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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1155254
審判番号 不服2004-22776  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-04 
確定日 2007-04-06 
事件の表示 平成 6年特許願第238503号「テレビカメラ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月22日出願公開、特開平 8- 79587〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月5日の出願であって、平成15年10月14日付けで手続補正がなされたが、平成16年9月22日付けで拒絶査定された。
本件は、本願についてされた上記拒絶査定を不服とする同年11月4日の審判請求であり、平成18年10月20日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年12月27日付けで手続補正書が提出された。





2.補正の却下の決定
平成18年12月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という)について、以下のとおり決定する。

[結論]
平成18年12月27日付け手続補正を却下する。

[理由]

[1]本件補正の内容
本件補正は、本件補正前、平成15年10月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲についてする補正であり、

「【請求項1】 撮像結果を電気信号として出力する撮像手段を備え、外部からの指示信号により撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置であって、
複数のマイクロフォンと、
該複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段と、
前記撮像手段より軽量に構成され、かつ該撮像手段の近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域に配置され、少なくとも光を反射または屈折させて、前記撮像手段に導く光学手段と、
前記外部からの指示信号に応じて、前記光学手段を駆動する駆動手段と、
該駆動手段により前記光学手段を駆動し、前記各マイクロフォンの近傍を撮像する前記光学手段の駆動位置を、前記各マイクロフォン毎に記憶する手段と、
前記判断手段により音声が入力されていマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、当該マイクロフォン近傍を前記撮像手段により撮像させる
テレビカメラ装置。」

の記載を、

「【請求項1】 撮像結果を電気信号として出力する撮像手段を備え、外部からの指示信号により撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置であって、
複数のマイクロフォンと、
該複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段と、
前記撮像手段より軽量に構成され、かつ該撮像手段の上方近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域に配置され、少なくとも光を反射または屈折させて、前記撮像手段に導く光学手段と、
前記外部からの指示信号に応じて、前記光学手段を直交する2軸の周りに駆動して、前記光学手段に、チルトおよびパン動作に相当する動作を行なわせる駆動手段と、
該駆動手段により前記光学手段を駆動し、前記各マイクロフォンの近傍を撮像する前記光学手段の駆動位置を、前記各マイクロフォン毎に記憶する手段と、
前記判断手段により音声が入力されていマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、当該マイクロフォン近傍を前記撮像手段により撮像させる
テレビカメラ装置。」

と補正することを含むものである。




[2]本件補正の適合性

[2-1]補正の範囲(第17条の2第2項において準用する第17条第2項)
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。



[2-2]補正の目的(第17条の2第3項第1号?4号)
本件補正は、
「光学手段」の配置場所について、補正前は「撮像手段の近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域」となっていたのを、「撮像手段の上方近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域」と限定する補正事項と、
「駆動手段」について、補正前は「前記外部からの指示信号に応じて、前記光学手段を駆動する」となっていたのを、「前記外部からの指示信号に応じて、前記光学手段を直交する2軸の周りに駆動して、前記光学手段に、チルトおよびパン動作に相当する動作を行なわせる」と限定する補正事項と
からなるものであり、しかも、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。特許請求の範囲の減縮に該当する。



[2-3]独立特許要件(第17条の2第5項)
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで検討をする。

[2-3-1]補正後の本願発明
本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という)は、以下のとおりのものである。

「撮像結果を電気信号として出力する撮像手段を備え、外部からの指示信号により撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置であって、
複数のマイクロフォンと、
該複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段と、
前記撮像手段より軽量に構成され、かつ該撮像手段の上方近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域に配置され、少なくとも光を反射または屈折させて、前記撮像手段に導く光学手段と、
前記外部からの指示信号に応じて、前記光学手段を直交する2軸の周りに駆動して、前記光学手段に、チルトおよびパン動作に相当する動作を行なわせる駆動手段と、
該駆動手段により前記光学手段を駆動し、前記各マイクロフォンの近傍を撮像する前記光学手段の駆動位置を、前記各マイクロフォン毎に記憶する手段と、
前記判断手段により音声が入力されていマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、当該マイクロフォン近傍を前記撮像手段により撮像させる
テレビカメラ装置。」


