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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R |
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管理番号 | 1152750 |
審判番号 | 不服2004-14162 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-08 |
確定日 | 2007-02-22 |
事件の表示 | 平成11年特許願第338903号「開閉扉付き車載機器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年6月5日出願公開、特開2001-151030〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【第1】手続の経緯 本願は、平成11年11月30日の出願であって、原審の拒絶理由通知に対して平成16年3月8日付けで意見書の提出と共に手続補正をしたが拒絶査定を受けたので、本件審判を請求すると共に、当該請求の日から30日以内の平成16年8月3日付けで、(平成14年改正前の)特許法第17条の2第1項第3号に規定する手続補正(前置補正)をしたものである。 【第2】平成16年8月3日付け手続補正の却下について 【補正却下の決定の結論】 平成16年8月3日付けの手続補正を却下する。 【補正却下の決定の理由】 1.平成16年8月3日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という)の趣旨 本件手続補正では、請求項1の発明が次のように補正される。 (1)本件手続補正前の請求項1の発明 「【請求項1】 車両に搭載され開閉扉を有し、その扉の前面に情報を表示可能な表示手段を含む車載機器であって、 前記開閉扉の状態を検出する開閉扉状態検出手段と、 前記車両の走行を検出する走行検出手段と、 該走行検出手段により前記車両の走行が検出されているとき、前記開閉扉状態検出手段により検出された前記開閉扉の状態に基づき、扉を閉状態とし、その前面の表示手段により走行時に情報を表示させる制御を行なう開閉扉関連制御手段と を備える開閉扉付き車載機器。」 (2)本件手続補正後の請求項1の発明 「【請求項1】 車両に搭載され開閉扉を有し、その扉の前面に情報を表示可能な表示手段を含む車載機器であって、 前記開閉扉を傾けることで前記開閉扉を開閉する扉開閉機構と、 前記開閉扉の状態を検出する開閉扉状態検出手段と、 前記車両の走行を検出する走行検出手段と、 該走行検出手段により前記車両の走行が検出されているとき、前記開閉扉状態検出手段により検出された前記開閉扉の状態に基づき、落下物の開閉扉への当接を抑制するよう前記開閉扉を閉状態とし、その前面の表示手段により走行時に情報を表示させる制御を行なう開閉扉関連制御手段と を備える開閉扉付き車載機器。」(以下、「本願補正発明」という。下線部が本件手続補正前の発明に加入された部分である。) (3)上記補正は、下線部の要件を付加することによって、特許請求の範囲を減縮しようとしたものであるが、上記補正は新規事項を追加するものではなく、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例及びその記載事項の概要 (1)原査定の拒絶理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-342630号公報(以下、「第1引用例」という)には、「車載用情報表示装置」に関して、次のイ?ヘの事項が記載されている。 イ 「【実施例】以下、この発明の車載用情報表示装置の実施例について図面に基づき説明する。図1・・・において、構成の説明に際し、図7の従来例と同一部分には同一符号を付して、その重複説明を避け、図7とは異なる部分を主体に述べる。 【0019】この図1を図7と比較しても明らかなように、図1では、図面上では符号1?17aで示す部分は図7と同様であり、図7の構成に新たに表示部開閉状態検出部18を付加したものであり、また、制御部17aは後述するように、・・・表示部開閉状態検出部18から出力される信号に基づき表示部15の閉操作を促す表示を行う表示制御手段を有している。その他の構成は図7と同様である。」(第3頁第3欄第17?33行) ロ 「【0020】また、図2は上記操作部13を備える可倒式表示部15の閉状態の斜視図であり、図3はその開状態の斜視図である。・・・両図において、13aは操作画面を切り替えるためのファンクションスイッチであり、・・・13cは操作部13を備える液晶表示装置による可倒式表示部15の開閉操作を行う開閉スイッチ、13dは可倒式表示部15の前面に設けられた赤外線式タッチパネルである。 【0022】また、図3に示す7aはカセットデッキ7のカセットテープ挿入口であり、表示部開閉状態検出部18は可倒式表示部15の開閉状態を検出するためのマイクロスイッチが使用されている場合を例示している。 【0023】なお、可倒式表示部15の後には、カセットデッキがあり、この可倒式表示部15を開状態として、カセットテープの挿入,取り出しを行う構造となっている。」(第3頁第3欄第34行?同第4欄第1行) ハ 「【0024】図4は可倒式表示部15に表示されるCDプレーヤ8の操作画面である。