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審決分類 |
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1156089 |
審判番号 | 不服2006-2023 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-06 |
確定日 | 2007-04-18 |
事件の表示 | 特願2002-246289「オブジェクト指向システムのオブジェクトに拡張可能な補助サービス集合を提供する方法および安全なフリーズ・サービスを提供する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-122571〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年7月8日(パリ条約による優先権主張1993年7月20日、米国)に出願した特願平6-179713号の一部を平成14年8月27日に新たな特許出願としたものであって、平成17年11月2日付けで拒絶査定がなされたところ、平成18年2月6日に審判請求がなされるとともに、平成18年3月8日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年3月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年3月8日付けの明細書に対する手続補正を却下する。 [理由] 2-1.補正後の本願発明 上記平成18年3月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)による補正後の請求項1は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 メモリに接続されたプロセッサを有する第1コンピュータ・サーバであって、前記プロセッサによって前記メモリから 複数のオブジェクトを管理し、 それぞれが少なくとも一つの補助サービス・オペレーションを有する複数の補助サービスを生成し、 上記複数の各オブジェクトにおいて、前記第1コンピュータ・サーバに対応付けられている第1コンピュータ・サーバ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し、および 所望の補助サービスに関連した名前に上記第1コンピュータ・サーバ識別子を変換することを行う、第1コンピュータ・サーバと、 それぞれが複数の名前-オブジェクト対応付けを有する複数の文脈オブジェクトを格納するメモリ備えた第2コンピュータ・サーバと、 メモリに接続されたプロセッサを有するクライアント・サーバであって、前記プロセッサによって前記メモリから 前記補助サービスの表示を受け取るために、前記複数の文脈オブジェクトの1つにおいて、所望の補助補助サービスに関連した上記名前をリゾルブし、および 前記補助サービスの前記表示を用いて前記補助サービス内の補助サービス・オペレーションの1つを呼出すことを行うクライアント・サーバと を有することを特徴とするシステム。」 2-2.特許法第17条の2第2項に規定する要件についての検討 以下、上記の請求項1に記載される事項が、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内であるか否かについて検討する。 補正後の請求項1では、「メモリに接続されたプロセッサを有する第1コンピュータ・サーバ」、「メモリ備えた第2コンピュータ・サーバ」、「メモリに接続されたプロセッサを有するクライアント・サーバ」の3つの構成が記載されている。そして、請求人はこれについて、審判請求書の【請求の理由】において、「補正前の各請求項は、「オブジェクト・マネージャ」と、「ネーム・サーバ」と、「クライアント」で構成されている。これらはいずれもサーバである。オブジェクト・マネージャがサーバであるのは段落0008に明示されている。従って、上記3つの構成要素はいずれもハードウエアであることは明らかであるが、それぞれをよりハードウエアであることが理解できる名称に変更した。すなわち、それぞれをコンピュータ・システムでのサーバであることが明確に分かるように、それぞれを「第1コンピュータ・サーバ」、「第2コンピュータ・サーバ」、「クライアント・サーバ」と変更した。」と説明している。 これに対して、出願当初の明細書および図面の記載では、例えば【図4】?【図6】に見られるように、「オブジェクトマネージャ」、「ネームサーバ」、「クライエント」なる3つの要素が記載されている。 しかしながら、これらの各要素のうち、「オブジェクトマネージャ」については、「記憶装置と、その記憶装置に記憶され、複数のオブジェクトを含むオブジェクト・マネージャ」(出願当初の【請求項1】)、「新しい補助サービスを提供するオブジェクトのオブジェクト・マネージャと、新しい補助サービスを用いるクライエントだけをリコンパイルすればいい。新しい補助サービスを提供しないオブジェクトを有する他のオブジェクト・マネージャや、新しい補助サービスを使用しない他のクライエントをリコンパイルする必要はない。」(【0019】段落)などの記載から、プロセッサやメモリを備えた装置構成ではなく、記憶手段に格納され、「リコンパイル」の対象となるようなソフトウェアであると解される。 