願発明では「呼びかけられた方にも画面に表わす」のに対し、引用発明1ではそのような構成を設けていない点。

(3-2)当審の判断
上記相違点を検討する。

(相違点1について)
上記「(2)引用発明及び周知技術」の「B」に示したように、「サテライトオフィスなどの地理的に離れた分散環境で共同作業する」ことは周知であり、当該周知の環境を引用発明1に適用する際に特に阻害要因は見あたらないから、引用発明1の環境として周知の環境を採用し、本願発明のように構成する程度のことは当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
本願発明の実施例として、本願明細書の段落0048に「呼びかけの重要度が個人のビジィレベルを上まわると、接続された画像が表わわれる。」と記載されていることから、本願発明の実施例において、接続するか否かの判断は重要度とビジィレベルの比較で行われている。したがって本願発明の「通信する者のビジィレベルを自動検索する」際の「ビジィレベル」とは「呼びかけの重要度」と「個人のビジィレベル」を含むものである。また、本願発明の「通信する者の両者がコミュニケーション可能になった時」とは「呼びかけの重要度が個人のビジィレベルを上まわる時」を含むものである。
一方、引用発明1では「メッセージの緊急度」や「受け手の状態」の比較により「メッセージに重要性がある場合に相互間を自動接続する」ものである。また、引用文献1の上記摘記事項ニの【0031】において「緊急度の高いメッセージに起因するjobは緊急度が高いと判断し、busy状態とする。」と記載されていることから、メッセージの緊急度はbusy状態である「繁忙度を判断するため」の情報であることは明らかである。
したがって、相違点2は実質上の相違点ではない。

(相違点3について)
上記周知例3?4に開示されているように、「多忙以外に暇なことも画面に表す」ことは周知であり、当該周知技術を引用発明1に適用する際に特に阻害要因は見あたらないから、引用発明1に周知技術を適用し、本願発明のような表示を採用する程度のことは当業者が容易になし得ることである。

(相違点4について)
上記周知例5?6に開示されているように、「緊急度を呼びかけられた方の画面に表わす」ことは周知であるから、緊急度を呼びかけられた方に知らせるために該周知技術を採用し、本願発明のような表示を採用する程度のことは当業者が容易になし得ることである。

上記相違点1?4についての判断に加え、本願発明が有する効果も引用発明1および周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-18 
結審通知日 2006-10-24 
審決日 2006-11-10 
出願番号 特願平7-102802
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 博之土谷 慎吾篠塚 隆  
特許庁審判長 廣岡 浩平
特許庁審判官 中木 努
宮下 誠
発明の名称 分散環境にある者同士のコミュニケーション自動開始方法  
代理人 鈴木 正次  
代理人 鈴木 正次  
代理人 鈴木 正次  

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