[2-3-2]刊行物の記載
当審において新たに発見し、平成18年10月20日付けの拒絶の理由に引用した特開平5-300411号公報(以下「刊行物1」という)には、以下の記載が認められる。

(ア)「テレビ会議システムでは、通常電動式の雲台にビデオカメラを固定してパンまたはチルトしているが、ビデオカメラの重量が全て雲台にかかるため雲台の動きをある程度以上速くすることができない。」(段落【0007】)

(イ)「(実施例5)図12は実施例5である”ビデオカメラ装置”の斜視図である。図において、61は画像入力用のビデオカメラであり、ティルト動作用の雲台62に固定されている。63はビデオカメラ61の前方に設けられた鏡体であり、ビデオカメラ61は鏡体63に映る撮影対象64-1,64-2,64-3の鏡像を撮影するように構成されている。鏡体63は雲台の一部に回転可能に固定され、その回転動作によってビデオカメラ61のパンを行うようになっている。」(段落【0042】)

(ウ)「図13において、チルト用雲台の説明をする。同図において、201はビデオカメラ61が固定されている可動台であり、固定台202に支持した軸203を中心に回動自在に支持されている。」(段落【0043】)

(エ)「図14によりパンの説明をする。鏡体63は、回転台301に支持され、回転台301の外周に形成されたギヤ203と、固定台202に設けられた駆動手段302のギヤ304とのかみ合いによって回転する。」(段落【0045】)

(オ)「制御手段は複数の位置を記憶する記憶手段を有しており、前述した位置検知手段によって零位置及び回転角度の検知が行われるため、制御手段に記憶された位置に鏡体63を回転させることが可能である。」(段落【0049】)

(カ)「本実施例によれば、記憶位置へのパンをビデオカメラ61よりも軽い鏡体63によって行うため、通常のパンより高速で行うことができる。同様の構成でチルトを高速で行うこともできる。」(段落【0050】)

(キ)「本実施例によればパンを高速で行うことが可能なので、例えばテレビ会議において発言ににあまり遅れることなく発言者の方向にパンでき、この点での違和感をなくすることができる。」(段落【0051】)

(ク)「(実施例3)図5は実施例3である“ビデオカメラ装置”の側面図である。」(段落【0031】)

(ケ)「会議者101が発言を行うとビデオカメラ104上部に取り付けられたマイク50が会議者101の音声を取り込む。マイク50はステレオ入力となっているため、左側音声用マイク50-1と右側音声用マイク50-2とに独立に音声が入力する。各々入力された音声はマイク50によって音声信号に変換され、図7に示す左音声信号入力端子30と右音声信号入力端子31から音声レベル比較回路32に入力される。音声レベル比較回路32では音声信号が入力されると、左側の音声信号と右側の音声信号のレベルを比較し、その結果をCPU33へ渡す(図8のフローチャートS1参照)。CPU33ではこの比較結果に基づき音声信号レベルの高い方向にビデオカメラ104を向けるように、雲台モータ駆動回路34に信号を送る。雲台モータ駆動回路34はこの信号をモータ駆動用信号に変換し、CPU33の指示による方向にモータ駆動信号を発生する。モータ35はこのモータ駆動信号によって回転し、雲台51を駆動して、ビデオカメラ104を任意の方向へパーンさせる。以上の動作を左音声信号と、右音声信号が同レベルになるまで繰り返し行い、CPU33は左音声信号と右音声信号が同じレベルになると雲台51の駆動を停止させることにより、ビデオカメラ104を話中の話者である会議者101の方向へ向ける(図8のフローチャートS2)。」(段落【0033】)

また、当審において新たに発見し、平成18年10月20日付けの拒絶の理由に引用した特開平6-86378号公報(以下「刊行物2」という)には、以下の記載が認められる。

(コ)「図4は従来のマイク位置特定装置の構成図である。従来のシステムにおいては、TV会議カメラの操作者が会議の開始に先立ち、制御パネル23を操作し、マイク20a、20b、20cの各々の使用者にTVカメラの位置合わせを行い、各々におけるズーミング倍率、サーボモータ回転角をTVカメラ制御情報記憶器22に、各マイク番号と関連付けて記憶させる。」(段落【0002】)

