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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B41J
管理番号 1155892
審判番号 無効2004-80145  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-09-06 
確定日 2007-03-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3183621号「ラベルプリンタ」の特許無効審判事件についてされた平成17年 3月11日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10431号、平成17年9月2日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3183621号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3183621号の出願からの主な経緯を摘記すると以下のとおりである。
・平成 8年 2月15日 出願
・平成13年 4月27日 登録
・平成13年12月17日 特許異議申立(異議2001-73532号)
・平成14年 6月 5日 取消理由通知(起案日)
・平成14年 8月19日 訂正請求
・平成15年 5月 6日 取消決定(起案日)
・平成15年 6月17日 取消決定取消訴訟(平成15年(行ケ)第258号)
・平成15年 6月17日 訂正審判請求(訂正2003-39124号)
・平成15年 8月27日 訂正審決(起案日)
・平成15年 9月25日 判決言渡
・平成15年11月18日 維持決定 (起案日)
・平成16年 9月 6日 本件無効審判請求(無効2004-80145号)
・平成16年 9月28日 答弁指令(起案日)
・平成16年11月19日 答弁書提出
・平成17年 3月11日 無効審決(起案日)
・平成17年 4月21日 審決取消訴訟(平成17年(行ケ)10431号)
・平成17年 7月14日 訂正審判請求(訂正2005-39126号)
・平成17年 9月 2日 知財高裁決定(審決取消)
・平成17年11月 9日 訂正請求書副本通知(弁駁指令、特許法第134条の3第5項の規定により、上記訂正2005-39126の請求書に添付された特許請求の範囲及び明細書を援用する本件無効審判の訂正請求とみなす。)(起案日)
・平成17年12月 9日 弁駁書提出
・平成18年 3月20日 上申書提出

2.訂正の適否に対する判断
(1)訂正の内容
被請求人(特許権者)の求めている訂正は、特許法第134条の3第5項の規定により、上記平成17年7月14付けの訂正審判(訂正2005-39126)の請求書に添付された特許請求の範囲及び明細書を援用する本件無効審判の訂正請求とみなされたものであって、その内容は、以下のとおりである(訂正箇所にアンダーラインを付した。)。
ア.訂正事項ア
特許請求の範囲の請求項1の
「所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、上記通常データとは異なる少なくとも値引価格を含む臨時データと上記通常データとが印字された臨時ラベルを発行する臨時ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと臨時データとしての値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と、上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、その値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられていることを特徴とするラベルプリンタ。」
を、
「所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、上記通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベルを発行する臨時ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと上記値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と、上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、上記値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられていることを特徴とするラベルプリンタ。」
と訂正する。
イ.訂正事項イ
明細書の段落【0009】を、
「即ち、本発明は、所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、上記通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベルを発行する臨時ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと上記値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と、上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、上記値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられていることを特徴とする。」
と訂正する。
ウ.訂正事項ウ
明細書の段落【0010】を、
「上記発明によれば、指定された商品に関する印字データ中に値引価格が含まれていない場合は、通常ラベル印字部を使って、該通常データのみが印字された通常ラベルが発行され、これに対し、指定された商品に関する印字データ中に値引価格が含まれている場合には、臨時ラベル印字部を使って、該値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルが発行される。」
と訂正する。
エ.訂正事項エ
明細書の段落【0011】を、
「すなわち、従来であれば、後者の場合に、通常データが値付ラベルに、臨時データがポップラベルにそれぞれ別々に印字されて二枚の異なるラベルが発行されていたものが、通常データと値引価格が合わせて印字された臨時ラベルが一枚だけ発行されることになる。その結果、この臨時ラベルを商品に一枚貼付するだけで通常データと値引価格との両方を商品に表示することができて、従来のように二枚の異なるラベルを別々に貼る必要がなくなると共に、貼付ミスによってラベル同士が重なってしまうということがない。」
と訂正する。
オ.訂正事項オ
