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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C12P
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  C12P
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C12P
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C12P
管理番号 1154167
審判番号 無効2004-80217  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-11-05 
確定日 2007-03-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第2576200号発明「生理活性タンパク質の製造法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2576200号の請求項1乃至5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.本件の経緯の概要
本件特許第2576200号についての手続きの経緯の概要は以下のとおりである。

・昭和63年7月8日: 特許出願(国内優先権主張 昭和63年3月9日)
特願昭63-170142号
・平成8年11月7日: 特許権の設定登録 特許第2576200号
・平成9年7月24日: 特許異議申立 平成9年異議第73453号
・平成14年6月17日: 訂正請求
・平成14年7月5日: 異議決定「訂正を認める。特許第2576200号1ないし5に係る特許を維持する。」との結論の決定
・平成16年11月5日: 特許の無効審判の請求 無効第2004-80217号
・平成17年2月7日: 被請求人から答弁書提出
・平成17年6月5日: 請求人、被請求人それぞれに対し審尋
・平成17年6月22日: 請求人から回答書及び弁駁書提出
・平成17年6月22日: 被請求人から審尋に対する回答書提出(被請求人第1回回答書)
・平成17年6月24日: 被請求人から口頭審理陳述要領書提出
・平成17年6月27日: 請求人、被請求人それぞれに対しFAXによる審尋
・平成17年7月1日: 請求人から口頭審理陳述要領書提出
・平成17年7月4日: 被請求人から審尋に対する回答書提出(被請求人第2回回答書)
・平成17年7月5日: 請求人から上申書提出(請求人第1回上申書)
・平成17年7月5日: 口頭審理
・平成17年7月12日: 請求人から上申書提出(請求人第2回上申書)
・平成17年7月12日: 被請求人から上申書提出(被請求人第1回上申書)
・平成17年7月15日: 請求人から上申書提出(請求人第3回上申書)
・平成17年7月21日: 被請求人から上申書提出(被請求人第2回上申書)

第2.本件特許発明
1.本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許決定公報(甲第1-1号証)の第12頁に記載されたとおりの以下の通りのものである。なお、請求項1ないし5に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明5」ともいい、そのうちの請求項1は検討の際の便宜のために、構成毎に段落に分けて記載した。

【請求項1】
(A)生理活性タンパク質をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素(以下dhfrとする。)遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株(CHO dhfr-)細胞に予め形質転換して得られた形質転換細胞を培地中に懸濁させ、
(B)浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し、
(C)当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を浮遊攪拌培養し、培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ、そして目的生理活性タンパク質を取得することを特徴とする
(D)生理活性タンパク質の製造法。
【請求項2】
生理活性タンパク質がヒト分化誘導因子BUF-3(以下BUF-3とする)、ヒトインターロイキン2(以下IL-2とする)、及びヒトB細胞分化因子(以下BSF-2とする)のいずれかである請求項(1)記載の製造法。
【請求項3】
プラスミドがpSD(x)/BUF-3△SV40初期プロモーター-BUF-3をコードする遺伝子-SV40スプライシングシグナル-SV40初期プロモーター-ジヒドロ葉酸還元酵素(以下dhfrとする)遺伝子-SV40スプライシングシグナルである請求項(1)記載の製造法。
【請求項4】
プラスミドがpSD(x)/BSF-2△SV40初期プロモーター-dhfr遺伝子-SV40スプライシングシグナル-SV40初期プロモーター-BSF-2をコードする遺伝子-SV40スプライシングシグナルである請求項(1)記載の製造法。
【請求項5】
プラスミドがpSD(x)/IL-2△SV40初期プロモーター-dhfr遺伝子-SV40スプライシングシグナル-SV40初期プロモーター-IL-2をコードする遺伝子-SV40スプライシングシグナルである請求項(1)記載の製造法。

2.本件発明1における「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立」の用語の意味について:
ここで、本件発明1の構成要件Bは「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立」する工程に係るものであるが、本件明細書中には「樹立」の用語についての明確な定義はなく、「浮遊攪拌培養に適した」という用語の意味についても具体的な説明はないので、まず「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立」する工程とはどのような工程であり、かつ「樹立」した状態の「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」とはどのような性質を有する細胞であるのかについて検討する。
上記構成要件Bでは、「浮遊攪拌培養を継代して行うこと」により「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し、」と記載され、「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立」のための手法が「浮遊攪拌培養を継代して行う」ことであると規定されている。
ところで、審判請求人が甲第12号証として提出した書籍である「組織培養」は、1976年に出版されて以来1980年までに4刷も増刷されている(答弁書第29頁によれば、1984年までには第8版まで版を重ねている)ほど、「組織培養」の分野で広く読まれた教科書的な書籍であるといえるから、当該書籍中の記述は、特段の事情がない限り本件優先日前の動物細胞の組織培養技術についての技術常識であると解することができる。
そして、当該甲第12号証では、「樹立細胞株(established cell strain)」について、
(イ)「これらの初期継代培地を辛抱強く続けると、試験管内環境に適した変異細胞が出現し、やがて全細胞集団の置き換えがおこる。これが樹立細胞株である。(同第40頁31-33行)」と記載され、:記載(イ)
また、「a.浮遊培養法に適した細胞の選択」の項において、
(ロ)「動物細胞の大きさと、すでにin vitroの培養に成功した細胞でも、末梢血液細胞を除けばすべての細胞が相互に接触支持しあって集団を作る傾向があることから、これらの細胞を液体培養液中に単細胞の形で浮遊させながら増殖させるためには、なんらかの方法で培養液を撹拌し、その沈下と凝集付着とを防止しなければならない。もし細胞がこの新条件に適応できなければその浮遊培養は不可能である。しかし多くの場合、継代培養の確立された株細胞では、このような環境の変化に耐えて比較的速かに新しい条件に適応するか、あるいは適応しうる細胞だけが選択的に生き残り、安定した培養に発展して増殖を維持できるようになる。・・・・もし細胞が浮遊培養に適応しにくく、細胞の死亡率が増加するか、細胞の凝集がひどく大きな細胞塊(clump)を作る傾向にある時には、健全な細胞あるいは細胞塊を作りにくい細胞だけを選択して培養を更新すべきである。・・・・・この方法をくり返せば最終的には浮遊培養に適応した細胞だけが残り、その目的を達成することができる。この状態に達した細胞は、長い単層培養の後でもその性質を変えず、浮遊培養にただちに移行できるのが普通である。(同第69頁30行?第70頁14行)」と記載されている。(下線は合議体による。以下同様。):記載(ロ)
記載(ロ)で、末梢血液細胞以外の動物細胞に対し、「相互に接触支持しあって集団を作る傾向がある」と表現していることは、通常の動物細胞が「元来付着性である」ことを述べたものであり、「構成要件A」における「予め形質転換して得られたCHO dhfr-細胞」もそれにあたる。
そして、「なんらかの方法で培養液を撹拌し、その沈下と凝集付着とを防止し」ながら、「液体培養液中に単細胞の形で浮遊させ」る培養とは、「構成要件B」にいう「浮遊撹拌培養」に他ならないから、当該細胞を浮遊培養して、「このような環境の変化に耐えて新しい条件に適応して生き残った細胞を選択する方法を繰り返すこと」とは、まさに「構成要件B」における「浮遊攪拌培養を継代して行うこと」に相当する。
また、記載(ロ)では、最終的に残った「浮遊培養に適応した細胞」について、「樹立」という用語は用いていないが、「その目的を達成」した「状態に達した細胞」であると表現されている。前後の記載からみてその「状態に達した細胞」は「浮遊培養に適応した細胞」のみからなり、「安定した培養に発展して増殖を維持できる」という性質が、「長い単層培養の後でも失われない」という構成的な安定な変異に基づくものと解される。このことは、浮遊培養という環境に適した変異細胞に「全細胞集団の置き換え」が起こったことに他ならない。その点は、まさに記載(イ)で定義された「樹立細胞株」の状態に相当するから、本件発明1において、このような状態に達した細胞が得られたことをもって、「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞の樹立」と表現していると解することが自然である。
なお、浮遊培養に供される前に既に付着細胞として「樹立」された菌株に対して、再度「樹立」と呼ぶのは一般的表現ではない(当該甲第12号証でも、また後述の乙第7号証でも用いられていない。)が、以下本件発明1の記載に倣い、「浮遊撹拌培養に適した細胞株を樹立」もしくは単に「浮遊細胞株の樹立」などという。
ところで、被請求人から甲第12号証と同様の細胞培養の教科書であるとして提出された乙第7号証(なお、乙第7号証自身は、本件出願日後の1990年2月28日発行ではあるが、原著は1986年発行である。)には、
(ニ)「浮遊培養法は大量培養化にたいへん適している。いくつかの細胞、とくに血球系由来の細胞は浮遊細胞でよく増殖する。その他にも順化や選択により浮遊培養が可能になる例がある。しかし、一方ヒト二倍体細胞株(W1-38,MRC-5)は、浮遊させた状態では全く培養できない。(第72頁下から3行?第73頁1行)」:記載(ニ)
そして、「3・4・2 浮遊培養法への順化」の項では、
(ホ)「浮遊培養法で細胞が増殖できるようになるかは細胞株(cell lines)によって大きく異なる。接着性の細胞から浮遊性の細胞に変えるためには、大きく分けて二つの段階がある。」として、「a.選択」と「b.順化」の二つの段階に分け、「a.選択」の項において「全集団から接着性の弱い変異細胞を選択した・・・。いくつかの培養から、新たに細胞を播種して培養を始めるのに十分な細胞を集める。この過程は時間をかけて何度も繰り返し行う必要がある。」と記載され、「b.順化」の項では、「おそらく選択の過程と同様の働きをする」こと、及び「選択」工程とは「浮遊させた状態で機械的に行われる」点に違いがあることが記載されている。(第73頁5行?第75頁6行):記載(ホ)さらに、
(ヘ)「順化がうまく行われたかどうかは、培地交換後細胞数が増加したことでわかる。続いて一定期間中、細胞の収率が保たれれば、細胞が一定の増殖を行っていることがわかる。(第74頁最下行)」:記載(ヘ)
とも記載されている。
両者をあわせて考えてみても、構成要件Bの「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立」する工程とは、通常の付着細胞の「浮遊細胞株樹立」工程と変わらないものであるから、上記「構成要件B」は、形質転換後のCHO dhfr-細胞に対して周知の浮遊撹拌培養に適した細胞株を樹立する方法を適用することが規定されているものである。
また、その際、得られた「浮遊攪拌培養に適した樹立形質転換細胞株」の性質としては、浮遊撹拌培養を続けても「導入された形質」が安定に維持されて、十分な期間一定の発現タンパク質の産生量が得られ、かつ「増殖能」も維持された状態にあることが必要であると解される。
一方、本件特許決定明細書(以下、単に「本件明細書」ともいう。甲第1-1号証)の例えば実施例1(表1)では、形質転換細胞を、全容400mlスピンナーフラスコで4×104個/mlの細胞初期密度に懸濁し、8日間の攪拌培養後、最大細胞密度8.8×104個/ml、世代時間192時間以上の「親株」を得、さらに8日間培養を繰り返し行って、最大細胞密度2.6×105個/ml、世代時間87時間の「Cells(4weeks)」を、次いで細胞初期密度1×105個/mlで培養を繰り返して最大細胞密度7.8×105個/ml、世代時間48時間の「Cells(10weeks)」の「CHO-SUSP株」を得ている。そして、当該CHO-SUSP株は、安定にBUF-3を培地中に8000U/ml蓄積し、同様の培養を20サイクル繰り返しても世代時間、最大細胞密度に変化はなく、安定な生育及びBUF-3生産量を示したことが第3図に示されている。

