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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800138 審決 特許
無効2007800196 審決 特許
無効200680250 審決 特許
無効2009800029 審決 特許
無効200335218 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1152395
審判番号 無効2005-80069  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-08 
確定日 2007-01-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2552937号発明「医薬用硬質カプセルおよびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
第1. 手続の経緯

本件特許第2552937号の請求項1?6に係る発明についての出願は、平成2年3月29日に日本エランコ株式会社によって特許出願され、平成8年8月22日にその発明についての特許の設定登録がされた後、登録名義人はシオノギクオリカプス株式会社に表示変更された。
これに対して請求人は、平成17年3月8日に全請求項に対し特許無効審判を請求し、被請求人は平成17年6月17日に答弁書と共に訂正請求書を提出して訂正を求めた。上記書面に対し、請求人は平成17年7月27日付けで弁ぱく書を提出した。
なお、現在の特許権者はクオリカプス株式会社となっている。

第2. 訂正の適否についての判断

2-1 訂正請求の内容

本件の訂正請求は本件特許明細書を訂正請求書に添付した明細書(以下、訂正明細書という。)のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。

(訂正事項1)
本件特許明細書中、「請求項1」の記載を下記のとおり訂正する。
「(1) アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを基剤とし、それにゲル化剤およびゲル化補助剤を配合してなる医薬用硬質カプセルであって、当該医薬用硬質カプセルの成型に用いる基剤水溶液が、上記セルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.0l?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有するものである、医薬用硬質カプセル。」

(訂正事項2)
本件特許明細書中、「請求項2」の記載を下記のとおり訂正する。
「(2) セルロースエーテルがヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースである請求項(1)記載の医薬用硬質カプセル。」

( 訂正事項3)
本件特許明細書中、「請求項3」の記載を下記のとおり訂正する。
「(3) ゲル化剤がカラギーナンであり、ゲル化補助剤がカリウムイオンおよび/またはアンモニウムイオンである請求項(1)または(2)記載の医薬用硬質カプセル。」

( 訂正事項4)
本件特許明細書中、「請求項4」の記載を下記のとおり訂正する。
「(4) アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.01?0.50重量%の割合で含むカプセル基剤水溶液を調製し、該基剤水溶液にカプセル成型用ピンを浸潰し、次いで該成型用ピンを基剤水溶液から引き上げて、当該成型用ピンの外表面に付着した該基剤水溶液を室温下にゲル化せしめ、前記成型用ピンの外表面にカプセル皮膜を形成せしめることを特徴とする医薬用硬質カプセルの製造方法。」

(訂正事項5)
本件特許明細書中、「請求項5」の記載を下記のとおり訂正する。
「(5) カプセル基剤水溶液の液温を50?52℃とし、該基剤水溶液のゲル化を22.5?25.5℃の環境下に行うものである請求項(4)記載の医薬用硬質カプセルの製造方法。」

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

2-2-1 訂正事項1について:
訂正後の請求項1は、医薬用硬質カプセルに関する請求項1の発明に、「医薬用硬質カプセルの成型に用いる基剤水溶液が、上記セルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.01?0.50重量%の範囲で含有するものである」旨の要件を追加して、医薬用硬質カプセルの各成分の配合割合を、成型時(製造)における浸漬液(基剤水溶液)中の割合から限定しようとするものであるから特許請求の範囲の減縮に相当し、この訂正は、願書に添付した明細書(本件特許公報の第4欄50行目?第5欄5行目参照)の記載である、「ところで、本発明医薬用硬質カプセルの成型時(製造)における浸漬液、すなわち、基剤水溶液の濃度は、アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.01?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有する。」の記載に基づくものである。
したがって、上記請求項1の訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、且つ実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。

2-2-2 訂正事項2、訂正事項3及び訂正事項5について:
請求項2及び3の訂正は、訂正前の請求項2を削除したことに伴って、請求項3及び請求項4の番号を繰り上げるものであり、あわせて、同請求項中で引用する請求項番号について、前者では、「請求項(1)または(2)」から「請求項(1)」に、後者では「請求項(1)、(2)または(3)」から「請求項(1)または(2)」にそれぞれ対応するように訂正するものである。
また、請求項5の訂正は、同じく請求項2の削除に伴って、請求項6を繰り上げて請求項5とし、あわせて従属させる請求項について「請求項(5)」から「請求項(4)」に訂正するものである。
これらの訂正は、いずれも「明りょうでない記載の釈明」に相当するものであり、しかも願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、且つ実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。

