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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800253 審決 特許
無効200680001 審決 特許
無効200680151 審決 特許
無効200580195 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G02B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1153160
審判番号 無効2006-80073  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-24 
確定日 2007-02-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第3667693号発明「再帰反射体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3667693号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.本件特許第3667693号の出願は、2000年9月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年9月11日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成17年4月15日に特許権の設定登録がなされた。
2.これに対して、平成18年4月24日に請求人 日本カーバイド工業株式会社より特許無効審判(無効2006-80073号)が請求された。

第2 本件発明
特許第3667693号の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、特許第3667693号特許公報の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
平らな前面と凹凸部を有するように加工された後面とを備えている再帰反射体において、前記後面の凹凸部が、相互に垂直で一点を共通の頂点とする三つの三角形の連続的な配列及び前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部の少なくとも一つ以上に沿って配列された線状の三角プリズムを含む再帰反射体。
【請求項2】
前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部が、同一面または非同一面に存在する請求項1に記載の再帰反射体。
【請求項3】
前記再帰反射体の屈折率が1.4?1.7である物質からなる請求項1または請求項2に記載の再帰反射体。
【請求項4】
前記共通の頂点から三つの三角形と同一の角度をなし前記再帰反射体の前面に向って延長された軸が、前記再帰反射体の前面に垂直である軸と-15゜?15゜をなす請求項1または請求項2に記載の再帰反射体。
【請求項5】
前記線状の三角プリズムが前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部の少なくとも一つ以上に沿って配列され、一つの縁部に対して少なくとも一つ以上の線状の三角プリズムが配列される請求項1または請求項2に記載の再帰反射体。
【請求項6】
前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部が、互いに異なる長さを有する請求項1または請求項2に記載の再帰反射体。」

第3 審判請求人の主張
無効理由1
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に開示された発明と同一であり、又は甲第1号証に開示された発明に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第1項又は第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
無効理由2
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証又は甲第3号証に開示された発明と同一であり、又は甲第2号証又は甲第3号証に開示された発明に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第1項又は第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
無効理由3
本件特許の請求項2-6に係る発明は、甲第1号証乃至甲第5号証に開示された発明に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

そして、証拠方法として以下の証拠を提出している。
甲第1号証:米国特許第5889615号明細書
(平成11年(1999)3月30日発行)
甲第2号証:特表平10-506726号公報
(平成10年6月30日発行)
甲第3号証:米国特許第5565151号明細書
(平成8年(1996)10月15日発行)
甲第4号証:特開平11-149006号公報
(平成11年6月2日発行)
甲第5号証:J.Brandrup et.al.,Polymer Handbook Second Edition
(A Wiley‐Interscience Publication 1975)
参考資料1:特表2002-508089号公報
(平成14年3月12日発行)
参考資料1は、甲第1号証の優先権を主張している。
参考資料1の発行日(平成14年3月12日)は、本件特許の優先日(平成11年9月11日)の後である。

第4 被請求人の主張 一方、被請求人は、当審で通知した答弁指令に対して、その指定期間内に何らの応答もしなかった。

第5 甲号各証の記載内容
1.甲第1号証
(i)甲第1号証の図15
甲第1号証の図15は、下記のとおりである。
甲第1号証の図15


甲第1号証には、図15について、下記のとおりに説明されている。
「図15は、二重軸再帰反射ファセット対とキューブコーナー再帰反射素子の両方を備える再帰反射製品の一部の平面図である。」(甲第1号証第3欄第56-58行、参考資料1第8頁第2-3行)
従って、甲第1号証の図15には、2つのキューブコーナー再帰反射素子(キューブコーナー素子)の間に挟まれた2つの二重軸再帰反射ファセツト対(三角プリズム)を有する再帰反射製品(再帰反射体)が開示されている。
(ii)甲第1号証図15a及びその斜視図
甲第1号証図15aは下記のとおりである。
甲第1号証図15a


甲第1号証第11欄第53-57行(参考資料1第19頁第19-21行)には、下記のとおり記載されている。
「たとえば、再帰反射製品330の一部分の拡大図を図15aに示す。再帰反射製品330は、再帰反射キューブコーナー素子及び二重軸再帰反射フアセツト対340を備える。」
甲第1号証図15aの斜視図


上記甲第1号証図15aの斜視図において、底面A-A2-B2-Bをもち頂点H1,H2をもつ構造は二重軸再帰反射構造(三角プリズム)を示しており、また、三角形状の底辺A2-C-B2と頂点H’を有する三角錐構造はキューブコーナー素子を示している。
(iii)甲第1号証の図15の最密配列
甲第1号証の図15に示された素子を用いて、再帰反射体を形成する場合、この素子が最密に配列される。甲第1号証の図15の素子を、最密に配列し、コーナー素子を黒く塗った図面は下記のとおりである。
甲第1号証の図15の最密配列


2.甲第2号証
甲第2号証の第11頁1?2行には下記の通りに記載されている。
「可擦性シート構造体100を製造するのに用いる材料としては、好ましくは1.4?1.7の屈折率を有している。」

甲第2号証の図19には、三角キューブコーナー素子の三角形の底面の内角が、62°、62°、56°であることが示されており、図6も参照すれば、この値からこの三角キューブコーナー素子の持つ光学軸(17)が、約3度傾斜するように作られていることがわかる。

甲第2号証の図31には、全ての溝に線形の三角プリズムが形成されている態様が示されている。

甲第2号証の図19には、キューブコーナー素子の三角形の底面の内角が62°、62°、56°である二等辺三角錐形態のキューブコーナー素子が開示されている。

3.甲第3号証
甲第3号証の第3欄17?19行には下記の通りに記載されている。
「可擦性部材100を製造するのに用いる材料としては、好ましくは1.4?1.7の屈折率を有している。」

