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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1151249
審判番号 不服2004-4004  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-27 
確定日 2007-01-19 
事件の表示 平成 8年特許願第513720号「グラフト共重合体反応生成物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月 2日国際公開、WO96/12746、平成10年 8月 4日国内公表、特表平10-508051〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
〔1〕手続きの経緯

本願は、1995年(平成7年)10月20日(優先日、1994年10月21日、1995年10月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、1996年(平成8年)11月5日に補正書が提出され、平成15年8月21日付けで第1回目の拒絶理由が通知され、平成15年11月28日付けで手続補正書及び意見書が提出され、平成16年2月4日付けで拒絶査定がなされ、平成16年2月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成16年3月1日に手続補正書が提出され、前置審査において、平成16年5月26日付けで第2回目の拒絶理由が通知され、平成16年8月25日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。

〔2〕補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成16年8月25日になされた手続補正を却下する。

[理由]

1.平成16年8月25日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成16年5月26日付けの拒絶理由通知を受けてなされたものである。そして、該拒絶理由通知は、平成15年8月21日付けの第1回目の拒絶理由通知がなされた後の補正により新たに生じた拒絶理由のみを通知するものであり、また、最後の拒絶理由通知であることを明記してなされたものであるから、特許法第17条の2第1項第3号でいう「最後に受けた拒絶理由通知」に該当する。(以下、平成16年5月26日付けで通知された拒絶理由を「最後の拒絶理由」という。)

