ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B42D 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 B42D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D |
---|---|
管理番号 | 1155924 |
審判番号 | 不服2004-6888 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-27 |
確定日 | 2007-04-09 |
事件の表示 | 特願2000-259929「ボランティア手帳」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月 3日出願公開、特開2001- 88469〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年7月14日(優先権主張:平成11年7月16日)の出願であって、平成16年1月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月1日受付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日受付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成16年3月1日受付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容及び目的 本件補正前後の特許請求の範囲に係る記載は、以下のとおりである。 (本件補正前の特許請求の範囲) 【特許請求の範囲】 【請求項1】本人の氏名等が記録される本人表示記録部と当該本人のボランティア活動の内容及び日付けが記録されているボランティア活動記録部とを有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項2】本人の氏名等が記録されている本人表示記録部と当該本人又は当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録部とを有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項3】本人の氏名等が記録されている本人表示記録部と当該本人が実施するボランティア活動の内容及び日付けが記録されるボランティア活動記録部と当該本人又は当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録とを有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項4】当該本人がボランティア活動により表彰された内容及び日付けを記録する表彰記録部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のボランティア手帳。 【請求項5】本人の氏名等が記録されている本人表示記録部と当該本人が実施するボランティア活動の内容及び日付けが記録されるボランティア活動記録部とボランティア先の確認印部を有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項6】電子記憶を利用した請求項1乃至5に記載の記録媒体である電子ボランティアカード。 (本件補正後の特許請求の範囲) 【特許請求の範囲】 【請求項1】 本人の氏名等が記載される本人表示記録部と、当該本人のボランタィアの活動の内容及び日付が記録されるボランティア活動記録部と、ボランティア先のボランタィアの活動の内容を確認する確認印部と、当該本人あるいは当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録部とを有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項2】 本人の氏名等が記載される本人表示記録部と、当該本人のボランタィアの活動の内容及び日付が記録されるボランティア活動記録部と、ボランティア先のボランタィアの活動の内容を確認する確認印部と、当該本人あるいは当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録部と、当該本人がボランティア活動により表彰された内容及び日付を記録する表彰記録部とを有することを特徴とするボランティア手帳。 最初に確認するに、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第1項第4号に規定される期間内に行われるものであり、同条第4項では、特許請求の範囲についてする補正は目的が限られている。また、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであることが求められている。 以下、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を「発明特定事項」という。 