• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A63F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A63F
審判 訂正 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 訂正しない A63F
管理番号 1156708
審判番号 訂正2006-39187  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-11-15 
確定日 2007-05-01 
事件の表示 特許第2650643号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
特許第2650643号に係る発明についての出願は、昭和62年10月6日に出願された特願昭62-252011号の出願の一部を平成8年4月18日に分割して特願平8-97034号としたものであり、平成9年5月16日にその発明についての特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立て(異議10-71107号)がなされ、平成18年8月4日付けで本件特許を取り消すとの異議決定がなされ、平成18年9月22日付けで知的財産高等裁判所に決定取消を求める訴(平成18年(行ケ)10431号)がなされるとともに、平成18年11月15日付けで本件訂正審判が請求され、平成19年1月23日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成19年2月26日付けで意見書が提出されたものである。

第2.審判請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第2650643号に係る明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を、本件審判請求書に添付された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正内容は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び15を本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項8に記載される、下記のとおりに訂正する訂正事項を含むものである。(下線部訂正箇所)
「【請求項1】遊戯者が入賞模型体を予想して投票を行い、投票終了後複数の模型体が順番を競って走行するレースを実行し、レース結果及び投票に応じて遊戯者に配当を行うゲーム装置であって、
自動車、馬、人等の競争レースを模擬する前記複数の模型体が走行する周回路を構成する模型体走行面と、この模型体走行面の下方に配置され前記模型体走行面に対する周回路を構成する下方走行面と、前記模型体走行面を介して磁力により結合して対応する前記模型体の走行を誘導するように前記下方走行面上に配置された複数の走行体と、前記複数の走行体の走行を制御する走行制御手段とを有し、
前記模型体走行面及び前記下方走行面は、前記模型体及び前記走行体が走行経路を規制されることなく走行可能に構成されており、
前記走行体はそれぞれに搭載され個別に走行制御可能な駆動制御機構を有し、
前記走行制御手段は前記走行体のそれぞれに走行制御信号を送信して前記複数の走行体によって行われるレース展開を制御し、
前記走行体のそれぞれは受信した前記走行制御信号に従って個別に前記駆動制御機構が制御されて前記走行経路を規制されることなく前記下方走行面を走行するように構成されており、
前記ゲーム装置は、さらに、前記レース展開を設定するレース展開設定手段と前記走行体それぞれの前記下方走行面上における実際の走行位置を逐次検出する位置検出手段とを備え、この位置検出手段により逐次検出される前記走行体のそれぞれの前記下方走行面上における前記実際の走行位置と前記レース展開設定手段で予め設定されたレース展開による走行すべき位置とを比較し、検出された実際の走行位置と前記予め設定された走行すべき位置との差を算出する手段と、前記比較により算出された算出結果に基づいて生成される制御信号に従って前記駆動制御機構のそれぞれを制御して前記各走行体の走行位置を逐次修正する手段とによって構成されており、前記位置検出手段は、前記走行体のそれぞれに備えられた電磁波発振源と、前記走行体が走行する前記下方走行面に沿って配設された受信手段とを備え、前記走行制御手段から送信される前記走行制御信号には前記複数の走行体のそれぞれを順次選択する信号が含まれており、選択された前記走行体のそれぞれは前記走行制御手段から送信される前記走行制御信号に含まれる発振を指示する信号に応答して一定時間前記電磁波発振源を駆動し、前記選択された走行体の前記電磁波発振源からの電磁波を前記受信手段で順次受信することで前記選択された走行体の位置を順次検出するように構成されており、前記実際の走行位置の逐次検出は前記走行体の走行中繰り返し行われるように構成されており、
前記ゲーム装置は、さらに、前記模型体走行面の裏面に敷設された複数の電極と該複数の電極に交互に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、前記走行体のそれぞれは前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、走行中の前記走行体のそれぞれは接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されており、
前記構成によって前記走行位置を制御される前記走行体によって対応する前記模型体それぞれの走行を誘導することにより、前記模型体がその走行経路を規制されることなく走行する前記レース展開を実現するように構成されたことを特徴とするゲーム装置。」

「【請求項8】 遊戯者が入賞模型体を予想して投票を行い、投票終了後複数の模型体が順番を競って走行するレースを実行し、レース結果及び投票に応じて遊戯者に配当を行うゲーム装置であって、
自動車、馬、人等の競争レースを模擬する前記複数の模型体が走行する周回路を構成する模型体走行面と、この模型体走行面の下方に配置され前記模型体走行面に対する周回路を構成する下方走行面と、前記模型体走行面を介して磁力により結合して対応する前記模型体の走行を誘導するように前記下方走行面上に配置された複数の走行体と、前記複数の走行体によって行われるレースの展開を設定するレース展開設定手段と、当該設定されたレース展開に従って前記走行体の走行を制御する走行制御信号を個々の前記走行体に送信するように構成された走行制御手段と、前記個々の走行体の実際の位置を繰り返し検出してその出力を前記走行制御手段に送信する位置検出手段と、を有し、
前記周回路構成の模型体走行面及び下方走行面は前記模型体及び走行体が走行経路を規制されることなく走行可能に構成されており、
前記走行制御手段は、それぞれの前記走行体について、前記位置検出手段によって検出された実際の走行位置を前記レース展開設定手段によって予め設定された走行位置と比較し、前記検出された実際の走行位置と前記予め設定された走行すべき位置との差を算出する手段と、前記比較により算出された算出結果に基づく走行制御信号を逐次出力する手段とによって構成されており、
前記位置検出手段は、前記走行体のそれぞれに備えられた電磁波発振源と、前記走行体が走行する前記下方走行面に沿って配設された受信手段とを備え、前記走行制御手段から送信される前記走行制御信号には前記複数の走行体のそれぞれを順次選択する信号が含まれており、選択された前記走行体のそれぞれは前記走行制御手段から送信される前記走行制御信号に含まれる発振を指示する信号に応答して一定時間前記電磁波発振源を駆動し、前記選択された走行体の前記電磁波発振源からの電磁波を前記受信手段で順次受信することで前記選択された走行体の位置を順次検出するように構成されており、前記実際の走行位置の逐次検出は前記走行体の走行中繰り返し行われるように構成されており、
前記ゲーム装置は、さらに、前記模型体走行面の裏面に敷設された複数の電極と該複数の電極に交互に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、前記走行体のそれぞれは前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、走行中の前記走行体のそれぞれは接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されており、
前記走行体のそれぞれには個別に制御可能な走行駆動手段が搭載されており、前記走行制御手段から受信した前記比較結果に基づいて生成される走行制御信号に基づき逐次走行駆動手段を制御して前記各走行体の実際の走行位置を前記予め設定された走行すべき位置に逐次修正して前記設定された走行位置に沿って走行するように構成されており、これにより前記走行経路を規制されることなく、前記設定されたレース展開に従って走行するよう逐次前記走行体の走行を制御し対応する模型体を誘導することにより、前記複数の模型体がそれぞれ前記走行経路を規制されることなく前記模型体走行面を走行するように構成されてなることを特徴とするゲーム装置。」

また、特許権者の求める訂正請求は、上記の他に、本件特許明細書の特許請求の範囲の【請求項2?5,12?14,16,17】を削除し、本件特許明細書の特許請求の範囲の【請求項6?11】を訂正明細書の特許請求の範囲の【請求項2?7】のとおりに訂正するとともに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】、【0019】、【0033】、【0034】、【0035】、【0040】、【0042】、【0043】、【0044】、【0048】、【0049】、【0050】、【0053】、【0082】、【0094】の記載を訂正明細書のとおりに訂正するものであるところ、詳細は省略する。

第3.独立特許要件の有無について
本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項8に係る発明(以下、「本件訂正発明1及び2」という。)は、平成6年改正前の特許法第126条第3項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることを要するから、以下、特許法第29条第2項及び特許法第36条第4項に規定する要件について順次検討する。

1.特許法第29条第2項に規定する要件について
本件訂正発明1及び2が、本件特許出願前に頒布された下記の引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるときは特許を受けることができないとする特許法第29条第2項に規定する要件に適合するものか否か、以下検討する。
引用刊行物1:特開昭51-30036号公報
(申立人2提出の甲第1号証)
引用刊行物2:実願昭56-8254号(実開昭57-123191号)
のマイクロフイルム
引用刊行物3:実願昭53-169526号(実開昭55-85085号
)のマイクロフイルム
引用刊行物4:米国特許第3961791号明細書
(申立人2提出の甲第2号証)
引用刊行物5:実公昭55-46222号公報
引用刊行物6:米国特許第2188619号明細書
引用刊行物7:特開昭60-153509号公報
引用刊行物8:特開昭62-105206号公報
引用刊行物9:特開昭61-235775号公報
引用刊行物10:特開昭62-81590号公報
引用刊行物11:特公昭48-16747号公報
引用刊行物12:実願昭50-121558号(実開昭52-35797
号)のマイクロフイルム