2.本件補正には、特許請求の範囲の補正が含まれており、本件補正前の特許請求の範囲と、本件補正後の特許請求の範囲は、それぞれ以下の(1)、(2)のとおりである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 グラフト可能な不飽和基を持ったポリオレフィン骨格を用意し、炭素数が2から50までの窒素含有エチレン系不飽和の脂肪族又は芳香族単量体を用意し、上記ポリオレフィン骨格に上記単量体をグラフトさせるための開始剤を用意し、上記ポリオレフィンを溶剤に溶解して溶液を作り、溶液を所望の温度まで加熱し、その際上記溶剤を9重量%以下の芳香族分子成分を含んだ石油系溶剤とし、上記溶液に上記グラフト可能な単量体と開始剤とを一緒に又は連続して添加し、上記開始剤は長時間にわたって一定の割合で上記溶液に添加し、それによってグラフト共重合体反応生成物を作る工程からなることを特徴とする、少なくとも8のADT値を持ったグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項2】 上記単量体が
N-ビニルイミダゾール、
1-ビニル-2-ピロリジノン、
N-アリルイミダゾール、
1-ビニルピロリドン、
2-ビニルピリジン、
4-ビニルピリジン、
N-メチル-N-ビニルアセトアミド、
ジアリルホルムアミド、
N-メチル-N-アリルホルムアミド、
N-エチル-N-アリルホルムアミド、
N-シクロヘキシル-N-アリルホルムアミド、
4-メチル-5-ビニルチアゾール、
N-アリルジイソオクチルフェノチアジン、
2-メチル-1-ビニルイミダゾール、
3-メチル-1-ビニルピラゾール、
N-ビニルプリン、
N-ビニルピペラジン、
N-ビニルスクシンイミド、
ビニルピペリジン、
ビニルモルホリン、
及びこれら材料の組み合わせ、
からなる群から選ばれた一員であることを特徴とする、請求項1に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項3】 上記単量体が
N-ビニルイミダゾール、
N-アリルイミダゾール、
2-ビニルピリジン、
4-ビニルピリジン、
N-メチル-N-ビニルアセトアミド、
ジアリルホルムアミド及び、
これら材料の組み合わせ、
から成る群から選ばれた一員であることを特徴とする、請求項2に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項4】 上記単量体がN-ビニルイミダゾールであることを特徴とする、請求項3に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項5】 グラフト共重合体反応生成物が基油原料中に1重量%程度存在するときに、少なくとも20ポイントだけ潤滑性基油原料の粘度指数を増加させる特性を持っていることを特徴とする、請求項1-4の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項6】 グラフト共重合体反応生成物が、上記ポリオレフィン骨格に少なくとも1.2重量%の上記N-ビニルイミダゾールをグラフトさせていることを特徴とする、請求項1-4の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項7】 上記グラフト共重合体反応生成物が、上記ポリオレフィン骨格にポリオレフィンの1モル(重量平均分子量)あたり少なくとも13モルの上記N-ビニルイミダゾールをグラフトさせていることを特徴とする、請求項1-4の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項8】 N-ビニルイミダゾール、
C-ビニルイミダゾール、
1-ビニル-2-ピロリジノン、
N-アリルイミダゾール、
1-ビニルピロリジノン、
2-ビニルピリジン、
4-ビニルピリジン、
N-メチル-N-ビニルアセトアミド、
ジアリルホルムアミド、
N-メチル-N-アリルホルムアミド、
N-エチル-N-アリルホルムアミド、
N-シクロヘキシル-N-アリルホルムアミド、
4-メチル-5-ビニルチアゾール、
N-アリルジイソオクチルフェノチアジン、
2-メチル-1-ビニルイミダゾール、
3-メチル-1-ビニルピラゾール、
N-ビニルプリン、
N-ビニルピペラジン、
N-ビニルスクシンイミド、
ビニルピペリジン、
ビニルモルホリン、及び
これらグラフト可能な単量体の組み合わせ、
からなる群から選ばれた少なくとも1種のグラフト可能な単量体と、グラフト可能なサイトを側鎖に持っているポリオレフィン共重合体と、或る温度と条件の下に上記ポリオレフィン共重合体骨格の上記グラフト可能なサイトの少なくとも一部に上記単量体をグラフトさせるに有効な開始剤とから実質的に構成されている反応混合物を溶融混合する工程からなることを特徴とし、少なくとも2のADT値を持っているグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項9】 上記反応混合物を押出機又は他の重合体混合機内で溶融混合することを特徴とする、請求項8に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項10】 上記押出機内で、ポリオレフィン組成物の素練りと流れによって生じる熱により、上記反応混合物を加熱することを特徴とする、請求項9に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項11】 上記単量体を長い時間にわたって一様な割合で押出機内に導入することを特徴とする、請求項9又は10に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項12】 単量体のあとで開始剤を押出機へ添加することを特徴とする、請求項9-11の何れか1つの項に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項13】 開始剤を長い時間にわたって一様な割合で押出機へ添加することを特徴とする、請求項12に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項14】 溶剤を用いて開始剤を削減することを特徴とする、請求項12又は13に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項15】 押出機を連続的に稼動させてすべての成分を一様な割合で添加することを特徴とする、請求項9-14の何れか1つの項に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項16】 ポリオレフィン骨格が数で30-80%のエチレンと、70-20%のプロピレンと、必要により0-9%のジエン単量体で改質されたエチレン/プロピレン/ジエンからなるポリオレフィンであることを特徴とする、請求項1-7の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法、又は請求項8-15の何れか1つの項に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項17】 上記単量体がN-ビニルイミダゾールを含むことを特徴とする、請求項8-15の何れか1つの項に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項18】 上記ポリオレフィン共重合体骨格が、20,000から500,000の重量平均分子量と、10以下の多分散性を持っていることを特徴とする、請求項8-17の何れか1つの項に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項19】 上記ADT値が少なくとも4であることを特徴とする、請求項8-18の何れか1つの項に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項20】 A.N-ビニルイミダゾールと、グラフト可能な不飽 和基を持ったポリオレフィンと、開始剤とを用意 し、
B.上記ポリオレフィンを溶剤に溶解して溶液を作り 、その溶剤は9重量%より少ない芳香族の不純物 分子を含んだ石油系溶剤とし、
C.上記N-ビニルイミダゾールを上記溶液中に分散 させ、
D.上記溶液に上記開始剤を添加し、その添加の平均 割合を添加時間1分あたり上記重合体にN-ビニ ルイミダゾールをグラフトさせるに充分な量の2 0%以下とし、上記添加の工程を上記開始剤の開 始温度以上の温度で行う工程からなり、
それによって、ポリオレフィンにN-ビニルイミダゾールがグラフトされたグラフト共重合体を作ることを特徴とし、得られたグラフト共重合体が100℃で13,000センチストークス以下の粘度と、少なくとも8のADT値を持ったものとなる、請求項8-18の何れか1つの項に記載のグラフト反応生成物の製造方法。
【請求項21】 上記開始剤を上記溶液へ添加する間に、上記溶液中にN-ビニルイミダゾールを分散させる工程が、上記N-ビニルイミダゾールの1分あたり添加の投入量の20%よりも少ない添加割合で行われることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】 A.N-ビニルイミダゾールと、側鎖にグラフト可能 なサイトを持っているポリオレフィン共重合体骨 格とを用意し、
B.上記骨格にN-ビニルイミダゾールをグラフトさ せるに充分な量の開始剤を用意し、
C.実質的に上記N-ビニルイミダゾールと、上記ポ リオレフィン共重合体と、上記開始剤とから成る 反応混合物を溶融混合し、上記ポリオレフィン骨 格の側鎖にある上記グラフト可能なサイトの少な くとも一部に、上記N-ビニルイミダゾールをグ ラフトさせるのに有効な温度と条件下に上記溶融 を行なう工程からなることを特徴とする、
13,000センチストークスより小さい粘度と、少なくとも2のADT値を持った請求項8に記載のグラフト共重合体反応生成物を製造する方法であって、この反応生成物は分散剤粘度指数改良剤であるグラフト反応生成物の製造方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 グラフト可能な不飽和基を持ったポリオレフィン骨格を用意し、炭素数が2から50までの窒素含有エチレン系不飽和の脂肪族又は芳香族単量体を用意し、上記ポリオレフィン骨格に上記単量体をグラフトさせるための開始剤を用意し、上記ポリオレフィンを溶剤に溶解して溶液を作り、溶液を所望の温度まで加熱し、その際上記溶剤を9重量%以下の芳香族分子成分を含んだ石油系溶剤とし、上記溶液に上記グラフト可能な単量体と開始剤とを一緒に又は連続して添加し、上記開始剤は長時間にわたって一定の割合で上記溶液に添加し、それによってグラフト共重合体反応生成物を作る工程からなることを特徴とする、少なくとも8のADT値を持ったグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項2】 上記単量体が
N-ビニルイミダゾール、
1-ビニル-2-ピロリジノン、
N-アリルイミダゾール、
1-ビニルピロリドン、
2-ビニルピリジン、
4-ビニルピリジン、
N-メチル-N-ビニルアセトアミド、
ジアリルホルムアミド、
N-メチル-N-アリルホルムアミド、
N-エチル-N-アリルホルムアミド、
N-シクロヘキシル-N-アリルホルムアミド、
4-メチル-5-ビニルチアゾール、
N-アリルジイソオクチルフェノチアジン、
2-メチル-1-ビニルイミダゾール、
3-メチル-1-ビニルピラゾール、
N-ビニルプリン、
N-ビニルピペラジン、
N-ビニルスクシンイミド、
ビニルピペリジン、
ビニルモルホリン、
及びこれら材料の組み合わせ、
からなる群から選ばれた一員であることを特徴とする、請求項1に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項3】 上記単量体が
N-ビニルイミダゾール、
N-アリルイミダゾール、
2-ビニルピリジン、
4-ビニルピリジン、
N-メチル-N-ビニルアセトアミド、
ジアリルホルムアミド及び、
これら材料の組み合わせ、
から成る群から選ばれた一員であることを特徴とする、請求項2に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項4】 上記単量体がN-ビニルイミダゾールであることを特徴とする、請求項3に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項5】 グラフト共重合体反応生成物が基油原料中に1重量%程度存在するときに、少なくとも20ポイントだけ潤滑性基油原料の粘度指数を増加させる特性を持っていることを特徴とする、請求項1-4の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項6】 グラフト共重合体反応生成物が、上記ポリオレフィン骨格に少なくとも1.2重量%の上記N-ビニルイミダゾールをグラフトさせていることを特徴とする、請求項1-4の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項7】 上記グラフト共重合体反応生成物が、上記ポリオレフィン骨格にポリオレフィンの1モル(重量平均分子量)あたり少なくとも13モルの上記N-ビニルイミダゾールをグラフトさせていることを特徴とする、請求項1-4の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項8】 ポリオレフィン骨格が数で30-80%のエチレンと、70-20%のプロピレンと、必要により0-9%のジエン単量体で改質されたエチレン/プロピレン/ジエンからなるポリオレフィンであることを特徴とする、請求項1-7の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項9】 上記ポリオレフィン共重合体骨格が、20,000から500,000の重量平均分子量と、1?15の多分散性を持っていることを特徴とする、請求項1-8の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項10】 A.N-ビニルイミダゾールと、グラフト可能な不飽 和基を持ったポリオレフィンと、開始剤とを用意 し、
B.上記ポリオレフィンを溶剤に溶解して溶液を作り 、その溶剤は9重量%より少ない芳香族の不純物 分子を含んだ石油系溶剤とし、
C.上記N-ビニルイミダゾールを上記溶液中に分散 させ、
D.上記溶液に上記開始剤を添加し、その添加の平均 割合を添加時間1分あたり上記重合体にN-ビニ ルイミダゾールをグラフトさせるに充分な量の2 0%以下とし、上記添加の工程を上記開始剤の開 始温度以上の温度で行う工程からなり、
それによって、ポリオレフィンにN-ビニルイミダゾールがグラフトされたグラフト共重合体を作り、得られたグラフト共重合体が100℃で13,000センチストークス以下の粘度と、少なくとも8のADT値を持ったものであることを特徴とする、請求項1に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法。
【請求項11】 上記開始剤を上記溶液へ添加する間に、上記溶液中にN-ビニルイミダゾールを分散させる工程が、上記N-ビニルイミダゾールの1分あたり添加の投入量の20%よりも少ない添加割合で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。」