2-2-3 訂正事項4について:
訂正事項4は、訂正前の請求項2の削除に伴い、請求項5の番号を繰り上げたもので、この訂正は「明りょうでない記載の釈明」に相当する。
さらに、「医薬用硬質カプセルの製造に用いるカプセル基剤水溶液中の、アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルの濃度が5?25重量%、ゲル化剤の濃度が0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤の濃度が0.01?0.50重量%である」旨の要件を追加して、医薬用硬質カプセルの製造に使用する置換されたセルロースエーテル、ゲル化剤およびゲル化補助剤を含むカプセル基剤水溶液について、これら各成分の配合割合を限定する訂正は特許請求の範囲の減縮であり、訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、且つ実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。

2-3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法134条の2第5項において準用する平成6年改正前第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3. 本件発明

上記のとおり訂正が認容されたので、本件特許第2552937号の請求項1乃至5に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された以下のとおりのものである。

(1)アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを基剤とし、それにゲル化剤およびゲル化補助剤を配合してなる医薬用硬質カプセルであって、当該医薬用硬質カプセルの成型に用いる基剤水溶液が、上記セルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.0l?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有するものである、医薬用硬質カプセル。

(2)セルロースエーテルがヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースである請求項(1)記載の医薬用硬質カプセル。

(3)ゲル化剤がカラギーナンであり、ゲル化補助剤がカリウムイオンおよび/またはアンモニウムイオンである請求項(1)または(2)記載の医薬用硬質カプセル。

(4)アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.01?0.50重量%の割合で含むカプセル基剤水溶液を調製し、該基剤水溶液にカプセル成型用ピンを浸潰し、次いで該成型用ピンを基剤水溶液から引き上げて、当該成型用ピンの外表面に付着した該基剤水溶液を室温下にゲル化せしめ、前記成型用ピンの外表面にカプセル皮膜を形成せしめることを特徴とする医薬用硬質カプセルの製造方法。

(5)カプセル基剤水溶液の液温を50?52℃とし、該基剤水溶液のゲル化を22.5?25.5℃の環境下に行うものである請求項(4)記載の医薬用硬質カプセルの製造方法。

これらの各請求項に係る発明を「本件発明1」「本件発明2」・・「本件発明5」ということがある。

第4 当事者の主張

4-1 請求人の主張

審判請求人は、「特許第2552937号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として甲第1号証乃至甲第5号証の1及び2を提出し、訂正前の請求項1乃至6に係る発明(訂正後の請求項1乃至5に係る発明)は、甲第1乃至4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである旨主張している。

甲第1号証:特公昭47-4310号公報
甲第2号証:米国特許第4318746号明細書
甲第3号証:特開昭51-76417号公報
甲第4号証:特開昭61-100519号公報
甲第5号証の1:実験成績報告書
甲第5号証の2:同訳文

4-2 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、乙第1乃至4号証を提出している。

乙第1号証:本件特許公報(特許第2552937号)
乙第2号証:「バイオ&メディカル大辞典」第1105頁
(株)アイピーシー発行、1987年5月15日
乙第3号証:「廣川薬科学大辞典」第1144頁、第1199頁
(株)廣川書店発行、平成2年6月25日
乙第4号証:特開昭63-188365号公報

第5. 当審の判断

5-1 本件発明1について

請求人が提出した甲第1号証には、
「(A)電気伝導性を有する外表面および被覆溶液のゲル化点温度以下の表面温度を有するダイスマンドレルを、約0.07?1.0のヒドロキシアルキルM.S.および約0.6?2.0のアルキルD.S.ならびに20℃で2重量%水溶液として約2?20cpsの粘度を特徴とするフィルム形成性C2?C4ヒドロキシアルキルC1?C2アルキルセルロースエーテルを少なくとも20重量%含有し約1000?12000cpsの粘度を有する熱ゲル性被覆水溶液中に浸し、(B)被覆水溶液から被覆されたダイスマンドレルをとり出し、(C)熱誘導によりセルロースエーテル被膜を非流動性のゲルに迅速に変換させ、そして次に(D)ゲル化された皮膜を乾燥して安定なセルロースエーテルフィルム製品を形成させることから成る製薬用カプセル外皮の製造方法」(甲第1号証第1頁2欄第4?18行)が開示され、最終の乾燥により製薬上の適用に適した堅くて強いセルロースエーテルフィルム製品が提供される(同号証第2欄第24?26行)との記載がある。
甲第1号証に記載された製薬用カプセル外皮は、「アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを基剤とする医薬用硬質カプセル」である点で本件発明1と一致するものの、加熱によってゲル化を行うものであって、ゲル化剤およびゲル化補助剤の使用はなく、したがって、医薬用硬質カプセルの成型に用いる基剤水溶液が、上記セルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.0l?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有するという本件発明1の構成を示唆するものではない。

同じく請求人が提出した甲第3号証には、医薬用カプセルの基剤として特定の熱ゲル化性メチルセルロースエーテル組成物が使用できること、熱ゲル化性メチルセルロースエーテル組成物として、特に約1.64-1.90のメトオキシルDSと20℃で2%水溶液粘度約5-4000cpsをもつメチルセルロースとヒドロオキシプロピルメチルセルロース、ヒドロオキシエチルメチルセルロース、ヒドロオキシプロピルセルロース、ヒドロオキシエチルセルロース、ヒドロオキシエチルーヒドロオキシプロピルメチルセルロース等との混合物が有用であること(甲第3号証;第4頁右上欄6?12行目)、約40-85℃に予熱したカプセルピンを、熱ゲル化性メチルセルロースエーテル組成物を約15-30重量%含む約40℃以下、普通10-30℃の水性浸漬被覆浴中に浸漬すると、上記熱ゲル化性メチルセルロースエーテルがピン表面に熱的に固まり、次いで被覆したピンをセルロースエーテルゲル化温度以上の温度に保ったオーブンで乾燥すること(同号証第5頁左上欄の下から3行目?右上欄12行目)が記載されているが、ゲル化は加熱により行われるものであって、本件発明1で使用するゲル化剤やゲル化補助剤を配合する点についての示唆はない。

また、甲第4号証は、アルキル基および/またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテル70?98重量部とポリビニルアルコール30?2重量部との混合物を基剤としてなる医薬用硬質カプセルに関し、上記の特定の基で置換されたセルロースエーテルとして、具体的にはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が例示され(甲第4号証、第2頁左下欄9?18行目)、さらに、上記混合物を用いたカプセルの製造に関し、適宜加熱されたこの水溶液(浸漬液)中に予め加熱した成形用ピンを浸潰し所定時間維持したのち引き上げ、次いで乾燥器で乾燥することが記載されている(同号証第3頁右上欄の4?15行)。甲第4号証では、アルキル基および/またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを使用し、有機溶剤溶液或いは水溶液としてピンを浸漬し被覆成形する方法ではカプセルの酸素透過性、透湿性が大きく、そのため薬剤の変質を招きやすい欠点があることが挙げられ、その欠点の克服のためにポリビニルアルコールの併用が提案されたものであるが、上記甲第1,3号証と同様、熱によるゲル化を利用するものであって、本件発明1のゲル化剤やゲル化補助剤の使用を示唆するものではない。

