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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C10M
管理番号 1155900
審判番号 無効2004-80140  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-09-03 
確定日 2007-04-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2128578号発明「塑性加工用潤滑油剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2128578号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第2128578号発明は、昭和63年11月15日に出願した特願昭63-286868号の一部を、平成4年12月24日に新たな特許出願(特願平4-343672号)としたものであって、平成7年8月23日に出願公告され(特公平7-78226号)、平成9年4月25日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対し、請求人から本件無効審判の請求がなされ、審判における手続の経緯は以下のとおりである。
審判請求 平成16年9月3日
上申書(請求人) 平成16年11月1日
答弁書 平成16年12月8日
上申書(被請求人) 平成17年2月25日
上申書(請求人) 平成17年3月8日
上申書(2)(請求人) 平成17年3月8日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成17年3月8日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成17年3月8日
口頭審理 平成17年3月8日
上申書(請求人) 平成17年3月22日
上申書(被請求人) 平成17年3月22日
上申書(請求人) 平成17年3月25日
上申書(被請求人) 平成17年3月30日
上申書(請求人) 平成17年4月7日
無効理由通知(被請求人宛)、職権審理結果通知(請求人宛) 平成17年6月6日(発送6月9日)
上申書(請求人) 平成17年7月7日
意見書 平成17年7月11日
訂正請求 平成17年7月11日
上申書(請求人) 平成17年7月29日
弁駁書 平成17年7月29日

2 訂正の適否
(1)訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるもので、その訂正内容は、特許請求の範囲の請求項1に、
「(A)炭素数6?40の直鎖オレフィン2?50重量%、及び(B)40℃における動粘度が0.5?30cStの分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなる塑性加工用潤滑油剤。」とあるのを、
「(A)1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン及びこれらの混合物から選択される直鎖オレフィン2?50重量%、及び(B)40℃における動粘度が0.5?30cStのポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなるアルミフィン成形用潤滑油剤。」と訂正しようとするものである。
(2)「炭素数6?40の直鎖オレフィン」を「1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン及びこれらの混合物から選択される直鎖オレフィン」と訂正するのは、本件特許明細書(特公平7-78226号公報参照。以下同じ。)に、「本発明において(A)成分として用いられる直鎖オレフィンは、・・・が最適である。これらの直鎖オレフィンの具体例としては、1-オクテン,1-デセン,1-ドデセン,1-テトラデセン,1-ヘキサデセン,1-オクタデセン,1-エイコセンあるいはこれらの混合物などを挙げることができる。」(段落【0004】)との記載に基づくものであり、「分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」を「ポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」と訂正するのは、本件特許明細書に、「本発明において(B)成分として用いられる分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物とは、・・・具体的には、例えばポリブテン,ポリプロピレン等の分岐オレフィン,その水素化物,あるいはこれらの混合物などが挙げられる。」(段落【0005】)との記載に基づくものであり、「塑性加工用潤滑油剤」を「アルミフィン成形用潤滑油剤」と訂正するのは、本件特許明細書の、
「打抜加工実験
下記の打抜加工用潤滑油を用いるとともに、被加工板材としてJIS A1100-H26のアルミニウム材(板厚0.10mm)を用意し、アルミフィン成形専用50トンプレス(Burr Oak社製)を用い、工具材質ハイス,ストローク速度0.5m/sec,しごき率55%,成形穴形状2.5/8インチ,加工時間300サイクル/min×5minの条件にて打抜実験を行った。」(段落【0008】)
との記載に基づくものであり、いずれも、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてされた訂正であり、その訂正は、それぞれ、本件発明の潤滑油剤の(A)成分、(B)成分及び潤滑油剤の用途についての限定であると認められるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更には該当しない。
(3)よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項及び同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3 本件発明
前記のとおり、訂正が認められるから、本件発明は、平成17年7月11日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる。

「(A)1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン及びこれらの混合物から選択される直鎖オレフィン2?50重量%、及び(B)40℃における動粘度が0.5?30cStのポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなるアルミフィン成形用潤滑油剤。」

4 審判請求人の主張
(1)審判請求人は、本件特許第2128578号の請求項1に係る発明の特許を無効にする、審判費用は、被請求人の負担とする旨の審決を求める無効審判を請求し、証拠方法として甲第1号証?甲第28号証を提出して、大略以下のような無効理由を主張している。

ア 本件特許発明は、発明として完成していないものを含むので、特許法第29条第1項柱書の規定により特許することができないものであるから、本件特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
イ 本件特許発明は、本件特許出願前(原出願の出願前、以下同じ。)に日本国内において頒布された刊行物(甲第6号証)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するので、特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
ウ 本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物(甲第6?9号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
エ 本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物(甲第6?14号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
オ 本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物(甲第15号証、甲第13号証及び甲第6号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
カ 本件特許明細書には記載不備があるので、本件発明の特許は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第3号に該当し、無効とすべきものである。

