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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1156255
審判番号 不服2004-14343  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-08 
確定日 2007-04-19 
事件の表示 特願2001-357706「液晶装置、液晶装置の製造方法及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月23日出願公開、特開2002-311449〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年11月22日(優先権主張平成13年2月6日)の出願であって、平成16年6月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年7月8日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年8月3日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成16年8月3日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月3日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1を、下記のように補正することを含むものである。

「【請求項1】 第1基板と第2基板との間に液晶を配置して成る半透過反射型液晶装置において、
前記第1基板に形成された反射性導電膜と、
該反射性導電膜上に積層されると共に該反射性導電膜の端縁からはみ出した部分を有する透光性の金属酸化物膜と、
互いに隣接する前記透光性の金属酸化物膜の間隙に対向する前記第2の基板に形成された遮光膜としてのブラックマスクと、
前記第1基板の外側から前記液晶に向けて光を照射する照明手段と
を有し、前記ブラックマスクの幅は、互いに隣接する前記透光性の金属酸化物膜の間隔と等しく、互いに隣接する前記反射性導電膜の間隔より狭く形成されることを特徴とする半透過反射型液晶装置。」

また、本件補正は、請求項1?13に記載した発明を特定するために必要な事項である、液晶装置について、「半透過反射型」との限定を行うものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について検討する。

(2)引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由において引用された特開2000-66199号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明な一対の第1及び第2基板と、該第1及び第2基板間に挟持された液晶層と、
前記第2基板の前記液晶層側の面上に形成されており、前記第2基板に垂直な方向から平面的に見て相互に夫々分断されている複数の反射層と、前記反射層に部分的に重ねて形成されていると共に平面的に見て前記反射層に重ならない部分を含む透明電極と、前記第2基板の前記液晶層と反対側に配置された照明装置とを備えたことを特徴とする液晶装置。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶装置の技術分野に属し、特に、反射型表示と透過型表示とを切り換えて表示することのできる液晶装置及びこの液晶装置を用いた電子機器の技術分野に属する。」

(ウ)「【0008】本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、反射型表示と透過型表示とを切換え可能な液晶装置において、比較的簡単な装置構成を用いて、視差による二重映りや表示のにじみなどが発生せず、反射型表示時と透過型表示時の両方で高品位の画像表示が可能であると同時に装置信頼性が高い半透過反射型の液晶装置及びその液晶装置を用いた電子機器を提供することを課題とする。
・・・
【0011】本発明の液晶装置では特に、反射層において透明電極が重なっている反射領域(非透過領域)で反射された外光は、該反射領域にある透明電極部分によって駆動される液晶部分を通過する。即ち、該反射領域にある透明電極部分により縦電界で駆動する液晶部分を用いて反射型表示を行える。他方、照明装置から発せられ、反射層の間隙に当たる透過領域(非反射領域)を透過する光源光は、当該反射層に重なっていない透明電極部分を通過し、該透過領域にある透明電極部分によって駆動される液晶部分を通過する。即ち、該透過領域にある透明電極部分により縦電界で駆動する液晶部分を用いて透過型表示を行える。このように、反射層に重なっている透明電極部分を用いて反射型表示時の液晶駆動を行い、反射層に重なっていない透明電極部分を用いて透過型表示時の液晶駆動を行うので、いずれの型の表示時にも縦電界で良好に液晶駆動を行うことが可能となり、各ドット内又は各画素内において液晶の配向方向が均一となり、配向方向の乱れに起因する表示品質の劣化を防止できる。尚、反射層において透明電極が重なっていない部分は、表示に寄与しない(即ち、コントラスト比を低下させる)ため、基本的に不要であり、限られた画像表示領域の有効利用の観点からも、この透明電極が重なっていない反射層部分は、設けないように平面レイアウトするのが好ましい。」

(エ)「【0034】本発明の液晶装置の他の態様では、非駆動時が暗(黒)状態である。
【0035】この態様によれば、非駆動時が暗状態であるので、透過型表示時に液晶が駆動されない画素間またはドット間からの光漏れを抑えることができ、よりコントラストが高い透過型表示を得ることができる。また、反射型表示時に、画素間やドット間からの表示に不要な反射光を抑えることができるので、よりコントラストが高い表示を得ることができる。このように一般にブラックマトリクス或いはブラックマスクと称される遮光膜を反射電極の間隙に対向する位置に設けることなく、透過型表示時及び反射型表示時におけるコントラストを向上させることが可能となる。加えて、このような遮光膜を設けることにより反射型表示時の明るさが低下する事態を未然に防ぐこともできる。」

(オ)「【0044】(第1実施形態)本発明に係る液晶装置の第1実施形態を図1から図6を参照して説明する。図1は本発明に係る液晶装置の第1実施形態の構造を示す概略縦断面図である。この実施形態は基本的に単純マトリクス型の液晶表示装置に関するものであるが、同様の構成によりアクティブマトリクス型の装置や他のセグメント型の装置、その他の液晶装置にも適用することは可能である。
【0045】図1において、第1実施形態の液晶装置では、2枚の透明基板201及び202の間に液晶層203が枠状のシール材204によって封止された液晶セルが形成されている。液晶層203は、所定のツイスト角を持つネマチック液晶で構成されている。上側の透明基板201の内面上にはカラーフィルタ213が形成され、このカラーフィルタ213には、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色層が所定パターンで配列されている。カラーフィルタ213の表面上には透明な保護膜212が被覆されており、この保護膜212の表面上に複数のストライプ状の透明電極211がITO(Indium Tin Oxide)膜などにより形成されている。透明電極211の表面上には配向膜210が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。
【0046】一方、下側の透明基板202の内面上には、上記カラーフィルタ213の着色層毎に形成されたストライプ状の反射層216上に反射層216より一回り面積の広いストライプ状の透明電極215が透明電極211と交差するように複数配列されている。
【0047】尚、TFD素子やTFT素子を備えたアクティブマトリクス型の装置である場合には、各透明電極215は矩形状に形成され、アクティブ素子を介して配線に接続される。
【0048】反射層216はCrやAlなどにより形成され、その表面は透明基板201の側から入射する光を反射する反射面となっている。透明電極215の表面上には配向膜214が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。
【0049】このように第1実施形態では、所定間隔を隔ててストライプ状に配列された複数の反射層216の各間隙が、バックライトからの光源光を透過する機能を担う。このような反射層216の間隔は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましい。このようにすることで、人間が認識することが困難であり、間隙を設けたことで生じる表示品質の劣化を抑えることができ、反射型表示と透過型表示を同時に実現できる。また、反射層216の間隙は反射層216に対して、5%以上30%以下の面積比で形成することが好ましい。このようにすることで、反射型表示の明るさの低下を抑えることができるとともに、反射層の間隙から液晶層に導入される光源光によって透過型表示が実現できる。
・・・
【0056】次に図1を参照して、以上の如く構成された本実施形態における反射型表示及び透過型表示について説明する。
【0057】先ず反射型表示の場合、図の上側から当該液晶装置に入射する外光は、偏光板205、位相差板206及び散乱板207をそれぞれ透過し、カラーフィルタ213、液晶層203を通過後、反射層216によって反射され、再び偏光板205から出射される。このとき、液晶層203への印加電圧によって明状態と暗状態、及びその中間の明るさを制御することができる。
【0058】また透過型表示の場合、バックライトからの光は偏光板208及び位相差板209によって所定の偏光となり、反射層216の形成されていない間隙部分より液晶層203及びカラーフィルタ213に導入され、その後、散乱板207、位相差板206を透過する。このとき、液晶層203への印加電圧に応じて、偏光板205を透過(明状態)する状態と吸収(暗状態)する状態、及びその中間の状態(明るさ)を制御することができる。
【0059】ここで反射型表示と透過型表示について、図3から図6を用いて更に詳しく説明する。図3は、TFD素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の正面概略図である。走査線501に接続されたTFD素子(またはMIM素子)502が、島状のAl反射層503上に積層形成されておりAl反射層503よりも面積が一回り広い島状のITO透明電極504に接続されている。尚、 図3においては、ITO透明電極504はAl反射層503を完全に覆うようには形成されてはいないが、もちろん、ITO透明電極504は、Al反射層503を完全に覆うように形成されていても構わない。 ITO透明電極504がAl反射層503を完全に覆うように形成されていれば、バックライトからの光をより多く液晶層に透過させることができるのでより明るい透過型表示が実現する。図4は、単純マトリクス型の液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の一例における正面概略図である。液晶セルの上側透明基板内面に形成されたストライプ状のITO透明電極601に交差するように、下側透明基板内面にAl反射層602及びAl反射層602よりも面積が一回り広いストライプ状のITO透明電極603が形成されている。尚、 図4においては、ITO透明電極603はAl反射層602を完全には覆うように形成されてはいないが、もちろん、ITO透明電極603はAl反射層602を完全に覆うように形成されていても構わない。 ITO透明電極603がAl反射層602を完全に覆うように形成されていれば、バックライトからの光をより多く液晶層に透過させることができるのでより明るい透過型表示が実現する。また図5は、単純マトリクス型の液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の他の例における正面概略図である。液晶セルの上側透明基板内面に形成されたストライプ状のITO透明電極601に交差するように、下側透明基板内面に島状のAl反射層602’の各辺よりも幅が一回り広いストライプ状のITO透明電極603が形成されている。更にまた図6は、単純マトリクス型の液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の他の例における正面概略図である。液晶セルの上側透明基板内面に形成されたストライプ状のITO透明電極601に交差するように、下側透明基板内面にAl反射層602”及びAl反射層602”よりも面積が一回り広いストライプ状のITO透明電極603が形成されている。図4の例では、Al反射層602がITO透明電極603の中央に重なっているのに対し、図6の例ではAl反射層602”がITO透明電極603の片側に寄って重なっている
反射型表示時には、液晶セルに入射した外光を反射層503(図3の場合)、反射層602(図4の場合)、反射層602’(図5の場合)又は反射層602”(図6の場合)により反射させる。つまり、外光は反射層503、602、602’又は602”に入射したものだけが液晶層に印加された電圧によって変調される。透過型表示時は、バックライトから液晶セルに入射した光のうち、反射層503、602、602’又は602”の間隙を通った光源光だけが、液晶層に導入される。しかし、画素電極またはドット電極以外に入射した光は、表示に関係がなく、透過型表示のコントラストを低下させるだけであるので、遮光膜(ブラックマトリクス層)や液晶層の表示モードをノーマリーブラックとすることで、遮断する。即ち、Al反射層503、602、602’又は602”と重なり合っていないITO透明電極504又は603部分に入射するバックライトからの光によって、透過型の表示が可能になる。
・・・
【0063】更に、液晶セルの上側の面に配置した散乱板207は、Al反射層216によって反射された反射光を広角に出射させることができるので、広視野角の液晶装置が実現される。」