なお、上記審判請求書の【請求の理由】において、請求人が引用する段落0008の、「システムの各オブジェクトは、オブジェクトのオペレーションを実行しかつオブジェクトに収集データを保持するサーバであるオブジェクト・マネージャを有している。」といった記載は、ソフトウェアである「オブジェクト」が、ハードウェアとしてのサーバを有するという表現が不自然であること、加えて、上述の【請求項1】、【0019】段落の記載を参酌すれば、「オブジェクト・マネージャ」がハードウェア構成としてのサーバであることを意味するものではなく、コンピュータがサーバとして機能するためのソフトウェアであることを意味するものと解される。 また、「ネームサーバ」についても、「上記記憶装置に、それぞれ複数の名前-オブジェクト対応付けを有する複数の文脈オブジェクトを備えたネーム・サーバを設けておき」(出願当初の【請求項1】)、「文脈オブジェクトは、「ネーム・サーバ」と呼ばれる特別な種類のオブジェクト・マネージャにおいて実行される。」(【0012】段落)などの記載から、記憶手段に設けられ、「オブジェクト・マネージャ」と同様な、ソフトウェアであると解される。 さらに、「クライエント」についても、上記【0019】段落の記載において、「オブジェクト・マネージャ」と同様に「リコンパイル」の対象となっていることから、プロセッサやメモリを備えた装置構成ではなく、記憶手段に格納されるソフトウェアであると解される。 そして、出願当初の明細書および図面の記載では、これら「オブジェクトマネージャ」、「ネームサーバ」、「クライエント」の各ソフトウェアを実行するコンピュータについて具体的な構成を示しておらず、当然に、各ソフトウェアを「第1コンピュータ・サーバ」、「第2コンピュータ・サーバ」、「クライアント・サーバ」に相当するような、別々の構成で実行することも開示していない。さらには、出願当初の明細書の【請求項1】では、「記憶装置と、その記憶装置に記憶され、複数のオブジェクトを含むオブジェクト・マネージャ」、「上記記憶装置に、それぞれ複数の名前-オブジェクト対応付けを有する複数の文脈オブジェクトを備えたネーム・サーバを設けておき」とあることから、「オブジェクト・マネージャ」を記憶する記憶手段に「ネーム・サーバ」が設けられており、「オブジェクト・マネージャ」と「ネーム・サーバ」は同一の記憶手段に存在している。 これらのことから、上記補正後の請求項1における、「メモリに接続されたプロセッサを有する第1コンピュータ・サーバ」、「メモリ備えた第2コンピュータ・サーバ」、「メモリに接続されたプロセッサを有するクライアント・サーバ」の3つの構成は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。 また、補正後の請求項1には、「複数の各オブジェクトにおいて、前記第1コンピュータ・サーバに対応付けられている第1コンピュータ・サーバ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し、および 所望の補助サービスに関連した名前に上記第1コンピュータ・サーバ識別子を変換することを行う、第1コンピュータ・サーバ」との記載があり、「第1コンピュータ・サーバ」という一つの構成において、「複数の各オブジェクトにおいて、前記第1コンピュータ・サーバに対応付けられている第1コンピュータ・サーバ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し」という動作と、「所望の補助サービスに関連した名前に上記第1コンピュータ・サーバ識別子を変換する」という動作の両方が行われるものとなっている。 これに対して、出願当初の明細書および図面の記載では、【図4】及び、【0020】段落の「図4において、オブジェクト・マネージャOM30は、2つのオブジェクト、すなわちオブジェクトO31およびオブジェクトAS61を実行する。」、【0021】段落の「図4および図7のステップ101において、先ず、クライエントB40は、オブジェクトO31における「Get_OMID()」オペレーションを呼出し、オブジェクトを実行するオブジェクト・マネージャに関するオブジェクト・マネージャ識別子を得る。」との記載から、上記「複数の各オブジェクトにおいて、前記第1コンピュータ・サーバに対応付けられている第1コンピュータ・サーバ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し」という動作については、「オブジェクト・マネージャ」によって実行されるものと解される。 一方、【図5】及び、【0022】段落の「適切なオブジェクト・マネージャ識別名を受け取ると、クライエントは、要求された補助サービスに対応付けられた名前にOMIDを変換する要求された補助サービスの種類に関する周知の機能を呼び出す。」、【0023】段落の「図5において、クライエントB40は、変換機能「function_as_type(「OM」)からリターンされた名前をリゾルブするよう文脈オブジェクトCにリクエストする。」との記載を見れば、「所望の補助サービスに関連した名前に上記第1コンピュータ・サーバ識別子を変換する」という動作を行うのは、文脈オブジェクトのある「ネーム・サーバ」であると解される。 してみると、「第1コンピュータ・サーバ」という一つの構成において、「複数の各オブジェクトにおいて、前記第1コンピュータ・サーバに対応付けられている第1コンピュータ・サーバ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し」という動作と、「所望の補助サービスに関連した名前に上記第1コンピュータ・サーバ識別子を変換する」という動作の両方が行われることは、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。 これらのことから、本件補正は出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第17条の2第2項に規定する要件を満たしていない。 2-3.補正却下のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第2項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 3.本願発明について 平成18年3月8日付け手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1-3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年9月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-3に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数のオブジェクトを管理し、 それぞれが少なくとも一つの補助サービス・オペレーションを有する複数の補助サービスを生成し、 上記複数の各オブジェクトにおいて、オブジェクト・マネージャに対応付けられているオブジェクト・マネージャ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し、および 所望の補助サービスに関連した名前に上記オブジェクト・マネージャ識別子を変換することを行うオブジェクトマネージャと、 それぞれが複数の名前-オブジェクト対応付けを有する複数の文脈オブジェクトを備えたネーム・サーバと、 前記補助サービスの表示を受け取るために、前記複数の文脈オブジェクトの1つにおいて、所望の補助補助サービスに関連した上記名前をリゾルブし、および 前記補助サービスの前記表示を用いて前記補助サービス内の補助サービス・オペレーションの1つを呼出すことを行うクライアントと を有することを特徴とするシステム。 【請求項2】 複数のオブジェクトを管理し、 フリーズ・オペレーションとメルト・オペレーションを有し、かつ少なくとも1つのフリーズ・メルト・サービス名を備えたフリーズ・メルト・サービスを生成し、 上記複数の各オブジェクトにおいて、オブジェクト・マネージャに対応付けられているオブジェクト・マネージャ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し、および 上記オブジェクト・マネージャ識別子を上記フリーズ・メルト・サービス名に変換する変換機能を実行することを行うオブジェクトマネージャと、 上記フリーズ・メルト・サービス・オブジェクト名を上記フリーズ・メルト・サービスの表示に対応付ける複数の名前対応付けを有する文脈オブジェクトを備えたネーム・サーバと、 上記オブジェクト・マネージャ識別子得るためにオブジェクトにおいて上記get_OMIDオペレーションを呼び出し、 上記オブジェクト・マネージャ識別子をフリーズ・メルト・サービス名に変換するために前記変換機能を呼び出し、および 上記フリーズ・メルト・サービスの表示を受け取るために、上記文脈オブジェクトにおいて、上記フリーズ・メルト・サービス名をリゾルブすることによって、オブジェクトに対して上記フリーズ・オペレーションと上記メルト・オペレーションの双方を上記フリーズ・メルトサービスから得ることを行うクライアントと を有することを特徴とするシステム。 【請求項3】 複数のオブジェクトを管理し、 複写オペレーションを有し、少なくとも一つの複写サービス・オブジェクト名を備えた複写サービス・オブジェクトを生成し、 上記複数の各オブジェクトにおいて、オブジェクト・マネージャに対応付けられているオブジェクト・マネージャ識別子をリターンするget_OMIDオペレーションを実行し、および 上記オブジェクト・マネージャ識別子を上記複写サービス名に変換する変換機能を実行することを行うオブジェクトマネージャと、 複数の名前対応付けの1つが前記複写サービス名を前記複写サービスの表示へ対応付けるものである、前記複数の名前対応付けを備えた前記文脈オブジェクトを含むネーム・サーバと、 前記複数の各オブジェクトにおいて、オブジェクト・マネージャ識別子を得るためにget_OMIDオペレーションを呼出し、 前記オブジェクト・マネージャ識別子を前記複写サービス名に変換する変換機能を呼し、および 前記複写サービスの表示を受け取るために、前記文脈オブジェクトにおいて、複写サービス名をリゾルブすることによって、オブジェクトに対して上記複写サービスから複写オペレーションを得ることを行うクライアントと を有することを特徴とするシステム。」 4.原査定の理由 原査定は、特許法第29条第1項柱書、第36条第4項を理由とするものであり、その備考欄には次のように記載されている。 