請求人がセルロースエーテルにゲル化剤やゲル化補助剤を加えたゲルに関する文献として提出した甲第2号証は「高安定性ゲル、その使用及び製造」と題する米国特許明細書であって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような特定の基で置換されたセルロースエーテルと、ゲル化剤であるカラギーナンと、ゲルに使用してその硬性を増大させる塩化カリウム又は炭酸カリウム(ゲル化補助剤に相当する)を用いてゲルを製造する技術が開示され、その具体的なゲル組成は、水分が少なくとも50重量%、カラギーナン約0.5?5.0重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース約2?20重量%であること、カリウム塩は0.5重量%であることの記載がある。
そして、甲第2号証には、このゲルの利点としては、堅く粘着性があり、接着力を有し、良好な導電体であり、低温と高温のいずれでも安定であること、加えて、そのゲル特性は、その大部分が水であり、しかも、堅さと粘着性を備えるために相当多くのゲル化剤が必要とされる他の導電性の粘着性ゲルまたは堅いゲルと比較して、比較的少量のゲル化剤を用いてなる組成物によって達成されること、さらに、ゲル剤が不溶になると接着剤が活性化するので粘着性と付着性が同時に引き出され、皮膚をぬらしたり水とゲルを使う必要なくゲルが皮膚に接着することが挙げられ、その用途として第6欄52行目-第7欄23行目に
「・・このゲルは電極に使用することができる。特に患者モニターまたは電気刺激用の安定でディスポーザブルな電極に有用である。医療分野において知られているように、身体から生じる電気的シグナルは、皮膚に付着させ、且つ適当な電気機器と接続した電極によって計測することができる。……上記に参照した出願に詳説されているように、本発明のゲルは、モニター及び電気刺激に使用される、優れたディスポーザブルな電極として提供される。その他の用途として、本発明のゲルは、多くの化粧および薬剤の用途を有する格別に安定なビヒクルである。例えば、このゲルは様々な薬物 または抗生物質の経皮投与または局所適用のための剤型として使用することができる。このゲルはまた密封療法または熱傷軟膏として使用することができる。相溶性である限り、油、油溶性成分、およびその他の水不溶性物質を熱分散液中に乳化または分散させることにより、これらのものを冷却前のゲルに混和することができる。好ましい実施態様は食用に適しているので、このゲルは薬物摂取のための口にあうビヒクルとして、または嵩高なタイプの緩下剤として役立つ。このゲルは硬質でかつ安定であるので、固形ルームフレッシュ剤のためのビヒクルとしても使用することができる。」との記載がされている。
甲第2号証のゲルは特定の基で置換されたセルロ-スエーテルが5重量%?20重量%の範囲、ゲル化剤0.5重量%、ゲル化補助剤0.5重量%である場合は本件発明1の基剤水溶液組成と重複するものである。
しかしながら、上記ゲルの用途に関する記載は、医薬をゲルに混和させてそのまま摂取することを意図したものであることが明らかであって、カプセル成型用ピンを浸漬させピンの外表面に皮膜を形成させる公知のカプセル製法に適した基剤水溶液として使用することを当業者に想起させるものではない。
また、組成に重複部分があるとはいえ、甲第2号証のゲルのカラギーナン(ゲル化剤に相当)の下限値である0.5重量%は本件発明1のゲル化剤の上限であって、ゲル化剤として0.5重量%を超えて5.0重量%配合することが許容される(同号証第5欄第9行によれば、より好ましい範囲は1.5?3重量%である)ゲルであるから、その水溶液状態のものは本件発明1の0.1?0.5重量%のゲル化剤を含有する基剤水溶液とは当然にその粘度、成型性等においても同等のものであると言うことはできない。ちなみに、本件明細書には、ゲル化剤の上限濃度を0.5重量%とする理由として0.5重量%を超えると基剤のゼリー粘度が高くなり、浸漬法による均一なカプセル皮膜の成型が困難となるばかりでなく、浸漬液容器壁面にゲル化膜が発生しやすくなり、カプセル皮膜成型時に支障を来すからであるとされているから、このゲル化剤の上限を超える使用が許容される甲第2号証のゲルはその性状からみてもカプセル成型用基剤としての用途を想起させるに至らないと考えられる。

そうすると、甲第1、3,4号証のセルロースエーテルを基剤とする医薬用硬質カプセルに関する技術及び甲第2号証のセルロースエーテル及びゲル化剤、ゲル化補助剤を含むゲルに関する技術をいかに総合勘案してみても、これらを本件発明1の硬質カプセルに向けて技術的に結合させる契機を見いだすことはできない。

そして、本件発明1は、アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを基剤とし、それにゲル化剤およびゲル化補助剤を配合してなる医薬用硬質カプセルに対し、該医薬用硬質カプセルの成型に用いる基剤水溶液が、上記セルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.0l?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有させることにより、本件明細書に記載のとおりの効果を奏するものと認められる。
したがって、効果に関する甲第5号証を検討するまでもなく、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて本件発明1を当業者が容易に発明することができたとすることはできない。

