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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1152815 |
審判番号 | 不服2004-26291 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-12-24 |
確定日 | 2007-02-22 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 68986号「ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月19日出願公開、特開平 8- 17118〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯の概要 本願は、平成7年3月3日(優先権主張 平成6年4月25日)の特許出願であって、平成16年11月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。そして、その後、前置審査において平成17年3月1日付けで最後の拒絶理由(以下、「前置拒絶理由」という。)が通知され、これに対して平成17年5月9日付けで手続補正がなされた。 2 前置拒絶理由 前置審査における最後の拒絶の理由は、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載が、概ね以下の2点で明確でないか又は簡潔でないため、特許法第36条第6項第2,3号に規定する要件を満たしていないというものである。 (1)「180°反転される方向へ所定角度回転されて」 (2)「上記ディスク装置本体及びディスクトレーを垂直に立てて使用する垂直使用時には、上記複数の爪のうちの少なくとも1つの爪を上記凹所内に入り込んだ位置へ予め手動で回転調整した状態で、上記ディスクを上記凹所内の上記少なくとも1つの爪の内側にほぼ垂直に挿入して、該凹所の外周面上に載置することによって、該ディスクを該凹所内にほぼ垂直状に保持するように構成し、 上記ディスク装置本体及びディスクトレーを水平にして使用する水平使用時には、上記複数の爪のうちの少なくとも1つの爪を上記凹所の外周面の外方へ抜き出した位置に予め手動で回転調整して、該少なくとも1つの爪が上記ディスクの上記凹所内への挿入の邪魔にならないように構成した」 ここにおいて、本願は、「1 手続の経緯の概要」で示した出願日からすると、拒絶の理由に関しては、平成6年改正前特許法が適用されるべきであることが明らかであり、同法では第36条第6項が単独で拒絶の理由となることはないから、前置拒絶理由における条文の表記は明らかに誤りであり、正しくは「平成6年改正前特許法第36条第5項第2号」と記載されるべきであったと推察される。 しかしながら、前置拒絶理由では、「記」において、請求項の記載不備の内容について実質的に指摘しており、又、審判請求人も意見書において適用法規について言及することなく「発明の構成を明確、かつ、簡潔に致しました」等と主張しており、与えられた補正の機会を活用して手続補正を行ったのであるから、審判請求人には実質的に審査官の意図が伝わったものと解される。 以上の経緯をふまえ、前置拒絶理由では、請求項の記載について「平成6年改正前特許法第36条第5項第2号」に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由が通知され、これに対して、審判請求人は、応答期間内に意見書及び手続補正書を提出したものとして、以下の検討を進めることとする。 この前置拒絶理由に対して、平成17年5月9日付けの手続補正は、上記(1)及び(2)の2点を削除することにより、特許請求の範囲の請求項1の記載を明確にしたもので、同手続補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第4号に掲げる、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)を目的とするものに該当し、又、同補正により本願の請求項の記載については前置拒絶理由で通知した拒絶の理由が解消することとなった。 3 本願発明について 上記「2 前置拒絶理由」での検討からすると、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成17年5月9日付けで手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「記録及び/又は再生用のディスクをディスクトレーの凹所内に挿入してディスク装置本内にローディングするディスク装置において、 上記ディスクトレーの凹所の外周に上記ディスクの外周の一部が遊嵌されるポケットを形成するための爪を上記凹所の外周の複数箇所にそれぞれ設け、 上記複数の爪のうちの少なくとも1つの爪を上記凹所の外周面から該凹所内に入り込んだ位置と、該凹所内に入り込んだ位置から所定角度回転されて、該凹所の外周面の外方へ抜き出された位置との間で手動で回転調整できるように、その爪を上記ディスクトレーの凹所の外周に回転調整自在に取り付けたことを特徴とするディスク装置。」 4 原査定の拒絶の理由について 原査定の拒絶の理由は、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。 