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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1154638 |
審判番号 | 不服2004-26676 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-12-28 |
確定日 | 2007-03-22 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 98402号「印刷装置とその制御方法及び印刷システム及びコンピュータ可読メモリ」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月28日出願公開、特開平 9-277646〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成8年4月19日の出願であって、平成16年11月29日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月28日付けで本件審判請求がされるとともに、平成17年1月27日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成17年1月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正事項及び補正目的 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を次のように補正することを補正事項に含んでいる。なお、下線部が補正箇所である。 (本件補正前請求項1の記載) 出力手段の解像度が外部装置から送信される画素データの解像度の2倍であった場合に、前記外部装置から送信される画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する変換手段を有する印刷装置であって、 前記外部装置から前記印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モードが指定されたか否かを判定する判定手段と、 前記判定手段によって前記印刷モードが指定されたと判定された場合に、前記外部装置から送信される画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって主走査方向に2倍、 副走査方向に2倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する制御手段と を有することを特徴とする印刷装置。 (本件補正後請求項1の記載) 出力手段の解像度が外部装置から送信される画素データの解像度の2倍であった場合に、前記外部装置から送信される画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する変換手段を有する印刷装置であって、 前記外部装置から前記印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モードが指定されたか否かを判定する判定手段と、 前記判定手段によって前記印刷モードが指定されたと判定された場合には、前記印刷モードが指定されなかった場合に前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信し、当該画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する制御手段と を有することを特徴とする印刷装置。 上記請求項1の補正が、請求項削除(特許法17条の2第4項1号)、誤記の訂正(同項3号)又は明りようでない記載の釈明(同項4号)の何れにも該当しないことは明らかである。上記補正が特許請求の範囲の減縮(同項2号)にも該当しないとすれば、本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反するものとして却下されることになるので、以下では特許請求の範囲の減縮に該当するものとして扱う。そのため、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかも審理対象となる。 2.新規事項追加 「前記印刷モードが指定されたと判定された場合には、前記印刷モードが指定されなかった場合に前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」について検討する。「前記印刷モード」とは、直前記載の「印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モード」のことであり、以下では「省トナーモード」ということがある。 まず、「前記印刷モードが指定されなかった場合に前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」についてであるが、そのようなことは願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、これらを併せて「当初明細書」という。)に記載されていないし、自明の事項でもない。請求人はこの補正の根拠として当初明細書の段落【0083】の記載等をあげるとともに、「前記印刷モードが指定されなかった場合に前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度」は、印刷装置のエンジン解像度である旨主張している。しかし、「印刷装置のエンジン解像度」は、本件補正前後を通じて請求項1冒頭に記載されている「出力手段の解像度」のことであり、同じ意味であるならば、異なる表現をする必要がない。