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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03C
管理番号 1152414
審判番号 不服2004-8763  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-28 
確定日 2007-02-16 
事件の表示 平成 7年特許願第 55896号「レンズ付きフイルムユニット用写真フイルムの取り扱い方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月 1日出願公開、特開平 8-254795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年3月15日の出願であって、平成15年12月25日付で手続補正され、平成16年4月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月25日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年5月25日付の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成16年5月25日付の手続補正を却下する。
〔理由〕
平成16年5月25日付の手続補正は、特許請求の範囲の請求項1において「幅方向の一方の端縁にのみコマ送り用のパーフォレーションが形成され、かつこのパーフォレーションが長い間隔と短い間隔とで交互に配列される」と補正しようとする点を含むものである。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書又は図面には、「パーフォレイション」の記載は有るが「コマ送り用のパーフォレーション」の記載は無い。
したがって、本件補正は特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反しているので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年5月25日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年12月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
レンズ付きフイルムユニットの製造時に、フイルム出入り口に遮光用のテレンプを設けた光密のケース本体とこのケース本体内に回転自在に収納されたスプールとからなる撮影用パトローネとともに予めユニット本体に組み込まれ、長い間隔と短い間隔とで交互にパーフォレーションが配列されるとともに、長い間隔で並んだパーフォレーションの対の間に1コマずつ撮影が行われるようにユニット本体内でフイルム送りが行われる写真フイルムの取り扱い方法であって、
写真フイルムの一端を前記撮影用パトローネのスプールに係止しておき、前記パーフォレーションで規定された最終コマに撮影が行われた後のフイルム巻上げ操作により写真フイルムの他端まで前記撮影用パトローネに巻き込んだ後に、撮影用パトローネとともにユニット本体から取り出し、露光済みの写真フイルムを撮影用パトローネから引き出して前記スプールから分離してからフイルム現像処理を行った後には、前記撮影用パトローネとは異なり、スプールの回転によって写真フイルムを先端から送り出す機能をもった返却用パトローネのスプールに該写真フイルムのいずれかの端部を係止し、かつ該写真フイルムの全てを返却用パトローネに巻き込んでから該写真フイルムを顧客に返却するようにしたことを特徴とするレンズ付きフイルムユニット用写真フイルムの取り扱い方法。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平6-130563号公報)には、次の事項が記載されている。
「予め未露光フイルムを内蔵し、撮影レンズ及びシャッタなどの撮影機構を有するレンズ付きフイルムユニット」(第2頁左欄第2?4行)

「図1及び図2は本発明を実施したレンズ付きフイルムユニットの分解斜視図である。ユニット本体10は本体部7及びこれに前後から爪止めされる前カバ-8、後カバ-9で構成され、内部にパトロ-ネ1及びパトロ-ネ1から引き出されたフイルム2を収納している。フイルム2は上側にフルサイズ1コマ分に1個ずつの割合で1コマパーフォレーション5が開設されており、下側には従来のフォーマットと同様のフルサイズ1コマ分6に8個ずつの割合で連続パーフォレーション4が開設されている。」(第2頁右欄第50行?第3頁左欄第9行)

「本体部7にはパトロ-ネ室17とフイルム室18が両端部に形成されており、パトロ-ネ1とフイルム2が各々収納される。巻き上げノブ13の下部にはフォーク22が一体で形成され、パトロ-ネ1のスプール23の端部と噛合している。」(第3頁左欄第14?19行)

「図1、図2に示したレンズ付きフイルムユニットのフイルム給送部分の作用を説明する。撮影者が巻き上げノブ13を回動させると、巻き上げノブ13と一体形成されたフォーク22と噛合しているスプール23が回動し、その為、スプール23と一端が固着しているフイルム2がパトロ-ネ1の内部に巻き上げられる。」(第3頁左欄第32?38行)

「図3に示したレンズ付きフイルムユニットのフイルム給送部分の作用を説明する。撮影者が巻き上げノブ13を回動させると、巻き上げノブ13と一体形成されたフォーク22と一端が噛合しているフイルムパトロ-ネのスプールが回動し、その為、スプールと一端が固着しているフイルムがパトロ-ネの内部に巻き上げられる。」(第3頁右欄第23?29行)

予めユニット本体に未露光フィルム等を内蔵するのは、レンズ付きフイルムユニットの製造時であること、パトローネは、撮影用パトローネであること、及び、フイルムは、1コマずつ撮影が行われるように巻き上げられることは、レンズ付きフイルムユニットにおいて、いずれも周知・自明であるので、前記記載事項と図面の記載からみて、引用文献1には、
「レンズ付きフイルムユニットの製造時に、収納されたスプールを有する撮影用パトローネとともに予めユニット本体に内蔵され、パーフォレーションが開設されるとともに、1コマずつ撮影が行われるようにユニット本体内でフイルムが巻き上げられるフイルムの取り扱い方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平5-100356号公報)には、次の事項が記載されている。
「35mmカメラあるいはハーフサイズと呼ばれているカメラに用いられているいわゆる35mmフイルム(パトローネ入りの135フイルム)は、円筒状パトローネの内部にスプールを回転し得るように設け、このスプールに写真フイルムの末端を係止させている。」(第2頁左欄第18?21行)

「写真フイルム4には撮影コマ7の各々に対応して1個ずつのパーフォレーション6が一定ピッチごとに設けられ、また最終コマ8に対応してパーフォレーション6を3個配列した写真フイルム終端部検出用のパーフォレーション群6cが設けられている。
【0013】さらに写真フイルム4の末端部9には、その端部から長さ方向にずれた位置に、2個の第1係止穴10aと3個の第2係止穴10bとが設けられている。第1係止穴10aは、未露光状態で収納するときに用いる写真フイルムパトローネ12(図2参照)のスプール13に係止するためのものであり、第2係止穴10bは、撮影後、現像処理して収納する返却容器30(図3参照)のスプール31に係止するためのものである。」(第3頁左欄第24?36行)

「先ず未露光状態である写真フイルム4(以下「未露光フイルム」と称す)は、図2に示した写真フイルムパトローネ12に収納される。この収納は、両端部にフランジ13a,13bをもったスプール13に未露光フイルム4を巻き付けた状態でパトローネ本体14,15の内部に全部収納する。なお、未露光フイルム4の末端部9は、それに設けた第1係止穴10aが図示していないスプール13の係止突起に係合し、スプール13に係止されている。パトローネ本体14,15は、スプール13を回動自在に収納しており、いずれも遮光性樹脂等によって成型されている。パトローネ本体14,15にはそれぞれポート部17a,17bが形成されており、これらによりフイルム送出口17を形成している。ポート部17a,17bの内壁には、遮光用のテレンプ18がそれぞれ接合されている。」(第3頁左欄第45行?同頁右欄第9行)

「撮影時には、前述した写真フイルムパトローネ12をカメラに装填する。」(第3頁右欄第21?22行)

「シャッタレリーズごとにパーフォレーション6を検出して写真フイルム1コマ送り制御を行い、パーフォレーション群6cを検出することで最終コマ8と判断する。最終コマ8の撮影が完了した後に写真フイルム給送制御装置は、スプール13を写真フイルム巻戻し方向に回転させ、撮影済フイルム4をパトローネ本体14,15の内部に完全に巻き戻す。
【0018】撮影者は、撮影済フイルム4が収納された写真フイルムパトローネ12をDP取扱店に提出する。DP取扱店では現像処理の前作業として、撮影済フイルム4のリーダ部5をパトローネ本体14,15から引き出す。」(第3頁右欄第38?49行)

