ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
---|---|
管理番号 | 1152783 |
審判番号 | 不服2005-2509 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-14 |
確定日 | 2007-02-20 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第112771号「インクジェット印字装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月 5日出願公開、特開平 7-314691〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成7年5月11日の出願(米国出願に基づく優先権主張 1994年5月20日)であって、平成16年11月8日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成17年2月14日付けで本件審判請求がされたものである。 当審においてこれを審理した結果、平成18年5月29日付けで拒絶の理由を通知(いわゆる「最後の拒絶理由通知」である。)したところ、請求人は同年9月4日付けで意見書を提出するとともに、同日付で明細書について手続補正(以下「本件補正」という。)をした。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年9月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正後の【請求項1】の記載は次のとおりである。 「発熱素子を励起してインク滴を生成させるための駆動用パルス信号であって前記発熱素子に繰返し加える駆動用パルス信号を、選択することによって印刷品質を維持するインクジェット印刷装置において、 前記駆動用パルス信号を生成するためのパルス信号を決定するパルス信号用コードを格納する記憶手段と、 前記パルス信号を受けて前記発熱素子に前記駆動用パルス信号を加えるパルス生成手段と、 前記駆動用パルス信号が発熱素子へ加えられるとき、該発熱素子の近傍の状態を検出する検出手段と、 前記検出した状態に基づいて複数の所定の修正コードの1つを選択して、前記複数の所定の修正コードの前記選択されたものに基づいて前記格納されたパルス信号用コードを選択して前記パルス信号を決定し、該パルス信号を前記パルス生成手段に送る、コード生成及び変換回路と、 を備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。」(下線は当審で付加) 2.新規事項追加 上記下線部の記載(以下「本件補正事項」という。)によれば、検出した状態に基づいてパルス信号を決定するに当たり、「複数の所定の修正コードの1つを選択」及び「格納されたパルス信号用コードを選択」という2段階の選択がこの順になされることになる。また、「修正コード」を記憶手段に格納する旨の記載は請求項1にないけれども、格納せずに選択することは考えられないから、格納されているものと認める。すなわち、本件補正事項によれば、「修正コード」及び「パルス信号用コード」の2種類のコードが記憶手段に格納され、選択されることになる。 これに対し願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)には、「収斂回路70は複数のパルス信号(Vref )の1つをライン72に沿って駆動トランジスタ58へ出力する。また収斂回路70は比較器62からライン64に沿って差信号を受け取り、ライン72に沿って駆動トランジスタ58のゲートへパルス信号(Vref )を送る。」(段落【0020】)、「収斂回路70にはルックアップテーブルとして使用される記憶装置(メモリ)74が含まれている。記憶装置74はライン72に沿って駆動トランジスタ58へ加える可能性のある各パルス信号ごとにディジタルコードを記憶する。各パルス信号は、異なるnビットのディジタル修正コードで代表された別個の記憶場所に記憶される。」(段落【0021】)及び「収斂回路70は記憶装置74から異なるパルス信号の1つを選択し、選択したパルス信号を出力する。記憶装置74から修正コードを選択するたびに、選択したディジタルパルス出力はディジタルアナログ(D/A)変換器76によってアナログパルス信号へ変換される。」(段落【0022】)との各記載があり、これら記載と出願当初の【図3】及び【図4】によれば、差信号(請求項1の「検出した状態」に該当する。)が収斂回路70に入力されることにより、ディジタル修正コードの1つが選択され、選択されたディジタル修正コードによって定まるパルス信号(アナログパルス信号に変換されたもの)が収斂回路70から出力されることになり、格納及び選択されるコードは1種類(ディジタルコード、ディジタル修正コード、修正コードなどと若干異なる表現がされているが、これらは同一のコードと認める。)である。 そうすると、2種類のコードを格納・選択する旨限定する本件補正事項は、当初明細書に記載されていないし、自明の事項と認めることもできない。 したがって、本件補正事項を含む本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものではないから、平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおりであるから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.当審で通知した拒絶理由 本件補正が却下されたから、平成14年5月13日付け及び平成16年3月17日付けで補正された明細書及び図面に基づいて審理する。 当審で通知した拒絶理由は次のとおりである。