(2)請求人の提出した証拠方法
甲第1号証 「実験報告書」(平成16年1月22日、エヌ・エス ルブリカンツ株式会社、永山信吾作成)
甲第2号証 「報告書」(平成16年5月24日、エヌ・エス ルブリカンツ株式会社、永山信吾及び昭和シェル石油株式会社、中村一元作成)
甲第3号証 「報告書」(平成16年5月24日、エヌ・エス ルブリカンツ株式会社、永山信吾及び昭和シェル石油株式会社、中村一元作成)
甲第4号証 「実験報告書(給油性)」(平成16年5月7日、エヌ・エス ルブリカンツ株式会社、永山信吾作成)
甲第5号証 「実験報告書(防錆性)」(平成16年5月12日、エヌ・エス ルブリカンツ株式会社、永山信吾作成)
甲第6号証 特開昭61-85492号公報
甲第7号証 特公昭43-30438号公報
甲第8号証 軽金属,Vol.30,No.5(1980年),287?297頁「アルミニウムの圧延」
甲第9号証 「新版 石油製品添加剤」(桜井俊男編著、昭和61年7月25日、株式会社幸書房発行)表紙、9頁、奥付
甲第10号証 潤滑,15巻,10号(1970年),635?643頁「圧延における潤滑」
甲第11号証 出光石油技術,16巻,6号(1973年),表紙,目次,605?614頁「合成潤滑油について」,奥付
甲第12号証 Petrotech,8巻,4号(1985年),345?348頁「合成潤滑油最近の進歩(4)ポリブテンの製造と合成潤滑油としての応用」
甲第13号証 潤滑,18巻,12号(1973年),931?934頁「潤滑油の基材・合成潤滑油」
甲第14号証 潤滑,15巻,6号(1970年),343?352頁「油性向上剤および極圧添加剤」
甲第15号証 米国特許第3288715号明細書(1966年11月29日発行)
甲第16号証 「報告書」(平成16年1月23日、昭和シェル石油株式会社、田中宣光作成)
甲第17号証 東京地裁平成15年(ワ)第23943号事件平成16年3月29日付け第3準備書面(原告)
甲第18号証 東京地裁平成15年(ワ)第23943号事件平成16年7月13日付け第5準備書面(原告)
甲第19号証 JIS K2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」
甲第20号証 「報告書」(平成17年2月14日、エヌ・エス ルブリカンツ株式会社、前田清作成)
甲第21号証 「実験報告書」(平成17年2月16日、エヌ・エス ルブリカンツ株式会社、永山信吾作成)
甲第22号証 東京地裁平成15年(ワ)第23943号事件平成16年2月23日付け第2準備書面(原告)
甲第23号証 「JIS工業用語大辞典第4版」(1998年7月15日、財団法人日本規格協会発行)表紙、1117頁「脱脂」の項、奥付
甲第24号証 「広辞苑第5版」(1998年11月11日、株式会社岩波書店発行)表紙、1656頁「脱脂」の項、奥付
甲第25号証 「JIS用語辞典V金属・化学・窯業編」(1978年11月1日、財団法人日本規格協会発行)表紙、37頁「アルカリ脱脂」の項、奥付
甲第26号証 「化学大辞典5」(昭和38年11月15日、共立出版株式会社発行)表紙、646?647頁「脱脂」の項、奥付
甲第27号証 「報告書」(平成17年3月18日、昭和シェル石油株式会社、田中宣光作成)
甲第28号証 トライボロジスト,38巻,2号(1993年)173?176頁「プレス油」

5 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする旨の審決を求め、証拠方法として乙第1号証?乙第25号証を提出して、請求人の主張する本件特許の無効理由のいずれにも理由がない旨の主張をしている。