ここで、最終的な「CHO-SUSP株」は、明らかに樹立された浮遊細胞株であるとしても、上記「親株」及び途中の「Cells(4weeks)」も浮遊攪拌培養に適応して順調に増殖しているのだから、上記記載(ヘ)の基準からみて浮遊培養法への馴化がうまく行われている状態であり「樹立」と呼べなくもない。
しかしながら、本件明細書の「産業上の利用分野」の項において、「本発明は、・・・生理活性タンパク質を効率よく大量に生産させる方法に関する。(甲第1-1号証第13頁15-18行)」と記載され、また、「本発明が解決しようとする課題」の項において、「従って本発明の課題は・・・大量培養して目的とする生理活性物質を大量に生産する方法の提供である。(同第13頁30-31行)」等と記載されているように、本件発明が「大量培養による大量生産」を目的としてなされた発明である以上、「浮遊培養による大量生産」にも耐えられる程確実に、浮遊攪拌培養に適した変異細胞に「全細胞集団の置き換え」が起こったといえる状態が要求されるはずである。そうであるから、その状態の細胞株、すなわち最終的に得られた「CHO-SUSP株」のみが、構成要件Bにおける樹立された「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」に相当すると解される。
これらのことからみて、本件発明1における「樹立」された「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」とは、被請求人が上記答弁書(第54頁16?19行)で述べる通り、「浮遊攪拌培養条件下で、長期間にわたり安定して十分な量の発現タンパク質を産生する形質転換細胞」を指すものであるとすることに無理はない。
少なくとも、「浮遊攪拌培養において増殖せず、安定してタンパク質を生産しない細胞」や、「増殖やタンパク質生産が一過性であるもの」は、ここにいう「浮遊攪拌培養に適した樹立形質転換細胞株」にはあたらないことは明らかである。
ただし、実施例に記載された各馴化工程自体は、まさに上記甲第12号証に記載されるような、本件優先日前の10年以上も前から確立している浮遊細胞株の樹立工程と変わるところはない。
そうであるから、構成要件Bの「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立」する工程とは、本件優先日前周知の浮遊細胞株の樹立方法を、構成要件Aで得られた形質転換細胞に適用する工程であり、最終的に「浮遊攪拌培養条件下で、長期間にわたり安定して十分な量の発現タンパク質を産生する形質転換細胞」を得ることまでを規定するものであるということができる。

第3.請求人が主張する無効理由の概要
1.審判請求人は、「特許第2576200号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として、下記の甲第1-1号証ないし甲第26号証を提出して、本件発明1ないし5に係る特許は、以下の(無効理由1)ないし(無効理由5)の無効理由があるから、特許無効とされるべきであると主張している。
その後、当審からの審尋に対して提出された回答書などに添付して、下記添付資料1ないし16を提出している。

(無効理由1)本件発明1は、本件特許の優先権主張日より前に発行されていた刊行物である甲第2、3又は4号証に記載された発明と同一であり、新規性を欠如しており(特許法第29条第1項第3号)、特許法第123条第1項第2号に該当する。

(無効理由2)
本件発明1乃至5は、本件特許の優先権主張日より前に発行されていた刊行物に記載された発明を以下のように組み合わせることにより、あるいは公知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、進歩性を欠如しており(特許法第29条第2項)、特許法第123条第1項第2号に該当する。
(1)本件発明1について:
ア.甲第2,3又は4号証と甲第12号証との組み合わせ
イ.甲第5号証と甲第13号証との組み合わせ
ウ.甲第6乃至9号証のいずれかと甲第12号証との組み合わせ
エ.甲第10号証と甲第16号証との組み合わせ
オ.甲第11号証と甲第14号証との組み合わせ
(2)本件発明2乃至5について:
カ.本件発明2乃至5は、甲第2、3、4、8又は9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(無効理由3及び4)
請求項1の「元来付着性である」及び「浮遊撹拌培養に適した形質転換細胞」という文言については、明細書にその意味や定義が説明されていないから、その意味が不明瞭であり、同時に請求項1記載の発明は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第3項及び第4項第1号の規定を満たさないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当する。

(無効理由5)
請求項1には、周知技術である「浮遊撹拌培養を継代して行うこと」以外の解決手段が記載されておらず、請求項1記載の発明の必須要件である「培地中に所定濃度の核酸を含有すること」が記載されていないから、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第4項第2号の規定を満たさないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当する。

2.ここで、審判請求人の主張する上記各無効理由を検討するにあたり、以下のように整理し、それぞれの主張について検討・判断する。

主張A:本件発明1に対する新規性違反の主張/(無効理由1)
本件発明1が甲第2乃至4号証に記載された発明であるとの主張について
主張B:本件発明1乃至5に対する進歩性違反の主張-I/(無効理由2)ア、イ、ウ、エ、カ
本件発明1が、甲第2乃至4号証などのいずれかと甲第12号証の組み合わせにより容易等、本件発明1乃至5が公知文献の組み合わせから容易に想到できた旨の主張について
主張C:本件発明1に対する進歩性違反の主張-II/(無効理由2)オ
甲第11号証が本件優先日前に頒布された刊行物に相当し、本件発明1が甲第11号証と甲第14号証とから容易に想到できた旨の主張について:
主張D:記載要件不備についての主張/(無効理由3)乃至(無効理由5)

3.審判請求人が提出した証拠方法及び参考資料:
甲第1-1号証: 平成9年異議第73453号の特許決定公報
甲第1-2号証: 特許第2576200号公報
甲第2号証: The Journal of Biological Chemistry,Vol.262,No.35,17156-17163,1987
甲第3号証: 医学のあゆみ、Vol.143,No.6,503-505頁、1987.11.7.
甲第4号証: Nucleic Acids Research,Vol.11,No.3,687-706,1983
甲第5号証: 「ジェネンテク社」、エーベルスタッド フレミング社、1-26頁、1987年12月2日
甲第6号証: 「日経バイオテクノロジー最新用語辞典87」、日経マグロウヒル社、359頁、1987年5月25日
甲第7号証: Nature Vol.331,82-84,(7 January 1988)
甲第8号証: Modern Approaches to Animal Cell Technology、編者R.E.Spier、J.B.riffiths、182-198頁、411-419頁、1987
甲第9号証: FEBS LETTERS,Vo.226,No.1,47-52,1987
甲第10号証: 特開昭63-32484号公報、昭和63年2月12日発行
甲第11号証: 日本農芸化学会誌、3月号、30頁、67頁、1988
甲第12号証: 組織培養、朝倉書店、昭和55年(1980年)2月20日発行第4刷、第39?46頁、第68?79頁
甲第13号証: Develop.Biol.Standard.Vol.66、p.13-22,1987
甲第14号証: Biochem.Biophys.Res.Comm.,vol.151,230-235(Feb.29 1988)
甲第15号証: 第58回日本遺伝学会第9回日本分子生物学会合同年会プログラム・講演要旨集、104頁、1986
甲第16号証: 欧州特許公開公報第93619号 1983年11月9日発行
甲第17-1号証: 岩手大学農学部の平秀晴教授による鑑定書
甲第17-2号証: 平秀晴教授の経歴及び著書・論文のリスト
甲第17-3号証: Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.77,4216-4220,1980
甲第17-4号証: J.Mol.Biol.,159,601-621,1982
甲第17-5号証: Chasin博士の1988年6月23日付け書簡および1988年2月25日付け説明書
甲第18-1号証: 佐野恵海子氏の意見書
甲第18-2号証: 佐野恵海子氏の主な著書・論文リスト
甲第18-3号証: 繊維学会誌、43(9),352-359,1987
甲第18-4号証: Japan.J.Microbiol.,18(2),165-172,1974
甲第19号証: 月刊組織培養、13(4)、19-24頁、1987
甲第20-1?17号証: 平成9年異議第73453号における応答書類及び異議決定書
甲第21号証: Nature,Vol.195,No.4847,1163-1164,1962
甲第22号証: Experimental Cell Research,44,119-128,1966
甲第23号証: 「バイオテクノロジー事典」、(株)シーエムシー、937頁、1986
甲第24号証: 東京国際バイオ・フェア:International Symposium Biotechnology-at the Threshold of the 21st Century October 15th (Wed)-18th(Sat)、I-VI頁、22-23頁、1986
甲第25号証: 化学工学、Vol 52(3)、210-211頁、昭和63年3月5日発行
甲第26号証: J.Ferment.Technol.,Vol.66,No.5,501-507,(1988.10.25)
添付資料1: 「組換え体によるタンパク質医薬品の製造について」化学工学会第63年会研究発表講演要旨集、第99-102頁、1998年2月28日発行
添付資料2: Molecular and Cellular Biology,Vol.6,No.2,p.425-440(1986)
添付資料3: 甲第4号証第一筆者による宣誓書及び訳文
添付資料4: 判例1、最高裁昭和38年1月29日判決
添付資料5: 判例2、最高裁昭和55年7月4日判決
添付資料6: 判例3、最高裁昭和61年7月17日判決
添付資料7: 生化学辞典第1版、1078頁、1984年4月10日
添付資料8: 特表昭61-501627号公報
添付資料9: 日本農芸化学会誌、62巻1号、154頁、1988年1月15日
添付資料10: 日本農芸化学会誌、62巻3号、12頁及び13頁(=甲第11号証)
添付資料11: 「動物細胞大量培養と有用物質生産」大石道夫監修、(株)シーエムシー、1986年4月15日、51?63頁
添付資料12: USP4,320,115
添付資料13: Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,11487-11492(1996)
添付資料14: 「インターフェロンの科学」、表紙及び執筆者一覧ページ
添付資料15: 「新基礎生化学実験法 7遺伝子工学」村松正美他編、丸善(株)、昭和63年1月30日発行
添付資料16: J.Biochem.,102,123-131(1987)

第4.平成17年2月7日付答弁書における被請求人の主張の概要:
1.被請求人は、平成17年2月7日付答弁書において、請求人の主張する無効理由1ないし無効理由5はいずれも理由が無く、本件特許は無効にされるべきものではない旨主張し、これを立証する証拠方法として、平成17年2月7日付答弁書に添付して下記の乙第1ないし18号証を提出し、またその後当審からの審尋に対する回答書などに添付して下記の乙第19ないし30号証を提出している。
なお、無効理由に対する被請求人の具体的な主張は、下記の「当審の判断」において取り上げる。

2.被請求人が提出した証拠方法及び参考資料:

乙第1号証: 蛋白質核酸酵素 第37巻、第3号、第269-283頁 (1992)「動物細胞による蛋白質の発現」
乙第2号証: 生化学辞典第3版(東京化学同人)第111頁
乙第3号証: 博士論文「ヒト正常細胞および遺伝子組換え動物細胞を用いたヒトインターフェロン産生に関する研究」佐野恵海子博士、1989年
乙第4号証: 小野寺一清教授の鑑定書
乙第5号証: 造血因子、第2巻、第4号、第17-21頁(1991)「G-CSFが生まれるまで」
乙第6号証: 上田正次博士の意見書
乙第7号証: 動物細胞培養の実際(丸善)、三井洋司監訳、第71-85頁、1990年
乙第8号証: 組織培養、第9巻、第8号、第291-295頁(1983)「大規模装置を用いての動物細胞培養の実際」
乙第9号証: 特開平5-137583号公報
乙第10号証: Molecular and Cellular Biology,第5巻、第7号、第1750-1759頁(1985)
乙第11号証: 特公平5-74346号公報
乙第12号証: Methods in Enzymology,第151巻、第3-9頁、「Molecular Genetics of Mammalian Cells」
乙第13号証: 日本農芸化学会誌、第61巻、第9号、127-132頁(1987)
乙第14号証: 日本農芸化学会誌、第61巻、第12号、118頁(1987)
乙第15号証: 鶴岡是明氏の陳述書
乙第16号証: 図書館資料の証明について(回答)、吉永元信氏作成
乙第17号証: 日経バイオビジネス 2001年9月号、第106-109頁
乙第18号証: 甲第22号証の抄訳
乙第19号証: Molecular and Cellular Biology,Vol.9,No.7,p.2868-2880(1989) 乙第20号証: 特開昭62-262988号公報
乙第21号証: Applied Microbiology,Vol.18,No.3,p.333-437(1969)
乙第22号証: Infection and Immunity,Vol.22,No.1,p.62-68(1978)
乙第23号証: Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99(21),p.13413-13418(2002)
乙第24号証: 調査報告書
乙第25号証: 「インターフェロンの科学」講談社サイエンティフィク、1985年4月10日発行
乙第26号証: Blood,Vol.65,No.4,p.921-928(1985)
乙第27号証: Cell,Vol.15,p.627-637(1978)
乙第28号証: 「動物細胞工学ハンドブック」日本動物細胞工学会編集、朝倉書店、2000年10月10日発行
乙第29号証: Biochimica et Biophysica Acta,Vol.824,p.27-33(1985)
乙第30号証: Journal of Immunological Methods,Vol.204,p.99-102(1997)
参考資料: 口頭審理における説明資料

第5:主張A:本件発明1が甲第2乃至4号証に記載された発明であるとの主張について/(無効理由1)

1.甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載内容:
甲第2号証は、「天然ヒト尿由来及び組換えDNA由来のエリスロポエチンの構造的特性」と題される文献であって以下の記載がある。
(1)「この報告で、私たちは、ヒト遺伝子のcDNAクローンを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から精製された組換えヒトEPO(rhEPO)の初めての特性付けを記載する。(第17156頁右欄12?15行)」:記載(ト)
(2)「精製とEPO生物学的活性の分析
rhEPOは、ヒト遺伝子のcDNAクローン(Jacobsら,1985)を発現するCHO細胞株の培養液から見かけ上均一にまで精製された。EPOのcDNAとジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子とを含むプラスミドDNA発現ベクターを、ジヒドロ葉酸還元酵素欠損CHO細胞に同時形質導入し、メトトレキセート存在下の増殖性で耐性群が選択された(Kaufmanら,1985)。クローンDN2-3が更なる増幅に選ばれ、適切なEPO発現レベルが観察されるまで、メトトレキセートの濃度を上げて増殖させることで形質転換体が選択された。安定な形質転換体が、半合成培地と完全合成培地の両方で、ローラーボトル中でコンフルエントな単層培養として、そして深いタンク型バイオリアクターで浮遊培養として維持された。rhEPOは、uEPOの精製で以前に記載された方法(Miyakeら,1977;Krystalら,1986;Jacobsら,1985)を組み合わせた連続的クロマトグラフィーによって精製された。(第17156頁右下欄1?16行)」:記載(チ)
(3)「私たちは、ここに、ヒト遺伝子のcDNAクローンを発現する哺乳動物細胞株の培養液から精製された組換えヒトEPOの初めての特性付けを報告する。(第17161頁左欄1?4行)」:記載(リ)

