• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680133 審決 特許
無効200680186 審決 特許
無効200680197 審決 特許
無効200680029 審決 特許
無効200680012 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B25B
管理番号 1154131
審判番号 無効2006-80041  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-08 
確定日 2007-02-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3248296号発明「インパクト工具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3248296号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
1.1 本件特許第3248296号の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件特許発明1ないし4」という。)についての出願は平成5年4月2日になされ、同13年9月7日付手続補正を経て、同13年11月9日にその発明について特許の設定登録がなされた。
1.2 これに対し、平成18年3月8日に請求人リョービ株式会社より、本件特許発明1ないし4の特許を無効にするとの審決を求める無効審判の請求がなされた。
1.3 被請求人日立工機株式会社からは、平成18年6月8日に答弁書と共に願書に添付した明細書を訂正する訂正請求書が提出された。
1.4 請求人より平成18年7月18日に弁駁書が提出され、被請求人より同年9月14日に口頭審理陳述要領書が提出された。
1.5 当審では平成18年9月28日に口頭審理を行い、請求人より同年10月27日に、また、被請求人より同年10月30日に、それぞれ上申書が提出された。

2.請求人が主張する無効理由及び訂正請求についての主張の概要
請求人が主張する無効理由及び訂正請求についての主張を整理すると、以下のとおりと認められる。
2.1 本件特許発明1は、本件出願前に頒布された甲第1又は12号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、その特許は無効とされるべきである。(以下、「主張1」という。)
2.2 平成13年9月7日付の手続補正は明細書の要旨を変更するものであるため、本件特許出願は当該手続補正に係る手続補正書の提出の日にしたものとみなされるから、本件特許発明1及び2は甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、その特許は無効とされるべきである。(以下、「主張2」という。)
2.3 本件特許発明1は、甲第1号証、あるいは甲第2号証及び甲第1号証に記載されたに基づいて、又は甲第1号証に記載された発明に周知技術を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許発明2は、甲第3号証及び甲第2号証、あるいは甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、又は甲第1号証に記載された発明に周知技術を適用しさらに甲第3号証に記載された発明を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許発明3は、さらに甲第1号証、甲第4号証又は甲第10号証に記載の発明を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許発明4は、さらに甲第2号証に記載の発明を適用して、又は本件特許出願時における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は無効とされるべきである。(以下、「主張3」という。)
2.4 平成18年6月8日付訂正請求の訂正事項4,6及び7は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書きに規定する訂正の目的に適合せず、訂正後の本件特許発明1及び2については明細書の記載が不備であるため、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合しないでなされたものであるので、本件訂正は認めるべきではない。(以下、「主張4」という。)

請求人は、上記主張の証拠方法として、下記の証拠を提出している。
甲第1号証: 米国特許第2581033号明細書
甲第2号証: 特開平3-49881号公報
甲第3号証: 特開平4-269178号公報
甲第4号証: 特開昭59-14475号公報
甲第5号証: 特開平6-285771号公報
甲第6号証: 実開昭59-105307号のマイクロフィルム
甲第7号証: 実開昭61-105506号のマイクロフィルム
甲第8号証: 特開平2-139182号公報
甲第9号証: 特開昭59-88264号公報
甲第10号証: 特開昭58-181580号公報
甲第11号証: 実公平3-44456号公報
甲第12号証: 特開平2-95582号公報

ただし、上記主張のうち、主張1,2及び4は、平成18年9月28日に口頭審理の場において取り下げられた。(口頭審理調書、請求人の陳述の要領2を参照。)

3.被請求人の主張の概要
一方、請求人の主張を整理すると、以下のとおりと認められる。
3.1 本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明とも、甲第12号証に記載された発明とも、同一ではない。
3.2 平成13年9月7日付手続補正は明細書の要旨を変更するものではないから、本件特許出願が上記手続補正に係る手続補正書の提出日にしたものとみなされることはない。
3.3 本件特許発明1ないし4は、いずれも甲第1ないし4号証及び同第6ないし12号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3.4 平成18年6月8日付訂正請求は、訂正の目的の要件を満たし、また、訂正後の明細書に記載の不備はない。

被請求人は、上記主張の証拠方法として、下記の証拠を提出している。
乙第1号証: 実公昭44-12320号公報
乙第2号証: 日立工機株式会社「測定結果報告書」(2005年2月1日)
乙第3号証: 社団法人実践教育訓練研究協会編「機械用語大辞典」
初版(1997年11月28日発行)日刊工業新聞社刊
第941ページの写し。
乙第4号証: 特開平6-182674号公報