3.本件補正前の特許請求の範囲の請求項(以下「旧請求項」という。)と本件補正後の特許請求の範囲の請求項(以下「新請求項」という。)の相互の対応関係を検討すると、旧請求項1?7は、新請求項1?7に、旧請求項16は新請求項8にそれぞれ対応し、また、旧請求項8?15、17?22は削除されている。そして、新請求項9?11には対応する旧請求項が存在しない。したがって、新請求項9?11は、本件補正によって新たに追加された請求項と認められる。
そして、このような新たな請求項の追加は、特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項のいずれを目的とするものでもない。
新請求項9?11が、旧請求項8?15、17?22の何れかを補正したものであると仮定して検討しても、その補正は、特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項を目的とするものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

4.新請求項7は、旧請求項7に対応するところ、旧請求項7に対しては、最後の拒絶理由において、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内のものではないとの指摘が既になされていた。
そして、新請求項7(旧請求項7に同じ)は、請求項1-4の何れか1つの項に記載のグラフト共重合体反応生成物の製造方法において「グラフト共重合体反応生成物が、ポリオレフィン骨格にポリオレフィンの1モル(重量平均分子量)あたり少なくとも13モルのN-ビニルイミダゾールをグラフトさせていること」を発明特定事項としている。
そこで、当初明細書の記載を検討するに、当初明細書には、グラフト共重合体反応生成物が、ポリオレフィン骨格にポリオレフィンの1モルあたり少なくとも13モルのN-ビニルイミダゾールをグラフトさせていることの記載はあると認められる(当初明細書の請求の範囲の請求項7、及び、第40?41頁の「この発明によってグラフトされたポリオレフィンは次のものを含んでいる。少なくとも約13モル、・・・のグラフトされた単量体をもとのポリオレフィン1モルあたり含んでおり」との記載を参照)ものの、上記発明特定事項についての記載、換言すれば「1モルあたり」が「重量平均分子量あたり」を意味することについての記載はない。また、上記発明特定事項が、当初明細書の記載から自明であるとも認められない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

5.以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

〔3〕本願発明

上記〔2〕のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1?22に係る発明は、平成16年3月1日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?22に記載された、上記〔2〕[理由]2.(1)に記載したとおりのものと認める。

〔4〕最後の拒絶理由の概要

最後の拒絶理由の概要は、以下の理由1、2のとおりである。
理由1:平成16年3月1日付けでした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7、9?22に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」、「本願発明9」?「本願発明22」という。)は、当初明細書に記載した事項の範囲内のものではないから、当該手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
理由2:本願は特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

〔5〕最後の拒絶理由に対する当審の判断

最後の拒絶理由のうち、理由1について判断する。
(1)本願発明7について
上記〔2〕[理由]4.に示したとおりであるから、本願発明7は、当初明細書に記載した事項の範囲内のものとは認められない。
(2)本願発明14について
本願発明14は、本願発明12又は13の製造方法において「溶剤を用いて開始剤を削減すること」を発明特定事項としている。そこで、当初明細書の記載を検討するに、当初明細書には、開始剤を溶剤を用いて薄めて使用することは記載されていると認められる(当初明細書の第27頁を参照)が、溶剤を用いて開始剤を削減すること、すなわち、開始剤の使用量を溶剤を用いて減らすことについては記載されていないし、また、このことが当初明細書の記載から自明であるとも認められない。
したがって、本願発明14は、当初明細書に記載した事項の範囲内のものとは認められない。
(3)本願発明21について
本願発明21は、本願発明20の方法において「開始剤を溶液へ添加する間に、溶液中にN-ビニルイミダゾールを分散させる工程が、N-ビニルイミダゾールの1分あたり添加の投入量の20%よりも少ない添加割合で行われること」を発明特定事項としている。そこで、当初明細書の記載を検討するに、当初明細書にはこの発明特定事項について記載されておらず、また、この発明特定事項が当初明細書の記載から自明であるとも認められない。なお、この発明特定事項はその意味が明りょうではない。
したがって、本願発明21は、当初明細書に記載した事項の範囲内のものとは認められない。
(4)以上のとおり、本願発明7、14、21は当初明細書に記載した事項の範囲内のものとは認められないから、本願発明1?6、9?13、15?20、22について判断するまでもなく、平成16年3月1日になされた補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

〔6〕むすび

以上のとおりであるから、最後の拒絶理由の理由2を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-24 
結審通知日 2006-08-30 
審決日 2006-09-12 
出願番号 特願平8-513720
審決分類 P 1 8・ 55- Z (C08F)
P 1 8・ 561- Z (C08F)
P 1 8・ 57- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 高原 慎太郎
石井 あき子
発明の名称 グラフト共重合体反応生成物の製造方法  
代理人 酒井 正美  

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