(1)各引用刊行物に記載の発明
(1-1)引用刊行物1に記載の発明
i.引用刊行物1〔特開昭51-30036号公報〕には、競走遊戯装置に関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「案内部材と、該案内部材によって設定された一定の軌跡に沿って走行しうる走行基台と、それぞれ別個に前記軌跡に沿い往復動自在に前記走行基台に設けられた複数の移動模型と、該移動模型をそれぞれ別個に駆動させる駆動手段とよりなることを特徴とする競走遊戯装置。」(第1頁左下欄第5?10行)、
(イ)「例えば、複数の競走用自動車模型を環状レースコース上で走らせて、到着順次を競う競走遊戯装置は、従来から数多くあった。しかしながら・・・これらの形式の装置においては、前記模型の運動に規則性があるため、興味が著しく損なわれた。本発明はこのような欠点を除去した競走遊戯装置の改良に係り・・・その目的とする処は、複数の移動模型の内、どの模型が真先にゴールに到達するのか全く予想がつかずに遊戯者の興味をそそることができる競走遊戯装置を供する点にある。」(第1頁左下欄第12行?右下欄第13行)、
(ウ)「スタートラインにおいて前記移動模型を一線に並ばせてから、前記走行基台をゴールに向けて出発させるとともに、前記駆動手段を始動させると、前記複数の移動模型はそれぞれ相対的にかつ時間の経過に伴って速度を変えながら前記一定の軌跡に沿って移動することができる。」(第1頁右下欄第19行?第2頁左上欄第6行)、
(エ)「第1図で図示される(1)は直方体の4隅を斜に欠除した形状のキャビネットで、該キャビネット(1)の上面にトラックを画いた不透明な非磁性の走行路面板(2)が水平に張設され、その上方に透明な板(3)が4角錐面状に張設され、前記走行路面板(2)上に5個の馬模型(4)が載置されている。また前記キャビネット(1)内には支持台(5)が水平に張設され、該支持台(5)の中央の凹部(6)に2本のレール(7)が平行に敷設されており、該レール(7)に走行基台(8)がローラ(9)を介して支持されたままその前後端のストツパ(10)に衝突する迄前後方向へ往復動しうるようになつている。さらに前記走行基台(8)の中心に鉛直上方へ指向して枢軸(11)が突設され、該枢軸(11)に旋回台(12)が枢着され、該旋回台(12)の先端に走行モータ(13)で駆動される駆動輪(14)が設けられている。」(第2頁左上欄第13行?右上欄第9行)、
(オ)「また第6図に詳細に図示されるように前記旋回台(12)には5個のブラケツト(18a)(18b)……(18e)が一体に装着され、該ブラケツト(18a)……(18e)にそれぞれ案内レール(19)が2本づつ架渡され、該案内レール(19)に移動架台(20a)(20b)……(20e)がそれぞれ摺動自在に嵌装され、該移動架台(20a)(20b)……(20e)にそれぞれ上下に昇降自在に移動片(21a)(21b)……(21e)が取付けられ、車輪(22)が該移動片(21a)(21b)……(21e)の上部に枢着されており、該車輪(22)は前記移動架台(20a)……(20e)と移動片(21a)……(21e)とに介装された圧縮ばね(23)の弾性復元力で常に前記走行路面板(2)の下面に圧接されるようになつている。さらに前記移動架台(20a)(20b)……(20e)には所定の間隔を存し2個のチエンスプロケツト(24)(25)が枢着され、該スプロケツト(24)(25)にチエン(26)が架渡され、該チエン(26)の1個所に突設されたピン(27)が前記移動架台(20)の上下溝(28)に遊嵌され、前記一方のスプロケツト(24)と、模型駆動モータ(29)のスプロケツト(30)とにチエン(31)が架渡されており、前記模型駆動モータ(29)が一方向へ駆動されると、前記移動架台(20)は前記チエン(26)のピン(27)でブラケツト(18)の長手方向に沿って往復運動されるようになつている。」(第2頁左下欄第11行?右下欄第16行) 、
(カ)「さらにまた前記馬模型(4)の下部と移動片(21)の上の上部とに磁石(32)(第6図において移動片(21)のみ図示されている)が装着されており、前記馬模型(4)は前記走行路面板(2)を挟んで前記移動片(21)に吸引されたまゝ該移動片(21)の移動に連動して前記走行路面板(2)上を移動しうるようになつている。」(第2頁右下欄第17行?第3頁左上欄第3行)、
(キ)「第7図は走行基台(8)に設けられた制御回路の回路図で、第8図はキヤビネツト(1)に設けられた制御回路図であり、これらの回路はトロリ(33)とトロリ線(34)とで相互に電気的に接続されている。」(第3頁左上欄第10?13行)、
(ク)「本実施例では交番カムモータ(35)は常時回転しているが、パルスカムモータ(38)は、交流100Vの一方の端子(43’)とトロリ(34b)との間の走行リレー接点(60’)が閉成された時に、回転を開始し、交番カムスイツチ(37a)(37b)の開閉切換タイミングとパルスカムスイツチ(40a)(40b)……(40e)の開閉切換タイミングとの相互関係は常に一定していないため、馬模型(4a)(4b)……(4e)の内、どの馬模型がゴールライン(63)に最も速く到着するか、全く予想がつかず、遊戯者が何回プレーを行なつても飽きが来ないので、極めて興趣あふれるものである。」(第6頁右上欄第10行?左下欄第2行)。
ii.以上の記載及び図面によれば、引用刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「複数の馬模型(4)が走行するトラックを画いた走行路面板(2)と、この走行路面板(2)の下方に配置され前記走行路面板(2)に対して走行基台(8)が一定の軌跡に沿って往復動するように設定された支持台(5)と、前記走行路面板(2)を介して磁力により結合して対応する前記馬模型(4)の走行を誘導するように前記支持台(5)上に配置された前記走行基台(8)に旋回台(12)を介して装着された複数の移動架台(20a)?(20e)にそれぞれ取付けられた複数の移動片(21a)?(21e)と、前記移動片(21a)?(21e)の移動及び走行基台(8)の走行を制御する、キヤビネツト(1)に設けられた制御回路及び走行基台(8)に設けられた制御回路とを有し、
前記走行路面板(2)及び前記支持台(5)は、前記馬模型(4)及び前記移動片(21a)?(21e)を載置する走行基台(8)が設定された一定の軌跡に沿って走行可能に構成されており、
前記走行基台(8)は、前記移動片(21a)?(21e)を取付けた前記移動架台(20a)?(20e)が前記走行基台(8)上で往復動自在となるように結合された模型駆動モータ(29)及びチエン(26,31)と、前記走行基台(8)が案内部材によって設定された一定の軌跡に沿って走行可能となるように前記旋回台(12)を介して結合された走行モータ(13)及び駆動輪(14)とを駆動制御することによって、前記移動片(21a)?(21e)を設定された一定の軌跡に沿って個別に移動制御可能とするように設けられた制御回路を有し、
前記キヤビネツト(1)に設けられた制御回路及び前記走行基台(8)に設けられた制御回路は、前記移動片(21a)?(21e)を取付けた前記移動架台(20a)?(20e)及び前記走行基台(8)に制御信号を送信して前記複数の移動片(21a)?(21e)によって行われるレース展開を制御し、
前記移動片(21a)?(21e)のそれぞれは、受信した前記制御信号に従って、前記走行基台(8)に設けられた制御回路により前記移動架台(20a)?(20e)及び前記走行基台(8)が駆動制御されることによって、個別に制御されて、相対的にかつ時間の経過に伴って速度を変えながら設定された一定の軌跡に沿って全く予想がつかないレース展開となるように前記支持台(5)の上方を移動するように構成されており、
前記走行基台(8)に設けられた制御回路は、パルスカムモータ(38)が回転を開始したときの初期状態に応じて自動的に決定される、交番カムモータ(35)の回転による交番カムスイツチ(37a)(37b)の開閉切換タイミングと、パルスカムモータ(38)の回転によるパルスカムスイツチ(40a)?(40e)の開閉切換タイミングとの相互関係が常に一定していないことによって、どの馬模型(4)がゴールライン(63)に最も速く到着するか、全く予想がつかないレース展開を決定するモータ駆動タイミング決定手段と、前記キヤビネツト(1)に設けられた制御回路と相互に電気的に接続するためのトロリ(33)及びトロリ線(34)とを備え、
前記モータ駆動タイミング決定手段からの信号に従って、前記走行基台(8)に設けられた制御回路により移動位置を制御される前記移動片(21a)?(21e)によって前記馬模型(4)の走行を誘導することにより、前記馬模型(4)が設定された一定の軌跡に沿って走行するレース展開を実現するように構成された競走遊戯装置。」

(1-2)引用刊行物2に記載の発明
i.引用刊行物2〔実願昭56-8254号(実開昭57-123191号)のマイクロフイルム〕には、競馬等の競走遊戯装置に関し、図面の記載とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「1つのメインユニットと同メインユニットに結合され少なくとも1台のテーブルユニットよりなり、前記メインユニットは、出走前、出走中および出走後の画像、音声を表示するメイン表示装置と、レース番号、出走馬の如き出走体の名称、配当等を表示するサブ表示装置と、多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等を記憶し、前記多種類のレース展開、入賞組合等の内、適当なものを選出し所定のフローに従って画像、音声等の信号を前記両表示装置に送信し、コイン投入がなされて遊戯者の予想が当った時に所定の賞金に相当するコインを払出しまたは数字を加算するように制御動作する中央処理装置とで構成され、前記テーブルユニットは、前記中央処理装置と後記コイン管理装置や操作パネルとの信号の送受を行なう入出力中継装置と、コインの投入枚数をカウントするとゝもに、投票数に対応してコインを減算しかつ賞金に相当するコイン金額の払出しを行ないあるいはこれを計算してゲーム終了時に余剰コイン金額に相当するコインを排出するコイン管理装置と、出走体の入賞を予想選定しその選定個数を表示する操作パネルとを有することを特徴とする競馬等の競走遊戯装置。」(第1頁第5行?第2頁第6行) 、
(イ)「本案は前記したように構成されているので、メイン表示装置に出走前の出走体が表示されるとゝもにサブ表示装置にレース番号、出走体の名称等が表示され、レース開始前の状況が再現される。この状態で前記各テーブルユニットの前に居る遊戯者は前記操作パネルで出走体の入賞を予想選定すると、投入コインから選定した個数だけ減算されて表示され、一定時間継過後(「経過後」の誤記と認められる。)または選定終了後、レースが開始され、その状況が前記メイン表示装置に表示される。そして出走体がゴールに達すると、入賞出走体の名称および配当が前記サブ表示装置に表示されるとゝもに、コイン投入が行なわれて配当があれば、当該テーブルユニットの操作パネルに配当金に相当するコインが加算される。 この場合本案においては、前記中央処理装置に多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等が記憶されているため、レースを何回反覆して行なつても、レース展開、入賞組合せ等が変化し、遊戯者が飽ることがない。」(第4頁第11行?第5頁第9行) 、
(ウ)「図示された本案の一実施例たる6頭の出走馬を競走させる競馬遊戯装置について説明すると、1はスタンド型のメインユニットで、同メインユニット1は、128種類のレース展開、入賞組合せ等に関するレースの背景、出走馬のカラー画像をディジタル信号で記憶し、前記128種類のレース展開、15通りの入賞組合せの内、適当なものを無作為に選出し第10図に図示されるようなフローに従って動作するメイン中央処理装置2と、同メイン中央処理装置2の制御信号を受けるとゝもに、後記テーブルユニット10からのコイン投入数や入賞予想選定組合せ信号を受けて後記テーブルユニット10に所要の動作信号を送信するサブ中央処理装置3と、前記メイン中央処理装置2からの前記カラー画像ディジタル信号を受けてメイン表示装置たるカラーブラウン管5にカラー動画像を写像させるカラーブラウン管駆動回路4と、同駆動回路4からの映像信号を受けて第3図ないし第6図に図示のようなカラー動画像を表示するカラーブラウン管5と、第7図ないし第8図に図示のようなレース番号、レース展開予想、出走馬の名称、◎、○、△、▲等の予想マーク参考意見、入賞組合せ(連勝複式)、投票数を表示するサブ表示装置たる白黒ブラウン管6と、音声信号を発信するテープレコーダ7および同テープレコーダ7からの信号を受けて音声を発するスピーカ8とよりなっている。」(第5頁第14行?第6頁第19行) 、
(エ)「また前記メインユニット1の前方に直線状に連続して並べられるテーブルユニット10は、メインユニット1のサブ中央処理装置3からバスライン9を介して並列的に接続されている。 さらにテーブルユニット10は、前記メインユニット1のサブ中央処理装置3と操作パネル12、コイン管理装置13との間の信号の授受を中継する入出力トランスファー11と、第9図に図示のように、投票の可否、予想適中または不適中、コイン表示、入賞組合せ投票押釦スイッチ、その投票数の表示等を備えた操作パネル12と、コイン投入数をカウントするとゝもに投票数に対応してコインを減算しかつ賞金に相当するコイン金額の払出し計算を行ないゲーム終了時に余剰コイン金額に相当するコインを排出するコイン管理装置13と、コインの投入を1個づつ検出するコイン検出スイッチ14と、スピーカ15とよりなつている。そして前記メインユニット1の中央処理装置2、3には、第10図のフローチャートに従つて動作するようなプログラムが組込まれている。」(第6頁第20行?第7頁第19行)、
(オ)「また4種類のレース展開たる順当、接戦、混戦、波乱は2/8、1/8、3/8、2/8の割合いで出現するようにプログラムが組まれている。」(第11頁第6?8行)、
(カ)第3図?第6図の、メインユニットのカラーブラウン管に表示された映像を示した図面には、複数の出走馬が、実際の競馬場のトラックでレースを行っているかの如き画像、即ち、第3図のスタートの画像、第4図のコーナを走る状態の画像、及び第5図のゴールに達する画像において、各出走馬が特定のトラックに限定されることなく自由にトラック上を走行してレースを展開する様子が示されている。
ii.以上の記載及び図面によれば、引用刊行物2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「遊戯者が出走馬の入賞を予想選定し、選定終了後複数の出走馬が順番を競って走行するレースを実行し、レース結果及び選定に応じて遊戯者に配当を行う競馬等の競走遊戯装置であって、
複数の出走馬がトラック上を走行する画像を表示するメイン表示装置と、
前記複数の出走馬が特定のトラックに限定されることなく自由にトラック上を走行するようにレース展開を制御する中央処理装置を有し、
前記中央処理装置は、多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等を記憶し、前記多種類のレース展開、入賞組合等の内、適当なものを選出し所定のフローに従って画像、音声等の信号を前記メイン表示装置に送信し、遊戯者の予想が当った時に所定の配当を行うように制御動作するように構成される競馬等の競走遊戯装置。」

(1-3)引用刊行物3に記載の発明
i.引用刊行物3〔実願昭53-169526号(実開昭55-85085号)のマイクロフイルム〕には、レーシングゲーム装置に関し、図面の記載とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「本考案は、クローズされたループ状の走路に2台のレーシングカーを走行させ、所定の距離を走行するに要する時間を競い合うレーシングゲーム装置に関するものである。この種の従来のレーシングゲーム装置においては、各レーシングカー毎に走行レーンが割り当てられており、カウントエリヤの通過に際し各レーン毎に検出している。本考案は、各レーシングカー毎の走行レーンを限定せずに、2台のレーシングカーを同一走路内において自由に走行させ、実際の自動車レースに擬似させることを目的とするものである。」(第1頁第17行?第2頁第8行)、
(イ)「レーシングカー(MA)(MB)の駆動には電源として1?3V程度の乾電池を使用し、走路(1)は巾15cm程度、1周約4mのフリー走行用のものである。」(第3頁第6?8行)、
(ウ)「レーシングゲーム装置の操作にあたつては、各レーシングカー(MA)(MB)は無線式リモートコントロールにより速度・右左折・発進・停止が制御されることは公知のレーシングカーの運転制御と同様であり、各ゲーム者が個々に自己のレーシングカー(MA)(MB)を操作し、クローズされたループ状の走路(1)から外れることなく、速く且つ先行車の追越しや後続車の追越阻止のため走路(1)内を左右に移動させつつ前進させ、より早くゴールすることを競い合うものである。」(第5頁第8?17行)

ii.以上の記載及び図面によれば、引用刊行物3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のレーシングカーが走行するクローズされたループ状の走路と、このレーシングカーの走行を制御する無線式リモートコントロール手段とを有し、
前記走路は、各レーシングカー毎の走行レーンを限定せずに、同一走路内において自由に左右に移動させつつ前進可能なフリー走行用に構成されており、
前記無線式リモートコントロール手段は、各レーシングカーに走行制御信号を送信して前記複数のレーシングカーによって行われるレース展開を制御し、
前記各レーシングカーは、受信した前記走行制御信号に従って個別に制御されて走行レーンを限定せずに前記走路をフリー走行するように構成されており、
各ゲーム者が個々に自己のレーシングカーを操作し、クローズされたループ状の走路から外れることなく、各レーシングカー毎の走行レーンを限定せずに同一走路内において、先行車の追越しや後続車の追越阻止のため自由に左右に移動させつつフリー走行させ、実際の自動車レースに擬似させるようにしたレーシングゲーム装置。」

(1-4)引用刊行物4に記載の発明
引用刊行物4〔米国特許第3961791号明細書〕には、レーシングゲームに関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
「馬の形状をした各競争体20は、3つの車輪22を備え、基台21上に設置されている。前記車輪22の一つはばね又は電池駆動モータ35により駆動される。磁石25あるいは磁性力を帯びたブロックが、基台21に設けられている。各遊戯者は、端部12に磁石31が取り付けられているロッド30を用いる。そして、頂部盤14の下側で競争体20がモータ駆動輪22によって前進させられている時、個々の遊戯者は、このロッドを操作して、自己の競争体20をレースコースに沿わせるべく操縦する。遊戯者は、自己の競争体をレースコースの望ましい様々なレーン13の内外へ舵取りするべく自己のロッド30を操作できる。」(第1欄第43行?第2欄第10行)

(1-5)引用刊行物5に記載の発明
引用刊行物5〔実公昭55-46222号公報〕には、磁力駆動玩具に関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「基板の内部は少なくとも2層の空隙層が形成され、基盤の表面から遠い該層にはより強い磁石が、また表面に近い該層にはより弱い磁石が外部から移動可能に収納されており、他方、基盤の表面には少くとも底部に前記各磁石と吸引する磁石を有する複数の物体が載置され、該各物体は前記基盤の内部の各磁石により別々にほぼ等しい磁力によつて吸引され駆動操縦されるごとく構成されていることを特徴とする磁力駆動玩具。 」(第1頁第1欄第17?25行)、
(イ)「第8図に第3の実施例を示す。これは、競馬ゲーム等、競争ゲーム盤であり、モーター(図示せず)等適当な動力により、回転する磁石が第1図と同様二層に設けられ、例えばそれぞれの回転中心をロツド7、7’によつて動かす等して図示のごとく、コースを自由に選択できる。」(第2頁4欄第18?23行)。