4.平成18年6月8日付訂正請求の可否について
【結論】
平成18年6月8日付訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)を認める。
【理由】
4.1 訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許出願の願書に添付した明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。具体的には、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を、下記のとおり訂正することを求めるものである。
4.1.1 <訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1及び2中の
「ハウジングに収容されるモータと、」を、
「ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、」に訂正する。
4.1.2 <訂正事項2>
特許請求の範囲の請求項1及び2中の
「該モータの回転動力を伝達するための歯車機構部と、」を、
「該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、」に訂正する。
4.1.3 <訂正事項3>
特許請求の範囲の請求項1及び2中の
「該歯車機構部からの回転動力が伝達され且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、」を、
「該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、」に訂正する。
4.1.4 <訂正事項4>
特許請求の範囲の請求項1及び2中の
「該出力軸上に前後動可能に配されるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルと」を、
「該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部と」に訂正する。
4.1.5 <訂正事項5>
特許請求の範囲の請求項1中の
「前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、」を、
「前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、」に訂正する。
4.1.6 <訂正事項6>
特許請求の範囲の請求項1中の
「該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置する」を、
「該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列した」に訂正する。
4.1.7 <訂正事項7>
特許請求の範囲の請求項2中の
「前記モータの反出力軸側に、前記モータに電力を供給する電源部を設け、」を、
「前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列し、」に訂正する。
4.1.8 <訂正事項8>
発明の詳細な説明の段落【0005】の
「【課題を解決するための手段】上記目的は、ハウジングに収容されるモータと、モータの回転動力を伝達するための歯車機構部と、歯車機構部からの回転動力が伝達され且つモータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、出力軸上に前後動可能に配されるハンマと、ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを備えたインパクト工具において、出力軸上に歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、歯車とアンビルとの間にモータの回転軸線が位置することにより達成される。」を、
「【課題を解決するための手段】上記目的は、ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つモータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列したことにより達成される。」に訂正する。
4.1.9 <訂正事項9>
発明の詳細な説明の段落【0006】中の
「また、上記目的は、ハウジングに収容されるモータと、モータの回転動力を伝達するための歯車機構部と、歯車機構部からの回転動力が伝達され且つモータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、出力軸上に前後動可能に配されるハンマと、ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを備えたインパクト工具において、モータの反出力軸側に、モータに電力を供給する電源部を設け、電源部と出力軸との略中間位置に、モータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部を設けることにより達成される。」を、
「また、上記目的は、ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列し、前記電源部と前記出力軸との略中間位置に、前記モータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部を設けることにより達成される。」に訂正する。
(なお、下線は訂正箇所を明りょうにする目的で当審が付したものである)。

4.2 訂正の可否の判断
4.2.1 <訂正事項1>について
訂正事項1は、本件特許発明1ないし4を特定する事項である「モータ」について、「電池よりなる電源部により駆動される」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
4.2.2 <訂正事項2>について
訂正事項2は、本件特許発明1ないし4を特定する事項である「歯車機構部」について、「減速歯車を含む」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
4.2.3 <訂正事項3>について
訂正事項3は、本件特許発明1ないし4を特定する事項である「出力軸」について、「先端工具と同軸で」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
4.2.4 <訂正事項4>について
訂正事項4は、「ハンマ」と「アンビル」とでインパクト工具において打撃力を発生させる「インパクト機構」を構成するという、当業者間では周知の事項を明記するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
4.2.5 <訂正事項5>について
訂正事項5は、本件特許発明1を特定する事項である「モータ」に関する「電池からなる電源部により駆動される」との限定に対し、さらに、「前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
4.2.6 <訂正事項6>について
訂正事項6は、本件特許発明1を特定する事項である「モータ」、「電源部」及び「インパクト機構部」について、「前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列した」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
4.2.7 <訂正事項7>について
訂正事項7は、本件特許発明2ないし4を特定する事項である「モータ」に関する「電池からなる電源部により駆動される」との限定に対し、さらに、「前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、」との限定を加えると共に、「出力軸」について、「前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成する」との限定を加え、さらに、「モータ」、「電源部」及び「インパクト機構部」について、「前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列した」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
4.2.8 <訂正事項8>について
訂正事項8は、訂正に伴って請求項1の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
4.2.9 <訂正事項9>について
訂正事項9は、訂正に伴って請求項2の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

4.3 まとめ
上記訂正事項1ないし9は、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、本件訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書きに適合し、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するから、当該訂正を認める。

5.本件発明
上記のとおり、平成18年6月8日付の訂正請求書による訂正は認められるから、訂正後の本件特許第3248296号の請求項1ないし4に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、同訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおり、次のものと認める。
「【請求項1】 ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列したことを特徴としたインパクト工具。
【請求項2】 ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列し、前記電源部と前記出力軸との略中間位置に、前記モータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部を設けることを特徴としたインパクト工具。
【請求項3】 前記操作部を前記電源部と前記モータとの間に設け、且つ前記操作部の支点を前記電源部側に設けることを特徴とした請求項2記載のインパクト工具。
【請求項4】 前記ハウジングの外周に、前記スイッチに接続され且つ前記モータの回転方向を可変可能な切換部を設けることを特徴とした請求項2記載のインパクト工具。」
(以下、「本件訂正発明1ないし4」という。)

6.特許法第29条第2項に規定する要件についての判断
前記2.に記載したとおり、請求人の主張のうち、主張1,2及び4は取り下げられたため、ここでは主張2(特許法第29条第2項に規定する要件に関する主張)について検討する。