明細書の段落【0052】を、
「【発明の効果】以上説明したように、本発明のラベルプリンタは、商品名や通常価格等の通常データと値引価格とを一枚に合わせて印字した臨時ラベルを発行するので、この臨時ラベルを一回貼付するだけで、通常データと値引価格との両方を商品に表示することができる。」
と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項アに関連して、願書に添付した明細書(平成15年6月17日付の訂正審判(訂正2003-39124号)で訂正が認められた明細書、以下、「特許明細書」という。)には、「中央制御部4は、ポップ番号dが38未満でステップS17に進んだときには、上記ステップS7で通常ラベルに印字すべきものとして抽出した印字データ(通常データ)に、そのポップ番号dに対応するイメージデータn及びM特価g(臨時データ)を加えて編集すると共に、・・・この編集した印字データに印字コマンドを付した印字信号をサブプリンタ3の制御部6に対して独立回線6aを介して出力する(ステップS18)。そしてサブプリンタ3は、この印字信号を受けて、図8に示すように、・・・値引価格g(臨時データ)が通常ラベルの上部に合わせて表示され、かつ通常価格mが無効とされた構成のラベル(臨時ラベル)Lpを発行する(ステップS19)。」(段落【0029】?【0030】参照)及び「そもそもポップ番号d又はM特価gを0に登録していてサブプリンタ3が必要でないとき等は、中央制御部4は、ステップS7で通常ラベルに印字すべきものとして抽出した印字データ(通常データ)に印字コマンドを付した印字信号をメインプリンタ2の制御部5に対して独立回線5aを介して出力し(ステップS21)、メインプリンタ2は、この印字信号を受けて、前述の図5に示したように、商品名bや通常価格m等の通常データのみを印字した通常の値付ラベル(通常ラベル)Lsを発行する(ステップS22)。」(段落【0033】参照)と記載されている。
そうすると、上記訂正事項アは、特許明細書に記載された事項の範囲内において、臨時データを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、上記訂正事項イ?オは、上記訂正事項アに伴い、特許請求の範囲の記載との整合を図るため、発明の詳細な説明の記載を訂正したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
本件特許第3183621号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。

(証拠方法)
甲第1号証:特開昭63-294340号公報
甲第2号証:特開昭62-119573号公報

4.本件発明
本件発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記2.(1)ア.参照)。

5.甲各号証の記載事項
甲第1号証及び甲第2号証には、本件発明に関連する事項として、それぞれ以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証
a.「異種のラベルを発行可能な複数の印字装置を備え、商品の商品番号に応じて、適宜の印字装置を選択してラベルを発行するラベルプリンタにおいて、商品番号毎に、発行するラベルの種類と印字データを設定する設定手段と、この設定手段によって設定されたラベルの種類と印字データを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されたラベルの種類と印字データに基づいて、商品番号に応じた印字装置を一つまたは複数自動的に選択してラベルを発行する制御部とを具備してなることを特徴とするラベルプリンタ。」(特許請求の範囲)。
b.「この発明のラベルプリンタは、商品番号に対応して、複数の印字機構部についての使用方法等を予め記憶しておくことにより、その記憶部の記憶データに基づいて、複数の印字機構部を自動的に制御して、複数種のラベルを適宜のタイミングで発行する。」 (2頁右上欄8行?13行)
c.「第1図は外観構成を示す斜視図、第2図は電気的構成を示すブロック図である。これらの図において、1は、ラベルプリンタの本体である。この本体の内部には、第2図に示す制御部が設けられており、この制御部には秤2が接続されている。一方、本体1の前面には、第1、第2の2つのラベル印字機構部3,4と、操作部5とが設けられている。第2の印字機構部4は、本体1から取り外し可能となっている。」(2頁右上欄19行?左下欄7行)。
d.「上記印字機構部3,4には、サイズの違う計量ラベル(値付けラベル)をセットしたり、第1の印字機構部3に計量ラベルをセットし、第2の印字機構部4にPOPラベル(商品広告ラベル)をセットしたりすることにより、種類の異なるラベルを適宜印字することができる。」(2頁左下欄14?19行)
e.「第5図は、RAM30の内部構成を示すものであり、各種の処理に使用されるワーキングエリア31とPLU(プライスルックアップ)ファイル32と予約ファイル33・・・が設けられている。ワーキングエリア31には各種のレジスタと共に第10図に示すような第2の印字機構部4の使用モードフラグPF1?PF4がある。・・・PLUファイル32は、第6図に示すように、商品番号(PLUNo.)毎に、商品の単価、風袋重量、有効日、品名等を記憶するものである。また、予約ファイル33は、第7図に示すように、商品番号に対応して,後述する各種のフラグ、パック数(品出数量)、特売品の特売期間、POPNo.等を記憶するものである。・・・予約ファイル33に記憶されるフラグとしては、・・・プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つYF4・・・がある。」(3頁左下欄1行?右下欄9行)
f.「プロモーションラベルとは、第16図に示すような一般的計量ラベル(値付けラベル)の形状と印字フォーマットを持つが、印字データの色、ラベルの用紙の色、またはプリ印刷の内容が異なるものをいう。例えば、広告の品等で特に客の注意を引き付けたい場合に、他の計量ラベルとは異なる色(例えば、赤色、黄色等)のラベル用紙に印字したもの、あるいは予め「広告品」とプリ印刷されているラベル用紙に印字したものである。後者の場合には、「広告品」等の広告文は、ラベルプリンタにて印字することも可能である」(3頁右下欄16行?4頁左上欄6行)。
g.「ラベルの発行データの入力には、ワーキングエリア31における第2の印字機構部4の使用モードフラグPF1?PF4(第10図)の設定と、RAM30における予約ファイル33の設定とがある。」(4頁右上欄17行?左下欄1行)
h.「(1)使用モードフラグPF1?PF4の設定 第1の印字機構部3が計量ラベルの発行専用であるのに対し、第2の印字機構部4には次のような4つの使用目的がある。〈1〉使用しない。〈2〉プロモーションラベルを発行する。〈3〉POPラベルを発行する。〈4〉バーコードラベルを発行する。・・・第2の印字機構部4の仕様選定モードを選択した後は、第2の印字機構部4の使用目的の選定モード、または第2の印字機構部4のラベルサイズの選定モードが選択が可能となる。・・・第2の印字機構部4の使用目的を選択した場合には、それに適合するラベル用紙を第2の印字機構部4にセットする必要がある。」(4頁左下欄3行?5頁左上欄14行)
i.「(2)予約ファイル33の設定 まず、操作・表示部12の表示画面をメニュー画面(第11図(a))として、「4.予約の設定」の表示部分をタッチするこれにより、画面が第11図(b)の予約モード画面となり、同時に示すような3種の予約の選択文字が表れる。第1は「品出し数量の予約」の選択文字、第2は「特売品番の予約」の選択文字である。第3は、第2の印字機構部4の使用目的?に対応する選択文字、つまり上記(1)にて設定した使用モードフラグPF1?PF4の内容に対応する選択文字である。・・・使用目的のプロモーションラベルの発行が選択されたときは、「プロモーションラベルの予約」と表示され」(5頁左上欄15行?右上欄12行)
j.「予約モード画面において、第3の表示部分をタッチすることによって、POPラベルの予約、プロモーションラベルの予約、またはバーコードラベルの予約をする。・・・プロモーションラベルを発行する商品に対応する商品番号を入力する。」(5頁右下欄14行?6頁左上欄11行)。
k.「実際のラベルの発行動作を、品番入力時と、ラベル印字時とに分けて説明する。(1)品番入力時 品番が入力されることにより、第13図のフローに入り、まずは該当するPLUデータをPLUファイル32から読み出し、それを各レジスタにセットする・・・次に、予約ファイル33をサーチし(ステップSA2)、予約ファイル33に該当PLUがあった場合には、予約データを読み出して各レジスタにセットする(ステップSA3,SA4)。・・・(2)ラベル印字時 プリントキーを操作することにより、第14図のフローに入ってラベルを印字する。・・・このフローにおいては、・・・使用モードフラグPF3(PF2の誤記と認める。)から、プロモーションラベルの印字モードであるか否かを判断する(ステップSB7)。使用モードフラグPF3(PF2の誤記と認める。)が立っているときは、プロモーションラベルの印字モードであると判断してステップSB8に進み、予約ファイル33におけるフラグYF4から、プロモーションラベルの予約があるか否かを判断する。・・・ステップSB8にて、予約ありと判断したとき、つまりフラグYF4が立っているときは、第2の印字機構部4にてプロモーションラベルを印字する(ステップSB9)。」(6頁右上欄5行?7頁左上欄末行)
l.第11図(f)から、プロモーションラベルの予約モード表示画面が複数の商品について入力可能となっていることが看取できる。
m.第14図から、プロモーションラベル印字を印字するときプロモーションラベルの予約の有無すなわちフラグYF4が立っているか否かを判定し、立っていないときには、第1の印字機構部3で計量ラベルを印字し、立っているときには、第1の印字機構部3を作動させることなく、プロモーションラベルを第2の印字機構部4で印字させることが看取できる。
n.第16?18図から、ラベルの大きさ及び印字内容(すなわち印字データ)が互いに異なる計量ラベル、POPラベル及びバーコードラベルの3つのラベルが看取できる。

(2)甲第2号証
a.「品名が印字される品名欄と単価・重量・値段等が印字されるデータ欄とが配設されたラベルにおいて、前記品名欄又は前記データ欄の空白部に値引情報を印字したことを特徴とするラベル。」(特許請求の範囲、請求項1)。
b.「従来、ラベルプリンタにおいては、商品の単価や値段をPLU(プライス・ルック・アップ)メモリに記憶させておき、通常の値段で商品を売る場合に既に設定されている単価を呼び出した後、重量を計り、重量×単価=値段としてラベル上に印字している。そして、値下げした場合にその値引情報を買い手に伝えるためには値引情報用のラベルを別に作成して商品に貼るか、商品棚に値引情報が記載された表示用紙等を貼っている。また、別の手段としては通常の大きさよりも大きいラベルを作成し、このラベルに通常時の重量・単価・値段を印字するとともに値下げ後の重量・単価・値段を別の欄に印字している。」(1頁右下欄4?18行)。
c.「通常のラベルの品名欄又はデータ欄の空白部に値引情報を印字したので、商品の値段を値引したとき、通常のラベルを使用するだけで値引情報を得ることができ、従来のように二枚のラベルを貼ったり、大きなラベルを用いなくても値引の状態を買い手にアピールすることができるものである。」(3頁右上欄6?12行)。

6.当審の判断
(1)甲1発明の認定
記載f.における「広告品」等の広告文がラベルプリンタにて印字される計量ラベルの印字フォーマット持つプロモーションラベルの印字データは、計量ラベルの印字データ(以下、「計量ラベルデータ」という。)と「広告品」等の広告文の印字データ(以下、「広告文データ」という。)とを合わせたデータであることが明らかである。
また、第1の印字機構部3が計量ラベルの発行専用であるのに対し、第2の印字機構部4は、プロモーションラベルを発行する、POPラベルを発行する及びバーコードラベルを発行するという同時に達成できない3つ使用目的のために使用されるものであって、これらのなかから1つ使用目的を選択した場合には、例えば、プロモーションラベルを発行する場合には、プロモーションラベルに適合するラベル用紙が、POPラベルを発行する場合には、POPラベルに適合するラベル用紙が、バーコードラベルを発行する場合には、バーコードラベルに適合するラベル用紙が、それぞれ第2の印字機構部4にセットされるものである(記載a.、b.、d.及びh.参照)。
そうすると、甲第1号証から、第1の印字機構部3を計量ラベルの発行専用として計量ラベルに適合するラベル用紙がセットされるようにすると共に、第2の印字機構部4を、印字データが計量ラベルデータと広告文データとを合わせたものであるプロモーションラベル(以下、「広告文付加プロモーションラベル」という。)の発行専用として当該広告文付加プロモーションラベルに適合するラベル用紙をセットされるラベルプリンタの発明を捉えることができる。
以上のように捉えたラベルプリンタの発明においても、上記広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるとき、予約ファイル33に記憶されるフラグYF4を立てることは自明であって(記載i.参照)、そうすると、フラグYF4が立っていないときには、計量ラベルデータのみが印字された計量ラベルを第1の印字制御部に発行させ、フラグYF4が立っているときには、上記第1の印字制御部3を作動させることなく、上記広告文付加プロモーションラベルを第2の印字制御部4に発行させる制御部を備えることも自明である(記載k.及びm.)。