なお、拒絶理由中「記載次とおり」及び「平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条22項」とあるのは、それぞれ「記載は次のとおり」及び「平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項」の誤記であるから、誤記訂正の上引用する。 「1.特許請求の範囲の記載 本願については、平成14年5月13日付け及び平成16年3月17日付けで明細書の補正がされており、補正後の特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項3】の記載は次のとおりである。 【請求項1】発熱素子を励起してインク滴を生成させるための格納されたパルス信号であって前記発熱素子に繰返し加える格納されたパルス信号を、選択することによって印刷品質を維持するインクジェット印刷装置において、 前記パルス信号を格納する記憶手段と、 前記発熱素子にパルス信号を加えるパルス生成手段と、 前記パルス信号が発熱素子へ加えられるとき、該発熱素子の近傍の状態を検出する検出手段と、 前記検出した状態に基づいて複数の所定の修正コードの1つを選択して、前記複数の所定の所定の修正コードの前記選択されたものに基づいて前記格納されたパルス信号を選択する、コード生成及び変換回路と を備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。 【請求項3】発熱素子を励起してインク滴を生成させるための格納されたパルス信号であって前記発熱素子に繰返し加える格納されたパルス信号を、選択的に修正することによって印刷品質を維持するインクジェット印刷装置において、 前記パルス信号を格納するメモリ装置と、 前記パルス信号が発熱素子へ加えられるとき、該発熱素子における実際の電圧降下を測定する測定手段と、 前記測定手段によって測定された前記実際の電圧降下と所望の電圧降下とを比較して差信号を生成する比較手段と、 前記差信号を受取って該差信号に基づいて複数の所定の修正コードの1つを選択するコード生成及び変換回路とを包含し、該コード生成及び変換回路は、前記複数の所定の修正コードの前記選択された1つに基づいて前記発熱素子へ加えられる前記格納されたパルスを選択しており、更に、該コード生成及び変換回路は、前記実際の電圧降下が前記所望の電圧降下の所定の範囲内に入るまで、複数の異なる格納パルス信号のうちから繰り返し選択している ことを特徴とするインクジェット印刷装置。 2.記載不備 上記【請求項1】及び【請求項3】の記載によれば、発熱素子に加えるパルス信号が格納されており、格納されたパルス信号が選択されることになっている。 しかし、発熱素子に繰返し加えるパルス信号は通常ハード回路によって作成されるものであり、これを格納し選択するとは一体どういうことなのか理解できない。 発明の詳細な説明及び図面から把握できることは、発熱素子に加えるパルス信号を決定するための別のパルス信号(【図3】のVREFであり、これは発熱素子に加えるパルス信号そのものではない。)をさらに決定するコード又はデータが格納されていることだけである(【図3】のルックアップテーブル74の記憶内容であり、5ビットの修正コードに対応してパルスを決定するためのデジタル値が格納されていると認める。)。 したがって、【請求項1】及び【請求項3】を含む特許請求の範囲の記載は著しく不明確であるから、平成6年改正前特許法36条5項に規定する要件を満たしていない。 逆に、特許請求の範囲の記載を基準とするならば、発明の詳細な説明は当業者が容易に実施できる程度に記載されていないから、平成6年改正前特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。 3.新規事項追加 2.でも述べたとおり、上記【請求項1】及び【請求項3】の記載によれば、発熱素子に加えるパルス信号が格納されており、格納されたパルス信号が選択される。 しかし、そのようなことは願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていないし、自明の事項でもないから、平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項に規定する要件を満たさない補正がされている。」 2.拒絶理由妥当性の判断 請求人は、本件補正により拒絶理由が解消した旨主張しているが、補正がない場合にも拒絶理由が誤りである旨の主張はしていない。そして、上記拒絶理由は妥当であり、本件補正が却下された以上、拒絶理由に対する請求人の主張もないことになる。 3.むすび 当審で通知した拒絶理由のとおり、本願の明細書の記載は平成6年改正前特許法36条4項又は5項に規定する要件を満たしておらず、また平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項に規定する要件を満たさない補正がされているから、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-20 |
結審通知日 | 2006-09-25 |
審決日 | 2006-10-06 |
出願番号 | 特願平7-112771 |
審決分類 |
P
1
8・
531-
WZ
(B41J)
P 1 8・ 561- WZ (B41J) P 1 8・ 534- WZ (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大仲 雅人 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
藤井 勲 藤本 義仁 |
発明の名称 | インクジェット印字装置 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |