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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F |
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管理番号 | 1156245 |
審判番号 | 不服2004-4294 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-04 |
確定日 | 2007-04-19 |
事件の表示 | 平成10年特許願第371625号「クリーム半田印刷機とそれに用いる位置ずれ量演算方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月11日出願公開、特開2000-190452〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は平成10年12月25日の出願であって、平成16年1月27日付けで拒絶の査定がされたため、請求人はこれを不服として同年3月4日付けで本件審判請求をするとともに、同年4月5日付けで明細書についての手続補正をした。 当審においてこれを審理した結果、平成18年11月15日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成19年1月22日付けで意見書及び手続補正書を提出した。 したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成19年1月22日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「スクリーンマスクと、スクリーンマスクおよびプリント基板を撮像する検知手段と、この検知手段により基地部上に配線パターンおよびランドが形成されたプリント基板に前記スクリーンマスクを重ねた状態で撮像されたスクリーンマスクの開口部と前記ランドとの位置関係を計測する位置計測手段と、計測されたスクリーンマスクの開口部と前記ランドとの位置関係から双方のずれ量を演算する演算手段とを備えたクリーム半田印刷機であって、スクリーンマスクの開口部の設計寸法とその許容値を保持する記憶手段と、前記検知手段により撮像された印刷前におけるスクリーンマスクの開口部の面積、サイズを検出するサイズ・面積検出手段と、前記記憶手段の保持するスクリーンマスクの開口部の設計寸法とその許容値に基づいて前記サイズ・面積検出手段で検出された面積、サイズを有するスクリーンマスクの開口部の良否判定を行う良否判定手段とを備えることを特徴とするクリーム半田印刷機。」 第2 当審の判断 1.引用刊行物記載の発明の認定 原審における平成15年6月18日付けの拒絶理由に引用された特開平9-309198号公報(以下「引用例1」という。)には、「回路基板を保持して移動し位置決めするステージ部と、前記ステージ部をX、Y、θ方向に移動させる駆動手段と、前記位置決めした回路基板を当接させるスクリーン版と、前記スクリーン版に当接しながら移動して前記位置決めされた回路基板に印刷ペーストを印刷するスキージとを備えたスクリーン印刷装置において、回路基板の基板認識マークの位置とスクリーン版のスクリーン認識マークの位置とを認識すると共に、前記回路基板が前記スクリーン版に当接した状態で前記回路基板の特定部分において前記スクリーン版の開口パターンの位置とこの開口パターンを通して前記回路基板のランドパターンの位置とを認識する撮像手段と、前記の両認識マークの位置を合わせるに必要な前記ステージ部のX、Y、θ方向の移動量を算出すると共に、前記の開口パターンの位置とこの開口パターンを通して認識した前記ランドパターンの位置とに基づいて開口パターンとランドパターンとを合わせるに必要な位置補正量を算出する画像処理部と、前記ステージ部のX、Y、θ方向の移動量と前記位置補正量とに基づいて前記駆動手段を動作させ前記開口パターンとランドパターンとを一致させるようにスクリーン版に対する回路基板の位置決めを行なう制御部とを有することを特徴とするスクリーン印刷装置。」(【請求項2】)及び「クリーム半田などのペーストをスクリーン印刷する」(段落【0002】)との記載があり、請求項2記載中の「印刷ペースト」は「クリーム半田」であってもよいのだから、引用例1には、請求項2の「印刷ペースト」は「クリーム半田」に限定した次の発明が記載されている。 