請求人は、甲第2号証のゲルの用途について「本発明のゲルは、多くの化粧および薬剤の用途を有する格別に安定なビヒクルである。・・・好ましい実施態様は食用に適しているので、このゲルは薬物摂取のための口にあうビヒクルとして、または嵩高なタイプの緩下剤として役立つ。」の記載を指摘し、経口医薬品としては顆粒剤、錠剤の他、カプセル剤もよく知られているから、経口医薬品であるカプセルに適用することは普通であると主張する。
しかし、甲第2号証において薬剤の用途を有するビヒクルとして使用されるのは「本発明のゲルは・・安定なビヒクルである。」「このゲルは・・・口にあうビヒクルとして」の記載のとおり、あくまで「ゲル」自体であって、これに薬物を混和して食物と同じように摂取することを意図していることは明らかである。
乙第2,3号証によれば医薬分野においては「ビヒクル」とは「賦形剤」「賦形薬」であるとされており、賦形剤とは「薬剤を服用しやすくするなどのために加える物質であり、水薬における蒸留水、散薬における乳糖など」(広辞苑「賦形剤」の項参照)を指すから、甲第2号証においてはまさにゲルが賦形剤として使用されているものである。そして、カプセル剤は、通常はゲルを成形、乾燥して得られるものであるから、甲第2号証のゲルをカプセルとした場合は、もはやゲルが有していた「薬物摂取のための口にあうビヒクル」としての特性は失われることは明らかである。
したがって、この点からも、ゲル自体の特性を利用する用途として示された甲第2号証の記載から、硬質カプセル剤の用途を導くことは、当業者といえども到底想起し得ないと言うべきである。
よって、請求人の主張は採用できない。

5-2 本件発明2、3について
本件発明2、3は本件発明1を引用するものであるから、本件発明1が甲第1?4号証から容易に発明し得たものでない以上、本件発明2,3も同様に容易に発明できたということはできない。

5-3 本件発明4、5について

請求人が提出した甲第1、3,4号証には、上記で摘記した事項が記載されている。
これらはいずれも置換されたセルロースエーテルをふくむカプセル基剤水溶液を調製し、該基剤水溶液にカプセル成形ピンを浸漬し、次いで該成形ピンを基剤水溶液から引き上げて、当該成形用ピンの該表面に付着した該基剤水溶液を加熱してゲル化せしめ、前記成型用ピンの外表面にカプセル皮膜を形成せしめる医薬用硬質カプセルの製造方法」であって、本件発明4の、セルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.0l?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有する基剤溶液を使用するものではなく、成型用ピンの外表面に付着した該基剤水溶液を室温下でゲル化するものでもない。
そして、甲第1,3、4号証にはセルロースエーテル基剤にゲル化剤およびゲル化補助剤を特定の配合割合で配合することの記載や示唆はないことは既に述べたとおりであって、成形用ピンの該表面の基剤水溶液を室温下でゲル化することを想起させる点も同様に記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証を見てもセルロースエーテルにゲル化剤、ゲル化補助剤を配合した基剤を用いて医薬用硬質カプセルを製造することが想起されないことは前記したとおりである。
したがって、当業者が甲第1?4号証に基づいて本件発明4を容易に発明できたとすることはできない。
また、本件発明4を引用する本件発明5も同様の理由によって当業者が甲第1?4号証に基づいて容易に発明できたとすることはできない。