(2)対比・判断
甲第2号証には、上記記載(ト)乃至(リ)からみて、生理活性タンパク質であるEPOをコードする遺伝子とdhfr遺伝子を含む発現ベクターを用いてCHO dhfr-細胞を形質転換し、安定な形質転換体が選択されたことと共に、当該安定な形質転換体から「深いタンク型バイオリアクター」を用いた浮遊培養によっても組換えヒトEPOが生産され、かつ取得されたことが記載されているといえる。
ここで、「深いタンク型バイオリアクター」での浮遊培養は、通常「浮遊撹拌培養」であるから、本件発明1と、甲第2号証の記載を対比すると、前者は生理活性タンパク質を浮遊撹拌培養で生産する際に用いる形質転換細胞が、「浮遊攪拌培養を継代して行うことにより樹立された浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であることが規定されているのに対して、後者では「浮遊攪拌培養を継代して行う」という「樹立」工程、及び用いた形質転換細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的記載がない点で相違する。
確かに、記載(チ)における「安定な形質転換体が・・・ローラーボトル中でコンフルエントな単層培養として、そして深いタンク型バイオリアクターで浮遊培養として維持された。」との記載を、審判請求人が主張する如く、「形質転換体が『深いタンク型バイオリアクター』の如き大量培養に使用される装置での浮遊培養において安定に維持された、ということは、これらの形質転換体が浮遊培養に適した細胞株として樹立されていることを意味」し、「『深いタンク型バイオリアクター』のような大量培養装置で浮遊攪拌培養するには、はじめにスピナーフラスコのような小スケールで形質転換体を浮遊攪拌培養し、形質転換細胞が浮遊攪拌培養で良好にかつ安定して増殖するようになってから、順次培養スケールを拡大していかなければならない。すなわち、スケールアップを行なう時点では、すでに浮遊攪拌培養に適した株として樹立されている細胞を用いて、順次培養スケールを拡大して、はじめて『深いタンク型バイオリアクター』のような大量培養装置での培養に至る」ことを前提として解釈すれば、甲第2号証で用いられた形質転換細胞が通常の浮遊培養株樹立工程を経た樹立した「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」であるという解釈も成り立つとはいえる。
しかしながら、一般に、元来付着性の細胞を用いて大型の培養タンク内で浮遊培養による大量培養を行おうとすれば、それぞれの工程は周知技術の組み合わせでルーチン的なものであったとしても、細かな実験的試行錯誤は必要であり、浮遊培養に適した生産株樹立にも長い時間を要することは本件優先日前の当業者に十分理解されていたことである。このことは上記乙第7号証の第76?78頁には「大量培養化に伴い細胞の必要とする物理的化学的要求が満たされなくてはならない。」ではじまる「3.4.4 大量培養化に必要な因子」の項が設けられ、細胞を適切な生理的状態に保つために留意すべき化学的もしくは物理的なコントロール条件が挙げられていること、乙第8号証の第25頁に「培養量が多くなればなるほど細胞の増殖度は悪くなる。各培養量に応じて至適な培養条件を求めることが必要であるが、・・・」と記載されていることからも明らかであり、本件発明1が対象とする「形質転換CHO dhfr-細胞」も例外ではなかったことは、浮遊培養株の樹立だけで10週間も要した本件明細書の実施例の記載からも、審判請求人に属する研究者の本件出願後に発表された乙第5号証の記載からも十分うかがえる。
そもそも「ヒト遺伝子のcDNAクローンを発現する哺乳動物細胞株の培養液から精製された組換えヒトEPOの初めての特性付けを報告する」ことのみを目的とし、特段「大量培養法」であることを目的に掲げてもいない甲第2号証において、あえて苦労の多い浮遊培養での大量培養を行ったと解すること自体に無理がある。そして、「深いタンク型培養リアクター」という用語が、大きさではなく形状を表す可能性もあるから、必ずしも大型の培養タンクを意味せず、しかも、記載(チ)では「深いタンク型バイオリアクターでの浮遊培養」が「ローラーボトル中でのコンフルエントな単層培養」と並列的に記載されていることからみても、審判請求人が解釈したような「深いタンク型バイオリアクター」がスケールアップが必要なほどの大型の浮遊撹拌培養装置であるとすることは不自然である。
そして、「深いタンク型バイオリアクター」中の培養が、被請求人が主張するような「一過性」の培養に当たるか否かはともかくとして、上記本件明細書の実施例1によれば、形質転換CHO dhfr-細胞は「浮遊攪拌培養に適した細胞」として「樹立」された状態とはいえない「親株」や途中段階の「Cell(4week)」であっても充分に良好な増殖能を示しており、継代すればするほど世代時間が順調に短く推移し、安定化していくことが窺える。
そうしてみると、「深いタンク型バイオリアクター」が直ちに大型培養器とはいえない以上、単に浮遊培養条件下での増殖性、及び組換えEPOの生産性を確認する程度であれば、必ずしも浮遊培養株として「樹立」された細胞を用いる必要はないから、当該記載をもって樹立細胞株が用いられたことまでを意味するとはいえない。
そうなので、「深いタンク型バイオリアクター」での培養工程に先立ち、「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」を樹立する工程が存在したはずであるという審判請求人の主張は成り立たない。
以上のとおりであるから、甲第2号証に本件発明1が記載されているとする審判請求人の主張は採用しない。

2.甲第3号証について:
(1)甲第3号証の記載内容
甲第3号証は、「遺伝子工学によるリコンビナント造血因子の精製:hG-CSF」と題される文献であり、
「チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を用いた場合でも、たとえ、さきに述べた天然型hG-CSFとまったく同様の精製工程を用いたとしても、CHO細胞が10mg以上/lという高発現株であるため、精製回収量は10倍以上も向上した8)。現在著者らはこのCHO細胞株をサスペンジョン化し、低血清培地からきわめて高い回収率でr-hG-CSFを得ている。以上述べてきたように、遺伝子工学を用いてhG-CSFの高発現株が得られ、大腸菌、動物細胞のいずれにおいても大量培養、大量精製に成功しており、純化r-hG-CSFの入手が可能となった。(第504頁右欄27行?第505頁左欄4行)」:記載(ヌ)
と記載され、参照文献8)は、「山本修己・他:第9回日本分子生物学会要旨集、3A-39、1986.(甲第15号証)」であることが示されている。

(2)対比・判断
甲第3号証中の記載(ヌ)中で引用される参照文献8(甲第15号証)によれば、上記CHO細胞についての記載はCHO dhfr-細胞として読むべきであるから、甲第3号証には、「hG-CSF遺伝子で形質転換されたCHO dhfr-細胞株をサスペンジョン化し、低血清培地からきわめて高い回収率でr-hG-CSFを得たこと」が記載されているといえる。
ここで、低血清培地中で「サスペンジョン化し」たことは、浮遊撹拌培養に供したとみることが自然であるから、結局、本件発明1と甲第3号証との相違点は、後者において「浮遊攪拌培養を継代して行う」「樹立」工程、及び用いた形質転換CHO dhfr-細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的記載がない点のみである。
記載(ヌ)においては、「動物細胞・・・においても大量培養、大量精製に成功」の記載があるものの、当該記載は、むしろ記載(ヌ)に先立つ記載中のマウスC127細胞における1.2リットルの培養上清からの蛋白質として600mgを得、純化rhG-CSFとして7.9mgを得たこと指すものであると解され、サスペンジョン化された形質転換CHO dhfr-細胞から回収されたr-hG-CSFについての記載であるとはいえない。
そうしてみると、単に浮遊培養条件下での増殖性、及び組換えEPOの生産性を確認する程度であれば、必ずしも浮遊培養株として「樹立」された細胞を用いる必要はないことは、上記1.(2)で述べたとおりであるから、同様に本件発明1が甲第3号証に記載されているとはいえない。

3.甲第4号証について
(1)甲第4号証の記載内容:
甲第4号証(Nucleic Acids Research, Vol. 11, No. 3, 687-706, 1983)は、「クローン化インターフェロン遺伝子の多数複製を含むハムスター細胞によるヒトインターフェロンの構成的、長期生産」と題される文献であり、以下の事項が記載されている。
(1)第687頁「要約」の第1?4行
「マウスジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)とヒトインターフェロン(IFN-α5またはIFN-γ)をコードする配列をウイルスプロモーターの制御下で有する複合プラスミドは、dhfr-チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に形質転換された。」:記載(ル)
(2)第688頁第25?29行
「このプラスミドのdhfr- CHO細胞への形質転換と引き続くMTXでの選択により、2-10 x 104 I.U. ml-1・day-1のHuIFN-α5またはHuIFN-γを産生する細胞株が得られた。IFN合成は構成的であり少なくとも数ヶ月にわたって維持された。」:記載(オ)
(3)第695頁第19?23行
「α5-2N.05Cl.0Iクローンを継続したMTX存在下で更に増殖させた。IFN産生は、単層培養では約30,000 units・ml-1・day-1、そして、約106細胞/mlの浮遊培養では100,000 units・ml-1で安定に推移した。」:記載(ワ)
(4)第699頁第22?24行
「0.2または1.0μMのMTXによる2回目の選別により、単層培養と浮遊培養の両方で20,000?100,000 units・ml-1・day-1でヒトIFN-γを産生する幾つかのクローンが得られた。」:記載(カ)
(5)第702頁第21?28行
「形質転換CHO細胞で達成されたIFNのレベルは、最も効率のよい未修飾のヒト細胞のそれに比べて著しく高いというわけではないが、産生が構成的であり、細胞が浮遊状態で増殖でき(can be grown)、繰り返し収穫できる点、生産物は単一の遺伝子に由来し、適当な付加部位があればおそらく糖鎖が付加されるので、遺伝子的に修飾した真核細胞を使用する利点が現在においても存在する。」:記載(ヨ)

