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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1152836 |
審判番号 | 不服2006-3854 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-02 |
確定日 | 2007-02-22 |
事件の表示 | 特願2002- 32040「流量制御弁および冷凍空調装置および流量制御弁の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月18日出願公開、特開2003-202167〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判請求に係る出願は、平成14年2月8日の出願であって、平成18年1月23日付けで拒絶査定(発送日:同年1月31日)がなされ、これに対し、同年3月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月31日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年3月31日付手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成18年3月31日付手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の発明 平成18年3月31日付手続補正(以下、「本件補正」という。)は,特許法第17条の2第1項第4号に規定する期間内になされたものであって,特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである(以下,「本件補正発明」という。)。 「2つの流路を接続する弁室内に固設され前記流路の一方に接続する開口を有する弁座と、前記弁室内で稼動されて前記弁座の開口を開閉する弁体と、前記弁体内を貫通し前記開口と前記流路の他方とを流通可能とする貫通流路と、前記貫通流路を流れる液冷媒と蒸気冷媒の両方が同時に通るように前記弁体内に設けられ、もしくは前記弁室内で前記弁体または前記弁座の外側に前記開口を迂回して設けられ、前記2つの流路間を流れる流体を流通可能とする2つの多孔質透過材と、前記2つの多孔質透過材に挟まれるように設けられ冷媒の流通を絞るオリフィス部と、前記各多孔質透過材と前記オリフィス部との間にそれぞれ所定の間隔で隔てて設けられた2つの空間部と、を備え、前記多孔質透過材の前記冷媒が流通する平均径は前記オリフィス部の冷媒の流通を絞る孔径より小さいことを特徴とする流量制御弁。」 当該補正は,発明特定事項である「多孔質透過材」,「オリフィス部」及び「空間部」について,以下のように,「多孔質透過材」を「2つの多孔質透過材」に,「前記多孔質透過材の少なくとも下流側に設けられ」を「前記2つの多孔質透過材に挟まれるように設けられ」に,「前記多孔質透過材と前記オリフィス部とを所定の間隔で隔てて設けられた空間部と、」を「前記各多孔質透過材と前記オリフィス部との間にそれぞれ所定の間隔で隔てて設けられた2つの空間部と、」と限定したものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで,本件補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例に記載された事項及び発明 原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-48304号(実開平01-152176号)のマイクロフィルム(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の記載がある。 (1a)「〔産業上の利用分野〕 本考案はヒートポンプ式エアコン等に用いられる電磁弁に関する」(第1頁第13?15行目) (1b)「本考案の電磁弁の例を第1図に示す。図において、1は弁本体であり、1aは第1流体口、1bは第2流体口である。第1流体口1aに通ずる弁室1cの底部には第2流体口1bに通ずる弁座1dが形成されている。2は弁体であり、弁ばね3によって弁座1dに向けて付勢されている。4は吸引子、5は電磁コイルである。 弁体2には弁座1dから第2流体口1bへ通ずる流路に面する弁体2の先端部に凹孔2aが設けてあり、この中にステンレス鋼粉末を円筒状に焼結して得た通気性の多孔体6と、ステンレス鋼の円板状オリフィス7とが嵌着されている。そして弁体2の側壁には、凹孔2aと弁室1cとを連絡する複数の通孔2bが設けられている。従って、弁の開閉に拘わらず第1流第口1aと第2流体口1bとは多孔板6とオリフィス7とを介して連絡されており、流体は順逆いづれの方向にも穏やかに流れることができ、流体の流出時の擦過音発生が抑制される。」(第4頁第18行目?第5頁第16行目) (1c)「第2図は、本考案の電磁弁の他の例を示すものであるが、弁体2の凹孔2aには、オリフィス7を挟んで円筒状の多孔体6aと円板状の多孔体6bとが嵌着されており、前例の電磁弁よりも消音効果が大きい。」(第5頁第17行目?第6頁第1行目) 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-50615号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の記載がある。 (2a)「実施の形態7.図17はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の第2流量制御装置6の構成断面図であり、図2に示したものと同一または同様の構成部品には同一符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図18はこの実施の形態の流量制御装置に用いられるオリフィス16の詳細図である。この実施の形態では、主弁体10および弁座14は通常用いられる樹脂もしくは金属で形成され、電磁コイル15の通断電により主弁体10が弁室内を上下方向に移動する。主弁体10と弁座14で形成される弁室内には、弁座14をバイパスして配管9へ至る冷媒流路が筒状の弁座14の周囲に形成されている。」(段落【0090】) (2b)「冷媒流路には通気孔の径を100マイクロメートルから500マイクロメートルとした焼結金属の多孔体12が弁座14の上端と略面一になるよう一様に設けられ、さらに多孔体12の間に内径0.5ミリメートルで厚さ1ミリメートルのオリフィス16を冷媒の流れ方向に均等に4ヶ所設けてある。オリフィス16は上下の多孔体12に挟まれ、弁室側壁に嵌合されるとともに下側(冷媒流れ下流側の多孔体12が弁室底面に当接することで一定の位置に固定状態となっている。」(段落【0091】) 引用例1に記載された事項を検討してみると, ・上記(1b)及び図面の記載を参酌すれば,弁座が開口を有することは明らかである。 ・上記(1b)には,「弁体2には弁座1dから第2流体口1bへ通ずる流路に面する弁体2の先端部に凹孔2aが設けてあり,」及び「そして弁体2の側壁には,凹孔2aと弁室1cとを連絡する複数の通孔2bが設けられている。」という記載があり,図面の記載と合わせて参酌すれば,「凹孔と通孔」が,本件訂正発明の「貫通流路」に相当することは明らかである。 ・引用例1に記載された「双方向型電磁弁」も本件補正発明の「流量制御弁」もエアコンの同様の箇所に設けられるものであり(上記(1a)及び図面参照),双方向型電磁弁を流れる「流体」が「液冷媒と蒸気冷媒」であることは明らかである。 ・上記(1b)には,空間部を設けることは明記されていないが,特に第2図を参酌すれば,「2つの流体口間を流れる流体を流通可能とする2つの多孔体と、前記2つの多孔体に挟まれるように設けられ冷媒の流通を絞るオリフィス部と、前記各多孔体と前記オリフィス部との間にそれぞれ所定の間隔で隔てて設けられた2つの空間部と、を備えること」は,明らかである。 そして,これらの事項を総合すると引用例1には, 「2つの流体口を接続する弁室内に固設され前記流体口の一方に接続する開口を有する弁座と、前記弁室内で稼動されて前記弁座の開口を開閉する弁体と、前記弁体内を貫通し前記開口と前記流体口の他方とを流通可能とする貫通流路と、前記貫通流路を流れる液冷媒と蒸気冷媒の両方が同時に通るように前記弁体内に設けられ、前記2つの流体口間を流れる流体を流通可能とする2つの多孔体と、前記2つの多孔体に挟まれるように設けられ冷媒の流通を絞るオリフィス部と、前記各多孔体と前記オリフィス部との間にそれぞれ所定の間隔で隔てて設けられた2つの空間部と、を備えた双方向型電磁弁。」(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比 そこで,本件補正発明と引用発明1とを比較すると,引用発明1の「流体口」は,本件補正発明の「流路」に相当し,同様に,「多孔体」は「多孔質透過体」に,「双方向型電磁弁」は「流量制御弁」に,それぞれ相当する。 以上の認定事項からみて,両者は次の一致点,相違点を有するものと認められる。 〔一致点〕 2つの流路を接続する弁室内に固設され前記流路の一方に接続する開口を有する弁座と、前記弁室内で稼動されて前記弁座の開口を開閉する弁体と、前記弁体内を貫通し前記開口と前記流路の他方とを流通可能とする貫通流路と、前記貫通流路を流れる液冷媒と蒸気冷媒の両方が同時に通るように前記弁体内に設けられ、前記2つの流路間を流れる流体を流通可能とする2つの多孔質透過材と、前記2つの多孔質透過材に挟まれるように設けられ冷媒の流通を絞るオリフィス部と、前記各多孔質透過材と前記オリフィス部との間にそれぞれ所定の間隔で隔てて設けられた2つの空間部と、を備えた流量制御弁。 〔相違点] 本件補正発明では,多孔質透過材の冷媒が流通する平均径が,オリフィス部の冷媒の流通を絞る孔径より小さいのにたいして,引用例1発明では,そのような限定がない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 引用例2に記載された上記(2a)及び(2c)を参酌すれば,引用例2は,「多孔質透過材の冷媒が流通する平均径が,オリフィス部の冷媒の流通を絞る孔径より小さい」点が記載されている。そして,引用例2記載の「第2流量制御装置」も,本件補正発明や引用発明1の「流量制御弁」も,冷媒流動音の発生を抑制するために,エアコンの同じ箇所に取り付けられるものであり,引用例1記載の流量制御弁において,前記引用例2に記載された点を採用して,上記相違点に係る構成のようにすることには,当業者が適宜なし得る程度のものである。 作用効果について 本件補正発明の奏する作用効果も,引用例1,2に記載された発明の奏する作用効果から予測できる以上の格別なものとも認められない。 (5)むすび 以上のとおり,本願補正発明は,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり,同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願の請求項1に係る発明 平成18年3月31日付手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年12月15日付手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「2つの流路を接続する弁室内に固設され前記流路の一方に接続する開口を有する弁座と、前記弁室内で稼動されて前記弁座の開口を開閉する弁体と、前記弁体内を貫通し前記開口と前記流路の他方とを流通可能とする貫通流路と、前記貫通流路を流れる液冷媒と蒸気冷媒の両方が同時に通るように前記弁体内に設けられ、もしくは前記弁室内で前記弁体または前記弁座の外側に前記開口を迂回して設けられ、前記2つの流路間を流れる流体を流通可能とする多孔質透過材と、前記多孔質透過材の少なくとも下流側に設けられ冷媒の流通を絞るオリフィス部と、前記多孔質透過材と前記オリフィス部とを所定の間隔で隔てて設けられた空間部と、を備え、前記多孔質透過材の前記冷媒が流通する平均径は前記オリフィス部の冷媒の流通を絞る孔径より小さいことを特徴とする流量制御弁。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2の記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本件補正発明は,本願発明の「多孔質透過材」を「2つの多孔質透過材」と限定し,同様に,「前記多孔質透過材の少なくとも下流側に設けられ」を「前記2つの多孔質透過材に挟まれるように設けられ」に,「前記多孔質透過材と前記オリフィス部とを所定の間隔で隔てて設けられた空間部と、」を「前記各多孔質透過材と前記オリフィス部との間にそれぞれ所定の間隔で隔てて設けられた2つの空間部と、」と限定したものであるから,本願発明は,本件補正発明の前記限定を外した以外は,同一のものである。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「2.(3)(4)」に記載したとおり,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その他の請求項については検討するまでもなく,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-13 |
結審通知日 | 2006-12-19 |
審決日 | 2007-01-10 |
出願番号 | 特願2002-32040(P2002-32040) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F25B)
P 1 8・ 121- Z (F25B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上原 徹 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 東 勝之 |
発明の名称 | 流量制御弁および冷凍空調装置および流量制御弁の製造方法 |
代理人 | 中鶴 一隆 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 高橋 省吾 |