また、当初明細書の段落【0083】には「エンジン解像度とドットデータの展開解像度が等しい場合には、画像信号VDOを画像信号SVDOにそのまま出力」との記載がある(同一記載が段落【0079】にもある。)が、エンジン解像度と等しい解像度の画素データを受信できるからといって、エンジン解像度を超える解像度の画素データを受信できない理由にはならない。そのことは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-20137号公報に「600dpiの記録密度で記録データを作成するホストコンピュータに、解像度が300dpiのレーザプリンタを接続して画像形成を行うようにシステムが構成される場合がある。」(段落【0004】)と記載されていることからも明らかである。したがって、「前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」との記載は、新規事項追加に当たる。 さらに、「前記印刷モードが指定されなかった場合に前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度」がエンジン解像度の意味であるとしても、「前記印刷モードが指定されたと判定された場合には、エンジン解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」することは当初明細書には記載されていないし、自明の事項でもない。 当初明細書には、「指定されたモードが第3のモードである場合に、入力される画素データの解像度と前記出力手段の解像度との比率nに応じて、前記入力画素データの各白画素をn×nの白画素群に、各黒画素をn×nの黒画素群に変換する」(【請求項4】)等の記載があり、ここでいう「第3のモード」は省トナーモードではなく、かつ、比率nを2とした場合(それが実施例でもある。)には、出力手段の解像度(エンジン解像度)に対する2分の1の解像度で外部装置から画素データを受信している。他方、上記段落【0079】及び【0083】にあるとおり、ドットデータの展開解像度がエンジン解像度に等しい場合に、エンジン解像度と同じ解像度で外部装置から画素データを受信している。すなわち、「エンジン解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」するかどうかは、ドットデータの展開解像度とエンジン解像度の関係で定まっているのであり、省トナーモードが指定されたかされなかったによって定まっているのではない。本件補正後の請求項1によれば、ドットデータの展開解像度がエンジン解像度に等しい場合であっても、省トナーモードが指定された場合には「エンジン解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」することになるが、そのようなことは当初明細書からは到底窺い知ることができない。 以上述べたとおり、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反している。 3.独立特許要件欠如その1 (1)本件補正後請求項1記載の「前記印刷モードが指定されなかった場合に前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度」が何であるのか著しく不明確である。請求人が主張するようにエンジン解像度の趣旨であるとすれば、冒頭記載の「出力手段の解像度」と異ならないから、同一表現を採るべきであるのに、わざわざ不明確な表現をしているのであるから、本件補正後請求項1の記載は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない(請求人主張と異なる意味であれば、明らかに新規事項追加になる。)。 (2)補正発明は「印刷装置」の発明であり、「前記印刷モードが指定されたと判定された場合には、前記印刷モードが指定されなかった場合に前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」とある以上、省トナーモード指定時の受信解像度を印刷装置が決定すると解さなければならない。しかし、画素データの解像度は、通常送信する側の外部装置が決する事項であり、どのようにして印刷装置が決定した上で画素データの送受信を行うのか理解しがたい(特許法36条6項2号違反)と同時に、発明の詳細な説明にはそれを可能ならしめることが記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者が実施可能な程度に記載されていない(平成14年改正前特許法36条4項違反)。 さらに、2.で述べたとおり、補正発明においては、ドットデータの展開解像度がエンジン解像度に等しい場合であっても、省トナーモードが指定された場合には「エンジン解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信」することになり、普通に考えれば、外部装置は展開解像度を1/2に変換してから送信すると解すべきであるが、印刷装置側で「画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する変換手段」により解像度を2倍にすることを考慮すれば、そのようにすることの技術的意義を理解することができない(平成14年改正前特許法36条4項の委任省令要件違反)。 (3)以上の理由により、本件補正後の明細書は平成14年改正前特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていないので、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.