(2)本件発明1との対比・判断
記載(ル)からみて、記載(ヨ)での「形質転換CHO細胞」という用語も含め、甲第4号証中で用いられているヒトIFN-α5またはヒトIFN-γを産生する形質転換細胞は全て「形質転換CHO dhfr-細胞」であると解されるから、甲第4号証には、ヒトインターフェロン(IFN-α5またはIFN-γ)遺伝子で形質転換したCHO dhfr-細胞を用いて、浮遊培養により組換えヒトIFN-α5を100,000 units・ml-1、組換えヒトIFN-γを20,000?100,000 units・ml-1・day-1で産生させたことが記載されている。
そうしてみると、本件発明1は、甲第4号証の記載とも「浮遊攪拌培養を継代して行う」という「樹立」工程の記載、及び用いた形質転換細胞が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞であることについての具体的記載がない点で相違している。
ところで、記載(オ)には「IFN合成は構成的であり少なくとも数ヶ月にわたって維持された。」ことが記載されているが、対応する実験結果の部である第693頁下から2行?最下行及び「Table 1」の脚注をあわせ読めば付着培養した細胞についてのIFN産生能の試験結果を述べたにすぎないものであり、記載(オ)及び(ヨ)で、産生が「構成的」である旨の記載は、単に染色体中に組み込まれたことを意味していると解される。
一方、記載(ヨ)の「浮遊培養で増殖でき」の原文が「can be grown」であることから、実際に細胞数もしくは細胞密度までを正確に確認したものとはいえないものの、記載(ワ)で「IFN産生は・・・安定に推移した。」と記載され、記載(カ)で1日あたりのIFN-γ産生量が示されていることからみて、浮遊培養条件下でも「安定な」IFN生産が行われていることを確認し、かつ浮遊培養下での細胞の生育状態を観察した結果を踏まえて「増殖でき」と述べたと解することが自然であるから、当該「クローン」が「浮遊培養下でも増殖できる」細胞であるということはできる。
とはいえ、「増殖でき」の用語に続く「繰り返し収穫できる」という用語は、必ずしも増殖した細胞を用いて「繰り返し収穫できた」ことまでは意味しないから、記載(ヨ)全体の記載が、IFN産生形質転換CHO dhfr-細胞の、将来の可能性を述べた文章であるとする被請求人の主張は首肯し得る。
確かに、記載(カ)では、単層培養に引けをとらない「20,000?100,000 units・ml-1・day-1」というヒトIFN-γの高産生量を示す「クローン」を得たことが記載されているが、当該「クローン」の取得に関する「・・・MTXによる2回目の選別により、単層培養と浮遊培養の両方で・・・幾つかのクローンが得られた。」という記載からは、上記1.(2)で述べたような、ルーチンとはいえ時間のかかる浮遊培養株の樹立工程を経た上での「クローン」を取得したとは到底読み取ることができない。
仮に、実際は、甲第4号証の筆者自身による宣誓書(添付資料3)通りに、浮遊撹拌培養に先立ち、ルーチン的に浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し、当該「樹立」された「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」を用いた事実が存在したのだとしても、上記各記載からは、浮遊培養に供した細胞が、浮遊細胞株として「樹立」された株であることまでは読み取れない以上、上記認定は覆らない。
したがって、同様に本件発明1は、甲第4号証に記載された発明であるとまではいえない。

4.結論:
以上述べたとおりであるから、本件発明1が、甲第2乃至4号証のいずれかに記載された発明であるとまではいえない。
したがって、審判請求人の主張Aは採用できない。

第6:主張B:本件発明1乃至5が、公知文献の組み合わせ(例えば、甲第4号証及び甲第12号証との組み合わせ)から容易に想到できた旨の主張について/(無効理由2)ア.、イ.、ウ.、エ.、カ.

1.本件発明1の甲第4号証と甲第12号証との組み合わせからの容易性について:
さて、主張Bにおける審判請求人の代表的な主張として、本件発明1が甲第4号証と甲第12号証との組み合わせから容易に想到し得る旨の主張についてまず検討する。
(1)上記第5:で述べたように、甲第4号証には、樹立された浮遊細胞株を用いてタンパク質を生産したことまでは記載されていたとはいえないものの、少なくとも、浮遊培養下において、安定な増殖性と、単層培養での生産性に匹敵する高いタンパク質産生能を示す幾つかのクローンが得られたことが記載されている。
当該クローン自体が、浮遊培養に適した「樹立」株であるとまではいえないことは上述の通りであるが、当該クローンが浮遊培養下での安定な増殖性、及び高いタンパク質産生能を呈していることからみて、乙第7号証において「浮遊させた状態では全く培養できない細胞」として例示された「ヒト二倍体細胞株」とは全く性状が異なり、「充分に浮遊撹拌培養条件に耐えられる細胞」であることは明らかである。
そして、甲第4号証中の「浮遊培養で増殖でき、繰り返し収穫できる」という上記記載自体は、被請求人の主張する如く将来の可能性を示したものでしかないとしても、形質転換CHO dhfr-細胞を用いた浮遊培養におけるIFN大量生産の可能性を強く示唆する記載ではある。

(2)ところで、上記第5:1.及び2.で述べた甲第2号証及び第3号証は、いずれも甲第4号証と同様に、本件優先日前の形質転換CHO dhfr-細胞を浮遊撹拌培養に供してタンパク質を産生させた例に該当する。
これら2つの例においても浮遊撹拌培養に適した樹立細胞株が得られたとまではいえないものの、前者では、浮遊培養下でも「安定な形質転換体が・・・維持され」たことが、また後者でも、浮遊培養下で「きわめて高い回収率」で タンパク産生が行われたことが記載されているのであるから、これら文献中で得られた細胞もまた「充分に浮遊撹拌培養条件に耐えられる形質転換細胞」に他ならない。
しかも、後者の記載(ヌ)の「遺伝子工学を用いてhG-CSFの高発現株が得られ、大腸菌、動物細胞のいずれにおいても大量培養、大量精製に成功し・・・」のくだりは、まさにCHO dhfr-細胞形質転換宿主とした浮遊培養での大量培養、大量精製の可能性を強く示唆するものである。

(3)さらに、本件優先日前には、形質転換CHO dhfr-細胞を用いて浮遊培養下でタンパク質を生産し取得したことが、上記2例以外にも、甲第7号証、甲第8号証及び甲第9号証において記載されている。
(3-1)具体的には、甲第7号証では、可溶性CD4(sCD4)遺伝子とdhfr遺伝子とを含む発現ベクターをCHO dhfr-細胞に形質導入して形質転換細胞を得、これらの細胞の高密度浮遊培養を4日間にわたって行ない、24時間で細胞あたり>3pgのsCD4 を合成し、4日間の高密度浮遊培養でリットルあたり約40mgのsCD4が得られたことが記載されている。
(3-2)また、甲第8号証には、抗トロンビンIII(ATIII)、インターロイキン-2(IL-2)、およびインターフェロンβ(IFN-β)をコードするヒト構造遺伝子を含むプラスミドを用いて形質転換したCHO dhfr-細胞を得たことと共に、当該形質転換CHO dhfr-細胞に対して
「7×106細胞/mlの細胞密度まで無泡性通気ファーメンター(本巻のBuntemeyer,H、とLehmann,J.を参照)で増殖できた。それぞれの組換え細胞の生産性はこれらの条件でも顕著な変化はなかった。無血清培地からの組換えタンパク質の精製は確立された手順でおこなった。(第191頁15?24行)」:記載(タ)
と記載されている。
ここで、「無泡性通気ファーメンター」とは、参照箇所(同第411頁下から2?1行など)をみると、無泡性通気および潅流システムの新しい均一撹拌リアクターであり、まさに大量培養用の大型浮遊撹拌培養装置である。この記載を素直に読めば、甲第8号証で得られた「形質転換CHO dhfr-細胞」は、大型の浮遊撹拌培養装置での培養条件下でも、安定な増殖能及び生産性を保持していることになるから、ここで用いられた「形質転換CHO dhfr-細胞」が浮遊攪拌培養に適した樹立株であったか否かはともかく、大型撹拌培養装置中で7×106細胞/mlの細胞密度まで増殖できるほどに、充分馴化がなされた細胞であったことが窺える。
それにもかかわらず、「無泡性通気ファーメンター」に関する記載が単なる可能性を述べたものである、という被請求人の解釈は文脈上無理があるが、例え「無泡性通気ファーメンター」を用いることができる「可能性」が記載されていた場合であっても、記載(タ)を読む当業者にとって、「形質転換CHO dhfr-細胞」に対して、大型撹拌培養装置による浮遊培養条件下でも、安定な増殖能及び生産性を保持している「浮遊攪拌培養に適した細胞株の樹立」の可能性を強く示唆するものであることにかわりはない。
(3-3)そして、甲第9号証は、「組換えプラスミドで形質転換されたCHO細胞株により産生された糖鎖を有する組換えヒトインターロイキン2の特性」と題される文献であり、ヒトIL-2遺伝子でCHO dhfr-細胞を形質転換したことが記載されており、さらに、
(1)「組換えIL-2は、5%のFCS、0.2μMのMTXと150μg/mlのプロリンを含む浮遊培地(ギブコ社)を用いて攪拌フラスコでの浮遊培養により取得された。(同第48頁右欄5?7行)」:記載(レ)
(2)「組換えIL-2は、通常、組換えCHOクローン32の1リットルの浮遊培養から精製された。(第49頁左欄下から4?3行)」:記載(ソ)
(3)「ヒトIL-2を大量に生産するCHO株の単離は、この、ヒト天然IL-2に近いあるいは同一の構造を有するリンフォカインの、ほぼ無限の供給を可能とする。(第50頁右欄第10?14行)」:記載(ツ)
(4)「ここに述べられるCHO細胞株の利点は、IL-2の産生が持続的であり刺激を必要としないことである。この研究で得られた5 ×104 U/mlまでのIL-2産生のレベルは、これまでに報告されている形質転換CHO細胞における2 ×102 U/mlや、形質転換L細胞における1.5×103 U/ml(12)に比較して好ましいものである。(第50頁右欄下から6行?第51頁左欄2行)」:記載(ネ)
が記載されている。
当該甲第9号証における上記各記載は、実際に浮遊培養による大量培養を行った結果に基づくものではないと解されるから、用いられた組換えヒトIL-2を産生する形質転換CHO dhfr-細胞自身が「浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞」として樹立された細胞株であるとまではいえない。
しかしながら、少なくとも1リットル程度の浮遊撹拌培養には十分耐えられ、他の形質転換細胞でのIL-2産生量に匹敵する生産性を示したことは明らかである。そして、記載(ツ)における「大量に生産」「ほぼ無限の供給を可能にする。」の記載、及び記載(ネ)の「IL-2の産生が持続的」の、浮遊培養での大量生産を示唆する記載のみならず、そもそも、当該文献中で、本来付着細胞であるはずの形質転換CHO dhfr-細胞に対してあえて浮遊培養条件下での生産性を検討していること自体が、将来的には浮遊培養法での大量生産をめざすものであることを強く示唆するものである。
そうであるから、甲第9号証中の上記記載もまた、本件優先日前の当業者に対して、形質転換CHO dhfr-細胞における「浮遊攪拌培養に適した細胞株」の樹立に対する期待を高めることは明白である。