以上のことを勘案すると、上記甲第1号証の記載a.?n.から、以下の発明を捉えることができる。
「所定の計量ラベルデータが印字された計量ラベルを発行する第1の印字機構部3と、広告文付加プロモーションラベルを発行する、通常のラベルとはラベルの大きさ等が異なるラベルを発行可能な第2の印字機構部4とが備えられたラベルプリンタ1であって、ラベルを貼付する商品の商品番号を入力する操作部5と、商品番号(PLUNo.)毎に、商品の単価、風袋重量、有効日、品名等を記憶するPLUファイル32及び商品番号毎に上記広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるとき立つフラグYF4を記憶する予約ファイル33のそれぞれから、操作部から入力される商品番号毎に、読み出されたPLUデータと予約データがセットされる各レジスタと、上記商品番号を入力する操作部5で入力された商品番号の商品に関する予約ファイル33におけるフラグYF4が、立っていないときには、計量ラベルデータのみが印字された計量ラベルを第1の印字機構部3に発行させ、フラグYF4が立っているときには、上記第1の印字機構部3を作動させることなく、上記広告文付加プロモーションラベルを第2の印字機構部4に発行させる制御部が備えられているラベルプリンタ1。」(以下、「甲1発明」という。)

(2)本件発明と甲1発明との一致点及び相違点の認定並びに相違点の判断
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア.甲1発明の「計量ラベルデータ」、「計量ラベル」、「第1の印字機構部3」、「商品の品番を入力する操作部5」、「印字制御部22」、「ラベルプリンタ1」は、それぞれ、本件発明の「通常データ」、「通常ラベル」、「通常ラベル印字部」、「商品指定手段」、「印字制御部」、「ラベルプリンタ」に相当する。
イ.甲1発明の「第2の印字機構部4」は、計量ラベル(通常ラベル)とは異なる種類のラベル(記載a.)、より具体的には、サイズ、印字内容あるいは色が異なるラベル(記載d.、f.参照)を発行可能な印字部であり、本件発明の「臨時ラベル印字部」とは、通常ラベルとは異なる種類のラベルを発行する印字部(以下、「異種ラベル印字部」という。)である点で共通している。
ウ.甲1発明において、広告文付加プロモーションラベルの発行予約があるとき立つフラグYF4が立っているか否かを判定することは、発行されるべきラベルが上記広告文付加プロモーションラベルであるか否かを判定することであるから、ラベルの印字データ中に広告文データが含まれているかどうかを判定することを意味していることも明らかである。
エ.甲1発明の「広告文データ」と本件発明の「値引価格」とは、通常データ(計量データ)とは異なるデータである点で共通している。
オ.上記エ.から、甲1発明の「広告文付加プロモーションラベル」と本件発明の「通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベル」とは、通常データとは異なるデータと通常データとが印字されたラベル(「通常データとは異なるデータと通常データとが合わせて印字されたラベル」の意味も含めて、以下、「異データ付加ラベル」という。)である点で共通している。
カ.上記エ.から、甲1発明の「商品番号(PLUNo.)毎に、商品の単価、風袋重量、有効日、品名等を記憶するPLUファイル32及び商品番号毎に上記プロモーションラベルの発行の予約があるとき立つフラグYF4を記憶する予約ファイル33のそれぞれから、操作部から入力される商品番号毎に、読み出されたPLUデータと予約データがセットされる各レジスタ」と本件発明の「ラベルに印字するデータとして通常データと値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段」とは、ラベルに印字するデータとして通常データと通常データとは異なるデータとを商品毎に記憶する印字データ記憶手段である点で共通している。
以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、異データ付加ラベルを発行する異種ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと上記通常データとは異なるデータとを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と、上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に、上記通常データとは異なるデータが含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、上記通常データとは異なるデータが含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記異データ付加ラベルを異種ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられているラベルプリンタ。
[相違点]
A.異データ付加ラベルが、本件発明では値引価格(データ)が付加されたラベルであるのに対して、甲1発明では、広告文データ付加プロモーションラベルである点、
B.印字制御部が、本件発明では、指定手段で指定された商品に関する記憶手段で記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部であるのに対して、甲1発明では、そのような印字制御部ではない点。
[相違点の判断]
相違点A及びBについて、
上記甲第2号証には、商品に貼付する異データ付加ラベル、すなわち、通常データとは異なるデータと通常データとが合わせて印字されたラベルとして、通常時の重量・単価・値段(通常データ)を印字するとともに値下げ後の重量・単価・値段(値引価格)を印字するラベルが記載されていると共に、当該ラベルを、通常のラベルより大きくすることすなわち通常のラベルとは異なる種類のラベルとすることが記載されている(上記5.(2)b.参照)。
すなわち、上記甲第2号証には、異データ付加ラベルとして、ラベルの大きさが通常ラベルとは異なると共に、値引価格と通常データとが合わせて印字されるラベル(以下、「値引価格付加ラベル」という。)が記載されている。
そして、甲1発明において、通常のラベルとはラベルの大きさ等が異なるラベルを発行可能な第2の印字機構部4で、上記広告文データ付加プロモーションラベルに替えて、相違点Aのように、上記甲第2号証に記載された、ラベルの大きさが通常ラベルとは異なる値引価格付加ラベルを発行するようになすことは、格別阻害要因がなく、当業者が想到容易である。