まず、補正前の請求項6により請求されているものは「電子ボランティアカード」であるが、これに相当する内容を特定する補正後の請求項は存在しないので、補正前の請求項6が削除されていることは明らかである。 次に、補正後の各請求項に記載される発明特定事項が、補正前の各請求項に記載されるいずれの発明特定事項に対応するものであるかを、補正前後の請求項記載を対比して検討する。 本件補正後の【請求項1】及び【請求項2】に係る記載は、発明特定事項として、「本人表示記録部」、「ボランティア活動記録部」、「確認印部」及び「保険内容記録部」なる各「部」が記載されている点において共通し、【請求項2】に係る発明は、それに加えて「表彰記録部」なる「部」が記載されている点で相違している。 他方、本件補正前の【請求項1】?【請求項5】に係る記載について参照するに、各々、発明特定事項として、以下のものが特定されている。 【請求項1】に係る記載:「本人表示記録部」、「ボランティア活動記録部」 【請求項2】に係る記載:「本人表示記録部」、「保険内容記録部」 【請求項3】に係る記載:「本人表示記録部」、「ボランティア活動記録部」及び「保険内容記録部」 【請求項4】に係る記載:請求項1?3の発明特定事項に加えて「表彰記録部」 【請求項5】に係る記載:「本人表示記録部」、「ボランティア活動記録部」及び「確認印部」 そこで、本件補正前の【請求項1】?【請求項5】と、本件補正後の【請求項1】及び【請求項2】とを対比すると、本件補正後の【請求項1】及び【請求項2】に係る記載にある発明特定事項である前記で確認した「部」を総て備える補正前の請求項は存在しておらず、仮に、補正後の請求項1、2が補正前のいずれかの請求項に対応するものであるとしても、それら請求項に係る発明特定事項を限定したものとはいえないことから、本件補正前のいずれの請求項にも対応していないといわざるを得ない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえないものである。 ここで、補正後の請求項1、2の「ボランティア活動記録部」(「ボランティア」は「ボランティア」」の誤記と認める。以下、同様)は、「当該本人のボランティアの活動の内容及び日付が記録される」との修飾がなされており、他方、「確認印部」は、「ボランティア先のボランティアの活動の内容を確認する」との修飾がなされていることからして、「ボランティア活動記録部」、「確認印部」とは、いずれも、本人のボランティアの活動に係るものであって密接に関連するものであることが窺える。 よって、「確認印部」は、「ボランティア活動記録部」の一部をなすものと解する余地がある。 この場合には、本件補正後の請求項1に係る記載は、前記の「本人表示記録部」、「ボランティア活動記録部」及び「保険内容記録部」の各「部」を発明特定事項とする本件補正前のいずれかの請求項に係る記載を補正するものと解することができる。 本件補正前の請求項3は、これに該当しており、前記のように解した場合、「確認印部」を追加することは、特許請求の範囲の減縮と解される。 同様に、本件補正後の請求項2に係る記載は、前記の「本人表示記録部」、「ボランティア活動記録部」、「保険内容記録部」及び「表彰記録部」の各「部」を発明特定事項とする本件補正前のいずれかの請求項に係る記載を補正するものと解することができる。 本件補正前の請求項4は、同請求項3が引用されているので、これに該当しており、前記のように解した場合、「確認印部」を追加することは、特許請求の範囲の減縮と解される。 してみるに、本件補正後の請求項1及び請求項2は、本件補正前の請求項3及び請求項4を対象として、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を行うものであると解し得る余地がある。 しかしながら、本件補正前の請求項5には、発明特定事項として「本人表示記録部」、「ボランティア活動記録部」及び「確認印部」の各「部」を発明特定事項とする請求項が別に存在しており、補正前の本願明細書では「ボランティア活動記録部」と「確認印部」とを異なる発明の発明特定事項としていたものと解釈せざるを得ず、「確認印部」が「ボランティア活動記録部」の一部をなすものとの解釈はできないことから、本件補正が、特許法第17条の2第4号第2号に係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解することはできないといわざるを得ない。 また、前記で指摘した各「部」を修飾する部分の表現は、本件補正前後において、概ね同じものであって、発明特定事項として前記で指摘した各「部」を追加するところに本件補正の趣旨があるものとも解され、補正前後で請求項数が減少していることから、特許法第17条の2第4項の第1号に係る請求項の削除が一部なされたものであることは把握できるものの、同項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものと解することもできず、同項第3号の誤記の訂正を目的とするものと解することもできない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定される目的のいずれにも該当しないものであるといわざるを得ない。 本件補正では、前記で検討したように、補正目的に違反しているものであるが、本件補正後の請求項1及び請求項2に係る記載は、ひとまず、本件の願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内のものであることに鑑みて、以下、特許法第17条の2第5項により準用される同報第126条第5項に規定される特許出願の際独立して特許を受けることができるもの(独立特許要件)であるか否かについても、以下、念のため検討しておく。 2.補正発明の認定 本件補正後の請求項1及び請求項2に係る記載から把握できるもの(以下、「補正発明1」及び「補正発明2」という。)は、前記「1.本件補正の内容及び目的」で示した、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項2】に記載されたとおりのものと認める。 3.補正発明1及び2の独立特許要件の判断 3-1.補正発明1及び2は、特許法第2条にいう発明に相当するか否か 補正発明1及び2は、いずれも前記で検討したように「部」なる発明特定事項を備えることを特徴とするものである。 ここで、当該「部」は、「記載される」、「確認する」或いは「記録する」ものと特定が付されているが、当該「部」とは、一般的に「全体」に対して「部分・部品・一部」を指すに過ぎず、ボランティア手帳にいかなる構成を付加するかまでを明らかにしたものではない。 というのも、手帳には罫線が付されていることが一般的であるとしても、対象となる手帳のいずれの部位にどのような内容を記録するかは、使用する者が適宜決定するか、或いは、対象となる手帳の使用方法を予め定めておき、使用する者はこれを遵守するものであって、特段に罫線を必要とする訳ではなく、まして、白紙頁形態の手帳にあっては、記録する内容は明らかにその使用方法でしかない。 よって、補正発明1及び2における「部」の内容を理解する上で、本願明細書の【発明の詳細な説明】をも参照することとする。 段落【0001】【発明の属する技術分野】には、 「この発明はボランティアが安心して活動できるようにボランティア保険証書貼付欄及び身分証明書・保険加入証・ボランティアカード等の収納袋とボランティアの基本マナー・ボランティア研修記録とボランティア活動記録欄と市町村・福祉関係・その他団体等の協力員など期間の決まっている一時的なボランティア活動を記録するその他の活動記録欄とボランティア活動の評価や反省・感想など自由に記入できるメモ欄と表彰記録欄とボランティア保険証書を設けたボランティア手帳に関するものである。」 との記載がある。 すると、当該記載からは、前記「部」が内容を記載する或いは証書を貼付するための「欄」を意味するものと解され、この点、本願明細書の段落【0005】以降の【発明の実施の形態】の記載においても、ボランティア手帳には各「欄」が設けられているとされる。 してみるに、補正発明1及び2の「部」とは、「欄」を意味するものと解され、それ以外のものを意味するものではないと解される。 そこで、前記理解を前提として、補正発明1及び2が、特許法第29条の規定を満たすか否かについて更に検討する。 前記に摘示したように、補正発明1及び補正発明2は、各種の「欄」を設けたボランティア手帳、なる現実に物として存在する手帳であるとされる。 しかし、当該「欄」に関し、罫で囲んだ部分、と解するべきであるとしても、新聞・雑誌編集などを想定した場合には、特段に罫線が付されているものともいえず、新聞・雑誌上の一区分または一定紙面、と解されるものでしかない。 すると、当該「欄」なる用語であると解したとしても、やはり、既に前記で検討した「部」なる用語同様に、特定の構成を指すものといえないこととなる。 ここで、特許法第2条においては、「この法律で「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定義されている。 そして、同法第29条は、前記第2条の定義を受けて、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。 また、同法第36条第1項では、「特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。」と規定し、同第2項では、「願書には、明細書、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。」と規定し、同第3項では、その事項として同第4号に特許請求の範囲が掲げられ、更に、同第5項では、「第3項第4号の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」と規定している。 これらの規定に照らせば、たとえ、特許を受けようとする対象物自体が、自然法則を利用するものであるとしても、発明の内容自体が、自然法則を利用した技術的思想の創作であることを要すると共に、特許出願人にあっては、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。 ここで、前記で詳細に検討したように、補正発明1及び2が対象としているボランティア手帳が「手帳」の一形態である以上、このボランティア手帳自体が、自然法則を利用するものであることは明らかである。 しかしながら、補正発明1及び2が特定の「欄」を設けているのは、ボランティア本人の特定、活動記録の特定、活動の確認等、ボランティア活動の円滑な遂行を助成することを目的とするものである。 すると、人間の社会活動を介在させた情報のみに特徴を有するものといわざるを得ない。 してみれば、これら補正発明1及び2は、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえず、特許法第2条に定義される発明とはいえないこととなり、結果として、同法第29条に規定されている「産業上利用することができる発明」にも相当しないというべきである。 3-2.補正発明1及び2が、特許法第29条に規定される産業上利用できる発明であるとして、これが新規性或いは進歩性を備えるか否か 上記に検討したように、補正発明1及び2は、特許法にいう発明とはいえないものではあるが、請求人は、審判請求を行う上で、本件出願当初の明細書に記載される実施の形態に即した発明特定事項となしていること、また、補正発明1及び2と同様に、手帳形態のものに特定の「欄(部)」を備えたものが、発明として認識されるべきであると主張していることに照らして、この主張通りに、補正発明1及び2の発明特定事項を加えたものが発明であるとの仮定に立った上で、新規性或いは進歩性を備えたものかについても、予備的に検討しておく。 3-2-1.実願昭59-100455号(実開昭61-15165号)のマイクロフィルム(以下、「文献1」という。) 考案の名称:法律事務所用日誌 実用新案登録請求の範囲: 「次の(イ)(ロ)の構成よりなるA片およびB片が見開きの左右のページに配されてなることを特徴とする法律事務所用日誌: (イ)最上部に日付欄を有し、上半部が、左方より裁判所予定欄、来客予定欄およびその他の活動予定欄が時間とともに記入できるように複数段に仕切られた弁護士日程記入部として構成され、かつ下半部が、受信欄、発信欄および弁護士指示欄を含む事務処理記入部として構成されたA片、 (ロ)時間、先方名、電話か訪問かの区別欄、用件、担当ならびに確認欄を含む受付事務記録部として構成されたB片。」 考案の詳細な説明1頁下から3行?2頁2行 「この考案は、法律事務所用日誌に関し、特には法廷活動を中心としてこれに付随する来客、通信等の広範な弁護士活動における事務の円滑かつ効率的な処理をなすための法律事務所用の日誌に関する。」 3-2-2.登録実用新案第3041205号公報(以下、「文献2」という。) 考案の名称:身元記録手帳 【要約】 「【課題】 事故等の救命活動が必要な緊急時に、必要な情報を早急に提供できる身元記録手帳を提供する。 【解決手段】 所有者を記載してある所有者記録カード、行きつけの病院の連絡先等の身体記録を記載してある身体記録カード、家族、会社、親戚、友人、保険会社等の連絡先を記載してある連絡先記録カード等の各種記録カードと、前記各種記録カード及び免許証を収納する書類ポケット3とを備え、事故等に遭遇したときに、救命活動に必要な情報、緊急連絡先等の情報を提供するものである。特に、免許証と一緒に携帯することにより、携帯頻度を高め、記載された情報の使用される可能性が高まる。」 【実用新案登録請求の範囲】 「【請求項1】 所有者、身体記録及び連絡先等が記載してある各種の記録カードと、 前記各種記録カードを各々収納する書類ポケットとを具備することを特徴とする身元記録手帳。 【請求項2】 前記書類ポケットは、免許証を収納できる大きさであることを特徴とする請求項1に記載の身元記録手帳。 【請求項3】 前記書類ポケットには、老人手帳が組込まれていることを特徴とする請求項1に記載の身元記録手帳。」 【図面の簡単な説明】には、添付された図面の【図1】?【図6】に関して、以下の記載がある。 「【図1】本考案の第一実施形態である身元記録手帳を示す斜視図である。 【図2】(a)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の最初のページに挿入する記録カードを示す説明図、(b)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の(a)に続くページに挿入する記録カードを示す説明図である。 【図3】(a)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の図2の(b)に続くページに挿入する記録カードを示す説明図、(b)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の(a)に続くページに挿入する記録カードを示す説明図である。 【図4】(a)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の図3の(b)に続くページに挿入する記録カードを示す説明図、(b)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の(a)に続くページに挿入する記録カードを示す説明図である。 【図5】(a)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の図4の(b)に続くページに挿入する記録カードを示す説明図、(b)は本考案の第一実施形態である身元記録手帳の(a)に続くページに挿入する記録カードを示す説明図である。 