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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H04N
管理番号 1149839
異議申立番号 異議2003-73205  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-08-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2006-12-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3429744号「画像形成装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3429744号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3429744号の発明についての出願は、特願平4-209355号(平成4年8月6日出願)の一部を平成12年12月22日に新たに特許出願したものであり、平成15年5月16日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人青木恭光及び特許異議申立人市東勇より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月27日に訂正請求がなされ、さらに、その指定期間内である平成16年7月30日に、平成16年7月27日付けの訂正請求が取下げられ、新たに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2.1.訂正の内容
平成16年7月30日付けの訂正請求において、特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。

訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中の「前記2次元ビットマップ情報と入力画像信号とを重畳する重畳手段と、前記重畳手段」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段と、前記付加手段」と訂正する。

訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の「前記2次元ビットマップ情報と入力画像信号とを重畳する重畳手段と、前記重畳手段」(上記訂正事項aで「前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段と、前記付加手段」と訂正する箇所)の前に、特許請求の範囲の減縮を目的として、「選択的に、」を挿入する訂正をする。
(訂正請求書の訂正事項の項の記載では、訂正個所が明確でないので、訂正請求書に添付された訂正明細書の記載から、訂正事項bを上記のように認定した。)

訂正事項c
上記訂正事項a,bに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、設定登録時の明細書の段落【0006】の
「【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、前記2次元ビットマップ情報と入力画像信号とを重畳する重畳手段と、前記重畳手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有することを特徴とする。」
及び段落【0018】の
「【発明の効果】
以上のように本発明によれば、画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、前記2次元ビットマップ情報と入力画像信号とを重畳する重畳手段と、前記重畳手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有することによって、記録画像として、入力画像の他に画像形成装置を特定するための所定情報が重畳されるので、例えば、不正使用(紙幣や有価証券などを画像出力する使用)を行った全ての不正使用者に対して、一律に、心理的な抑止力が働くことになる。このことにより、匿名的な偽造行為に対する抑圧効果が見込まれる。所定情報は、画像形成装置を特定するための情報であって、画像形成装置自体に予め内蔵され、繰り返して読み出されて入力画像信号に重畳される。このため、使用者は、装置の使用に際して、特別な入力操作を行う必要がないので、装置の使用が煩わしくなることがない。また、装置の使用は、特定の人のみに制限されないので、任意の人が使用できる。また、所定情報は、画像形成装置自体に予め内蔵されて発生されるものであるので外部からのアクセスにより、所定情報を付加しないように設定することはできない。」
を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
段落【0006】を
「【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、選択的に、前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段とを設け、前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有することを特徴とする。」
及び【0018】を
「【発明の効果】
以上のように本発明によれば、画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、選択的に、前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段とを設け、前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有することによって、記録画像として、入力画像の他に画像形成装置を特定するための所定情報が重畳されるので、例えば、不正使用(紙幣や有価証券などを画像出力する使用)を行った全ての不正使用者に対して、一律に、心理的な抑止力が働くことになる。このことにより、匿名的な偽造行為に対する抑圧効果が見込まれる。所定情報は、画像形成装置を特定するための情報であって、画像形成装置自体に予め内蔵され、繰り返して読み出されて入力画像信号に重畳される。このため、使用者は、装置の使用に際して、特別な入力操作を行う必要がないので、装置の使用が煩わしくなることがない。また、装置の使用は、特定の人のみに制限されないので、任意の人が使用できる。また、所定情報は、画像形成装置自体に予め内蔵されて発生されるものであるので外部からのアクセスにより、所定情報を付加しないように設定することはできない。」
と訂正する。
(訂正請求書の訂正事項の項の記載では、訂正内容が明確でないので、訂正請求書に添付された訂正明細書の記載から、訂正事項cを上記のように認定した。)

