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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01J |
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管理番号 | 1149385 |
審判番号 | 不服2003-1587 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-03-03 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-27 |
確定日 | 2006-12-25 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第152192号「X線回折装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月 3日出願公開、特開平 7- 57669〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成6年7月4日(パリ条約による優先権主張1993年7月5日、オランダ国)の出願であって、請求項1乃至5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 X線管(7)とX線管を収容するホルダ(12)とを具えたX線回折装置であって、 X線管が、X線管の一方の端の付近に設けられ、冷却媒体によって冷却される陽極(32)を具え、 X線管を線状のX線の焦点を形成するように構成し、 冷却媒体を供給し、排出するための導管手段(22、24、52、54、58)を具えるX線回折装置において、 前記導管手段が、X線管の一方の端から他方の端に延在する管状の導管(52、54)を具えることを特徴とするX線回折装置。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である旧ソビエト連邦特許発明第616717号明細書(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 なお、明細書の指摘個所に対応する原文の記載は省略し、日本語訳のみ記載した。 1a.「安全カバー、X線筒、及びカバーに取り付けられたX線筒の陽極に向かっての冷却液の誘導システムを備えた、X線の回折計は知られている[2]。 発明へ向けての最も近い技術的解決は、ゴニオメータ、放射線検波器、及び点状のまた線状の焦点を伴ったX線筒、X線による放射の出口のための窓を伴ったX線筒のカバー、カバー内の水路、及びそれらと筒の陽極において統合された水路を含む、X線筒の陽極への冷却媒体の誘導設備、カバー内の筒を固定するための設備と、カバーと筒をピント合わせするための設備を含むX線筒の陽極に向かっての冷却媒体の誘導装置を備えた、X線の回折計である[3]。 知られた処理の欠陥は、工程における焦点の一つのタイプからもう一つのタイプへの移行の際の、カバーを筒と一緒に方向転換しなければならない必要性であり、回折計のピント調整を妨げるものであった。 発明の目的は、焦点の一つのタイプからもう一つのタイプへの回折計の組み替えを簡略化することにある。 これは、出口がカバーの一つの側面に左右対称に一つの円に沿って備えられている四つの透明な管でカバーが満たされていて、一方筒の陽極における水路のもう一対の水路との同時の統合において、筒が隣接しない水路の出口の任意の一対の統合の可能性を伴って、固定の目的においてカバーに設置されていることによって達成される。 望ましいのは、水路の入口と出口が一つの円の中に配列されていることである。 図1には回折計の、一般的な外観が描かれている;図2にはカバーの中のX線筒のユニットの、上からの外観が描かれている;図3には回折計の、横からの外観が描かれている;図4には図2に対する断面図А-Аが描かれている;図5には図2に対する断面図Б-Бが描かれている。」(明細書第1欄11行?第3欄4行) 1b.「回折計はテストピースのホルダー2、ブラケット4に乗っている検波器3、X線による放射の出口となる窓6を備えたカバー5、及びボルト8の助けによってカバー5に固定されたX線筒7が配置された、ゴニオメータ1を含んでいる。 X線筒7は、例えば、そのうちの一対が焦点の点状の投射の出口のために働き、二つめの対が焦点の線状の投射の出口のために働く、四つの窓9を含んでいる。 カバー5は、カバー5の基幹の側面11の表面に、出口が一つの円の中に90度の間隔を伴って設置され、X線筒の固定のためのボルトのねじ山8によって取り付けられた、陽極に向かっての冷却水の誘導のための、四つの透明な水路10を含んでいる。 隣接しない水路10のそれぞれの一対はX線筒の陽極の冷却水路12と順番に結びつく。正反対の継ぎ手13のうち一つは水路10の一対の入口となっている。二つ目の継ぎ手13は出口となっている。 回折計において、使用の工程において点状の焦点の投射、あるいは線状の焦点の投射が用いられる。これは、カバー5の出口の穴6とX線筒7の四つの窓9のうちの一つが結びつくことによって、達成される。その後X線筒7は二つの正反対の水路10のねじ山の穴にぶつかる二つのボルト8によってカバー5に固定される。これに際して二つの異なる水路10の出口は基幹の側面11の表面においてX線筒7の陽極の冷却水路12と結びつく。そのようにして二つの水路10はX線筒7の固定のために使われ、他の二つは冷却液の循環のために使われる。 焦点の投射の交替の際、すなわちX線筒7の90度の展開のときに、水路の使用は反対の使用に変えられる。」(明細書第3欄5行?53行) 1c.「請求項 1.