それに伴い、相違点Bのように、指定手段で指定された商品に関する記憶手段で記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記値引価格付加ラベルを異種ラベル印字部に発行させる印字制御部を備えることも当然のことであり、その際、値引価格付加ラベル及び異種ラベル印字部を、それぞれ、臨時ラベル及び臨時ラベル印字部と称することも単なる称呼上の問題にすぎない。

(3)本件発明の進歩性の判断
以上のとおり、相違点A及びBに係る本件発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明は、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ラベルプリンタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、上記通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベルを発行する臨時ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと上記値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と、上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、上記値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられていることを特徴とするラベルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はラベルプリンタ、特に複数の印字部を有して異なる種類のラベルを発行するラベルプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばスーパーマーケットで販売される生鮮食料品には、その商品名を始め、単価や正味量、価格等が印字された値付ラベルが貼付されるが、このような通常のラベルの他に、人目を引くために比較的自由なレイアウトで、「広告の品」、「お買得品」等の販促文字やイラスト、あるいは値引商品であればその値引価格や、2パック買えば安くなるような場合であればその2パック分の値引価格等が大きく表示された販売促進用の所謂ポップラベルと呼ばれる黄色や赤色のラベルが別に貼付されることが多くなっている。
【0003】
その場合に、これらの値付ラベル(通常ラベル)及びポップラベル(臨時ラベル)は、従来より、特開昭63-294339号公報又は特公平8-585号公報に開示されているように、二つの印字機構(印字部)を有するラベルプリンタを用いてそれぞれ別々に発行されている。
【0004】
すなわち、商品名や通常価格等の通常データだけを商品に表示する場合は一方の印字部だけを使って通常ラベルを発行し、これに対し、販促文字や値引価格等の臨時データも商品に表示する場合にはもう一方の印字部も使って上記通常ラベルの発行と共に臨時ラベルも発行するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように通常ラベルと臨時ラベルとが別々に印字されて発行されることから、商品にラベルを貼るときにラベルを二回貼付しなければならず面倒であるとの問題が従来よりあった。
【0006】
また、臨時ラベルが値引価格を表示するものである場合には、その臨時ラベルを通常価格が表示された通常ラベルにできるだけ近づけて貼り付ける方がよく、そうしたときに貼付ミスによりラベル同士が重なってしまって印字された文字が読み取れなくなることも生じる。
【0007】
そこで、本発明は、商品名や通常価格等の通常データが印字された通常ラベルの他に、該通常データとは異なる販促文字や値引価格等の臨時データが印字された臨時ラベルも発行する場合に、その貼付作業が簡便となるようにラベルを発行することのできるラベルプリンタの提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は次のように特定したことを特徴とする。
【0009】
即ち、本発明は、所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、上記通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベルを発行する臨時ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと上記値引価格とを商品毎に記憶する印字データ記憶手段と、上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、上記値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられていることを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、指定された商品に関する印字データ中に値引価格が含まれていない場合は、通常ラベル印字部を使って、通常データのみが印字された通常ラベルが発行され、これに対し、指定された商品に関する印字データ中に値引価格が含まれている場合には、臨時ラベル印字部を使って、該値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルが発行される。
【0011】
すなわち、従来であれば、後者の場合に、通常データが値付ラベルに、臨時データがポップラベルにそれぞれ別々に印字されて二枚の異なるラベルが発行されていたものが、通常データと値引価格が合わせて印字された臨時ラベルが一枚だけ発行されることになる。その結果、この臨時ラベルを商品に一枚貼付するだけで通常データと値引価格との両方を商品に表示することができて、従来のように二枚の異なるラベルを別々に貼る必要がなくなると共に、貼付ミスによってラベル同士が重なってしまうということがない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、この実施の形態に係るラベルプリンタ1は、計量皿11に商品(図示せず)が載置されると、その計量値から商品の正味量及び価格を算出し、これらの値を商品名等と共にラベルに印字して発行する計量値付プリンタであって、メインプリンタ2とサブプリンタ3の二つのプリンタ装置を有する。
【0014】
両プリンタ2,3はそれぞれ印字部21,31を備えて、ラベルLs…Ls,Lp…Lpに所定のデータを印字したのち各発行口21a,31aから繰出し発行する。
【0015】
またメインプリンタ2には、テンキーやファンクションキーが配置された操作部22…22と表示部23とが設けられて、該操作部22…22のキー操作で商品の指定やラベル発行モードの設定が行なわれると共に、そのときの印字データやオペレーションメッセージ等が表示部23に表示されるようになっている。
