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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) C12M
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) C12M
管理番号 1150377
審判番号 無効2003-35449  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-04 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2006-08-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3136129号発明「核酸増幅反応モニター装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3136129号の請求項1?7に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
(1)本件特許第3136129号の請求項1?7に係る発明についての出願は、1992年5月6日(パリ条約による優先権主張1991年5月2日、米国)に国際出願された特願平4-158454号の一部を平成10年2月2日に新たな特許出願(特願平10-21236号)としたものであって、平成12年12月1日にその発明について特許権の設定登録がなされ、この特許に対して、平成15年10月30日付けで、バイオ-ラッド・ラボラトリーズ・インコーポレーテッドより本件特許無効審判が請求され、これに対し、平成16年6月24日付で、被請求人より答弁書並びに訂正請求書が提出され、これに対し、平成16年8月26日付で、請求人より弁駁書が提出されたものであり、その間、請求人より平成16年4月30日付、および6月9日付で上申書が提出され、被請求人より7月9日付で上申書が提出され、請求人より平成17年1月12日付、および1月28日付で上申書が提出され、被請求人より平成17年3月7日付で上申書が提出されている。

II.訂正の適否
1.訂正の内容
被請求人は本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めているところ、その内容は以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項3「複数の核酸増幅反応混合物を収容するようにされた、請求項1に記載の装置。」を、「複数の核酸増幅反応混合物を収容するようにされた、請求項1に記載の装置であって、増幅前に存在する標的核酸量の定量のために使用される、装置。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項3は請求項1を引用するものであり、その内容を読み込むと、請求項3は、「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であって、1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器、及び前記1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し、ここで該光学系は、前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し、これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である、ことを特徴とする装置であって、複数の核酸増幅反応混合物を収容するようにされた装置。」というものである。
そうすると、上記訂正は、請求項3の「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターする装置」の使用態様を、「増幅前に存在する標的核酸量の定量」を行うために、「複数の核酸増幅反応混合物からの、複数の循環期間にわたる各光学シグナルの循環依存的変化」の測定値を得ることに特定するものといえるから、特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(2)また、上記訂正事項に関連して、本件特許明細書には、「蛍光は、PCR過程のサイクル間に測定可能であるから、PCRの指数相および生成物がプラトー相に達したサイクルが容易に決定され得る。より多くの標的DNAが、PCRの開始時点に存在するほど、より早く反応はプラトー相、すなわち生成物蓄積速度が減少し始める時点に達する。プラトーに達するに要するサイクル数は、試料中に存在する標的量に直接に関連するため、PCR進行中における蛍光の監視は、少量のDNAの定量に役立つ。」(特許明細書【0085】)、「試料中の標的DNAが多いほど、反応物はより速く測定可能な蛍光増大を得、最終的には蛍光のプラトー水準に達する。事実、反応物の蛍光が測定可能に増大を開始した時点は、増幅前にどの程度標的が存在したかを示す効果的な定量的尺度である。」(特許明細書【0103】)、「増幅を通しての蛍光の連続的検出は、出発時に存在する標的量を反映する増幅プロフィールを与えた。」(特許明細書【0124】)等の記載があり、これらの記載は、請求項3の「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターする装置」により測定される「1又は複数の核酸増幅反応混合物からの、複数の循環期間にわたる各光学シグナルの循環依存的変化」の測定値を、「増幅前に存在する標的核酸量の定量」を行うために用いることを内容とするものであり、換言すれば、本件特許明細書には、「増幅前に存在する標的核酸量の定量」を行うために、「複数の核酸増幅反応混合物からの、複数の循環期間にわたる各光学シグナルの循環依存的変化」の測定値を得ることが記載されているといえる。
そうすると、上記訂正は、特許明細書または図面に記載した事項の範囲内のものである。
(3)そして、上記訂正は、本件装置の使用態様を特定したものにすぎず、装置自体の構成が変わることはないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書きに適合し、平成15年改正前特許法第134条第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.当事者の主張
1.請求人の主張
(1)請求人は、平成15年10月30日付の審判請求書において、訂正前の本件特許の請求項1?7に係る発明について、「これらの特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第10号証を提出して、その理由を、概略、以下のとおり主張している。
「本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の優先日より前に発行されていた甲第8号証刊行物に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許を受けたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。」

甲第1号証:特許公報(特許第3136129号)
甲第2号証:細胞工学、1989年3月号、商品広告「PERKIN ELMER CETUS DNA Amplification System」(1989年3月1日発行)
甲第3号証:実験医学増刊、「PCRとその応用」、商品広告「PERKIN ELMER CETUS DNA Amplification System」(1990年6月20日発行)
甲第4号証:TaKaRaカタログ「Reagents For Genetic Engineering Research」1990年版(宝酒造株式会社発行)
甲第5号証:TaKaRaの「BIO TECHNOLOGY CATALOG」1992年版(宝酒造株式会社発行)
甲第6号証:宝酒造株式会社作成 商品パンフレット「PERKIN ELMER CETUS DNA Amplification System」(平成2年ころ)
甲第7号証:宝酒造株式会社「PCRテクノロジー -DNA増幅の原理と応用-」(1990年10月1日発行)
甲第8号証:進化の研究についてのレポート、マックス・プランク生物物理化学研究所、生化学動態研究部、1991年4月20日発行、およびその表紙、巻頭言、目次および48?56頁の抄訳
甲第9号証:「進化の研究についてのレポート(REPORT ON EVOLUTIONRRESEARCH)」の位置づけ、刊行日等について宣言した、Dr.Ruthild Winkler-Oswatishによる、2000年12月20日付の宣誓供述書およびその訳文
甲第10号証:東京化学同人発行の生化学辞典(第2版)(1990年11月22日発行)、1034ページ
(2)請求人は、また、平成16年8月26日付の弁駁書に添付して、以下の甲号証を提出している。
甲第11号証:(保全異議申し立てにおける乙第18号証)
アイゲン博士の2000年12月20日付宣誓供述書
甲第12号証:(保全異議申し立てにおける乙第19号証)
ギュンター博士の2000年12月20日付宣誓供述書
甲第13号証:(保全異議申し立てにおける乙第20号証)
アイゲン博士の供述書
甲第14号証:(保全異議申し立てにおける乙第21号証)
「REPORT ON THE INTERNATIONAL WORKSHOP」(1991年6月)
甲第15号証:(保全異議申し立てにおける乙第22号証)
審査基準 平成6年12月発行
甲第16号証の1:(保全異議申し立てにおける乙第23号証の1)
欧州特許付与に関する条約の抜粋 2004年2月18日アクセス
甲第16号証の2:(保全異議申し立てにおける乙第23号証の2)
欧州特許付与に関する条約の和訳の抜粋 2003年4月発行
甲第17号証の1:(保全異議申し立てにおける乙第24号証の1)
「Molecular Cloning-Laboratory Manual-1」の抜粋および抄訳 1989年発行
甲第17号証の2:(保全異議申し立てにおける乙第24号証の2)
「Molecular Cloning-Laboratory Manual-3」の抜粋および抄訳 1989年発行
甲第18号証の1:(保全異議申し立てにおける乙第25号証の1)
2000年10月30日付ファクシミリ送信票および訳文 2000年10月30日
甲第18号証の2:(保全異議申し立てにおける乙第25号証の2)
EP0583265に対する異議手続きにおける異議申立人による反論申請書および抄訳 2000年10月12日
甲第19号証:(保全異議申し立てにおける乙第27号証)
「DNA Synthesis」の抜粋および訳文 1974年発行
甲第20号証:(保全異議申し立てにおける乙第28号証)
「Mechanism Ethidium Bromide Inhibition of RNA Polymerase」および抄訳 1973年2月27日発行
甲第21号証:(保全異議申し立てにおける乙第29号証)
ビーブリッヒャー博士の宣誓供述書および訳文 2004年6月10日作成
甲第22号証:(保全異議申し立てにおける乙第30号証)
ヨーロッパ特許EP0583265に対する欧州特許庁における異議手続きの包袋の抜粋および抄訳
甲第23号証:第一次無効審判(無効2002-35399)の答弁書(「第一次答弁書」)
甲第24号証:第一次無効審判の審理において、平成15年7月3日に提出された口頭審理陳述要領書(「第一次要領書」)
甲第25号証:第一次無効審判の審理において、平成15年7月31日に提出された上申書(「第一次上申書」)
甲第26号証:マグローヒル科学技術用語大辞典、改訂第3版、表紙、1194頁、1838頁、および奥付
甲第27号証:JIS工業用語大辞典、第5版、表紙、1508頁、2261頁、および奥付
甲第28号証:Noonanらの文献(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990年9月発行、Vol.87,pp.7160-7164
甲第29号証:RobinsonとSimonの文献(Nucleic Acids Research,Vol.19,No.7,p.1557-1562,1991年4月11日発行)
甲第30号証:PCRテクノロジー -DNA増幅の原理と応用-(1990年10月1日発行)の「第1部 方法論の基礎」「第1章 PCRのデザインと至適条件の設定」
甲第31号証:特許権侵害差し止め請求事件である平成14年(ワ)第9503号の原告第一準備書面
(3)請求人は、また、平成17年1月12日付の上申書、および、平成17年1月28日付の上申書に添付して、以下の甲号証を提出している。
甲第32号証:ヘルビング弁理士の2004年12月21日付宣誓供述書および訳文
甲第33号証の1:欧州特許庁からヘルビング弁理士への2005年1月10日付のレターおよび訳文
甲第33号証の2:欧州特許庁異議部による欧州特許0872562の異議決定理由書および訳文 2005年1月7日
甲第33号証の3:欧州特許庁異議部のもとで2004年12月7日に行われた欧州特許0872562異議事件の口頭審理の議事録および訳文
甲第34号証:上記口頭審理に際し欧州特許庁異議部で記録した証拠採取の記録調書および訳文
甲第35号証:アイゲン博士の2004年9月19日付宣誓供述書および訳文
甲第36号証:欧州特許0872562の異議審理における証拠整理表
2.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の乙第1号証ないし乙第15号証を提出している。

乙第1号証:(保全異議申し立てにおける甲第11号証)
リンデマン博士の2000年12月19日付宣誓書
乙第2号証:(保全異議申し立てにおける甲第12号証)
シュヴィーンホルスト博士の2000年12月18日付宣誓書
乙第3号証:(保全異議申し立てにおける甲第13号証)
ヴォシウス特許事務所の弁理士ザビック博士からアイゲン教授への2000年8月30日付書簡
乙第4号証:(保全異議申し立てにおける甲第14号証)
アイゲン教授の秘書からザビック博士への2000年9月5日付書簡
乙第5号証:(保全異議申し立てにおける甲第15号証)
マックスプランク研究所の図書館長からの2002年3月26日付書簡
乙第6号証:(保全異議申し立てにおける甲第16号証)
UB/TIB図書館からの2002年3月22日付書簡
乙第7号証:(保全異議申し立てにおける甲第17号証)
低ザクセン州大学図書館からの2002年3月25日付書簡
乙第8号証:(保全異議申し立てにおける甲第18号証)
Detection of Specific DNA sequences by fluorecece amplification:A color complementation assay(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86巻、9178-9182頁、1989年12月)
乙第9号証:(仮処分申し立てにおける技術説明書に添付された参考資料)
「細胞工学別冊、目で見る実験ノートシリーズ、新版 バイオ実験 イラストレーテッド 3+ 本当に増えるPCR」、表紙、48-49頁および奥付
乙第10号証:(保全異議申し立てにおける甲第20号証)
独和辞典、博友社、205頁および奥付き
乙第11号証:(保全異議申し立てにおける甲第21号証)
生化学辞典 第2版、635頁および奥付
乙第12号証:(保全異議申し立てにおける甲第22号証)
Ausubelら、Molecular Cloning-A-Laboratory Manual-3、1989、表紙、目次のxxxi頁、E.5?E.7
乙第13号証:(保全異議申し立てにおける甲第25号証)
スティーブン ディックマンの2005年2月25日付宣誓供述書
乙第14号証:(保全異議申し立てにおける甲第26号証)
バーバラ シュレーダーの2005年2月24日付宣誓供述書
乙第15号証:(保全異議申し立てにおける甲第23号証)
Schoberら(BioTechniques,vol.18,No.4,(1995)p652-658)

IV.当審の判断
1.本件発明
平成16年6月24日付の上記訂正請求は上述のとおり容認されるべきものであるから、本件請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1?7」という。)は、上記訂正請求により訂正された特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された、以下のとおりのものである。
【請求項1】 複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であって、1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器、及び前記1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し、ここで該光学系は、前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し、これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である、ことを特徴とする装置。
【請求項2】 単一の核酸増幅反応混合物のみを収容するようにされた、請求項1に記載の装置。
【請求項3】 複数の核酸増幅反応混合物を収容するようにされた、請求項1に記載の装置であって、増幅前に存在する標的核酸量の定量のために使用される、装置。
【請求項4】 前記検出器が蛍光発生シグナル検出するように作用する、請求項1?3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】 前記検出器が、各反応混合物からの光シグナルを集めるための1又は複数の光ファイバーリードを有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】 前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための1又は複数の反応容器をさらに有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】 前記検出器が、各反応混合物からの光シグナルを集めるための1又は複数の光ファイバーリードを有し、そして各光ファイバーリードが、前記1又は複数の反応容器の各々の透明な又は半透明なキャップと光学的に連係するようにされている、請求項6に記載の装置。

2.請求人の主張する無効理由
請求人の主張は、
(2-1)甲第8号証は、遅くとも本件優先日より前である1991年4月20日には頒布された刊行物であり、且つ、
(2-2)本件発明1?7は、甲第8号証に記載された発明である、
から、本件発明1?7は、特許法第29条第1項第3号に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。

3.被請求人の反論
これに対し、被請求人は、
(3-1)甲第8号証は、本件優先日より前に頒布された刊行物ではなく、
(3-2)本件発明1?7は、甲第8号証に記載された発明ではない、
から、本件発明1?7は、特許法第29条第1項第3号に違反して特許されたものではない、と主張する。

4.甲第8号証は、本件優先日前に頒布された刊行物といえるか、否かについて
(4-1)甲第8号証は、表紙に「進化の研究についてのレポート 生化学動態研究部 マックス・プランク生物物理化学研究所 ゲッティンゲン 1990」と記載された、表紙、巻頭言、目次および本文70ページからなるレポートであり、巻頭言には、「このリポートは、ゲッティンゲンのマックス・プランク生物物理化学研究所、生化学動態研究部での分子自立形成に関して行われた研究を記載する。…マンフレッド・アイゲン ゲッティンゲン、1990年12月20日」と記載されている。