ゴニオメータ、放射の検波器、波状の点状の焦点を伴うX線筒、X線筒の放射の出口のための窓を伴ったX線筒のカバー、カバー内の水路及びそれらと結びつけられた陽極の水路を含む、X線筒の陽極への冷却の媒体の誘導のための設備、筒のカバーへの固定のための設備及びカバーと筒の調整のための設備を含む、一つのタイプの焦点からもう一つの焦点への回折計の組みなおしの簡素化の目的を伴い、カバーがそれらの出口がカバーのひとつの側面に一つの円上に左右対称に置かれている四つの透明な水路で満たされており、他方、筒の陽極におけるもう一つの水路の対との水路の同時の結合に際して、筒がカバーに隣接しない水路の出口の一対を伴う、完全な固定への統合の可能性を伴って取り付けられていることを特徴とする、X線筒の回折計。」(明細書第4欄) 1d.図面、特に図3?図5の記載及び明細書の記載から、冷却水の経路は、一方の継ぎ手13を入り口とし、水路10、X線筒7の陽極の冷却水路12、水路10を経て他方の継ぎ手13を出口とするものであり、また、入り口側、出口側の両水路10は、X線筒7の側部を通るとともにX線筒の2つの端部のうち陽極から離れた方の端部(図では下端部)の更に下方に延びていることが読み取れる。 3.対比・判断 引用刊行物には、上記「2.」の1a.乃至1d.の記載から、以下の発明(以下、「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「X線筒7、X線放射窓6を備えたX線筒7を固定するカバー5を含む回折計で、X線筒7は、X線筒7の一方の端の付近に設けられるとともに冷却水によって冷却される陽極を具え、点状の焦点の投射、あるいは線状の焦点の投射が可能であり、陽極を冷却するために入り口側、出口側の水路10が設けられ、これらの両水路10は、X線筒7の側部を通り、陽極の冷却水路12に接続されるともに、X線筒の2つの端部のうち陽極から離れた方の端部の下方に延びているもの」 本願発明(前者)と上記引用刊行物記載の発明(後者)とを対比する。 ・後者の「X線筒7」は、前者の「X線管(7)」に相当する。 ・後者の「カバー5」は、X線筒7を固定するとともに、その内部にX線筒7が配置されるものであるから、前者の「ホルダ2」に相当する。 ・後者の「陽極」は、X線筒7の一方の端の付近に設けられるとともに冷却水によって冷却されているから、前者の、X線管の一方の端の付近に設けられ、冷却媒体によって冷却される「陽極(32)」に相当する。 ・後者のX線筒7は、点状の焦点の投射、あるいは線状の焦点の投射が可能なものであるから、前者のX線管と同様に「線状のX線の焦点を形成するように構成」されているものである。 ・後者の「冷却水」、「水路」は、前者の「冷却媒体」、「導管手段」に相当する。 ・後者の、入り口側、出口側の水路10は、X線筒7の側部を通り、陽極の冷却水路12に接続されるともに、X線筒の2つの端部のうち陽極から離れた方の端部の下方に延びているものであり、また、水路が管状の導管との明記はないものの、冷却路に管状の導管を用いることは周知であり、図面を参酌すれば後者においても管状の導管を用いていることが読み取れるから、後者の「水路10及び12」は、前者の「X線管の一方の端から他方の端に延在する管状の導管(52、54)」に相当するものである。 以上の対比により、両者に相違点は認められず、両者は同一の発明である。 なお、請求人は、審判請求の理由において、「本願請求項1ないし5に係る発明は、X線管のホルダ内での回転に伴う冷媒漏れという、X線回折装置特有の問題を解決するという新規の作用効果を生ずるもの」と主張しているので、この点について検討する。 本願の要約書には「冷却水をX線管を装着するホルダ(12)を経ては供給せず、冷却水接続部(52,54)をX線管上に直接、X線管の高電圧コネクタを設けたのと同じ側に設けた。その結果、線状焦点から点状焦点へ切り換えるためのX線管の回転は、X線管のハウジングの内側の冷却水接続部に妨げられない。」と記載され、「X線管のハウジングの内側の冷却水接続部に妨げられない」ようにするためには「冷却水をX線管を装着するホルダ(12)を経ては供給せず、冷却水接続部(52,54)をX線管上に直接、X線管の高電圧コネクタを設けたのと同じ側に設け」ることが必要であると認められるところ、本願発明の「導管手段が、X線管の一方の端から他方の端に延在する管状の導管を具える」との記載では、導管の配置を「冷却水接続部(52,54)をX線管上に直接、X線管の高電圧コネクタを設けたのと同じ側に設ける」ものに限定されてはおらず、「導管がホルダー内に配置され、且つ、X線管の一方の端から他方の端に延在する」ものをも包含するものである。 したがって、請求人の上記主張は、特許請求の範囲に記載された本願発明の構成に基づかない主張であり採用できない。 以上より、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 なお、原査定では、本願発明について特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとしているが、請求人も審判請求書等において本願発明と引用刊行物に記載された発明との対比について言及しており、実質的に新規性についても意見を述べているものであるから、あらためて拒絶理由は通知せず審決することとした。 4.むすび 以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明であり、特許法29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-15 |
結審通知日 | 2005-09-20 |
審決日 | 2005-10-03 |
出願番号 | 特願平6-152192 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡戸 正義 |
特許庁審判長 |
上田 忠 |
特許庁審判官 |
杉野 裕幸 下中 義之 |
発明の名称 | X線回折装置 |
代理人 | 杉村 興作 |