【図6】本考案の第二実施形態である身元記録手帳を示す斜視図である。」 3-2-3.毎日新聞全国版記事(平成10年4月27日付け)(以下、「文献3」という。) 掲載欄名:青い山脈(副題:活動を個人の経歴として記録しよう-) 副題:弘前市の田沢久雄さん「ボランティア手帳」作製 記者注:「学歴や職歴と同じように、ボランティアの活動歴も個人の経歴として記録していこうという運動に、ボランティア支援団体「青森県社会福祉振興会」=同県弘前市桔梗野=田沢久雄さん(64)が取り組んでいる。田沢さんはボランティアの活動先、内容、講習の受講記録などを書き込める、「ボランティア手帳」を、自費で作製した。「活動記録を残すことが、社会のボランティア実績の評価につながる」と活用を呼び掛けている。【清水 健二】」 記事本文:「ボランティアへの理解、関心がにわかに高まる中で、登録制度を設ける自治体が急増している。高校入学や企業の採用でも、活動実績を積極的に考慮するようになった。しかし一方で、「ボランティアは見返りを求めない」といった意識から、せっかく活動を重ねても、それをまとめておく人は少ない。実績の公平な評価がしにくいという問題も出てきた。 10年以上、手弁当でボランティア支援に取り組んでいる田沢さんが、活動記録の必要を感じるようになったのは、3年前の阪神大震災がきっかけだった。地域の民間在宅介護サービスなどで取り入れられている「時間貯蓄」(介護した時間だけ、将来、自分が介護を受けられる制度)からヒントを得て、「記録手帳」の作製・普及に取り組むようになった。 「評価欲しさにボランティアをするのは良いことではないが、ボランティアの実績は、きちんと評価されなければならない。受ける側が証明するものを発行し、する側がまとめておくというシステム作りが必要だ」と田沢さんは訴える。 田沢さんが考えたボランティア手帳は18センチ×10センチで、全68ページ約50回分のボランティア活動歴について、年月日、内容などを記録し、活動先が記録印を押すようになっている。また、ボランティアをめぐる最新の動き▽寝たきり老人の介護マニュアル▽手話と点字などの豆知識も図解入りで掲載しており、ハンドブックとしても利用できる。」 副題:進めたい書式統一(将来の「資格」化に期待) 記事本文:「2年前には、県内向けに7000部を発行した。社会福祉評議会や学校に配布したところ、数十?数百部単位での注文が相次ぎ、すぐになくなった。今回は全国で利用できるようにと、各地の助成団体のリストなども加えた。 田沢さんは35歳の時、病床の父親の介護のために勤務先の信用金庫を退職。家業の食料品店を継いでいたが、14年前に父親が亡くなったのを契機に、退職金などを資金として「青森県社会奉仕振興会」を設立した。 「自治体の補助金を受けない」ことをモットーに、独自のボランティア団体への助成や情報提供をしてきた。 田沢さんは今回の手帳発行について「全国の各団体が活動記録を草の根レベルで統一書式化していけば、ボランティアが『資格』として認められるようになるのでは」と期待を寄せている。 手帳は1万部を発行。希望者には送料のみで郵送する。問い合わせは田沢さん(・・・)まで。 写真掲載:「ボランティア手帳」と「ボランティア手帳」の利用を呼び掛ける田沢さんの写真が掲載されている。 3-2-4.ボランティア手帳(平成10年1月17日発行)(以下、「文献4」という。) 表紙につづく、第1頁には「発行にあたって」と題して、「財団法人 青森県社会奉仕振興会 理事長 田澤久雄」による「ボランティア活動が社会的に評価されて来るので、ボランティア活動記録欄に活動を記録し、活動先よりボランティア活動記録印を受けることを進める趣旨の記載がある。 そして、第8頁には、「●ボランティア・センターに行ってみよう」と題して、ボランティア・センターでは、ボランティア・コーディネーターがさまざまな活動に関する情報・資料を提供し、登録制で地域の活動を紹介していること、また専門的な知識や技術取得のための研修・訓練やセミナーが開催されていることが説明されている。 また、第12?14頁には、「ボランティア保険」と題して、これがボランティアに対する補償制度としてすでに利用されていること、これには、「1.ボランティア活動保険」、「2.ボランティア活動等行事用保険」及び「3.在宅福祉サービス総合補償」等があり、社会福祉協議会で取り扱われていることが記載されている。 そして、第43?64頁には、「日付」、「活動先」、「記録印」及び「活動内容:」がひとまとまりとされた記録欄が複数設けられている。 また、第65頁には、「ボランティア・老人介護などの受講記録」と題して、「日付」、「内容」及び「受講印」と記載した欄が設けられている。 更に、第66頁には、「おぼえがき」と題して、「生年月日」と「血液型」と記載した「名前」欄に、「TEL」と記載した「住所」欄、「勤務先または在校名」欄、「社会福祉協議会名」欄、「ボランティアグループ名」欄、及び「メモ」欄が設けられており、ボランティアを行う者に係る情報を記載する頁を設けてある。 そして、第67頁には、「(財)青森県社会奉仕振興会」が、昭和59年ボランティア活動の普及及び在宅老人への奉仕活動などを目的として設立されたこと、また、事業内容、財団のモットーが記載されている。 