(4-2)請求人は、これにつき、審判請求書および弁駁書において、審判請求書に添付した甲第9号証、また、弁駁書に添付した甲第11?14号証、甲第18号証の2および甲第21、22号証を引用して、甲第8号証は、1991年4月18?20日開催の国際会議”Selection-natural and unnatural-in biotechnology”の期間中に一般に公開されたものであるから、本件優先日(1991年5月2日)前に頒布された刊行物である旨、主張する。
請求人の引用する甲号証は、以下のとおりのものである。
(4-2-1)甲第9号証は、マックス・プランク生物物理化学研究所においてアイゲン教授の研究チームの研究者として勤務する、Winkler-Oswatish博士による、本件特許とは無関係の別特許である欧州特許0583265の異議申し立て事件に際し、欧州特許庁に対し提出された、2000年12月20日付の宣誓供述書であり、
「(i)アイゲン教授の研究チームでの私の研究によって、私は、同封物1として添付する報告書を知っている。
(ii)私の知識によれば、この報告書は、研究チームの内部研究記録として書かれており、アイゲン教授の明らかな指示によりMPGの内部用としてのみ使用された。
(iii)私の知識によれば、その報告書は、ゲッティンゲンのマックス・プランク生物物理化学研究所で1991年4月18?20日に開催された国際会議”Selection-natural and unnatural-in biotechnology”の期間中に、初めて一般に公開された。」
と記載されている。そして当該宣誓供述書に添付された同封物1は、甲第8号証のレポートの表紙と、本文の48、49ページおよび53?55ページであると認められる。
(4-2-2)甲第11号証は、マックス・プランク生物物理化学研究所のアイゲン教授による、上述の欧州特許0583265の異議申し立て事件に際し、欧州特許庁に対し提出された、2000年12月20日付の宣誓供述書であり、
「(i)私は、同封物1として添付する報告書を、1990年末に、マックス・プランク生物物理化学研究所における私の研究チームの内部研究記録として作成した。
(ii)この報告書は、1991年1月に行われる評価のための研究所の顧問会に委ねられ、したがってMPGの内部用としてのみ使用された。
(iii)この報告書は、ゲッティンゲンのマックス・プランク生物物理化学研究所で1991年4月18?20日に開催された国際会議”Selection-natural and unnatural-in biotechnology”の期間中に、初めて一般に公開された。」
と記載されている。
(4-2-3)甲第12号証は、1989年春から1991年夏まで、マックス・プランク生物物理化学研究所においてアイゲン教授の研究チームの共同研究者として働いた、ギュンター博士による、上述の欧州特許0583265の異議申し立て事件に際し、欧州特許庁に対し提出された、2000年12月20日付の宣誓供述書であり、
「(i)アイゲン教授の研究チームでの私の研究によって、同封物1として添付する報告書を知っている。
(ii)この報告書は、研究チームの内部研究記録として作成され、アイゲン教授の明らかな指示によりMPGの内部用としてのみ使用されたはずである。
(iii)私には、この報告書が外部の者に欧州特許0583265の優先日以前に入手可能になったとは知らされていない。」
と記載されている。
(4-2-4)甲第13号証は、アイゲン教授による供述書であり、
「(i)私は、「進化の研究についてのレポート」生化学動態研究部、マックス・プランク生物物理化学研究所、ゲッティンゲン、1990年、という冊子の著者であり、
(ii)上記冊子は、ゲッティンゲンにて1991年4月18から20日に開催された会議”Selection-natural and unnatural-in biotechnology”の参加者に配布された。」
旨、記載されている。
(4-2-5)甲第14号証は、表紙に「国際ワークショップ・レポート SELECTION-NATURAL AND UNNATURAL-IN BIOTECHNOLOGY 1991年4月18?20日、マックス・プランク生物物理化学研究所、ゲッティンゲン、ドイツにて開催」と記載されたレポートであり、その「まえがき」には、「”Selection-Natural and Unnatural-in Biotechnology”という表題のもと、国際ワークショップが1991年4月19日および20日にゲッティンゲン/ドイツにおいて開催された。最新のトピックである”応用分子進化”およびそのバイオテクノロジーにおける応用の展望について議論するため、ヨーロッパ各国および米国の約30人の科学者が、マックス・プランク生物物理化学研究所の同業者および製薬業界を代表する人々と一堂に会した。…ゲッティンゲン 1991年6月 マンフレッド・アイゲン」と記載されている。
(4-2-6)甲第18号証の2は、上述の欧州特許0583265に対する異議手続きにおける異議申立人による反論申請書であり、異議申立人であるBASF社が、「A.ショーバー(1990年):大規模な平行進化の実験:進化の研究についてのレポート1990、マックス・プランク生物物理化学研究所 生化学動態研究部、ゲッティンゲン、53?55頁」を異議の証拠D2として提出していたことが記載されている(第1頁のEntgegenhaltungenの項)。
(4-2-7)甲第21号証は、1973年から1994年まで、マックス・プランク生物物理化学研究所の生化学動態研究部の一員であったビーブリッヒャー博士の、2004年6月10日付の宣誓供述書であり、
「(i)私は、1990年のゲッティンゲンのマックス・プランク生物物理化学研究所の生化学動態研究部の研究を記述した「進化の研究についてのレポート」という製本された冊子(付属書I)に掲載された「自己増殖するRNAの突然変異連続体」という論文の著者である。上記冊子は、上記研究部の部員が、アイゲン教授の指揮の下に行った研究の成果を記載した論文の集成であり、マックス・プランク・ソサエティに対する同部の研究報告として作成された。
(ii)上記冊子の表紙、序文、目次および論文本文の1?70ページは、1991年4月18から20日にゲッティンゲンにおいて開催された国際会議”Selection-Natural and Unnatural-in Biotechnology”の参加者に配布された。その会議の目的は、「国際ワークショップ・レポート Selection-Natural and Unnatural-in Biotechnology」(付属書II)の1?2頁にある序文から分かるように、進化に関する生物工学の分野において先導的なグループの成果の交換および活動の調整であった。上記ワークショップ・レポートには、招待された参加者および研究部からの出席者と同様に研究会のプログラムも記載されている。
(iii)我々研究部の最も関連する成果は、ポスターのみならず、アイゲン教授の口頭による発表および製本された冊子の形で、上記研究集会において紹介された。…
(iv)私が知る限りでは、1991年4月18から20日にゲッティンゲンにおいて開催された上記会議の期間中、主催者のスタッフによって、参加者の数に対応する部数の上記冊子が会議の机上に置かれ、参加者に対しその他の書類および名札と共に手渡されました。上記の冊子の取り扱いについては、会議の参加者に対する明示又は暗黙の指示は一切ありませんでした。すなわち、会議のすべての参加者は、会議の後、上記の冊子を自由に持ち帰って、保管し、利用し、複写し、かつ譲渡することが出来た。」
旨、記載されている。そして、上記宣誓書に添付された附属書Iは、甲第8号証と同じ文書であり、付属書IIは、甲第14号証と同じ文書である。
(4-2-8)甲第22号証は、上述の欧州特許0583265に対する欧州特許庁における異議手続きの包袋の抜粋であり、本件において甲第9、11、13号証および乙第1、2号証として提出された各宣誓供述書が、上記異議手続きにおいて、異議申立人BASF社がD2を異議の証拠として提出したのに対し、それが異議対象の特許の優先日前に公開されていないことを立証するために作成された経緯が記載されている。

(4-3)被請求人は、これに対し、答弁書、平成16年7月9日付および平成17年3月7日付の上申書において、答弁書に添付した乙第1?7号証、乙第10号証および平成17年3月7日付の上申書に添付した乙第13?15号証を引用して、後述の(4-4-1)?(4-4-3)に記載する3点を上げて、甲第8号証は、マックス・プランク研究所の内部報告書であって、本件優先日より前に頒布された刊行物ではないと反論している。
このうち、答弁書および平成16年7月9日付上申書における被請求人の反論は、審判請求書および請求人が提出した平成16年4月30日付、および6月9日付上申書に添付した参考資料(本件特許に基づく仮処分決定に対する保全異議申し立て事件(平成15年(モ)第15045号)の保全異議申立書、債務者第1?3準備書面、および債務者が提出した証拠)に記載された請求人の主張に対してなされたものである。
そして、請求人がその後弁駁書に添付して提出した甲第11?14号証および甲第18号証の2は、保全異議申し立てにおける乙第18?21号証および乙第25号証の2として請求人の上記上申書に添付した参考資料に含まれており、被請求人は、答弁書および平成16年7月9日付上申書において、これらの証拠に基づく請求人の主張に対しても実質的に反論しているが、本審決では、被請求人の上記主張における保全異議申し立ての乙号証の引用を、対応する本件の甲号証の表示に改めて記載する。
当審は、上記答弁書および上申書が被請求人から提出された後、請求人の提出した弁駁書を平成16年9月2日付で被請求人に送付したが、その際、当該弁駁書に新たに添付した甲第21、22号証も被請求人に送付している。したがって、平成17年3月7日付の被請求人の上申書は、これらの甲号証をも念頭に置いたものであると認められる。
被請求人が引用する乙号証は、以下のとおりのものである。
(4-3-1)乙第1号証は、1981年?1994年の期間、マックス・プランク生物物理化学研究所のアイゲン教授の部門で協力者として働いていた、リンデマン博士による、上述の、本件特許とは無関係の別特許である欧州特許0583265の異議申し立て事件に際し、欧州特許庁に対し提出された、2000年12月19日付の宣誓供述書であり、
「(i)私はアイゲン教授の部門における分子の進化的最適化の分野において仕事をしていたので、同封物1として添付された報告書を知っている。
(ii)この報告書は、部門080(生物化学動力学、アイゲン教授)の内部書類として作成され、この部門の様々な研究室の仕事を記録していた。
(iii)アイゲン教授は、その書類が作成される前および作成された後において、その書類そのものまたはその書類中の情報を第三者(特にサンタフェ研究所のスチュワート・カウフマンまたは彼の協力者)が入手できるようにしてはならないと私に厳しく指示した。
(iv)私は、この報告書が外部の人物に利用可能にされたことを知らない。」
旨、記載されている。
(4-3-2)乙第2号証は、1987年?1992年の期間、マックス・プランク生物物理化学研究所のアイゲン教授のワーキンググループで協力者として働いていた、シュヴィーンホルスト博士による、上述の欧州特許0583265の異議申し立て事件に際し、欧州特許庁に対し提出された、2000年12月18日付の宣誓供述書であり、
「(i)私はアイゲン教授のワーキンググループにおける分子の進化的最適化の分野において仕事をしていたので、同封物1として添付された報告書を知っている。
(ii)この報告書は、このワーキンググループの内部書類として作成され、私は、アイゲン教授から、この報告およびその内容を第三者(特にサンタフェのスチュワート・カウフマンまたは彼の協力者を含む)が入手できるようにしてはならないとの厳しい指示を受けた。
(iii)私は、この報告書が外部の人物に利用可能にされたことを知らない。」
旨、記載されている。
(4-3-3)乙第3号証は、ヴォルカー ヴォシウス博士弁理士事務所・弁護士事務所のザビック博士弁理士が、マックス・プランク生物物理化学研究所のアイゲン教授に宛てた、2000年8月30日付の書面であり、
「2000年8月29日の電話について、「Report on Evolution Research」のコピーを私どもに提供頂きますよう依頼致します。この報告書の最初の頁を添付します。更に、この会議に誰が参加したのかをご教示下さい。」
と記載されている。
(4-3-4)乙第4号証は、マックス・プランク生物物理化学研究所のアイゲン教授から、V.ヴォシウス博士弁理士事務所のザビック博士に宛てた、2000年9月5日付けの書面であり、
「貴殿からの問い合わせにつき、貴殿から依頼頂いた報告書は、マックス・プランク研究所の内部報告書であり、この形式では公開されていないことをお知らせ致します。」
と記載され、レヒテン秘書の署名がされている。
(4-3-5)乙第5号証は、マックス・プランク生物物理化学研究所のオットー-ハーン図書館のロイゼ館長が、V.ヴォシウス博士弁理士事務所のグルント博士に宛てた、2002年3月26日付けの書面であり、
「「Report on Evolution Research」との表題の1990年12月のアイゲン教授の報告書は、電子的な様式でも、書面の様式でも、オットー-ハーン図書館に所蔵されていないことを確認した。」
旨、記載されている。
(4-3-6)乙第6号証は、大学図書館ハノーバーおよび技術情報図書館の定期刊行物受け入れ部のボック-グラペンティン部長が署名した、2002年3月22日付けの書面であり、
「アイゲン教授による1990年12月のマックス・プランク生物物理化学研究所の「Report on Evolution Research」は、印刷された様式でも、電子的な様式でも、大学図書館ハノーバーおよび技術情報図書館(UB/TIB)に受け入れられていないことを確認した。」
旨、記載されている。
(4-3-7)乙第7号証は、V.ヴォシウス博士弁理士事務所のグルント博士の、低ザクセン州大学図書館宛ての2002年3月22日付の書面に対する、公文書図書館館長プフロットによる、2002年3月25日付の返答の書面であり、
「アイゲン教授によるマックス・プランク生物物理化学研究所の1990年12月の「Report on Evolution Research」が、貴図書館の電子的データ処理により記録されていないこと、およびそれが貴図書館において利用可能ではないという事実を確認する書面を頂きたい。もしこのことが真実でなければ、記録された日付およびこの報告書が貴図書館において利用可能になった日付を教示されたい。」との問い合わせに対し、
「当図書館は上記表題を所有していない。」と返答した旨が記載されている。
(4-3-8)乙第10号証は、独和辞典の「Bericht」の項であり、訳語として「報告、報知」と記載されると共に、「?emfangen,報告を受ける」、「?abfassen,報告書を作成する」等の用法が挙げられている。
(4-3-9)乙第13号証は、Natureのレポーターとして1991年4月18日?20日のワークショップに出席した、スティーブン ディックマンによる、2005年2月25日付の宣誓供述書であり、
「(i)私は、このワークショップのすべてのセッションに参加した。
(ii)私は、この刊行物は、1991年4月のワークショップにおいて利用可能にされなかったと信じる。私は、参加者がこのワークショップに到着したときにこのレポートが参加者に配布されなかったこと、および、このワークショップの期間中の他のいずれの時間においてもこれが頒布されなかったことを信じる。
(iii)私はレポーターであったので、出席したミーティングにおけるすべての書類を集めることが仕事であり、本件冊子が利用可能にされていたのであれば、確実にコピーを作成したはずである。このワークショップの後、私は、このワークショップで学んだ技術に関して2件の記事を書いたが、この記事を書いたとき、私は本件冊子のコピーを有していなかったことから、私がこのレポートをワークショップで受け取らなかったことが確認される。
(iv)私は、ビーブリッヒャー博士の供述書に関し、本件冊子がワークショップの参加者に配布されたことに同意しない。この会議の目的が意見の自由な交換であったこと、およびその内容が機密でなかったことについては、同意する。」
旨、記載されている。
(4-3-10)乙第14号証は、当時、VCHフェアラクスゲゼルシャフトmbHの科学編集者であり、1991年4月18日?20日のワークショップに出席した、バーバラ シュレーダーによる、2005年2月24日付の宣誓供述書であり、
「(i)私は、このワークショップのすべてのセッションに参加した。
(ii)私は、このレポートのコピーをそのワークショップまたはそれ以外の時において受け取った記憶がない。私は、このレポートの受領について、具体的な、明確な記憶を有しておらず、また、曖昧な観念も有していない。
(iii)私の目的は、科学者の観点からこのワークショップを報告することであった。このワークショップの後、私は、このワークショップで学んだ技術に関して記事を書いたが、この記事は、明らかに本件冊子ではなく、「国際ワークショップレポート」中にみられる多くの詳細な事柄および参考文献を反映している。このことは、私に本件冊子を受け取った記憶がないことと整合する。」
旨、記載されている。
(4-3-11)乙第15号証は、1995年に発行されたBioTechniquesに掲載された、A.ショーバー、M.アイゲンらによる「進化的バイオテクノロジーにおける将来的なツールとしてのマルチチャンネルPCRおよび連続トランスファー機械」という表題の論文であり、656頁右欄下4行?657頁左欄12行には、「反応容器を密封し、そして直ちに氷冷した。サンプルを滅菌マイクロシリンジで取り出した後に、それぞれ隣接する5つの反応ウエルの内容物を保存しておき、100μL容量のウルトラマイクロキュベット中で蛍光測定をするために十分な溶液を提供した。30℃で増幅中のエチジウムブロマイドの蛍光増大を測定することにより、サーモスタット付き蛍光計LS5BにおいてQBポリメラーゼによるRNA増幅をモニターした。」と記載されている。

(4-4-1)被請求人は、「甲第8号証は、「公衆に対し頒布により公開することを目的として複製されたもの」ではないから、刊行物ではない。」と主張し、以下の点から、甲第8号証は、マックス・プランク研究所の内部報告書として作成され、本件特許の優先日前に外部者が利用可能な状態におかれたことはなく、公衆(不特定人)にとって入手可能な文献ではなかったことが明らかであり、特許法第29条第1項第3号にいう刊行物には該当しない、と主張する。
(i)甲第9、11、12号証において、甲第8号証はもともとマックス・プランク研究所の内部研究記録として作成され、そのように使用されてきたと供述されていること。
(ii)乙第1、2号証において、甲第8号証の共同作成者であるリンデマン博士およびシュヴィ-ンホルスト博士も、甲第8号証はマックス・プランク研究所生物物理学部門の内部報告書として作成されたこと、アイゲン教授から作成の前後を問わず第三者の利用が可能にならないよう指示されたこと、外部者に利用可能になったことは知らないことを供述していること。このことは、両博士が同研究所で働いていた時期から見て、1994年ころまでは甲第8号証が外部者に利用可能になったことはないことを示すものである。
(iii)乙第3、4号証において、フォシウス特許事務所のザビック弁理士が米国アプライド社の依頼を受け、2000年8月30日にアイゲン教授に甲第8号証のコピーの提供を依頼したところ、アイゲン教授の秘書レヒテン氏は、甲第8号証はマックス・プランク研究所の内部報告書であるから公開されなかった旨、返書していること。
(iv)乙第5、6、7号証において、フォシウス特許事務所のグルント弁理士が2002年3月22日に、マックス・プランク研究所の図書館、ドイツの基礎科学、化学、情報、数学および物理学の中央専門図書館(UB/TIB)および低ザクセン州大学図書館に問い合わせたところ、これらの図書館には甲第8号証が所蔵されていない旨の回答を受けたこと。
(4-4-1-2)しかしながら、
(i)甲第8号証が当初はマックス・プランク研究所の内部研究記録として作成されたものであったことと、その後当該記録が刊行物として頒布されることとは、直接関連がないから、甲第9、11、12号証についての被請求人指摘のことから直ちに甲第8号証が頒布された刊行物でないといえないことは明らかである。
(ii)また、乙第1、2号証は、甲第18号証の2および甲第22号証によれば、甲第9、11、12号証と同じく、欧州特許0583265に関する欧州特許庁の異議手続きで、異議申立人BASF AG(以下、「BASF社」という。)により本件配布冊子の一部が異議対象の特許発明の特許性を争う資料として提出されたのに対し、当該冊子が異議対象の特許についての優先日である1991年4月16日以前に公開されておらず、先行技術とはなり得ないことを立証する目的で、当該異議対象の特許の特許権者代理人により提出されたものである。
そして、これらのうち、甲第9、11号証では、同封物1として添付する報告書が、「ゲッティンゲンのマックス・プランク生物物理化学研究所で1991年4月18?20日に開催された国際会議”Selection-natural and unnatural-in biotechnology”(以下、「本件ワークショップ」という。)の期間中に、初めて一般に公開された。」と供述されているのに対し、甲第12号証には、「私には、この報告書が外部の者に欧州特許0583265の優先日以前に入手可能になったとは知らされていない。」と供述され、乙第1、2号証では、「アイゲン教授から、その書類が作成される前および作成された後において、その書類そのものまたはその書類中の情報を第三者(特にサンタフェ研究所のスチュワート・カウフマンまたは彼の協力者)が入手できるようにしてはならないと厳しく指示された」旨、および、「この報告書が外部の人物に利用可能にされたことを知らない」旨が供述されているだけであり、同封物1が本件ワークショップの期間中に公開されたことは供述されていない。
しかしながら、これらの甲および乙号証は、本来、本件冊子が1991年4月16日以前に公開されていないことを立証することを目的として作成されたものであり、本件冊子がその後公開されたかどうかを供述することは、これらの甲および乙号証の趣旨から見れば必ずしも必要ではないことであるから、甲第9、11号証において、「同封物1として添付する報告書が本件ワークショップの期間中に初めて公開された」旨をあえて供述したことには信憑性が認められる。一方、甲第12号証および乙第1、2号証ではこの点について触れていないことは、格別不自然なことではない。
また、乙第1、2号証における、「アイゲン教授から、その書類が作成される前および作成された後において、その書類そのものまたはその書類中の情報を第三者が入手できるようにしてはならないと厳しく指示された」旨の供述は、上述の異議に係る欧州特許0583265がアイゲン教授の発明に係るものであることを考慮すると、その特許出願の優先日である1991年4月16日当時の状況を述べたものとも解され、その後、「同封物1として添付する報告書が本件ワークショップの期間中に初めて公開された」ことと矛盾するものともいえない。
更に、乙第1、2号証における、「この報告書が外部の人物に利用可能にされたことを知らない」旨の供述は、供述者が知らなかったことを示すに留まるものである。
(iii)乙第3、4号証のやりとりは、マックス・プランク研究所としては、甲第8号証を、部外者にコピーを作成の上、これを提供するという形では公開していないと回答したことを示すに留まり、このことと、甲第8号証が本件ワークショップにて頒布されたことが矛盾するとはいえない。
(iv)乙第5、6、7号証は、甲第8号証の冊子が、いくつかの特定の図書館に所蔵されていないことを立証するにすぎず、これをもって、甲第8号証が本件特許の優先日前に頒布されていないとはいえない。