第6.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張および提出した証拠方法によっては本件発明1?5の特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
医薬用硬質カプセルおよびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
(1)アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを基剤とし、それにゲル化剤およびゲル化補助剤を配合してなる医薬用硬質カプセルであって、当該医薬用硬質カプセルの成型に用いる基剤水溶液が、上記セルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.01?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有するものである、医薬用硬質カプセル。
(2)セルロースエーテルがヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースである請求項(1)記載の医薬用硬質カプセル。
(3)ゲル化剤がカラギーナンであり、ゲル化補助剤がカリウムイオンおよび/またはアンモニウムイオンである請求項(1)または(2)記載の医薬用硬質カプセル。
(4)アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.01?0.50重量%の割合で含むカプセル基剤水溶液を調製し、該基剤水溶液にカプセル成型用ピンを浸漬し、次いで該成型用ピンを基剤水溶液から引き上げて、当該成型用ピンの外表面に付着した該基剤水溶液を室温下にゲル化せしめ、前記成型用ピンの外表面にカプセル皮膜を形成せしめることを特徴とする医薬用硬質カプセルの製造方法。
(5)カプセル基剤水溶液の液温を50?52℃とし、該基剤水溶液のゲル化を22.5?25.5℃の環境下に行うものである請求項(4)記載の医薬用硬質カプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は新規な医薬用硬質カプセル、殊に基剤に公知のゼラチンを用いない低含有水分量の硬質カプセル、さらに詳しくは水溶性セルロース誘導体を基剤とした医薬用硬質カプセルとその製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
周知のとおり医薬用硬質カプセルは、通常ゼラチンを基剤とし、これにグリセリンまたはソルビトール等の可塑剤、さらに要すれば不透明化剤、染料または顔料等が適宜添加配合された皮膜組成物から成型される。そしてこのものは、該カプセル皮膜中に通常10?15重量%程度の水分を保有している。
もし、カプセル皮膜中の含有水分が10重量%以下になると皮膜の可塑性が失われ、当該カプセル内への薬剤の充填作業時における耐衝撃性が著しく損なわれて、使用に耐えなくなる。また、空あるいは薬剤充填後を問わず、該カプセルの保存時にも皮膜中の含有水分量が低下すると、該皮膜が収縮し、キャップとボデイの嵌合が経時的に緩くなるのを避け得ない。従って、かかる公知のゼラチン硬質カプセルでは、その皮膜中に前述のとおり一定の水分を保有せしめることが必須である。
ところが、このゼラチン硬質カプセルは、前記皮膜中の水分のために、内部に充填された薬剤が加水分解を受け易い場合、あるいは相互作用のある2種以上の薬剤が含まれているような場合には、分解して主薬の力価の低下、変質、変色、さらにはカプセル皮膜の不溶化等の不都合を惹起することがある。
こうした欠点を解消すべくこれまでにも医薬用硬質カプセルについて種々の改良、提案がなされている。例えば特公昭47-4310号公報には、セルロースの水酸基の一部もしくは全部がアルキル基あるいはヒドロキシ基で置換された水溶性セルロースエーテルを基剤として使用し、この水溶性浸漬液に成型ピンを浸漬し、皮膜を形成する硬質カプセルの製造法が開示されている。また、特開昭61-100519号および同62-266060号公報には、前記水溶性セルロースエーテルにポリビニールアルコール(PVA)を配合し、かかる水溶性浸漬液から硬質カプセルを得る方法について開示されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、これらの医薬用カプセルは、水溶液セルロース誘導体の基剤浸漬液に成型用ピンを浸漬した後、成型用ピンまたは該ピンに付着した皮膜自体を加熱してゲル化成型せしめて製造されるので、その加熱が充分でないと前記基剤浸漬液がゲル化固化することなく、成型用ピンから浸漬液がずり落ちてしまい、実用上満足し得るカプセル皮膜を得ることができない。また、加熱温度が高すぎるとゲル化時の皮膜に皺が入り易い等の不都合を生じる。特に後者の場合、成型用ピンに付着した水溶性セルロース誘導体を高温の水中で浸漬ゲル化させる際に僅かに成型物が水中に溶け出し、このため均一な皮膜を得ることが困難となるばかりでなく、このものはそのゼリー強度が小さいために、乾燥後成型用ピンから成型物すなわちカプセル皮膜の剥ぎ取りに際しても割れを発生することが多々あり、いずれにしても低含水量の医薬用硬質カプセルを実用的に得るのは困難である。さらに、これらのカプセル製造法を実施するには特別な装置と操作を必要とし、通常のゼラチン基剤からの浸漬成型なる最も一般的な公知のカプセル製造装置をそのまま利用することができない。
本発明は以上のような状況において案出されたものであり、上述の水溶性セルロース誘導体からなる硬質カプセルの難点、不都合を改善しようとするものであって、カプセル皮膜中の平衡水分が低く、低湿度条件下においても脆化せず、水分による薬剤充填後の割れ、変質等を防止せんとするものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを基剤として、これにゲル化剤およびゲル化補助剤を添加、配合することにより室温下でのゲル化を可能としたものである。従って、本発明はアルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテル、ゲル化剤およびゲル化補助剤を含む医薬用硬質カプセルとその製造方法をその要旨とするものである。