独立特許要件欠如その2 (1)補正発明の認定 補正発明は本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであるが、請求項1には前項で述べた記載不備があるため、請求人主張を考慮した上で、「前記印刷装置が受信可能な一番高い解像度」を「出力手段の解像度」と解釈し、「受信可能」とある以上、補正発明は出力手段の解像度に等しい解像度で外部装置から画素データを受信可能な印刷装置と解する。 また、出力手段の解像度に対する2分の1の解像度で外部装置から画素データを受信する条件は、外部装置が出力手段の解像度に対する2分の1の解像度で送信することであり、その場合に省トナーモードの指定があるかどうかを判定するものと解する。 したがって、補正発明を次のとおり認定する。 「出力手段の解像度が外部装置から送信される画素データの解像度の2倍であった場合に、前記外部装置から送信される画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する変換手段を有し、前記出力手段の解像度に等しい解像度で前記外部装置から画素データを受信することも可能な印刷装置であって、 前記外部装置から前記印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モードが指定されたか否かを判定する判定手段と、 前記出力手段の解像度に対する2分の1の解像度で前記外部装置から画素データを受信し、前記判定手段によって前記印刷モードが指定されたと判定された場合には、当該画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する制御手段と を有することを特徴とする印刷装置。」 (2)引用刊行物の記載事項 本件出願前に頒布された特開平5-77484号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?カの記載が図示とともにある。 ア.「ホストコンピュータから送信されたデータに基づく画像情報を画像情報発生手段で作成し、画像情報変換手段で変換して、プリンタエンジンにて出力するレーザプリンタにおいて、前記画像情報変換手段に解像度変換機能と、単純解像度変換機能と、解像度未変換機能とを選択可能に設けたことを特徴とするレーザプリンタ。」(【請求項1】) イ.「従来・・・画像情報発生手段で作成された低解像度の画像情報を高解像度のプリンタエンジンで出力する場合には、レーザプリンタの画像情報発生手段とプリンタエンジンの間に低解像度の画像情報を高解像度用の画像情報に変換する画像情報変換手段を設けていた。この画像情報変換手段によって、プリンタエンジンでは高解像度の印字が得られるというものである。」(段落【0005】) ウ.「従来の画像情報変換手段は解像度を変換する機能しか設けられていなかったため、600dpi相当の画像情報が入力された場合に出力が600dpiに限定されていれば印字できない欠点があった。」(段落【0006】) エ.「レーザプリンタ1はホストコンピュータ2と接続されており、画像情報発生手段3、画像情報変換手段4、プリンタエンジン5、コントローラ6が設けられている。また、コントローラ6は外部の操作部7と接続されており、ここから入力されたモード信号を画像情報変換手段4に送信する。画像情報変換手段4は解像度変換機能8、単純解像度変換機能9、解像度未変換機能10を有し、コントーラ6から送信されたモード信号によってそれらを選択し実行する。レーザプリンタ1はホストコンピュータ2から送信されたデータに基づいて画像情報発生手段3で画像情報を作成し、画像情報変換手段4で選択された機能により画像情報を変換してプリンタエンジン5より出力する。」(段落【0010】) オ.「図3、図4、図5はそれぞれ解像度変換機能8、単純解像度変換機能9、解像度未変換機能10の説明図である。解像度変換機能8は、画像情報発生手段3で作成された300dpiの画像情報を600dpiの解像度に変換する機能であり、文字等の出力時に有効で、よりなめらかな画像を得ることができる。この解像度変換機能8については、USP4,847,641に詳しく述べられている。単純解像度変換機能9は、画像情報発生手段3で作成された300dpiの画像情報をそのままの形状、密度でドット数のみ600dpiに変換する機能である。これは、写真等のイメージを出力する場合に誤った変換を行うことを防止する。解像度未変換機能10は、画像情報発生手段3において作成された画像情報が、既に600dpiのものである場合、変換を行わずに出力する機能である。」(段落【0012】) カ.「この実施例では操作部7からの入力によって変換機能を選択したが、ホストコンピュータ2から送信されるデータによって自動的に変換機能を選択することも可能である。」(段落【0014】) (3)引用例1記載の発明の認定 引用例1記載の実施例(記載エ,オ)において、プリンタエンジンの解像度が600dpiであることは明らかである。 記載エの「単純解像度変換機能」は、【図4】を参酌すれば、画像情報発生手段3で作成された画像情報に対して、1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換し、1ドットの白点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの白点に変換する機能である。同じく「解像度変換機能」は、【図3】を参酌すれば、画像情報発生手段3で作成された画像情報に対して、1ドットを主走査方向に2倍、副走査方向に2倍した上で、4ドットを適宜黒点と白点に変換する機能である。そして、「解像度変換機能」及び「単純解像度変換機能」は、画像情報が300dpiの場合に選択実行される機能であり、画像情報が600dpiの場合には「解像度未変換機能」が選択実行されるものである。 したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「ホストコンピュータと接続されたレーザプリンタであって、 画像情報発生手段、画像情報変換手段及びプリンタエンジンを有し、 前記プリンタエンジンの解像度は600dpiであり、 前記画像情報発生手段は、ホストコンピュータから送信されたデータに基づいて画像情報を作成するものであり、 前記画像情報変換手段は、ホストコンピュータから送信されるデータに従い、解像度変換機能、単純解像度変換機能又は解像度未変換機能を選択的に実行するものであり、 前記単純解像度変換機能は300dpiの前記画像情報に対して、1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換し、1ドットの白点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの白点に変換する機能であり、 前記解像度変換機能は300dpiの前記画像情報に対して、1ドットを主走査方向に2倍、副走査方向に2倍した上で、4ドットを適宜黒点と白点に変換する機能であり、 前記画像情報が600dpiの場合には、解像度未変換機能が選択実行されるレーザプリンタ。」(以下「引用発明1」という。) (4)補正発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定 引用発明1の「プリンタエンジン」、「画像情報」及び「レーザプリンタ」は、補正発明の「出力手段」、「画素データ」及び「印刷装置」にそれぞれ相当し(ただし、「画素データ」が「外部装置から送信される」かどうかは相違点として扱う。)、引用発明における「出力手段の解像度」は600dpiであるから、「300dpiの前記画像情報に対して、1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換」する「単純解像度変換機能」は、補正発明の「「出力手段の解像度が外部装置から送信される画素データの解像度の2倍であった場合に、前記外部装置から送信される画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換」と異ならず、引用発明1は補正発明の「変換手段」を有すると認める。また、引用発明1では「画像情報が600dpiの場合」にも印刷可能であるから、画素データが出力手段の解像度に等しい解像度となるようなデータを「外部装置」(引用発明1の「ホストコンピュータ」がこれに相当)から受信することが可能な印刷装置である点において、補正発明と引用発明1は一致する。 引用発明1の「解像度変換機能」と補正発明の「印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モード」(省トナーモード)とは、画素データの1ドットを変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットのうち、適宜ドットを黒点及び白点とする限度で一致し、以下ではそのようなモードを「特定モード」ということにする。引用発明1は、「特定モードが指定されたか否かを判定する判定手段」を有し、「出力手段の解像度に対する2分の1の解像度の画素データに対して、前記判定手段によって特定モードが指定されたと判定された場合には、当該画素データの1ドットを変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットのうち、適宜ドットを黒点及び白点とするように前記変換手段を制御する制御手段」を有するものと認めることができ、この限度において補正発明と一致する。なお、引用発明1においては、「主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドット」作成後に「適宜ドットを黒点及び白点」にしていないとの主張があるかもしれないが、後記引用例2に「ビデオ信号変換回路309に入力した各ラインのVDO信号は、図7に示すように、注目画素Mに対する画像信号に対して密度4倍にして信号M1,M2,M3およびM4に変換する。」(段落【0077】)及び「この信号パターンとVDO信号を、図6のアンド(AND)回路403でAND処理を行い」(段落【0079】)とあるように、いったん4つの黒ドット(引用例2記載の「M1,M2,M3およびM4」)を作成してから、「適宜ドットを黒点及び白点」にすることは設計事項にすぎないから、ここでは一致点として扱う。相違点として認定しても、上記のとおり設計事項程度の微差にすぎないから、独立特許要件の判断には影響を及ぼさない。 したがって、補正発明と引用発明1とは、 「出力手段の解像度が画素データの解像度の2倍であった場合に、画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する変換手段を有し、画素データが前記出力手段の解像度に等しい解像度となるようなデータを外部装置から受信することが可能な印刷装置であって、 前記外部装置から特定モードが指定されたか否かを判定する判定手段と、 前記出力手段の解像度に対する2分の1の解像度の画素データに対して、前記判定手段によって前記特定モードが指定されたと判定された場合には、当該画素データの1ドットを変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットのうち、適宜ドットを黒点及び白点とするように前記変換手段を制御する制御手段 を有する印刷装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 〈相違点1〉「画素データ」につき、補正発明ではそれが「外部装置から送信される」のに対し、引用発明1ではホストコンピュータから送信されたデータに基づいて画像情報発生手段にて作成される点。