2.2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記訂正事項aは、主として、取消理由で明確でないと指摘した「重畳」を発明の詳細な説明の記載に基づいて「付加」とするものであるが、「前記入力画像信号」との記載は、それより前に「入力画像信号」の記載がなく、「前記」とあるのは明らかな誤記と認められるが、それにより特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たさないとするほどのものではないから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当すると認める。
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に、また、上記訂正事項cは、上記訂正事項a及び訂正事項bによる訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであるから、上記訂正事項a及び訂正事項bと同様の目的の明細書の訂正に該当する。
そして、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

2.3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3.1.特許異議の申立ての概要
特許異議申立人青木恭光は、証拠として甲第1号証(特開平4-294682号公報)を提示し、請求項1及び請求項2に係る発明は、特願平3-60248号(特開平4-294682号、以下先願という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定の規定に違反してなされたものであり特許を取り消すべき旨主張している。
また、特許異議申立人市東勇も同様の理由により、特許を取り消すべき旨主張している。

3.2.本件発明
本件の請求項1及び請求項2に係る発明は、上記2.2.で検討した「前記」との誤記を考慮して、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載から誤記である「前記」を除いた、次のように認定する。

「【請求項1】 画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、
選択的に、入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段と、前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有する画像形成装置。
【請求項2】 2次元ビットマップ情報を発生する手段は、再生画像全面より小さい所定の大きさの2次元ビットマップ情報を繰り返して読み出し、再生画像全面に2次元ビットマップ情報を発生することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。」

3.3.取消理由の概要
平成16年5月21日付けで通知した取消理由の理由1の概要は、本件の請求項1及び請求項2に係る発明は、前記先願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定の規定により特許を受けることができないというものである。

3.4.先願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明
先願の願書に最初に添付された明細書には以下の記載が図面とともになされている。

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に複写機等の画像処理装置において、再生画像に特定のパターンを付加する機能を有する装置に関するものである。」

(2)「【0002】
【従来の技術】従来、複写機のカラー化にともない、本来複写されるべきでない特定原稿(例えば証券/紙幣)を、現物とほとんど見分けのつかないような高画質で複写できるようになり、これを悪用されてしまう恐れが生じている。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、従来は、本来複写されるべきでない特定原稿の複写がおこなわれ、その複写物が悪用された場合に、複写を行った複写機もしくは、複写した人物を特定することができなかった。
【0004】本発明は、かかる従来技術に鑑みてなされたもので、再生画像から画像処理装置を特定できるようにした画像処理装置を提供することを目的とする。」

(3)「【0008】(第1の実施例)
[装置概観]図2に、本発明の第1の実施例の装置の概観図を示す。図2において、201はイメージスキャナー部であり、400dpi(dots/inch)の解像度で原稿を読み取り、ディジタル信号処理を行う部分である。また、202は、プリンタ部であり、イメージスキャナー201によって読み取られた原稿画像に対応した画像を400dpiの解像度で用紙にフルカラーでプリント出力する部分である。」

(4)「【0020】一方、414は本装置の制御を司るマイクロコンピューター(以下CPU)であり、413はCPU414に接続される入出力ポート(以下I/Oポート)であり、409は特定原稿の判定手段である。
【0021】ここで、特定原稿の判定手段409は、原稿台上に置かれた原稿が所定の複数の特定原稿のうち少なくともひとつである可能性の判定を行い、その可能性を示す判定信号Hが多値2ビットで出力される。即ち、複数の特定原稿のうちすくなくともひとつである可能性が最も強い場合には、H=“3”を出力し、その可能性が最も少ない場合には、H=“0”を出力する。」

(5)「【0024】410は、パターン付加回路であり、CPU414が指定する2ビットのパターンレベル選択信号PSに応じ、複写画像に人間の目には識別し難いパターンを付加する。」