(4-4-2)被請求人は、また、以下の点を挙げて、甲第8号証については、本件ワークショップにおいて頒布されたことについての立証がなされていないだけでなく、むしろ配布されなかったことが推認されるから、「本件ワークショップで甲第8号証が配布された事実は認められない。」と主張する。
(i)乙第1、2号証において、リンデマン博士およびシュヴィ-ンホルスト博士は、宣誓書作成の2000年12月19日および18日の時点において、甲第8号証が公開されたことは知らないと供述していること。両博士は甲第8号証の作成に関与しており、甲第8号証が公開されれば当然にそのことを知っているはずである。特に、リンデマン博士は本件ワークショップに参加しており、本件ワークショップにおいて甲第8号証が配布、公開されたのであれば、そのことを知らないはずがない。
(ii)甲第12号証において、ギュンター博士も、本件ワークショップに参加していながら、本件ワークショップにおいて甲第8号証が配布、公開されたとは述べていないこと。甲第8号証が本件ワークショップの間またはその後に実際に配布されたか否か、あるいは外部の者に入手可能になったか否かについて、ギュンター博士が何ら明確な知識を持っていないことは、明らかである。
(iii)甲第9、11号証においては、「本件ワークショップにおいて同封物1が公開された」とされているが、公開とは、文書の頒布に限らず口頭で第三者に伝達した場合も含まれ、この記載からは、同封物1の頒布の事実を推認することができない。甲第14号証にも、同封物1が配布されたことを明示する記載も、窺わせる記載もない。ドイツ語の「Bericht」は、報告書よりも報告の意味で使用されることが多いから、「Bericht」が公開されたという表現から、請求人のいうように、宣誓書の内容を、報告書という文書が頒布されたと解することはできない。
(iv)甲第9、11、12号証に添付されたのは、甲第8号証の48、49,53、54、55頁だけにすぎないから、それ以外の頁については、頒布の経緯が立証されていない。
(v)甲第13号証は、作成経緯が全く不明確であり、その供述を信用することはできない。甲第13号証は、FAXされた原稿にアイゲン教授が署名をしただけのものであり、文面は英語であり、作成日付すら記載されておらず、宣誓したうえで供述したものでもない。アイゲン教授が慎重に甲第13号証を作成したとは思えない。また、その内容は、小冊子がいつ配布されたか述べていない。
(vi)甲第14号証には、甲第8号証が配布されたことを示唆する表現は全くなく、本件ワークショップにおける甲第8号証の配布の事実を推認させるものではない。むしろ、本件ワークショップにおけるマックス・プランク研究所の発表者は、アイゲン教授とマクカスキル博士だけであり、かりに甲第8号証が配布されたとしても、甲第8号証全体ではなく、アイゲン教授とマクカスキル博士の論文部分が配布されたに留まると解するのが自然であり、発表者ではないショーバーやシュトルンクの論文が配布された可能性はきわめて低い。甲第14号証には、各講演のアブストラクトが再収録されているが、そこには、ショーバーやシュトルンクの論文のアブストラクトを含んでおらず、且つその他に資料を配付したとは一切述べていない。
また、学会などでの配布物には、その表紙などにその学会名、日時、場所などが明記されるのが通常であるが、甲第8号証にはそのような記載がない。
(vii)乙第13、14号証において、本件ワークショップの参加者として甲第14号証に記載されている、当時「Nature」誌のジャーナリストであったスティーブン ディックマン氏、およびドイツ人ジャーナリストのバーバラ シュレーダー氏が、被請求人の米国代理人の問い合わせに対して、本件ワークショップにおいて甲第8号証は頒布されなかったと述べている。
(viii)乙第15号証は、ショーバー博士が甲第8号証の自らの論文をより詳細に論じた1995年発表の論文であるにもかかわらず、その中で甲第8号証については一切触れられていない。
(4-4-2-2)しかしながら、
(i)上述の欧州特許0583265に関する欧州特許庁の異議手続きで、異議申立人BASF社が本件配布冊子の53?55頁を異議の証拠として提出しており、これにつき、欧州特許0583265の特許権者は、当該証拠がマックス・プランク研究所の意に反して公開された等の争いをしていないと認められることからみて、少なくとも当該異議申し立て前のいずれかの時点で甲第8号証が公開されていたことが推認される。
また、乙第3号証において、米国アプライド社の依頼を受けたザビック弁理士からアイゲン教授に対して、本件配布冊子および国際会議について問い合わせがされていることからも、2000年8月29日の時点で、米国アプライド社に本件冊子の存在が知られていたことは明らかである。
このような状況を考慮すると、乙第1、2号証が作成された2000年12月19日および18日の時点において、両博士が「この報告書が外部の人物に利用可能にされたことを知らない」旨、供述したのは、単に両博士がこの報告書が公開されたことを知らなかったことを示すに留まるものである。
(ii)上述のとおり、甲第12号証は、本来、本件冊子が1991年4月16日以前に公開されていないことを立証することを目的として作成されたものであり、本件冊子がその後公開されたかどうかを供述することは、甲第12号証の趣旨から見れば必ずしも必要ではないことであるから、甲第12号証において、本件ワークショップの出席者であるギュンター博士がこの点について触れていないことは、格別不自然なことではない。
(iii)甲第9、11号証には、「同封物1として添付するBericht」と記載されているから、当該「Bericht」が「報告」ではなく「報告書」であることは明らかであり、また、当該「Bericht」が本件ワークショップにおいて公開されたと記載されているのであるから、本件ワークショップで公開されたのが文書である「報告書」であることは、甲第9、11号証の記載から明らかである。
(iv)甲第9、11、12号証の各供述書に同封物1として添付されているものは、甲第8号証全体ではなく、その一部の頁のみであるが、これは、これらの供述書が、上述の欧州特許0583265に関する欧州特許庁の異議手続きで、異議申立人BASF社が本件配布冊子の53?55頁を異議の証拠として提出した(甲第18号証の2参照)のに対し、それが異議対象の特許の優先日前に公開されていないことを立証するために作成されたことに基づくものである。したがって、このことをもって、直ちに本件ワークショップにおいて公開されたものは甲第8号証の上記一部のみであるということにはならない。
(v)甲第13号証は、請求人によれば、本件特許を巡る訴訟に関し、本件配布冊子が本件特許の優先日より前に頒布されたことを立証するために作成された証拠であり、欧州特許庁における欧州特許0583265の異議申し立て手続きにおいて提出された甲第11号証とは立証の趣旨が異なるものであるから、供述者は改めてその内容を十分に吟味して作成したとするのが普通であり、供述者がその内容に注意することなく署名したとの被請求人の主張にも特に根拠はない。
(vi)甲第14号証は、本件国際会議における主要な発表について記載したものにすぎず、例えばポスターセッションにおいて具体的にいかなる資料に基づきいかなる内容の発表がなされたのか、また、ジェネラル・ディスカッションにおいて具体的にいかなる資料に基づきいかなる内容の討論が行われたのか記載されていないから、甲第14号証に本件冊子に関する記載がないことをもって、甲第8号証が本件ワークショップにおいて公開されなかったとはいえない。また、学会などでの配布物であれば、その表紙などに必ずその学会名、日時、場所などが明記されるともいえない。
(vii)乙第13、14号証においては、本件ワークショップの出席者である2名のジャーナリストが、本件ワークショップにおいて本件冊子を受け取らなかったと信じる、あるいは受け取った記憶がないと、宣誓供述しているが、一方で、甲第9、11号証においては、本件特許とは別件の異議事件において、本件ワークショップで報告書が公開されたことが宣誓供述され、甲第13号証においては、本件ワークショップの参加者に本件冊子が配布されたことが供述されており、特にこれらのうち甲第11、13号証は、甲第8号証の報告書を作成した研究チームのリーダーであり、本件ワークショップのホストを務めたアイゲン教授によるものであり、その信頼性は極めて高いものと認められること、また、甲第21号証において、本件ワークショップで本件冊子が配布されたことが、その具体的な態様を含め、詳細に宣誓供述されていることからすると、当該乙号証の供述をもって、直ちに本件ワークショップで本件冊子が配布されなかったとすることはできない。
(viii)自らの後の文献である乙第15号証において甲第8号証を引用しなかったとしても、そのことが、甲第8号証が頒布された刊行物ではないことを直ちに意味するものではない。

(4-4-3)被請求人は、更に、かりに甲第8号証が本件ワークショップにおいて配布されていたとしても、昭和55年7月4日最高裁判決民集34巻4号570頁によれば、刊行物とは「少なくとも公開されて公衆の自由な閲覧に供されなければならない」ものであるのに、本件ワークショップには、招待メンバーとマックス・プランク研究所研究員のみが参加しており、不特定のものが参加できた会議ではなく、また、甲第8号証は、本件ワークショップ終了後、公衆が容易に閲覧できる状態ではなかったのであり、公衆の閲覧の可能性がないから、その配布は、公衆に対し頒布により公開することを目的とした複製の頒布に当たらず、「本件ワークショップにおいて甲第8号証が配布されていたとしても刊行物性は認められない。」と主張する。
(4-4-3-2)しかしながら、
(i)請求人の提出した甲第9号証および甲第11号証の供述によれば、「同封物1として添付する報告書が、本件ワークショップの期間中に、初めて一般に公開された」のであり、甲第13号証の供述によれば、「「進化の研究についてのレポート」生化学動態研究部、マックス・プランク生物物理化学研究所、ゲッティンゲン、1990年、という冊子が、本件ワークショップの参加者に配布された。」のであり、また、甲第21号証の供述によれば、「「進化の研究についてのレポート」という製本された冊子全体(表紙、序文、目次および論文本文の1?70ページ)が、本件ワークショップの参加者に配布された。」のであるところ、上述のとおり、被請求人は、これらの供述内容の信憑性を疑うに足る証拠を示していない。そうすると、これらの供述から、本件冊子の全体、すなわち甲第8号証に相当するものが、本件ワークショップにおいて配布されたものと認められる。
(ii)そして、甲第21号証において供述され、また、甲第14号証にも示されるように、本件ワークショップは、進化に関する生物工学の分野において先導的なグループの成果の交換および活動の調整を目的として行われたものであり、ワークショップ・レポート(甲第14号証)に掲載された招待参加者および研究部からの出席者リストには、当該分野の関連企業、雑誌、大学等の研究機関からの多数の出席者名が記載されている。
そして、甲第21号証の供述によれば、「本件ワークショップの期間中、主催者のスタッフによって、参加者の数に対応する部数の上記冊子が会議の机上に置かれ、参加者に対しその他の書類および名札と共に手渡された。上記の冊子の取り扱いについては、会議の参加者に対する明示又は暗黙の指示は一切なかった。すなわち、会議のすべての参加者は、会議の後、上記の冊子を自由に持ち帰って、保管し、利用し、複写し、かつ譲渡することが出来た。」のである。
被請求人は、これに関連して、上申書において、「かりに甲第8号証が本件ワークショップにおいて配布されていたとすれば、事実として甲第8号証が配布された形跡が残されていないことからして、参加者に守秘義務が課されたと解される。」、「守秘義務のないマスコミ関係者に甲第8号証が配布されたのであれば、本件ワークショップおよび甲第8号証についての記事が雑誌等に掲載されるはずである。しかし、そのような記事はないのであるから、甲第8号証が守秘義務なく配布されたことはあり得ない。」と主張するが、甲第8号証に関する記事が雑誌等に掲載されなかったとしても、そのことから甲第8号証が守秘義務なく配布されなかったとはいえない。
(iii)そうすると、甲第21号証の供述により、本件配布冊子は、複数部数が、本件ワークショップにおいて、本件配布冊子の内容に関連の深い企業、雑誌、大学等の研究機関からの出席者に対し、その利用処分につき何らの制限も加えることなく配布されたものと認めることができる。
そして、このような守秘義務のない出席者は、配布冊子について、配布者に対してその処分について何の義務も負わないという点から見て、公衆に該当するものと認められる。
したがって、甲第8号証は、「公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書であって、頒布されたもの」といえるから、特許法第29条第1項第3号の頒布された刊行物に該当するものである。
被請求人の引用する最高裁判決は、「公衆に対し頒布により公開することを目的として複製されたものであるということができるものは、必ずしも公衆の閲覧を期待してあらかじめ公衆の要求を満たすことができるとみられる相当程度の部数が原本から複製されて広く公衆に提供されているようなものに限られるとしなければならないものではなく、右原本自体が公開されて公衆の自由な閲覧に供され、且つ、その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される体制が整っているならば、公衆からの要求をまってその都度原本から複写して交付されるものであっても差し支えないと解するのが相当である。」と判示したものであり、被請求人指摘の「少なくとも公開されて公衆の自由な閲覧に供されなければならない」との箇所は、相当程度の部数の複製が公衆に提供されていない場合における「原本」について述べたものであって、相当程度の部数の複製が、関連企業のみならず、雑誌、大学等の研究機関からの出席者に対しても、守秘義務を課すことなく配布されたと認められる本件とは、その前提が異なるものであるから、本件に直ちに適用されるものではない。