(サ)「会議中は、話中マイクロフォン検出器21が最大の音量を発生しているマイク、つまり発言者を検出しそのマイク番号をTVカメラ制御情報記憶器22に伝え、マイク番号に対応したズーミング倍率をTVカメラ25に伝え、サーボモータ駆動器24にサーボモータ回転角を伝えてTVカメラ25を発言者に方向付ける。」(段落【0003】)


[2-3-3]対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明(以下「刊行物1発明」という)とを対比する。

(1)前提構成について(本願補正発明の「撮像結果を電気信号として出力する撮像手段を備え、外部からの指示信号により撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置であって」について)

刊行物1発明の「ビデオカメラ61」が、本願補正発明でいう「撮像結果を電気信号として出力する撮像手段」に相当することは明らかである。

上記2.[2-3-2](イ)?(エ)で指摘した箇所の記載によれば、ビデオカメラ61が固定されているティルト動作用の雲台62と鏡体63が支持されている回転台301とによりティルト及びパン動作が可能であるから、刊行物1の「ビデオカメラ装置」は、本願補正発明でいう「撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置」に対応する。
もっとも、刊行物1には、撮影領域の変更が、外部からの指示信号により実行されるのか否かについて何ら記載がない。相違点が認められる。

(2)光学手段について

上記2.[2-3-2](カ)で指摘した箇所に、記憶位置へのパンをビデオカメラ61よりも軽い鏡体63によって行うとの記載があるから、刊行物1発明の「鏡体63」は、本願補正発明でいう「前記撮像手段より軽量に構成され、かつ該撮像手段の近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域に配置され、少なくとも光を反射させて、前記撮像手段に導く光学手段」に対応する。
もっとも、刊行物1発明の「鏡体63」は、撮像手段の側方近傍に配置される。相違点が認められる。

(3)駆動手段について

上記2.[2-3-2](エ)で指摘した箇所の記載によれば、刊行物1発明の「駆動手段302」は、本願補正発明でいう「前記光学手段を駆動して、前記光学手段に、パン動作に相当する動作を行わせる駆動手段」に対応する。
もっとも、刊行物1には、上記2.[2-3-3](2)で記載したように、光学手段の駆動が、外部からの指示信号に応じて実行されるのか否かについては何ら記載がない。相違点が認められる。
また、刊行物1発明の「駆動手段302」は、光学手段を1軸の周りに駆動して、光学手段に、パン動作に相当する動作を行わせるものである。相違点が認められる。

(4)光学手段の駆動位置を記憶する手段について

上記2.[2-3-2](オ)で指摘した箇所には、「制御手段は複数の位置を記憶する記憶手段を有しており」、「制御手段に記憶された位置に鏡体63を回転させることが可能である。」との記載があるから、刊行物1発明の「複数の位置を記憶する記憶手段」は、本願補正発明でいう「前記光学手段の駆動位置を、記憶する手段」に対応する。
もっとも、刊行物1には、記憶手段に複数の位置をどのように記憶するのかについては何ら記載がない。相違点が認められる。

(5)駆動位置を読み出して光学手段を駆動する構成について

上記2.[2-3-2](オ)で指摘した箇所には、「制御手段は複数の位置を記憶する記憶手段を有しており」、「制御手段に記憶された位置に鏡体63を回転させることが可能である。」との記載があるから、刊行物1発明には、本願補正発明でいう「前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、前記撮像手段により撮像させる」に対応する構成の存在が認められる。
もっとも、刊行物1には、記憶手段から読み出す位置をどのように設定するのかについては何ら記載がない。相違点が認められる。

(6)一致点、相違点

以上から、本願補正発明と刊行物1発明とは、
[一致点]
「撮像結果を電気信号として出力する撮像手段を備え、撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置であって、
前記撮像手段より軽量に構成され、かつ該撮像手段の近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域に配置され、少なくとも光を反射させて、前記撮像手段に導く光学手段と、
前記光学手段を駆動して、前記光学手段に、パン動作に相当する動作を行わせる駆動手段と、
前記光学手段の駆動位置を記憶する手段と、
前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、前記撮像手段により撮像させる
テレビカメラ装置。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、
「複数のマイクロフォン」と、「該複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段」とを備え、
「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」が、「外部からの指示信号に応じて」、「該駆動手段により前記光学手段を駆動し」、「前記各マイクロフォンの近傍を撮像する」前記光学手段の駆動位置を、「前記各マイクロフォン毎に」記憶し、
「前記判断手段により音声が入力されているマイクロフォンを特定し」、「該特定されたマイクロフォンについての」前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、「当該マイクロフォン近傍を」前記撮像手段により撮像させる
のに対し、
刊行物1発明は、「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」に複数の駆動位置をどのように記憶し、読み出す「前記記憶された駆動位置」をどのように設定するのかについて不明である点。