6.1 甲各号証に記載された発明
6.1.1 甲第1号証には、以下の記載が認められる。
a.(第1欄第4?13行)
「The main object and purpose of our invention is to provide an improved angular driving connection between the motor and the impact units of the tool, whereby the impact unit, which engages and operates upon the work, may have its operative axis angularly disposed, for example, at right angles, to the motor axis of the tool, for reaching nuts and bolts not accessible to the type of tool having its motor and impact units arranged in alignment lengthwise of the tool.」
b.(第2欄第9?15行)
「As shown in the drawings, 1 indicates the support or outer casing of the tool. The support 1 mounts a motor unit which may be of the pressure fluid actuated rotary type having a rotor 2 provided with vanes or blades 3 working against the inner cylindrical surface of a cylinder bushing 4, as shown herein.」
c.(第2欄第37?40行)
「The inlet valve 11 is opened or unseated by an operating lever 13 pivoted at 14 on the rear end of the tool support 1 and works against a stem 15 of the valve 11.」
d.(第2欄第44?第3欄第4行)
「Furthermore, the tool support 1 is made small enough to be grasped by the hand of the operator and to actuate the handle lever 13 with comfort and ease. It will be noted that the lever 13 extends lengthwise along the tool case 1 for this purpose.
Secured to the front end of the motor case 1 which is made open for the purpose is the case 16 of the impact head or attachment. The latter is secured to the motor case 1 by a number of screws 17 as clearly shown in Fig.8. The case 16 mounts the impact mechanism for the tool with its operative axis angularly disposed to or at right angles to the driving axis of the tool motor, the latter axis being represented by the trunnions 9 of the rotor 2.」
e.(第3欄第23?30行)
「Journalled in the attachment case 16 for rotation about its axis at right angles to the motor is the impact clutch unit comprising a driving member 19, an anvil member 20, and an interposed hammer member 21, all relatively revoluble and maintained in axial alignment by a shaft 22 directly connected with and rotated by the driving member 19 as shown in Fig.1.」
f.(第3欄第36?37行)
「The spindle 23 journals the anvil member 20 in the attachment casing 16 below the motor axis.」
g.(第3欄第45?48行)
「The spindle 23 terminates exteriorly of the attachment case 16 in a non-circular section 28 to mount a bolt, nut or work engaging socket or member 29,」
h.(第4欄第61?68行)
「To control the direction of rotation of the tool motor 2, we provide a sleeve 50 rotatable about the cylinder bushing 4 as shown in Fig.1. This sleeve 50 fits in with the porting arrangement of the tool motor and is turned by a knob or projection 51 fixed to the sleeve and accessible from the exterior of the tool through a slot 52 in the motor case 1 as shown in Fig.8.」
i.(第4欄第74行?第5欄第3行)
「In accordance with our invention, to rotate the impact unit from the tool motor, we install a bevel gear 53 in the attachment head 16. This bevel gear 53 is rigidly fixed to and integral with the driving member 19.」
j.(Fig.1)
モータ2の回転動力が傘歯車18と傘歯車53とからなる歯車機構部を通して伝達されること、ソケット29とスピンドル23とが同軸上にあること、及び、傘歯車53とアンビル20との間にモータ2の回転軸線が位置すること、が示されている。
上記の摘記事項を本件発明の記載に沿って整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認められる。
「ケーシング1に収容されるモータ2と、該モータ2の回転動力を伝達するための歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、ボルト、ナットまたはワークに係合するソケット29と同軸で且つ前記モータ2の回転軸に対して直交する位置に配されるスピンドル23と、該スピンドル23にハンマ21とアンビル20とを有するインパクトユニットとを備えたインパクトレンチにおいて、前記スピンドル23上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される傘歯車53を有し、該傘歯車53と前記アンビル20との間に前記モータ2の回転軸線が位置するように構成すると共に、前記モータ2への流体供給を制御するインレットバルブ11を開閉動作させるためのレバー13の支点をケーシング1の後方に設け、前記ケーシング1の外周に前記モータ2の回転方向を可変可能な突起51を設けたインパクトレンチ。」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)

6.1.2 甲第2号証には、以下の記載が認められる。
a.(第2ページ左上欄第11?20行)
「以下本発明を実施例に基づいて詳述すると、図示例のインパクト工具は、第4図に示すように、ビットホルダー55にドライバービット14を装着するインパクトドライバーであって、本体1のハンドル部の下端に電池パック11が装着されており、ハンドル部の前面側にはスイッチハンドル12と回転方向切換レバー13とが設けられている。
本体1内には第1図に示すように、モータ取付台15を介してモータ2が配設されており、」
b.(第2ページ右上欄第13,14行)
「上記駆動軸3の外周には環状のハンマー4が軸方向及び回転方向に移動自在に配設されている。」
c.(第2ページ左下欄第6?9行)
「アンビル5は軸受け17によって回転自在に支持されたもので、その先端には前記ビットホルダー55を備え、後端面にはハンマー4の歯とかみ合う歯50が形成されている。」
d.(第2ページ右下欄第7,8行)
「ハンマー4の回転はアンビルを通じてドライバービット14に伝達される。」
e.(第2ページ右下欄第17?20行)
「ハンマー4はアンビル5を打撃するものであり、この打撃における回転方向の衝撃がドライバービット14に加えられる。」
f.(第2図及び第4図)
本体下端部に、モータ2に電力を供給する電池パック11からなる電源部を設け、モータ2及びモータのスイッチ12をハンマー4及びアンビル5と電源部との間に配設することが示されている。
上記の摘記事項中の「ハンマー」と「アンビル」とがインパクト機構部を構成することは自明であるから、摘記事項を整理すると、甲第2号証には次の事項が記載されていると認められる。
「電池パックからなる電源部により駆動されるモータと、出力軸上で前後動する部材からなるハンマーと、該ハンマーにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備え、本体端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配設したインパクト工具。」

6.1.3 甲第3号証には、以下の記載が認められる。
a.(第1欄第13?17行)
「本発明は、ボルト、ナット及びネジ等の締め付け或いは緩め作業を主として電動にておこなう電動レンチに関し、詳しくは電動駆動のための出力を、機構負荷を大幅に減少させて、小出力になそうとする技術に係るものである。」
b.(第2欄第38?50行)
「以下本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。本体ケース1の把持部2に充電池パック3、略同芯にモータ4と減速機5を配設し、充電地パック3とモータ4の間にスイッチ21を設けている。上記減速機5の駆動軸6にて後述するワンウェイクラッチ機構部を介して出力軸12を片方向に駆動回転させてボルトやネジの締め込み及び緩め操作をおこなうことができるようにしてある。以下ワンウェイクラッチ機構部の構成を詳述する。減速機5の駆動軸6に固定されたピニオン7とそれと噛み合うフェイスギヤ8がその軸芯が略直交され、フェイスギヤ8と同軸上に回転体9、10が回転自在に配されるとともにカム体11を有する出力軸12が回転自在に配されている。」
c.(第4欄第45?50行)
「そして、電動にて正逆転の切替えができるので、特に狭いスペースなどで作業をおこなう時、ネジの締め、緩めを一端、ネジから外して手動で先端の正逆切替え摘み25を操作して切替える必要がなく、手元のスイッチ21ですむので、非常に使い勝手がよい。」
d.(図1及び図2)
モータ4の反出力軸側の本体ケース1端部に充電池パック3を設け、出力軸12と充電池パック3との間に、モータ4の回転軸線に沿ってモータ4及びモータのスイッチ21を配列すること、及び、スイッチ21とその操作部が充電池パック3と出力軸12との略中間位置の本体ケース1の外周に設けられること、が示されている。
以上を整理すると、甲第3号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「モータの反出力軸側の本体ケース1端部に充電池パック3を設け、出力軸と充電池パックとの間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列すること、及び、モータの回転方向を切換可能なスイッチとその操作部を本体ケースの外周に設けた電動レンチ。」(以下、「甲第3号証記載の事項」という。)

6.1.4 甲第4号証には、以下の記載が認められる。
a.(第2ページ左上欄第11?18行)
「図中(1)は細長い円筒状に形成されたハウジングで、その内部には後端から順に、充電端子(21)、蓄電池(22)、スイッチ機構(4)、モータ(2)、減速装置であり且つ後述するロック手段を備えている遊星装置(3)が配設されている。そしてハウジング(1)の前端から突出する出力軸(5)には、ドライバービットを装着するためのチャック(6)が設けられている。」
上記記載事項を整理すると、甲第4号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「モータの反出力軸側のハウジング端部に蓄電池からなる電源部を設け、出力軸と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチ機構を配列すること。」

6.1.5 甲第6号証には、以下の記載が認められる。
a.(実用新案登録請求の範囲)
「モーター、該モーターからの動力を伝達する歯車機構、該歯車機構へ伝えられた動力を先端工具に伝達するための、該モーター軸に直交して設けられたスピンドル、該スピンドルに固着されたドリルチャックとから構成されるアングルドリルにおいて、前記スピンドルの一端部の保持を、前記ドリルチャック外枠の保持により軸支するよう構成してなるアングルドリル。」
b.(明細書第2ページ第19行?第3ページ第2行)
「アマチュア2から発生した動力は、ファーストギヤ4,セカンドピニオン5,ファイナルギヤ6を介してスピンドル7,ドリルチャック8へと伝達される。」
c.(第2図)
ファーストギヤ4とセカンドピニオン5からなる歯車機構からのモータの回転動力が伝達されるファイナルギヤ6とドリルチャック8との間にアマチュア2の回転軸線が位置することが示され、ファーストギヤ4とセカンドピニオン5とは減速歯車であることが看取される。
以上を整理すると、甲第6号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「減速歯車を含む歯車機構からモーター軸に直交するスピンドルに回転動力が伝達され、減速歯車を含む歯車機構からの回転動力が伝達されるファイナルギヤとドリルチャックとの間にアマチュアの回転軸線が位置するアングルドリル。」

6.1.6 甲第7号証には、以下の記載が認められる。
a.(明細書第1ページ第17?19行)
「この考案は狭小場所での穿孔作業に適用される横形状のアングルドリルにおけるスピンドル支持装置に関する。」
b.(明細書第4ページ第2行?第5ページ第1行)
「続いて、本考案の一実施例を図面にしたがって説明すると、図中、1は横長状に形成されたドリル本体Dの中央部付近に外装されたモータハウジング、2はモータハウジング1内に横置されたモータ、3はモータハウジング1の前方に連接されたギヤハウジング、4はモータ2のモータ軸2aの前端に形成されたピニオン、5はギヤハウジング3内の上部に可転横支されたベベルギヤであって、ヘリカルギヤ6がピニオン4との噛合可能に嵌着されている。
7はギヤハウジング3内の前端付近に可転垂支されてモータ軸2aの前方に対し直交状に対置されたスピンドルであって、その中央部付近にはベベルギヤ5と噛合って水平回転される従動ベベルギヤ8が嵌着されている。
9はドリルを挿着するためにスピンドル7の下端に取着されたドリルチャックであって、その上端のチャックケース9aに外嵌された滑り軸受10を介してギヤハウジング3の下端付近に可転支持されている。」
c.(第1図)
ピニオン4とヘリカルギヤ6からなる歯車機構からのモータ2の回転動力が伝達される従動ベベルギヤ8とドリルチャック9との間にモータ2の回転軸線が位置することが示され、ピニオン4とヘリカルギヤ6とは減速歯車であることが看取される。
以上を整理すると、甲第7号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「減速歯車を介してモータ軸に直交するスピンドルに回転動力が伝達され、減速歯車を介して回転動力が伝達される従動ベベルギヤとドリルチャックとの間にモータの回転軸線が位置するアングルドリル。」