この相違点には、補正発明が「出力手段の解像度に等しい解像度で前記外部装置から画素データを受信することも可能」としていることも含まれる。 〈相違点2〉「特定モード」につき、補正発明が「印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モード」とし、「画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する」としているのに対し、引用発明1の「解像度変換機能」が補正発明の上記発明特定事項に該当するとはいえない点。 (5)相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断 〈相違点1について〉 前掲特開平8-20137号公報には、「ホストコンピュータにおいて作成される画像データの記録密度(第1記録密度)が600dpi、前記レーザプリンタでの副走査方向の記録密度(第2記録密度)が300dpiにそれぞれ設定されているものとする。」(段落【0034】)、「レーザプリンタ30は、・・・画像情報変換手段としての変換制御部35が設けられている。」(段落【0035】)及び「この変換制御部35は、ホストコンピュータ32からコードデータを含む画像データが送信されてくると、これをドットデータに変換する機能を有している。」(段落【0036】)との各記載がある。そして、上記文献には、「ドットデータ」がレーザプリンタの変換制御部において作成されるにもかかわらず、「ホストコンピュータにおいて作成される画像データの記録密度(第1記録密度)が600dpi」と表現しているのだから、補正発明の「画素データ」が上記記載の「ドットデータ」に相当しなければならないとの決定的理由はなく、上記記載の「ホストコンピュータにおいて作成される画像データ」であっても差し支えないと解するべきであり、その場合には相違点1は実質的には相違点でなくなる。 仮に、補正発明の「画素データ」が上記記載の「ドットデータ」に相当するものに限定されると解しても、要は引用発明1における「画像情報発生手段」を印刷装置側に設けるか、外部装置側に設けるかだけの問題であり、外部装置から印刷装置に対してドットデータ(ビットマップデータ)を送信することは例を挙げるまでもなく周知であるから、引用発明1の「画像情報発生手段」をホストコンピュータに移設することは設計事項というべきである。そして、そのようにした場合には、600dpiの画像情報をホストコンピュータから受信しなければならないから、「出力手段の解像度に等しい解像度で前記外部装置から画素データを受信することも可能」となることは必然である。 以上のとおり、相違点1は実質的相違点でないか、せいぜい設計事項にすぎない。 〈相違点2について〉 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-228005号公報(以下「引用例2」という。)には、「ビデオ信号変換回路309に入力した各ラインのVDO信号は、図7に示すように、注目画素Mに対する画像信号に対して密度4倍にして信号M1,M2,M3およびM4に変換する。」(段落【0077】)、「パターン発生回路402からのパターン信号とVDO信号のANDを取ることによって、白点のドットはそのまま、黒点のドットは各パターンに対応して図9,図10,図11,図12に示すようにSVDO信号に出力される。」(段落【0080】)及び「本実施例においては、n=4として記しており、図9は、通常の印字出力の場合を示している。これに対して、図10は1ドット(黒点)を75%に、図11は50%に、図12は25%にトナーの消費を抑えることができる。」(段落【0081】)との各記載がある。 引用例2記載の「VDO信号」は引用発明1の「画像情報」に相当するものであり、密度を4倍にしている点でも一致する。そして、引用例2には、VDO信号の個々の画素を4倍にした後、VDO信号の黒点画素に対して、4個のドットのうち1ドット(【図12】)、2ドット(【図11】)又は3ドット(【図10】)を黒点にすることによりトナーの消費を抑えることができる旨記載されており、密度を4倍にした4ドットを選択的に黒点又は白点にする点では、引用発明1の「解像度変換機能」と異ならず、引用例2記載の「通常の印字出力」(【図9】)は引用発明1の「単純解像度変換機能」と異ならない。ここで、密度を4倍にするに当たり、引用例2では「主走査方向に2倍、副走査方向に2倍」しているのではなく「主走査方向に4倍」にしているのであるが、そのようなことは、4倍にしてから、どのドットを黒点とし、どのドットを白点とするかとは関係がない。 そうである以上、引用発明1において、引用例2記載の技術同様「トナーの消費を抑えること」を目的(引用発明1は「レーザプリンタ」であるから、(2)では摘記しなかったけれども、トナーを使用するプリンタである。)として、「4ドットを適宜黒点と白点に変換する」に当たり、画像情報が黒点の場合に「1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように」にすること、換言すれば「画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する」ことは当業者にとって想到容易であり、そのように制御するのであれば、「特定モード」を「印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モード」と称することができる。 