(4)本件優先日前の当業者が甲第4号証に接するとき、これらの形質転換CHO dhfr-細胞を用いた浮遊撹拌培養下での安定な増殖性及びタンパク質生産性についての多数の成功例も同時に考え合わせることになるから、甲第4号証で得られた「浮遊培養下において、安定な増殖性と、単層培養での生産性に匹敵する高いタンパク質産生能を示すクローン」を、大量培養に耐えられる程度の高い安定性を有する「浮遊撹拌培養に適した樹立株」としようとすることを想起することはむしろ当然である。そして、その樹立工程自体は上述の如く(第2:2.)、甲第12号証のように古くから確立したルーチン的手法でしかないから、当業者の樹立への意欲を妨げるものとは考えられない。
そうしてみると、本件発明1は甲第4号証及び甲第12号証の記載を組み合わせることで、当業者が容易に発明をすることができる、とする審判請求人の主張に無理はない。
しかしながら、仮に被請求人が主張するように、本件優先日前に、特に「形質転換CHO dhfr-細胞」に対して、浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞が樹立できない、もしくは極めて困難であったという技術常識が存在したのであれば、甲第4号証の上記クローンに対して甲第12号証に記載される周知の浮遊細胞を樹立する手法を適用しようとする阻害要因となるといえるから、以下、本件優先日前にそのような技術常識が存在したかどうかについて検討する。

2.本件優先日前に、「形質転換CHO dhfr-細胞」に対しては、浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞が樹立できない、もしくは極めて困難であったという技術常識が存在したか否かについて:

(1)本件優先日前の文献であって直接的に「形質転換CHO dhfr-細胞」の浮遊撹拌培養に適した株の樹立の可能性を否定する記載は、唯一、甲第19号証における
「組換えC127細胞及びCHO細胞は、いずれも接着依存性の細胞で浮遊化できない。(第20頁左欄16?17行)」(記載:ナ)
という記載である。
なるほど、被請求人が指摘するように著者の佐野恵美子氏及び小林茂保氏は本件優先日前にインターフェロン研究の第一人者であり、当該文献中の記載全体は信頼性の高い内容であり、甲第19号証に接した当時の研究者に対する影響力も大きいとはいえる。
しかしながら、そもそも甲第19号証は、筆者等が開発したマイクロキャリア培養法を用いた組換えCHO dhfr-細胞などでの物質生産を主眼とする文献であって、組換えCHO dhfr-細胞などの「浮遊化」を検討した文献ではない。
そして、形質転換されたC127及びCHO(CHO dhfr-)細胞に関する2行にも満たない記載(ナ)では、単に「浮遊化できない。」と結論のみが示され、その前後には当該結論に至る具体的な実験データも、その根拠となる参照文献も示されていない。
そうであるから、記載(ナ)において組換えCHO(CHO dhfr-)細胞に対して「浮遊化できない」旨の結論が明記されていたからといって、当業者を直ちに納得させることはできず、まして上述の如く形質転換CHO dhfr-細胞を用いた浮遊培養での物質生産の多数の成功例を知った当業者に対しては、形質転換CHO dhfr-細胞に対する「浮遊細胞樹立」の強い動機付けを断念させるものではありえない。
なお、甲第18号証の佐野氏本人の意見書において、佐野氏自身が「記載(ナ)」の記述が不正確であり、本件優先日当時の「組換えCHO dhfr-は浮遊化できると信ずるに足る多数の報告」からみてむしろ全く反対の結論が妥当であった旨の感想を述べている。そして、甲第18号証における、「記載(ナ)」を記述するに至った経緯及び事情の説明は充分に納得のいくものである。

(2)また、被請求人は、本件出願後の文献である乙第5号証について、審判請求人に属する研究者が、G-CSFのcDNA導入後の接着CHO dhfr-細胞に対して「壁から細胞をはがした後、根気よくサスペンジョンカルチャーを繰り返し、最終的によく適合し増殖する細胞をクローニングし、・・・(同第19頁左欄7?10行)」と記載していることを指摘し、「形質転換CHO dhfr-細胞」の浮遊細胞株を樹立することの困難性を主張している(答弁書第10頁など)。
しかしながら、当該記載は、上記甲第12号証の「記載(ロ)」もしくは乙第7号証の「記載(ホ)」における通常の浮遊細胞株樹立工程におけるルーチン的作業を記述している以上の意味はなく、当該記載が「形質転換CHO dhfr-細胞」についての浮遊細胞株の樹立工程における特別な困難性を記述したものとはいえない。
そして、上田博士による意見書(乙第6号証)中の、小型スピナーフラスコを使用したCHO dhfr-細胞の浮遊培養実験に関して「培養時間の経過とともに細胞凝集塊を生じて浮遊し、またフラスコ壁面にも付着して増殖するために、均質な培養は難しく、・・(第2頁目)」と記述された点も、上記甲第12号証の「記載(ロ)」によれば、従来から浮遊細胞樹立に際して「細胞が浮遊培養に適応しにくい細胞」の場合も十分想定されており、「細胞の死亡率が増加するか、細胞の凝集がひどく大きな細胞塊(clump)を作る傾向にある時には、健全な細胞あるいは細胞塊を作りにくい細胞だけを選択して培養を更新すべき」として、本件優先日の10年以上も前から既にその解決手段も周知であったといえる。「BHK細胞のマイクロキャリア法による大量培養システムの完成」(同第2頁目)をめざしていた研究グループに属する上田博士が、このような根気のいるルーチン作業をあえて行わなかったからといって、「形質転換CHO dhfr-細胞」が記載(ロ)での想定範囲を超えるほど特別に浮遊細胞化が困難な細胞であったことにはならない。
乙第17号証で、キリン株式会社の研究者が「形質転換CHO dhfr-細胞」を用いて浮遊培養による大量生産をめざさなかったことをもって、形質転換CHO dhfr-細胞が特別に浮遊細胞化が困難な細胞であることにならない点は同様である。

(3)いずれにしても、本件優先日前に、「形質転換CHO dhfr-細胞」が浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞が樹立できない、もしくは極めて困難であったという技術常識が存在したという被請求人の主張はあたらない。