以上の記載と、前記文献3の記事内容とを読み合わせると、少なくとも、平成10年4月27日時点において、田澤久雄氏により作製された「ボランティア手帳」が存在していたことが推認できる。 そして、この「ボランティア手帳」は、以下の構成を備えたものであることが把握できる。 「ボランティア活動に参加した者が活動記録を残すべく自己の氏名を記載する欄と、ボランティア活動を日付と共に記録する欄と、活動先による記録印をもらう欄を備えたものであって、(手帳所有者のボランティア保険内容を記載するものではないが)ボランティア保険が何であるかを説明する欄、及び(前記第8頁の記載を読み合わせると、ボランティア活動を行うに際して、知識や技術取得のための研修・訓練やセミナーに参加する場合があることから)研修・訓練やセミナーを受講したことを記録する受講記録欄が設けられたボランティア手帳。」(以下、「文献4記載のボランティア手帳」という。) 3-2-5.文献4記載のボランティア手帳と補正発明1との対比 前記文献1、2にみられるように、様々な業務日誌、記録手帳は従来から周知である。 そして、業務日誌或いは記録手帳である点においては、補正発明1及び2のボランティア手帳も異なるところはないので、これら補正発明1及び2は、ボランティア活動を記録することに特化したものである点に特徴を有するものである。 しかしながら、文献3と4を読み合わせると、ボランティア活動の記録を行うボランティア手帳(「文献4記載のボランティア手帳」)が、本件出願前に既に存在していたことが把握できる。 そこで、当該文献4記載のボランティア手帳と、補正発明1を対比してみるに、文献4記載のボランティア手帳におけるボランティア活動に参加した者が活動記録を残すべく自己の氏名を記載する欄」、「ボランティア活動を日付と共に記録する欄」及び「活動先による記録印をもらう欄」は、補正発明1における「本人の氏名等が記載される本人表に記録部」、「当該本人のボランティアの活動の内容及び日付が記録されるボランティア活動記録部」及び「ボランティア先のボランティアの活動の内容を確認する確認印部」に各々相当することは明らかである。 してみるに、文献4記載のボランティア手帳と、補正発明1とは、以下の点で一致すると共に、相違点を有する。 <一致点> 本人の氏名等が記載される本人表示記録部と、当該本人のボランティアの活動の内容及び日付が記録されるボランティア活動記録部と、ボランティア先のボランティアの活動の内容を確認する確認印部とを有するボランティア手帳。 <相違点> 補正発明1においては、「当該本人あるいは当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録部を有する」と特定されているのに対して、 文献4記載のボランティア手帳においては、前記のように、第12?14頁の「ボランティア保険」と題する記載に、ボランティア保険がボランティアに対する補償制度としてすでに利用されていること、これには、「1.ボランティア活動保険」、「2.ボランティア活動等行事用保険」及び「3.在宅福祉サービス総合補償」等があり、社会福祉協議会で取り扱われていることが示されているものの、本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する欄が設けられているものではなく、前記特定を有しているとはいえない点。 3-2-6.相違点に係る当審の判断 前記相違点を検討するに、本件出願がなされた時点において、既に、ボランティア保険が存在していたことは、文献3、4に照らし明らかな事実である。 そして、文献3において田澤氏が「全国の各団体における活動記録の草の根レベルでの統一書式化」を意図しているとし、ボランティア活動に係る情報を当該手帳により統一した記載を行おうとし、ボランティア保険に入ることが通常であれば、これを情報として記載するようにする程度のことを想起するのは容易想到というしかない。 してみるに、文献4記載のボランティア手帳において、前記相違点に係る「当該本人あるいは当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録部を有する」なる特定を採用することは、容易想到である。 また、前記相違点に係る特定を採用したことによる作用効果は、当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものでもない。 3-2-7.まとめ 以上のとおり、少なくとも補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [補正の却下の決定のむすび] 本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定される目的のいずれにも該当しないものであり、また、仮に、該目的に該当するとしても、各請求項に記載されるものは発明とはいえず、さらに、仮に発明であるとしても、補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないのであるから、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、本件補正は、、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての当審の判断 1.