被請求人の提出した証拠方法は以下のとおりである。
乙第1号証 「試験報告書」(平成16年3月22日、出光興産株式会社、金子正人作成)
乙第2号証 「塑性加工」(鈴木弘編、昭和42年11月30日、合名会社裳華房発行)表紙、208?221頁、奥付
乙第3号証 塑性と加工,vol.8,no.74(1967年)148?151頁「ポリブテンの圧延潤滑油への応用」
乙第4号証 「Product Information フィンストック オイル RF270 低粘度薄板用加工油」と題する書面(昭和シェル石油株式会社)
乙第5号証 「金属加工油シリーズ 低粘度加工油 フィンストックRF270(T-7F21C) 乾燥型加工油 フィンストックRF190(T-4G08A) のご紹介」と題するパンフレット(昭和シェル石油株式会社潤滑油部潤滑油一課)
乙第6号証 「トライボロジー叢書8 潤滑グリースと合成潤滑油」(星野道男ら著、昭和58年12月25日、株式会社幸書房発行)表紙、204?207頁、奥付
乙第7号証 「新版 石油製品添加剤」(桜井俊男編著、昭和61年7月25日、株式会社幸書房発行)表紙、10?13頁、奥付
乙第8号証の1 「化学大辞典」(大木道則ら編集、2001年6月1日、株式会社東京化学同人発行)表紙、589頁、奥付
乙第8号証の2 「ウーレット有機化学」(Robert J. Oullette著、2002年10月30日、株式会社化学同人発行)表紙、113頁、奥付
乙第9号証の1 特許異議申立理由及び証拠補充書(平成4年特許願第343672号事件、平成7年12月25日、特許異議申立人米山剛)
乙第9号証の2 特許異議申立理由補充書(平成4年特許願第343672号事件、平成7年12月18日、特許異議申立人板倉昭夫)
乙第9号証の3 特許異議答弁書(平成4年特許願第343672号事件(特許異議申立人米山剛)、平成8年7月22日、特許出願人出光興産株式会社)
乙第9号証の4 特許異議答弁書(平成4年特許願第343672号事件(特許異議申立人板倉昭夫)、平成8年7月22日、特許出願人出光興産株式会社)
乙第9号証の5 特許異議の決定謄本(平成4年特許願第343672号事件(特許異議申立人米山剛)、平成9年2月5日)
乙第9号証の6 特許異議の決定謄本(平成4年特許願第343672号事件(特許異議申立人板倉昭夫)、平成9年2月5日)
乙第10号証の1 米国特許第5072067号明細書
乙第10号証の2 欧州特許第0369320号明細書
乙第10号証の3 韓国特許第97533号明細書
乙第11号証 「試験報告書(1)」(平成17年2月24日、出光興産株式会社木村琢磨作成)
乙第12号証 「試験報告書(2)」(平成17年2月24日、出光興産株式会社木村琢磨作成)
乙第13号証 「試験報告書(3)」(平成17年2月24日、出光興産株式会社木村琢磨作成)
乙第14号証 「試験報告書(4)」(平成17年2月24日、出光興産株式会社木村琢磨作成)
乙第15号証 「報告書」(平成17年3月22日、出光興産株式会社小山三郎作成)
(添付資料1,2 Science Journal(1966年7月)69?73頁、「潤滑への化学的アプローチ」及びその訳文
添付資料3,4 Wear,9(1966年)160?168頁、「アルミニウムの境界潤滑における化学的効用」及びその訳文)
乙第16号証 「報告書」(平成17年3月22日、出光興産株式会社平野邦男作成)
乙第17号証 特開2003-96481号公報
乙第18号証 「Product Information フィンストック オイル RF270 低粘度薄板用加工油」と題する書面(昭和シェル石油株式会社)
乙第19号証 「金属加工油シリーズ 低粘度加工油 フィンストックRF270(T-7F21C) 乾燥型加工油 フィンストックRF190(T-4G08A) のご紹介」
乙第20号証 R.S.OWENS and W.J.BARNES:ASLE TRANSACTIONS,10(1967),77?84頁
乙第21号証 「特許分析報告書」(平成17年7月5日、出光興産株式会社赤津真言作成)
乙第22号証 「潤滑用語集-解説付-」(日本潤滑学会編、昭和56年7月20日、株式会社養賢堂発行)表紙、162頁、奥付
乙第23号証 「試験報告書(5)」(平成17年7月5日、出光興産株式会社木村琢磨作成)
乙第24号証 「試験報告書(6)」(平成17年7月5日、出光興産株式会社木村琢磨作成)
乙第25号証 「試験報告書(7)」(平成17年7月5日、出光興産株式会社木村琢磨作成)

6 当審の判断
(1)無効理由の概要
当審が発した無効理由通知における無効理由の概要は、本件の請求項1に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物A?Dに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、その発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当するので、無効とすべきものである、というもので、引用した刊行物は以下のとおりである。
A 米国特許第3288715号明細書(甲第15号証)
B 潤滑,15巻6号(1970年),343?352頁,「油性向上剤および極圧添加剤」(甲第14号証)
C 特開昭61-85492号公報(甲第6号証)
D 特開昭52-114602号公報

(2)引用刊行物の記載
ア 刊行物A(米国特許第3288715号明細書、請求人が提出した平成17年3月22日付け上申書に全訳が添付されている。以下、摘示部分については全訳における該当箇所も併せて指摘する。)
(a)「本発明はアルミニウム製品の加工に関するものである。特に詳しくは、本発明は加工工程中、加工部材とアルミニウム材の間の摩擦面にオレフィンのある群のものを用いて摩擦状態の下にアルミニウムを加工する技術の改良に関する。アルミニウム製品、例えばフィルム、フォイル等を含むアルミニウムシート、アルミニウムワイヤを加工する際、アルミニウムを切削、押出、プレス、スタンピング、鍛造する際等々においては、加工部材とアルミニウムとの間の潤滑には様々な困難があった。」[1欄10?23行、全訳1頁2段落]
(b)「上記目的のために有益であることを私どもが明らかにした(かつ顕著な刺激性又はその他の生理的効果を持たない)組成物は、以下の一般式をもつ少なくとも炭素数10の長鎖オレフィンである(以下「オレフィン」又は「オレフィン組成物」と称する)。
(I)

