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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1155249
審判番号 不服2004-12801  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-22 
確定日 2007-04-06 
事件の表示 特願2001- 26033「ボールナット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月27日出願公開、特開2002- 89652〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【一】 手続の経緯
本願は、平成13年2月1日(パリ条約による優先権主張;2000年9月1日、台湾)の出願であって、平成16年3月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合に該当する明細書についての手続補正がなされたものである。

【二】平成16年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年6月22日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】 スクリューリングと、外殻とを備え、
前記スクリューリングは中空状の金属材料で形成され、内周部の表面に螺旋溝が設けられ、前記螺旋溝はボールがローリング可能な状態で保持可能であり、
前記外殻はプラスチック材料で形成され、前記スクリューリングの外側を被覆するとともに前記スクリューリングと接合して固定され、 前記外殻と前記螺旋溝とは、射出成形または超音波による粘着によって接合され、 前記スクリューリングには、前記螺旋溝に沿って逃し溝が形成され、前記外殻には前記螺旋溝に沿って前記逃し溝に深く進入する出張りが形成され、前記ボールが前記螺旋溝に沿って持続して回流することを規制するとともに、前記出張りに設けられたボールガイド面で前記ボールの循環回流を案内することを特徴とするボールナット。
【請求項2】 前記外殻の外周縁部にはリターントラフが形成され、前記外殻にはリターン押金が固定配置され、前記ボールを無限回流運動可能にしていることを特徴とする請求項1に記載のボールナット。」
と補正された。(なお、下線は、請求人が附したものであって、補正箇所を示すものである。)
なお、上記請求項1の記載中の「前記外殻と前記螺旋溝とは、射出成形または超音波による粘着によって接合され」は、同項記載の「スクリューリングは……、内周部の表面に螺旋溝が設けられ」、「前記外殻は……、前記スクリューリングの外側を被覆するとともに前記スクリューリングと接合して固定され」を参照すると、「前記外殻と前記スクリューリングとは、射出成形または超音波による粘着によって接合され」の誤記であることは明らかと認められる。
上記補正は、請求項1において、「出張り」について、「前記逃し溝に深く進入する」を「前記螺旋溝に沿って前記逃し溝に深く進入する」と限定し、また、「前記ボールを回流循環可能している」を「前記ボールが前記螺旋溝に沿って持続して回流することを規制するとともに、前記出張りに設けられたボールガイド面で前記ボールの循環回流を案内する」と限定するものと認められる。
また、上記補正は、請求項1において、「外殻」と「スクリューリング」との「接合」及び「固定」について、「前記外殻はプラスチック材料で形成され、前記スクリューリングの外側を被覆するとともに前記スクリューリングと接合して固定され、前記外殻と前記螺旋溝とは、射出成形または超音波による粘着によって接合され」としているが、この事項は、上記補正前の「前記外殻はプラスチック材料で形成され、前記スクリューリングの外側を被覆し、射出成形または超音波による粘着によって前記スクリューリングと接合して固定され」と比較して内容が変更されたものとは認められない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である「特開昭53-16166号公報」(以下、「刊行物1」という。)、「特開平9-4690号公報」(以下、「刊行物2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されていると認める。

(1)刊行物1
〔あ〕「第1図に示すナツト・ネジ式接手1は、相互に結合された2個の部材より成り、その一方は長手部材2で、実質的に半円形断面の螺線溝4を構成する単一ネジ山3を持つ堅牢なネジより成り、他方は管状部材5で、ネジ2が半径方向に遊隙をもつて貫通している。管状部材5は相互に固定された同軸管6および7より成り、前者が後者の内側に配置されている。管6は溝4と等ピツチで実質的に半円形断面の螺線溝8を内面に形成するように整形された焼入鋼板製を可とする。管6の外面の螺線状突条は溝8に対応し、管7の内面に形成された螺線溝10に嵌合している。管7は強化プラスチツクまたは焼結鋼製を可とし、その一端に複数個の半径方向凹陥11(1個のみ図示)を有し、それぞれに管6の放射状外方突起12が嵌入している。突起12は剪断および折曲によつて形成するを可とし、管6、7を軸方向および円周方向に固定する働きをしている。」(2頁右上欄1?18行参照)
〔い〕「螺線溝4と8とは互いに対向配置され、部材2と5との間に間挿された複数個の球体の螺線状転動路13(第3図)を形成している。これらの球体は上記部材2および5が確実に同軸になり、その一方の回転運動を他方へ並進運動におよびこの反対に球体直径の関数である伝達比で変換するように配置されている。」(2頁右上欄19行?左下欄5行参照)
〔う〕「ネジ2、33、37のどれでも管状部材5の他に第10図に示すような管状部材40と組合せることができ、第10図では例としてネジ2との組合せが示されている。管状部材40は外管28を欠き、管6、7だけから成つている。」(3頁右上欄11?15行参照)
〔え〕「さらに管6は還流路16を欠き、還流路はそれぞれ隣接する2巻きの溝8だけを抱き込んだ複数個(内1個を図示)の還流路41に分割されている。このために管6には複数個(内1個を図示)の実質的に軸方向の孔または開口42が設けられ、これがそれぞれ軸方向に延びて2巻きの隣接溝8を抱き込み、管7の内面に形成された対応する半径方向の凹溝43と合致している。各凹溝43の底面は彎曲し、これにそつて球体14が溝8の1目上の一点からその前の目の対応点まで転動して移動するようになつている。」(3頁右上欄15行?左下欄5行参照)
〔お〕「球体14を凹溝43内に押し込むために、各凹溝は管7によつて形成された突起より成り、管7から管6の各開口42を通つて内側へネジ2に向つて突出する偏向素子44により前方を限られている。」(3頁左下欄5?9行参照)
〔か〕「還流路43は還流路16の場合のように管6の開口42から突出する突起(図示せず)を有する複合中子(図示せず)を管6内に挿入することにより管6上に管7を鋳造する間に形成することもできる。」(3頁左下欄10?13行参照)
〔き〕「螺線路13上の相離れた2点が、管7の外面に形成された凹溝16より成り、管7の軸と所定の角を成す平面に沿つて延びる実質的にU字形の還流路15によつて接続されている。この凹溝16は実質的に正方形断面を有し、その両端がそれぞれ管6に形成された透孔17(第3図)と連通し、球体14が転動路13から還流路15へおよびその逆へ通過し得るようになつている。この球体14の一方の径路から透孔17を通つて他方の径路への通過は、管6から転動路13の内側へ突出した屈折板18によつて確実化されている。」(2頁左下欄6?16行参照)
等の記載があり、併せて特に第10図を参照すると、刊行物1には、
“管6と、管7とを備え、
前記管6は中空状の焼入鋼板で形成され、内周部の表面に螺線溝8が設けられ、前記螺線溝8は球体14がローリング可能な状態で保持可能であり、
前記管7は、強化プラスチツクで形成され、前記管6の外側を被覆するとともに前記管6と嵌合し、半径方向凹陥11に前記管6の放射状外方突起12が嵌入して前記管6に固定され、
前記管6には、隣接する2巻きの前記螺線溝8を抱き込む実質的に軸方向の開口42が形成され、前記管7には前記管6の開口42を通つて管6の内面より内側に向つて突出する偏向素子44が形成されると共に、前記開口42と合致する凹溝43が形成され、前記偏向素子44により前記球体14が前記螺線溝8に沿って持続して回流することを規制するとともに、前記偏向素子44の前記凹溝43に連なる面で前記球体14の循環回流を案内するナツト・ネジ式接手の管状部材”
の発明が記載されていると認められる。

(2)刊行物2
〔く〕「図1?図7を用いて、本発明のボールねじ装置の第1実施例の説明をする。図1はボールねじ用ナット2にボールねじ軸1を差し込んだボールねじ装置を示し、図2はボールねじ用ナット2を示し、図3?図7はボールねじ用ナット2の部品を示す。ボールねじ用ナット2には、内側にバルジ加工、ロストワックス成形、転造成形等により製造された薄肉円筒状の金属製ボール転走レース6があり、図4(b)に示すように、ボール転走レース6の内孔にはボール転走溝7が形成され、」(段落【0011】、7頁11欄19?27行参照)
〔け〕「図3に示すように、ボール転走レース6の外側に合成樹脂製で略円筒状の外側保持部材38が一体形成され、ボール転走レース6と外側保持部材38とは強固に固定されている。外側保持部材38の外周部には中心軸線と平行に第1戻し通路18及び第2戻し通路19が形成され、第1戻し通路18と第2戻し通路19とは中心軸線に対して対称な位置にある。ボール転走レース6と外側保持部材38とからなる一体成形体27の両端面には、例えば図3(a),(c) に示すように、第1戻し通路18・第2戻し通路19の端部から斜め軸心方向に向かう第1案内溝14,14'・第2案内溝15,15'がそれぞれ形成される。」(段落【0012】、7頁11欄42行?12欄2行参照)
〔こ〕「本発明の第1実施例のボールねじ装置の製造方法について説明する。図8に示す金型・中子を用いて、射出成形、ダイカスト、圧縮成形、トランスファ成形等の方法により一体成形体27を製造する。」(段落【0016】、8頁14欄4?7行参照)
等の記載があり、併せて特に第1?8図を参照すると、刊行物2には、
“金属製ボール転走レース6と該ボール転走レース6の外側に形成される合成樹脂製の外側保持部材38とを備えるボールねじ用ナットにおいて、前記外側保持部材38と前記金属製ボール転走レース6とが射出成形によって接合されて一体成形体27とされたボールねじ用ナット”
が記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)上記刊行物1に記載された発明の「ナツト・ネジ式接手の管状部材」は「ボールナット」であり、前述のとおり、請求項1記載中の「前記外殻と前記螺旋溝とは、射出成形または超音波による粘着によって接合され」を、「前記外殻と前記スクリューリングとは、射出成形または超音波による粘着によって接合され」の誤記と認めて、本願補正発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者の「管6」が前者の「スクリューリング」に相当し、以下同様に、後者の「管7」が前者の「外殻」に、後者の「螺線溝8」が前者の「螺旋溝」に、後者の「球体14」が前者の「ボール」に、後者の「焼入鋼板」が前者の「金属材料」に、後者の「強化プラスチツク」が前者の「プラスチック材料」に、それぞれ相当し、また、機能上、後者の「開口42」が前者の「逃し溝」に対応し、以下同様に、後者の「偏向素子44」が前者の「出張り」に、後者の「偏向素子44の前記凹溝43に連なる面」が前者の「ボールガイド面」にそれぞれ対応するものと認められる。
したがって、両者は、
「スクリューリングと、外殻とを備え、
前記スクリューリングは中空状の金属材料で形成され、内周部の表面に螺旋溝が設けられ、前記螺旋溝はボールがローリング可能な状態で保持可能であり、
前記外殻はプラスチック材料で形成され、前記スクリューリングの外側を被覆するとともに前記スクリューリングと接合して固定され、
前記スクリューリングには、逃し溝が形成され、前記外殻には前記逃し溝に進入する出張りが形成され、前記ボールが前記螺旋溝に沿って持続して回流することを規制するとともに、前記出張りに設けられたボールガイド面で前記ボールの循環回流を案内するボールナット」
で一致し、次の点で相違すると認められる。
[相違点A]
前記「外殻」と前記「スクリューリング」との接合が、本願補正発明では「射出成形または超音波による粘着」によるのに対して、上記刊行物1に記載された発明は、このようなものでない点
[相違点B]
本願補正発明では、前記「逃し溝」が「前記螺旋溝に沿って」形成され、前記「出張り」が「前記螺旋溝に沿って前記逃し溝に深く進入する」のに対して、上記刊行物1に記載された発明は、前記「逃し溝」が隣接する2巻きの前記螺旋溝を抱き込む実質的に軸方向に形成され、前記「出張り」は、前記逃し溝に進入するものの、前記螺旋溝に沿って進入するものではなく、進入する程度が深いか否か不明である点

(2)次に、上記各相違点について検討する。
(2-1)相違点Aについて
上記刊行物2には、前述のとおり「金属製ボール転走レース6と該ボール転走レース6の外側に形成される合成樹脂製の外側保持部材38とを備えるボールねじ用ナットにおいて、前記外側保持部材38と前記金属製ボール転走レース6とが射出成形によって接合されて一体成形体27とされたボールねじ用ナット」が記載され、この「ボールねじ用ナット」は「ボールナット」であり、その「ボール転走レース6」、「外側保持部材38」は、それぞれ「スクリューリング」、「外殻」であるから、上記刊行物1に記載されたものにおいて、前記「外殻」と前記「スクリューリング」との接合を、「射出成形または超音波による粘着」による接合とすることは、上記刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