したがって、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 〈補正発明の独立特許要件の判断〉 相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することはせいぜい設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、補正発明は引用発明1及び引用例2記載の技術(並びに周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 [補正の却下の決定のむすび] 以上によれば、本件補正は特許法17条の2第3項の規定及び同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年4月13日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。同記載は「第2[理由]1」において「本件補正前請求項1の記載」として示したものであるが、ここに再掲しておく。 「出力手段の解像度が外部装置から送信される画素データの解像度の2倍であった場合に、前記外部装置から送信される画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する変換手段を有する印刷装置であって、 前記外部装置から前記印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モードが指定されたか否かを判定する判定手段と、 前記判定手段によって前記印刷モードが指定されたと判定された場合に、前記外部装置から送信される画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって主走査方向に2倍、副走査方向に2倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する制御手段と を有することを特徴とする印刷装置。」 2.引用例2の記載事項 引用例2には、第2で摘記した記載を含め、以下のキ?ナの記載又は図示がある。 キ.「ホストコンピュータから送信された印字データを電子写真方式により印刷する印刷装置において、 記録濃度の変更を指示する指示手段と、 当該指示に応じて画素自体の記録濃度を予め定めた記録濃度に変更する記録制御手段とを具えたことを特徴とする印刷装置。」(【請求項1】 ク.「従来この種の印刷装置においては、ホストコンピュータ上で作成した文章や図形・イメージ等の印字データを、試し印刷し、印字出力のレイアウト等を確認するような場合でも、常に、印刷装置は、最適のトナー濃度(印字濃度)で印字出力を行ってしまう。ところが、このような場合には、ユーザにとって可視的にレイアウト等を確認可能な印字出力を行うだけで充分であるのに対し、印刷装置側では好適な画質を提供とするあまりトナーを本来の目的以上に消費してしまうことになる。」(段落【0003】) ケ.「また、従来、上記の問題を解決するために、印刷装置内にドラフトモードを設けるものもあるが、この場合には、・・・ビデオ信号の間引きを行うのが通常である。・・・しかし、この場合には、間引き方法によってはレイアウト確認に支障をきたす場合がある。 例えば、単純間引きを行うと、1ドット幅のような細い線が欠落して印字されない場合がある。」(段落【0003】?【0004】) コ.「【作用】請求項1の発明は、画素の記録濃度を変更することにより細い線などのドットの欠落を阻止しつつトナー材の消費を減少する。」(段落【0015】) サ.「図2および図3に、レーザプリンタの一般的な構成を示す。ここで、1101は、印刷装置に各種印字データを送信するためのホストコンピュータを表わす。1102は、レーザービームを使用したレーザービームプリンタを示している。1103は、コントローラ部を表し、ホストコンピュータ1101から送信された印字データを受け取り、この印字データに基づいてビットマップデータ(ドット情報)を生成し、印刷機構部1104に対して順次ドット情報を送信する。」(段落【0036】) シ.「VDO信号は、プリンタエンジン312に対してコントローラ300から送出されるビデオ信号であって、印字する画像データを送信するための信号である。本信号は、後述するVCLK信号に同期して送出される。プリンタエンジン312は、VDO信号が「真」の場合に黒画像(黒ドット)、また、「偽」の場合に白画像(白ドット)として印字する。この実施例ではVDO信号が本発明のレーザービームを点灯させるパルス信号として機能する。」(段落【0054】) ス.「303はホストコンピュータより送られる印字データに基づいて実際の印字のためのビットマップデータを発生する画像データ発生部である。また、304は図1のパネル操作手段106に対応する操作パネルで、オペレータはここを操作することによってプリンタエンジン312が有する各種機能やモードを選択することができる。305は1ページ分のビットマップデータ(画像データ)を格納する画像メモリであり、図1の印字データ展開手段103として動作する。」(段落【0068】) セ.「309は本発明に関わるビデオ信号変換回路(本発明の記録制御手段として動作する)であり、さらに図1のビデオ信号変換手段として動作する。変換回路309ではプリンタコントローラ300から送出される画像信号VDOを転送クロックVCLKによって受け、これを主走査方向の密度がn倍(当実施例では4倍)になるように画像信号VDOを、画像信号SVDOに変換してプリンタエンジン312に送出する処理を行う。この時、画像信号VDOをどのように変調するかは、プリンタインタフェース回路308とビデオ信号変換回路309の間の制御信号311によって規定される。」(段落【0070】) ソ.