(6)「【0040】[比較器モジュール]図8に比較器モジュール310のブロック図を示す。801、802、803は比較器であり、804はインバータ、805はANDゲート、806、807はORゲートである。予め、レジスタ307にはR1、レジスタ308にはR2、レジスタ803にはR3なる値がセットされており、R1>R2>R3なる関係がある。この構成により、結果として、出力には、判定結果が2ビットに量子化されて出力される。すなわち、
R1<(入力)の場合、11が出力され、
R2<(入力)≦R1の場合、10が出力され、
R3<(入力)≦R2の場合、01が出力され、
(入力)≦R3の場合、00が出力される。
【0041】この出力信号が、入力画像が特定原稿である可能性を示す。」

(7)「【0042】[パターン付加回路]図9にパターン付加回路410のブロック図を示す。901は副走査カウンタ、902は主走査カウンタであり、903はルックアップテーブルROM、905はフリップフロップ、913はANDゲート、906、907、908、909はレジスタ、910は4to1のセレクタ、911はANDゲート、912は加算器であり、913はアンドゲート、914はインバータである。
【0043】ここで、副走査カウンタ901では主走査同期信号HSYNCを、主走査カウンタ902では画素同期信号CLKをそれぞれ9ビット幅即ち512周期で繰り返しカウントする。更に903は、付加されるべきパターンが保持されている読出し専用メモリ(以下ROM)であり、副走査カウンタ901、主走査カウンタ902それぞれのカウント値の下位6ビットずつが入力される。ROM903の出力は、1ビットのみが参照され、ANDゲート904によって主走査カウンタ901および副走査カウンタ902の上位3ビットずつの論理積がとられ、フリップフロップ905にて、CLK信号で同期がとられ、ANDゲート913において、2ビットの面順次信号の上位ビットをCNO1、下位ビットをCNO0とするとCNO0の反転信号およびCNO1の両方と論理積がとられた後に、ANDゲート911に送られる。これはCNO=2即ち現在イエローでプリントされている時のみに有効な信号である。
【0044】一方、レジスタ906、907、908、909には、予め、P1,P2,P3,P4なる値が保持されており、CPUより指定されたパターンレベル選択信号PSに応じて,P1からP4までのいずれかが選択され、ANDゲート911を経て、加算器912によって、入力信号Vにパターンが付加されV’が出力される。従って、CNO=2即ち現在イエローでプリントされているときに、ROM903に保持されているパターンが繰り返し読み出され、出力されるべき信号に付加される。
【0045】ここで、P1<P2<P3<P4である様に設定されており、セレクタ910は
s=00(2進数)のとき Y=A
s=01(2進数)のとき Y=B
s=10(2進数)のとき Y=C
s=11(2進数)のとき Y=D
となる様に設定されているため、
PS=00(2進数)のとき V’=V+P1
PS=01(2進数)のとき V’=V+P2
PS=10(2進数)のとき V’=V+P3
PS=11(2進数)のとき V’=V+P4
なるように、パターンが付加される。
【0046】ここで、付加するパターンは、人間の目で識別し難い様に、イエローのトナーのみで付加されるが、これは、人間の目が、イエローのトナーで描かれたパターンに対して識別能力が弱いことを利用したものである。更に、入力画像中に、特定原稿の存在する可能性に応じて、付加するパターンのレベルを可変することで、通常の複写物では、パターンが人間の目では殆ど識別できない様にし、特定原稿が存在する可能性が高くなるほど、くっきりとパターンが付加する。」

(8)「【0047】[複写結果]図10に本実施例における複写結果の例を示す。1001で示されるのが付加されたパターンであり、ROM903に保持されている内容が付加される。図10に示す例では、“ABCD1234”なるパターンが、人間の目には識別し難いように、64画素×64画素のパターンで付加され、主走査512画素、副走査512ラインごとに繰り返される。そこで、これを、機械固有の製造番号もしくは、製造番号を符号化したものとしておくことで、複写物を鑑定することで、複写した装置を限定することができる。」