[相違点2]
「光学手段」が、本願補正発明では、撮像手段の「上方」近傍に配置されるのに対し、刊行物1発明では、撮像手段の「側方」近傍に配置される点。

[相違点3]
「駆動手段」が、本願補正発明では、光学手段を「直交する2軸」の周りに駆動して、光学手段に、「チルトおよびパン動作」に相当する動作を行わせるのに対し、刊行物1発明では、光学手段を「1軸」の周りに駆動して、光学手段に、「パン動作」に相当する動作を行わせる点。


[2-3-4]相違点の判断

[相違点1]について
「複数のマイクロフォン」と、「複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段」と、「外部からの指示信号に応じて駆動手段により撮像手段を駆動し、各マイクロフォンの近傍を撮像する撮像手段の駆動位置を各マイクロフォン毎に記憶する手段」とを設け、前記判断手段により音声が入力されているマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、駆動手段により撮像手段を駆動して当該マイクロフォン近傍を撮像手段により撮像させる構成は、刊行物2の上記2.[2-3-2](コ)、(サ)で指摘した箇所に記載されている。
また、刊行物1の上記2.[2-3-2](キ)で指摘した箇所に、テレビ会議において発言にあまり遅れることなく発言者の方向にパンできるとある以上、刊行物1発明においても、「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」から読み出す駆動位置が、発言者に対応する位置を指していることは明らかである。
さらに、刊行物1の上記2.[2-3-2](ク)、(ケ)で指摘した箇所には、別の実施例ではあるが、発言者の方向を撮像するために音声に着目する点が開示されている。
したがって、刊行物1発明においても、発言者の方向を撮像するために音声に着目し、TV会議カメラの撮影領域変更手法に関するものとして一致する刊行物2記載の上記構成を採用して、
「複数のマイクロフォン」と、「複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段」とを設け、
「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」を、外部からの指示信号に応じて駆動手段により光学手段を駆動し、各マイクロフォンの近傍を撮像する光学手段の駆動位置を、各マイクロフォン毎に記憶するよう構成するとともに、
判断手段により音声が入力されているマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、駆動手段により光学手段を駆動して、当該マイクロフォン近傍を撮像手段により撮像させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-153060号公報(以下「刊行物3」という)(段落【0019】、【0020】、第6、7図参照)には、撮像手段を、撮像方向が上方となるよう配置するとともに、鏡体を、撮像手段の上方近傍かつ撮像手段の固定的な撮像領域に配置し、鏡体にチルトおよびパン動作に相当する動作を行わせる構成が記載されており、この構成を刊行物1発明に採用し、撮像手段を、撮像方向が上方となるよう配置するとともに、光学手段を、撮像手段の上方近傍かつ撮像手段の固定的な撮像領域に配置することは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
一般に、撮像手段の近傍かつ撮像手段の固定的な撮像領域に配置した鏡体を駆動することで撮像領域を変更するよう構成されたテレビカメラ装置において、鏡体を直交する2軸の周りに駆動して、鏡体にチルトおよびパン動作に相当する動作を行わせる構成は周知である(上記刊行物3(段落【0019】、【0020】、【0025】、第6、7図)、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-133208号公報(以下「刊行物4」という)(段落【0012】、【0014】、第1図)参照)。
刊行物1には、上記2.[2-3-2](カ)で指摘した箇所に「同様の構成でチルトを高速で行うこともできる。」との記載があり、鏡体にチルト動作に相当する動作を行わせることが開示されているから、上記周知の技術を採用し、光学手段を直交する2軸の周りに駆動して、光学手段にチルトおよびパン動作に相当する動作を行わせるよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