3.その他の本件優先日前の技術常識について:
(1)形質転換前のCHO細胞及びCHO dhfr-細胞の浮遊化について:
ところで、甲第12号証(第69頁23?29行)には、下記の記載がある。
「われわれの研究室でも1959年以来HeLa S-3細胞を主体とした浮遊培養を実施、培養の保存と維持ばかりでなく各種の生化学的あるいは分子生物学的実験に使用して多大の効果をあげているので(Muellerら、1962;梶原、1965;梶原、1970)、われわれの培養方法や条件あるいは注意事項を中心として、動物細胞の浮遊培養法について述べる。なおわれわれは本方法で、L、H.Ep.-2、BHK、Chinese Hamster Ovary、Chinese Hamster Lung、L-5178Y、われわれの研究室で胎児ラット肺から分離したML-2(上皮細胞)、ML-3(線維芽細胞)の諸細胞も単層培養と同様な増殖能を示すことを認めている。」:記載(ラ)
上記記載からみて、1976年という本件優先日から10年以上も前の時点でCHO細胞が浮遊撹拌培養細胞として樹立されていたことは明らかであり、樹立された浮遊CHO細胞についての記載は、他にも甲第6号証、甲第12号証及び添付資料7など多数存在している。
また、審判請求人が提出した添付資料2によれば、CHO dhfr-細胞についても浮遊細胞株として樹立されていたとすることができる。

(2)乙第7号証における記載について:
確かに、被請求人が教科書的書籍として提出した乙第7号証では「浮遊培養法で細胞が増殖できるようになるかは細胞株(cell line)によって大きく異なる。(第73頁下から10?8行)」とは述べているが、乙第7号証において具体的に「浮遊された状態では全く培養ができない」細胞の例としてあげられたのは「ヒト二倍体細胞株(W1-38、MRC-5)」のみである(同第72頁最下行?第73頁1行)。

(3)浮遊化に際する導入遺伝子の不安定性について:
被請求人は、回答書第7頁7行などにおいて、「浮遊化に際して外来遺伝子の安定性を欠くという技術常識」の存在を主張しているが、その根拠として指摘した甲第19号証中の「細胞に導入された外来遺伝子は、染色体に組み込まれた場合でもその安定性を欠く傾向にあることが知られており、継代を繰り返すことにより明らかになる。」の記載は、単に形質転換細胞馴化工程一般についての記載であり、特に「浮遊化に際して」の不安定性を述べたものではない。
一方、本件優先日前という時期は、形質転換CHO細胞(dhfr-であるか否かはともかく)を用いて、AHF、EPO、GM-CSF及びTPAなど多数の生理活性タンパク質が浮遊培養により大量生産されており、そのうち特にTPAについては既に本格的に臨床試験までも開始されていた時期である(例えば甲第23乃至25号証)。このことは、少なくとも形質転換CHO細胞の場合は、大量スケールでの浮遊培養に耐えられる形質転換細胞株が既に樹立されていたことを示すものである。
確かに、一般に元来付着性の細胞にとって、浮遊培養条件が過酷なものであることは想像に難くないから、形質転換工程で新たな遺伝子をゲノム中に含むことになった形質転換細胞の場合には、さらに浮遊培養化が困難となる可能性はあるとしても、このような技術背景を考えれば、その「困難性」は馴化工程をより根気よく行うことで充分に乗り越えられる程度の「困難性」でしかないと当業者は理解するはずであり、形質転換CHO dhfr-細胞に対する浮遊培養に適した株の樹立を躊躇するほどの阻害要因とはいえない。

(4)付着細胞が浮遊培養下で遺伝的変化が起こることについて
被請求人は、甲第21号証及び甲第22号証のBHK細胞における浮遊培養への馴化により細胞の機能が変化することの記載、乙第26号証の単球細胞を付着細胞から浮遊培養に移行させると抗原タンパクの発現に変化が生じることの記載、及び乙第27号証では付着細胞3T6細胞を付着状態から強制的に浮遊状態に移したときに細胞内mRNAの変化が起こること等の記載から、「形質転換したCHO dhfr-細胞を付着細胞から浮遊細胞へと物理的に環境を変えたならば、導入された遺伝子の発現にどのような影響を与えるかは、全く予想できなかった(平成17年7月12日付第1回上申書)」ことを主張をしている。
しかしながら、そもそも一般的な付着細胞を浮遊培養に馴化する過程で細胞内の遺伝子レベルでの変異が起こっている可能性は、甲第12号証でも「この状態に達した細胞は、長い単層培養の後でもその性質を変えず、浮遊培養にただちに移行できる」と記載されているように、古くから認識されていたことにすぎない。
そして、上記甲第21号証、甲第22号証、乙第26号証及び乙第27号証中の記載は、いずれも形質転換細胞の浮遊培養化に際してのゲノム中に導入された遺伝子の変化、もしくは当該遺伝子の発現状態の変化に関する知見ではない。
一方、上述のように多数の形質転換CHO細胞由来生理活性蛋白質が浮遊培養により大量生産され、本格的臨床試験に供されている(医薬として使用可能なほどに天然物と遜色のない)ことが周知であった(甲第23乃至25号証)のだから、本件優先日当時の当業者は、むしろ浮遊撹拌培養に適する細胞株樹立における程度の「遺伝子レベル」の変異は、ゲノム中に組み込まれた生理活性蛋白質をコードする遺伝子及びその発現に対しては何ら影響を及ぼさないことを期待するはずである。
被請求人自身も、本件明細書中で出願当初から「形質転換した後に、浮遊撹拌培養に適した細胞を樹立してもよいし、また、浮遊撹拌培養に適した細胞を樹立してから形質転換してもよい。(甲第1-1号証第14頁30-33行)」と記載しているように、本件優先日当時に形質転換CHO dhfr-細胞を樹立するための順序はいずれの順序で樹立しても同様の「樹立細胞株」が得られると認識していたことが窺える。
そうしてみると、この点は形質転換CHO dhfr-細胞に対する浮遊培養に適した株を樹立することについての重大な阻害要因とはなり得ない。

(5)「一過性の浮遊培養」による物質生産について:
また、被請求人は、本件優先日前に、単層培養で増やした細胞を強制的に浮遊培養する「一過性培養」により、「当該物質の調製や細胞の生産能力の評価等の目的で浮遊培養を行うこと」が一般的に行う技術であった旨を主張し(平成17年7月4日付第2回回答書)、乙第20乃至23号証を提出している。
しかしながら、乙第20号証は、単なる付着細胞培養における細胞数カウントのための懸濁操作であってそもそも「浮遊培養」の範疇には入らず、乙第21号証のBHK21 13S(浮遊培養の13継代)株、及び乙第23号証のHEK293S株は、いずれも「浮遊攪拌培養に適した細胞」として既に樹立された株であり、乙第22号証の血球細胞はもともと浮遊細胞であるからこれら文献はいずれも上記被請求人の主張を裏付けるものとしては不適切である。
被請求人が「一過性の浮遊培養」により目的物質生産を行った例として平成17年7月21日付上申書に添付して提出した乙第29号証は、肝細胞自身が本来有しているアルブミン合成能に対するグルココルチコイドの影響を見たものであるから目的物質生産の例とはいえず、また同乙第30号証は本件出願後の文献であって、本件優先日前の技術常識を示すものではない。
被請求人は、答弁書での主張以来一貫して「一過性の浮遊培養」という用語を用いているが、被請求人の提出した証拠のみならず全証拠中にも「一過性の」という用語はなく、被請求人が提出した証拠方法からはそのような事実が認定できない点は上述のとおりであるから、付着性の形質転換細胞における目的物質生産法として「一過性浮遊培養」という手法が本件優先日前に周知の手法であったと認めることはできない。
なお、仮にこの点が被請求人の主張通りであったとしても、上記認定は左右されない。

4.まとめ:
以上述べたとおり、本件優先日前の技術常識を勘案すれば、甲第4号証において、浮遊培養下で安定な増殖性と高いタンパク質産生能を示す形質転換CHO dhfr-細胞が得られたと推認できる記載に接した当業者にとって、さらに甲第12号証に記載される「浮遊撹拌培養での継代方法を繰り返す」という周知の馴化手法を適用して「浮遊撹拌培養に適した形質転換細胞」を樹立することはむしろ当然に想到することであり、その過程で多少の樹立のしにくさがあったとしても、途中で樹立を断念するほどの困難性であるとはいえない。
そして、その結果、最終的に大量培養に耐えられる程度の高い安定性を有する「浮遊撹拌培養に適した形質転換細胞」が得られることも本件優先日前の技術常識から十分に予測される程度の事柄である。
そうであるから、本件発明1は、本件優先日前の技術常識を勘案することで、甲第4号証及び甲第12号証の記載事項を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができるものである。

5.その他の理由について:
同様の理由により、本件発明1は、本件優先日前の技術常識を勘案することで、甲第2号証もしくは甲第3号証と甲第12号証の記載事項を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができるものである。
また、本件発明2は、本件発明1を具体的なタンパク質(ヒト分化誘導因子(BUF-3)、ヒトインターロイキン2(IL-2)、ヒトB細胞分化因子(BSF-2))の製造に適用するものであるが、これらタンパク質をコードする遺伝子は、いずれも優先権主張日前に公知であり(甲第1-1号証第15頁36?37行、第17頁31?32行、第18頁21?22行)、本件発明1をこれらの公知のタンパク質の製造に応用することは当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本件発明3乃至5は、本件発明1のプラスミド中の、SV40プロモーター、生理活性タンパク質(BUF-3、BSF-2、IL-2)コード遺伝子、dhfr遺伝子の配列順序を特定したものであるが、SV40プロモーター、生理活性タンパク質コード遺伝子、dhfr遺伝子の配置順序を決定することは、当業者が適宜選択して実施する範囲内のものであるから、その点にも困難性は見いだせない。
したがって、本件発明2乃至5は、いずれも本件発明1と同様に、甲第2乃至4号証のいずれかと甲第12号証との記載事項を組み合わせることで、当業者が容易に発明をすることができるものである。

6.結論:
以上のとおりであるから、本件発明1乃至5は、本件優先日前の技術常識を勘案すれば、甲第2号証乃至甲第4号証のいずれかに記載された発明と甲第12号証の記載事項とを組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、審判請求人の主張Bにおけるその他の主張は検討するまでもなく、本件発明1乃至5に係る本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当する。

第7:主張C:甲第11号証が本件優先日前に頒布された刊行物に相当し、本件発明1が甲第11号証と甲第14号証とから容易に想到できた旨の主張について/(無効理由2)オ.