(4-5)以上のとおりであるから、当事者の主張および提出された証拠によれば、甲第8号証は、本件優先日前に頒布された刊行物であるというのが相当である。

5.本件発明1?7が甲第8号証に記載されているといえるか、否かについて
(5-1)甲第8号証の記載
「進化の研究についてのレポート」という表題のレポートであり、本文は「I.Introduction」と「II.Individual reports」の二部に分かれ、II部は「II.1 進化の理論」、「II.2 進化実験」、「II.3 進化バイオテクノロジー」の3章からなり、「II.3.1」?「II.3.8」の項から構成される「II.3 進化バイオテクノロジー」の章には、以下の記載がある。
「II.3.3 IN VITROでの進化実験の制御と自動化 グンター・シュトルンク」の項に、「典型的な実験では、自己複製性RNA以外はすべての構成成分を含有する20μlの溶液に対して、約1011分子を有するRNA擬-種を、低温で(<0℃)接種する。RNA増加は、レプリカーゼ活性に対して最適な温度(約30℃)で、接種した溶液をインキュベートすることにより開始する。一定のRNA濃度まで達した後、約1012RNA分子を含有する部分試料を、新鮮な複製用混合物に移す。」(52頁2?8行)、「この機械において、RNA増加を、1チャンネルの高感度グラスファイバー蛍光計を使用してオンラインでモニターする。蛍光計は特に、少量サンプル中の蛍光を、溶液にふれることなく測定し、したがって交差夾雑を回避するように構築した。RNA濃度の測定は、エチジウムブロマイドが核酸の二本鎖領域中に挿入されたことによる、エチジウムブロマイドの蛍光増強に基づく。個体群サイズを調節することに加えて、この技術により、進化実験の間により速く増加するRNA擬-種の出現をオンラインで検出することができる。」(52頁21?28行)と記載され、
「II.3.4 大規模な平行進化の実験 アンドレアス・ショーバー」の項に、「全てのサーモスタット付きステーションは、高い熱容量を有する大きなアルミブロックから構築される。それらは、加熱装置または冷却装置を備える。サンプルキャリアは、アルミニウムからできているが、しかし銀の熱伝導性のほうがより高いため、銀に置換したものも計画されている。サンプルキャリアは、薄いプラスチックでできた使い捨てマルチウェルチャンバーを支持する。薄い箔で中身が入ったマルチウェルチャンバーをシールすることにより、交差夾雑を防止する。この箔は非常に光透過性が高く、核酸の増加をマルチチャンネル蛍光計により観察することができる。サンプルキャリアは、アルミニウムブロックに一体的に組み込まれたバキュームシステムにより、アルミニウムブロック上に引きつけられる。したがって、急速な温度変化が行われるときに低い熱抵抗が保証される。アルミニウムブロックの温度は、大きな熱容量を有するため、ほとんど変化しない。この技術は、高速ポリメラーゼ連鎖反応を行うために構築されたプロトタイプではすでにうまく使用されている。」(54頁下4行?55頁10行)、「急速な温度変化をできるようにするこの進化装置は、複数の核酸増幅反応(PCR)(Mullis et al.,1987)を同時に行うことができるように容易に改造することができる。他のPCR装置とは対照的に、この装置では、全てのウエルにおける温度経過が一定になることが保証され、そして大幅で急速な温度変化が可能とされる:50℃を超える温度の急激な変化を数秒以内で行うことができる。さらに、蛍光計により、核酸増幅のオンラインモニタリングが可能になる。LindemannおよびGuntherにより行われた予備的実験では、核酸濃度を、蛍光指示薬を用いてPCRの間測定することができ、そのことにより増幅反応は妨害されない、ということが示された。マルチチャンネル蛍光計は、PCRによる特異的な核酸の存在を検出しあるいはその特異的な核酸の濃度を測定するために必要とされる努力を大幅に減少させるだろう。」(55頁16?26行)と記載され、
「II.3.5 マルチチャンネル蛍光計 ロルフ・グンター」の項に、「蛍光は、高出力Ar+レーザーにより励起される。励起光は、光ファイバーにより全てのサンプルに導かれる。…蛍光放射は、独立した複数のファイバー(ウェーブガイド)により集められる。検出器部位では、それらファイバーは一緒にまとめられて、規則的なパターンが得られる。ペルティエ冷却型CCDカメラは、ファイバー末端から出射する光強度を測定する。」(56頁4?15行)と記載されている。
(5-2)本件発明1について
(5-2-1)本件発明1は、上述のとおり、「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であって、1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器、及び前記1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し、ここで該光学系は、前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し、これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である、ことを特徴とする装置。」というものである。
(5-2-2)これに対して、複数の熱循環にわたって核酸を増幅する、例えばPCRなどの反応方法は、本件優先日当時すでに当業者に周知であり、そのための「1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器に複数の核酸増幅反応混合物をセットし、これに複数の熱循環を加えて、核酸を増幅させる装置」も、甲第2号証ないし甲第7号証にも記載されているように、当業者によく知られていたものである(例えば、甲第7号証には、37頁以降の「自動PCR装置」の項に、「(2)温度サイクリング装置型:全工程を通してサンプルをサンプルホルダーの同じ場所においたままにし、ソフトウェアで制御された加温冷却システムによって温度をサイクルさせる。」(37頁12?14行)、「第2のタイプは、完全一体型の自動PCR専用機である。…TaqポリメラーゼがPCRに用いられるようになってから、PCR専用機が…開発された。…この装置には、サンプルをセットするブロックの加温冷却に半導体素子が使用された。既製のコントローラでサイクリングを制御し、インキュベーション時間およびブロック温度の両方をモニターした。この装置はうまく機能した」(39頁6?14行)と記載されている。また、例えば、甲第2号証の商品広告には、「48サンプルを同時処理できる」旨(左下欄)、記載されている。)。
そして、甲第8号証には、「全てのサーモスタット付きステーションは、高い熱容量を有する大きなアルミブロックから構築される。それらは、加熱装置または冷却装置を備える。…サンプルキャリアは、薄いプラスチックでできた使い捨てマルチウェルチャンバーを支持する。…サンプルキャリアは、アルミニウムブロックに一体的に組み込まれたバキュームシステムにより、アルミニウムブロック上に引きつけられる。したがって、急速な温度変化が行われるときに低い熱抵抗が保証される。アルミニウムブロックの温度は、大きな熱容量を有するため、ほとんど変化しない。この技術は、高速ポリメラーゼ連鎖反応を行うために構築されたプロトタイプではすでにうまく使用されている。」(54頁下4行?55頁10行)と、「反応混合物を収容するための支持体を有する、急速な温度変化を可能とする加熱または冷却器」が「高速ポリメラーゼ連鎖反応を行うために」使用されることが記載され、また、「急速な温度変化をできるようにするこの進化装置は、複数の核酸増幅反応(PCR)(Mullis et al.,1987)を同時に行うことができるように容易に改造することができる。他のPCR装置とは対照的に、この装置では、全てのウエルにおける温度経過が一定になることが保証され、そして大幅で急速な温度変化が可能とされる:50℃を超える温度の急激な変化を数秒以内で行うことができる。」(55頁16?20行)と、当該「反応混合物を収容するための支持体を有する、急速な温度変化を可能とする加熱または冷却器」を用いて、複数の核酸増幅反応(PCR)を同時に行うことができることが記載されており、これらの記載によれば、甲第8号証にも、本件優先日当時、周知であった、上述の「1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器に複数の核酸増幅反応混合物をセットし、これに複数の熱循環を加えて、核酸を増幅させる装置」が開示されていることは明らかである。
そして、甲第8号証の「II.3.4」には、「核酸濃度を、蛍光指示薬を用いてPCRの間測定する」ことが記載され、その具体的な手段として、「蛍光計により、核酸増幅のオンラインモニタリングが可能となる」と記載され、「マルチチャンネル蛍光計は、PCRによる特異的な核酸の存在を検出しあるいはその特異的な核酸の濃度を測定するために必要とされる努力を大幅に減少させるだろう」と記載されており(55頁16?26行)、これらの記載における、「核酸濃度をPCRの間測定する」、「核酸増幅のオンラインモニタリングする」とは、「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターする」ことに他ならず、また、「核酸濃度を、蛍光指示薬を用いて測定する」、「蛍光計により、核酸増幅のオンラインモニタリングを行う」とは、「核酸増幅反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し、これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定する」ことに他ならない。
そして、同じく甲第8号証の「II.3.4」には、核酸増幅反応混合物からの光シグナルを測定する際に、「薄い箔で中身が入ったマルチウェルチャンバーをシールすることにより、交差夾雑を防止する。この箔は非常に光透過性が高く、核酸の増加をマルチチャンネル蛍光計により観察することができる。」と記載され(54頁下4行?55頁10行)、当該記載は、「核酸増幅反応混合物を収容したマルチウエルチャンバーを光透過性の箔によりシールし、当該シールを介してマルチチャンネル蛍光計により核酸の増加を観察する」こと、換言すれば、「核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し、ここで該光学系は、前記核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定する」ことに他ならない。
そうすると、甲第8号証には、「1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器に複数の核酸増幅反応混合物をセットし、これに複数の熱循環を加えて、核酸を増幅させる装置」において、「核酸増幅反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し、これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定する」ことにより、「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターする」こと、及び、その際に、「核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し、ここで該光学系は、前記核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定する」こと、が記載されているといえる。
(5-2-3)してみると、甲第8号証には、「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であって、1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器、及び前記1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し、ここで該光学系は、前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し、これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である、ことを特徴とする装置。」が、記載されているといえるから、本件発明1と甲第8号証に記載された発明を対比すると、両者の構成に差異はない。
(5-2-4)これにつき、被請求人は、答弁書および平成16年7月9日付上申書において、以下の2点を挙げて、甲第8号証は本件発明の主要な構成要件を開示しておらず、更に甲第8号証の開示は実施可能性に欠けるため、甲第8号証は本件特許発明の新規性を否定する先行技術文献ではなく、本件特許は新規性を欠くものではないと主張する。
(5-2-4-1)被請求人の主張する第1の点は、甲第8号証は、本件発明1の備える構成要件A「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であって」、およびE「これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である」を開示していない、というものである。
しかしながら、上述のとおり、甲第8号証には、「1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器に複数の核酸増幅反応混合物をセットし、これに複数の熱循環を加えて、核酸を増幅させるPCR装置」が開示されているといえるところ、甲第8号証の「II.3.4」には、「核酸増幅のオンラインモニタリングが可能になり」、「核酸濃度を蛍光指示薬を用いてPCRの間測定できる」と記載されている。そして、PCRが「複数の熱循環により核酸を増幅する反応」であることは甲第8号証が頒布された当時、当業者に周知であるから、甲第8号証の上記「PCRの間」、「核酸増幅のオンラインモニタリングが可能」との記載が「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターする」ことができることを意味することは明らかであり、「核酸濃度を蛍光指示薬を用いてPCRの間測定できる」との記載が「複数の循環期間にわたって核酸濃度に対応する各光学シグナルの循環依存的変化を測定する」ことが可能であることを意味することは明らかである。
そして、甲第8号証中の「II.3.4」には、上述のとおり、「核酸増幅のオンラインモニタリングを可能」とするための具体的手段として、「マルチチャンネル蛍光計」を用い、これにより「核酸増幅反応」が起こるマルチウェルチャンバーを観察することが記載され、また、甲第8号証の「II.3.5」には、「マルチチャンネル蛍光計」の具体的な構成が記載されており(56頁4?15行)、このようなオンラインモニタリング手段が上記PCR装置に適用できることは自明である。
してみると、甲第8号証には、本件発明1の上記構成要件AおよびEを具備するPCR装置が開示されているといえるから、被請求人のこの主張は理由がない。
(5-2-4-2)請求人の主張する第2の点は、甲第8号証は、その装置に使用される蛍光指示薬の具体的内容など実験の条件も開示していないため実施不能であるから、本件特許の新規性を喪失させるものではない、というものである。
しかしながら、甲第8号証の「II.3.4」には、「LindemannおよびGuntherにより行われた予備的実験では、核酸濃度を、蛍光指示薬を用いてPCRの間測定することができ、そのことにより増幅反応は妨害されない、ということが示された。」(55頁16?26行)と、PCR反応の間、蛍光指示薬を用いて核酸濃度を測定できたことが記載されている。
一方、甲第8号証の「II.3.3」には、「RNA増加は、レプリカーゼ活性に対して最適な温度(約30℃)で、接種した溶液をインキュベートすることにより開始する。」(52頁2?8行)と記載され、また、「RNA濃度の測定は、エチジウムブロマイドが核酸の二本鎖領域中に挿入されたことによる、エチジウムブロマイドの蛍光増強に基づく。個体群サイズを調節することに加えて、この技術により、進化実験の間により速く増加するRNA擬-種の出現をオンラインで検出することができる。」(52頁21?28行)と、エチジウムブロマイドが核酸の二本鎖領域中に挿入されることによる蛍光増強に基づく二本鎖核酸の濃度の測定が、オンラインで可能であることが記載されており、これらの記載は、エチジウムブロマイドがRNAレプリカーゼによるRNA1本鎖を鋳型とする二本鎖合成反応を妨害しないことを示唆するものである。
甲第8号証は、著者の異なる複数の「項」からなるものであり、「II.3.3」項と「II.3.4」項も著者が異なるが、これらを含む「II.3」章は、進化バイオテクノロジーに関し、核酸増幅反応をオンラインモニタリングすることに関するものである点で共通しているから、「II.3」章に含まれるこれらの「項」の記載内容は相互に関連して読まれるべきものである。
そして、エチジウムブロマイドは二本鎖のDNAを蛍光標識する試薬として最も普通に用いられていたものであり、甲第8号証の「II.3.3」には、上述のとおり、RNAにおいては二本鎖合成反応を妨害しないことが記載され、これによりDNAにおいても二本鎖合成反応を妨害しないであろうことは十分に示唆されている。
してみると、甲第8号証の「II.3.4」の上記記載は、蛍光指示薬として例えばエチジウムブロマイドを用い、通常の操作条件により核酸増幅反応を行うことを開示しているといえる。そして、被請求人は、通常の操作条件ではエチジウムブロマイドを用いても当該反応中に核酸濃度を測定することができないと主張するものでもない。
したがって、被請求人のこの主張も採用できない。
(5-2-4-3)被請求人は、また、平成17年3月7日付上申書において、甲第8号証の著者の後の論文である乙第15号証に、核酸増幅のオンラインモニタリングを行ったことが記載されていないから、甲第8号証の核酸増幅のオンラインモニタリングについての記載は実施可能性が欠けていると主張する。
しかしながら、乙第15号証に記載がないことをもって、直ちに甲第8号証に核酸増幅のオンラインモニタリングが実施可能に記載されていないということにはならない。
そして、甲第8号証には、先に指摘したとおり、「エチジウムブロマイド」(II.3.3)及び「マルチチャンネル蛍光計」(II.3.4及びII.3.5)が具体的に記載されている。これらの記載に基づけば、当業者であれば核酸増幅のオンラインモニタリングを実施できると認められる。
(5-2-5)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第8号証に記載された発明である。

(5-3)本件発明2について
(5-3-1)本件発明2は、「単一の核酸増幅反応混合物のみを収容するようにされた、請求項1に記載の装置。」というものである。
(5-3-2)これに対して、上述のとおり、甲第8号証には、請求項1に記載された装置が記載されている。そして、当該装置は核酸増幅反応混合物を収容する容器を複数セットすることができるものであり、当該装置において、収容する核酸増幅反応混合物の数を単一とするか、複数とするかは、当業者がその使用目的などに応じて適宜に設定すればよいことであり、甲第8号証に記載されているに等しい事項である。
(5-3-3)従って、本件発明2は、甲第8号証に記載された発明である。

(5-4)本件発明3について
(5-4-1)本件発明3は、「複数の核酸増幅反応混合物を収容するようにされた、請求項1に記載の装置であって、増幅前に存在する標的核酸量の定量のために使用される、装置。」というものである。
(5-4-2)上述のとおり、甲第8号証には、請求項1に記載された装置が記載されており、当該装置は核酸増幅反応混合物を収容する容器を複数セットすることができるものであるから、当該装置に収容する核酸増幅反応混合物の数を単一とするか、複数とするかは、当業者がその使用目的などに応じて適宜に設定すればよいことであり、甲第8号証に記載されているに等しい事項である。
また、本件発明3の「増幅前に存在する標的核酸量の定量のために使用される」という事項は、本件発明3のモニター装置によりモニターされた「光学シグナルの循環依存的変化」の測定値の使用目的を記載したものにすぎず、本件発明3の装置は、当該測定値を用いて「増幅前に存在する標的核酸量の定量」を行うための手段を何も具備しないものであり、このような定量に用いるのに特に適した物でも、またそのためにのみもっぱら使用される物でもないから、これにより「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置」として、甲第8号証に記載されたものと異なることにはならない。
(5-4-3)従って、本件発明3は、甲第8号証に記載された発明である。

(5-5)本件発明4について
(5-5-1)本件発明4は、「前記検出器が蛍光発生シグナル検出するように作用する、請求項1?3のいずれか1項に記載の装置。」というものである。
(5-5-2)上述のとおり、甲第8号証には、請求項1に記載された装置が記載されており、また、甲第8号証には、「核酸濃度を、蛍光指示薬を用いてPCRの間測定することができ」、「蛍光計により、核酸増幅のオンラインモニタリングが可能になる。」と記載されており、甲第8号証の検出器も蛍光発生シグナルを検出するものである。
(5-5-3)従って、本件発明4は、甲第8号証に記載された発明である。

(5-6)本件発明5について
(5-6-1)本件発明5は、「前記検出器が、各反応混合物からの光シグナルを集めるための1又は複数の光ファイバーリードを有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の装置。」というものである。
(5-6-2)上述のとおり、甲第8号証には、請求項1に記載された装置が記載されており、また、甲第8号証には、「蛍光放射は、独立した複数のファイバー(ウェーブガイド)により集められる。検出器部位では、それらファイバーは一緒にまとめられて、規則的なパターンが得られる。」と記載されており、甲8号証においても、反応混合物からの光シグナルは光ファイバーにより集められて、検出器に送られるものであるから、この点で本件発明5と異ならない。
(5-6-3)従って、本件発明5は、甲第8号証に記載された発明である。

(5-7)本件発明6について
(5-7-1)本件発明6は、「前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための1又は複数の反応容器をさらに有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。」というものである。
(5-7-2)上述のとおり、甲第8号証には、請求項1に記載された装置が記載されており、当該装置は核酸増幅反応混合物を収容する容器を複数セットすることができるものであるから、当該装置に1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための1又は複数の反応容器をセットすることは、当業者がその使用目的などに応じて適宜に行えばよいことであり、甲第8号証に記載されているに等しい事項である。
(5-7-3)従って、本件発明6は、甲第8号証に記載された発明である。