(カ)「【0083】(第4実施形態)本発明に係る液晶装置の第4実施形態を図9及び図10を参照して説明する。図9は本発明に係る液晶装置の第4実施形態の構造を示す概略縦断面図である。この実施形態は基本的に単純マトリクス型の液晶表示装置に関するものであるが、同様の構成によりアクティブマトリクス型の装置や他のセグメント型の装置、その他の液晶装置にも適用することは可能である。
【0084】この実施形態では、2枚の透明基板401及び402の間に液晶層403が枠状のシール材404によって封止された液晶セルが形成されている。液晶層403は、誘電異方性が負のネマチック液晶で構成されている。上側の透明基板401の内面上には、複数のストライプ状の透明電極409がITOなどによって形成されていて、透明電極409の表面上には液晶を垂直に配向させる配向膜410が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。このラビング処理によって、液晶分子はラビング方向に約85度のプレティルト角を有している。TFD素子やTFT素子を備えたアクティブマトリクス型の装置である場合には、透明電極409は矩形状に形成され、アクティブ素子を介して配線に接続される。
【0085】一方、下側の透明基板402の内面上には、感光性のアクリル樹脂によって高低さ約0.8μmの凹凸が形成されており、その表面上に1.0重量%のNdを添加したAlを25nmの厚みでスパッタし、その後ストライプ状(図4又は図6参照)或いは島状(図3又は図5参照)にパターニングして、反射層411を形成する。この反射層411上には、保護膜412を介して、カラーフィルタ414が形成され、このカラーフィルタ414には、R、G、Bの3色の着色層が所定パターンで配列されている。カラーフィルタ414の表面上には透明な保護膜415が被覆されており、この保護膜415の表面上に複数のストライプ状の透明電極416がITO膜などにより、上記カラーフィルタ414の着色層毎に上記透明電極409と交差するように形成されている。透明電極416の表面上には配向膜417が形成される。なお、この配向膜417にはラビング処理を施さない。
・・・
【0087】この実施形態では、透過型表示のときに各ドット間の領域から光が漏れるのを防ぐために、カラーフィルタ414の各着色層の間に形成された遮光部であるブラックマトリクス層413が平面的にほぼ対応して設けられている。ブラックマトリクス層413はCr層を被着したり、感光性ブラック樹脂で形成する。
・・・
【0090】次に図9を参照して、以上の如く構成された本実施形態における反射型表示及び透過型表示について説明する。
【0091】先ず反射型表示の場合、図の上側から当該液晶装置に入射する外光は、偏光板405、位相差板406をそれぞれ透過し、液晶層403を通過後、カラーフィルタ414を通過し反射層411によって反射され、再び偏光板405から出射される。このとき、液晶層403への印加電圧によって明状態と暗状態、及びその中間の明るさを制御する。
【0092】また透過型表示の場合、バックライトからの光は偏光板407及び位相差板408によって所定の偏光となり、反射層411の各間隙より液晶層403に導入され、カラーフィルタ414、液晶層403を通過後、位相差板406を透過する。このとき、液晶層403への印加電圧に応じて、偏光板405から透過(明状態)した状態と吸収(暗状態)した状態、及びその中間の明るさを制御することができる。
・・・
【0095】更に凹凸を付与した反射層411は、反射光を広角に反射させることができるので、広視野角の液晶装置が実現される。」