本発明において使用されるアルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースを挙げることができるが、この中、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは皮膜成型性および低水分下での機械的強度の点において最適である。
一方、本発明において使用可能なゲル化剤としては、カラギーナン、タマリンド種子多糖、ペクチン、カードラン、ゼラチン、ファーセレラン、および寒天等を例示することができるが、カラギーナンはゲル強度が高く、しかも特定イオンとの共存下において優れたゲル化性を示すことから、少量の添加で使用可能となるので、特に好適なものである。なお、上記カラギーナンには、カッパカラギーナン、イオタ-カラギーナンおよびラムダカラギーナンの3種が知られているが、本発明においてはゲル化能を有するカッパおよびイオタ-カラギーナンを使用することができる。このゲル化剤カラギーナンのゲル化補助剤としては、カッパカラギーナンについてはカリウムイオン、アンモニウムイオンおよびカルシウムイオンの1種または2種以上を、またイオタ-カラギーナンについてはカルシウムイオンを挙げることができる。
ところで、本発明医薬用硬質カプセルの成型時(製造)における浸漬液、すなわち、基剤水溶液の濃度は、アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを5?25重量%、ゲル化剤を0.1?0.5重量%およびゲル化補助剤を0.01?0.50重量%の範囲でそれぞれ含有する。基剤水溶液中のアルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルの濃度が5重量%未満では、充分な厚みのカプセル皮膜を形成させることが困難であり、また、当該アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルの濃度が25重量%を越えると基剤のゼリー粘度が高くなり、浸漬法による均一なカプセル皮膜の成型が困難となる。従って、アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルの特に好ましい濃度は13?17重量%である。
一方、ゲル化剤としてのカラギーナンの濃度が0.1重量%未満では、浸漬成型時に成型ピンに付着した基剤水溶液がゲル化せずにピンからずり落ちてしまい、逆に0.5重量%を越えると前述の場合と同様に基剤のゼリー粘度が高くなり、浸漬法による均一なカプセル皮膜の成型が困難となるばかりでなく、浸漬液容器壁面にゲル化膜が発生し易くなり、カプセル皮膜成型時に支障を来す。従って、当該ゲル化剤の最適濃度としては、0.15?0.30重量%である。
さらに、前記ゲル化補助剤の濃度についても、前記範囲未満また範囲を越えての使用は、ゲル化剤の場合と同様の不都合を生じる。従って、かかるゲル化補助剤の最適濃度としては0.05?0.20重量%である。
本発明においては、公知の医薬用硬質カプセルと同様に前記基剤中には、必要に応じて色素、顔料等の着色剤、または不透明化剤、あるいは香料等を適宜配合することを妨げない。
本発明医薬用硬質カプセルは、公知のゼラチン硬質カプセルと同様に通常の浸漬成型法に準じて製造される。すなわち、アルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテル、ゲル化剤およびゲル化補助剤、さらに要すれば着色剤、不透明化剤、香料等を適宜配合して基剤水溶液を調整し、該水溶液に浸漬成型ピンを浸漬し、以下常法に従って硬質カプセル皮膜を得る。このとき該基剤水溶液、すなわち、浸漬液の温度は50?52℃に調整するのがよい。浸漬液の温度が前記範囲から外れると該浸漬液のゼリー粘度が微妙に変化し、浸漬成型時における成型ピンへの浸漬液の付着が良好に行われず、その結果均一なカプセル皮膜を得るのが困難となる。以後、浸漬液からの浸漬成型ピンの引き上げ、乾燥、成型ピンからの皮膜の剥ぎ取り(抜き取り)、および裁断等の工程を経て所定寸法の硬質カプセルが得られることは浸漬法による公知のゼラチン硬質カプセルの製造の場合と全く同じである。ただ、浸漬成型ピン外表面における基剤浸漬液のゲル化所要時間が、ゼラチン基剤の場合4?7秒であるのに対して本発明カプセルの場合では30?60秒とやや長時間を要する。
〔作用〕
本発明は上述したような特徴を有するので、特別な加熱を要することなく基剤のゲル化が達成され、低含水分量でも柔軟なカプセル皮膜を形成することができる。
〔実施例〕
以下実施例により本発明をさらに具体的に詳述する。
実施例1
約70℃の精製水19.55L中に塩化カリウム18.4g(ゲル化補助剤濃度:0.08重量%)を加えて溶解し、さらにカッパカラギーナン39.1g(ゲル化剤濃度:0.17重量%)を加え、これらを撹拌しながら溶解する。
次に、この溶解液にヒドロキシプロピルメチルセルロース3.45kg(セルロース誘導体濃度:15重量%)を撹拌しながら投入し、温水中で分散させた後、該溶液温度を50℃に下げてヒドロキシプロピルメチルセルロースを撹拌しながら溶解し、その後7時間静置して脱泡する。
このようにして調整された浸漬液(基剤水溶液)を、浸漬法による公知のカプセル製造装置に仕込み、前記浸漬液の温度を50?52℃に保持しながら常法よりサイズ2号の硬質カプセルを得る。
試験-1(空カプセルの割れに対する評価)
前記実施例で得た本発明硬質カプセルと対照としてのゼラチン硬質カプセルについて、それぞれ12%RHの条件下で4日間放置し、皮膜中の含有水分を低下させた。また一方、同試料についてそれぞれ105℃で2時間乾燥し、皮膜中の含有水分を0%にした後、両試料カプセルを落錘試験法(49.7gの重りを20cmの高さから落下させる)と指圧試験法にて割れ状況を観察した。
その結果を第1表に示すが、本発明にかかる硬質カプセルはゼラチン硬質カプセルに比べて、明らかに割れにくいものであることが分かる。