「・理由4(【審決注】特許法第29条第1項柱書き)について 出願人は、平成17年9月29日付けの意見書において、同日付けの手続補正書でした明細書又は図面についての補正後の請求項1?3に係る発明は、「それぞれの機能を発揮するオブジェクト・マネージャと、ネームサーバーと、クライアントからなるシステムに明確に補正したので、明確にハードウエア資源を利用した構成となった」から、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である旨主張している。 しかしながら、上記補正書による補正後の請求項1?3に係る発明は、「オブジェクト・マネージャ」「ネームサーバー」及び「クライアント」からなるシステム、つまり、「物」の発明として請求されているものの、「オブジェクト・マネージャ」「ネームサーバー」及び「クライアント」の各機能(例えば、「生成」「変換」「リゾルブ」等)を実現するにあたり、ハードウェア資源をどのように用いているのか何ら特定されていないから、全体としてみれば、本願発明は、単に、オブジェクト指向モデルを「オブジェクト・マネージャ」「ネームサーバー」及び「クライアント」を用いて実行することを表明しているにすぎず、当該表明のみをもって、自然法則を利用しているとはいえない。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」とはいえず、特許法第29条第1項柱書に規定する「発明」の要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 ・理由1(【審決注】特許法第36条第4項)について ……(中略)…… ロ)理由1(3)c)について 出願人は、上記意見書において、「OMIDを所望の補助サービス名に変換する特定の手段それ自体は明細書記載のように周知である。」旨主張している。 しかしながら、本願明細書段落【0016】の記載を参酌すると、本願においては、単一のOMIDに対して複数種類の補助サービスが対応する場合も想定され得るが、一方、本願明細書の記載を参酌しても、先の拒絶理由通知で示したとおり、単一の識別子OMIDのみから「補助サービスの要求された種類」の名前に変換するための具体的な実現手段が何ら記載されていないから、結局、オブジェクト・マネージャ識別子からどのようにして要求する補助サービス・オブジェクト名に変換するのか依然として不明である。 したがって、本願発明の詳細な説明及び図面の記載は、依然として不明確であるから、本願請求項1?3に係る発明は、特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができない。」 5.当審の判断 5-1.特許法第29条第1項柱書の理由について 特許法第29条第1項柱書には、「産業上利用することができる発明をした者は、・・・その発明について特許を受けることができる。」と規定され、特許法第2条第1項には、特許法でいう「発明」について、「『発明』とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定義されている。そこで、本願請求項1?3に係る発明が、この特許法でいう「発明」の定義における「自然法則を利用した技術思想の創作」に該当するか否かについて検討する。 本願請求項1?3に係る発明では、「システム」が、「オブジェクト・マネージャ」「ネームサーバー」及び「クライアント」を有するものとなっているが、この「オブジェクト・マネージャ」「ネームサーバー」及び「クライアント」は、上記補正却下の理由2-2欄で検討したようにいずれもソフトウェアであるから、本願請求項1?3に係る発明は、「オブジェクト・マネージャ」「ネームサーバー」及び「クライアント」の各ソフトウェアがコンピュータのハードウェアによって実行される「システム」であると解される。 そして、本願請求項1?3の記載では、この「オブジェクト・マネージャ」「ネームサーバー」及び「クライアント」を各ソフトウェアを実行するハードウェアについて何ら具体的な構成を示していない。その結果、「複数のオブジェクトを管理し」などの記載される各機能について、処理内容が処理手段とどのように協働しているのかが具体的でなく、単に「コンピュータによって実行されること」が理解できる程度である。従って、請求項1?3に係る発明はソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されていないので、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、特許法でいう「発明」に該当しない。 よって、本願請求項1?3に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので特許を受けることができない。 5-2.特許法第36条第4項の理由について 本願請求項1には、「複数の文脈オブジェクトの1つにおいて、所望の補助補助サービスに関連した上記名前をリゾルブし」(【審決注】「補助補助サービス」は「補助サービス」の誤記と認められるが、そのまま記載した。)と記載されており、これに対応する内容として、明細書の発明の詳細な説明には、 「【0022】 適切なオブジェクト・マネージャ識別名を受け取ると、クライエントは、要求された補助サービスに対応付けられた名前にOMIDを変換する要求された補助サービスの種類に関する周知の機能を呼び出す。変換機能は、変更されないオブジェクト・マネージャ識別子をリターンする単なる識別機能である。図7のステップ105において、クライエントは、補助サービスのその種類がバインドされた周知の文脈における変換された名前をリゾルブする。