(キ)また、図9からは、ブラックマトリクス層413が隣接するITO膜416の間隙に対応している事項が見て取れる。

上記(ア)?(キ)から、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「一対の透明基板と、該一対の透明基板間に挟持された液晶層と、上側の透明基板の前記液晶層側の面上に形成されており、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色層が所定パターンで配列されたカラーフィルタと、カラーフィルタの表面上に形成されている複数のストライプ状のITO透明電極と、下側の透明基板の前記液晶層側の面上に形成されており、前記下側の透明基板に垂直な方向から平面的に見て相互に夫々分断されている複数のAl反射層と、前記反射層に部分的に重ねて形成されていると共に平面的に見て前記反射層に重ならない部分を含むITO透明電極と、前記下側の透明基板の前記液晶層と反対側に配置された照明装置とを備え、前記反射層に重なっている透明電極部分を用いて反射型表示時の液晶駆動を行い、前記反射層に重なっていない透明電極部分を用いて透過型表示時の液晶駆動を行うことにより反射型表示と透過型表示とを切り換えて表示することのできる半透過反射型の液晶装置において、前記液晶層の表示モードを非駆動時が暗(黒)状態であるノーマリーブラックとするか、あるいは、遮光膜(ブラックマトリクス層)を設けることにより、画素電極またはドット電極以外に入射した光を遮断して、透過型表示時に液晶が駆動されない画素間またはドット間からの光漏れを抑えるようにした半透過反射型の液晶装置」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

(a)引用発明の「上側の透明基板」、「下側の透明基板」、「ITO透明電極」、「Al反射層」、「照明装置」、及び「遮光膜(ブラックマトリクス層)」が、それぞれ、本願補正発明の「第2基板」、「第1基板」、「透光性の金属酸化物膜」、「反射性導電膜」、「照明手段」、及び「遮光膜としてのブラックマスク」に相当することは明らかである。

(b)引用発明の「前記反射層に部分的に重ねて形成されていると共に平面的に見て前記反射層に重ならない部分を含むITO透明電極」は、本願補正発明の「該反射性導電膜上に積層されると共に該反射性導電膜の端縁からはみ出した部分を有する透光性の金属酸化物膜」に相当することは明らかである。