この図4において、15aはCDプレーヤの状態表示、13eはCDプレーヤ8の操作スイッチである。 【0025】この操作スイッチ13eは画面入力方式であり、可倒式表示部15の前面に設けられた赤外線式タッチパネル13dにより、画面入力操作を可能としている。」(第3頁第4欄第2?9行) ニ 「【0026】次に動作について説明する。TV受信機5・・・は通信I/F12およびバスラインを介して、またナビゲーション装置4はバスラインを介して制御部17aと通信を行ない、動作状態を制御部17aに送信し、制御部17aからの制御により動作する。・・・ナビゲーション装置4、TV受信機5、AM/FM受信機6、カセットデッキ7、CDプレーヤ8、オーディオアンプ9および自動車電話11の動作状態は可倒式表示部15に表示される。」(第3頁第4欄第10?26行) ホ 「【0029】一方、表示部開閉状態検出部18は図3に示すように、マイクロスイッチが用いられ、可倒式表示部15の開閉状態を示す信号が出力される。」(第3頁第4欄第27?29行) ヘ 「【0033】まず、図5において、ステップS41で表示開閉状態制御部18の出力信号により制御部17aの操作情報制御手段が可倒式表示部15の開閉状態を判断し、その判断の結果、可倒式表示部15が閉状態であれば、ステップS41のNO側からステップS42に処理を移し、このステップS42で操作部13の入力操作の有無が判断される。・・・ 【0036】さらに、上記ステップS41において、表示部開閉状態検出部18の出力信号により制御部17aの表示制御手段が可倒式表示部15が開状態であると判断すると、ステップS42?S44の処理は実行されず、ステップS41のYES側からステップS45に処理が移り、このステップS45で表示制御手段により、図6に示すように、可倒式表示部15の閉操作を促す「ディスプレイを閉めて下さい」の画面が表示される。」(第3頁第4欄第42行?第4頁第5欄第14行) (2)同じく原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願日より前の頒布に係る刊行物である特開平3-54041号公報(以下、「第2引用例」という)には、「車両用表示装置」に関して、次の記載がある。 「本発明は、第1図に示すように、車室内のパネル部に、パネル部に収納される格納位置とパネル部から突出する使用位置の両位置を選択的に取り得るよう装着された表示パネルと、表示パネル位置を選択する選択手段の選択指令に基づいて表示パネルを駆動する駆動手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、該走行状態検出手段が車両走行状態を検出したとき前記選択手段の選択に関係なく表示パネルが格納位置をとるよう駆動手段を制御する制御手段とを備えて構成した。・・・ 上記の構成によれば、走行状態検出手段によって車両が走行状態にあることが検出されたときに、表示パネルが格納位置にあればそのままとし、使用位置にあるときは制御手段によって表示パネルを格納位置に駆動するよう駆動手段を制御する。」(第1頁右下欄第19行?第2頁左上欄第16行) 3.発明の対比 (1)第1引用例の記載事項と本願補正発明の構成事項とを対比すると、第1引用例(記載事項ロ?ニ)では、車載用情報表示装置が備える「可倒式表示部15」に関して、図2に示される「閉状態」と図3に示される「開状態」とに言及すると共に、TV受信機5やナビゲーション装置4の動作状態は、可倒式表示部15の前面に表示されるとしている。 したがって、上記の「可倒式表示部15」は、本願補正発明でいう「開閉扉」に相当し、第1引用例には、「車両に搭載され開閉扉を有し、その扉の前面に情報を表示可能な表示手段を含む車載機器」に相当するものの開示があるといえる。そして、同引用例の図2および3に示される状態からみて、上記車載用情報表示装置は、「開閉扉を傾けることで前記開閉扉を開閉する扉開閉機構」に相当するものを備えている。 また、同引用例記載の「表示部開閉状態検出部18」(記載事項ロ、ホ)は、本願補正発明でいう「開閉扉の状態を検出する開閉扉状態検出手段」に相当する。 更に、同引用例でいう「制御部17a・・・が可倒式表示部15が開状態であると判断すると・・・可倒式表示部15の閉操作を促す「ディスプレイを閉めて下さい」の画面が表示される」(記載事項ヘ)という制御は、「前記開閉扉状態検出手段により検出された前記開閉扉の状態に基づき、」「その前面の表示手段」によって「情報を表示させる制御」を行なっているといえる。したがって、同引用例記載の上記「制御部」は、本願補正発明でいう「開閉扉関連制御手段」に相当するものといえる。 (2)上記の対比から、本願補正発明と第1引用例記載の発明との間の一致点及び相違点を、次のとおりに認定できる。 [一致点] 「車両に搭載され開閉扉を有し、その扉の前面に情報を表示可能な表示手段を含む車載機器であって、 前記開閉扉を傾けることで前記開閉扉を開閉する扉開閉機構と、 前記開閉扉の状態を検出する開閉扉状態検出手段と、 前記開閉扉状態検出手段により検出された前記開閉扉の状態に基づき、その前面の表示手段により情報を表示させる制御を行なう開閉扉関連制御手段と を備える開閉扉付き車載機器」である点。 [相違点1] 本願補正発明は「車両の走行を検出する走行検出手段」を備え、「該走行検出手段により前記車両の走行が検出されているとき」に、「開閉扉を閉状態」とする制御を行なうのに対して、第1引用例記載の発明では、走行検出手段を用いて、車両の走行状態と関連づけた開閉制御を行うことについては言及がなく、また、「閉めて下さい」という表示を行う制御にとどまり、「閉状態」とする制御までは行っていない点。 [相違点2] 本願補正発明では「落下物の開閉扉への当接を抑制するよう前記開閉扉を閉状態」とするのに対し、第1引用例記載の発明では、落下物と開閉扉との関連について言及がない点。 4.当審の判断(相違点の検討) (1)相違点1について 第1引用例記載の車載用情報表示装置は、記載事項ニでいうようにナビゲーション装置としても使用されるものであることを考慮すると、車両の走行時においては、開閉扉(可倒式表示部15)を「閉めて下さい」という表示を行う制御にとどまらず、「閉状態」(同引用例の図2参照)にする制御を行って、ナビゲーション画面を見やすくするのが好ましいといえる。また、第2引用例にみられるように、走行状態検出手段を用いて、車両の走行状態と関連させた、表示パネル等の位置変更の制御を行うことは、当該技術分野においては、特段珍しいことではない。 そうすると、第1引用例記載の発明において、上記相違点1に関して、本願補正発明と同様の構成とすることは、当業者が容易になしうる設計事項といえる。 (2)相違点2について 第1引用例に直接の言及はないが、同引用例の図3に示されるような、開閉扉(可倒式表示部15)の「開状態」では、落下物の当接による不都合が生じやすいことは明らかである。一方、上記開閉扉を「閉状態」とする制御を行えば、「落下物の開閉扉への当接を抑制する」ことになる。 そうすると、上記の相違点1に関する検討のとおり、上記開閉扉を「閉状態」とする制御を行うこと自体が格別困難ではないのであるから、第1引用例記載の発明において、本願補正発明と同様に、「落下物の開閉扉への当接を抑制するよう前記開閉扉を閉状態」とすることは、当業者であれば容易に想到しうる程度の事項といえる。 (3)作用効果について 上記の相違点1及び2に係る構成を併せ備える本願補正発明の作用効果について検討しても、上記の各引用例に記載された事項からは当業者が想到しがたいといえるものが認められない。 5.独立特許要件の欠如に伴う手続補正の却下 上記検討から明らかなように、本願補正発明は、上記各引用例記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本願補正発明については特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反することになり、特許法第159条第1項において一部読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【第3】本願の発明について 1.本願の発明 平成16年8月3日付けの本件手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成16年3月8日付け手続補正に係る明細書の、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるが、そのうち、請求項1の発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 車両に搭載され開閉扉を有し、その扉の前面に情報を表 示可能な表示手段を含む車載機器であって、 前記開閉扉の状態を検出する開閉扉状態検出手段と、 前記車両の走行を検出する走行検出手段と、 該走行検出手段により前記車両の走行が検出されているとき、前記開閉扉状態検出手段により検出された前記開閉扉の状態に基づき、扉を閉状態とし、その前面の表示手段により走行時に情報を表示させる制御を行なう開閉扉関連制御手段と を備える開閉扉付き車載機器。」 2.引用例及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記【第2】の2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 上記の本願請求項1に係る発明は、上記【第2】で検討した、本願補正発明から、「前記開閉扉を傾けることで前記開閉扉を開閉する扉開閉機構」を備えるという要件と、「落下物の開閉扉への当接を抑制するよう前記開閉」(扉を閉状態)する制御を行うという要件とを省いたものに相当する。 そうすると、本願請求項1の発明の構成を全て含み、さらに他の構成要件を付加した発明である本願補正発明が、上記【第2】の2.以下に記載したとおり、上記各引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1の発明も本願補正発明と同じく、上記各引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 【第4】むすび 上記のとおり、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-15 |
結審通知日 | 2006-12-19 |
審決日 | 2007-01-05 |
出願番号 | 特願平11-338903 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60R)
P 1 8・ 575- Z (B60R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大山 健 |
特許庁審判長 |
前田 仁 |
特許庁審判官 |
山内 康明 永安 真 |
発明の名称 | 開閉扉付き車載機器 |
代理人 | 吉田 研二 |
代理人 | 石田 純 |