(1-6)引用刊行物6に記載の発明
引用刊行物6〔米国特許第2188619号明細書〕には、電気的レーストラックに関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、レーシングゲームに関し、詳細には、複数の目標体がレースのコースを推進されるゲームに関する。
本発明の目的は、個々のオペレータにより駆動されるように設計されているが、レースの進行中に前記オペレータの完全な制御を受けない複数の形態を有するレーシングゲームを提供することである。
ほかの目的は、レーシングの目標体が電気的に推進され、手動で駆動される電気的手段により部分的に制御され、かつ、自動的に駆動される電気的手段により部分的に制御されるレーシングゲームを提供することである。
さらにほかの目的は、個々のオペレータの制御を受ける、モーターを備えている複数の電気駆動車(car)を有する電気的レーストラックを提供することであり、前記電気駆動車はまた、レーシング目標体をトラック上で前記駆動車で吸引し、これを移動する自動制御された電磁石を有する。さらに詳細には、本発明は、駆動車のモーターの速度を制御する、手動で作動される複数の加減抵抗器と、電磁石を流れる電流の強さを制御する、もう一組の自動で作動される複数の加減抵抗器とから成っている。従って、各オペレータは、オペレータの各駆動車の速度を制御することが出来る一方で、オペレータは、自己の駆動車の電磁石を流れる電流の強さを連続的に変化する加減抵抗器を制御しない。従って、その各レーシング目標体の電磁石の吸引が比較的に弱いとき、特に、駆動車がトラックのカーブ部分を通過しているとき、駆動車の速度が非常に速いならば、駆動車がレースから除外される可能性があるので、レースの勝利は、駆動車の速度により完全には支配されない。
さらにほかの目的は、電磁石を流れる電流を制御する前記もう一組の加減抵抗器を自動作動するモーター駆動のカムを提供することである。」(第1頁左欄第1?43行) 、
(イ)「図1,2,および2aに関し、数宇10は、一般に、本発明の電気的レーシングゲームを示す。このゲームは、脚12により適切に支持されたテーブルまたはケーシング11から成っている。見てお分かりのように、テーブルは、非金属の滑らかで薄い上部13、中間の棚14、およびベースまたは底部15から構成している。以降に詳細に説明するように、操作機構のすべてとレーシング器の幾つかの構成要素は、上部13とベース15との間のケーシング12に収容されており、従って、隠蔽されて見えない。
数宇16,17,および18は、それぞれがエンドレスのトラックを形成するように環状の、三つのトラックを表している。これらのトラックは単に例示されているだけで、任意の数が望むならば設定することが出来ることが理解されるであろう。トラックの真上に、トロリ集電レール19、20と21が、それぞれ各トラックに一つ配置されている。これらのレールは、上部13の下側に固定されており、以降に詳細に説明するように、トラックとレ一ルは、電気回路の一部を形成するように構成されている。
図2,4,および5に関し、各トラックは、車輪24に支持されたフレーム23から成る駆動車22(car)を乗せるように設計されており、これらの車輪24は、その各トラックのレールと噛み合って乗るように設計されている。各駆動車は、駆動車の一組の車輪駆動するシャフト26の一つへ動作可能に接続されたモーター25を備えている。望むならば、モーターは、数組の車輪を駆動する両方のシャフトと連動させることが出来る。トロリ集電輪27は、その各トロリ集電レールと噛み合って、動作可能に接触して保持されるように、フレーム23の前の上部分に取り付けられ、車輪が縁づけされている。トロリ集電輪27は、ヨーク部またはブラケット29に軸受けされているシャフト28へ固定されている。シャフト28の端は、フレーム23の反対側に形成された縦方向の開孔30を貫通している。コイルスプリング31が、ブラケット29の基部とフレーム23のクロスバー32との間に配置されており、ブラケット、シャフト、およびトロリ集電輪をその各トロリ集電レールと動作可能に噛み合うに垂直に押しつけている。ブラケット構造体とトロリ集電輪の運動は、シャフト28の端が開孔30内で滑動可能であるので、行われる。
電磁石33が、フレーム23の後ろの上端に取り付けられており、トロリ集電輪27へ電気的に接続されている。磁石は、望むならば、フランジの中心または前部に取り付けることが出来ることは理解されるであろう。見て分かるように(図5参照)、駆動車(car)22が各トラックに位置付けられると、電磁石の上端は、テーブルの上部13の下側に最も接近して配置され、起動されると、前記上部に支持された金属製の目標体つまり図のフィギュア34を、薄い非金属の上部13を通して吸引するように設計されている。これらの目標体は、どのような形状でもよく、この例では、レーシングカーの形を取っている。しかし、望むならば、各自標体は、競走馬、または、どのようなほかの従来のレーシング器を表現することが出来る。
図1、9および10に関し、各駆動車のモーター25の速度は、三つの加減抵抗器35,36および37の一つにより制御されるように設計されており、前記加減抵抗器は、制御レバー38,39および40をそれぞれ備えており、テーブルまたはケーシングの外側で、各種の駆動車を操作し、制御するオペレータが握るのに都合良い位置に取り付けられている。これらの加減抵抗器は単に図示されているだけであり、それらはすべての周知の構造であり、それぞれは、トラック16,17,および18へ電気的に接続され、これにより、レバーの操作は,駆動車22のモーター25の速度を制御する。」(第1頁右欄第38行?第2頁左欄第61行) 、
(ウ)「この様に説明した構造により、駆動車の操作は、制御レバー38,39および40を操作するオペレータにより完全に制御される。しかし、数人のオペレータの制御から少し外れて、駆動車の操作を行うため、本発明者は、個々の駆動車の電磁石33を通る電流の強さを自動的に制御する手段を提供する。この制御は、各レースの最終結果が予測できないように、完全に自動化される。従って、本発明は、個々の駆動車の速度がオペレータの制御内にあることを可能にする手段を提供するように設計されている。しかし、この手動制御は、テーブル上部13上の目標体を移動する場合の電磁石の作用を自動的に制御する手段を備えることにより、補われる。この構成により、駆動車が曲線路を通過するとき、電磁石の一つを流れる電流がかなり弱いので、速度は単にレースの勝利を保証せず、遠心力が目標体34の一つを磁石との電気的接触から投げだし、従って、目標体のオペレータをレースから除くことが可能である。
電磁石を自動的に制御する手段は、もう一組の加減抵抗器52,53および54(図6,7参照)から成っている。これらの加減抵抗器は、駆動車22の磁石33を流れる電流を制御し、制御レバー55,56および57をそれぞれ備えている。これらの加減抵抗器とレバーは、すべて、棚16とベース15との間に支持されたフレーム58に取り付けられている(図2aと9参照)。(第2頁右欄第10?44行)、
(エ)「この構造の場合、駆動車が、数本のトラック(図1参照)の指定されたスタート点に一直線に並ぶと、自動車34が、各磁石33の上の位置で上部板13の上に配置される。これらの磁石は、薄い上部板を通して自動車を吸引し、モーター25が起動されると、それらをテーブル上で搬送する。前述したように、個々のオペレータが、制御レバー38,39および40を手動で操作すると、駆動車22は、加減抵抗器のコイル上のレバーの動きに従って、各トラックの回りを進行する。同時に、モーター76の動きは、歯車70,71および72を回転し、これにより、各ピニオン64,65および66を回転する。これは偏心して取り付けられたカム61,62および63を回転し、これにより、レバ一55,56および57をピボットの回りに回転し、従って、球状ライダー59を加減抵抗器52,53および54のコイル上で動かす。これは、磁石33を流れる電流の強さを変化する作用を行い、オペレータは、自己の駆動車の速度の制御を行う一方で、電磁石33によりフィギュアつまり自動車34へ加えられた磁気吸引を制御しない。」(第3頁左欄第21?47行) 。