上記一般式において、R、R’は水素、フッ素からなる群から選ばれた基であり、その上に、R’はメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基及びトリフルオロメチル基からなる群から選ばれた基であってもよく、R”は少なくとも8個の炭素原子を持つ直鎖アルキル基、及び少なくとも8個の炭素原子を持つ直鎖フルオロアルキル基とからなる群から選ばれた、1価の直鎖飽和脂肪族基である。R”は炭素原子数が35を越えないことが望ましいが、それ以上の長鎖基も使える。」[1欄62行?2欄10行、全訳2頁4段落?3頁1段落]
(c)「従って、加工用部材の加工又は工作の結果として、上記部材が(酸化アルミニウム皮膜が破れた後に)新鮮なアルミニウム表面とただ一度だけ接触するアルミニウムの工作条件下で、加工を受けるアルミニウム片と加工部材との間の摩擦界面にこれらの長鎖オレフィンを導入すると、アルミニウムの加工(それが圧延、切削、押出、引き抜き等の場合)を行うのに必要な力が大幅に減少した;更に、アルミニウムが加工部材に付着した形跡はなかった;そして更に、このようなオレフィンによって、加工されたアルミニウムは高度に研磨された表面となったことを見出したのは驚くべきことであった。上記目的に対してこれらの長鎖オレフィンを使用すると、アルミニウムの加工の後に、検出可能な残留汚染物を残すことなく、この長鎖オレフィンは比較的温和な条件下で、アルミニウム表面から容易に蒸発できるのが普通であると言う更なる利点を有することも見出された。このことにより、圧延アルミニウムシート又は箔の加工の際に使用される通常の組成物を凌ぐ著しい改善が得られた、と言うのはアルミニウム表面の汚染を防ぐために加工後にアルミニウムから潤滑油を除去するために比較的厄介な工程が必要だからである。最後に、これらの潤滑剤は、工具を清浄にすることに、研磨することに、及び交換することに割かれる時間を大幅に短縮し、工具の寿命を著しく延ばす。」[2欄29?55行、全訳3頁3段落?4頁1段落]
(d)「(分岐鎖状化合物と対比して)上記一般式(I)に示された直鎖の化合物には、以下のものが含まれる、例えば、デセン-1,ドデセン-1、テトラデセン-1,α-メチルテトラデセン-1、ドデセン-2、テトラデセン-2、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1(セテン)、α-メチルヘキサデセン-1、オクタデセン-1、・・・等々パラフィン製品のクラッキングから得られるそのようなオレフィン類、又はフィッシャー・トロプシュ(FISCHER-TROPSCH)プロセスにより得られるこれらのオレフィン類の混合物も同様である。」[2欄56?66行、全訳4頁2段落]
(e)「製造が容易なこと、合成原料が容易に入手できること、及びそれらの原料の安定性、並びに潤滑剤として及び他の公知の潤滑剤への添加剤として優れた特性のために、オレフィン系材料として、12?25個の炭素原子の鎖長で1-又は2-の位置にオレフィン系不飽和結合を有する直鎖不飽和脂肪族炭化水素を使用することが好ましい。上記オレフィンは、単独あるいはこれらの混合物として使用できるし、或いはこれらのオレフィンは、アルミニウムの加工の際に改善をもたらすオレフィンの能力に顕著に影響しないその他の稀釈剤及び展延剤と混合してもよい。かくして、これらのオレフィン類は、潤滑油粘度の鉱油、ジエステル組成物等と混合される。」[2欄67行?3欄10行、全訳4頁3?4段落]
(f)「上記溶剤又はその他の潤滑油組成物に対するオレフィンの濃度は、溶液又は混合物の総重量の10?95重量%の範囲なら使用に好都合である。」[3欄22?26行、全訳5頁2段落]
(g)「オレフィン組成物が混合される典型的な鉱油又は炭化水素油は、25?10,000セイボルトユニバーサル秒(S.U.S.)の粘度を持つ石油から得られたものであるが、これは単一の炭化水素でも炭化水素混合物でもよい。」[3欄31?35行、全訳5頁4段落]
(h)特許請求の範囲
「1.切削、圧延、引き抜き及び押出から成る群から選ばれる加工方法に用いる加工部材とアルミニウム材を接触することによるアルミニウム材の加工方法において、加工部材とアルミニウム材との間の界面に、下記の一般式を有し本質的に単量体オレフィンから成る皮膜を供給(supplying)することを特徴とする改良方法。

(式中、R’は水素及びメチル基から成る部類から選ばれる基であり、R”は8?20個の炭素原子を有し、実質的にアルキル基の全ての炭素が直鎖の中にある一価のアルキル基である。)
2.圧延ロールと圧延対象のアルミニウムとの間の界面に、下記の一般式の本質的に単量体オレフィンから成る皮膜を供給することを特徴とするアルミニウムの圧延方法。(化学式とその説明省略。)」[7欄57行?8欄14行、全訳13頁]

イ 刊行物B(潤滑,15巻6号(1970年),343?352頁,「油性向上剤および極圧添加剤」)
(i)「潤滑油、グリースの使命は、いうまでもなくすべり合う金属どうしを油膜によって分離し、摩擦、摩耗を減少させ焼付きを防止することにある。しかしながら、潤滑条件がか酷になるとこの油膜は熱的あるいは機械的に破壊され、もはや潤滑作用を示さなくなり、著しい摩擦あるいは摩耗の増大をもたらし、ついには焼付きに至る。このような境界潤滑条件下において、潤滑油に潤滑性能を与えるのが極圧添加剤(extreme pressure additives)と総称される一連の添加剤である。従来、この種の添加剤は、吸着膜によって摩擦、摩耗を減少させる油性向上剤(oiliness improvers)と、化学反応の結果生成する被膜によって焼付きを防止する極圧添加剤とに分類されていたが、現在は、油性向上剤と極圧添加剤を総括して極圧添加剤と称するようになってきた。」[343頁左欄2?16行]
(j)「油性剤としては、古くからオレイン酸などの高級直鎖脂肪酸あるいは高級アルコール、アミン、エステル、グリセライド、さらには塩素化油脂、硫化油脂などが用いられてきた。」[347頁右欄12?15行]
(k)「以上で述べた油性剤は、現在でも広く使用されているが、最近ではα-オレフィン、あるいは芳香族化合物の油性剤としての効果が注目されている。R.S.Owensらは、cetane,1-cetane(注.「1-cetene」の誤記と認められる。),・・・を潤滑剤として、ステインレスの潤滑に対する二重結合の影響を検討し、表6の結果を得ている。表6に示されるように、1-ceteneは炭素鋼、ニッケルに対してはあまり効果はないが、クロムおよびステインレス鋼に対しては著しい摩擦減少効果を示している。この作用機構としては、摩擦面でα-オレフィンの二重結合が開きクロムあるいはクロム酸化物と化学的に結合し、強固な化学吸着膜を形成し、焼付きを防止しているものと説明されている。また、α-オレフィンはアルミニウムの潤滑に対しても有効に作用するといわれている。」[347頁右欄21?35行]

ウ 刊行物C(特開昭61-85492号公報)
(l)「潤滑油にアルキルペンタエリトリトールホスファイトの1種以上とホスホン酸エステルの1種以上を配合させた冷間加工用潤滑剤を被加工材の表面に塗布し、被加工材表面にアルキルペンタエリトリトール及びホスホン酸エステルと被加工材との反応によって形成される膜の存在の下に被加工材の塑性加工を行うことを特徴とするアルミニウム塑性加工方法。」[1頁、特許請求の範囲、請求項3]
(m)「本発明は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金の冷間鍛造に好適な潤滑剤及びそれを用いた塑性加工方法に関する。」[1頁右下欄4?6行]
(n)「本発明に用いられるアルキルペンタエリトリトール及びホスホン酸エステルの作用について述べると概略以下の通りである。すなわち、アルキルペンタエリトリトールは、被加工材または金型加工面などに吸着し、油性向上剤として働くもので、加工開始時のような低温、低面圧条件における金属同士の接触を防止するものであり」[3頁左上欄8?14行]
(o)「本発明のベース油として用いられる潤滑油は、鉱油の他に、αオレフィン油、モノエステル油、ポリブテン油、ポリグリコール油などの合成油及びこれらの混合油が例示される。」[3頁右上欄5?8行]
(p)潤滑油として、鉱油、ジオクチルセバケート、トリメチロールプロパントリカプリレート、ポリブテンを用いた場合の実施例1?10が比較例1,2と共に示されている。[4頁、表(第1表)]

エ 刊行物D(特開昭52-114602号公報)
(q)「イオウ含有量50ppm以下の多段接触水添炭化水素油、流動パラフィン、ポリオレフィンまたはアルキル化芳香族化合物のうちの少くとも1種類を潤滑油基油として含有する潤滑油組成物。」[1頁、特許請求の範囲第1項]
(r)「本発明の他の目的は実際の使用条件下でオイルステインの発生のない金属加工用潤滑剤、圧延油、切削油、摺動面油を提供することである。」[2頁左下欄2?5行]
(s)「ポリオレフィンとしては分子量200?2500の水素化されているかまたはされていないポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレンが使用できる。例えば出光石油化学(株)製出光ポリブテンあるいは出光IP-ソルベント等が好適である。」[3頁左上欄下から3行?右上欄3行]
(t)「実施例 1
下記表2に示す試料を用いてオイルステインの実験を行なった。試料1?4は本発明による潤滑油組成物である。・・・
表2

・・・試料1、2、4、5、7の性状を表3に示す。
表3

」(4頁左上欄6行?左下欄)