【0016】
そして、この計量プリンタ1には、図2に示すように、それぞれマイクロコンピュータからなり、計量皿11に作用した負荷に応じた歪信号(計量値信号)を発生するロードセル(LC)12からの該計量値信号及び操作部22…22からのキー操作信号を入力すると共に、表示部23に対して表示すべきデータ信号やメッセージ信号を出力する中央制御部4と、この中央制御部4と独立回線5aで接続され、該中央制御部4から出力される印字信号を受けてメインプリンタ2の印字部21の動作を制御するメインプリンタ制御部5と、同じく中央制御部4と独立回線6aで接続され、該中央制御部4からの印字信号を受けてサブプリンタ3の印字部31の動作を制御するサブプリンタ制御部6とが内蔵されて、これら三つの制御部4,5,6により当該計量値付プリンタ1の動作全体が統括管理されるようになっている。
【0017】
また、上記中央制御部4にはメモリ41が格納されて、このメモリ41に、図3に示すように、商品名bや、商品を指定して呼び出す際に用いられる呼出番号(呼出No)a、あるいは単価c等の各種データがレイアウトされた商品マスターが登録されている。そして、中央制御部4は、上記操作部22…22のキー操作で呼出番号が入力されると、その商品に関する上記登録データを呼び出して表示部23に表示すると共に、これらのデータとロードセル12からの計量値信号とから正味量や価格等の演算を行ない、また上記登録データに基づいてラベルに印字すべき印字データの抽出や編集を行なって、その結果に応じて上記の二つのプリンタ2,3のいずれか一方の制御部5,6に印字信号を発信し、その印字部21又は31にラベルLs又はLpを発行させるようになっている。
【0018】
次に、この計量値付プリンタ1が行なうかかる計量値付制御を図4に示すフローチャートに従ってさらに詳しく説明する。
【0019】
まず作業者がラベル発行のモードを操作部22…22でキー入力して設定すると(ステップS1)、中央制御部4は「商品指定」のオペレーションメッセージを表示部23に表示し(ステップS2)、次いで作業者がそれに従って商品の呼出番号(作業者は別に商品毎の呼出番号のリストをもっている。)を同じく操作部22…22でキー入力すると(ステップS3)、その指定された商品に関する登録データを表示部23に表示すると共に、「計量」のオペレーションメッセージも併せて表示する(ステップS4)。そして作業者がそれに従って商品を計量皿11に載置し、その計量値が安定すると(ステップS5)、その計量値から上記登録データ中の包装風袋(図3には図示せず)を差し引いて正味量を算出し、さらにこの正味量に単価cを掛けることによって価格を算出する(ステップS6)。
【0020】
なお、図3に示した商品マスターの登録データは操作部22…22のキー操作により適宜変更できるようになっており、図例では定重量eの項が全て「0」とされているが、この項eに予め所定の重量値が登録されている場合は、その重量値eを正味量とする。また、同じく商品マスターにおいて、呼出番号が「0009」や「0012」の商品のように、定金額fの項に予め所定の金額が登録されている場合には、その金額fをそのまま表示価格とする。したがって、これらの商品については単価cは登録されていない。
【0021】
次に中央制御部4は上記登録データの中からラベルに印字すべき印字データを抽出する(ステップS7)。その場合に、中央制御部4は、図5に示すような通常の値付ラベル(通常ラベル)Lsに印字される通常データ、すなわち、商品部門コードi(図3には図示せず)、商品名b、商品識別バーコードj(商品マスターには「POSコード」として登録されているが図3には図示せず)、単価c、並びに上で算出した正味量k及び価格m、あるいは定重量eや定金額f等の各データを印字データとして抽出する。
【0022】
次に中央制御部4はサブプリンタ3が有るか否かの判定をする(ステップS8)。この判定は、サブプリンタ3が設置されており、その制御部6が中央制御部4と接続されて、該印字部31でのラベル発行が可能な状態である場合にYESと判断される。
【0023】
その結果サブプリンタ3が有ると判定された場合には、中央制御部4は次に登録データ中にポップ番号(POP No)dが有るか否かの判定をする(ステップS9)。この判定は、商品マスターのポップ番号dの項が「0」でない場合にYESと判断される。
【0024】
その結果ポップ番号dが有ると判定された場合には、中央制御部4は次に同じく登録データ中にM特価gが有るか否かの判定をする(ステップS10)。この判定は、商品マスターのM特価gの項が「0」でない場合にYESと判断される。
【0025】
そして、以上三つのステップS8?S10で全てYESの場合に、中央制御部4は次に上記ポップ番号dが「38」以上であるか否かを判定し(ステップS11)、YESであれば、上記M特価gが金額(正味量と単価cとから算出された通常価格又は定金額fの項に予め登録されている通常価格をいう。以下同じ。)より大きいことを確認したのち(ステップS12)、印字データの編集を行ない(ステップS13)、NOであれば、上記M特価gが金額より小さいことを確認したのち(ステップS16)、同じく印字データの編集を行なう(ステップS17)。
【0026】
その場合に、中央制御部4のメモリ41には、上記商品マスターの他に、図6に示すようにポップ番号d毎のイメージデータnが登録されていて、中央制御部4は、ポップ番号dが38以上でステップS13に進んだときには、上記ステップS7で通常ラベルに印字すべきものとして抽出した印字データ(通常データ)に、そのポップ番号dに対応するイメージデータn及びM特価g(臨時データ)を加えて編集し、この編集した印字データに印字コマンドを付した印字信号をサブプリンタ3の制御部6に対して独立回線6aを介して出力する(ステップS14)。なお、図6に示したように、上記イメージデータnには、ポップ番号dが「38」以上の場合に、複数品での値引きを表示する販売促進用の文字が登録されている。
【0027】
そしてサブプリンタ3は、この印字信号を受けて、図7に示すように、従来より所謂ポップラベルに表示される複数品での値引表示の販促文字n及びその値引価格g(臨時データ)が通常ラベルの上部に合わせて表示された構成のラベル(臨時ラベル)Lpを発行する(ステップS15)。このときサブプリンタ3には、通常ラベルに比べて上下に長く、かつ上部が黄色や赤色に着色されたラベルがセットされており、臨時データn,gがその着色部分に、商品名bや通常価格m等の通常データが無着色部分にそれぞれ印字されるようになっている。
【0028】
なお、図7に示したラベルは、呼出番号aが「0014」の商品に関して、図3の登録データ通りに処理された場合に発行される臨時ラベルである。また、図3の登録データにおいて、モードhが固定とは、M特価gが例えば500(円)で固定(呼出番号0001の商品の場合)の意味であり、その他に、例えば75(円)引き(呼出番号0011の商品の場合)や、21(%)引き(呼出番号0012の商品の場合)等がある。