(1-7)引用刊行物7に記載の発明
引用刊行物7〔特開昭60-153509号公報〕には、無人車誘導システムに関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「無人車を所定の経路上の任意の位置に誘導する無人車誘導システムにおいて、連続する磁気発生器を前記経路に沿って設けると共に前記経路上の任意の位置に該経路に直交する方向に互いに離隔した複数の磁気発生器の組み合せによる磁気標識を設け、前記無人車には前記磁気発生器の経路に直交する方向における位置を検出する位置検出装置と無人車を誘導すべき位置を指定する座標入力装置とを設け、前記位置検出装置の検知出力に基づいて前記連続する磁気発生器が常に一定になる如く進行方向を制御し、また前記座標入力装置で指定した位置の磁気標識を前記位置検出装置で検出した時に停止させるように制御したことを特徴とする無人車誘導システム。」(第1頁左下欄第5?18行)、
(イ)「当初、無人車11は経路上の位置17-0にあるものとする。ここで無人車11を他の位置、例えば17-30へ移動させたい場合、まずオペレータが前記位置指定用磁石10をタブレット40上の配置図の位置17-30へ置く。座標入力装置4は該磁石10のX及びY座標値をコンピュータ92へ送出する。コンピュータ92はこのX及びY座標値に対応する磁気標識14の標識信号即ち(30)(2進符号では“011110”)をメモリ91より読み出し、移動すべき位置を指定する。次にコンピュータ92は位置検出装置2より現在位置の標識信号を入力する。ここでは標識信号が(0)であるから移動すべき位置17-30までのコースのうち短かい方、即ち位置17-0→17-10→17-20→17-30へと移動するコースをメモリ91より選択する。この時、前記コースが無人車11の前進する方向であれば駆動回路93を動昨させ、モータ5、即ち駆動輪6を前進回転させ、該無人車11を移動させる。
コンピュータ92は逐次、位置検出装置2より誘導用角磁石12の位置座標を入力すると共に、各磁気標識14の標識信号を各位置を通過する毎に入力する。角磁石12の位置座標は予め設定された一定値と比較され、これらが常に一致するよう駆動回路94を介してモータ7の回転が制御され、即ち、駆動輪6のかじ取りが行なわれる。これにより無人車11が角磁石11、即ち経路に沿って誘導される。また各磁気標識14の標識信号は前記指定標識信号(30)と順次比較されるが、一致しない場合はそのまま前進が続行される。このようにして位置17-10,17-20を通過し位置17-30に到達して標識信号が一致すると、位置検出装置3より停止位置指定用棒磁石15の位置座標を入力し所定の位置に到達した時、モータ5を停止させ無人車11を停止させる。(第6頁左上欄第10行?左下欄第6行)、
(ウ)「第19図は本発明の別の実施例を示す説明図である。同図において、110は座標位置検出装置、120は無人車、130は受信機、140は送信機、150は処理装置である。座標位置検出装置110は前述した座標入力装置4と同一構成からなるもので、そのタブレットは無人車120の移動範囲全域にわたる面積を有しており、無人車120はこのタブレット上で移動する。無人車120は第20図に示すようにその上部に受信機130を有すると共に、下部中央に位置指定用磁気発生器、例えば棒磁石121を取り付け、左右の後輪122,123にそれぞれ直結したモータ124,125を有している。また126は前輪である。」(第6頁右下欄第2?15行)、
(エ)「第23図は処理装置150の動作フローを示すもので、以下、動作について説明する。まず、処理装置150に図示しないキーボード等より無人車120を誘導すべき座標位置を入力する。処理装置150は、座標位置検出装置110より無人車120の現時点の座標値を読み込む。この座標値は棒磁石121が座標位置検出装置110の磁歪伝達媒体へバイアス磁界を加えている位置のものである。処理装置150は指定座標値と現座標値とを比較し演算処理し、必要な制御コードを送信機140のアナログスイッチ141へ送出する。この制御コードは送信用IC142で変調され、更に発光ダイオード143より無人車120へ向けて光信号によって送出される。この光信号は受信機130の受光ダイオード131で受信され、増幅器132,ローパスフィルタ133を介して受信用IC134へ送出され復調される。受信用IC134の出力は更にデコーダ135により制御コードにデコードされ、その出力はリレードライバ136-1?136-4のいずれかを駆動しリレーRL1?RL4のいずれかを動作させる。これによりモータ122、123が駆動され無人車120が指定座標位置まで誘導される。」(第7頁左上欄第10行?右上欄第14行)。

(1-8)引用刊行物8に記載の発明
引用刊行物8〔特開昭62-105206号公報〕には、無人誘導車の誘導装置に関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「車体上の異なる2ヶ所において路面との相対変位を直交2軸成分に分解して非接触で測定する変位センサと、これらの変位センサの信号から車体の移動距離及び移動方向を演算する移動量演算手段と、この移動量演算手段で演算した結果に基づいて車体の現在の位置と指令された位置との偏差を求める偏差演算手段とを備え、この偏差演算手段の演算に基づいて車体を当該指令位置に誘導するようにしたことを特徴とする無人誘導車の誘導装置。」(第1頁左下欄第5?16行)、
(イ)「11は変位センサ10の信号から無人誘導車3の移動距離L及び移動方向ψを演算する移動量演算手段、12は移動量演算手段11で演算した結果に基づいて無人誘導車3の現在位置と無人誘導車3が到達すべき位置との偏差を求める偏差演算手段、13は偏差演算手段12に到達すべき位置を伝達する指令手段で、必要に応じて一連の移動位置を指定できる。14は偏差演算手段12で求めた偏差の方向に基づいて操舵輪8を制御する操舵手段、15は偏差量に基づいて駆動輪9を制御する駆動手段である。」(第2頁左下欄第16行?右下欄第5行)、
(ウ)「偏差演算手段12によって、移動距離Lと移動方向ψは刻々積算されるので、出発地点から目的地点まで経路に於ける現在位置がわかり、目的地点までの距離と方向も容易にわかる。そこで、この方向に操舵輪8を操舵手段14によって制御して無人誘導車3を向けると共に、必要な距離だけ駆動輪9を駆動する。」(第3頁左上欄第5?11行)。

(1-9)引用刊行物9に記載の発明
引用刊行物9〔特開昭61-235775号公報〕には、位置測定システムに関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、測距信号を複数の走行体位置において受信して当該複数の走行体の位置を算定する位置測定システムにおいて、複数の走行体上にそれぞれ中継装置を搭載し、測距信号を各中継装置によって時分割的に中継してコントロールステーションに伝送することにより、実用上十分に狭い周波数帯域を利用して簡易に複数の走行体の位置データをコントロールステーションに集中するものである。」(第1頁右下欄第2?10行)、
(イ)「以上の構成において、走行体2A、2B……はそれぞれ視野に入っている衛星のうち4つの衛星を選択して各衛星から到来する測距信号PDTを中継装置11に受信する。この状態においてコントロールステーション3の伝送時間割当指令回路31(第3図)において、スイッチ回路33がタイミング信号発生回路34のスイッチ信号S12によって所定時間例えば1〔sec〕ごとにコード発生回路32A、32B……の伝送指令コード信号S11A、S11B……を順次選択して送信アンテナ37から伝送指令信号S13として送出する。この伝送指令信号S13は走行体2A、2B……の受信アンテナ12(第2図)を介して中継装置11の伝送制御回路41に常時受信されており、伝送指令信号S13の内容が各走行体2A、2B……に割当てられたコードになったとき、これがコード判定回路42において判定されることにより、受信アンテナ12に受信されている測距信号PDTを伝送回路15から送信アンテナ16に送出する中継動作状態に制御する。このようにして走行体2A、2B……の伝送制御回路41がコントロールステーション3の伝送時間割当指令回路31によって順次指令されて行くことにより(第1図)、衛星1A?1Dから到来する測距信号PDTが走行体2A、2B……の中継装置11によって順次時分割的に中継されてコントロールステーション3に伝送送出されることになる。かくして無線伝送路17を介して各走行体2A、2B……から順次伝送されて来る中継出力S4は、コントロールステーション3の受信アンテナ21を介して測距信号受信機23(第3図)に受信される。ここで測距信号受信機23は各走行体2A、2B……から順次到来する測距信号に基づいて次に述べる手法で各走行体2A、2B……の位置(Xu、Yu、Zu)を演算により求める。」(第4頁左上欄第6行?左下欄第2行)。

(1-10)引用刊行物10に記載の発明
引用刊行物10〔特開昭62-81590号公報〕には、飛翔体管制装置に関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「操縦用管制信号を送信する地上管制局と無人機等の飛翔体に搭載され前記操縦用管制信号を受けて前記飛翔体の運動を管制する応答装置とを有して構成される2次レーダ方式の飛翔体管制装置において、複数の前記飛翔体のそれぞれに対応する識別信号を付与した複数の前記操縦用管制信号を前記地上管制局からフェーズドアレイ空中線を介して時分割方式で送信し前記識別信号に対応する飛翔体からの応答信号を得つつ複数の飛翔体の運動を送受1組の電波で管制する飛翔体管制手段を備えて成ることを特徴とする飛翔体管制装置。」(第1頁左下欄第5?15行)、
(イ)「信号処理器2は、各操縦器から入力される対応各応答機あてのロール角、ピッチ角あるいはエンジンスロット調定量等の操縦用入力信号を所定の信号形式に変換しこれをコマンド信号としてコーダ3に供給する。コーダ3は、このコマンド信号に識別信号その他必要とする信号を付与し所定の形式のアップリンクデータとして送信機4に供給する。」(第2頁右上欄第9?16行)、
(ウ)「送信機4はコーダ3から入力したアップリンクデータにもとづき所定の搬送波を利用して各応答機宛の操縦用管制信号を時分割方式で発生しこれをサーキュレータ5を介してアンテナ6に供給する。」(第2頁左下欄第15?19行)、
(エ)「応答機100-1?100-Nはこのようにして操縦用管制信号の管制のもとに制御された飛翔を行い各種の飛翔データを応答装置から応答信号として放射し、この応答信号はアンテナ6によって捕捉されたのちサーキュレータ5,受信機7を介してデコーダ8と距離算出器とにダウンリンクデータとして供給される。なお、応答信号は送信信号と異る搬送周波数を利用して形成される。」(第2頁右下欄第12?19行)、
(オ)「さて、こうして受信機7を介して出力されるダウンリンクデータは同期信号を含み各応答機ごとの識別信号のほか、飛翔体の速度,ロール角,ピッチ角,高度情報等に関する飛翔データに加えアップリンクデータに含まれるレンジトーンの戻り信号が含まれる。これらのうち飛翔データはデコーダ8に供給されてデコードされテレメトリ信号として信号処理器2に送出され、また、レンジトーンの戻りは距離算出器11に供給されて送信レンジトーンとの位相比較により応答機と地上管制局間の距離を算出しレンジ信号として信号処理器2に送出される。」(第3頁左上欄第10行?右上欄第1行)。