「パトローネ本体14,15から撮影済フイルム4が引き出され、撮影済フイルム4の殆どが引き出されると、カッターが作動してスプール13と撮影済フイルム4とが切り離される。このカッターは、図1に示す二点鎖線22の位置、すなわち、第1及び第2係止穴10a,10bとの間で、且つ第2係止穴10bに近寄った近傍で切断し、末端部9aを形成する。その後は、リーダーシートを先頭にして撮影済フイルム4がフイルムプロセサ内の各処理槽内を通過して自動的に現像処理し、現像済フイルム4が得られる。
【0020】このようにして得られた現像済フイルム4は、プリント処理を終えた後に返却容器30に収納される。返却容器30に収納する作業は、図3に示すように、先ず現像済フイルム4の末端部9aの第2係止穴10bをスプール31に形成された係止突起に係合し、現像済フイルム4をスプール31に係止する。その後、スプール31を軸方向から内部ケース32に挿入する。この挿入は、現像済フイルム4を開口33に差し込みながら行う。そして、スプール31の両端に円盤34,35を嵌め込む。この嵌め込み時に、現像済フイルム4の両側縁が誘導間隙36,37に差し込まれ、また円盤34,35の突起38,39が内部ケース32の凹部40,41のそれぞれに係合される。
【0021】しかる後に内部ケース32をケース本体42に挿入し、スプール31を写真フイルム巻取り方向(図3に示す矢印方向)に回転させ、現像済フイルム4を内部ケース32内に巻き込む。このとき円盤34,35に各々設けられた規制枠43,44がロール形態で巻回された現像済フイルム4の最外周を両縁から部分的に包み込んでその巻径を規制し、スプール31から現像済フイルム4が巻き緩むことを防ぐ。また、返却容器30内に現像済フイルム4をリーダ部5まで完全に巻き込む」(第4頁左欄第10?41行)

「ケース本体42に第1蓋44aと第2蓋44bとからなる蓋44を取り付ければ、現像済フイルム4を返却容器30に収納する作業が終了する。そして、この状態で顧客に返却される。」(第4頁左欄第47?50行)

「駆動軸62がスプール31に係合し、スプール31を写真フイルム送り出し方向に回転させる。これによりリーダ部5cが誘導間隙36,37に達すると、先端分離ガイド47によって掬い出され開口33に向かって送り出される。」(第4頁右欄第14?18行)

写真フイルムをパトローネ本体の内部に完全に巻き戻すためのフィルム巻戻し方向の回転は、フィルム巻戻し操作であるので、前記記載事項と図面の記載からみて、引用文献2には、
「フイルム送出口に遮光用のテレンプを設けたパトローネ本体とこのパトローネ本体内に回転自在に収納されたスプールとからなる写真フィルムパトローネと、写真フイルムとが、カメラに組み込まれており、
写真フイルムの一端を前記写真フィルムパトローネのスプールに係止しておき、パーフォレーションで規定された最終コマの撮影が完了した後のフイルム巻戻し操作により写真フイルムをパトローネ本体の内部に完全に巻き戻した後に、写真フィルムパトローネとともにDP取扱店に提出し、撮影済みの写真フイルムを写真フィルムパトローネから引き出して前記スプールから切り離してからフイルム現像処理を行った後には、前記写真フィルムパトローネとは異なり、スプールの回転によって写真フイルムを先端から送り出す機能をもった返却容器のスプールに該写真フイルムの端部を係止し、かつ該写真フイルムの全てを返却容器に巻き込んでから該写真フイルムを顧客に返却するようにした写真フイルムの取り扱い方法。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

(2)対比
引用発明1における「内蔵され」、「開設」、「フィルムが巻き上げられる」、及び「フィルム」は、本願発明の「組み込まれ」、「配列」、「フィルム送りが行われる」、及び「写真フィルム」にそれぞれ相当するものであるので、本願発明と引用発明1とを対比すると、
「レンズ付きフイルムユニットの製造時に、収納されたスプールを有する撮影用パトローネとともに予めユニット本体に組み込まれ、パーフォレーションが配列されるとともに、1コマずつ撮影が行われるようにユニット本体内でフイルム送りが行われるフイルムの取り扱い方法。」で両者の構成は一致し、次の点で両者の構成は相違する。

相違点(A)
撮影用パトローネが、本願発明は、フイルム出入り口に遮光用のテレンプを設けた光密のケース本体とこのケース本体内に回転自在に収納されたスプールとからなるのに対して、引用発明1は、収納されたスプールを有する点。

相違点(B)
写真フィルムが、本願発明は、長い間隔と短い間隔とで交互にパーフォレーションが配列されるとともに、長い間隔で並んだパーフォレーションの対の間に1コマずつ撮影が行われるのに対して、引用発明1は、パーフォレーションが配列されるとともに、1コマずつ撮影が行われる点。