【0029】
一方、中央制御部4は、ポップ番号dが38未満でステップS17に進んだときには、上記ステップS7で通常ラベルに印字すべきものとして抽出した印字データ(通常データ)に、そのポップ番号dに対応するイメージデータn及びM特価g(臨時データ)を加えて編集すると共に、さらに該印字データ中の通常価格mを横二本棒で消すようにして、この編集した印字データに印字コマンドを付した印字信号をサブプリンタ3の制御部6に対して独立回線6aを介して出力する(ステップS18)。
【0030】
そしてサブプリンタ3は、この印字信号を受けて、図8に示すように、従来より所謂ポップラベルに表示される一品での値引表示の販促文字n及びその値引価格g(臨時データ)が通常ラベルの上部に合わせて表示され、かつ通常価格mが無効とされた構成のラベル(臨時ラベル)Lpを発行する(ステップS19)。
【0031】
なお、図8に示したラベルは、呼出番号aが「0014」の商品に関して、図3の登録データ中、ポップ番号dが36、M特価gが310、モードhが固定とされた場合に発行される臨時ラベルである。
【0032】
このように、この実施の形態においては、ポップ番号dが38以上のものが複数品での値引き、38未満のものが一品での値引きとされているので、上記ステップS11でポップ番号dが38以上と判定されたときに、次のステップS12でM特価g(複数品購入する場合の合計価格)が通常価格(一品だけ購入する場合の価格)より小さい場合や、上記ステップS11でポップ番号dが38未満と判定されたときに、次のステップS16でM特価g(一品値引価格)が通常価格(一品通常価格)より大きい場合は不合理であるのでエラーと判定し、エラー発生メッセージを表示部23に表示する(ステップS20)。
【0033】
そして一方、上記ステップS8?S10でいずれかがNOの場合、すなわち、そもそもポップ番号d又はM特価gを0に登録していてサブプリンタ3が必要でないとき等は、中央制御部4は、ステップS7で通常ラベルに印字すべきものとして抽出した印字データ(通常データ)に印字コマンドを付した印字信号をメインプリンタ2の制御部5に対して独立回線5aを介して出力し(ステップS21)、メインプリンタ2は、この印字信号を受けて、前述の図5に示したように、商品名bや通常価格m等の通常データのみを印字した通常の値付ラベル(通常ラベル)Lsを発行する(ステップS22)。
【0034】
なお、図5に示したラベルは、呼出番号aが「0014」の商品に関して、図3の登録データ中、ポップ番号d又はM特価gが0とされた場合に発行される通常ラベルである。
【0035】
また、参考までに、図3の登録データ通りに処理された場合に、呼出番号aが「0009」の商品に対して発行される臨時ラベルLpを図9に、同じく呼出番号aが「0012」の商品に対して発行される臨時ラベルLpを図10にそれぞれ示した。
【0036】
このように、このラベルプリンタ1では、常にメインプリンタ2又はサブプリンタ3のいずれか一方だけが作動して、商品を値引販売しないときは、商品名bや通常価格m,f等の通常データのみが印字された通常ラベルLsがメインプリンタ2から発行され、商品を値引販売するときには、そのような通常データと合わせて、値引表示の販促文字nや値引価格g等の臨時データも一緒に印字された臨時ラベルLpがサブプリンタ3から一枚だけ発行される。
【0037】
その結果、従来であれば、後者の場合には、通常データのみが印字された値付ラベルと、臨時データのみが印字されたポップラベルとが二つのプリンタからそれぞれ別々に計二枚発行されるために、いずれか一方のラベル、特にポップラベルを取り忘れたり貼り忘れたりし、また、ラベルを二回貼付しなければならず、その際に重ね貼りして下の文字を隠してしまう等の貼付ミスが起こり易かったものが、このラベルプリンタ1を用いることによって一切の不具合が解消され、サブプリンタ3から発行された一枚の臨時ラベルLpを商品に貼付するだけでよくなり、従って貼付ミスが生じず、かつ値引価格と通常価格とが比較し易く近づいて表示されることになる。
【0038】
なお、前述したように、図3の商品マスターの登録データは操作部22…22のキー操作によって適宜変更できるので、例えば呼出番号aが「0001」や「0011」の商品の場合、図3に示した登録データ通りに処理されると、メインプリンタ2から通常ラベルLsが発行されるが、商品マスターを更新してポップ番号dを「36」に変更することにより、以降はサブプリンタ3から一品値引きを表示する臨時ラベルLpが発行されることになる。これに対して、例えば呼出番号aが「0016」や「0022」の商品の場合、図3に示した登録データ通りに処理されると、サブプリンタ3から複数品値引きを表示する臨時ラベルLpが発行されるが、商品マスターを更新してポップ番号dを「0」あるいはM特価gを「0」に変更することにより、以降はメインプリンタ2から通常ラベルLsが発行されることになる。さらに、「38」未満のポップ番号dを「38」以上に変更し又はその逆を行なうと共に、M特価gをそれに応じて更新することにより、一品での値引き表示を複数品での値引き表示に又は複数品での値引き表示を一品での値引き表示に相互変換することができる。
【0039】
次に、本発明の別の実施の形態を説明する。なお、上記の実施の形態と基本的に同じ構成要素には同じ符号を用い、また特に重複する説明は省略する。
【0040】
図11に示すように、この実施の形態に係るラベルプリンタ1では、二つのプリンタ制御部5,6がそれぞれ独立回線で中央制御部4に接続されているのではなく、途中で分岐した一本の共通回線4aで結ばれている。したがって、中央制御部4から発信された印字データと印字コマンドとからなる印字信号はこの共通回線4aを介して両方のプリンタ制御部5,6に入力される。
【0041】
また、この実施の形態においては、各プリンタ制御部5,6にそれぞれ宛先(アドレス)が登録されていて、中央制御部4は印字信号を発信する際にいずれか一方のアドレスコード(例えばメインプリンタ制御部5は「A1」、サブプリンタ制御部6は「A2」等)を付して印字信号を発信し、各プリンタ制御部5,6は自己のアドレスが付されている場合のみ自己宛の印字信号であると認識して取り込むようになっている。
【0042】
そして、図12に示すように、中央制御部4はステップS14’,S18’又はS21’において印字信号を発信する際に、ステップS14’もしくはS18’では該印字信号にサブプリンタ制御部6のアドレスを付して、またステップS21’ではメインプリンタ制御部5のアドレスを付して発信する。
【0043】