(1-11)引用刊行物11に記載の発明
引用刊行物11〔特公昭48-16747号公報〕には、遊戯車走行装置に関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
「遊戯車によってかじとられて路面上を走行する遊戯車にその遊戯車の走行駆動源である直流モータを登載するとともに、走行中常に路面に接する複数の接触片を装備し、更に前記遊戯車には、前記接触片の各々と前記モータの一方の極端子との間に、前記接触片から前記モータに向う方向を順方向とするように接続された整流器と、同じく前記接触片の各々と前記モータの他方の極端子との間に、前記接触片から前記モータに向かう方向を逆方向とするように接続された整流器とを登載してなり、前記路面には多数の導電材を並設し、互いに隣接する導電材の一方を直流又は交流の電源の一方の端子に、又他方を前記電源の他方に接続してなり、前記遊戯車が前記路面上を走行する際の任意の位置において常に前記接触片のうちの少くともひとつが前記電源の一方の端子に接続されてある導電材の少くともひとつに接し、他の接触片のうちの少くともひとつが前記電源の他方の端子に接続されてある導電片の少くともひとつに接するように、各接触片が配設されてあることを特徴とする遊戯車走行装置。」(第3頁右欄第17?37行)。

(1-12)引用刊行物12に記載の発明
引用刊行物12〔実願昭50-121558号(実開昭52-35797号)のマイクロフイルム〕には、遊戯装置に関し、図面の記載とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「同一平面上に、絶縁部と導電部とがその極性を交互に異ならしめて展開配置された給電フィールドと、上記極性の異なる導電部同士に少なくとも2極が同時に接触する数極の集電接触子をもつ上記フィールド上を走行するモータ駆動走行体とからなる遊戯装置。」(第1頁第4?9行)、
(イ)「本考案は上述のように構成したので、給電フィールド上に置かれたモータ駆動走行体は、フィールドを構成する導電部からの給電をうけ、それによってモータが駆動し走行体の走行が行われ、又その走行方向は該走行体が玩具の類であれば走行体に受信変向装置を搭載してラジコンによる??〔当審注:2字判読不能〕方向制御してやればよいし、人がのるものであればハンドル操作で行なえばよく、要するに本考案によれば、同一平面上に絶縁部と導電部とをその極性を異ならしめて展開配置した給電フィールド上でモータ駆動走行体を走行させるつまりフィールドそのものを給電源として用いるので、地上の平面的拡がりのみで充分設置使用できる特長がある。」(第3頁第9行?第4頁第7行)。

(2)本件訂正発明1について
(2-1)本件訂正発明1と引用発明1との対比
本件訂正発明1と引用発明1とを対比すると、まず、引用発明1の「馬模型(4)」、「トラックを画いた走行路面板(2)」、「支持台(5)」、「走行基台(8)に設けられた制御回路」、「競走遊戯装置」は、それぞれ、本件訂正発明1の「自動車、馬、人等の競争レースを模擬する模型体」、「周回路を構成する模型体走行面」、「下方走行面」、「駆動制御機構」、「ゲーム装置」に相当する。
また、引用発明1の移動片(21a)?(21e)は、それぞれが往復動自在な移動架台(20a)?(20e)に取付けられ、前記移動架台(20a)?(20e)が旋回台(12)を介して走行基台(8)に装着され、前記走行基台(8)が案内部材によって設定された一定の軌跡に沿って下方走行面を往復動して走行するように構成されているため、複数の馬模型(模型体)の走行を誘導する各移動片が移動するときの速度変化の自由度が他の移動片との関係で制限されているものではあるが、引用発明1を認定した引用刊行物1に「複数の移動模型はそれぞれ相対的にかつ時間の経過に伴って速度を変えながら前記一定の軌跡に沿って移動することができる。」(前記記載事項(ウ))と記載されていることからみて、該移動模型を移動させる各移動片が往復動及び旋回して移動することにより個別に移動制御可能に構成されているものといえるから、この点において、引用発明1の前記「移動片」は、本件訂正発明1の「走行体」と対比して、いずれも模型体の走行を誘導する機能を有する「移動体」として共通する。
そして、引用発明1の「キヤビネツト(1)に設けられた制御回路及び走行基台(8)に設けられた制御回路」は、本件訂正発明1の「走行制御手段」と対比して、いずれも走行を制御する「制御手段」として共通する。
さらに、引用発明1の「パルスカムモータ(38)が回転を開始したときの初期状態に応じて自動的に決定される、交番カムスイツチ(37a)(37b)の開閉切換タイミングとパルスカムスイツチ(40a)?(40e)の開閉切換タイミングとの相互関係が常に一定していないことによって、どの馬模型(4)がゴールライン(63)に最も速く到着するか、全く予想がつかないレース展開を決定するモータ駆動タイミング決定手段」は、初期状態に応じて以後のレース展開が自動的に決定されるものであるから、本件訂正発明1の「レース展開設定手段」と対比して、いずれも所定のレース展開をゲーム装置(競走遊戯装置)自体が予め決定する機能を有する「レース展開決定手段」として共通するとともに、両者は、前記レース展開決定手段で決定された「レース展開に基づいて生成される制御信号に従って前記駆動制御機構を制御するように構成」されていることにおいて共通する。
また、引用発明1の「トロリ(33)及びトロリ線(34)」は、本件訂正発明1の「集電手段及び給電手段」と対比して、それぞれ走行基台(8)に設けられた制御回路(駆動制御機構)が電力を取り込むための集電手段及び該集電手段に対して陽極電位と陰極電位を印加すべく敷設された給電手段として共通する。
そうすると、本件訂正発明1と引用発明1は、下記の点でそれぞれ一致並びに相違するものと認められる。
一致点.「自動車、馬、人等の競争レースを模擬する前記複数の模型体が走行する周回路を構成する模型体走行面と、この模型体走行面の下方に配置された下方走行面と、前記模型体走行面を介して磁力により結合して対応する前記模型体の走行を誘導するように前記下方走行面の上方に配置された複数の移動体と、前記複数の移動体の移動を制御する制御手段とを有し、
前記模型体走行面及び前記下方走行面は、前記模型体及び前記移動体がそれぞれ走行及び移動可能に構成されており、
前記移動体を個別に移動制御可能な駆動制御機構を有し、
前記制御手段は前記移動体のそれぞれに制御信号を送信して前記複数の移動体によって行われるレース展開を制御し、
前記移動体のそれぞれは受信した前記制御信号に従って個別に前記駆動制御機構が制御されて前記下方走行面の上方を移動するように構成されており、
前記ゲーム装置は、さらに、前記レース展開を決定するレース展開決定手段を備え、前記レース展開決定手段で決定されたレース展開による移動すべき位置に基づいて生成される制御信号に従って前記駆動制御機構を制御するように構成されており、
前記ゲーム装置は、さらに、敷設された電極に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、前記制御手段は前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、移動中の前記制御手段は接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されており、
前記構成によって移動位置を制御される前記移動体によって対応する前記模型体それぞれの走行を誘導することにより、前記模型体が走行する前記レース展開を実現するように構成されたゲーム装置。」
相違点1A.本件訂正発明1は、遊戯者が入賞模型体を予想して投票を行い、投票終了後複数の模型体が順番を競って走行するレースを実行し、レース結果及び投票に応じて遊戯者に配当を行うゲーム装置であるのに対し、引用発明1は、模型体が順番を競って走行するレースを実行するゲーム装置である点。
相違点1B.複数の模型体及び複数の移動体について、本件訂正発明1は、該移動体が、模型体走行面に対する周回路を構成する下方走行面上に配置され該下方走行面を走行する走行体をもって構成され、複数の模型体及び該模型体の走行を誘導する複数の走行体がその走行経路を規制されることなく個別に走行するレース展開を実現するように構成されるのに対し、引用発明1は、該移動体が、往復動自在な移動架台(20a)?(20e)と旋回台(12)を介して走行基台(8)に載置される移動片(21a)?(21e)をもって構成され、前記走行基台(8)が下方走行面上に配置され該下方走行面を往復動して走行することで、該移動体が下方走行面の上方に配置され該下方走行面の上方を周回して移動するように構成され、複数の模型体及び該模型体の走行を誘導する複数の移動体が設定された一定の軌跡に沿って個別に走行及び移動するレース展開を実現するように、その走行経路が規制されて構成される点。
相違点1C.ゲーム装置が、移動体の駆動制御機構を制御して決定されたレース展開を実現するために、本件訂正発明1は、該移動体としての走行体それぞれの下方走行面上における実際の走行位置を逐次検出する位置検出手段とを備え、この位置検出手段により逐次検出される前記走行体のそれぞれの前記下方走行面上における実際の走行位置とレース展開設定手段で予め設定されたレース展開による走行すべき位置とを比較し、検出された実際の走行位置と前記予め設定された走行すべき位置との差を算出する手段と、前記比較により算出された算出結果に基づいて生成される制御信号に従って前記駆動制御機構のそれぞれを制御して前記各走行体の走行位置を逐次修正する手段とによって構成されるのに対し、引用発明1は、下方走行面を走行する走行基台(8)に載置された移動体としての移動片の位置を検出する位置検出手段を有することなく、初期状態に応じて以後のレース展開が自動的に決定されるレース展開決定手段で決定されたレース展開に基づいて生成される制御信号のみに従って駆動制御機構を制御するように構成される点。
相違点1D.本件訂正発明1は、走行体のそれぞれに備えられた電磁波発振源と、前記走行体が走行する下方走行面に沿って配設された受信手段とを備え、走行制御手段から送信される走行制御信号には前記複数の走行体のそれぞれを順次選択する信号が含まれており、選択された前記走行体のそれぞれは前記走行制御手段から送信される前記走行制御信号に含まれる発振を指示する信号に応答して一定時間前記電磁波発振源を駆動し、前記選択された走行体の前記電磁波発振源からの電磁波を前記受信手段で順次受信することで前記選択された走行体の位置を順次検出するように構成されており、前記実際の走行位置の逐次検出は前記走行体の走行中繰り返し行われるように構成される位置検出手段を備えるのに対し、引用発明1は、前記構成の位置検出手段を備えていない点。
相違点1E.本件訂正発明1は、模型体走行面の裏面に敷設された複数の電極と該複数の電極に交互に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、走行体のそれぞれは前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、走行中の前記走行体のそれぞれは接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されているのに対し、引用発明1は、敷設された電極に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、個別に移動させる複数の移動片が載置された走行基台(8)は前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、走行中の前記走行基台(8)は接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されている点。