6.1.7 甲第8号証には、以下の記載が認められる。
a.(第1ページ右下欄第5?8行)
「電源としての蓄電池パック5が装着されるグリップ部7を備えたケーシング6内に、駆動機構として、モータMとスピンドル1,ハンマー2,そしてアンビル3が配設されている。」
b.(第1ページ右下欄第20行?第2ページ左上欄第8行)
「ハンマー2はスピンドル1を囲むリング状のもので、スピンドル1に対して軸方向にスライド自在とされているとともに、ばね25によって軸方向前方へと付勢されている。またこのハンマー2の内周面には複数個の軸方向の溝20が設けられており、先端面にはケーシング6に軸受け64を介して支持されたアンビル3と凹凸係合して回転力をアンビル3に伝達するとともに回転衝撃をアンビル3に付与する打撃部21が突設されている。」
c.(第2ページ左上欄第13?15行)
「図中30はドライバービットのようなツールが装着されるホルダー、8はスイッチハンドルである。」
d.(第12図)
ケーシング6端部に、モータMに電力を供給する蓄電池パックからなる電源部を設け、前記モータ及び前記モータのスイッチを前記打撃部と前記電源部との間に配設することが示されている。
以上を整理すると、甲第8号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「蓄電池パックからなる電源部により駆動されるモータと、スピンドル上で前後動する部材からなるハンマーと、該ハンマーにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有する打撃部とを備え、ケーシング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記モータ及び前記モータのスイッチを前記打撃部と前記電源部との間に配設した回転衝撃工具。」

6.1.8 甲第9号証には、以下の記載が認められる。
a.(第1ページ左下欄第5?13行)
「スチールボールを介してハンマの回転運動を軸方向の後退運動に変換するカムをスピンドル及びハンマのそれぞれに形成し、一定の締付トルクに達するとハンマが後退しアンビルとハンマの爪部の噛み合いが外れ、ハンマ後退時にたくわえられるスプリングの蓄積エネルギによりハンマの回転エネルギを付勢してアンビルを打撃し、ボルトの締付もしくはゆるめを行うインパクトレンチにおいて、」
上記摘記事項中、「ハンマ」と「アンビル」とがインパクト機構部を構成することは自明であるから、甲第9号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「スピンドル上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部を備えるインパクトレンチ。」

6.1.9 甲第10号証には、以下の記載が認められる。
a.(第1ページ右下欄第17行?第2ページ左上欄第7行)
「本発明に係る電動工具は、基本的に、モータ(1)で駆動されるチャック(2)が先端に突出する細長状のハウジング(3)と、このハウジング(3)の後端に前端を連結する細長体であってその口軸が夫々上記ハウジング(3)の口軸と一直線上に並ぶ第1の位置及びハウジング(3)の口軸と交差する第2の位置とでハウジング(3)に連結されるグリップ(4)とよりなることを特徴とするものである。ハウジング(3)及びグリップ(4)は略同形の細長体に成型され、ハウジング(3)内にモータ(1)及び電源スイッチ(5)が収容され、グリップ(4)内に電池(6)が収められる。」
b.(第2図及び第3図)
モータ(1)の反出力軸側のグリップ(4)端部に、モータ(1)に電力を供給する電池(6)からなる電源部を設け、モータ(1)の回転軸線に沿ってモータ(1)及びモータの電源スイッチ(5)をチャック(2)と電源部との間に配設することが示されている。
摘記事項を整理すると、甲第10号証には次の事項が記載されていると認められる。
「グリップ端部に、モータに電力を供給する電池からなる電源部を設け、前記モータの回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチをチャックと前記電源部との間に配設した電動工具。」

6.1.10 甲第11号証には、以下の記載が認められる。
a.(第2欄第11?22行)
「本考案による実施例を図に示す。第1図は本考案によるコードレスインパクトレンチの側面図である。図において、1はモータの回転を減速するギヤ及び公知のインパクト機構部(図示せず)を内蔵したハンマケースであり、2はインパクト機構部に回転を供給するモータ3を内蔵しているハウジングである。ハンドル4はハンマケース1,ハウジング2から構成される本体胴体部の重心位置Aから垂下し、全体を丁字状に形成している。モータ3に電力を供給する電池5を収納、固定する電源部6はハンドル4の先端部に配設されている。」
b.(図面)
モータ及びモータのスイッチをインパクト機構部と電源部との間に配設することが示されている。
以上を整理すると、甲第11号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「電池からなる電源部により駆動されるモータと、インパクト機構部とを備え、前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列したコードレスインパクトレンチ。」

6.2 対比・判断
6.2.1 本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、後者の「ケーシング1」、「ボルト、ナットまたはワークに係合するソケット29」、「スピンドル23」、「インパクトユニット」、「インパクトレンチ」及び「傘歯車53」が、前者の「ハウジング」、「先端工具」、「出力軸」、「インパクト機構」、「インパクト工具」及び「歯車」にそれぞれ相当することは明白であるから、両者は以下の諸点において一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「ハウジングに収容されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸にハンマとアンビルとを有するインパクト機構とを備えたインパクト工具において、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成したインパクト工具。」である点。
<相違点1>
前者では、モータの反出力軸側のハウジング端部にモータの駆動電源となる電池を設け、インパクト機構部と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列したのに対し、後者はこのような構成を有しない点。
<相違点2>
前者では、減速歯車を含む歯車機構からモータの回転軸に直交する出力軸に回転動力が伝達され、減速歯車を含む歯車機構からの回転動力が伝達される歯車とアンビルとの間にモータの回転軸線が位置するのに対し、後者の歯車機構は減速歯車を含まない点。
<相違点3>
インパクト機構は、前者では出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するのに対し、後者ではこのような構成を有しない点。