したがって、両者は、
「第1基板と第2基板との間に液晶を配置して成る半透過反射型液晶装置において、
前記第1基板に形成された反射性導電膜と、
該反射性導電膜上に積層されると共に該反射性導電膜の端縁からはみ出した部分を有する透光性の金属酸化物膜と、
遮光膜としてのブラックマスクと、
前記第1基板の外側から前記液晶に向けて光を照射する照明手段と
を有する半透過反射型液晶装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願補正発明が、ブラックマスクを「互いに隣接する前記透光性の金属酸化物膜の間隙に対向する第2の基板に形成」し、「ブラックマスクの幅は、互いに隣接する前記透光性の金属酸化物膜の間隔と等しく、互いに隣接する前記反射性導電膜の間隔より狭く形成」しているのに対し、引用発明はブラックマスクをどの基板のどこにどの程度の幅で形成するのか明らかでない点。

(4)判断
上記相違点につき検討すると、引用刊行物には、遮光部であるブラックマトリクス層をカラーフィルタの各着色層の間に形成する事項が記載されており(段落【0087】参照。)、引用発明において、遮光膜(ブラックマトリクス層)を、カラーフィルターが形成されている上側の透明基板(本願補正発明の「第2基板」に相当している。)に形成することは、引用刊行物の記載から当業者に自明である。
そして、ブラックマスクを、画素以外から出射する光を遮断するために、互いに隣接する透光性の金属酸化物膜の間隙に対向する位置に配置するとともに、遮光の度合いを勘案しつつ、その幅を適切なものに設定することは技術常識であるから、この技術常識に基づいて、互いに隣接する透光性の金属酸化物膜の間隙に対向する前記第2基板の位置に配置するとともに、その幅について、厳密に金属酸化物膜の間隔と等しくし、その結果、当然なことであるが反射性導電膜の間隔より狭く形成することは、当業者が必要に応じて適宜選択しえた設計事項にすぎない。
また、ブラックマスクの幅の設定に関して、引用刊行物には、図9においてブラックマトリクス層413が隣接するITO透明電極416の間隙に対向して配置されている事項が記載され(摘記(キ))、明細書において「【0087】この実施形態では、透過型表示のときに各ドット間の領域から光が漏れるのを防ぐために、カラーフィルタ414の各着色層の間に形成された遮光部であるブラックマトリクス層413が平面的にほぼ対応して設けられている。」(摘記(オ))と記載されている。よって、引用刊行物の記載からも、図9に記載のものと同様に、引用発明においても、金属酸化物膜の間隙から漏れる光を遮断するために、互いに隣接する透光性金属酸化物膜の間隙に対応する位置にブラックマスクを配置するとともに、ブラックマスクの幅を金属酸化物膜の間隔とほぼ等しくし、反射性導電膜の間隔より狭く形成することは、当業者にとって容易なことである。

しかも、本願補正発明によってもたされる効果は、引用発明、引用刊行物の記載事項、及び技術常識に基づいて、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明、引用刊行物の記載事項、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年8月3日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年4月30日付手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。

「【請求項1】 第1基板と第2基板との間に液晶を配置して成る液晶装置において、
前記第1基板に形成された反射性導電膜と、
該反射性導電膜上に積層されると共に該反射性導電膜の端縁からはみ出した部分を有する透光性の金属酸化物膜と、
互いに隣接する前記透光性の金属酸化物膜の間隙に対向する前記第2の基板に形成された遮光膜としてのブラックマスクと、
前記第1基板の外側から前記液晶に向けて光を照射する照明手段と
を有し、前記ブラックマスクの幅は、互いに隣接する前記透光性の金属酸化物膜の間隔と等しく、互いに隣接する前記反射性導電膜の間隔より狭く形成されることを特徴とする液晶装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された刊行物の記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、液晶装置について、「半透過反射型」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件の全てが含まれる本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、上記引用刊行物記載の発明、引用刊行物に記載の事項、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用刊行物記載の発明、引用刊行物に記載の事項、及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-15 
結審通知日 2007-02-20 
審決日 2007-03-05 
出願番号 特願2001-357706(P2001-357706)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 西村 直史
井上 博之
発明の名称 液晶装置、液晶装置の製造方法及び電子機器  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 藤綱 英吉  
代理人 須澤 修  

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