(3)対比・判断
刊行物Aには、アルミニウム製品に圧延等の塑性加工を行なう際の潤滑に用いられる組成物の発明が記載されており(摘記a、h)、その潤滑油組成物の成分としてデセン-1、ドデセン-1、テトラデセン-1、ヘキサデセン-1、オクタデセン-1等の炭素数が10以上の長鎖オレフィンが挙げられ(摘記b、d)、そのオレフィンは一般式(I)で表わされるもので、一般式(I)は、R及びR’の結合位置が不明りょうであるが、摘記dの具体的な例示化合物等の記載からみて、直鎖オレフィンであるか、又は少なくとも直鎖オレフィンが包含されるものと解される。また、潤滑油組成物中のオレフィンは10?95重量%の範囲が好都合である旨の記載もあり(摘記f)、さらに、オレフィンは潤滑油粘度の鉱油、ジエステル油と混合されることについても記載があり(摘記e)、オレフィンが混合される典型的な鉱油又は炭化水素油の粘度が25?10,000セイボルトユニバーサル秒であることについても記載がある(摘記g)。粘度「25?10,000セイボルトユニバーサル秒」の換算に関し、甲第27号証をみると、換算表の最小値は32.6セイボルトユニバーサル秒(SUS)であり、換算表によると、32.6SUSは2.0センチストークス(cSt)で、高粘度用の換算係数によると、10,000SUSは2160cStであるから、25?10,000SUSは、少なくとも2.0?2160cStの範囲を包含するものと認められる。
以上の点をふまえて、本件発明を刊行物Aに記載された発明と対比すると、いずれの発明も、アルミニウム製品加工用の潤滑油剤において、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンから選択される直鎖オレフィン10?50重量%を含有するものである点で一致又は重複し、そして、(1)潤滑油剤の直鎖オレフィン以外の成分が、本件発明では40℃における動粘度が0.5?30cStのポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であるのに対し、刊行物Aに記載された発明では、鉱油又はジエステル油等であり、その粘度が「潤滑油粘度」とされていて、オレフィン組成物が混合される典型的な鉱油又は炭化水素油が、25?10,000セイボルトユニバーサル秒の粘度を持つ石油から得られたもの、とされている点、及び(2)アルミニウム製品の加工に関し、本件発明ではアルミフィン成形用と特定されているのに対し、刊行物Aに記載された発明では、アルミニウム製品の加工とされている点で相違している。
まず、相違点(2)について検討する。
アルミニウム製品の加工について、刊行物Aには、「アルミニウム製品、例えばフィルム、フォイル等を含むアルミニウムシート、アルミニウムワイヤを加工する際、アルミニウムを切削、押出、プレス、スタンピング、鍛造する際等々においては、加工部材とアルミニウムとの間の潤滑には様々な困難があった。」と記載され(摘記a)、様々な態様のアルミニウム製品の加工があることが前提とされている。加工対象のアルミニウムの形態も、フィルム、フォイル等の非常に薄手のものから、ワイヤ加工、切削・鍛造等の厚みのあるものや塊状のものまで、幅広いものが挙げられている(加工態様も様々なものが挙げられている。)。また、摘記aの記載からみて、刊行物A記載発明では、それらの加工に際し、アルミニウム材と加工部材の摩擦面における潤滑の問題点を解消しようとするものであり、刊行物A記載発明は、その課題解決のために、1-ヘキサデセン等のオレフィンを潤滑油組成物の成分として用いることを教示するものであるから、当業者にとって、アルミフィンの成形加工についても当然その点に関して共通の課題を持つものと理解されるものと認められ、さらに、アルミフィンの成形加工自体はアルミニウム製品の加工として周知のものと認められるから、刊行物A記載発明のアルミニウム製品の加工としてアルミフィン加工を挙げてその用途に限定した潤滑油剤とすることに何ら困難なことはない。
次に、相違点(1)について検討する。
刊行物Bの記載によると、α-オレフィンが油性向上剤としての効果を有すること、及び、アルミニウムの潤滑に対しても有効に作用することも知られており(摘記k)、刊行物Aで長鎖オレフィンの具体例として挙げられているヘキサデセン-1(セテン)は刊行物Bにおいてその例とされているものであるから(摘記k)、当業者であれば、刊行物A記載発明におけるそのような長鎖オレフィン(ヘキサデセン-1はα-オレフィンである。)が油性向上剤として機能するものであると理解することができ、そうすると、刊行物Aにおいて「他の公知の潤滑剤への添加剤として優れた特性」(摘記e)とは油性向上剤としての特性であること、そして、オレフィン類と混合されるとする鉱油又はジエステル油(摘記e)は、潤滑油組成物における基油(基材)に相当するものであるということも理解できるものである。
一方、潤滑油基油に油性向上剤として働くアルキルペンタエリスリトール及びホスホン酸エステル(摘記l、n)を配合したアルミニウム塑性加工の際に使用できる(摘記m)潤滑剤組成物の発明に関する刊行物Cの記載によると、アルミニウム材の塑性加工時に使用される油性向上剤とベース油からなる潤滑油組成物においてベース油として用いられる潤滑油(基油)として、鉱油の外に、合成油であるジオクチルセバケート、トリメチロールプロパントリカプリレートと並んでポリブテンが知られているから(摘記o、p)、刊行物Cと同じ加工対象の潤滑油組成物である刊行物Aに記載された発明に係る潤滑油組成物の基油である鉱油又はジエステル油に代えて、ジエステル油と同じ合成油として刊行物Cに記載されている、金属加工油基油として周知のポリブテンを使用することは、当業者が容易に想到することができるものである。また、潤滑油組成物の基油として用いられるポリオレフィンは、水素化されているものも水素化されていないものも、同様に用いられることは、例えば刊行物Dにより知られている(摘記q?t)。
刊行物Aにおいて、オレフィンに混合される鉱油、ジエステル油は「潤滑油粘度」であるとされ(摘記e)、具体的には、鉱油の場合として、25?10,000SUSとされており(摘記g)、本件発明のように「40℃における動粘度が0.5?30cSt」という規定はされていないが、刊行物Aにおいても、アルミニウムの塑性加工に用いられる潤滑油を目的とするものであり、25?10,000SUSは、前記のとおり、少なくとも2.0?2160cStの範囲を包含する、広い範囲のものであるから、刊行物Aにおける粘度の規定は、本件発明のものと重複する範囲のものであるか、あるいは、例えば、刊行物Cで潤滑油の基油として鉱油と並んで具体的に使用されているジオクチルセバケートの粘度が12.5cSt(100゜F(=37.8℃))である(トライボロジー叢書1 新版潤滑の物理化学(株式会社幸書房、昭和58年4月15日、第2版発行)205頁参照)ことを考慮すると、「40℃における動粘度が0.5?30cSt」という規定は、当業者がアルミニウムの塑性加工において、普通に使用する潤滑油(基油)の粘度範囲を規定したものにすぎず、格別の範囲を規定したものではない。
よって、相違点(1)に係る本件発明の構成は、刊行物A?刊行物Dの記載に基づいて、当業者が容易に想到することのできるものである。
また、本件発明の加工性が向上するという効果については、刊行物Bに記載されているα-オレフィンの油性向上剤としての効果から予測される範囲のものであり、本件発明の臭気が少なく作業環境が向上する、及び、加工製品の表面の脱脂性が向上するという効果についても、例えば、前記刊行物Aの摘記cにもあるように、既知の効果であるか、刊行物A?刊行物Dに記載された発明に基づいて容易に想到する本件発明の潤滑油剤の構成が奏する効果の単なる確認にすぎず、それが、格別のものであるとは認められない。