(2-2)相違点の検討
i.相違点1Aについて
順番を競って走行するレースにおいて、そのレースを予想し投票を行い、レース結果及び投票に応じて遊戯者に配当を行うゲーム装置は、引用発明2に開示されており、引用発明1に引用発明2を適用して、上記相違点1Aに係る本件訂正発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
ii.相違点1Bについて
まず、競争ゲームの形態をできる限り実際の競技に近い形で再現することは、当該技術分野における普遍的な課題であるから、引用発明1に示される、複数の馬模型が設定された一定の軌跡に沿って走行するようにしたレース展開について、その走行経路を規制されることなく走行する実際の競技に近い形でレース展開を再現しようとすることは、当業者であれば、当然に考えることである。
しかして、引用発明2には、画像によるものではあるが、実際の競馬場でのレース展開のように、複数の出走馬がそれぞれ特定のトラックに限定されることなく個別に自由にトラック上を走行して、その走行経路を規制されることなくレース展開設定手段により予め設定された所定のレース展開を実現するようにした競馬等の競走遊戯装置の具体例が開示されており、同様に、引用発明3には、各レーシングカー毎の走行レーンを限定せずに同一走路内において、先行車の追越しや後続車の追越阻止のため自由に左右に移動させつつフリー走行させ、実際の自動車レースに擬似させるようにした競争ゲーム装置の具体例が開示されており、競争ゲーム装置において走行経路を規制されることなく走行する実際の競技に近い形でレース展開を再現することは、当該技術分野における周知技術であったものと認められる。
一方、模型体が周回路を構成する模型体走行面上を自由に走行できるようにするべく、本件訂正発明1の走行体の前記走行制御のように、模型体走行面に対する周回路を構成する下方走行面に対し走行体が走行経路を規制されることなく走行体を個別に自由に走行させるように構成した競争ゲーム装置は、本件特許出願時の周知技術(例えば、引用刊行物4〔米国特許第3961791号明細書〕、引用刊行物5〔実公昭55-46222号公報〕参照)である。
さらに、競走馬の形態を含むレーシング目標体を所定のトラック上を走行する電気駆動車で吸引して個別に走行制御可能とした競争ゲーム装置が、本件特許出願時の周知技術(例えば、引用刊行物6〔米国特許第2188619号明細書〕参照)であり、前記複数の「レーシング目標体」及び「電気駆動車」は、それぞれ周回路を構成する模型体走行面及び下方走行面を走行可能とされ、各電気駆動車がそれぞれに搭載され個別に走行制御可能な駆動制御機構を有して前記レーシング目標体の走行を誘導する構成において、本件訂正発明1の「模型体」及び「走行体」に相当する。
ところで、走行体としての無人車に走行制御信号を送信して、個別に登載された駆動制御機構を制御することにより、該走行体が所定の走行経路を走行するように制御する走行制御手段を有する走行誘導システムは、本件特許出願時の周知技術(例えば、引用刊行物7〔特開昭60-153509号公報〕、引用刊行物8〔特開昭62-105206号公報〕参照)である。
そうすると、競争ゲームの形態をできる限り実際の競技に近い形で再現するという前記普遍的な課題を踏まえて、引用発明1に示される、複数の模型体及び走行基台(8)に載置された複数の移動体としての移動片が設定された一定の軌跡に沿って個別に走行及び移動するレース展開方式に代えて、その走行経路を規制されることなく走行する上記周知のレース展開方式(引用発明2及び引用発明3)を導入するとともに、引用発明1に示される、下方走行面を往復動して走行する走行基台(8)に載置された複数の移動片を個別に移動させることにより複数の模型体の走行を誘導する構成に代えて、移動体としての複数の走行体が下方走行面を個別に走行することにより複数の模型体の走行を誘導する上記周知の競争ゲーム装置(引用刊行物4乃至引用刊行物6)の構成を採用し、該走行体の走行制御手段として、走行体としての無人車が所定の走行経路を走行するようにした上記周知の走行誘導システム(引用刊行物7及び引用刊行物8)を適用して、上記相違点1Bに係る本件訂正発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iii.相違点1Cについて
相違点1Cに係る本件訂正発明1の構成は、要するに、走行体の実際の走行位置を位置検出手段により逐次検出して、該走行体が予め設定された走行位置を走行するように走行制御を行うという、いわゆるフィードバック制御をもって、レース展開設定手段により予め設定されたレース展開を実現するものである。
まず、引用発明2には、画像によるものではあるが、走行体としての複数の出走馬がその走行経路を規制されることなくレース展開設定手段により予め設定されたレース展開を実現するようにした競馬等の競走遊戯装置が開示されている。
ところで、前記の如き走行位置を逐次検出するフィードバック制御をもって、該走行体が予め設定された走行位置を走行するように、走行体としての無人車の駆動制御機構を制御する走行誘導システムは、本件特許出願時の周知技術(例えば、引用刊行物7〔特開昭60-153509号公報〕、引用刊行物8〔特開昭62-105206号公報〕参照)である。
そうすると、引用発明1に示される、初期状態に応じて自動的に決定されるレース展開決定手段からの制御信号のみに従って駆動制御機構を制御することに代えて、引用発明2に示される、レース展開設定手段により予めレース展開を設定する手法を採用するとともに、前記手法により予め設定されたレース展開による走行位置を走行するように上記周知のフィードバック制御による走行誘導システム(引用刊行物7及び引用刊行物8)を適用して、上記相違点1Cに係る本件訂正発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iv.相違点1Dについて
まず、上記相違点1Cについて検討したように、走行体の実際の走行位置を位置検出手段により逐次検出して、該走行体が予め設定された走行位置を走行するように走行制御を行うフィードバック制御による走行誘導システムは、本件特許出願時の周知技術(例えば、引用刊行物7〔特開昭60-153509号公報〕、引用刊行物8〔特開昭62-105206号公報〕参照)である。特に、引用刊行物7には、無人車120に備えられた磁気発生器121からの電磁波を無人車120の移動範囲全域にわたって配設された座標位置検出装置110により受信することで、該無人車120の現時点の座標値を検出するようにした位置検出手段が開示されている。
また、電波送受信手段を備えた複数の走行体を順次時分割的に選択する制御信号を送信し、選択された走行体の前記電波送受信手段からの電波を順次時分割的に受信することで、該複数の走行体の位置を順次繰り返し検出するようにした位置検出手段は、本件特許出願時の周知技術(例えば、引用刊行物9〔特開昭61-235775号公報〕、引用刊行物10〔特開昭62-81590号公報〕参照)である。
そうすると、引用発明1において、上記相違点1Cについて検討した、周知のフィードバック制御による走行誘導システムを前提に、複数の走行体の位置を順次時分割的に検出するようにした上記周知の位置検出手段(引用刊行物9及び引用刊行物10)を採用して、上記相違点1Dに係る本件訂正発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
v.相違点1Eについて
走行体が走行する走行面に敷設された複数の電極と該複数の電極に交互に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、走行体は前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、走行中の前記走行体は接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されるゲーム装置は、本件特許出願時の周知技術(例えば、引用刊行物11〔特公昭48-16747号公報〕、引用刊行物12〔実願昭50-121558号(実開昭52-35797号)のマイクロフイルム〕参照)である。
また、上記相違点1Bについて検討した引用刊行物6〔米国特許第2188619号明細書〕)には、模型体走行面の裏面にトロリ集電レールからなる給電手段を備え、複数の走行体のそれぞれは前記トロリ集電レールに接するように配置されたトロリ集電輪27からなる集電手段を備えており、走行中の前記走行体のそれぞれは接するトロリ集電レールから前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成した周知の競争ゲーム装置が開示されている。
そうすると、引用発明1に示される、個別に移動させる複数の移動片が載置された走行基台(8)が下方走行面を走行する構成に代えて、前記複数の移動片が走行体として下方走行面を個別に走行する上記周知の競争ゲーム装置(引用刊行物4乃至引用刊行物6)の構成を採用するとともに、該走行体への給電手段及び集電手段として、上記引用刊行物6に記載の周知の構成及び上記周知技術(引用刊行物11及び引用刊行物12)を適用して、上記相違点1Eに係る本件訂正発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
vi.作用効果について
本件訂正発明1の作用効果は、引用発明1及び引用発明2並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に予測できるものである。
vii.関連特許に係る平成15年(行ケ)第132号判決について
付言すると、本件特許第2650643号と親出願を同じくする特許第2694689号の発明について、平成10年無効審判第35303号事件に係る平成15年(行ケ)第132号判決は、「ここで,競馬等の競争を模擬したゲームにおいて,現実のレースにおけるレース展開をゲーム上に再現することが一つの目標となるとともに,ゲーム装置である以上,現実にできるだけ近付けようとする要請が存在することは当然のことというべきであり,他方,ゲーム装置に模型を使用すると,模型による迫真性が生じることは,原告の自認するとおりである。そうすると,現実のレースにおけるレース展開をゲーム上に再現するという当然の要請と,模型の有する迫真性をゲーム装置に求める要請とに基づいて,刊行物7発明のレース展開を再現する手段として,刊行物4記載の自動車模型(模型体),走行路面板(模型体走行面),循環手段(走行駆動機構)及び制御回路(走行制御手段)を採用することは,当業者が容易に想到し得る程度のことというべきである。」と判示しており、前記判決中の刊行物4及び刊行物7は、それぞれ、本件訂正審判の引用刊行物1(厳密には、判決では公告公報、本件では公開公報を引用。)及び引用刊行物2に相当する。また、前記判決は、本件訂正審判で引用した引用刊行物6及び引用刊行物7について、それぞれ刊行物1及び刊行物6として、当該刊行物に記載の技術事項が周知であったと認定しているところである。