したがって、先願の願書に最初に添付された明細書又は図面には、次の発明(以下、先願発明という。)が記載されているといえる。

「複写した装置を限定することができる機械固有の製造番号の64画素×64画素のパターンを保持するROM903と、
予め、P1<P2<P3<P4である様に設定されている値が保持されているレジスタ906、907、908、909の何れかを選択して、入力画像中に、特定原稿の存在する可能性に応じて、付加するパターンのレベルを可変することで、通常の複写物では、パターンが人間の目では殆ど識別できない様にし、特定原稿が存在する可能性が高くなるほど、くっきりとパターンを付加するパターン付加回路と、
前記パターン付加回路からの信号に基づき、前記ROM903に保持されているパターンが主走査512画素、副走査512ラインごとに繰り返し読み出され、出力されるべき信号に付加され、プリンタ部でプリント出力される画像処理装置。」

3.5.対比、判断
3.5.1.請求項2に係る発明について
先願発明は、プリント出力を行うプリンタ部を有する画像処理装置であるから、記録媒体上に画像を形成する手段を有する画像形成装置である点で本願の請求項2に係る発明とかわりはない。また、「複写した装置を限定することができる機械固有の製造番号の64画素×64画素のパターンを保持するROM903」を有しており、「ROM903に保持されているパターンが主走査512画素、副走査512ラインごとに繰り返し読み出され」とするものであるから、画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段であって、再生画像全面より小さい所定の大きさの2次元ビットマップ情報を繰り返して読み出し、再生画像全面に2次元ビットマップ情報を発生する手段を有する点で本願の請求項2に係る発明とかわりはない。
そして、先願発明の「パターン付加回路」は、本願の請求項2に係る発明の「付加手段」と、入力画像信号に2次元ビットマップ情報を付加する機能についてはかわりはないから、両者は、
「画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、
入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段と、前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有する画像形成装置であって、
2次元ビットマップ情報を発生する手段は、再生画像全面より小さい所定の大きさの2次元ビットマップ情報を繰り返して読み出し、再生画像全面に2次元ビットマップ情報を発生することを特徴とする画像形成装置。」
である点で共通し、本願の請求項2に係る発明の「付加手段」が、「選択的に、」とするのに対して、先願発明では、「特定原稿の存在する可能性に応じて、付加するパターンのレベルを可変することで、通常の複写物では、パターンが人間の目では殆ど識別できない様にし、特定原稿が存在する可能性が高くなるほど、くっきりとパターンを付加する」とするものである点で、一応の相違がある。
しかし、先願発明は、上記3.4.(2)のとおり、「本来複写されるべきでない特定原稿の複写がおこなわれ、その複写物が悪用された場合に、複写を行った複写機もしくは、複写した人物を特定することができなかった」という課題を解決するためにパターンを付加して、「再生画像から画像処理装置を特定できるようにした」ものであるから、複写することに問題のない通常の複写物では、そのようなパターンを付加する必要は、全くないとはいえないものの、極めて低いものである。さらに、複写機等の画像処理装置において、現物とほとんど見分けのつかないような高画質で複写できるようにすることは、普通に求められていることである。
したがって、複写することに問題のない通常の複写物では、できるだけ高画質で複写できるようにするために、特定原稿の存在する可能性が最も少ない場合の付加するパターンのレベルP1を、一番小さい値である”0”としてレジスタ906にあらかじめ保持することにより、パターンを実質的に付加しない設定とすることは、当業者が先願発明を実施する際に行うことができる設計事項の範囲である。
それゆえ、本願の請求項2に係る発明は先願発明と同一の発明である。