「ビデオ信号変換回路309に入力した各ラインのVDO信号は、図7に示すように、注目画素Mに対する画像信号に対して密度4倍にして信号M1,M2,M3およびM4に変換する。」(段落【0077】) タ.「ビデオ信号変換回路309は、制御信号311を通して、プリンタコントローラ300から指示されたビデオ信号変調の度合いを情報を、図4の制御レジスタ401に格納し、図6の402に示すパターン発生回路が、制御レジスタ401の情報に基づき、水平同期信号EBDに同期してVDO信号の各ドット情報に対して、図7、図8に示すような信号パターンを発生させる。これによりレーザビームの走査線密度、換言すると1画素あたりの大きさが記録密度変更前よりも小さくなる。」(段落【0078】) チ.「この信号パターンとVDO信号を、図6のアンド(AND)回路403でAND処理を行い、SVDO信号としてプリンタエンジン312に送出する。ホストコンピュータからのコマンドによる指示を受けた場合はCPU302のコマンドの解析結果によりビデオ信号変調の度合い情報が得られる。」(段落【0079】) ツ.「パターン発生回路402からのパターン信号とVDO信号のANDを取ることによって、白点のドットはそのまま、黒点のドットは各パターンに対応して図9,図10,図11,図12に示すようにSVDO信号に出力される。」(段落【0080】) テ.「本実施例においては、n=4として記しており、図9は、通常の印字出力の場合を示している。これに対して、図10は1ドット(黒点)を75%に、図11は50%に、図12は25%にトナーの消費を抑えることができる。」(段落【0081】) ト.「本実施例では、図13(c)では升目の大きさで濃度を示すように、各ドットの濃度は見た目上、ビデオ信号の変調の度合い情報に従って薄くなるが、元データに対して1ドットも欠落することなく印字出力される。」(段落【0084】) ナ.【図5】には、「プリンタコントローラ」から「ビデオ信号変換回路」に「VDO信号」が送信され、「ビデオ信号変換回路」から「プリンタエンジン」に「SVDO信号」が送信されることが図示されている。 3.引用例2記載の発明の認定 記載ツの「パターン信号」を定めることが、記載キの「記録濃度の変更を指示」に該当し、記載チによれば「ホストコンピュータからのコマンドによる指示」により「パターン信号」が定まってもよい。そして、n=4の場合に、「パターン信号」として例示されているのは、VDO信号が黒点ドットである場合、4区間すべてを黒点とする(【図9】)、4区間のうち1区間を白点とする(【図10】)、4区間のうち2区間を白点とする(【図11】)、4区間のうち3区間を白点とする(【図12】)パターンである。以下、白点数に応じて「パターン0」?「パターン3」ということにする。パターン0は、記載ソにおいて「密度4倍に」したVDO信号のすべてに対して論理1となるパターンであり、パターンk(kは1?3)は、「密度4倍に」したVDO信号の個々の区間のうちk個を論理0とするパターンである(【図8】を参照。)。 したがって、引用例2には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「ホストコンピュータから送信された印字データを電子写真方式により印刷するレーザプリンタであって、 プリンタコントローラ、ビデオ信号変換回路及びプリンタエンジンを有し、 前記プリンタコントローラは前記ホストコンピュータから送信された印字データに基づき、画像信号であるVDO信号を前記ビデオ信号変換回路に送信し、 前記ビデオ信号変換回路にはパターン発生回路が設けられており、各ラインのVDO信号を密度4倍に変換するとともに、前記パターン発生回路からのパターン信号と前記密度4倍に変換した信号とのAND処理を行ったSVDO信号を前記プリンタエンジンに送信するものであり、 前記パターン発生回路からの前記パターン信号は、前記ホストコンピュータからのコマンドによる指示により定まるものであり、密度4倍に変換した信号のすべてに対して論理1となるパターン0、密度4倍にした信号の個々の区間のうちk個を論理0とするパターンk(kは1?3)のいずれかであるレーザプリンタ。」(以下「引用発明2」という。) 4.本願発明と引用発明2との一致点及び相違点の認定 引用発明2において、密度4倍に変換したSVDO信号の区間の数は、VDO信号のドット数の4倍であり、個々の区間を独立に白点又は黒点にできるから、SVDO信号のドット数は実質的にはVDO信号のドット数の4倍と認めることができる。引用発明2の「プリンタエンジン」は本願発明の「出力手段」に相当するものであり、その主走査方向の解像度は「SVDO信号」の解像度と同じであって、「VDO信号」の4倍である。また、プリンタエンジの副走査方向の解像度は「VDO信号」と同じであるから、主走査方向及び副走査方向の解像度の積は、「VDO信号」の4倍である。そして、引用発明の「VDO信号」は本願発明の「画素データ」に相当するものであり(ただし、「外部装置から送信される」かどうかは相違点として扱う。)、本願発明の「変換手段」においては「1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換」しているから、主走査方向及び副走査方向の解像度の積としてみれば、引用発明2の「ビデオ信号変換回路」のうち、「各ラインのVDO信号を密度4倍に変換する」ことを司る部分と本願発明の「変換手段」とは、両方向の解像度の積を4倍に変換する手段である点で一致する。 引用発明2において、「パターンk」が「ホストコンピュータ」(本願発明の「外部装置」に相当)からのコマンドにより指示されれば、「パターン0」よりもトナー消費量が抑えられる(記載テのとおりである。)から、パターンkを指示することは本願発明の「前記外部装置から前記印刷装置(審決注;引用発明2の「レーザプリンタ」は印刷装置である。)