1.甲第11号証が本件優先日前に頒布された刊行物か否かについて:
甲第11号証は、昭和63年4月1日?4日に名古屋市名城大学で開催された「日本農芸化学会昭和63年度大会」において、本件特許の発明者らが、CHO細胞の浮遊撹拌培養による組換えタンパク質の生産に関して発表する内容の抄録が掲載された講演要旨集である。
そして、当該講演要旨集は学会員に対し講演内容を予め知らせることを目的として相当程度の部数が印刷された「刊行物」に相当することは明らかである。
また、甲第11号証には、表紙右肩に「日本農芸化学会誌(毎月1回15日発行)・・・第722号昭和63年3月15日発行」と記載されているが、同表紙には特許庁資料館の押印があり、昭和63年3月5日に特許庁資料館に受入れられていたと解される。
しかも、乙第15号証の記載からみて、特許庁資料館のみならず、国会図書館においても本件優先日前である昭和63年3月7日に既に受け入れられていた事実が推認されるから、甲第11号証は本件優先日前に、明らかに複数の箇所に頒布された刊行物であるということができる。
なお、最高裁判所昭和38年1月29日判決(添付資料4)においては、フランス国特許明細書に対して、「一般公衆の閲覧が可能であったか否かを問わず」、特許庁資料館の受け入れ印の日付を基準日として「頒布された刊行物」である旨を判示するものであり、その判示事項にも合致するものである。

2.甲第11号証に記載された発明と本件発明1との対比判断:
甲第11号証には、遺伝子増幅系を用いてCHO細胞でEDFを高発現させたこと、及び得られたEDF高生産株(すなわち、EDF遺伝子による形質転換細胞)を4×104個/mlの初期細胞濃度での撹拌培養操作を繰り返すことで、10週間後に48時間、7.8×105個/mlの撹拌培養に適応した細胞が育種できたことが記載されている。
ここで、上記育種工程は本件発明1の構成要件Bの浮遊培養株樹立工程に相当し、育種後の細胞を浮遊撹拌培養でEDFを生産させ、取得する工程の記載はないものの、当該育種が大量のEDF生産を目的とした「撹拌タンク培養株」の育種にある旨の記載があることからみて、当該育種細胞株を用いて浮遊撹拌培養でEDFを生産し、取得することは記載されているに等しい自明の事項であるとみるべきである。
また、用いた宿主細胞が単にCHO細胞と記載されCHO dhfr-細胞であることは記載されていないが、「遺伝子増幅系」を用いて高発現されたことは明記されている。
本件優先日前にCHO細胞における「遺伝子増幅系」といえば、CHO dhfr-形質転換宿主と発現プラスミド中のdhfr遺伝子との組み合わせを、当業者の誰もが真っ先に思い浮かべるほどに当該dhfr-株を用いる「遺伝子増幅系」は一般的であったばかりか、例えば甲第6号証にも記載されるようにCHO dhfr-細胞はしばしば単にCHO細胞と表記されることがあったといえる。
そして、講演要旨集の限られたスペース中で表記上の省略がやむを得ない事情を考慮すればなおさら、甲第11号証で形質転換宿主としてCHO細胞と記載されていても、実際はCHO dhfr-細胞であったことを当業者は正確に認識するはずである。
してみれば、甲第11号証には、実質的に本件発明1が記載されていると認められるから、本件発明1は特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。

3.「意に反する公知」について
ところで、被請求人は、答弁書第50?52頁において「意に反する公知」の規定が適用されるべきである旨の予備的主張をしている。
新規性の例外規定である特許法第30条において、その第2項に「特許を受ける権利を有する者の意に反して第29条第1項各号の一に該当するに至った発明について、その該当するに至った日から6月以内にその者が特許出願をしたときも、前項と同様とする。」と規定されているので、甲第11号証が本件優先日前に頒布されたことが、本件特許発明者にとっての「意に反して」なされたものであったか否かについて検討する。
乙第13号証及び乙第14号証の記載によれば、講演要旨集である甲第11号証が昭和63年3月10日に刊行されることについては、日本農芸化学会誌の昭和62年9月号及び12月号で学会員に対して、予め繰り返し予告されていたと解されるから、学会員である本件発明者が甲第11号証の頒布日が昭和63年3月10日であると信じていたとしても無理はない。
しかも、乙第15号証によると、前年までは講演要旨集を希望する会員のみへの発送であり甲第11号証がはじめて全会員への発送であったこと、及び一般の会員への発送は郵便局持ち込み日が3月7日?8日で第3種郵便による一斉発送であったことが読み取れるから、甲第11号証が実際に本件発明者の手元に届いたのは3月10日もしくはそれ以降であったと考えられると共に、従来は希望者のみの発送でよいので予告された発送日が守られていた可能性も高かったと考えられる。
そうであるから、一般に刊行物の実際の発行日が刊行物に記載された日付や予告された日付よりも早まる場合があるとしても、上記乙第15号証の記載から、本件発明者の実際の入手時期が3月10日もしくはそれ以降である可能性が高く、かつそれ以前の年の農芸化学会大会講演要旨集入手日が予告通りであった可能性も高いという事情があったといえる以上、本件特許発明者に対しては、甲第11号証の頒布日が自分が実際に入手した日付(例えば3月10日)よりも前である可能性を考慮しなかったからといって、その点をことさら厳しく咎めるべきではない。
そもそも特許法第30条新規性喪失の例外規定が設けられた立法の趣旨は、有用な研究成果を一刻も早く世の中に公開するという研究者本来の使命を果たした研究者に対する救済措置であるともいえるから、上記の点をもって、当該救済措置が受けられないとすればあまりにも酷にすぎるというべきである。
以上のとおりであるから、本件発明1は、本件出願人の意に反して特許法第29条第1項第3号の規定に該当するに至ったといえるので、同法第30条第2項の規定により、同第29条第1項第3号の規定は適用されない。

4.結論:
したがって、この点についての審判請求人の主張は採用しない。

第8:理由D:特許法36条違反/(無効理由3)乃至(無効理由5)

審判請求人は、上記請求項1の「元来付着性である」及び「浮遊撹拌培養に適した形質転換細胞」という文言の意味が定義や説明がないことを指摘し、その意味が不明瞭であると同時に請求項1記載の発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないことを主張しているが、この点は上記第2.2.で述べたように、本件優先日前の技術常識及び本件明細書の記載から充分明確に確定できるものである。
また、審判請求人は、請求項1には、周知技術である「浮遊撹拌培養を継代して行うこと」以外の解決手段が記載されておらず、請求項1記載の発明の必須要件である「培地中に所定濃度の核酸を含有すること」が記載されていない旨も主張しているが、本件発明1は上記第2.2.で述べたとおり、「形質転換CHO dhfr-細胞」に対して「浮遊撹拌培養を継代して行うこと」という周知技術を適用したことを特徴とするものであると解されるから、それ以外の点が記載されていないからといって、格別の記載不備には当たらない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲にも発明の詳細な説明の記載にも、特許法第36条各項の規定を満たしていないとするほどの瑕疵はなく、この点についての審判請求人の主張は採用しない。

第9:むすび:
以上述べたとおりであるから、本件発明1乃至5は、本件優先日前の技術常識を勘案すれば、甲第4号証及び甲第12号証の記載から当業者が容易に想到できたものといえるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2005-08-05 
結審通知日 2005-08-10 
審決日 2005-09-07 
出願番号 特願昭63-170142
審決分類 P 1 113・ 532- Z (C12P)
P 1 113・ 531- Z (C12P)
P 1 113・ 121- Z (C12P)
P 1 113・ 113- Z (C12P)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新見 浩一  
特許庁審判長 佐伯 裕子
特許庁審判官 河野 直樹
種村 慈樹
登録日 1996-11-07 
登録番号 特許第2576200号(P2576200)
発明の名称 生理活性タンパク質の製造法  
代理人 丸山 隆  
代理人 橋口 尚幸  
代理人 飯塚 暁夫  
代理人 牧野 利秋  
代理人 江尻 ひろ子  
代理人 佐貫 伸一  
代理人 川口 嘉之  
代理人 那須 健人  
代理人 増井 和夫  
代理人 尾崎 英男  
代理人 福田 親男  
代理人 深澤 憲広  

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