3.5.2.請求項1に係る発明について
本願の請求項1に係る発明は、請求項2に係る発明から、「2次元ビットマップ情報を発生する手段は、再生画像全面より小さい所定の大きさの2次元ビットマップ情報を繰り返して読み出し、再生画像全面に2次元ビットマップ情報を発生すること」という事項を除いたものであるから、請求項2に係る発明と同様に、先願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一である。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1及び請求項2に係る発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。
したがって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく特許法の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年制令205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、
選択的に、前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段と、前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有する画像形成装置。
【請求項2】2次元ビットマップ情報を発生する手段は、再生画像全面より小さい所定の大きさの2次元ビットマップ情報を繰り返して読み出し、再生画像全面に2次元ビットマップ情報を発生することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は紙幣や有価証券あるいは各種金券などの複製が禁止された紙葉類の偽造防止機能を備えた複写機などに用いる画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機などのハードコピーは、原稿に忠実な画像を形成することを目的として技術開発が進められてきた結果、近年では一見してオリジナル画像と区別がつかない再生画像を形成できるカラー複写機も市販されている。このようにオリジナル画像にきわめて近い再生画像が得られると、紙幣や有価証券などの偽造に悪用される恐れがある。
【0003】
従来、このような偽造を防止するため、入力画像信号が複写を禁止されている紙幣や証券類の画像信号であるかを特徴抽出により判別し、複写を禁止された画像信号であると判定した場合は、縮小処理や鏡像反転などの変換処理を行ってから画像を再生することにより偽造を防止する方法が考案されている(たとえば特開平1-316783)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような方法では、複写が禁止されているものか否かの判定を多少なりとも誤った場合、通常の画像の再生が正常にできなくなったり、複写が禁止されているにも関わらず正常な再生画像を得ることができてしまうという問題点を有していた。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、紙幣や有価証券などの安易な偽造を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、選択的に、前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段とを設け、前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有することを特徴とする。
【0007】
また、2次元ビットマップ情報を発生する手段は、再生画像全面より小さい所定の大きさの2次元ビットマップ情報を繰り返して読み出し、再生画像全面に2次元ビットマップ情報を発生することを特徴とする。本発明は上記の構成によって、記録画像として、入力画像の他に画像形成装置を特定するための所定情報が重畳されるので、例えば、不正使用(紙幣や有価証券などを画像出力する使用)を行った全ての不正使用者に対して、一律に、心理的な抑止力が働くことになる。このことにより、匿名的な偽造行為に対する抑圧効果が見込まれる。所定情報は、画像形成装置を特定するための情報であって、画像形成装置自体に予め内蔵され、繰り返して読み出されて入力画像信号に重畳される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例の画像形成装置を用いたカラー複写機の画像信号処理部のブロック図である。図1において、ラインイメージセンサ21はR,G,Bに色分解された原稿の画像信号R,GおよびBを出力する。A/D変換器22、23および24はラインイメージセンサ21からの画像信号R,GおよびBをディジタル信号に変換する。シェーディング補正回路25はイメージセンサ21からのディジタル画像信号のシェーディング歪を補正し、シェーディング補正された画像信号26、27および28を出力する。ガンマ補正回路30はシェーディング補正された画像信号26、27および28を入力とし、画像信号の階調性を補正し、階調補正した画像信号Dr,DgおよびDbを出力する。