「回路基板を保持して移動し位置決めするステージ部と、前記ステージ部をX、Y、θ方向に移動させる駆動手段と、前記位置決めした回路基板を当接させるスクリーン版と、前記スクリーン版に当接しながら移動して前記位置決めされた回路基板にクリーム半田を印刷するスキージとを備えたスクリーン印刷装置において、回路基板の基板認識マークの位置とスクリーン版のスクリーン認識マークの位置とを認識すると共に、前記回路基板が前記スクリーン版に当接した状態で前記回路基板の特定部分において前記スクリーン版の開口パターンの位置とこの開口パターンを通して前記回路基板のランドパターンの位置とを認識する撮像手段と、前記の両認識マークの位置を合わせるに必要な前記ステージ部のX、Y、θ方向の移動量を算出すると共に、前記の開口パターンの位置とこの開口パターンを通して認識した前記ランドパターンの位置とに基づいて開口パターンとランドパターンとを合わせるに必要な位置補正量を算出する画像処理部と、前記ステージ部のX、Y、θ方向の移動量と前記位置補正量とに基づいて前記駆動手段を動作させ前記開口パターンとランドパターンとを一致させるようにスクリーン版に対する回路基板の位置決めを行なう制御部とを有するスクリーン印刷装置。」(以下「引用発明1」という。) 2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定 引用発明1の「スクリーン印刷装置」は「クリーム半田を印刷する」から、「クリーム半田印刷機」ということができる。 引用発明1の「回路基板」、「スクリーン版」、「ランドパターン」及び「スクリーン版の開口パターン」は本願発明の「プリント基板」、「スクリーンマスク」、「ランド」及び「スクリーンマスクの開口部」にそれぞれ相当し、「スクリーンマスク」を印刷機に含めるかどうかは認識の問題にすぎないから、「スクリーンマスク」を発明特定事項の1つとすることは相違点を構成しない。また、回路基板(プリント基板)が、基地部上に配線パターンおよびランドが形成されたものであることは自明である。 引用発明1の「撮像手段」は、「前記回路基板が前記スクリーン版に当接した状態で前記回路基板の特定部分において前記スクリーン版の開口パターンの位置とこの開口パターンを通して前記回路基板のランドパターンの位置とを認識する」のだから、引用発明1の「スクリーン版の開口パターン」及び「ランドパターン」は「基地部上に配線パターンおよびランドが形成されたプリント基板に前記スクリーンマスクを重ねた状態で撮像された」ものであり、引用発明1の「撮像手段」と本願発明の「スクリーンマスクおよびプリント基板を撮像する検知手段」に相違はない。 引用発明1が「開口パターンとランドパターンとを合わせるに必要な位置補正量を算出する画像処理部」有することと、本願発明が「スクリーンマスクの開口部と前記ランドとの位置関係を計測する位置計測手段」及び「計測されたスクリーンマスクの開口部と前記ランドとの位置関係から双方のずれ量を演算する演算手段」を備えることにも相違はない。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「スクリーンマスクと、スクリーンマスクおよびプリント基板を撮像する検知手段と、この検知手段により基地部上に配線パターンおよびランドが形成されたプリント基板に前記スクリーンマスクを重ねた状態で撮像されたスクリーンマスクの開口部と前記ランドとの位置関係を計測する位置計測手段と、計測されたスクリーンマスクの開口部と前記ランドとの位置関係から双方のずれ量を演算する演算手段とを備えたクリーム半田印刷機。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉本願発明が「スクリーンマスクの開口部の設計寸法とその許容値を保持する記憶手段と、前記検知手段により撮像された印刷前におけるスクリーンマスクの開口部の面積、サイズを検出するサイズ・面積検出手段と、前記記憶手段の保持するスクリーンマスクの開口部の設計寸法とその許容値に基づいて前記サイズ・面積検出手段で検出された面積、サイズを有するスクリーンマスクの開口部の良否判定を行う良否判定手段とを備える」のに対し、引用発明1が、これら手段を備えない点。 3.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断 以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。 原審における平成15年6月18日付けの拒絶理由に引用された特開平3-130155号公報(以下「引用例2」という。)は、発明の名称を「スクリーン印刷機におけるマスクと基板のマツチング方法」とする公開公報であって、「スキージ34を摺動させて、繰り返し回路パターンを印刷している間に、パターン孔35の縁部に、印刷ペースト40が付着しやすい(第4図(a)参照)。