以下、本願発明に対し、原査定の拒絶の理由について検討する。 (1)引用例に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-111444号公報(以下、「引用例」という。)には、ディスク装置について、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。 「【請求項1】記録及び/又は再生用のディスクをディスクトレー上に載せてディスク装置本体内にローディングするディスク装置において、このディスク装置の垂直使用時に、上記ディスクトレーに垂直に載せられた上記ディスクの外周部分を保持するディスク保持部材を設けたことを特徴とするディスク装置。」(【特許請求の範囲】) 「【0011】まず、図5及び図6に示すように、ディスクトレー2の上部で、凹所3の左右両側に形成された一対の切欠き11部分に、各一対、合計4つのディスク保持部材12がそれぞれ対称状に取り付けられている。 【0012】そして、図1?図4に示すように、各ディスク保持部材12の一端にはほぼL型に形成されたディスク保持部12aが形成されており、他端には重り13が取り付けられている。そして、各ディスク保持部材12の長さ方向の中間部が水平なディスクトレー2上に垂直な支点軸14を介して水平面内で矢印d、e方向に回転自在に取り付けられている。そして、支点軸14の周りに嵌装された捩りコイルバネ15等のバネによって各ディスク保持部材12が矢印d方向に回転付勢されている。なお、捩りコイルバネ15の両端15a、15bはディスク保持部材12とディスクトレー2上のバネ係止部16とに当接されている。」 「【0016】まず、ディスク装置本体1及びディスクトレー2を共に水平姿勢状態に設置して、ディスクトレー2をディスク装置本体1内に水平にローディングする水平使用状態では、4つのディスク保持部材12の全部が図2及び図3に1点鎖線で示すディスク解除位置まで捩りコイルバネ15によって矢印d方向に自動的に回転されて、これらのディスク保持部12aが凹所3の左右両横外方に離間される。なお、矢印d方向に回転された各ディスク保持部材12はそれぞれ一方のストッパー17aに当接してディスク解除位置で停止される。 【0017】従って、この水平使用状態では、ディスクトレー2の凹所3内にディスク4を従来通り水平に載せてディスク装置本体1内にローディングすることができ、その際、4つのディスク保持部材12が全く邪魔にならない。 【0018】次に、ディスク装置本体1及びディスクトレー2を共に垂直姿勢状態に設置して、ディスクトレー2をディスク装置本体1内に垂直にローディングする垂直使用状態を説明する。 【0019】この際、ディスク装置本体1及びディスクトレー2の図5で右側を下にし、左側を上にするようにして、これらを垂直に立てて使用する時には、図5で右側に配置されている一対のディスク保持部材12が、重り13によって捩りコイルバネ15に抗して図1及び図3に実線で示すディスク保持位置まで矢印e方向に自動的に回転されて、これらのディスク保持部12aが凹所3内に挿入される。なお、矢印e方向に回転された一対のディスク保持部材12はそれぞれ他方のストッパー17bに当接してディスク保持位置で停止される。 【0020】そこで、図1及び図3に示すように、垂直に立てられたディスクトレー2の凹所3内にディスク4を矢印f方向から垂直に挿入して、一対のディスク保持部材12のディスク保持部12aでディスク4の外周部分4aを保持することができる。」 上記記載及び図面を参照すると、引用例には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されてる。 「記録及び/又は再生用のディスクを垂直に立てられたディスクトレーの凹所内に垂直に挿入してディスク装置本体内にローディングするディスク装置において、 上記ディスクトレーの上部で、凹所の左右両側に形成された一対の切欠き11部分に、各一対、合計4つのディスク保持部材がそれぞれ対称状に取り付けられ、 上記各ディスク保持部材の一端にはほぼL型に形成されたディスク保持部が形成され、他端には重り13が取り付けられ、各ディスク保持部材の長さ方向の中間部が水平なディスクトレー上に垂直な支点軸を介して水平面内で回転自在に取り付けられ、各ディスク保持部材は支点軸の周りに嵌装された捩りコイルバネ等のバネによって回転付勢され、 水平使用状態では、4つのディスク保持部材の全部がディスク解除位置まで捩りコイルバネによって自動的に回転されて、これらのディスク保持部が凹所の左右両横外方に離間され 垂直に立てて使用する時には、上記ディスク保持部材の一対が上記重りによって上記バネに抗して自動的に回転されて、上記ディスク保持部が上記凹所内に挿入して上記ディスクの外周部分を保持するディスク装置。」 (2)対比 次に、本願発明と引用例発明とを対比する。 引用例発明と本願発明の「記録及び/又は再生用のディスク」は共通し、引用例発明の「記録及び/又は再生用のディスクを垂直に立てられたディスクトレーの凹所内に垂直に挿入してディスク装置本体内にローディングするディスク装置」は、ディスクをディスクトレーの凹所内に挿入してローディングする点において、本願発明の「記録及び/又は再生用のディスクをディスクトレーの凹所内に挿入してディスク装置本内にローディングするディスク装置」に相当する。 引用例発明の「ディスク保持部」は、「上記凹所内に挿入して上記ディスクの外周部分を保持する」ものであるから、本願発明の「上記ディスクの外周の一部が遊嵌されるポケットを形成するための爪」に相当する。