なお、被請求人は平成18年9月14日付の口頭審理陳述要領書において、上記<相違点2>をさらに「減速歯車を含む歯車機構からモータの回転軸に直交する出力軸に回転動力が伝達される点」と「減速歯車を含む歯車機構からの回転動力が伝達される歯車とアンビルとの間にモータの回転軸線が位置する点」とに分割すべき旨主張しているが、いずれの点も、歯車機構に減速歯車が含まれることによる相違であることにおいて共通するから、上記のとおり認定する。

上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
インパクト工具を電動のモータにより駆動することは、甲第2,8及び11号証に例示されるように従来周知の技術であるから、甲第1号証記載の発明においてモータを電動のものとすることは、周知技術による置換に過ぎず、モータの反出力軸側のハウジング端部にモータの駆動電源となる電池を設け、出力軸と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列することは、甲第3号証のほか、甲第4及び10号証に例示されるように電動工具において従来周知の技術であるから、甲第1号証記載の発明において、モータの反出力軸側のハウジング端部にモータの駆動電源となる電池を設け、出力軸と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列することは、当業者が容易に想到し得るものである。
甲第1号証記載の発明では、出力軸上にインパクト機構が設けられているから、出力軸と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列することは、インパクト機構と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列することにほかならない。
被請求人は、相違点1に係る構成によってインパクト機構に起因する振動を抑制すると共に、モータの回転に伴う反動力とインパクト機構の反動力とが互いに異なる方向に作用するため使いやすいという格別の効果を生じると主張している。しかしながら、インパクト機構に起因する振動を抑制する効果は、インパクト機構、モータ、スイッチ及び電池をモータ軸に沿って配列することよりも、モータ及びモータのスイッチを間に置いてインパクト機構とは反対側の端部に大質量の電池を配置することにより生じるものと認められ、このような配置は甲第2,8及び11号証に例示されるように、インパクト工具の分野では従来周知のものであるから、この効果は本件訂正発明1ないし4に特有のものではない。また、モータの回転に伴う反動力とインパクト機構の反動力とが互いに異なる方向に作用することによる効果は、甲第1号証記載の発明においても生じるものであって、格別のものではない。
<相違点2>について
減速歯車を含む歯車機構からモータの回転軸に直交する出力軸に回転動力が伝達され、減速歯車を含む歯車機構からの回転動力が伝達される歯車と出力軸端との間にモータの回転軸線が位置する電動工具は、甲第6及び7号証に例示されるように従来周知のものである。
甲第6及び7号証記載の周知工具はアングルドリルであるが、甲第1号証記載の発明と同じくモータの回転軸に直交する出力軸を有する工具に関するものであるから、上記周知技術を甲第1号証記載の発明に適用することに困難性はなく、また、歯車機構からの回転動力が伝達される歯車とアンビルとの間にモータの回転軸線を位置させることは、甲第1号証に記載されているから、減速歯車を含む歯車機構からモータの回転軸に直交する出力軸に回転動力が伝達し、減速歯車を含む歯車機構からの回転動力が伝達される歯車とアンビルとの間にモータの回転軸線を位置させることは、当業者が容易に想到し得るものである。
<相違点3>について
出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構は、甲第2,8,9号証に例示されるように、インパクト工具の分野において従来周知の技術である。
被請求人は、甲第1号証記載の発明のインパクト機構を上記周知技術にて置き換えることには、インパクト機構の衝撃による傘歯車の破損を防止するという前者の目的を損なうことになるため、阻害要因があると主張するが、インパクト工具において先端工具に対して回転方向の衝撃を与えるものである限りにおいて、上記周知技術は甲第1号証記載の発明のインパクト機構と共通の目的を果たすものであるため、単に先端工具に対して回転方向の衝撃を与える機構として上記周知技術を採用することまで阻害する技術的な理由があるということはできないから、甲第1号証記載の発明のインパクト機構を上記従来周知のものにて置換することに、当業者にとって格別の困難性はない。

本件訂正発明1の作用効果には、甲第1号証記載の発明及び従来周知の技術とに基いて普通に予測される範囲を超える格別のものを見出すことはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲第1号証記載の発明及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.2.2 本件訂正発明2について
本件訂正発明2と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は前記<一致点>において一致する一方、前記<相違点1ないし3>に加えて次の点で相違すると認められる。
<相違点4>
前者では、電源部と出力軸との略中間位置にモータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部を設けたのに対し、後者はこのような構成を有しない点。