(2-2)相違点Bについて
上記刊行物1に記載された発明は、前記逃し溝が隣接する2巻きの螺旋溝を抱き込む実質的に軸方向に形成されて、ボールが前記隣接する2巻きの螺旋溝を循環回流するように構成されたものであるが、上記刊行物1には、上記〔き〕の「螺線路13上の相離れた2点が、管7の外面に形成された凹溝16より成り、管7の軸と所定の角を成す平面に沿つて延びる実質的にU字形の還流路15によつて接続されている」のとおり、隣接する2巻きの螺旋溝を循環回流するもの以外、即ち、相離れた螺旋溝を通つてボールが循環回流する構成も記載されており、上記刊行物1に記載された発明を、このような相離れた螺旋溝を通つてボールが循環回流する構成に変更することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際、隣接する螺旋溝におけるボールの回流に対する逃し溝及び出張りによる干渉を回避し、また、スクリューシャフト(長手部材2)とボールナットとの相対回転を阻害しないよう考慮することは技術上の必然的事項であるから、前記逃し溝を隣接する2巻きの螺旋溝を抱き込む実質的に軸方向に形成することに変えて、前記「逃し溝」と該「逃し溝」から進入する前記「出張り」を「前記螺旋溝に沿って」形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、前記「出張り」が逃し溝に進入する程度は、出張りによる「回流することを規制する」作用と、「ボールの循環回流を案内する」ボールガイド面の機能が得られるように適宜考慮して選択し得るものであり、「逃し溝に深く進入する」構成を採用することが困難とはいえない。
したがって、前記「逃し溝」を「前記螺旋溝に沿って」形成し、前記「出張り」を「前記螺旋溝に沿って前記逃し溝に深く進入する」ものとすることは、上記刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

(3)審判請求人の主張について
(3-1)審判請求人は、審判請求書において、上記刊行物1の第4図?第7図及びこれらに関する記載事項に関連して、「この充填物(18)は屈折板であるからにはプラスチックではなく、金属材であると考えられ、かつ外殻の一部分を構成するものではない。」、「屈折板が金属板であると考えると、強度の高い材質を使用しなければ機械的な疲労によって、外殻の損傷を招くおそれが高いからである。」等主張している。
(3-2)しかしながら、前記〔お〕に「球体14を凹溝43内に押し込むために、各凹溝は管7によつて形成された突起より成り、管7から管6の各開口42を通つて内側へネジ2に向つて突出する偏向素子44により前方を限られている。」とあるように、前述のとおり、上記刊行物1には、管6の開口42を通って突出する偏向素子44を管7に形成すること、即ち、外殻に逃し溝に進入する出張りが形成されることが記載されているものと認められる。また、出張りの必要強度は、ボールから作用する力の大きさと方向に応じて出張りの寸法を適宜選択することにより得られるものと認められる。
したがって、上記請求人の主張は、採用できない。

(4)このように、本願補正発明は、その発明を特定するための事項が、上記刊行物1及び2にそれぞれ記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、作用効果も、上記刊行物に記載された事項から予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本願補正発明は、上記刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【三】本願発明について
1.本願発明
平成16年6月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年3月2日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 スクリューリングと、外殻とを備え、
前記スクリューリングは中空状の金属材料で形成され、内周部の表面に螺旋溝が設けられ、前記螺旋溝はボールがローリング可能な状態で保持可能であり、
前記外殻はプラスチック材料で形成され、前記スクリューリングの外側を被覆し、射出成形または超音波による粘着によって前記スクリューリングと接合して固定され、
前記スクリューリングには、前記螺旋溝に沿って逃し溝が形成され、前記外殻には前記逃し溝に深く進入する出張りが形成され、前記ボールを回流循環可能していることを特徴とするボールナット。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である前述の「特開昭53-16166号公報」(以下、同様に「刊行物1」という。)、「特開平9-4690号公報」(以下、同様に「刊行物2」という。)には、前記「【二】平成16年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.引用例」に記載したとおりの事項が記載されているものと認める。

3.対比・判断
本願発明は、前記「【二】平成16年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.対比・判断」で検討した本願補正発明を特定するための事項の、「出張り」についての「前記螺旋溝に沿って前記逃し溝に深く進入する」が、「前記逃し溝に深く進入する」となったものであり、また、やはり「出張り」についての「前記ボールが前記螺旋溝に沿って持続して回流することを規制するとともに、前記出張りに設けられたボールガイド面で前記ボールの循環回流を案内する」が、「前記ボールを回流循環可能している」となったものと認められる。
このように、本願発明は、前記本願補正発明を特定するための事項の一部を発明を特定するための事項としないものであり、前記本願補正発明を特定するための事項以外の事項を発明を特定するための事項とするものではない。そして、本願補正発明が先に説示したとおり上記刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、上記刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-13 
結審通知日 2006-11-14 
審決日 2006-11-27 
出願番号 特願2001-26033(P2001-26033)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16H)
P 1 8・ 575- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 竜一  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 大町 真義
常盤 務
発明の名称 ボールナット  
代理人 服部 雅紀  

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