本願発明の記載事項 本件補正が却下されたことから、本願の請求項1?6に係る記載は、出願当初の特許請求の範囲【請求項1】?【請求項6】に記載された次のとおりのものである。 【特許請求の範囲】 【請求項1】本人の氏名等が記録される本人表示記録部と当該本人のボランティア活動の内容及び日付けが記録されているボランティア活動記録部とを有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項2】本人の氏名等が記録されている本人表示記録部と当該本人又は当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録部とを有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項3】本人の氏名等が記録されている本人表示記録部と当該本人が実施するボランティア活動の内容及び日付けが記録されるボランティア活動記録部と当該本人又は当該本人が所属するボランティア団体が加入するボランティア保険の内容を記録する保険内容記録とを有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項4】当該本人がボランティア活動により表彰された内容及び日付けを記録する表彰記録部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のボランティア手帳。 【請求項5】本人の氏名等が記録されている本人表示記録部と当該本人が実施するボランティア活動の内容及び日付けが記録されるボランティア活動記録部とボランティア先の確認印部を有することを特徴とするボランティア手帳。 【請求項6】電子記憶を利用した請求項1乃至5に記載の記録媒体である電子ボランティアカード。 2.本願の請求項1?6に記載されるものが特許法第2条にいう発明に相当するか否か 本願の請求項1?6に記載されるもののうち、請求項3は、前記補正発明1と対比した場合、「ボランティア先のボランティアの活動の内容を確認する確認印部」を有するとする発明特定事項を外したものであり、また、同請求項4は、前記請求項3を引用するものであることから、前記補正発明2と対比した場合、前記請求項3と同様に、「ボランティア先のボランティアの活動の内容を確認する確認印部」を有するとする発明特定事項を外したものである。 してみるに、前記補正発明1及び2について検討したと同様に、ボランティア手帳が有する「部」とは、「欄」を意味するものと解され、それ以外のものを意味するものではないと解される。 すると、当該記載からは、前記「部」が内容を記載する或いは証書を貼付するための「欄」を意味するものと解され、この点、本願明細書の段落【0005】以降の【発明の実施の形態】の記載においても、ボランティア手帳には各「欄」が設けられているとされる。 しかし、当該「欄」なる用語であると把握したとしても、やはり、既に前記補正発明1及び2について検討したように、当該「欄」を有することをもって特定の構成が示されているものといえない。 すると、本願の請求項1?6に記載されるもののうち、請求項3及び4に記載されるものが、ボランティア手帳に特定の「欄」を設けることにあるものと解されるものの、ボランティア活動の円滑な遂行を助成することを目的とするのであってみれば、人間の社会活動を介在させた情報の内容にのみ特徴を有するものといわざるを得ない。 してみれば、前記補正発明1及び2に係る検討と同様の理由で、これら本願の請求項3及び4に記載されるものは、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえず、特許法第2条に定義される発明とはいえないこととなり、結果として、同法第29条に規定されている「産業上利用することができる発明」にも相当しないというべきである。 以上のとおりであるから、本願の請求項1?6に記載されるもののうち、少なくとも請求項3及び4に記載されるものは、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえず、特許法第2条に定義される発明とはいえないのであるから、これらが特許法第29条柱書きに該当するものとはいえず、審査官の判断は妥当である。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願の請求項3及び4に記載されるものが発明として特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-26 |
結審通知日 | 2007-02-06 |
審決日 | 2007-02-20 |
出願番号 | 特願2000-259929(P2000-259929) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B42D)
P 1 8・ 572- Z (B42D) P 1 8・ 1- Z (B42D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 聡子、赤木 啓二 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
長島 和子 藤井 靖子 |
発明の名称 | ボランティア手帳 |