(5-8)本件発明7について
(5-8-1)本件発明7は、「前記検出器が、各反応混合物からの光シグナルを集めるための1又は複数の光ファイバーリードを有し、そして各光ファイバーリードが、前記1又は複数の反応容器の各々の透明な又は半透明なキャップと光学的に連係するようにされている、請求項6に記載の装置。」というものである。
(5-8-2)上述のとおり、甲第8号証には、請求項1に記載された装置が記載されており、また、甲第8号証には、「蛍光は、高出力Ar+レーザーにより励起される。励起光は、光ファイバーにより全てのサンプルに導かれる。…蛍光放射は、独立した複数のファイバー(ウェーブガイド)により集められる。検出器部位では、それらファイバーは一緒にまとめられて、規則的なパターンが得られる。」と、複数のサンプルから、独立した光ファイバーにより光シグナルを集めることが記載され、また、「薄い箔で中身が入ったマルチウェルチャンバーをシールすることにより、交差夾雑を防止する。この箔は非常に光透過性が高く、核酸の増加をマルチチャンネル蛍光計により観察することができる。」と、各サンプルにおいて光透過性のシールを介して光シグナルを受けることが記載されており、これらの記載から、甲第8号証には、「各反応混合物からの光シグナルを集めるための複数の光ファイバーリードが、反応容器の各々の透明な又は半透明なキャップと光学的に連係するようにされている」ことが記載されているといえるから、この点で本件発明7と異ならない。
(5-8-3)従って、本件発明7は、甲第8号証に記載された発明である。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?7は、無効審判請求人が提出した、本件優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証に記載された発明であり、本件発明1?7についての特許は、特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
核酸増幅反応モニター装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であって、
1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器、及び
前記1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し、ここで該光学系は、前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し、これにより、複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
単一の核酸増幅反応混合物のみを収容するようにされた、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の核酸増幅反応混合物を収容するようにされた、請求項1に記載の装置であって、増幅前に存在する標的核酸量の定量のために使用される、装置。
【請求項4】
前記検出器が蛍光発生シグナル検出するように作用する、請求項1?3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記検出器が、各反応混合物からの光シグナルを集めるための1又は複数の光ファイバーリードを有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための1又は複数の反応容器をさらに有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記検出器が、各反応混合物からの光シグナルを集めるための1又は複数の光ファイバーリードを有し、そして各光ファイバーリードが、前記1又は複数の反応容器の各々の透明な又は半透明なキャップと光学的に連係するようにされている、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の標的核酸の検出、および試料中の標的核酸増幅の間の二重鎖核酸増大の監視のための装置を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
同時的核酸増幅および検出の新規方法は、従前の検出方法の速度および精度を向上させ、また増幅に引続く試料処理の必要性を除去する。好ましい実施態様において、該方法はポリメラーゼ連鎖反応の変更を与え、また螢光が二重鎖核酸との結合によって増大する試剤を使用する。ここにおいて該方法は、特に分子生物学、医学的診断および法科学の分野において多くの応用を有する。
【0003】
開示される核酸検出方法は、増幅核酸の検出に関する従来方法より、速度および単純性の優位性を提供する。一般に核酸検出技術は、医学的診断用アッセイに実務的に有用である。例えば、米国特許第4,358,535号は、フィルタ上に試料(例えば、血液、細胞、唾液等)をスポッティングし、細胞を溶解し、およびDNAを化学的変性および加熱により固定することにより病原を検出する方法を開示している。そして標識DNAプローブを添加し、固定した試料DNAとハイブリッドさせる。ハイブリダイゼーションは、病原DNAの存在を示している。
【0004】
オリゴヌクレオチドプローブを使用する核酸検出は、特異的な標的検出の標準方法になっている。標的細胞または有機体のフィルタ上のその位置における培養、検出に利用可能な標的核酸量の増大を含む多くの修飾方法が記述されている。一般的に、これらの方法は、DNA試料がニトロセルロースまたはナイロン等の固体担体上に非共有的に結合され、次いで標識された標的-特異性プローブにハイブリッドすることを必要とする。
【0005】
核酸検出方法の感度および特異性は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の発明によって大きく改善された。PCRは、核酸の増幅方法であり、2種類のオリゴヌクレオチドプライマ、重合試薬、標的核酸テンプレート、ならびに核酸の変性、アニーリングおよびプライマの伸長の連続的サイクルの使用を含み、特定の核酸断片の多数の複写物を生成する。この方法により、ゲノムDNAの単一複写物が、一千万倍以上に、極めて高い特異性および忠実度をもって増幅され得る。PCR法は、米国特許第4,683,202号に開示されている。
【0006】
PCR生成物の検出方法は、特に米国特許第4,683,195号に記述されている。これらの方法は、増幅標的核酸にハイブリッド可能なオリゴヌクレオチドプローブを必要とする。EP第237,362号もまた“逆ドットブロット”と称されるPCRに基づく検出方法を記述するもので、ここにおいて増幅DNAに代えてプローブが膜に固定される。該方法に従うと、プローブではなく標的がハイブリダイゼーションのために標識される。これらの方法は、増幅、捕捉および検出の別個の工程を必要とし、一般に完了するに数時間を要する。該逆ドットブロット法において、保存安定性の標的特異性試薬が好ましい。
【0007】
増幅核酸検出のための別法は、標的核酸の同時的増幅および標識を記述している。該方法は、少なくとも1種の増幅プライマが標識されていることを必要とする。該増幅プライマは、例えば増幅生成物の直接検出のための放射同位体により標識されるか、または引続く検出のために生成物を固体担体上に捕捉するに適した試薬により標識され得る。
【0008】
検出の別の手段は、クローン化DNAではなく増幅PNAを使用する断片長多形性ハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ(Saikiらの、1986,Nature,324:163)、またはジテオキシ法による直接配列決定の使用を含む。断片長多形性方法は、大きさ決定により検出可能な、異なる長さのPCR生成物を生じるPCRプライマの間の挿入および削除を検出する。ASO法は、対立遺伝子変異の検出に有用である。ASOハイブリダイゼーションの例において、増幅DNAが、例えば、UV照射により“ドットブロット”の一連としてナイロンフィルタに固定され、次いで厳密条件下でオリゴヌクレオチドプローブとハイブリッドされる。該プローブは、例えば西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)により標識され、適当な酸化剤を用いた処理の後、青色沈澱の存在により検出される。
【0009】
増幅核酸の検出のための別のアッセイ方法について更に知られている。該方法は、核酸ポリメラーゼの、ハイブリッド二重体由来のアニール化標識オリゴヌクレオチドを切断する5′-3′ヌクレアーゼ活性を使用し、検出のためにオリゴヌクレオチド断片を放出させるものである。該方法は、PCR生成物の検出に好適であり、プライマ対およびポリメラーゼによる伸長を阻害するためのブロックされた3′-OH末端を有する標識オリゴヌクレオチドプローブを必要とする。
【0010】
PCR法により可能な多数の応用によれば、高水準DNA、正の対照テンプレートを有する試料由来、または先行増幅物由来のDNAの少量物が、作為的にテンプレートDNAを添加しない場合にもPCR生成物を生じ得る。HiguchiおよびKwokの1989,Nature339:237-238ならびにKwokおよびOrrego,Innisらの1990、PCRプロトコール:方法および応用のガイド、Academic Press,Inc.,San Diego,CAは、最小の交差夾雑物をもったPCRを実施するための特定の方法および予防策を記述している。試料の調製、処理および分析に要する操作工程の数が増大するに従って、夾雑DNAが試料に混入する可能性が増大するため、試料操作、特に増幅反応完了後の操作を最小にすることが好ましい。
【0011】
標的核酸の検出を容易にするために、プローブまたは標的のいずれかの核酸の標識のために、多くの試薬が記述されている。好ましい標識は、螢光、放射能、色測定、X線回析または吸収、磁性または酵素活性により検出可能な信号を与えるもので、例えば螢光物質、色素、放射性同位体(特に32Pまたは125I)、電子高密度試薬、酵素、および特異的結合相手を有するリガンド等を含む。
【0012】
標識付けは、プライマまたはプローブへの標識導入のための化学的修飾、または伸長生成物への修飾ヌクレオシド三リン酸導入のため重合化試剤の使用等、多くの手段で達成される。挿入試剤は、核酸の多数の塩基に非共有的に結合し、結果として該試剤の螢光が増大するか、あるいは異なる波長に変位する。例えば、米国特許第4,582,789号は、ソラーレン類(psoralens)を含む数種の挿入試剤を記述している。
【0013】
螢光染料は、核酸検出に好適である。例えば、エチジウムブロマイドは、二重鎖核酸に結合した場合に、遊離の溶液状態にある場合よりも螢光の増大を示す挿入試剤である(Sharpら、1973,Biochemistry12:3055)。エチジウムブロマイドは、その単鎖核酸に対する親和性は比較的低いものではあるが、単鎖および二重鎖核酸の両者の検出に使用可能である。エチジウムブロマイドは、ゲル電気泳動後に、核酸検出のために通常に使用されている。例えばアガロースまたはアクリルアミド等の適当なゲル上での大きさ分画後、該ゲルは、エチジウムブロマイドの希釈溶液中に浸漬される。次いで、DNAがUV光下でゲルを試験して可視化される(Maniatisらの1982年編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York,Cold Spring Harbor Laboratory)。
【0014】
DNA検出のための螢光に基づく別法が記述されている。例えばMorrisonらの1989,Anal.Biochem.,183:231-244は、標的DNA検出のための2プローブ法を記述している。一方のプローブはフルオレセインにより標識され、第一のものに相補的な他方のプローブは、フルオレセインの消去剤により標識される。該プローブ類は、標的配列を含む変性DNAにアニール化され、螢光の量が測定される。螢光は、相補的消去性プローブよりむしろ非標識相補的DNAに対してフルオレセインプローブが結合する限り増大する。
【0015】
Mabuchiらの1990,Nucl.Acids Res.18(24):7461-7162は、核酸分節のAT含有量に基づくDNA断片の検出方法を記述している。2種類の螢光色素が、アガロースゲル中で大きさ分画されたDNAの染色に使用される。AT富有領域に対する異なる螢光色素の選択的結合特性が、電気泳動されたDNA断片の識別に使用される。
【0016】
米国特許第4,257,774号は、DNA定量のための螢光性挿入試剤、例えばエチジウム塩、ダウノマイシン、メパクリンおよびアクリジンオレンジ、ならびに4′6-ジアミジノ-α-フェニルインドール等のDNAへの直接結合を記述している。螢光分極が、DNA結合色素により完全になる非螢光性DNA結合化合物の特徴付けに使用される。
【0017】
OserおよびValetの1990,Angew.Chem.Int.Engl.29(10):1167は、標的の隣接部位に相補的な2種類のオリゴヌクレオチドプローブを必要とする核酸検出スキームを記述している。該プローブ類は、螢光輻射体、TbIIIを保持するサリチレートまたはDTPAリガンドのいずれかにより、異なって標識される。両プローブの標的へのハイブリダイゼーションは、TbIII螢光の測定可能な増大を生じる2種類の標識の立体的近接を与える。該修飾プローブは、検出されるべき各標的に対して特異的に調製される。
【0018】
EP第070,685号は、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイにおける螢光標識ポリヌクレオチドプローブを記述している。該方法によると、プローブ類は、核酸断片の3′および5′末端に、特定の吸収-輻射残基を付加することにより調製される。該断片は、標的DNA上の隣接位置にハイブリッド可能であり、両断片がハイブリッドした場合には、吸収体と輻射体との近接が、検出可能な輻射体螢光を生じる。
【0019】
これらの方法によれば、インビトロにおける核酸重合反応が完結した後に、標的DNAに螢光染料が導入される。核酸ポリメラーゼに対する挿入試剤の阻害効果が、多くの文献中に記述されている(例えば、Kornbergの1974,DNA Synthesis,W.H.Freman and Co.,San Francisco;Richardsonの1973,J.Mol.Biol.78:703-714)。
【0020】
DNA結合性染料は、該試剤のテンプレートへの結合に帰因する核酸複写工程に対する阻害効果故に、抗生物質として有用である。EP第169,787号は、インフルエンザまたはヘルペスウイルスの複写阻害のための挿入試剤の使用を記述している。Kornberg(前出文献)は、挿入剤および非挿入剤の両者について多くのDNA結合性試剤を記述し、また各化合物がいかにして核酸複写を阻害するか記述している。227頁には、KornbergはエチジウムブロマイドがDNA複写を阻害することが特に記述されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
標的核酸の同時的増幅および検出方法は、先行する検出方法に対して優位点を与える。このような方法は、正または負の試験結果を識別するための一連の操作工程を含むいずれの方法においても、固有の試料夾雑の問題を最小にするであろう。試料の操作および処理工程を削減することにより、標的核酸の同時的増幅および検出方法は、現状の診断方法の速度および精度を増大させるであろう。本発明は、これらの必要性に向けられ、これらを解決するものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料中の標的核酸の検出方法を提供するものである。該方法は、(a)前記試料と、DNA結合試剤であって、二重鎖核酸に結合した場合に検出可能な信号を与え、該信号は、該試剤が未結合の場合に該試剤により与えられる信号と区別可能であることをもって特徴付けられるDNA結合試剤と、増幅用試薬とを含んでなる増幅反応混合物を与え;(b)工程(a)の混合物により生じる前記信号の量を測定し;(c)前記混合物を前記標的核酸の増幅条件下で処理し;(d)工程(c)の混合物により生じる前記信号の量を測定し;および(e)増幅の生起の有無を測定する工程を含んでなる。
【0023】
本発明は、二重鎖核酸の正身の増大が、信号の強度または型の変化を生じるPCR増幅方法の実施において特に好適である。好ましい実施態様において、DNA結合試剤は螢光性DNA結合性試剤、例えばエチジウムブロマイドであり、また信号は螢光である。
【0024】
図1は、エチジウムブロマイドの存在下において特定標的DNAの増幅によるPCR混合物の螢光増大を例示している。実験は、例IIに詳細に記述される。
【0025】
図2は、本検出方法の標的特異性を示すもので、本発明の定量的側面を例示している。実験の詳細は、例IVに与えられる。
【0026】
図3は、本発明の遺伝子スクリーニングへの使用を示している。実験は、例Vに詳細に記述される。
【0027】
図4Aおよび4Bは、例VIIに記述される定量的均質的アッセイに関する。図4Aは、正の試料中の螢光増大が、負の試料の平均からの標準偏差の2倍より大きいことを示している。図4Bは、螢光測定のための背景控除方法をグラフ的に表わしている。
【0028】
図5および6は、例VIIIに例示される本発明によるオンライン、自動化均質的増幅および検出系の結果を示す。図5は、標的DNAを含まず、負の対照となるPCRからの螢光のプリントアウトを示す。図6は、適切な標的を含むPCRからの螢光のプリントアウトであり、PCRの連続的監視およびPCR生成物の同時的増大を示している。
【0029】
本発明は、核酸検出の改良方法を提供するもので、増幅工程と共に使用するために特に適している。該改良方法は、オリゴヌクレオチドプローブおよび標識増幅プライマのいずれをも必要としない。該方法は、増幅反応進行中において生成物蓄積の監視を可能とする。本発明は、また標的特異的定量をも許容する。これらの方法は、自動化様式において使用するために適している。
【0030】
開示される方法は、増幅核酸検出のための従来方法に対し、大きい改良を提供する。本発明によれば、増幅された核酸が、一旦、増幅反応が開始された後は反応容器を開くことなく検出され、また反応に引続く付加的な処理または操作工程も要さない。本発明以前にあっては、核酸検出方法は、プローブとして第3のオリゴヌクレオチド試薬を必要とし、あるいは増幅後に行なわれる工程である生成物の固体担体への捕捉等の煩雑で時間を要する標的検出の一連の工程を要していた。ある方法においては、捕捉およびプローブのハイブリダイゼーション工程の両者が必要とされる。本発明は、ハイブリッドプローブ試薬の使用の必要性、あるいは増幅標的検出のための捕捉処理の必要性を除去する。臨床的設定において、本発明の方法は、迅速性、簡便性、および試料間、特に増幅および非増幅試料の間の交差夾雑の可能性減少を提供する。更に、本方法は増幅工程中、および増幅反応完了後の増幅生成物の自動的検出、監視および定量手段を提供する。
【0031】
本発明方法は、二重鎖DNAに結合可能である検出可能な試剤を必要とする。該検出可能な結合試剤は、螢光染料または他の着色料、酵素、あるいは二重鎖DNAに結合した場合に直接または間接的に信号を生成可能な試剤であってよい。該試剤は、単鎖DNAまたはRNAに結合することによっても特徴付けられる。該試剤は、二重鎖核酸に結合した場合に、同試剤が溶液中、または単鎖核酸と結合した場合に生成される信号とは区別される検出可能な信号を生成可能であることのみが必要である。
【0032】
一実施態様において、DNA結合試剤は、挿入試剤である。ここにおいて使用されるように、挿入試剤は、核酸二重ヘリックス中の多数の塩基間に非共有的に挿入可能な試剤または残基である。エチジウムブロマイド等の挿入試剤は、二重鎖DNA中に挿入された場合に、単鎖DNAまたはRNAと結合した場合または溶液中にある場合に比較してより高強度で螢光を生じる。他の挿入試剤は、二重鎖DNAに結合した場合に螢光スペクトルに変化を示す。例えば、アクチノマイシンDは、単鎖核酸に結合した場合に赤色、また二重鎖テンプレートに結合した場合に緑色の螢光を生じる。アクチノマイシンDの場合と同様に、検出可能な信号が増大、減少あるいは変位のいずれを生じるにしても、該試剤が二重鎖核酸に結合または未結合の場合に区別可能である検出可能な信号を与える任意の挿入試剤が、開示される発明の実施に適している。例えば、DNAと他の光反応性ソラーレン、4-アミノメチル-4-5′8-トリメチルソラーレン(AMT)との間の相互作用が記述されている(Johnsonらの、1981,Photochem.& Photobiol.,33:785-791)。この文献によれば、AMTのDNAヘリックスの挿入によって長波長における吸収および螢光の両者ともに減少する。
【0033】
非-挿入的DNA結合試剤も適している。例えば、Hoechst33258(Searle & Embrey,1990,Nuc.Acids Res.18(13):3753-3762)は、標的量の増大と共に螢光変化を示す。Hoechst33258は、通常、グループ結合剤と称されるDNA-結合性化合物の分類の一員である。この群は、ジスタマイシン、ネトロプシンおよびその他の薬剤を含む。これらの化合物は、二重DNAの小溝を認識して結合する。
【0034】
本発明によると、DNA結合試剤は、直接または間接的に検出可能な信号を生成する。該信号は、螢光または吸収等により直接に検出可能であるか、あるいは該DNA結合試剤に付加される置換標識残基または結合性リガンドを介して間接的に検出可能である。間接的検出のために、二重鎖DNAへの近接によって検出可能な影響を受けるいずれの残基またはリガンドも適している。
【0035】
本発明によれば、検出可能な結合試剤は、増幅工程の間、増幅反応物中に存在する。増幅が進行するに従って、該試剤は検出可能な信号を生成する。試剤および信号のいずれも、増幅の進行を妨げない。従って、該試剤は、増幅に先立って、または反応進行中に反応混合物に添加され得る。例えば、該試剤は、塩類および緩衝剤等の適当な試薬類を含む増幅用緩衝剤中に含まれる。このような方法において、該結合試剤を増幅反応物中に、別個に添加する必要はない。本発明の実施のために、該試剤の存在下、二重鎖核酸の量の正身の増大が、直接または間接的に検出可能な信号強度の変化に反映される限り、任意のDNA結合試剤も適している。好ましい実施態様において、検出可能な信号は、螢光である。
【0036】
本願明細書において、クレームされる発明の記述のために“均質的検出アッセイ”なる用語が使用される。理解を容易にするために、以下の定義が与えられる。均質的検出アッセイは、組合わされた増幅および検出方法を指し、ここにおいて該増幅方法は検出可能な信号を生成し、かつ増幅生成物検出のための引続く試料処理および操作の必要性を最小にするか、または除去する。