7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物A?刊行物Dに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
塑性加工用潤滑油剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン及びこれらの混合物から選択される直鎖オレフィン2?50重量%、及び(B)40℃における動粘度が0.5?30cStのポリブテン及びその水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなるアルミニウムフィン成形用潤滑油剤。
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】本発明は塑性加工用潤滑油剤に関し、詳しくは特定の直鎖オレフィン及び分岐オレフィン又はその水素化物を含有してなり、圧延,絞り,打抜き,引抜き,冷間鍛造等の塑性加工において、製品の表面状態を良好に仕上げるとともに、加工性を向上させ、しかも加工工具の寿命を延長させることのできる塑性加工用潤滑油剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来から塑性加工油は、鉱油や合成系飽和炭化水素油に、アルコール類,脂肪酸エステル類,脂肪酸等の油性剤や極圧剤を配合することによって、加工性を維持してきた。しかし、この種の従来の塑性加工油では、加工性が不充分であって生産性を高めることができないうえ、上記油性剤,極圧剤等の添加により加工部分の脱脂や防錆面で様々な不都合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、アルミニウム,鋼,黄銅その他の金属あるいは合金を塑性加工するに際し、加工性に優れるとともに表面品質にも優れた塑性加工用潤滑油剤を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、特定の直鎖オレフィン及び分岐オレフィン又はその水素化物を用いることにより、優れた性能を備えた塑性加工用潤滑油剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(A)炭素数6?40の直鎖オレフィン及び(B)分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなる塑性加工用潤滑油剤を提供するものである。
【0004】本発明において(A)成分として用いられる直鎖オレフィンは、上述の如く、炭素数が6?40のものである。炭素数が6未満のものは、引火点が低いため適当でない。また炭素数が40を超えるものは、固体状となるため使用が困難であり、しかも基油や他の添加剤などとの混合,溶解が困難となり不適当である。さらに炭素数が40を超えるものは一般的でなく、入手も困難である。この直鎖オレフィンのうち、分子内に二重結合を1個有し、炭素数が6?30の化合物が好ましく、特に、炭素数が12?30のα-オレフィン(即ち、n-α-オレフィン)が最適である。これらの直鎖オレフィンの具体例としては、1-オクテン,1-デセン,1-ドデセン,1-テトラデセン,1-ヘキサデセン,1-オクタデセン,1-エイコセンあるいはこれらの混合物などを挙げることができる。これらの直鎖オレフィンは、様々な製法によって得たものを用いることができるが、例えばエチレンを通常の手段で重合させて得たエチレンオリゴマーを使用することができる。
【0005】本発明において(B)成分として用いられる分岐オレフィン及び分岐オレフィンの水素化物とは、上記直鎖オレフィン(A)以外のオレフィン及びこのオレフィンの水素化物をいう。これらは、一般に潤滑油剤の基油として用いられる合成油の一種であり、具体的には、例えばポリブテン,ポリプロピレン等の分岐オレフィン,その水素化物,あるいはこれらの混合物などが挙げられる。特に低分子量ポリブテン,低分子量ポリプロピレンさらには炭素数8?14のα-オレフィンオリゴマーが好ましい。上記の分岐オレフィン及びその水素化物としては、通常40℃における動粘度が0.5?500cSt、特に0.5?30cStのものが好適に用いられる。本発明において上記(B)成分を用いると、得られる潤滑油剤によれば、加工性が向上するとともに、使用中に発する臭気が少なく、作業環境が向上し、さらに加工製品の表面の脱脂性が向上する。
【0006】本発明の潤滑油剤は前記の(A)成分及び(B)成分により構成される。両成分の配合比率は特に制限を受けないが、(A)成分を好ましくは潤滑油剤全体の0.5?99.5重量%、さらに好ましくは1?80重量%、最も好ましくは2?50重量%の割合となるように配合する。
【0007】さらに本発明の塑性加工用潤滑油剤には、各種のアルコール類,脂肪酸類,エステル類,ジエステル類,多価エステル類,油脂類,硫化油脂類,硫化エステル類,硫化オレフィン,塩素パラフィン,リン酸エステル,亜リン酸エステル,ジチオリン塩(ジチオリン酸亜鉛,ジチオリン酸モリブデン等),ジチオカルバミン酸塩(ジチオカルバミン酸モリブデン等)などの公知の油性剤や極圧剤を添加することができ、また各種公知の乳化剤,防錆剤,腐食防止剤,消泡剤などを適宜添加することもできる。この場合、油性剤や極圧剤の配合量は特に制限はないが、一般には上記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して50重量部以下の割合とすればよく、また乳化剤,防錆剤,腐食防止剤,消泡剤などの添加剤にあっては、30重量部以下の割合とすればよい。
【0008】
【実施例】次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。尚、実施例中の「%」は全て重量基準である。
打抜加工実験
下記の打抜加工用潤滑油を用いるとともに、被加工板材としてJIS A1100-H26のアルミニウム材(板厚0.10mm)を用意し、アルミフィン成形専用50トンプレス(Burr Oak社製)を用い、工具材質ハイス,ストローク速度0.5m/sec,しごき率55%,成形穴形状2.5/8インチ,加工時間300サイクル/min×5minの条件にて打抜実験を行った。
【0009】実施例1
1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの1:1の混合物20%に、ポリブテン(分子量265)80%を添加したものを打抜加工用潤滑油として用いて、上記打抜加工実験を行った。
【0010】比較例1
40℃の動粘度4cStのパラフィン系鉱油のみを打抜加工用潤滑油として用いて、上記打抜加工実験を行った。
【0011】比較例2
40℃の動粘度4cStのパラフィン系鉱油90%にブチルステアレート10%を添加したものを打抜加工用潤滑油として用い、上記打抜加工実験を行った。これらの結果をまとめて表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】*1 しごき不良率を%で示す。
*2 ポンチしごき部の摩耗を示す。
*3 プレス部から3m離れた位置で、パネラー5人による感応検査を行い、下記の如く判定した。
◎ 全員が不快臭を感じない
○ 1人だけが不快臭を感じる
△ 3人以上が不快臭を感じる
【0014】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の塑性加工用潤滑油剤は、例えば圧延用潤滑油剤として用いた場合には、圧延荷重低減,圧下率向上などの圧延性能に優れるとともに、圧延後の製品の表面状態も良好である。特に各種金属(アルミニウム,アルミニウム箔,鋼(SUS304,SUS430),黄銅など)の冷間圧延に用いると、圧延性能が向上し、表面状態も良好であるため、生産性や品質を大幅に向上させることができる。また、各種金属(アルミニウム合金,純チタン,チタン合金,鋼など)の絞り,打抜き,引抜き,冷間鍛造等の加工の際に、これらの加工用潤滑油剤として用いた場合には、工具寿命の延長や加工品の表面品質の向上など加工性が向上するとともに、加工品の脱脂性,防錆性が向上するという利点がある。したがって、本発明の潤滑油剤は、各種金属や合金の圧延をはじめとする塑性加工の際の金属加工油剤として幅広く、かつ有効に利用される。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-11-02 
結審通知日 2005-11-08 
審決日 2005-11-14 
出願番号 特願平4-343672
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (C10M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 岩瀬 眞紀子
井上 彌一
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2128578号(P2128578)
発明の名称 塑性加工用潤滑油剤  
代理人 林 康司  
代理人 大月 雅博  
代理人 石川 順道  
代理人 島田 康男  
代理人 林 康司  
代理人 亀川 義示  
代理人 友松 英爾  
代理人 友松 英爾  
代理人 島田 康男  
代理人 小林 浩  
代理人 石川 順道  
代理人 大月 雅博  
代理人 石川 順道  
代理人 友松 英爾  
代理人 亀川 義示  
代理人 小林 浩  
代理人 片山 英二  
代理人 島田 康男  
代理人 片山 英二  
代理人 亀川 義示  
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