試験-2(皮膜の平衡水分に対する評価)
実施例で得た本発明の硬質カプセルと前記対照カプセルについて、それぞれ43%RHの湿度、温度25℃の条件下に10日間放置し、平衡に達したことを確認した後、乾燥減量法でカプセル水分を測定し、皮膜の平衡水分を調べた。
その結果を第2表に示すが、本発明の硬質カプセルはゼラチン硬質カプセルに比べ、明らかに平衡水分が低く、低含有水分カプセルであることが分かる。

試験-3(空カプセルの溶状に対する評価)
実施例で得た本発明硬質カプセルと前記対照カプセルについて、日本薬局方規定の標準条件で、37±1℃に加温した精製水を用いた溶状試験を行った。
その結果を第3表に示すが、本発明の硬質カプセルは対照カプセルより溶状は遅くなるが、局方規定の10分以内に溶状が完了し、使用上支障を来すことはない。

試験-4(崩壊性に対する評価)
実施例で得た本発明カプセルと前記対照カプセルについて、それぞれトウモロコシデンプンを充填し、日本薬局方規定の標準条件で、37±1℃に加温した第1液を用いた崩壊試験を行った。
結果は第4表-1および同-2に示すように本発明硬質カプセルは対照カプセルより崩壊はやや遅くなるが、3?5分以内で内容物の全てが完全に流出し、実用上充分に使用し得る硬質カプセル剤であることが確認された。


〔発明の効果〕
本発明医薬用硬質カプセルは、上述のとおりアルキル基およびヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースエーテルを主要基剤とするので、該セルロース誘導体により成型される皮膜の特性をそのまま硬質カプセルの特徴として享受するものである。すなわち、本発明によれば、
(1)低含水量の硬質カプセルを得ることができ、さらにその皮膜の機械的強度にも優れた医薬用硬質カプセルを提供することできる。
(2)皮膜中の平衡水分が低いので、水分により悪影響を受け易い薬剤に対してもそのまま当該硬質カプセル内に充填することができ、カプセル剤化が容易である。
(3)アルデヒド基またはカルボニル基との反応によりカプセル皮膜が不溶化することがない。
(4)基剤の副成分としてゲル化剤およびゲル化補助剤を用いるので、特別な装置および作業を要することなく、公知の浸漬法による硬質カプセル製造装置をそのまま援用して、安価に当該硬質カプセルを提供することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-12-01 
結審通知日 2006-12-06 
審決日 2006-12-22 
出願番号 特願平2-83676
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 圭次  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
登録日 1996-08-22 
登録番号 特許第2552937号(P2552937)
発明の名称 医薬用硬質カプセルおよびその製造方法  
代理人 中野 睦子  
代理人 中野 睦子  
代理人 齋藤 健治  
代理人 三枝 英二  
代理人 三枝 英二  
代理人 齋藤 健治  

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