たとえば、クライエントは、リゾルブ・リクエスト「AS=Context_C->Resolve(function_as_type( OMID))を出す。function_as_type(OMID)は、補助サービスの要求された種類の名前にOMIDを変換する。 【0023】 図5において、クライエントB40は、変換機能「function_as_type(「OM」)からリターンされた名前をリゾルブするよう文脈オブジェクトCにリクエストする。」(【審決注】明細書の【0022】段落中では「ー」の半角文字が使用されていたが、審決中には記述できないので「-」に置き換えて記載した。) と記載されている。しかしながら、この記載では、OMIDを、「補助サービスの要求された種類の名前」にどのように変換するのかについて具体的な方法が示されていない。 この点に関して、さらに【図5】をみると、文脈オブジェクトCには「OM」と、オブジェクトASを矢印で指す「●」が矢印で接続されている。同図において、オブジェクトOを矢印で指す「●」が、「オブジェクトOの表示」とされ、文脈オブジェクトCを矢印で指す「●」が、「文脈オブジェクトCの表示」とされていることから、上記のオブジェクトASを矢印で指す「●」は、「オブジェクトASの表示」であると解される。つまり、上記の「OM」と、オブジェクトASを矢印で指す「●」が矢印で接続されている状態は、「OM」と「オブジェクトASの表示」が対応づけられた状態であると解される。してみると、この情報を用いてOMIDである「OM」を「オブジェクトASの表示」に変換することは可能であるが、この変換には、「補助サービスの要求された種類」の情報が用いられていない。 本願明細書の「各オブジェクトにおいて実行される固有のオペレーションの他、システムのオブジェクトに対して保守オペレーションを行なうことのできる補助サービス集合を有していると有利である。たとえば、オブジェクトを複写する補助サービスや、オブジェクトをフリーズしたりメルトしたりする補助サービスが使用可能である。一般に、それぞれのオブジェクトは、使用可能なそれぞれの種類の補助サービスを有している。」(【0016】段落)の記載によれば、補助サービスには複写やフリーズなどの「補助サービスの種類」があるから、OMIDを、「補助サービスの要求された種類の名前」に変換するということは、OMIDが同じであっても、要求される補助サービスの種類によって、変換される名前が異なってくることがある、ということを意味するものと解される。 しかしながら、上述の「OM」と「オブジェクトASの表示」が対応づけを用いた変換では、補助サービスの種類が用いられていないから、補助サービスの種類によって、変換される名前が異なってくることはありえない。よって、この変換が、OMIDを、「補助サービスの要求された種類の名前」に変換するものであるとは認められない。 また、上記の他にOMIDの変換に関連すると考えられる記載として、【0028】段落及び【0030】段落に、プログラムに類似した記述があるが、何の言語であるのか、記述されるキーワードにどのような意味があるのかなどの前提が全く示されておらず、この記述から何らかの技術思想を読み取ることはできない。 そして、その他に本願明細書の発明の詳細な説明において、OMIDを、「補助サービスの要求された種類の名前」に変換する構成を示している記載はない。 してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載では、請求項1に記載される「複数の文脈オブジェクトの1つにおいて、所望の補助補助サービスに関連した上記名前をリゾルブし」という事項について、当業者が容易に実施できる程度に開示しているとはいえない。 してみると、本願明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易にその実施をすることができる程度に、請求項1に係る発明の構成が記載されておらず、特許法第36条第4項の要件を満たしていない。 6.結び 以上の通りであるから、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので特許を受けることができない。また、本特許出願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-16 |
結審通知日 | 2006-11-21 |
審決日 | 2006-12-04 |
出願番号 | 特願2002-246289(P2002-246289) |
審決分類 |
P
1
8・
14-
Z
(G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F) P 1 8・ 531- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤穂 州一郎、林 毅 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 成瀬 博之 |
発明の名称 | オブジェクト指向システムのオブジェクトに拡張可能な補助サービス集合を提供する方法および安全なフリーズ・サービスを提供する方法 |
代理人 | 山川 政樹 |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 紺野 正幸 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 黒川 弘朗 |