相違点(C)
本願発明は、写真フイルムの一端を撮影用パトローネのスプールに係止しておき、パーフォレーションで規定された最終コマに撮影が行われた後のフイルム巻上げ操作により写真フイルムの他端まで前記撮影用パトローネに巻き込んだ後に、撮影用パトローネとともにユニット本体から取り出し、露光済みの写真フイルムを撮影用パトローネから引き出して前記スプールから分離してからフイルム現像処理を行った後には、前記撮影用パトローネとは異なり、スプールの回転によって写真フイルムを先端から送り出す機能をもった返却用パトローネのスプールに該写真フイルムのいずれかの端部を係止し、かつ該写真フイルムの全てを返却用パトローネに巻き込んでから該写真フイルムを顧客に返却するようにしたのに対して、引用発明1は、そのことについての記載がない点。

(3)判断
相違点(A)について
引用発明2における「写真フィルムパトローネ」、「フィルム送出口」、及び「パトローネ本体」は、本願発明の「撮影用パトローネ」、「フィルム出入り口」、及び「ケース本体」にそれぞれ相当するものである。
そして、遮光用のテレンプを設けるということは、撮影用パトローネを光密にするためであり、ケース本体が光密であることは明らかであるので、引用発明2には、「撮影用パトローネが、フイルム出入り口に遮光用のテレンプを設けた光密のケース本体とこのケース本体内に回転自在に収納されたスプールとからなる」ことが記載されている。
引用発明1の撮影用パトローネに、引用発明2の前記構成を採用して、本願発明の相違点(A)における構成とすることに格別の困難性は認められない。

相違点(B)について
写真フィルムが、長い間隔と短い間隔とで交互にパーフォレーションが配列されるとともに、長い間隔で並んだパーフォレーションの対の間に1コマずつ撮影が行われることは、周知技術(例えば、特開平4-328536号公報、特開平7-28142号公報参照。)である。
引用発明1の写真フィルムに、上記周知技術を採用して、本願発明の相違点(B)における構成とすることに格別の困難性は認められない。

相違点(C)について
引用発明2における「写真フィルムパトローネ」、「最終コマの撮影が完了した後」、「フィルム巻戻し操作」、「写真フイルムをパトローネ本体の内部に完全に巻き戻した後」、「写真フィルムパトローネとともにDP取扱店に提出し」、「撮影済み」、「スプールから切り離してから」、及び「返却容器」は、本願発明の「撮影用パトローネ」、「最終コマに撮影が行われた後」、「フィルム巻上げ操作」、「写真フイルムの他端まで撮影用パトローネに巻き込んだ後」、「撮影用パトローネとともに本体から取り出し」、「露光済み」、「スプールから分離してから」、及び「返却用パトローネ」にそれぞれ相当するものであるので、引用発明2には、
「写真フイルムの一端を撮影用パトローネのスプールに係止しておき、パーフォレーションで規定された最終コマに撮影が行われた後のフイルム巻上げ操作により写真フイルムの他端まで前記撮影用パトローネに巻き込んだ後に、撮影用パトローネとともにカメラ本体から取り出し、露光済みの写真フイルムを撮影用パトローネから引き出して前記スプールから分離してからフイルム現像処理を行った後には、前記撮影用パトローネとは異なり、スプールの回転によって写真フイルムを先端から送り出す機能をもった返却用パトローネのスプールに該写真フイルムの端部を係止し、かつ該写真フイルムの全てを返却用パトローネに巻き込んでから該写真フイルムを顧客に返却するようにした」ことが記載されている。
そして、引用発明2の「返却用パトローネのスプールに写真フイルムの端部を係止し」は、本願発明の「返却用パトローネのスプールに写真フイルムのいずれかの端部を係止し」に含まれるものであるので、引用発明1のレンズ付きフィルムユニットに引用発明2の前記構成を採用して、本願発明の相違点(C)における構成とすることに格別の困難性は認められない。

そして、相違点(A)、(B)、及び(C)における本願発明の構成による効果は、引用発明1及び引用発明2ならびに上記周知技術から予測される範囲のものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-21 
結審通知日 2006-11-22 
審決日 2006-12-18 
出願番号 特願平7-55896
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03C)
P 1 8・ 561- Z (G03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 良子  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 柏崎 正男
青木 和夫
発明の名称 レンズ付きフイルムユニット用写真フイルムの取り扱い方法  
代理人 小林 英了  
代理人 小林 和憲  
代理人 飯嶋 茂  

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