【0037】
本均質的アッセイは、オリゴヌクレオチドプローブとの組合せにおいて使用するために適している。例えば、一実施態様において特定標的配列の検出に特異的なオリゴヌクレオチドプローブの使用が、本発明のDNA結合試剤に加えて増幅反応中に含まれる。消去物質および螢光物質により標識されたプローブは、増幅された標的核酸にハイブリッドする。5′から3′へ核酸分解的活性を生じ得る重合試剤の存在下において、螢光物質と消去物質とは標的に結合した場合にポリメラーゼによるプローブの分解によって分離される。非結合プローブの螢光は、結合し、次いで加水分解されたプローブの螢光とは検出可能に区別される。従って、DNA結合試剤の螢光は、増幅の生起を検出可能であり、ハイブリッドプローブの螢光は、標的特異的増幅を示している。一旦増幅開始後に、反応容器を開くことなく、あるいは更に処理工程を要さずに増幅の検出可能である限り、該方法は均質的アッセイの現定義の範囲内にある。
【0038】
“増幅反応系”なる用語は、核酸標的配列の複写物を増大させるための任意のインビトロにおける手段を指す。かかる方法は、PCRに限定されることなく、DNAリガーゼ連鎖反応(LCR),Q RNAレプリカーゼおよびRNA転写に基づく増幅系(TASおよび3SR)を含む。
【0039】
典型的には標的核酸の指数的増大を指す“増大”なる用語は、ここにおいては核酸の選択標的配列の数の線形的および指数的増大の両者を記述している。
【0040】
“増幅反応混合物”なる用語は、標的核酸を増幅するために使用される種々の試薬類を含む水溶液を示す。これらは、酵素、水性緩衝剤、塩類、増幅プライマ、標的核酸、およびヌクレオシド三リン酸を含む。情況に依存して該混合物は、完全または不完全増幅反応混合物のいずれかであってよい。
【0041】
以下に記述される系は、関連技術の熟練者によって定型的に実施される。それらは、他者によって詳細に記述されており、以下のように要約される。他の系が開発されているように、これらの系はこの発明の実施において有益であろう。増幅系の最近の概説は、Bio/Technology8:290-293,1990年4月に発行されている。本発明の範囲の理解を与えるために、以下の4種の系が記述される。
【0042】
PCRによるDNAの増幅は、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号に開示されている。熱安定性酵素を使用するPCRによる核酸の増幅および検出は、米国特許第4,965,188号に開示されている。
【0043】
DNAのPCR増幅は、DNAの熱変性、増幅されるべきDNA分節の両側部にあたる断片に対する2種類のオリゴヌクレオチドプライマのアニーリング、およびアニール化プライマのDNAポリメラーゼによる伸長の反復サイクルを含む。該プライマ類は、標的配列の反対の鎖にハイブリッドし、ポリメラーゼによるDNA合成が、プライマ間の領域にわたって進行し、DNA分節の量が効果的に倍増するように配向する。更には、伸長生成物が、プライマと相補的であって結合可能であることから、継続する各サイクルは、前のサイクルで合成されるDNAの量を、基本的には倍増する。このことは、特定標的断片を、nをサイクル数としてサイクルあたり約2nの割合で指数的に蓄積する。
【0044】
開示される実施態様において、発明に本質的ではないが、Taq DNAポリメラーゼが好ましい。熱安定性ポリメラーゼであるTaqポリメラーゼは、高温において活性である。Taqの調製方法は、米国特許第4,889,818号に開示されている。しかしながら、他のThermus種または非Thermus種(例えばThermus thermopilusまたはThermotoga maritima)から単離される熱安定性DNAポリメラーゼも、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼI、またはE.coliのクレナウ断片等の非-熱安定性DNAポリメラーゼに加えてPCRにおいて使用され得る。
【0045】
ここに使用されるように、“プライマ”なる用語は、プライマ伸長生成物の合成が開始される条件、すなわち4種のヌクレオチド三リン酸およびDNAポリメラーゼが適切な緩衝溶液(“緩衝溶液”は、pH、イオン強度、補助因子等を含む)中に存在し、かつ適当な温度において、核酸テンプレートにアニールした場合にDNA合成が開始される点として作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。
【0046】
伸長工程に使用されるヌクレオシド-5′-三リン酸、典型的にはdATP,dCTP,dGTPおよびdTTPは、伸長反応の間において典型的には400μM?4.0mMの範囲の全濃度をもって存在し、好ましくは500μM?1.5mMの間の濃度で存在する。
【0047】
PCRにおいて使用するプライマ類の選択は、増幅反応の特異性を決定する。本発明において使用されるプライマは、オリゴヌクレオチドであって、通常はポリメラーゼ連鎖反応によってテンプレート特異的な様式で伸長され得る、数個のヌクレオチド長のデオキシリボヌクレオチドである。該プライマは、重合用試剤の存在下、伸長生成物の合成を開示させるに充分な長さであって、典型的には10-30個のヌクレオチドを含むが、正確な個数は該方法の成功裏の応用に臨界的なものではない。短いプライマ分子は、一般的にはテンプレートとの安定なハイブリッド複合体を形成するために、より低温度を必要とする。
【0048】
合成オリゴヌクレオチドは、Matteucciらの1981,J.Am.Chem,Soc.103:3185-3191のトリエステル法を使用して調製され得る。別法として、例えばBiosearch8700DNA合成装置上でシアノエチルホスホルアミダイト化学を用いる自動化合成が好ましいであろう。
【0049】
プライマ伸長を生起させるために、このプライマは核酸テンプレートにアニールされなければならない。伸長を起させるために、すべてのプライマのヌクレオチドがテンプレートにアニールする必要はない。該プライマ配列は、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片をプライマの5′末端に結合させ、プライマ配列の残る部分がテンプレートに相補的であってもよい。別法として、非相補的塩基を、該プライマがテンプレートに対してアニールするに充分な相補性を有し、相補的DNA鎖の合成を許容する限りにおいて該プライマ中に散在させることができる。
【0050】
PCR等の増幅系は、標的増幅に使用される酵素と両立し得る緩衝溶液中の標的核酸を必要とする。標的核酸は、組織、体液、便、痰、唾液、植物細胞、細菌培養物等を含む種々の生物学的材料から単離され得る。
【0051】
一般的に試料中の核酸は、DNA配列であり、最も普通にはゲノムDNAである。しかしながら、本発明はメッセンジャRNA、リボソームRNA、ウイルスRNAまたはクローンDNA等の他の核酸を用いて実施することもできる。好適な核酸試料は、本発明において使用するために単鎖または二重鎖DNAもしくはRNAを含む。当業者は、該核酸の性質がどうであろうと、使用される方法について適切かつ良く認識された修飾を行なうのみで該核酸が増幅されることを認識するであろう。
【0052】
試料中の標的核酸配列を増幅するためには、該配列は、増幅系の成分が接近可能でなければならない。一般的には、粗製の生物学的試料から核酸を単離することによって、接近可能性が確実となる。この分野においては、生物学的試料からの核酸の抽出技術として、例えば、Maniatisらの、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York,Cold Spring Harbor Laboratory,1982:ArrandのPreparation of Nucleic Acid Probes,18-30頁、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,HamesおよびHiggins編、IRL Press,1985;またはPCR Protocols,18-20章、Innisら編、Academic Press,1990等に記述されている多くの技術が知られている。
【0053】
PCR工程は、熱安定性酵素を用いた自動化工程として、最も普通に実施されている。この工程において、該反応混合物は、変性温度範囲、プライマアニール温度範囲、および伸長温度範囲を通り循環される。熱安定性酵素を用いて特定的に適用される装置は、EP第236,069号により完全に開示されており、商業的に入手可能である。
【0054】
LCRは、PCT特許公開WO 89/09835に記述されている。該方法は、標的核酸にアニールするオリゴヌクレオチド分節を連結するリガーゼの使用を含む。LCRは、元の標的分子の増幅を生じ、数百万の生成物DNA複写物を与え得る。従って、LCRは二重鎖DNAの正身の増大を生じる。本検出方法は、PCRに加えてLCRにも適用できる。LCRは、生成物DNA検出用オリゴヌクレオチドプローブを必要とする。増幅生成物検出用の開示された方法との関連において使用される場合、プローブ工程が不要となり、LCRの結果が直ちに検出され得る。
【0055】
他の増幅スキームは、RNAバクテリオファージQβ由来のレプリカーゼを有効に使用する。この増幅スキームにおいて、標的配列に特異的な配列を有する修飾組換えバクテリオファージゲノムが、試験される核酸と最初にハイブリッドされる。バクテリオファージプローブと試料中の核酸との間に形成される二重体の富有化に続いて、Qβレプリカーゼが添加され、保持された組換えゲノムを認識しつつ多数の複写物の作成を開示する。
【0056】
該Qβ系は、プライマ配列を必要とせず、またPCRおよびLCR増幅系のような熱変性工程がない。該反応は、一温度、典型的には37℃にて起こる。好ましいテンプレートは、Qβレプリカーゼの基質である中間変異-1(midvariant-1)RNAである。この系の使用により、該テンプレートの極めて多量の増大が達成される。この増幅系の概説は、国際特許出願公開WO 87/06270およびLizardiらの、1988,Bio/Technology6:1197-1202に見出される。
【0057】
3SR系は、インビトロ転写に基づく増幅系の変法である。転写に基づく増幅系(TAS)は、標的鎖のDNA複写物を生成するためのプロモータをコードするプライマの使用、およびRNAポリメラーゼによるDNA複写物からのRNA複写物の生成を含む。例えば、米国特許第4,683,202号の例9BおよびEP第310,229号参照。該3SR系は、標的核酸の等温転写を実施するために3種類の酵素を使用する系である。
【0058】
該系は、T7 RNA DNAプライマが結合する単鎖RNAの標的により開始される。逆転写酵素によるプライマの伸長によって、cDNAが形成され、またRNAseH処理が、異種二重体からcDNAを遊離させる。第2のプライマが該cDNAに結合し、DNAポリメラーゼ(すなわち逆転写酵素)処理により二重鎖cDNAが形成される。一方または両方のプライマは、プロモータ、すなわちT7 RNAポリメラーゼに対するプロモータをコードし、しかして該二重鎖cDNAはT7 RNAポリメラーゼに対する転写テンプレートである。
【0059】
転写能力のあるcDNAは、元の標的のアンチセンスRNA複写物を産する。次いで、該転写物は、二重鎖プロモータを含み、場合により両端において逆転反復配向である二重鎖cDNAに、逆転写酵素により変換される。これらのDNAは、再度サイクル中に介入するRNAを生じ得る。3SR系のより完全な記述は、Guatelliらの1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:1874-1878、およびEP第329,822号に見出される。TAS系は、Innisら編、1990PCR Protocols,Academic Press,San Diego中にGingerasらにより記述されている。
【0060】
ここに例示される本発明の実施態様は、PCRに関連して増幅核酸検出のための方法を開示するものである。従って、PCRに基づく方法において使用する場合には、該DNA結合試剤は、プライマのアニーリング、相補テンプレートに沿ったプライマ伸長、またはDNA二重体の鎖分離を阻害しないであろう試剤として特徴付けられる。
【0061】
ここにおいて記述される方法では、試料は、興味ある特定のオリゴヌクレオチド配列である標的核酸を含むか、または含むと考えられるものとして与えられる。該標的は、RNAまたはDNAまたはRNA/DNAハイブリッドであってよい。該標的は、単鎖または二重鎖であってよい。標的調製は、遂行される特定の増幅方法に対して適切な方法で実施されるであろう。例えば、標的核酸が単鎖DNAであるPCR法においては、mRNA等の標的は、増幅に先立って、まずcDNAに逆転写される。
【0062】
RNAをcDNAに逆転写する方法は、周知であってManiatisらの前出文献に記述されている。別法として、好ましい逆転写方法は、熱活性DNAポリメラーゼを使用する。本明細書は、挿入試剤がDNAポリメラーゼ活性を阻害しないことを教示している。従って、本方法は、DNA標的に加えてRNA標的に対して均質的検出アッセイを提供する。
【0063】
本発明の他の実施態様において、一群のプライマが使用される(Mullisらの、1986,Cold Spring Harbor Symposium on Quantitative Bialogy51:263)。この方法は、例えば記録的なパラフィン床試料が使用される場合等、試料中の核酸量が極めて限定されている場合に好ましい。一群のプライマを使用する場合、核酸は、最初に外部側のプライマの組を用いて増幅される。この増幅反応は、内部側のプライマの組を使用する第2巡目の増幅サイクルに続く。例VIおよびVIIは、引き続く増幅サイクルにおいて一群のプライマを使用することにより必要とされる追加の試料処理を要することなく優れた結果を与える、一群のプライマの修飾方法を記述する。
【0064】
本発明によれば、増幅生成物の生成が、反応の進行中において監視され得る。結合試剤により生成される信号の検出装置は、増幅の前、途中および後において信号の検出、測定および定量に使用され得る。当然のことながら、特定の型の信号は、検出方法の選択に関与する。例えば、本発明の好ましい実施態様において、PCR生成物を標識するために、螢光DNA結合染料が使用される。該染料は、二重鎖PCR生成物に挿入または結合され、得られる螢光が、二重鎖DNAの量の増大と共に増加する。螢光の量は、PCR容器を開くか、または開かずに分光螢光測定装置を使用する測定によって定量され得る。例VIIおよびVIIIは、本発明のこの側面について例示する。
【0065】
例VIIIにおいて、正の対照試料の螢光は、背景測定より充分に高かった。信号生成が、反応試験管を開くことなく測定されるため、この検出方法は、信号が増幅工程を通じて監視される自動化様式に対し、容易に適用される。例VIIIは、自動化、オンラインPCR検出方法を示すもので、光ファイバリードが、加熱/冷却ブロック中のPCRチューブに直接に励起光を入力するために使用されている。同じ光ファイバが、帰還螢光輻射を値が読取られる分光螢光測定装置に戻すために使用されている。
【0066】
PCRの好適な方法において、増幅反応は自動化工程として実施される。現在利用可能なサーモサイクラーは、48個の反応チューブを保持し得る加熱ブロックを使用している。従って、48の増幅反応を同時に実施することができる。本発明は、試料操作、チューブの開放、または周期反応の中断なしに、48の試料すべてにおいてPCR生成物の検出を可能にする。好適な光学系は、光源からの励起光を反応チューブに導き、各チューブからの輻射光を測定する。例えば、多重光ファイバリードは、サーモサイクルが行なわれているすべてのPCRチューブを同時に読取る。しかしながら、各光ファイバは、例えばPCR温度浸透の時間枠の間において、一度に1つが迅速に読取られるため、反応チューブからの螢光を読取るには単一の螢光測定装置のみが必要である。別法として、このような検出系が特定のサーモサイクラ装置または反応容器の数に限定される必要が無いことは、当業者には自明であろう。しかしながら、48ウエルのサーモサイクラの記述は、本発明のこの側面を例示する役割をはたしている。
【0067】
反応ウエルまたはチューブが、外部光が螢光測定に影響を与えることを防止すべく光封止されている限り、任意の上部プレート、試験管キャップ、または蓋装置で光ファイバリードを有するものであるか、または取付け可能なものが適している。例VIIIの本発明の実施態様において、光ファイバを取付けるために反応チューブの蓋は取除いた。しかしながら、透明または半透明のキャップを有する反応容器を使用する場合には、線を試験管中に挿入する必要がなくなる。線が、増幅反応成分に物理的に接触することなく、反応チューブに光ファイバ線を挿入できれば望ましいことは明らかであろう。表面または容器が加熱および冷却可能な分光螢光測定装置においては、光ファイバは不要である。光ファイバは、サーモサイクラと分光螢光測定装置とが独立して装置される場合に必要となる。
【0068】
同様な検出系が、96-ウエルマイクロタイター様式においても好適である。この型の様式は、例えば血液バンクのスクリーニング処理における鎌形赤血球性貧血またはAIDSウイルスのスクリーニング等、遺伝子的分析について、大量の試料のスクリーニングのための臨床検査所においてしばしば必要とされる。本発明は、この型の分析についても好適であって、公知の“ウエル内”アッセイ処理、例えばELISA型式、または他の光学密度に基づく方法で必要とされる多くの洗浄および抽出操作の必要性を除去する(Kolberらの、1988,J.of Immun.Meth.108:255-264;Huschtschaらの1989,In Vitro Cell and Dev.Bial.25(1):105-108;Vollerらの1979,The Enzyme Linked Immunosorbent Assay,Dynatech Labs,Alexandria,VA参照)。
【0069】
本検出方法は、ELISAプレート読取装置に類似するが螢光の励起と測定をすべく設計された装置を使用して、直接螢光測定することができる。例えば、Milliporeにより製造されているCytoFluor(商標)2300は、このような方法に好適である。背景の螢光を測定するために、サーモサイクルの前後においてマイクロタイタープレートの読取りを行なうことが適当である。別法として、螢光の連続的測定を与える装置は、増幅反応中のPCR生成物の増大を監視するために有用である。
【0070】
本発明の別の実施態様において、増幅に続いて増幅生成物の大きさが、プローブの使用またはHPLCもしくはゲル電気泳動等の大きさ分画方法の使用をせずに決定される。本発明は、増幅生起の有無および増幅標的生成物を、例えばプライマ二量体および高分子量のDNAから同時に区別する場合に有用である。
【0071】
本発明の好ましい実施態様において、結合可能な結合試剤は挿入螢光染料である。本願の例は、エチジウムブロマイドが増幅反応混合物に含まれることを記述する。エチジウムブロマイドは、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、フルオルクマリン、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミスラマイシン、ルテニウム、ポリピリジル類、およびアンスラマイシン等の他のDNA結合染料と同様に、二重鎖DNAに結合した場合に螢光輻射の変化を示す。増幅反応において、出発テンプレートから多量の二重鎖DNAが生成する。従って、これが挿入螢光染料の存在下に生起すればDNA依存性螢光の実質的増大を生じる。PCRの標的特異性および適切な正および負の対照の使用は、検出可能な螢光の増大が増幅標的核酸の存在に依存することを保証する。
【0072】
本明細書は、均質的検出アッセイの種々の面を示すいくつかの例を含んでいる。特定の実施態様は、PCRにおいてエチジウムブロマイドが0.53-1.27μMの濃度で存在することを記述しているが、0.08μM(0.03μg/ml)-40.6μM(16μg/ml)の濃度も安定であり、また、PCR混合物におけるエチジンブロマイドの濃度は、0.15μM(0.06μg/ml)-20.3μM(8μg/ml)の範囲が好ましい。当業者には、別のDNA結合試剤の好適な濃度をいかにして経験的に修正すればよいか明らかであろう。試剤の好適な濃度は、増幅反応において二重鎖DNAの実質的増大が起きた場合に、検出可能な信号を与える任意の量である。従って、増幅反応混合物に含まれる試剤の好ましい濃度は、二重鎖非標的DNAの量(すなわち背景ゲノムDNA)、標的の複写数および量、増幅プライマの量および螢光、ならびに使用する特定の試剤に依存して変化する。例えば、既知量の標的を使用し、結合試剤の量を変化させた標準曲線は適当であろう。螢光染料は、温度サイクル開始前にPCR混合物に添加される。好適な螢光染料は、増幅の生起を阻害しない。この方法において新規な任意の染料の適切さを決定することは、当業者には自明のことであろう。例Iは、PCR増幅がエチジウムブロマイドの検出可能な量の存在下で起こることを示している。
【0073】
エチジウムブロマイドの輻射スペクトルは、非結合エチジウムブロマイドについて650nmにピークを有し、また該試剤が二重鎖核酸に結合した場合に611nmにピークを有している。しかしながら、結合および非結合エチジウムブロマイドの輻射スペクトルは、結合エチジウムがより低波長にて輻射する異なるピークを有しているため、結合および非結合エチジウム間の識別は、非ピーク波長、すなわち結合エチジウムのピークより低い輻射の検出によって増強される。例VIIに開示される実施態様において、試料の螢光輻射は、570nmにて検出される。例VIIIにおいては、励起波長が500nmに設定され、輻射検出が570nmに設定される。
【0074】
本発明の実施のために検出および励起波長が最適化されることは、本質的なことではない。例えば例IIにおいては、励起波長300nmのU.V.ライトボックス、および赤色フィルタを介した写真撮影が好適である。分光螢光測定装置は、使用する特定の装置の特徴に依存して、励起および輻射波長に加えてバンド幅の設定の機会を与える。検出すべき特定のDNA結合試剤に対して、いかにして波長およびバンド幅の設定を決定すべきであるかは、当業者には自明であろう。かくして、各試剤は離散的螢光スペクトルを有するものであるが、ここに例示されるように本発明の実施について、広範囲の検出波長が好適である。一般的な手引は、例えばThe Merck Index,Budavariら編、1989,Merck Co.Inc.Rahway,NJ.に見出され、これにはヘリックスDNAに対して結合および非結合の特定の螢光剤についてピーク輻射波長が、各記載事項に記述されている。同様に、Molecular Probes Inc.,Eugene,Oregonのカタログ、1990,(Hauglandによる)は、本発明に有用なDNA結合試剤を記述する参考文献として適している。
【0075】
一般に、本質的ではないが、DNAポリメラーゼを、プライマおよびテンプレートの両者を添加後、PCR反応混合物に添加することが好ましい。別法として、例えば酵素およびプライマが最後に添加されるか、あるいはPCR緩衝液またはテンプレートと緩衝液が最後に添加される。一般的に、重合に基本的な少なくとも1種の成分が、プライマとテンプレートとの両者が存在し、酵素が結合し得て所望のプライマ/テンプレート基質が伸長され得るまで存在しないことが好ましい。
【0076】
増幅反応物の交差夾雑の効果を低減する方法は、非慣用塩基を増幅生成物に導入し、残留分を該生成物が続く増幅においてテンプレートとして作用し得なくする酵素的、および/または物理化学的処理に曝すことを要する。ここに記述される均質的検出アッセイは、滅菌方法と組合せることが好適である。これらの方法は、工程の削減およびこれによる生成物処理の最小化により残留分を低減し、従って増幅結果の精度および信頼性を向上させる。滅菌方法は、残留分の削減について付加的な信証を与える。
【0077】
好ましくは、DNA結合試剤は、保存安定的であり、PCR試薬緩衝剤中の成分として含まれ得るものである。かくして本発明は、キットの様式で商業的に適した新規試薬を提供する。このような試薬は、PCRによる核酸検出のためのキット中に、DNA結合試剤の溶液を含んでもよい。別法として、該試薬はTris-HCl,KCl,およびMgCl2等のPCR緩衝剤成分をPCRの実施に適当な濃度で含むと共にDNA結合試剤を含有するであろう。一実施態様において、キットはエチジウムブロマイドを増幅反応において好適な濃度、すなわち最終エチジウムブロマイド濃度が0.15μM-20.3μMの範囲にあるように与える濃度で含む緩衝剤を含有する。該緩衝剤は、次の試薬のいずれか、または全部を付加的に含んでもよい:Tris-HCl,pH8.0-8.3;KCl、およびMgCl2の、それぞれPCR増幅に適した濃度のもの。増幅核酸検出用キットは、次のいずれかを含むことも考えられる:重合試薬、dNTP類、適切なプライマ、および正の対照テンプレート。
【0078】
米国特許第4,683,202号は、5′未満に付加された非相補的配列を有するPCR用プライマの調製および使用方法を記述している。これらのテイルは、PCRの間に該非相補的テイルが二重鎖PCR生成物中に導入されるため、特定の制限部位の操作、または他の目的のために有用である。特定のテイル配列は、特定の染料の結合標的を与える。例えば、Hoechst33258(SearleおよびEmbrey,1990,Nuc.Acids Res.18:3753-3762)は、A-T塩基対に優先的に結合する。長いA-T富有5′テイルを伴って合成されるPCRプライマは、ゲノムDNAに比べて相対的にA-T富有なPCR生成物を与える。Hoechst33358を使用して、A-T富有PCR生成物は、ゲノムDNAに対して相対的に螢光を増大し、従ってゲノムDNAの存在下における信号強度を増大させるために有用である。
【0079】
同様に、DAPIはAT富有DNAと螢光複合体を形成する(KapuseinskiおよびSzer,1979,Nuc.Acids Res.,6(112):3519)。対照的に、アクチノマイシンDは、G-C富有DNAと螢光複合体を形成する(JainおよびSobell,1972,J.Mol.Biol.68:21)。従って、本発明は、増幅中に反応混合物に2種類の螢光色素を含ませることによって、1つの反応容器中で2種類の異なる標的核酸の量を監視するために適している。1種類の螢光色素が配列特異性を有し、その配列が2種類の標的核酸の一方に対するプライマのテイル(すなわち5′末端)に含まれることのみが必要とされる。各螢光色素の輻射スペクトルは、増幅中および/または後に分光螢光測定装置により別個に測定される。従って、本発明は同じ試料中の2種類の異なる核酸標的の定量的比較のために特に有用であり、これは、例えば一方の標的がすべての細胞に存在する配列であり、かつ他方が病原に存在するものである場合に、感染または疾患の程度を測定するために有用であろう。
【0080】
異なる結合特性を有する同様な試剤は、一旦増幅反応を開始した後には、反応容器を開くことなしに、一試料中の数種類の標的を検出するための多重PCR法を可能とする。螢光DNA結合染料は、各々異なる輻射および励起スペクトルを有してよい。臨床的設定において、異なるDNA配列特異性を有する異なったDNA結合染料が、異なった標的の存在を示すために有用である。
【0081】
本発明は、標的の相対量を測定するため、あるいは増幅前に存在する標的の量を正確に定量するために、内部標準を使用する方法との組合せにおいて好適である。
【0082】
別の実施態様において、本発明はDNA試料の完全性を決定する手段を提供する。例えば、法医学的分析は、記録標本的試料等の部分分解標的を含む試料にしばしば関与する。例VIIIに示すように、PCR生成物の生成を監視する能力は、別個の反応における小さいPCR生成物と大きいPCR生成物とに関するDNA試料の増幅プロフィールの比較を可能とする。分解が無い場合、二重鎖DNA増大の監視は、両方の反応が略同じサイクルでプラトーに達することを示す。分解がある場合、より多くの完全な標的分子の存在によって小さい生成物が大きい断片より速くプラトーに達する。
【0083】
ここに提供される均質的検出アッセイは、例えば遺伝子スクリーニング、法医学的ヒトの同定、病原検出、および定量、環境監視または核酸による物質の標識および追跡を含む広範囲の応用に適することが、当業者には明白であろう。
【0084】
一実施態様において、検出可能な信号は螢光である。螢光は、定量法に加えて定性方法における使用にも適している。定性的検出は、UV光への露出による反応チューブの目視検査で単純かつ迅速に行ない得る。この型式の迅速な高感度アッセイは、病原の存在、または特定遺伝子配列に帰因する、または関連する疾患状態の迅速スクリーニングとして望ましい。本発明は、標的の群の任意の構成体の存在について正/負の前スクリーニングによって、費用削減の手段を提供する。例えば病原検出系のための環境監視等、ほとんどの試料が負であることが予測される場合に、このような多くの異なる標的の増幅が、このことを可能とする。多重PCRは、一つの増幅反応中に異なる多くのプライマ対を含む方法である(Gibbsらの1989,PCR Technology,Erlich編、Stockton Press,NY)。広範囲の可能性ある標的をアッセイするための多重プライマ対を使用する均質検出アッセイは、次いで、正の試料についてのみ、より複雑な型決め処理に続けられる。この前スクリーニングは、負の試料に対するより複雑な型決め処理の実施の費用、および/または負の試料に対する反復試験実施の費用を削減する。
【0085】
標的核酸の均質的検出についての本方法は、特定標的の定量にも適している。該方法が自動的あるいは手作業のいずれで行なわれる場合にも、多くの手段により定量を実施可能である。例えば、既知標準の一連の希釈物と並行する試料の一連の希釈物は、PCRおよび信号検出に続く既知試料中の出発材料の定量に好適な一連のテンプレートを提供する。同様に、螢光は、PCR過程のサイクル間に測定可能であるから、PCRの指数相および生成物がプラトー相に達したサイクルが容易に決定され得る。より多くの標的DNAが、PCRの開始時点に存在するほど、より速く反応はプラトー相、すなわち生成物蓄積速度が減少し始める時点に達する。プラトーに達するに要するサイクル数は、試料中に存在する標的量に直接に関連するため、PCR進行中における螢光の監視は、少量DNAの定量に役立つ。
【0086】
本発明は、二重鎖ゲノム核酸の存在下における増幅核酸の検出に適している。0.5gまたはそれ以上のDNAの背景水準は、正のアッセイ結果を不明瞭とすることはないであろう。標的核酸は、クローン化分節、反復配列、例えば遺伝子の多重複写物または縦列反復、単一複写遺伝子、または70,000個の細胞中の1複写物程度の低濃度で存在する感染物質であり得る。PCRは、いずれかのテンプレート核酸から出発して二重鎖核酸の実質の増大を与えるものであるから、出発テンプレートは、RNAまたはDNAである。
【0087】
標的核酸は、例えば70,000個以上の細胞由来のヒトゲノムDNAの背景における単一複写物AIDSウイルスDNAのように希少配列であり得る。このような場合、特異性増大処理手続は、増幅が標的配列の存在に対する応答においてのみ二重鎖DNAの実質的利得を与えること、ならびに実質的利得がゲノムDNAの高い背景の存在下で検出可能であることを保証する。米国特許第4,683,195号は、単一複写遺伝子の増幅における背景減少のための一群のプライマの使用を示している。
【0088】
米国特許第4,683,195号における一群の増幅の方法は、標的配列を増幅するための第1のプライマ対、および該第1の増幅反応により形成されるPCR生成物の副分節を増幅するための第2のプライマ対を必要とする。第1のPCRに続いて、該反応混合物が第1のプライマ対濃度を低減するために10倍に希釈され、該反応混合物に第2のプライマ対が導入される。しかしながら、本発明の特に優位点とするところは工程の削減にあり、試料の希釈による増幅反応の停止、および第2のプライマ対の添加の付加的な工程は望ましいものではない。
【0089】
この問題点に向けて、修飾された一群増幅処理が提供される。本願の一群プライマ法は、核酸増幅について従来の一群プライマ処理に比べて大きく改善されている。これらの方法は、向上された特異性を与え、いずれのPCRに基づく増幅スキームに適用可能である。しかしながら、本願の開示においてはこれらの方法は均質的アッセイにおける使用について記述される。
【0090】
修飾された一群のプライマ法においては、PCRプライマの両側対より内部側である第3のプライマが、特定の標的分節増幅のためにPCR反応中に含まれる。該第3のプライマは、それが相補的標的鎖にハイブリッドした場合に、側端プライマのものより低いアニール/融解温度を有する。この性質は、より短い長さ、および/またはより低いG-C含有量によってプライマに付与され得る。最初の15-20のPCRサイクルについては、各PCRサイクルの伸長相における温度が、充分高く、すなわち約65℃に保たれて、短いプライマが特異的にアニールし、増幅を開始することが阻止される。側部プライマは充分にアニールし、PCRは高い伸長温度において通常に進行する。しかしながら、第3のプライマの側方にある該プライマは、低濃度で存在する。この方法において、増幅プラトーの前に、制限的プライマの供給がほぼ底をついたときに、アニーリング温度を約42℃まで低下させる。この温度において、第3のプライマが加わって来て、標的の増幅を残る15サイクル程度、進行させる。
【0091】
一群プライマ増幅の別法において、一方のプライマが低濃度である必要性も取り除かれる。側部プライマは、G-C富有テイルを伴って合成される。非相補的プライマテイル配列は、増幅の2サイクル後にはPCR生成物中に取込まれるため、A-T対に対してG-C対の増大した熱安定性故にPCR生成物の変性に要する温度をG-Cテイルが引き上げる作用をする(Myersらの1989,PCR Technology,Erlich編、Stockton Press,New York)。一群および側部PCR生成物間の変性温度に生じた差異は、次いでテイル付加側部プライマによる増幅を効果的に停止させるために有効に利用される。側部プライマから一旦PCR生成物が作られた後は、変性温度が96℃から86℃に下げられ、側部PCR生成物の増幅には温度が低すぎるが、一群PCR生成物の増幅を許容するためには充分高い温度にされる。アニール温度もまた、“参加(drop-in)”法と同様に、必要に応じて一群プライマ由来の合成を開始させるために操作してもよい。
【0092】
適切な変性およびアニール温度を経験的に決定し、これに従ってサーモサイクラをプログラムすることは当業者には自明のことであろう。この“辞退(drop out)プライマ”法は、PCR効率を維持するために高濃度の側部プライマを含ませる手段を提供し、またこのプライマにより開始される増幅を、反応の間に所望により停止させることを可能とする。一群プライマ増幅の特定の方法は、例VIおよびVIIに示される。
【0093】
以下の例は、本発明の種々の側面を例示する。使用されるプライマ配列は、例VIIIの末尾に掲載する。
【0094】
【実施例】
例 1
この例は、エチジウムブロマイドの存在下でのPCRの進行能力を例示する。
2組のPCRを次のように実施した。各々100μlのPCRは:50ngのヒトDNA、10mMのTris-HCl pH8,50mMのKCl,4mMのMgCl2,250μMの各dNTP、2.5単位Taqポリメラーゼ(Perkin-Elmer Cetus Instruments,Norwalk Connecticut)、20ピコモルの各プライマGH26(配列番号:1)およびGH27(配列番号:2)を含む。ヒトDNAを、ヒトB-細胞株から精製した。DNAを、Maniatis(前出文献)に記述されている方法に従って調製した。蒸発防止のため、各反応物には油のおおいを添加した。
【0095】
2組のPCRを、一方には0.51μMのエチジウムブロマイド(Sigma)が含まれることを除いて同等な条件下で実施した。Perkin-Elmer Cetus Instrumentsから購入したサーモサイクラを、次のサイクルパラメタによりプログラムした:96℃にて変性、1分間保持、55℃にてアニール、1分間保持、72℃にて伸長、1分間保持。このプロフィールを32サイクル反復した。増幅後、各PCRの5μlを3%NuSieveアガロースゲル(FMC)を用いたゲル電気泳動により分析した。該ゲルを、エチジウムブロマイドを用いて標準方法により染色し、2つの反応により生じたPCR生成物の量を比較した。結果は、エチジウムブロマイドの存在下に生成された増幅DNAの量が、該染料を含まずに生成されたPCR生成物の量と区別し得ないことを示した。更に、期待される大きさのDNA断片を生成する能力によって測定されるPCRの特異性は、変化が無かった。
【0096】
例II
この例は、PCRの特異性が、螢光に基づく標的核酸の均質的検出に対して充分であることを示す。例Iに記述される実験を、標的特異的エチジウムブロマイドの螢光が、標準PCR条件を使用して容易に視認できるか否かを測定するために拡張した。かくして5組の100μl反応混合物を、10mMのTris-HCl pH8,50mMのKCl,2.5mMのMgCl2,1.27μMのエチジウムブロマイド、150μMの各dNTP,2.5単位のTaqポリメラーゼを含めて調製した。プライマ類および標的DNAは、次に記すように含まれる。プライマ対GH15(配列番号:3)およびGH16(配列番号:4)は、DQαの増幅に特異的であり、DRβ1標的DNAを増幅しない。DQα標的DNAは、例Iに記述されるようにヒトDQα遺伝子を増幅して調製された。増幅に続いて、DQα PCR生成物を希釈して、増幅あたり?2×107の複写物(5pg)の増幅DNAを与えた。DQα生成物を、正の対照として使用した。DRβ1標的DNAは、プライマ対GH46(配列番号:5)およびGH50(配列番号:6)を、ヒトゲノムDNAを用いるPCRにおいてDRβ1の増幅に使用して調製された。該PCR生成物を希釈して、DRβ1 DNAの?2×107個の複写物を与え、下記の反応4において負の対照として使用した。5種類の反応混合物は、以下のとおりのプライマおよび標的を含む:
反応1-プライマ無し+DQα標的
反応2-プライマ+DQα標的
反応3-プライマ+DQα標的
反応4-プライマ+DQβ1標的
反応5-プライマ+標的無し
【0097】
ここにおいてプライマは、GH15(配列番号:3)およびGH16(配列番号:4)をそれぞれ10ピコモル含む。反応混合物1および2は、増幅サイクルに付さなかった。反応3,4および5は、20サイクルの増幅を行なった。サイクルパラメタは、94℃、1分間保持;45℃、1分間保持;および72℃、1分間保持であった。
【0098】
次いで、反応チューブを、UVライトボックス(300nm)に置き、2秒および2分の1秒の露光で撮影した。図1に示される結果は、反応3において特異的標的DNAの増幅による螢光の増大を示している。反応1および2は、増幅生起前に存在する螢光の水準を示している。反応4および5は、反応中に特定のプライマ対が存在し、適切なテンプレートも存在しない限り、螢光が目視的に増大しないことを示している。異なる撮影時の露光は、図1に示すように螢光の相対的差異を示している。
【0099】
例III
非-標的二重鎖DNAの存在下における本発明の均質的アッセイ法の特異的標識検出能力を試験した。この例は、ゲノムDNAの背景における特異的DNA配列の検出を示している。20組の100μl PCR配合物を次のように調製した。各々は、10mMのTris-HCl,pH8;50mMのKCl;2mMのMgCl2;2.9単位のTaqポリメラーゼ;180μmの各dNTP;1.27μMのエチジウムブロマイド;15picamoleのRH191(配列番号:7);および15picamoleのRH192(配列番号:8)を含む。プライマRH191(配列番号:7);およびRH192(配列番号:8)は、Koganらの1987,N.Engl.J.Med.,317:985-990に記述されているプライマy1.1およびy1.2から誘導した。これらのプライマは、ヒト男性細胞あたりに数千個のコピーを生じるヒト男性特異的配列に対して特異的である。15組のPCR反応混合物を、次のように設定した。試料DNAを、各反応物について特定されているように男性または女性由来のヒト血液から調製した。DNAは、Maniatisの前出文献に従って調製した。
【0100】
反応1-5は2ngのヒト男性DNAを含む
反応6-10はDNAを含まない
反応11-15は60ngのヒト男性DNAを含む
反応16-20は60ngのヒト女性DNAを含む
【0101】
該反応物を、示されたサイクル数について、94℃にて1分間;60℃にて1分間のサイクルでプログラムされたPerkin-Elmer Cetus Instrumentsのサーモサイクラーにすべて設置した。以下に示されるように、チューブを種々のサイクルにおいてサーモサイクラーから取出し、各テンプレートについてPCRの時間経過を与えた。特定的には、5本のチューブの各組について、0,17,21,25および29回の増幅サイクルを実施した。PCR生成物を、上述したようにチューブをUV光に露出することによって検出した。
【0102】
撮影および目視検査により、チューブ番号6-15は、螢光の増大を示さなかった。0および17サイクルの男性DNA試料であるチューブ番号1および2は、目視的検出によれば螢光の増大が無かった。21,25および29サイクルの男性DNA反応物のみが、UV光の下で螢光を発し、また螢光の量はサイクル数の増大と共に増加した。チューブ番号16-20による結果も、螢光の増大が17サイクルで示された点を除いて同様であった。このことは、増幅前に試料中に存在するより多くの標的DNA配列の複写物の存在と合致している。
【0103】
例IV
標的特異的エチジウムブロマイドの螢光の定量的測定のために、例IIIの反応物を開き、各反応物の定量的螢光値を得るために、内容物を分光螢光測定装置(SPEX Fluorolog-2,Spex,Edison,NJより購入)に移した。図2に示される結果は、該検出方法の標的特異性を示すのみならず、本発明の定量的側面も例示している。試料中の増大した標的の効果は、2ngおよび60ngの男性テンプレートの間について、螢光の時間経過を比較することにより観察できる。試料中の標的DNAが多いほど、反応物はより速く測定可能な螢光増大を得、最終的には螢光のプラトー水準に達する。事実、反応物の螢光が測定可能に増大を開始した時点は、増幅前にどの程度標的が存在したかを示す効果的な定量的尺度である。
【0104】
例 V
この例は、全ヒトゲノムDNA中の単一複写物遺伝子の検出のみならず、試料中に存在する単一複写物遺伝子の1個のヌクレオチドのみが異なる2種類の対立遺伝子間の識別についても該均質的アッセイが適することを示す。(対立遺伝子特異的検出方法は、ヨーロッパ特許公開第237,362号に詳細に記述されており、これをここに参考として取入れる)。
【0105】
検出すべき特定の遺伝子は、β-グロビン遺伝子である。単一塩基対の変化は、野生型β-グロビン対立遺伝子を鎌形細胞対立遺伝子に変異させる。この例において以下のプライマを使用した:RH187(配列番号:9)、RH188(配列番号:10)、およびRH189(配列番号:11)。プライマ対RH187/RH188(配列番号:9/配列番号:10)は、野生型対立遺伝子を特異的に増幅する。プライマ対RH187/RH189(配列番号:9/配列番号:11)は、鎌形細胞対立遺伝子を増幅する(これらのプライマは、Wuらの、1989,PNAS(USA),86:2757-2760に記述されているBGP2,Hβ14AおよびHβ14Sから誘導された)。6組のPCRを次のように設定した:10mMのTris-HCl,pH8.3;50mMのKCl;748μMの全dNTP;2.9単位のTaqポリメラーゼ;10pmoleの各プライマ;1.5μMのMgCl2;1.27μMのエチジウムブロマイド、および次のような50ngのヒトDNAテンプレート:1対の反応物は、鎌形赤血球対立遺伝子(SS)のヒトDNA同型接合を含む;1対の反応物は、野生型DNA(AA)を含む;ならびに1対は異型接合、すなわち1つの野生型および1つの鎌形赤血球対立遺伝子(AS)を含む。
【0106】
各1対の反応物について、1つのチューブは、鎌形赤血球グロビン対立遺伝子に特異的なプライマを含み、また1つのチューブは、野生型配列に対するプライマを含む。該プライマの組の間の差異は、プライマ対の一方の3′ヌクレオチドのみであって、鎌形赤血球細胞または野生型の標的配列のいずれかに合致する。PCR中のプライマアニール温度は、この3′ヌクレオチドがテンプレートに合致した場合にのみ増幅が起こるように設定された。サイクルパラメタは:94℃に60秒間、55℃に60秒間であった。
【0107】
該反応は、3組で実施され、PCRの30サイクル後、チューブをUV-光源上に置いて撮影した。写真を図3に示す。結果は、次のとおりであった:
【0108】

【0109】
“+”は、UV光のもとで螢光が容易に見られることを示し、また分光螢光測定装置にて測定した場合に、“+”チューブは“-”反応物より約3倍以上大きい螢光を有していた。“-”を付したPCRは、増幅反応の結果として螢光について有意に変化を起こさなかった。
【0110】
各反応物の分別量を、ゲル電気泳動により分析した。各“+”反応物は、特異的な分離されたDNA断片を示した。“-”反応物は、ゲル分析によってそのようなDNA断片を有さなかった。
【0111】
例VI
検出アッセイを、約70,000個の細胞由来のDNAの背景中の希少標的配列を検出するために本発明が好適であることを示すために設計した。詳細な説明の節にプライマ“辞退”方法として簡単に記述したように、修飾一群プライマ法は、PCR特異性を向上するために設計された。このアッセイは以下のように行なわれた:PCR反応容器1-8に、50マイクロリットルの分別量を、次の溶液から取った:それぞれ、50mMのKCl;10mMのTris-HCl,pH8.3;2.5mMのMgCl2;600μMの全dNTP;1.25単位のTaqDNAポリメラーゼ(PECI);1.27μMのエチジウムブロマイド;0.5μgのヒト細胞株DNA;プライマ対RH171(配列番号:12)およびRH176(配列番号:13)、各0.2μMのプライマ;ならびに一群プライマRH182(配列番号:14)0.2μMを含む。1滴の鉱油を、蒸発防止のために8組の溶液をおおうように使用した。プライマRH176(配列番号:13)は、GC-富有、非-相同(標的配列に対して)、5′“テイル”を保有し、これは同プライマを用いて作成されるPCR生成物の増幅に必要な変性温度を上昇させる。
【0112】
反応物1-4は、周囲の室温の溶液を用いて作成され、温度サイクル開始前に3種類のプライマを含めた。反応物5-8は、温度サイクル前に72℃の温度で平衡するまで3種のプライマの添加を保留して調製した。このため、反応物5-8は“ホット-スタート”が与えられると称される。反応物2-4および6-8は標的も含み、この正の対照DNA(PECIから購入)は、RH171(配列番号:12)、RH176(配列番号:13)およびRH182(配列番号:14)の3′部位が相同であるHIV配列を含む。このDNAを、各反応物が平均して4個のHIV配列複写物を含むように希釈した。この複写物の平均数が小さいため、所定反応物中の実際の複写物の個数はかなり変化し得る。反応物1および5にはHIV DNA標的を添加していないため、これらの反応物は負の対照として作用する。
【0113】
8組のすべての反応物を次のようにサーモサイクルにかけた:96℃にて変性、1分間保持、64℃にてアニール、1分間保持。このプロフィールを29サイクル反復し、この間において側部プライマRH171(配列番号:12)およびRH176(配列番号:12)は充分にアニールして増幅に使用され、一方、一群プライマRH182(配列番号:14)は64℃では充分にアニールせず、充分に増幅に使用されない。これは、次いで96℃にて変性、1分間保持、52℃にてアニール、1分間保持に付される。このプロフィールを2サイクル反復し、この間3種のプライマはすべて効率的にアニールし、RH171(配列番号:12)とRH176(配列番号:13)、またはRH171(配列番号:12)とRH182(配列番号:14)のいずれかを使用して生成物が生じるように増幅において伸長される。第3の一群プライマの使用は、生成物特異性を増大するため、RH171(配列番号:12)およびRH182(配列番号:14)を使用して作られる生成物は、よりHIV特異的であった。これらのサイクルは、86℃にて変性、1分間保持、52℃にてアニール、1分間保持に引続けられた。このプロフィールを18回反復し、この間GC-富有プライマRH176(配列番号:13)を含むHIV特異的および非特異的である生成物は、効率的に86℃では変性せず、従って充分に増幅せず、その一方、一群プライマRH182(配列番号:14)およびRH171(配列番号:12)を使用して作られた増幅HIV配列は、効率的に変性し増幅した。
【0114】
完了後、8組のすべての反応物をゲル電気泳動により分析した。反応物2-4および5-8は、ゲル上の主要なバンドとして期待される大きさ(約200bp)の生成物を含むことが示された。反応物1および5は、負の対照であり、このような生成物を含まなかった。しかしながら、“ホットスタート”が与えられなかった反応物2-4は、期待される大きさ以外のDNA断片を含むものと思われた。これらの別のDNA断片も、反応物1中に視認でき、それらがHIV配列から誘導されたものではないことが示される。これらの別のDNA断片は、反応物5-8には認められず、“ホットスタート”の使用が、これらの反応の特異性を向上したことが示される。
【0115】
8組の付加的な反応を、すべてが“ホットスタート”を与えられた以外上述と同様にして行なった。正の対照DNAを、これら8つの反応物に希釈して1-8の番号を付け、それぞれがHIV標的分子の半分を平均して含むようにした。分子は分割できないため、このことは、ある反応物は標的分子を含み、またあるものは含まないことを意味している。この実験を多数回反復すると、標的を含む反応物の部分はかなり変化するが、平均して約2分の1である。標的分子を含むものは、単一の標的分子を含む可能性が最も高い。反応の完結時、8つのすべてをゲル電気泳動により分析した。結果は、8つの反応物中の2つ、1および8がゲル上の主なバンドとして期待される大きさ(約200bp)のDNA断片を示し、プライマに対応するバンドを除いて視認可能なゲル中に位置する別のバンドを伴わなかった。反応物2-6は、そのようなバンドも、また何らの別のDNA断片のバンドも示さなかった。
【0116】
例VII
PCR生成物の定量的検出のために、ゲノムDNAの存在下における単一HIV標的に予期されるものに応答して生成される螢光の実質的増大を定量すべく分光螢光測定装置Spex Flurolog-2(Spex,Edison,NJ)を使用した。該分光螢光測定装置を、製造者の仕様書に従って例VIIIに記述されるように使用した。正の対照DNAを反応物あたり2分の1のHIV標的分子が含まれるように、8つの反応物に希釈した例VIに記載のPCR反応物を、それらの螢光について分析した。完了反応物の各々20μlを、100μlの10mM Tris-HCl,pH8,0.1mM EDTA,1.27μMエチジウムブロマイドに添加した。これらの溶液の螢光を570nmにて測定した。図4Aは、2つの負の試料に比べて2つの正の試料の螢光における有意な増大をグラフ的に示す。図において、破線は、負の試料の平均からの2標準偏差の螢光値を示す。PCRの正試料は、共にこの線を越えている。
【0117】
この結果は、図4Bにも背景控除方法を用いて示される。平均未満の二次標準偏差までの螢光値を検出値から差引いた。背景控除は、好ましくはPCRサイクルの開始点で各試料について螢光測定することにより行なわれ、(好ましくは二重鎖ゲノムDNAの比率を低減する最初の変性後)、そしてその値をPCRサイクル最終時点における試料の螢光から差引くことによって行なわれる。
【0118】
例VIII
以下の実験は、PCR反応の監視および増幅による二重鎖DNAの実質増加の検出に、本方法が適していることを示す。装置は、PCR生成物のオンライン検出を可能とした。
【0119】
装置を次のように設定した:付属の光ファイバ(Spexカタログ番号1950)を備えたSpex-Fluorolog-2螢光測定装置を、500nmの励起光を?3.4nmのバンド幅をもって放射するように設定した。GG435nm遮断フィルタを、2次光除去のために使用した(Melles Grist Inc.から購入)。該放射光を、?13.6nmのバンド幅をもって570nmにて検出した。OG530フィルタ(530nm遮断)を、励起光除去のために使用した。
【0120】
2組のPCR反応を、プライマRH191(配列番号:7)およびRH192(配列番号:8)を使用して、例IIIに記述されるように設定した。1つの反応チューブは、ヒト男性DNA60ngを含み、他方は、標的DNAを含まない。該反応物を、0.5mlポリエチレンチューブ内に設定したが、該チューブの上端は光ファイバ線の装着のために切断した。該光ファイバを、反応チューブの上端にエポキシを用いて接着した。この装置は、1本の光ファイバを有するため、1回に1つのPCRのみ操作される。輻射光は、チューブ内の油おおいを通して集めた。チューブの周囲に黒色の覆いを作り、該反応物をサーモサイクラ内に設置した。該サーモサイクラは、94℃および50℃にてそれぞれ1分間のサイクルで30サイクル行ない、引続いて25℃にて連続的インキュベーションするようにプログラムされた。螢光測定装置とサーモサイクラとを同時に始動した。螢光測定装置のパラメタは、時間に基づき5秒の積分時間で走査;輻射信号を、光源の変化について調製するために励起光信号との比をとる。
【0121】
図5は、DNAを含まないPCR反応の結果を示す。図5Aは、サーモサイクラが25℃から始動し、螢光が温度が94℃まで上昇するに従って低下し、温度が50℃に低下した場合に再度螢光が上昇することを示している。このパターンは、サーモサイクラが再び25℃に達するまで残るサイクルについて繰返され、螢光は、出発時の値にほぼ戻った。
【0122】
図6は、適切な標的DNAを含むPCR反応の螢光プロフィールを示す。50℃における螢光強度は、二重鎖DNA量の増加を反映してサイクル依存的な増大を示している。30サイクル完了後、サーモサイクラが25℃に戻った際に、螢光は、最終値が25℃における初期値の3倍以上に増大した。
【0123】
増幅に続いて、各反応混合物の分別量を、アガロースゲル電気泳動により分析した。該ゲル分析は、負の対照由来の試料を含むレーン中に目視可能なPCR生成物を示さなかった。正の対照PCR由来の電気泳動試料は、?150塩基対において明確かつ固有のバンドを示した。PCR生成物の予想される大きさは154bpであった。
【0124】
かくしてオンライン法は、プローブまたは更なる操作を必要とせずに標的DNAの存在または不在について迅速な分析を提供した。加えて、増幅を通しての螢光の連続的検出は、出発時に存在する標的量を反映する増幅プロフィールを与えた。標的DNAが、例えば細胞あたりに数百万の複写物をもって存在するヒトの反復配列(例えば、“Alu”配列;NelsonおよびCaskeyのPCR Technology,Erlich編、1989,Stockton Press,NY)である場合、この定量方法は、現在放射同位体を使用せずには困難である準細胞的量のDNAの迅速かつ簡便な測定に使用できる。
【0125】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、エチジウムブロマイドの存在下において特定標的DNAの増幅によるPCR混合物の螢光写真を示す図である。
【図2】
図2は、本発明の検出方法の標的特異性を示すグラフである。
【図3】
図3は、本発明を遺伝子スクリーニングに適用した螢光写真を示す図である。
【図4】
図4は、例VIIに記述される定量的均質アッセイの結果を示すグラフである。
【図5】
図5は、負の対照試料のPCRにおける螢光強度のオンライン測定を示すグラフである。
【図6】
図6は、正の対照試料のPCRにおける螢光強度のオンライン測定を示すグラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-03-22 
結審通知日 2005-03-23 
審決日 2005-03-25 
出願番号 特願平10-21236
審決分類 P 1 112・ 851- ZA (C12M)
P 1 112・ 113- ZA (C12M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 六笠 紀子吉住 和之  
特許庁審判長 種村 慈樹
特許庁審判官 鵜飼 健
長井 啓子
登録日 2000-12-01 
登録番号 特許第3136129号(P3136129)
発明の名称 核酸増幅反応モニター装置  
代理人 下田 憲雅  
代理人 山本 秀策  
代理人 伊藤 茂  
代理人 山本 秀策  
代理人 江尻 ひろ子  
代理人 深井 俊至  
代理人 深澤 憲広  
代理人 鈴木 修  

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