その結果、このラベルプリンタ1では、中央制御部4から発信された印字信号はメイン、サブの区別なく常に両方のプリンタ制御部5,6に入力されるが、該印字信号にいずれか一方のアドレスコードが付されているので、どちらのプリンタ制御部5,6に向けて発信された印字信号であるかがプリンタ制御部5,6の側において識別されることになり、結局、臨時データが無い場合はメインプリンタ2のみが作動して通常ラベルLsが発行され(ステップS22’)、臨時データが有る場合はサブプリンタ3のみが作動して臨時ラベルLpが発行されることになる(ステップS15’,S19’)。
【0044】
さらに、このように二つのプリンタ制御部5,6が一本の共通回線4aで中央制御部4と接続されて、該中央制御部4からの信号が両方のプリンタ制御部5,6に入力される場合は、次のような構成としてもよい。
【0045】
すなわち、各プリンタ制御部5,6を、それぞれの印字部21,31の制御だけでなく、中央制御部4のようにデータの処理や演算を行なうことができるように構成すると共に、中央制御部4は、ロードセル12からの計量値信号が安定したのちは、該計量値や呼び出した登録データ等をそのまま両プリンタ制御部5,6に向けて発信するだけとし、これらを入力した各プリンタ制御部5,6の側において商品の正味量や価格の算出、及び印字データの抽出や編集等を行なうように構成するのである。この場合の制御フローチャートは図13のようになる。
【0046】
図中省略したがステップT1?T5は、前述のフローチャート図におけるステップS1?S5と同様であり、中央制御部4が実行する。中央制御部4は、計量値信号が安定すると(ステップT5)、自らは以下の演算等のデータ処理を行なうことなく、該計量値と、ステップT4で呼び出して表示部23に表示した当該商品に関する登録データとを両プリンタ制御部5,6に向けて発信する(ステップT6)。
【0047】
そして、これらの入力信号に基づいて、各プリンタ制御部5,6は正味量及び価格を算出し(ステップT7)、ラベル印字の基本となる通常データを抽出する(ステップT8)。さらに、登録データ中にポップ番号dが有るか否かの判定と(ステップT9)、M特価gが有るか否かの判定とを行なう(ステップT10)。これらのステップは両プリンタ制御部5,6共が並行して実行する。
【0048】
そして、上記ステップT9及びステップT10の判定においていずれもがYESの場合、つまり当該商品の値引販売が設定されている場合は、通常ラベルLsを発行する必要がないので、該通常ラベルLsを発行するメインプリンタ制御部5はここでデータ処理を停止し(ステップT11)、サブプリンタ制御部6のみが以下のステップT12?T19を実行して臨時ラベルLpを発行する(ステップT15,T18)。
【0049】
これに対して、上記ステップT9又はステップT10の判定においていずれかがNOの場合、つまり当該商品の値引販売が設定されていない場合には、臨時ラベルLpを発行する必要がないので、該臨時ラベルLpを発行するサブプリンタ制御部6はここでデータ処理を停止し(ステップT20)、メインプリンタ制御部5のみが次のステップT21を実行して通常ラベルLsを発行する。
【0050】
なおこの場合、サブプリンタ制御部6は中央制御部4と接続されて臨時ラベルLpの発行が可能な状態であることが前提となっているので、前述のフローチャート図におけるステップS8に相当するステップはこのフローチャートには組み込まれていない。
【0051】
また、以上説明した各場合においては、図4もしくは図12のステップS11又は図13のステップT12のように、臨時ラベルLpが複数品値引表示に関するものか一品値引表示に関するものかの判断が、ポップ番号が38以上か否かで判定されていたが、図14のステップU11のように、一品購入時の通常価格(金額)と登録データ中のM特価gとの大小関係から判定するようにしてもよい。このようにすれば、図6に示したように、一品値引表示に関するイメージデータnと、複数品値引表示に関するイメージデータnとをポップ番号dで区別して登録する必要がなくなる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のラベルプリンタは、商品名や通常価格等の通常データと値引価格とを一枚に合わせて印字した臨時ラベルを発行するので、この臨時ラベルを一回貼付するだけで、通常データと値引価格との両方を商品に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るラベルプリンタの正面図である。
【図2】第1の実施の形態に係るラベルプリンタの制御システム図である。
【図3】中央制御部に登録された商品マスターのレイアウト図である。
【図4】第1の実施の形態に係るラベルプリンタの制御フローチャート図である。
【図5】メインプリンタで発行される通常の値付ラベルの説明図である。
【図6】中央制御部に登録されたイメージデータのレイアウト図である。
【図7】サブプリンタで発行される複数品での値引きを表示した臨時ラベルの説明図である。
【図8】サブプリンタで発行される一品での値引きを表示した臨時ラベルの説明図である。
【図9】別の商品に関する臨時ラベルの説明図である。
【図10】同じく別の商品に関する臨時ラベルの説明図である。
【図11】第2の実施の形態に係るラベルプリンタの制御システム図である。
【図12】第2の実施の形態に係るラベルプリンタの制御フローの一部である。
【図13】第2の実施の形態に係るラベルプリンタの別の制御フローチャート図である。
【図14】上記各制御フローに適用可能な変形例である。
【符号の説明】
1 ラベルプリンタ(計量値付プリンタ)
2 メインプリンタ
3 サブプリンタ
4 中央制御部
5 メインプリンタ制御部
6 サブプリンタ制御部
Lp 臨時ラベル
Ls 通常ラベル
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-02-23 
結審通知日 2005-02-28 
審決日 2005-03-11 
出願番号 特願平8-54009
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B41J)
最終処分 成立  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 國田 正久
藤井 靖子
登録日 2001-04-27 
登録番号 特許第3183621号(P3183621)
発明の名称 ラベルプリンタ  
代理人 青山 正和  
代理人 鈴木 三義  
代理人 福岡 正明  
代理人 福岡 正明  
代理人 西 和哉  
代理人 吉村 雅人  
代理人 吉村 雅人  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  

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