・・・クリーム半田は、時間の経過とともにこれに含有される溶剤が揮発して粘度が高くなりやすいことから、縁部にかなり付着しやすい傾向にある。このようにパターン孔35の縁部に印刷ペースト40が付着すると、基板24に塗布される回路パターン41の形状が悪くなる(第4図(b)参照)。 そこで上記カメラ38.39により、パターン孔35を適宜観察し、ペースト40の付着の度合を検査する。そして付着の程度が大きい場合には、印刷を中断し、マスク33の交換や清掃を行う。この場合、パターン孔35の完全開口面積S1と、現在の開口面積S2との比(K=S2/Sl)を求め、この比が所定値以下になった場合には、自動的に印刷を中断するとともに、ブザーやランプなどの報知手段により、その旨報知するとよい。」(3頁右上欄12行?左下欄15行)との記載がある。 上記記載中「パターン孔35」は本願発明の「スクリーンマスクの開口部」に相当するものであるから、引用例2には、スクリーンマスクの開口部をカメラにより観察し、その面積S2を検出し、完全開口面積S1との比(S2/Sl)が所定値以下であるかどうかを判定することが記載されている。 引用例2記載の技術はクリーム半田印刷に関する技術であるから、これを引用発明1に採用することにつき、当業者には何の困難性もない。 ところで、上記引用例2記載の技術と相違点2に係る本願発明の構成を比較すると、スクリーンマスクの開口部の基準値(本願発明では「設計寸法」であり、引用例2では「完全開口面積S1」)を定め許容値内であるかどうかを判定する点では一致しているものの、具体的手段においては、「設計寸法とその許容値を保持する記憶手段」を有するかどうか(以下「検討事項1」という。)、検出及び比較すべき物理量を「サイズ・面積」とするかどうか(以下「検討事項2」という。)及び「印刷前における」判定かどうか(以下「検討事項3」という。)の点では相違し、引用発明1に引用例2記載の技術を採用しても、なお検討事項1?3の相違が残るから、上記検討事項1?3が進歩性を肯定するに足りるものかどうか検討する。 引用例2において、「完全開口面積S1」とは初期状態(未使用状態)におけるパターン孔35の面積と解され、S2/Slが所定値以下かどうかを判定していることからみて、「完全開口面積S1」は理想値(設計値)に近いものと解される。しかし、一般にあらゆる物品の製造において製造誤差を避けることは困難であり、スクリーンマスクの開口部がその例外であると理解することは著しく困難である。そのことは、本件出願の2年以上前に頒布された特開平8-242073号公報に「スクリーンマスク版の許容開口幅を算出」(【請求項2】)と、及び特開平8-1907号公報に「クリーム半田16を基板7に印刷するのに先立って、スクリーンマスク11のパターン孔18の面積Sを計測する。」(段落【0013】)と記載されていることからみて、技術常識というべきである。ここで、検討事項2の「サイズ・面積」につき、サイズと面積の両方が必要なのか、一方のみでよいのか、本願明細書の発明の詳細な説明を精査しても明らかでないが、どのような意味であるとしても(サイズについては前掲特開平8-242073号公報に、面積については引用例2及び前掲特開平8-1907号公報に記載されている。)、製造誤差が避けられない以上、製造後未使用状態(検討事項3の「印刷前」)において、許容値内かどうかを判定することは設計事項というべきであり、未使用状態の「サイズ・面積」であれば、設計寸法及びその許容値と比較する(そのため、設計寸法及びその許容値を保持する必要があり、これは検討事項1に当たる。)ことも設計事項というべきである。 したがって、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 すなわち、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 本願発明がは特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-14 |
結審通知日 | 2007-02-20 |
審決日 | 2007-03-06 |
出願番号 | 特願平10-371625 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中澤 俊彦 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
藤井 勲 國田 正久 |
発明の名称 | クリーム半田印刷機とそれに用いる位置ずれ量演算方法 |
代理人 | 石原 勝 |