マスキング処理回路31は階調補正した画像信号Dr,DgおよびDbを用いて、プリントに必要な適正量のC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)を算出するとともに墨版生成のため適正なBk(ブラック)を算出する。セレクタ32はC,M,YおよびBkのうち1つを順次選択して信号33を出力する。パルス幅変調回路34はセレクタ32により選択された信号33に基づいてパルス幅変調を行ない、パルス幅変調された画像信号35を出力する。レーザドライバ36はパルス幅変調された画像信号35で半導体レーザを駆動する。パルス幅変調回路34およびレーザドライバ36を含む回路37は本実施例の画像形成装置に属する。
【0009】
レーザドライバ36を含むプリンタ部は周知のレーザービームプリンタであり、C,M,Y,Bkの色毎に面順次で画像を形成し、重ねることにより原稿のカラー画像を再生する。イメージセンサ21を含む画像読み取り部は4回原稿を副走査し、セレクタ32はC,M,Y,Bkの信号を原稿読み取り部の副走査毎に切り換える。
【0010】
特徴抽出回路38はシェーディング補正された画像信号26、27および28をもとにあらかじめ設定されている紙幣証券類の特徴とマッチングするか否か判定する。CPU40はCPUバス39を介していくつかの前記判定結果を読みとり、判定結果をもとに画像信号が紙幣証券類であるかの最終判定を行う。CPU40は肯定判定した場合、出力ポートの判定信号41をハイレベルにする。パルス幅変調回路34は判定信号41がハイレベルであるときは、変調パターンを変化させて所定の情報を再生画像に付与する。このパルス幅変調回路34についての詳細を次に説明する。
【0011】
図2はパルス幅変調回路34のブロック図である。D/Aコンバータ51はセレクタ32で選択されたディジタルの画像信号33をアナログ画像信号52に変換する。変調回路53は内部で発生する三角波とアナログ画像信号52を比較することによってパルス幅変調を行う。変調回路53は内部で2種類の三角波を発生し、各三角波に基づいて変調された2つのパルス幅変調信号54および55を出力する。セレクタ56は信号61がローレベルのときにパルス幅変調信号54を選択し、信号61がハイレベルのときにパルス幅変調信号55を選択する。付加情報発生回路58は再生画像に付与する情報を信号59として発生する。付加情報発生回路58についての詳細は後述する。アンドゲート60はCPUの出力ポートの判定信号41がローレベルのときは信号61をローレベルに固定し、出力ポートの判定信号41がハイレベルのときは信号59を信号61としてそのまま出力する。
【0012】
この構成により、CPU40が入力画像信号を紙幣や証券類のものであると判定しない場合、信号61はローレベルに固定されセレクタ56はパルス幅変調信号54を常時選択するので通常の画像が再生される。また、CPU40が入力画像信号を紙幣や証券類のものであると判定した場合、信号61は付加情報発生回路58の出力信号59によりセレクタ56はパルス幅変調信号54を選択するかパルス幅変調信号55を選択するかを局所的に切り替えるので、入力画像信号は付加情報発生回路58の出力信号59の情報が付加された状態となる。そこで再生画像においてパルス幅変調特性の変化を解析することにより、再生画像に付与された情報を得ることが可能である。
【0013】
図3は付加情報発生回路58の発生する信号の例である。付加情報発生回路58は図3のようなビットマップデータを繰り返し読みだすことにより再生画像全面に図3の付加情報をパルス幅変調特性の変化として付加することができる。たとえば図3の矩形1ますはN(整数)画素に相当するようにする。また、付加する情報はたとえば画像形成装置のシリアルナンバーとすることにより、再生画像からその画像を再生した画像形成装置を特定することができる。付加する情報としては日付や地域コードなどとしても良い。
【0014】
図4は変調回路53のブロック図である。シリアルインパラレルアウトのシフトレジスタ73は画像信号に同期した画素クロック71をシリアル入力、画素クロックの8倍の周波数で画素クロックに同期したクロック72をシフトクロックとして入力され、シフトレジスタ73は45°ずつ位相の異なる8つの信号78を出力する。3ビットバイナリカウンタ76はレーザービームプリンタ部の発生するライン同期パルス信号75をクロック入力とし、3ビットのカウント値を信号77に出力する。セレクタ74はシフトレジスタ73から出力される45°ずつ位相の異なるQA?QH出力の8つの信号78を入力とし、3ビットバイナリカウンタ76のカウント値77により信号78を順次選択して信号79を出力する。この信号79はレーザービームプリンタ部のライン走査ごとに45°ずつ位相がずれるクロックとなる。三角波発生回路80は信号79に基づき信号79と同じ周波数、位相である三角波82をパターン信号として発生する。三角波発生回路81はシフトレジスタ73のQA出力に基づきQA出力と同じ周波数、位相である三角波83をパターン信号として発生する。コンパレータ84は三角波82とアナログ画像信号52を比較することによってパルス幅変調信号55を出力し、コンパレータ85は三角波83とアナログ画像信号52を比較することによってパルス幅変調信号54を出力する。
