ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H01L |
---|---|
管理番号 | 1150657 |
審判番号 | 不服2004-22825 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-03-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-11-04 |
確定日 | 2007-01-30 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第222090号「半導体発光素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 9日出願公開、特開平11- 68157、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年8月19日の出願であって、平成16年9月28日付で特許法第29条第2項の規定に基づく拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月4日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年12月6日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。 2.平成16年12月6日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年12月6日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、請求項1を下記のように補正することを含むものである。 「【請求項1】 p型電極が設けられたp型窒化ガリウム層若しくはn型電極が設けられたn型窒化ガリウム層、前記p型およびn型電極のいずれかの電極に導電性接着剤で接着されており鉄-ニッケル合金または銅-タングステン合金から成る導電性基板、並びにガリウム砒素基板の(111)A面上に形成されており前記p型若しくはn型窒化ガリウム層上にあって前記電極が設けられている第1の面とは反対側の第2の面の上に設けられた発光層を含む窒化ガリウム系半導体層からなる積層とで構成されている、ことを特徴とする半導体発光素子。」 (2)当審の判断 補正された請求項1において、「ガリウム砒素基板の(111)A面上に形成されており」なる事項が付加されたが、この請求項1に係る半導体発光素子において、当該ガリウム砒素基板が除去されていることは記載がない。 してみると、半導体発光素子の積層構造にはガリウム砒素基板が含まれているものと解される。 しかるに、本願の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「当初明細書」という。)には、GaAs基板を用いると、GaN系半導体層の発光層から出た光が基板に吸収され、その基板からの反射光の強度が下がる(【0009】参照。)という問題点を解決するためになされたもので、成長用のGaAs基板を除去することを特徴としている(【0013】参照。)ことが記載されているのであり、GaAs基板を残すというようなことは記載も示唆もされていない。 よって、本件補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内でなされたものではない。 (3)したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年12月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年7月9日付手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 (2)刊行物記載の事項 原審の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物1?10には、それぞれ下記の事項が記載されている。 刊行物1:特開平3-174780号公報 「クラッド層4、活性層3、ウインドウ層2からなるダブルヘテロ構造の表面、裏面に、表面電極1、裏面電極7を設け、裏面に金属板10を貼り付けたGaAlAs系発光ダイオードであって、前記ウインドウ層2の上に表面電極1を形成した後、エッチング液で前記ダブルヘテロ構造成長用のGaAs基板を除去し、次いで、クラッド層4に裏面電極7を形成し、該裏面電極7に銀-エポキシ導電性樹脂9でアルミ板(金属板10)を貼り付ける点。」 刊行物2:特開平8-88410号公報 アルミニウム板をクラッド層裏面の周辺部に設けた以外は、上記刊行物1とほぼ同じ内容のものが記載されている。 刊行物3:特開平8-316527号公報 「GaN層からの光がGaAs基板で吸収され、光の取り出し効率が悪いのを改良するために、発光層のバンドギャップより大きいバンドギャップを有するZnS等のII-VI属の化合物半導体からなる導電性基板上にGaN系の発光層を含むエピタキシャル成長層が形成された半導体発光素子。」 刊行物4:特開平8-116092号公報 「GaAs基板上に窒化ガリウム系半導体の低温バッファ層、高温バッファ層、クラッド層、活性層、クラッド層を順に成長させてなる半導体発光素子。」 