(2-3)小括
したがって、本件訂正発明1は、引用発明1及び引用発明2並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)本件訂正発明2について
(3-1)本件訂正発明2と引用発明1との対比
前記(2-1)における本件訂正発明1と引用発明1との対比を踏まえて、本件訂正発明2と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「移動片(21a)?(21e)と、移動架台(20a)?(20e)に結合された模型駆動モータ(29)及びチエン(26,31)と、旋回台(12)を介して複数の移動架台(20a)?(20e)を装着した走行基台(8)に結合された走行モータ(13)及び駆動輪(14)」は、本件訂正発明2の「走行駆動手段」に相当する。
また、引用発明1の「移動片(21a)?(21e)」は、本件訂正発明2の「走行体」と対比して、いずれも模型体走行面を介して磁力により結合して対応する模型体の走行を誘導する機能を有する「移動体」として共通する。
そうすると、本件訂正発明2と引用発明1は、下記の点でそれぞれ一致並びに相違するものと認められる。
一致点.
「自動車、馬、人等の競争レースを模擬する前記複数の模型体が走行する周回路を構成する模型体走行面と、この模型体走行面の下方に配置された下方走行面と、前記模型体走行面を介して磁力により結合して対応する前記模型体の走行を誘導するように前記下方走行面の上方に配置された複数の移動体と、前記複数の移動体によって行われるレースの展開を決定するレース展開決定手段と、当該決定されたレース展開に従って前記移動体の移動を制御する制御信号を個々の前記移動体に送信するように構成された制御手段と、を有し、
前記模型体走行面及び下方走行面は前記模型体及び移動体が走行及び移動可能に構成されており、
前記制御手段は、それぞれの前記移動体について、前記レース展開決定手段によって決定された移動位置に基づく制御信号を逐次出力する手段とによって構成されており、
前記ゲーム装置は、さらに、敷設された電極に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、前記制御手段は前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、移動中の前記制御手段は接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されており、
前記移動体を個別に制御可能な走行駆動手段が搭載されており、前記制御手段から受信した制御信号に基づき逐次走行駆動手段を制御して前記決定された移動位置に沿って移動するように構成されており、前記決定されたレース展開に従って移動するよう逐次前記移動体の移動を制御し対応する模型体を誘導することにより、前記複数の模型体がそれぞれ前記模型体走行面を走行するように構成されてなるゲーム装置。」
相違点2A.本件訂正発明2は、遊戯者が入賞模型体を予想して投票を行い、投票終了後複数の模型体が順番を競って走行するレースを実行し、レース結果及び投票に応じて遊戯者に配当を行うゲーム装置であるのに対し、引用発明1は、模型体が順番を競って走行するレースを実行するゲーム装置である点。
相違点2B.複数の模型体及び複数の移動体について、本件訂正発明2は、該移動体が、模型体走行面に対する周回路を構成する下方走行面上に配置され該下方走行面を走行する走行体をもって構成され、複数の模型体及び該模型体の走行を誘導する複数の走行体がその走行経路を規制されることなく個別に走行するレース展開を実現するように構成されるのに対し、引用発明1は、該移動体が、往復動自在な移動架台(20a)?(20e)と旋回台(12)を介して走行基台(8)に載置される移動片(21a)?(21e)をもって構成され、前記走行基台(8)が下方走行面上に配置され該下方走行面を往復動して走行することで、該移動体が下方走行面の上方に配置され該下方走行面の上方を周回して移動するように構成され、複数の模型体及び該模型体の走行を誘導する複数の移動体が設定された一定の軌跡に沿って走行するレース展開に従って走行するように、その走行経路が規制されている点。
相違点2C.制御手段が、移動体を決定された移動位置に沿って移動するように走行駆動手段を制御するために、本件訂正発明2は、個々の走行体の実際の位置を繰り返し検出する位置検出手段によって検出された実際の走行位置をレース展開設定手段によって予め設定された走行位置と比較し、その比較結果に基づいて生成され逐次出力される走行制御信号に基づき逐次走行駆動手段を制御して前記各走行体の走行位置を逐次修正するように構成されるのに対し、引用発明1は、下方走行面を走行する走行基台(8)に載置された移動体としての移動片の位置を検出する位置検出手段を有することなく、初期状態に応じて自動的に決定されるレース展開決定手段で決定されたレース展開に基づいて生成される制御信号のみに従って走行駆動手段を制御するように構成される点。
相違点2D.本件訂正発明2は、走行体のそれぞれに備えられた電磁波発振源と、前記走行体が走行する下方走行面に沿って配設された受信手段とを備え、走行制御手段から送信される走行制御信号には前記複数の走行体のそれぞれを順次選択する信号が含まれており、選択された前記走行体のそれぞれは前記走行制御手段から送信される前記走行制御信号に含まれる発振を指示する信号に応答して一定時間前記電磁波発振源を駆動し、前記選択された走行体の前記電磁波発振源からの電磁波を前記受信手段で順次受信することで前記選択された走行体の位置を順次検出するように構成されており、前記実際の走行位置の逐次検出は前記走行体の走行中繰り返し行われるように構成される位置検出手段を備えるのに対し、引用発明1は、前記構成の位置検出手段を備えていない点。
相違点2E.本件訂正発明2は、模型体走行面の裏面に敷設された複数の電極と該複数の電極に交互に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、走行体のそれぞれは前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、走行中の前記走行体のそれぞれは接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されているのに対し、引用発明1は、敷設された電極に陽極電位と陰極電位を印加する手段を含む給電手段を備え、個別に移動させる複数の移動片が載置された走行基台(8)は前記電極に接するように配置された集電手段を備えており、走行中の前記走行基台(8)は接する電極から前記集電手段を介して逐次電力が供給されるように構成されている点。

(3-2)相違点の検討
i.相違点2A乃至2Eについて
相違点2A乃至2Eは、本件訂正発明1と引用発明1との相違点1A乃至1Eと実質的に同一であるところ、前記相違点1A乃至1Eに係る本件訂正発明1の構成は、前記(2-2)において検討したように、引用発明1及び引用発明2並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できるものである。
そうすると、相違点2A乃至2Eに係る本件訂正発明2の構成についても、引用発明1及び引用発明2並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できるものというべきである。
ii.作用効果について
本件訂正発明2の作用効果は、引用発明1及び引用発明2並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

(3-3)小括
したがって、本件訂正発明2は、引用発明1及び引用発明2並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(4)まとめ
よって、本件訂正発明1及び2は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

2.特許法第36条第4項に規定する要件について
本件訂正発明1及び2が、その特許請求の範囲には発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならないとする特許法第36条第4項に規定する要件に適合するものか否か、以下検討する。

(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1については、走行体の実際の走行位置を検出する「位置検出手段」に係る発明の構成が不明である。
すなわち、走行体に備えられた電磁波発振源から発信される電磁波は、当該走行体の位置を特定できる情報自体を含むものではないから、該電磁波を受信する受信手段において電磁波発振源の位置を特定して検出するための何らかの技術的手段を備える必要があるところ、その特許請求の範囲には、前記技術的手段の構成が記載されていない。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、走行体に備えられた電磁波発振源からの電磁波を走行体の下方に配置された下方走行面において縦横に電線を張りめぐらせた位置検出板により検出して、該走行体の実際の走行位置であるXY座標を検出する構成の位置検出手段が記載されており、該構成は、本件訂正発明1の構成に欠くことができない事項と認められる。
この点について、請求人は、特許請求の範囲における「走行体が走行する下方走行面に沿って配設された受信手段」との記載から、受信手段が下方走行面に沿った走行体の二次元位置(XY座標)を特定して検出するための技術的手段であることは明らかである旨主張しているが、特許請求の範囲における「下方走行面に沿って配設された受信手段」という記載からは、例えば、下方走行面の周方向に連続して受信手段が配設されることが想定される程度であって、走行体の二次元位置を特定して検出する作用目的を達成するために下方走行面全域に亘って受信手段が配設される構成を明確に把握することができないから、該主張は失当である。
したがって、本件訂正発明1は、その特許請求の範囲に発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件に適合しない。

(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2についても、前記「本件訂正発明1について」で指摘したと同様に、走行体の実際の走行位置を検出する「位置検出手段」に係る発明の構成が不明である。

(3)まとめ
よって、本件訂正発明1及び2は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第4項の規定に適合しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

第4.むすび
以上のとおり、本件訂正審判に係る請求項1及び8に係る発明(本件訂正発明1及び2)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-06 
結審通知日 2007-03-08 
審決日 2007-03-20 
出願番号 特願平8-97034
審決分類 P 1 41・ 856- Z (A63F)
P 1 41・ 121- Z (A63F)
P 1 41・ 532- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗荒巻 慎哉  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 植野 孝郎
宮本 昭彦
登録日 1997-05-16 
登録番号 特許第2650643号(P2650643)
発明の名称 ゲーム装置  
代理人 森崎 博之  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大賀 眞司  
代理人 深澤 拓司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