4.甲第4号証
甲第4号証の図4及び図6は下記のとおりである。
甲第4号証の図4


甲第4号証の図6


上記甲第4号証の図4及び図6等から明らかなとおり、甲第4号証には、三角錐型キューブコーナー素子を構成する反射側面の高さが異なる素子に関する発明が開示されている。

第6 本件各発明と証拠との対比・判断
1.本件発明1に対して(無効理由;特許法第29条第1項3号)
本件発明1を以下のように分説する。
構成要件1:平らな前面と凹凸部を有するように加工された後面とを備えている再帰反射体において、
構成要件2:前記後面の凹凸部が、相互に垂直で一点を共通の頂点とする三つの三角形の連続的な配列及び
構成要件3:前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部の少なくとも一つ以上に沿って配列された線状の三角プリズムを含む
構成要件4:再帰反射体。

甲第1号証は、再帰反射体であって、図7b、図15a等から、構成要件1、4が記載されていることは明らかである。

甲第1号証の図15a、及び図15aの斜視図(無効審判請求人作成)をも参照すると、これらと、本件発明1の「相互に垂直で一点を共通の頂点とする三つの三角形」及び「三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部の少なくとも一つ以上に沿って配列された線状の三角プリズムを含む」構成に、構造上の差異はなく、キューブコーナー素子及び三角プリズムの相対的な大きさが異なるのみである。
また、甲第1号証の図15の最密配列を見ると、黒く塗られたキューブコーナー素子が、連続的に配列されていることが分る。
上記のとおりであるので、甲第1号証には、構成要件2及び3が開示されている。

したがって、甲1号証には、本件発明1の全ての構成要件が開示されており、両発明は一致する。従って、本件発明1は、新規性を有さない。

2.本件発明2に対して(無効理由;特許法第29条第2項)
i)本件発明2は、本件発明1の構成に加え、「前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部が、同一面または非同一面に存在する」点をさらに限定したものである。

ii)甲1号証には、前記本件発明1で対比説明したように、本件発明1の構成要件がすべて開示されている。そして、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する甲第4号証には、【図4】、【図6】から明らかなように、上記の限定された構成が記載されている。 よって、本件発明2は、甲1号証、及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有さない。

3.本件発明3に対して(無効理由;特許法第29条第2項)
i)本件発明3は、本件発明1または本件発明2の構成に加え、「前記再帰反射体の屈折率が1.4?1.7である物質からなる」点をさらに限定したものである。

ii)甲1号証には、前記本件発明1で対比説明したように、本件発明1の構成要件がすべて開示されている。そして、再帰反射性傾斜プリズム構造体に関する甲第2号証、及びプリズム上に窓を有する再帰反射プリズム構造に関する甲第3号証には、それぞれを構成する材料として、好ましくは1.4?1.7の屈折率を有している構成が記載されている。
よって、本件発明3は、甲1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有さない。

4.本件発明4に対して(無効理由;特許法第29条第2項)
i)本件発明4は、本件発明1または本件発明2の構成に加え、「前記共通の頂点から三つの三角形と同一の角度をなし前記再帰反射体の前面に向って延長された軸が、前記再帰反射体の前面に垂直である軸と-15゜?15゜をなす」点をさらに限定したものである。

ii)甲1号証には、前記本件発明1で対比説明したように、本件発明1の構成要件がすべて開示されている。そして、再帰反射性傾斜プリズム構造体に関する甲第2号証には、図19に、三角キューブコーナー素子の三角形の底面の内角が、62°、62°、56°であることが示されており、図6も参照すれば、この値からこの三角キューブコーナー素子の持つ光学軸(17)が、約3度傾斜するように作られていることがわかる。
また、本件発明4の数値範囲に格別臨界的意義があるとも認められない。
よって、本件発明4は、甲1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有さない。

5.本件発明5に対して(無効理由;特許法第29条第2項)
i)本件発明5は、本件発明1または本件発明2の構成に加え、「前記線状の三角プリズムが前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部の少なくとも一つ以上に沿って配列され、一つの縁部に対して少なくとも一つ以上の線状の三角プリズムが配列される」点をさらに限定したものである。

ii)甲1号証には、前記本件発明1で対比説明したように、本件発明1の構成要件がすべて開示されている。そして、再帰反射性傾斜プリズム構造体に関する甲第2号証には、図31に、全ての溝に線形の三角プリズムが形成されている態様が示されている。
よって、本件発明5は、甲1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有さない。

6.本件発明6に対して(無効理由;特許法第29条第2項)
i)本件発明6は、本件発明1または本件発明2の構成に加え、「前記三つの三角形の縁部のうち、互いに共有されない縁部が、互いに異なる長さを有する」点をさらに限定したものである。

ii)甲1号証には、前記本件発明1で対比説明したように、本件発明1の構成要件がすべて開示されている。そして、再帰反射性傾斜プリズム構造体に関する甲第2号証には、図19に、三角キューブコーナー素子の三角形の底面の内角が、62°、62°、56°であることが示されている。
よって、本件発明6は、甲1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有さない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2について検討するまでもなく、本件発明1?6は、いずれも特許法第29条第1項3号、または同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-12 
結審通知日 2006-09-21 
審決日 2006-10-24 
出願番号 特願2001-523900(P2001-523900)
審決分類 P 1 113・ 113- Z (G02B)
P 1 113・ 121- Z (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森口 良子  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 辻 徹二
江塚 政弘
登録日 2005-04-15 
登録番号 特許第3667693号(P3667693)
発明の名称 再帰反射体  
代理人 小田島 平吉  
代理人 鈴木 俊一郎  

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