上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
甲第3号証記載の事項の「本体ケース」及び「充電池パック」が、本件訂正発明1及び2の「ハウジング」及び「モータの駆動電源となる電池」にそれぞれ相当することは明白であるから、甲第3号証には、「モータの反出力軸側のハウジング端部にモータの駆動電源となる電池を設け、出力軸と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列する点。」が記載されている、ということができる。
甲第3号証記載の事項は電動レンチに係るものであり、甲第1号証記載の発明と同じく、ボルトやナット等を締め付け、あるいは緩める工具に関するから、甲第3号証記載の事項を甲第1号証記載の発明に適用し、モータの反出力軸側のハウジング端部にモータの駆動電源となる電池を設け、出力軸と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列することは、当業者が容易に想到し得るものである。
甲第1号証記載の発明では、出力軸上にインパクト機構が設けられているから、出力軸と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列することは、インパクト機構と電源部との間に、モータの回転軸線に沿ってモータ及びモータのスイッチを配列することにほかならない。
相違点1に係る構成による効果が格別のものでないことは、上記6.2.1において述べたとおりである。
<相違点2>について
<相違点2>については、先に6.2.1において検討したとおりである。
<相違点3>について
<相違点3>については、先に6.2.1において検討したとおりである。
<相違点4>について
電源部と出力軸との略中間位置にモータへの電力供給を制御するスイッチとその操作部を設けることは、甲第3号証に記載されている。<相違点1>についての判断で示したとおり、甲第3号証記載の事項を甲第1号証記載の発明に適用することは、当業者であれば適宜行い得るものいうべきである。
また、インパクト機構部又は出力軸と電源部との間にモータとそのスイッチを配列することは当業者が容易に想到し得るものであるから、その配列の一態様として電源部と出力軸との略中間位置にモータへの電力供給を制御するスイッチとその操作部を設けることも、当業者が容易に想到し得るということができる。

本件訂正発明2の作用効果には、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の事項及び従来周知の技術とに基いて普通に予測される範囲を超える格別のものを見出すことはできない。
したがって、本件訂正発明2は、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.2.3 本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は上記<一致点>において一致する一方、上記<相違点1ないし4>に加えて次の点で相違すると認められる。
<相違点5>
前者では、スイッチを開閉動作させるための操作部の支点を電源部側に設けたのに対し、後者はこのような構成を有しない点。

<相違点1ないし4>については、既に6.2.2において検討したので、ここでは<相違点5>について検討する。
甲第1号証には、モータへの流体供給を制御するインレットバルブを開閉動作させるためのレバーの支点をケーシングの後方に設けることが記載されている。ここで、「モータへの流体供給を制御するインレットバルブ」と、電池電源により駆動されるモータにおける「モータへの電力供給を制御するスイッチ」とは、モータに供給するエネルギーを制御するものである限りにおいて共通し、前者の「レバー」が後者の「スイッチの操作部」に相当することは明白であるから、甲第1号証には「モータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部の支点をモータの後方に設けること」が示唆されているということができる。
そうすると、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の事項を適用したインパクト工具において、スイッチを開閉動作させるための操作部の支点をハウジングの後方、すなわち電源部側に設けることは、当業者が容易に想到し得るというべきである。

本件訂正発明3の作用効果には、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の事項及び従来周知の技術とに基いて普通に予測される範囲を超える格別のものを見出すことはできない。
したがって、本件訂正発明3は、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.2.4 本件訂正発明4について
本件訂正発明4と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は上記<一致点>において一致する一方、上記<相違点1ないし4>に加えて次の点で相違すると認められる。
<相違点6>
前者では、ハウジングの外周に、スイッチに接続され且つモータの回転方向を切換可能な切換部を有するのに対し、後者はこのような構成を有しない点。

<相違点1ないし4>については、既に6.2.2において検討したので、ここでは<相違点6>について検討する。
ハウジングの外周に、モータの回転方向を切換可能なスイッチを設けることは、甲第3号証に記載されている。甲第1号証記載の発明においても、その用途からみて、正逆回転が求められることは自明であるから、甲第3号証記載の事項を甲第1号証記載の発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものというべきである。

本件訂正発明4の作用効果には、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の事項及び従来周知の技術とに基いて普通に予測される範囲を超える格別のものを見出すことはできない。
したがって、本件訂正発明4は、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、平成18年6月8日付訂正請求書により訂正された本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2ないし4に係る発明は、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とするべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インパクト工具
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列したことを特徴としたインパクト工具。
【請求項2】
ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列し、前記電源部と前記出力軸との略中間位置に、前記モータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部を設けることを特徴としたインパクト工具。
【請求項3】
前記操作部を前記電源部と前記モータとの間に設け、且つ前記操作部の支点を前記電源部側に設けることを特徴とした請求項2記載のインパクト工具。
【請求項4】
前記ハウジングの外周に、前記スイッチに接続され且つ前記モータの回転方向を可変可能な切換部を設けることを特徴とした請求項2記載のインパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ねじ部品の締付けまたは取外し作業を行なうインパクトレンチなどのインパクト工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のインパクトレンチは、実公平3-44456号公報に開示されているように、駆動源のモータ部と該モータ部の回転を減速するギヤ部及びインパクト機構部とからなる本体胴体部を設け、ハンドル部が本体胴体部の重心位置に位置しているT形形状のインパクトレンチがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
実公平3-44456号公報に開示されているT形形状のインパクトレンチでは、本体胴体部の中に駆動源のモータと、該モータの回転を減速する歯車と、先端工具を回転打撃するインパクト機構部とを軸線上に配置しているため、本体胴体部が長くなり作業範囲が限定され狭い場所でのねじの締付け、取外しが不可能であり、本体胴体部の短いインパクトレンチが要求されている。
【0004】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点をなくし、操作性及び作業性に優れた小形のインパクト工具を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列したことにより達成される。
【0006】
また、上記目的は、ハウジングに収容され、電池からなる電源部により駆動されるモータと、該モータの回転動力を伝達するための減速歯車を含む歯車機構部と、該歯車機構部からの回転動力が伝達され、先端工具と同軸で且つ前記モータの回転軸に対して直交する位置に配される出力軸と、該出力軸上で前後動する部材からなるハンマと、該ハンマにより発生する打撃力及び回転力が伝達されるアンビルとを有するインパクト機構部とを備えたインパクト工具において、前記モータの反出力軸側のハウジング端部に、前記モータに電力を供給する前記電源部を設け、前記出力軸上に前記歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、該歯車と前記アンビルとの間に前記モータの回転軸線が位置するように構成すると共に、前記回転軸線に沿って前記モータ及び前記モータのスイッチを前記インパクト機構部と前記電源部との間に配列し、前記電源部と前記出力軸との略中間位置に、前記モータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部を設けることにより達成される。
【作用】
上記のように構成されたインパクト工具の、ねじの締付け、取外しを行なう回転伝達方法は、レバーを引きスイッチを開閉することにより、モータの回転が変速歯車と傘歯車とインパクト機構部とアンビルを介し先端工具に伝達される。また回転方向切換え方法は、スイッチに装着されている回転方向切換えレバーの位置を逆回転方向の位置に移動することにより電源回路が切替わり回転方向を換えられる。
【0007】
【実施例】
本実施例におけるインパクト工具として例えば図1?図3に示すインパクトレンチを用いて説明する。図1は本実施例におけるインパクトレンチを示す断面図、図2は図1の底面図、図3は図2のB-B線断面図である。
【0008】
図1?図3において、ハウジング1内には、モータ6と、このモータ6の回転動力を伝達するための減速歯車7及び傘歯車8から成る歯車機構部と、この歯車機構部の傘歯車8と噛合する歯車12を介してモータ6の回転動力が伝達され且つモータ6の回転軸に対して直交する位置に配されている出力軸13と、この出力軸13上に前後動可能に配され且つモータ6の回転動力を打撃力に変換するハンマ9と、このハンマ9により発生する打撃力及び上記出力軸からの回転力が伝達され且つ先端工具10を保持するための工具保持部を有するアンビル11とが収容されている。なお、インパクトレンチのインパクト機構部は、ハンマ9及びアンビル11などから構成されている。また、上記モータ6の反出力軸13側に位置するハウジング1の一端側には、モータ6の回転軸方向に挿入装着可能で且つモータ6に電力を供給するための電池などの電源部2が配されている。また、電源部2と出力軸13との略中間位置には、モータ6への電力供給を制御するスイッチ4を開閉動作させるための操作部5が配されていると共に、更に上記操作部5は、電源部2とモータ6との間に配され且つ操作部5の支点Aが電源部2側に設けられている。また、上記スイッチ4には、モータ6の回転方向を可変可能な切換部3が設けられており、この切換部3はハウジング1の外周に沿って使用者が操作することができるように構成されている。なお、上述した略中間位置は、使用者にとってインパクトレンチ本体を把持し易い位置、即ちインパクトレンチ本体を操作し易い位置であり、この略中間位置に軽い力で確実に操作することのできる操作部5を配すことは、作業性及び操作性の向上を図る上で非常に効果的なことである。また、出力軸13に回転動力を伝達するための歯車12とアンビル11との間にモータ6の回転軸線が位置するように配置することで、インパクトレンチ本体における出力軸13方向の高さを低く抑えることができることから、インパクトレンチ本体の小形化が図れ、狭い場所での操作性及び作業性の向上が図れる。
【0009】
次に上述のように構成されたインパクトレンチの使用方法について説明する。まず、ネジの締付け作業を行う場合には、支点Aを基に操作部5を作動させてスイッチ4の開閉動作を行いモータ6に電力を供給する。モータ6に電力が供給されると回転動力が生じ、この回転動力が歯車機構部を構成する減速歯車7及び傘歯車8に伝達される。そして、傘歯車8によりモータ6の回転動力は、モータ6の回転軸に対して直交する位置に配されている出力軸13に歯車12を介して伝達されると共に、ネジ締め中に所定のトルク以上かかるとインパクト機構部9により回転力を打撃力へと変換する。これによりアンビル11に装着されている先端工具10に上述した回転力及び打撃力を与えてネジを締付けることができる。
【0010】
また、ネジの緩め作業を行う場合には、スイッチ4に接続されているモータ6の回転方向を可変可能な切換部3を操作して正転モードから逆転モードを選択し、上述した締付け作業時と同様の操作を行うことで、締付けられているネジの締結力に打ち勝つまで打撃作用を働かせ締結力が減少したら回転作用によりネジを取外すことができる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、出力軸上に歯車機構部からの回転動力が伝達される歯車を有し、歯車とアンビルとの間にモータの回転軸線が位置することで、インパクト工具を小形化することができると共に、操作性及び作業性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明によれば、モータの反出力軸側に、モータに電力を供給する電源部を設け、電源部と出力軸との略中間位置に、モータへの電力供給を制御するスイッチを開閉動作させるための操作部を設けることで、インパクト工具の操作性及び作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインパクトレンチの一実施例を示す断面図である。
【図2】図1の底面図である。
【図3】図2のB-B線断面図である。
【符号の説明】
1はハウジング、2は電源部(電池)、3は切換部、4はスイッチ、5は操作部、6はモータ、7は減速歯車、8は傘歯車、9はハンマ、10は先端工具、11はアンビル、12は歯車、13は出力軸である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-12-14 
結審通知日 2006-12-18 
審決日 2007-01-09 
出願番号 特願平5-76918
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B25B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 豊原 邦雄
中島 昭浩
登録日 2001-11-09 
登録番号 特許第3248296号(P3248296)
発明の名称 インパクト工具  
代理人 石川 泰男  
代理人 井沢 博  
代理人 井坂 光明  
代理人 井沢 博  
代理人 井坂 光明  
代理人 海田 浩明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