【0015】
図5はセレクタ56が変調信号54を選択したときの再生画像の変調パターンの例であり、図6はセレクタ56が変調信号55を選択したときの再生画像の変調パターンの例である。したがって図1のCPU40が肯定判定をし、制御信号としてハイレベルの判定信号41を出力した場合、図5のような変調パターンの再生画像の中に、図3のような情報が図6のような変調パターンとして組み込まれることになり、この変化を解析することにより、再生画像に付与された図3のような所定の情報を知ることができる。このとき、図5の変調パターンに対して図6の変調パターンは7.125°傾いているだけであるので、変調はパターンが付加情報発生回路58の出力信号59の情報により局所的に切り替わっても再生画像の再現性に影響を与えることは少なく、再生画像の画質を低下させることはない。この影響をさらに小さくする必要がある場合は、変調パターンの傾きの変化をさらに小さくすることも可能である。
【0016】
また、実施例ではPWM変調の変調特性の切換えに付いて述べたが、多値ディザ法や、濃度階調法を用いた場合でも、閾値パターンの切換やスクリーン角の切換により再生画像への情報付加を行っても良い。
【0017】
さらに、本実施例では入力画像が複写が禁止されたものであると判定したときのみ再生画像に情報を付加するとしているが、変調パターンの切換が再生画像の画質を与える影響が無視できる場合には、判定手段を省略して常に再生画像に付加情報を与えるようにしても良い。さらに本実施例では、再生画像に付加する情報はシリアルナンバーを数字そのもので付与しているが、バーコードなどの符号化パターンにしてもよい。
【0018】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、画像形成に用いた画像形成装置を特定するために、少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と、選択的に、前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段とを設け、前記付加手段から信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有することによって、記録画像として、入力画像の他に画像形成装置を特定するための所定情報が重畳されるので、例えば、不正使用(紙幣や有価証券などを画像出力する使用)を行った全ての不正使用者に対して、一律に、心理的な抑止力が働くことになる。このことにより、匿名的な偽造行為に対する抑圧効果が見込まれる。所定情報は、画像形成装置を特定するための情報であって、画像形成装置自体に予め内蔵され、繰り返して読み出されて入力画像信号に重畳される。このため、使用者は、装置の使用に際して、特別な入力操作を行う必要がないので、装置の使用が煩わしくなることがない。また、装置の使用は、特定の人のみに制限されないので、任意の人が使用できる。また、所定情報は、画像形成装置自体に予め内蔵されて発生されるものであるので外部からのアクセスにより、所定情報を付加しないように設定することはできない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例の画像形成装置を用いたカラー複写機の画像信号処理部のブロック図
【図2】
同画像信号処理部におけるパルス幅変調回路のブロック図
【図3】
同パルス幅変調回路における付加情報発生回路が発生する情報信号の一例を示す図
【図4】
同パルス幅変調回路における変調回路のブロック図
【図5】
同パルス幅変調回路における変調パターンの一例を示す図
【図6】
同パルス幅変調回路における他の変調パターンの一例を示す図
【符号の説明】
21 イメージセンサ
25 シェーディング補正回路
30 ガンマ補正回路
31 マスキング処理回路
32 セレクタ
34 パルス幅変調回路
36 レーザドライバ
38 特徴抽出回路
53 変調回路
56 セレクタ
58 付加情報発生回路
73 シフトレジスタ
74 セレクタ
76 カウンタ
80、81 三角波発生回路
84、85 コンパレータ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-16 
出願番号 特願2000-389649(P2000-389649)
審決分類 P 1 651・ 16- ZA (H04N)
最終処分 取消  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
井上 信一
登録日 2003-05-16 
登録番号 特許第3429744号(P3429744)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 画像形成装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  

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