以上のとおり、上記相違点1?3に係る本願補正発明の構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たものであるところ、上記各相違点を総合しても格別の作用効果を奏するものとは認められず、本願補正発明を全体としてみても、その作用効果は、刊行物から当業者が予測できる範囲のものである。


[2-3-5]まとめ(独立特許要件)
以上によれば、本願補正発明は、刊行物1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。




[3]むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に適合しないものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。





3.本願発明について

(1)本願発明
平成18年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明は、平成15年10月14日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのもの(以下「本願発明」という)である。

「撮像結果を電気信号として出力する撮像手段を備え、外部からの指示信号により撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置であって、
複数のマイクロフォンと、
該複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段と、
前記撮像手段より軽量に構成され、かつ該撮像手段の近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域に配置され、少なくとも光を反射または屈折させて、前記撮像手段に導く光学手段と、
前記外部からの指示信号に応じて、前記光学手段を駆動する駆動手段と、
該駆動手段により前記光学手段を駆動し、前記各マイクロフォンの近傍を撮像する前記光学手段の駆動位置を、前記各マイクロフォン毎に記憶する手段と、
前記判断手段により音声が入力されていマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、当該マイクロフォン近傍を前記撮像手段により撮像させる
テレビカメラ装置。」


(2)刊行物
当審において新たに発見し、平成18年10月20日付けの拒絶の理由に引用した、特開平5-300411号公報(以下「刊行物1」という)及び特開平6-86378号公報(以下「刊行物2」という)には、それぞれ上記2.[2-3-2]に記載したとおりの記載が認められる。


(3)対比
そこで、本願発明と刊行物1記載の発明(以下「刊行物1発明」という)とを比較すると、本願発明と刊行物1発明との対応関係については、上記2.[2-3-3]に記載したとおりであるところ、これを援用する。
本願発明と刊行物1発明とは、
[一致点]
「撮像結果を電気信号として出力する撮像手段を備え、撮影領域を変更可能なテレビカメラ装置であって、
前記撮像手段より軽量に構成され、かつ該撮像手段の近傍かつ該撮像手段の固定的な撮像領域に配置され、少なくとも光を反射させて、前記撮像手段に導く光学手段と、
前記光学手段を駆動する駆動手段と、
前記光学手段の駆動位置を記憶する手段と、
前記記憶された駆動位置を読み出して、前記駆動手段により前記光学手段を駆動して、前記撮像手段により撮像させる
テレビカメラ装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、
「複数のマイクロフォン」と、「該複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段」とを備え、
「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」が、外部からの指示信号に応じて駆動手段により光学手段を駆動し、各マイクロフォンの近傍を撮像する光学手段の駆動位置を、各マイクロフォン毎に記憶し、
判断手段により音声が入力されているマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、駆動手段により光学手段を駆動して、当該マイクロフォン近傍を撮像手段により撮像させる
ものであるのに対し、
刊行物1発明は、そもそもマイクロフォンを備えておらず、また、「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」に複数の駆動位置をどのように記憶し、「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」から読み出す「前記記憶された駆動位置」をどのように設定するのかについて不明である点。


(4)相違点の判断
上記相違点については、上記2.[2-3-4]に記載したとおりであるから、刊行物1発明においても、発言者の方向を撮像するために音声に着目し、TV会議カメラの撮影領域変更手法に関するものとして一致する刊行物2記載の上記構成を採用して、
「複数のマイクロフォン」と、「複数のマイクロフォンのいずれに音声が入力しているかを判断する判断手段」とを設け、
「前記光学手段の駆動位置を記憶する手段」を、外部からの指示信号に応じて駆動手段により光学手段を駆動し、各マイクロフォンの近傍を撮像する光学手段の駆動位置を、各マイクロフォン毎に記憶するよう構成するとともに、
判断手段により音声が入力されているマイクロフォンを特定し、該特定されたマイクロフォンについての前記記憶された駆動位置を読み出して、駆動手段により光学手段を駆動して、当該マイクロフォン近傍を撮像手段により撮像させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

以上のとおり、上記相違点に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるところ、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、刊行物から当業者が予測できる範囲のものである。


(5)まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。





4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-19 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-13 
出願番号 特願平6-238503
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H04N)
P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 隆一  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 松永 隆志
益戸 宏
発明の名称 テレビカメラ装置  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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