のトナー消費量を抑えるための印刷モードが指定」と異ならず、引用発明2は「印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モードが指定されたか否かを判定する判定手段」を有するものと認める。 引用発明2において、「パターンk」が選択される場合が本願発明の「前記判定手段によって前記印刷モードが指定されたと判定された場合」に相当し、その場合「画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって4倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する制御手段」を有する(引用発明2の「ビデオ信号変換回路」のうち、「パターン発生回路」及び「パターン発生回路からのパターン信号と前記密度4倍に変換した信号とのAND処理」を行う部分が「制御手段」に相当する。)点において、引用発明2と本願発明は一致する。 したがって、本願発明と引用発明2は、 「画素データの1ドットの黒点を4ドットの黒点に変換する変換手段を有する印刷装置であって、 前記外部装置から前記印刷装置のトナー消費量を抑えるための印刷モードが指定されたか否かを判定する判定手段と、 前記判定手段によって前記印刷モードが指定されたと判定された場合に、画素データの1ドットの黒点を前記変換手段によって4倍された4ドットの黒点のうち、1ドット又は2ドット又は3ドットが白点になるように前記変換手段を制御する制御手段と を有する印刷装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。 〈相違点3〉「画素データ」につき、本願発明ではそれが「外部装置から送信される」のに対し、引用発明2ではホストコンピュータから送信された印字データに基づいてプリンタコントローラにて作成される点。 〈相違点4〉変換手段につき、本願発明が「出力手段の解像度が画素データの解像度の2倍であった場合に、画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する変換手段」としているのに対し、引用発明2では「各ラインのVDO信号を密度4倍に変換」している点。 5.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 (1)相違点3について 相違点3は、補正発明と引用発明1を対比した際の相違点1と実質的に同じであり、相違点1に係る補正発明の構成を採用することがせいぜい設計事項であることは「第2[理由]4(5)」で述べたとおりである。同様の理由により、相違点3に係る本願発明の構成を採用することもせいぜい設計事項である。 (2)相違点4について 画素データのドットを4倍にする点においては、本願発明と引用発明2は一致しており、4倍にするに際し、前者では2×2倍にしているのに対し、後者では4×1倍にしている。 引用発明2は、従来技術において「単純間引きを行うと、1ドット幅のような細い線が欠落して印字されない場合がある。」(記載ケ)との問題があったため、これを解決し「細い線などのドットの欠落を阻止しつつトナー材の消費を減少する。」(記載コ)及び「各ドットの濃度は見た目上、ビデオ信号の変調の度合い情報に従って薄くなるが、元データに対して1ドットも欠落することなく印字出力される。」(記載ト)との作用効果を奏するものであるが、その作用効果は4×1倍でなければ奏しない作用効果ではなく、1つの黒点ドットを4倍にし、そのうちの1?3ドットを白点にしたことによる作用効果であることは自明である。 そして、画素データのドットを4倍にするということは解像度変換を行うことであり、解像度変換に際しては、主走査方向のみ変換するのではなく、主走査方向と副走査方向を均等に変換することは、引用例1のほか特開平6-315083号公報、特開平3-38356号公報及び実願昭62-108462号(実開昭64-13331号)のマイクロフィルムに見られるように周知である。 そうであれば、引用発明2において、画素データのドットを4倍にするに当たり、4×1倍に代えて2×2倍を採用すること、すなわち「画素データの1ドットの黒点を主走査方向に2倍、副走査方向に2倍して4ドットの黒点に変換する」ことは当業者にとって想到容易というべきである。また、そのような変更を行えば、「出力手段の解像度が画素データの解像度の2倍」に該当するから、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 (3)本願発明の進歩性の判断 相違点3,4に係る本願発明の構成を採用することはせいぜい設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-17 |
結審通知日 | 2007-01-22 |
審決日 | 2007-02-02 |
出願番号 | 特願平8-98402 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41J)
P 1 8・ 537- Z (B41J) P 1 8・ 561- Z (B41J) P 1 8・ 121- Z (B41J) P 1 8・ 536- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 湯本 照基 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
長島 和子 尾崎 俊彦 |
発明の名称 | 印刷装置とその制御方法及び印刷システム及びコンピュータ可読メモリ |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康弘 |