又、上記「ディスク保持部」が「各ディスク保持部材の一端にはほぼL型に形成された」ものであり、さらには上記ディスク保持部材が「ディスクトレーの上部で、凹所の左右両側に形成された一対の切欠き11部分に、各一対、合計4つのディスク保持部材がそれぞれ対称状に取り付けられ」たものである点は、本願発明の「上記ディスクトレーの凹所の外周に上記ディスクの外周の一部が遊嵌されるポケットを形成するための爪を上記凹所の外周の複数箇所にそれぞれ設け」との要件に相当する。 保持部を有する保持部材について「各ディスク保持部材の長さ方向の中間部が水平なディスクトレー上に垂直な支点軸を介して水平面内で回転自在に取り付けられ」ていることは、本願発明において「その爪を上記ディスクトレーの凹所の外周に回転調整自在に取り付けた」ことに相当する。 引用例発明の「ディスク保持部」は、垂直使用状態で「ディスク保持部が上記凹所内に挿入して上記ディスクの外周部分を保持」し、水平使用状態では、「4つのディスク保持部材の全部がディスク解除位置まで捩りコイルバネによって自動的に回転されて、これらのディスク保持部が凹所の左右両横外方に離間され」ることは、本願発明において「上記複数の爪のうちの少なくとも1つの爪を上記凹所の外周面から該凹所内に入り込んだ位置と、該凹所内に入り込んだ位置から所定角度回転されて、該凹所の外周面の外方へ抜き出された位置との間で回転できる」ことに相当する。 以上のことからすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「記録及び/又は再生用のディスクをディスクトレーの凹所内に挿入してディスク装置本内にローディングするディスク装置において、 上記ディスクトレーの凹所の外周に上記ディスクの外周の一部が遊嵌されるポケットを形成するための爪を上記凹所の外周の複数箇所にそれぞれ設け、 上記複数の爪のうちの少なくとも1つの爪を上記凹所の外周面から該凹所内に入り込んだ位置と、該凹所内に入り込んだ位置から所定角度回転されて、該凹所の外周面の外方へ抜き出された位置との間で回転できるように、その爪を上記ディスクトレーの凹所の外周に回転自在に取り付けたディスク装置。」 <相違点> 本願発明では、爪の回転調整を「手動で」「回転調整」できるとするのに対して、引用例発明では、「ディスク保持部材」を、重りとバネの作用により、ディスク装置の姿勢に応じて自動的に爪が回動するように構成されたものである点。 (3)当審の判断 上記相違点について検討する。 引用例発明の「ディスク保持部」がポケットを構成する機構要素であり、又、前記「ディスク保持部材」と、ディスク装置の姿勢によって前記「ディスク保持部」を凹所内に挿入または凹所の左右に離間されるように自動的にディスク保持部材を回動するための手段である「重り」及び「バネ」とは、互いに機能的に分離しうることも自明な事項である。すなわち、自動的に動作するように構成された引用例発明の「ディスク保持部材」は、自動的に動作する構成の前提として、前記ディスク装置の姿勢によって自動的に回動するための手段である「重り」及び「バネ」とは別に、単に「ディスク保持部」を有する「ディスク保持部材」を内在しているというべきであり、したがって前記ディスク装置の姿勢によって自動的に回動するように構成された「ディスク保持部材」から、「重り」及び「バネ」を省略して、手動調整によるものを想到することは、引用例発明自体から当業者が容易になしうるものである。 また、ディスク装置においては、トレイにおけるディスクの保持に関して、例えば特開平2-14459号公報のディスクトレイのセレクトレバー2,3(1?3図参照。)のように、必要に応じてディスクの保持構造を手動調整する要素を備えることはよく知られていることである。 更に一般的には、例えば凹所内に挿入されたものを保持する手段として、手動で回転調整できる「爪」状の部材を備えることは、例えば実願昭60-95698号(実開昭62-5066号)のマイクロフィルムに記載された爪板c(第5図参照)、実願昭61-151349(実開昭63-54369号)のマイクロフィルムに記載された爪片a(6図参照)のように、簡易な物品に用いられる構造として周知のものにすぎない。 してみれば、引用例発明のディスク保持部材の回転調整を手動でできるものにすることは、これらの周知技術を考慮することによっても、当業者が必要に応じて適宜なしえたものと認められる。 結局のところ、上記相違点は、格別なものではなく、また、上記相違点を検討しても奏される効果は当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。 5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づき、乃至は周知技術も併せて参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-15 |
結審通知日 | 2006-12-19 |
審決日 | 2007-01-10 |
出願番号 | 特願平7-68986 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 達也 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
江畠 博 吉村 伊佐雄 |
発明の名称 | ディスク装置 |
代理人 | 鈴木 伸夫 |
代理人 | 脇 篤夫 |