刊行物5:特開平9-8403号公報 「サファイア基板1表面にGaN系のn型層、活性層、p型層からなる窒化物半導体層2を積層し、その表面にNiとAuを含む第1のオーミック電極30を形成し、一方、p型GaAs基板50の表面にAu-Znよりなる第2のオーミック電極40を形成し、両電極同士を貼り合わせ、加熱圧着した後、サファイア基板1を除去し、両面にp電極、n電極を形成してなる窒化物半導体素子。」 刊行物6:J. W. Yang, et al., "Temperature-mediated phase selection during growth of GaN on (111)A and (111)B GaAs substrates", APPLIED PHYSICS LETTERS, Vol. 67, No. 25, p.3759-3761 「GaAs基板の(111)A面上にGaN系の半導体層を積層すること。」 刊行物7:特開平8-255932号公報 「サファイア基板上に作製されたAlGaInN系の半導体レーザ501のチップをFe-Ni合金503、Fe-Ni-Mn合金504、Pb-Snハンダ505からなる、温度変化によって湾曲するサブマウント502上に配置すること。」(図18,19及び【0044】参照。) 刊行物8:特開平8-264901号公報 「n型GaAs(111)B面基板1上にGaN系の層を積層してなるレーザ素子を熱伝導性のよいCu-W合金からなるステムにマウントし通電動作を試みた点。」 刊行物9:特開昭61-202484号公報 「発光ダイオード装置のステム11に設けた貫通孔18に、上面に発光ダイオード素子14を装着したCuW合金からなる素子支持リード16を孔内面に対して非接触状態に貫通し、放熱特性を改善した点。」 刊行物10:特開昭60-157284号公報 「半導体レーザ基体2を表面に金属化層32を有する中間部材3を介して金属支持部材1に装着するのに、Au-SnソルダやPb-Snはんだで接着する点。」 (3)対比・判断 (イ)本願の請求項1?3及び9?11に記載された半導体発光素子に係る各発明と上記各刊行物記載のものとを対比する。 上記各刊行物には、本願の上記各発明に共通な構成である「半導体発光素子の基板として鉄-ニッケル合金または銅-タングステン合金から成る導電性基板をもちいる」ことが記載されておらず示唆もない。 すなわち、刊行物7?9に記載された鉄-ニッケル合金または銅-タングステン合金は、いずれも発光素子の一部を構成する基板として用いられているのではなく、発光素子を載置する支持部材であるから、これを刊行物1または2に記載の発光ダイオードの基板であるアルミ板に代えて用いることが容易であるとはいえない。しかも、刊行物1または2に記載の発光ダイオードは、発光層を含む半導体層が、本願発明のような窒化ガリウム系ではなく、GaAlAs系である。 よって、本願の請求項1?3及び9?11に係る各発明は、上記各刊行物に記載されたものから当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ロ)本願の請求項4?8に記載された半導体発光素子の製造方法に係る各方法発明と上記各刊行物1及び5記載のものとを対比する。 本願の各方法発明は、『成長用ガリウム砒素基板の(111)A面上に成長した発光層を含む窒化ガリウム系半導体層からなる積層の一表面に設けた電極面と、銅-タングステン合金または鉄-ニッケル合金からなる導電性基板とを、導電性接着剤を用いて接着した後に、前記成長用ガリウム砒素基板を除去することを特徴とする』ものであるが、刊行物1記載のものは、「ダブルヘテロ構造成長用のGaAs基板を除去し、次いで、クラッド層に裏面電極を形成し、該裏面電極に銀-エポキシ導電性樹脂でアルミ板を貼り付ける」ものであって、製造方法が全く異なっている。 また、刊行物5記載のものは、「サファイア基板1表面にGaN系のn型層、活性層、p型層からなる窒化物半導体層2を積層し、その表面にNiとAuを含む第1のオーミック電極30を形成し、一方、p型GaAs基板50の表面にAu-Znよりなる第2のオーミック電極40を形成し、両電極同士を貼り合わせ、加熱圧着した後、サファイア基板1を除去し、両面にp電極、n電極を形成する」ものであり、窒化ガリウム系の半導体層を形成する成長用の基板を他の基板と貼り合わせた後で除去する点で似通っているが、刊行物5の製造方法においては、本願方法発明では除去されるGaAs基板は、除去されることなく残るものであるし、電極を形成する順番も本願方法発明とは異なっている。 したがって、本願の請求項4?8に係る各方法発明は、上記各刊行物に記載されたものから当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)むすび 以上のとおり、本願の請求項1?11に係る各発明は、刊行物1?刊行物10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2007-01-17 |
出願番号 | 特願平9-222090 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
WY
(H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 近藤 幸浩 |
特許庁審判長 |
向後 晋一 |
特許庁審判官 |
井上 博之 西村 直史 |
発明の名称 | 半導体発光素子及びその製造方法 |
代理人 | 塩田 辰也 |
代理人 | 柴田 昌聰 |
代理人 | 近藤 伊知良 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |