• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680172 審決 特許
無効200680255 審決 特許
無効200680154 審決 特許
無効2007800062 審決 特許
無効200680136 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  E04B
審判 全部無効 2項進歩性  E04B
審判 全部無効 特174条1項  E04B
審判 全部無効 特29条特許要件(新規)  E04B
審判 全部無効 特39条先願  E04B
管理番号 1156710
審判番号 無効2006-80090  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-26 
確定日 2007-05-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3710808号発明「外断熱工法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3710808号に係る発明は、平成16年6月28日に特許出願したものであって、平成17年8月19日に設定登録されたものであり、その後の平成18年4月26日に有限会社アルテより特許無効の審判が請求され、被請求人より平成18年8月1日付け答弁書が提出され、請求人より平成18年10月2日付け弁駁書が提出され、その後の平成19年1月30日に第1回口頭審理が行われ、請求人より平成19年2月9日付け上申書が提出された。

2.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付された明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

(本件発明)
「パネル状の断熱材、及び該断熱材の表面に貼着され前記断熱材の表面積よりも大きく形成されるとともに前記断熱材の縁部から延出された延出部を有し、柔軟性のある折畳み可能な材質より形成されるメッシュ材が備えられた建築用部材を、下地用構造用合板の表面に複数枚敷き詰める工程と、
敷き詰められた前記建築用部材を、前記下地用構造用合板に対して固定する工程と、
固定された前記建築用部材のうち隣接する建築用部材の前記延出部同士を重ね合わせ、前記隣接する建築用部材のいずれか一方の表面にメッシュ材を3重構造となるように折畳む工程と、
折畳まれた前記メッシュ材及び前記建築用部材の表面に、樹脂及びセメントの混合物を平坦に塗布する工程と
を備えることを特徴とする外断熱工法。」

3.請求人の主張
審判請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書によれば、次の理由及び証拠に基づいてその特許は無効とされるべきであると主張する。
(理由)
(1)本件発明は、本件出願前に頒布された甲第2号証ないし甲第22号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(なお、口頭審理において、審判請求書の第33頁第8行目に記載の「甲第1号証?甲第22号証及び甲第24号証」は、「甲第2号証?甲第22号証」の誤記であることが確認された。)
(2)本件発明は、甲第23号証の契約書の条項(注;第11条の「本契約の商品は、…特許を出願している」における「本契約の商品」が「フレックスパネル」であり、同「特許出願」が甲第24号証の先願特許(請求項5に係る発明)の出願であって、その「建築下地材」が「フレックスパネル」に該当する。)に違反して出願され、特許されたものであり、同上先願特許に係る発明(請求項5に係る発明)の冒認出願に相当する行為があったといえるから、その特許は特許法第123条第1項第6号を類推適用して無効とすべきである。
(3)本件発明は、補正により新規事項が追加されたにもかかわらず特許されたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
(4)本件発明は、特許明細書の記載とおりに実施すると、ひび割れが生じ、現実的に実施不可能であるから、特許法第29条第1項柱書きの「産業上利用することができる発明」に該当しないから、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(5)本件発明は、甲第24号証の先願特許に係る発明(請求項5に係る発明)と同一の発明であるから、特許法第39条第1項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

(証拠)
甲第1号証:特許第3710808号公報(本件特許公報)
甲第2号証:特開平7-331761号公報
甲第3号証:特開昭57-205654号公報
甲第4号証:特開2002-254537号公報
甲第5号証:特表平8-506868号公報
甲第6号証:実開昭62-14036号公報
甲第7号証:実公昭53-18975号公報
甲第8号証:特開平6-305017号公報
甲第9号証:特開平7-163621号公報
甲第10号証:実開平6-36928号公報
甲第11号証:特開平8-118499号公報
甲第12号証:実開昭63-115024号公報
甲第13号証:特開平8-135130号公報
甲第14号証:特開2002-47776号公報
甲第15号証:特開2004-162298号公報
甲第16号証:米国特許第5979131号明細書
甲第17号証:特開2003-119997号公報
甲第18号証:特開2003-13513号公報
甲第19号証:野原産業株式会社発行の外断熱システム「シュトーサーモクラシック」のカタログ及びホームページの複写物
甲第20号証:株式会社サンクビット発行の「アウサレーション湿式外断熱工法」のカタログ及びホームページの複写物
甲第21号証:株式会社高本コーポレーション発行の「ウッドブリース外断熱工法」のカタログ及びホームページの複写物
甲第22号証:ノンラック下地材「WARENTE」のカタログ
甲第23号証:フレックスパネルに於ける販売契約書
甲第24号証:特許第3622090号公報(先願特許公報)
甲第25号証:特開2006-9454号公報(本件特許出願の公開公報)
甲第26号証:本件特許発明の各工程の写真

また、請求人は、弁駁書により次の甲第27?29号証を、陳述要領書により次の甲第30?31号証を、それぞれ提出している。

甲第27号証:平成15年2月7日付け「受領書」
甲第28号証:「外断熱工法 フレックスパネルII」のカタログ
甲第29号証:請求人が本件発明を実施した状態を撮影した写真
甲第30号証:本件特許の特許願2004-189601号の拒絶理由通知書
甲第31号証:同上特許願2004-189601号の意見書

4.被請求人の主張
一方、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め」(答弁の趣旨)、答弁書及び口頭審理陳述要領書によれば、次のように主張する。
(1)本件発明は、甲第2号証ないし甲第22号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明は、甲24号証の請求項5に係る発明とは、「課題の設定」及び「課題解決のために採用した手段」からしても全く別異の発明であり、冒認出願ではない。
(3)本件特許明細書における補正事項は、本件特許出願の当初明細書の段落【0009】にも記載があり、当初明細書(甲第25号証)の記載から自明な事項であって、新規事項ではない。
(4)本件特許発明の外断熱工法は、多数の当業者によって実際に良好な施工が行われており、乙第1号証に示すように、請求人が主張するようなひび割れが生じることはないものであって、実施可能なものである。
(5)特許法第39条により発明が同一であるか否かの判断の対象となる発明は「請求項に係る発明」であり、本件発明が、甲24号証の請求項5に係る発明と全く別異の発明であることは、(2)で上述したとおりである。

なお、被請求人は、答弁書により次の証拠を提出している。
(証拠)
乙第1号証:被請求人が本件発明を実施したものを撮影した写真

5.各甲号証の記載事項等
(1)甲第2号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平7-331761号公報)には、「断熱成形板及びその施工法」の発明に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した板状成形物で、断熱材か表面材の側端面より粗布がはみ出していることを特徴とする断熱成形板。
【請求項2】 断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した板状成形物で、断熱材や表面材の側端面より粗布がはみ出している断熱成形板を下地面に接着施工するのに、はみ出し粗布部分を下地面または/及び断熱板の接合面に配置して、接着剤により貼付けることを特徴とする断熱成形板の施工法。」
(ロ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は施工性が良い断熱板とその施工法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の建築物の外断熱工法としては、それぞれの施工現場で壁や天井などの下地面に、発泡スチロールやグラスウールなど断熱材を接着して、ガラス繊維や合成繊維からなる粗目の平織物(粗布)などの補強材を介して、樹脂モルタルや骨材入アクリル樹脂系エマルジョンなどの仕上塗材を表面材として使用して施工していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、下地面への断熱材の接着工程、断熱材への粗布などの補強材の接着工程、及び補強材を介して表面材を断熱材への塗装仕上げ施工するなどの多くの作業工程があり、かつ、各作業工程は接着剤の調合、塗布、硬化の作業と養生期間を要した。
【0004】また、上記の各工程は施工現場で行われるので、気温や天候などの変化により、作業時間、施工期間、断熱効果、仕上り外観などに変化があり、工程や性能の標準化にも問題があった。
【0005】本発明の目的は、施工作業が容易で、かつ施工後の性能も標準化されている断熱成形板とそれを使用する施工法を提供することにある。」
(ハ)「【0008】
【実施例】以下、本発明を図面により説明する。本発明の断熱成形板1の側面図を図1に、平面図を図2に示す。また、本発明の施工後の側断面図を図3に、平面図を図4に示す。
【0009】発泡スチロール板(厚さ5cm×60cm×60cm)からなる断熱材2の表面に、ガラス繊維クロス(メッシュ)(70cm×70cm)を粗布3として使用し、嵩比重0.5のセラミックスバルーン(10部)と樹脂分50%のアクリルエマルジョン(10部)とセメント(6部)との混合物からなる樹脂モルタルを表面材4として使用して、粗布3を表面材3の中間層として挾んだ状態で表面材3を厚さ0.5cmで50cm×50cmの大きさに成形し、樹脂モルタルが硬化してから、断熱材2よりはみ出した粗布3の四隅を切取り除いて、図2に示す如く、断熱材2より長さ5cmを残して、はみ出し粗布部分31とした。
【0010】次に、上記の断熱成形板1をコンクリート壁面からなる下地面5に接着施工するのには、接着剤6として、前記の表面材4として使用した樹脂モルタル、すなわち、セラミックスバルーンとアクリルエマルジョンとセメントの混合物を接着剤6として使用して、下地面5にだんご状に塗布し、本発明の上記断熱成形板1の裏面を押し貼り接着した後に、断熱成形板1の表面側のはみ出し粗布部分31を該成形板1同志の目地部で重ね合わせて、上記の接着剤6を使用して、目地部を充填接着することにより施工した。
【0011】さらに、本発明の断熱成形板1とこれを用いて施工した表面材4の表面に、化粧仕上材7として、吹付け塗材や化粧材張りなどの表面化粧仕上施工も可能である。
【0012】ここで、基材となる断熱材2としては、発泡スチロール、硬質発泡ポリエチレン、硬質ウレタン発泡体などのように、硬質体で断熱性がある合成樹脂発泡体が適しているが、中空体からなる軽量骨材を樹脂バインダーなどで成形したもののように軽量で断熱性と加工性がよくて下地面6への接着施工性の良い市販の断熱材が適用できる。
【0013】粗布3としては、ガラス繊維(メッシュ)クロスの如く、不燃性で伸縮率の低い粗目の平織物が最適であるが、ナイロン、ビニロン、テトロンなどの高強度の合成樹脂からなる不織布やカンレイシヤなどのように粗目の平織物で、接着剤5が下地面6及び表面材4へ充填塗布できる程度の粗さと、織物中の網目の中に充填できて接着層を補強できる程度の強度と粗さ(メッシュ)を有している市販の粗布が適用できる。
【0014】表面材4としては、軽量骨材入樹脂モルタル、すなわち、中空体または発泡体からなる軽量骨材と、皮膜成形能を有する樹脂とセメント及び必要に応じてガラス繊維やカーボン繊維などの補強材を混合した軽量樹脂モルタルが、施工性、断熱性などの点で最適である。
【0015】軽量骨材の具体例としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーンなどの無機質系のバルーンが適しており、塩化ビニルバルーンやフェノール樹脂バルーンなどの合成樹脂系の発泡体でもよい。
【0016】皮膜成形能を有する樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴムなどの各種合成樹脂または各種エラストマの単独または併用物がある。更に必要に応じて水または有機溶剤に溶解または分散して用いられる。すなわち、無溶剤、溶剤、エマルジョン、ラテックス等の形態で用いられる。
【0017】下地面5とは、建造物の壁面、天井、床面などで断熱性と化粧表面が要求される施工面である。
【0018】接着剤6としては、前記の皮膜成形能を有する樹脂を主成分とする通常の接着剤、及びこれらの樹脂と骨材やセメントを混入した前記の表面材4と同一ないしは類似の成分で接着剤としての機能を有しているものが適用される。」
(ニ)「【0019】
【発明の効果】本発明の断熱成形板は、予め、工場などで最適の条件で断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した断熱成形板であるので品質が良い。
【0020】下地面への施工現場では、断熱成形板の接合部となる目地部分で、はみ出し粗布部分を重ねて接着剤または前記の表面材で接着施工するので、繊維と複合化されて、断熱成形板と同等の強度と寸法変化率に施工することができる。」

上記記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「(予め、工場などで最適の条件で)断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した板状成形物であって、断熱材や表面材の側端面より粗布がはみ出している断熱成形板を用意し、(施工現場では、)上記の断熱成形板1を(建造物の壁面、天井、床面等の施工面である)下地面5にその裏面を押し貼り接着した後に、はみ出し粗布部分を断熱板の接合面に(目地部で重ね合わせるように)配置して、(表面材4と同一ないしは類似の成分を有している)接着剤により貼付けることから成る断熱成形板の施工法。」

(2)甲第3号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開昭57-205654号公報)には、「建築物の断熱外壁構造体」の発明に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「この状態で数日間養生して置き、断熱材2が壁躯体1に完全に接着した後、該断熱材2の裏面に平坦状保持シート5をモルタルなどの接着剤6により接合するもので、その際該平坦状保持シート5の上端すなわち側端部5aは、折返保持シート4の端部4aと重合して両者が重合部を透過した接着剤6により固定された一体構造をもって固着される。」(第2頁第右下欄第2?9行)
(ロ)図面の第4図には、断熱材2の表面に接着される平坦状保持シ-ト5の側端部5aの裏面側に、折返保持シ-ト4の端部4aの表面側を重ね合わせるように接着剤6により固定させた一体構造が示されている。

(3)甲第4号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2002-254537号公報)には、「強化繊維シート及びその製造方法」の発明に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【0033】又、他の実施例によれば、図2(C)に示すように、先の実施例と同様に、第1の支持体シート3Aは強化繊維層長手方向両端縁部より突出した突出端縁部3aを有し、又、第2の支持体シート3Bもまた第1の支持体シート3Aと同様に強化繊維層2の両端縁部より突出した突出端縁部3bを有している。従って、第1の支持体シート3Aの突出端縁部3aが、第2の支持体シート3B側へと折り返されると、同時に第2の支持体シート3Bの突出端縁部3bも折り返され、第1の支持体シート3Aの突出端縁部3aと共に強化繊維層2の上側面2bに重ねられる。」(第3頁第1欄第68行?第2欄第10行)
(ロ)「【0044】本実施例では、繊維強化層2は、強化繊維fとして平均径7μm、収束本数12000本のPAN系炭素繊維ストランドを用い、繊維目付300g/m2にて配列した。メッシュ状支持体シート3(3A、3B)は、縦糸6及び横糸7としてガラス繊維(番手300d、打ち込み本数1本/10mm)を用いた2軸メッシュ状体であった。2軸メッシュ状体の糸条の間隔(w1、w2)は、10mmとした。」

(4)甲第5号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証(特表平8-506868号公報)には、「シロアリの抑制に関する改良」の発明に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「シロアリ・バリア材料のこのような用途の1例を、第2図に示す。図において、基礎32に支持され、壁33を支持している、フロア・スラブ31として示されている既存の構造30が、追加フロア・スラブ35によって延長される。第2図において、基礎32は説明の便宜上、スラブ31および35よりも下方に変位した状態で示されているが、基礎の載せられるスラブの周辺が周知の態様のものであることを理解されたい。」(第8頁第16?21行)
(ロ)「屈曲部40は2つのスラブ31および35の間の制限された動きのために設けられたものであり、バリア条片を破損させるほどの過剰な応力がその条片にかからないようにしている。薄いプラスチックまたは摩擦の少ない材料のシートを重ね折曲げ部40上において、スラブと重ね折曲げ部の間でのバリア条片の運動を助け、このような運動が行われるときに、条片を保護するようにする。」(第9頁第5?9行)
(ハ)図面の第2図には、シートをS字状に重ね折曲げた態様の「重ね折曲げ部40」が示されている。

(5)甲第6号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証(実開昭62-14036号公報)には、「壁構造」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「建物、構築物の横胴縁上に複数枚の雄、雌型連結構造のサイデイング材を縦張り連結して壁を構成する壁構造において、上記サイデイング材の目地部裏面と胴縁間に該目地部の幅より広く、長尺状で、かつ、サンドイツチ構造の目地材を垂直に固定してなり、また目地材は硬質の合成樹脂発泡体を金属箔にシート状物をラミネートした面材で一体にサンドイツチ構造に形成したことを特徴とする壁構造。」(【実用新案登録請求の範囲】)
(ロ)図面の第1図及び第3図には、サイデイング材の連結構造部分がU字状に折曲げられた形態を備えた点が示されている。

(6)甲第7号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証(実公昭53-18975号公報)には、「構造物用パネル」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「3aは発泡性合成樹脂基板1の一側面に形成した凸状部で、その表面を覆う金属板3を延長して形成してあり、対向する他側面にはこれと嵌合する凹状部3bが同じく金属板により形成されている。」(第1頁第2欄第34行?第2頁第3欄第1行)
(ロ)図面の第1図?第3図には、金属板3の連結構造部分がU字状に折曲げられた形態を備えた点が示されている。

(7)甲第8号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第8号証(特開平6-305017号公報)には、「熱可塑性樹脂フイルムの製造方法」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱可塑性樹脂フイルムの製造方法に関し、更に詳しくは複数の熱可塑性樹脂フイルムを重ね合せて少なくとも横方向に延伸し、しかる後にそれぞれの延伸フイルムに分離して複数の延伸フイルムを同時に製造する方法に関する。」
(ロ)「【0024】実施例1、2及び比較例1、2での粘着の判定は、横延伸後2枚のフイルムを分離する際、全く抵抗が無く、重ね面に傷、粘着跡等が無く、重ね面の表面顕微鏡写真観察においても突起部の損傷、削れ等がない状態を横延伸後の粘着無しとした。また、2枚のフイルムが局部的、全体的に密着して、剥離しようとしてもフイルムが薄いため破れてしまったり、剥離した際表面に粘着跡が残っている状態を粘着有りとした。
【0025】以上の結果から、フイルムの端部を長手方向に連続的に折り重ね、折った端部がある側に別のフイルムを重ね合せて横延伸することで、横延伸時のフイルム粘着が防止できることがわかる。」
(ハ)フイルムエッジの折り重ね方、他のフイルムとの重ね合せ方法を示した図である図2には、フイルムの端部を長手方向にU字状ないしS字状に連続的に折り重ねて、当該折った端部がある側の上面に、別のフイルムの裏面を上方から重ね合せた態様が示されている。

(8)甲第9号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第9号証(特開平7-163621号公報)には、「創傷用包帯固定器具」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【0031】固定器具120を使用するに際しては、ベース部材122および126を創傷134の反対側にて皮膚52上に位置させる。ベース部材122および126は、該ベース部材122および126の粘着性付着面136および138(図18)から剥離紙(示していない)を剥がした後、創傷134から前以て決定した距離で皮膚52に固定する。ついで、創傷134に適用しておいた創傷用包帯140を覆ってコンビネーション部材126の抑えシート128を広げる。抑えシート128をベース部材122上のシート保持部材30に留め、その下に創傷用包帯140を創傷134上で保持させる。」
(ロ)図面の図18には、創傷用包帯140をの右側端部を中央の上面に折り重ね、さらに、その上に左側端部を折り重ねるようにした形態が示されている。

(9)甲第10号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第10号証(実開平6-36928号公報)には、「ドアのフレーム構造」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【0003】 図3は図1のB-B断面に相当する従来のオープニングシール構造を示すもので、第1のドア20のフレーム24の窓部に対してガラス26が樹脂モールディング28を介して固着される。第2のドア40のフレーム44の窓部に対して、ガラス48が樹脂モールディング50を介して固着される。
第1のドア20のフレーム24と、第2のドア40のフレーム44との接合部には、ドアの開閉に必要なオープニングとなるギャップGを覆うオープニングシールが配設される。
従来のオープニングシールは、軟質材料で作られた第1のウエザストリップ60を備え、両面接着テープ62より第2のドア40のフレーム44の内面側に接着されていた。第1のウエザストリップ60の先端のリップ部61は、第1のドア20のフレーム24の内面側に圧接され、オープニングシールを構成していた。また、第2のドア40のフレーム44にエクステンションパネル46を設け、このエクステンションパネル46に第2のウエザストリップ70を設けてシール性と外観の向上を図っていた。」

(10)甲第11号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第11号証(特開平8-118499号公報)には、「発泡樹脂シートを用いた液体容器」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【0030】そして同図(a)に示すように、該発泡樹脂シート10の一方の接続辺11をバリア層20を設けない面側に折り返し、支持台85の上に載置した他方の接続辺13のバリア層20の上に、該折り返して2重となった接続辺11のバリア層20を重ね合わせて3重とする。」
(ロ)図面の図1及び図3には、一方の発泡樹脂シート10のU字状に折り畳んだ端部に重ねるように、他方の発泡樹脂シート10の一端側を重ね合わせて3重とした態様が示されている。

(11)甲第12号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第12号証(実開昭63-115024号公報)には、「被服類の縁取り構造」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【実用新案登録請求の範囲】
被服類の縁部に3重又は4重に折曲げたラツパ状テープ生地を縫着して構成してなる被服類の縁取り構造。」

(12)甲第13号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第13号証(特開平8-135130号公報)には、「建築用化粧ボードおよびそれを用いた内装仕上げ方法」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【0012】図1および図2は本発明の一実施例である建築用化粧ボードを示す図であり、この化粧ボード1は相互に平行となった長辺2a,2bとこれらに対して直角となり相互に平行となった短辺2c,2dとを有する四辺形の石膏ボード製の板材からなるボード基板3を有している。このボード基板3の表面にはビニール樹脂製の化粧クロス4が化粧シートとして予め接着剤5により接着されている。なお、図1は表面に化粧クロス4が接着されたボード基板3の背面を示している。
【0013】この化粧クロス4は、図2に示すように、ボード基板3よりも大きいサイズを有し、その四辺はボード基板3の側面よりも外方にせり出している。この化粧クロス4の外周部は、ボード基板3の側面よりもせり出したせり出し部分6と、ボード基板3の側面よりも内側に所定の寸法Lだけずれた位置にまでボード基板3の外周部に相当する内側部分7とが後付け用縁部8となっており、この後付け用縁部8はボード基板3には接着されていない。」
(ロ)「【0018】次いで、図3(C)に示すように、相互に隣接する2枚のボード基板3a,3bの他方のボード基板3bに接着された化粧クロス4bの後付け用縁部8bを一方のボード基板3aの表面に接着剤13を用いて接着する。そして、同図に示すように、切断線14の部分で図示しないカッターを用いて切り込む。ただし、この切断線14の位置は、図3(C)に示すように、目地の部分に限られず、一方の化粧ボード1aまたは1bの縁部としても良い。
…(中略)…
【0020】ただし、化粧クロス4bの内側に位置する切断された縁部14bを前述のように取り除くことなく、化粧クロス4bの内側に残したままとするようにしても良い。」

(13)甲第14号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第14号証(特開2002-47776号公報)には、「建築用壁材ボード及びその施工方法」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明による建築用壁材ボードにおいては、ボード基板と、壁紙とを有する建築用壁材ボードであって、ボード基板は、2枚以上を並べて建物の壁面に釘打ちされる方形の板材であり、板面に壁紙貼着領域と、露出領域とを有し、壁紙貼着領域は、板面の中央部分であり、予め壁紙が貼り付けられ、露出領域は、釘打ちなどのために板面の縁から一定の幅で板面を露出させた部分であり、壁紙は、ボード基板の壁紙貼着領域に貼り付けられ、張出部とせり出し部とを有し、張出部は、壁紙貼着領域からボード基板の露出領域上の一部に張り出させた部分であり、せり出し部は、壁紙貼着領域から露出領域を越えてボード基板より外方にせり出させた部分であり、張出部と、せり出し部との裏面には、再湿糊が塗布されているものである。」
(ロ)「【0020】以下の説明においては、説明を簡単にするため、図1に示すボード基板に適用した例を説明する。壁紙2は、ビニル壁紙、紙壁紙、不織布壁紙、織物壁紙などが用いられ、ボード基板1の壁紙貼着領域4に貼り付けられる部分のほかに、張出部6とせり出し部7とを有している。張出部6は、ボード基板1の露出領域5上の一部に張り出させた一方の端の部分であり、せり出し部7は、露出領域5を越えてボード基板1より外方にせり出させた部分である。」
(ハ)「【0028】もっとも、パテ埋め処理は、必要に応じて行われる処理であって、必ずしも行なわなければならない処理ではない。なお、仮付け処理において、一方のボード基板1の壁紙2のせり出し部7を他方のボード基板1’の張出部6’上に重ね合わせるに際しては、壁紙2のせり出し部7及び壁紙2’の張出部6’の再湿糊Gの塗布面に給水して再湿糊Gを活性化し、これをボード基板1,1’の露出領域5、5’に仮に接着させることによって行なう。」

(14)甲第15号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第15号証(特開2004-162298号公報)には、「壁パネルの接合部における防水構造」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【0027】このような防水シート12としては、例えば水を透過しないが水蒸気を透過するミクロボアを有するシートであるタイベック(商品名:デュポン社製)等の防水透湿シートが用いられている。」
(ロ)「【0046】このとき、両面防水テープ21を含む両防水シート12の側端部は、両外装材14により形成される目地から外側に引き出しておく(図1(a)参照)。」
(ハ)「【0062】すなわち、防水シート72は、その側端部が壁パネル11の側端部から例えば45mm延出するようにして、壁パネル11に取り付けられている(図2(a)参照)。また、胴縁73は、その端部が壁パネル11の側端部から例えば15mm引っ込むようにして、壁パネル11に取り付けられている(図2(a)参照)。」
(ニ)「【0063】(2)外装材付き壁パネル51と胴縁付き壁パネル52との接合部におけるにおける防水構造
外装材付き壁パネル51と胴縁付き壁パネル52との接合部における防水構造としては、図2に示すように、両防水シート12,72の裏面どうしが両面防水テープ21により互いに接着され折り返されて折り返し部22とされ、この折り返し部22が外装材64の側端部と壁パネル11との間に挟み付けられているものとして構成されている。」
(ホ)「【0070】すなわち、このような壁パネルの接合部における防水構造においても、実施の形態1と同様、両防水シート12,72の側端部の裏面どうしを両面防水テープ21にて接着し折り返した折り返し部22が所定の隙間に挟み付けられることとなり、あらかじめ外装材64を取り付けている外装材付き壁パネル51とあらかじめ外装材74を取り付けていない胴縁付き壁パネル52との接合部においても、適切かつ十分な防水施工ができることとなっている。」

(15)甲第16号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第16号証(米国特許第5979131号明細書)には、躯体にシールの層14を設け、このシールの層14に断熱ボード16、メッシュ22及び表面コート層の仕上げ膜を順次形成することが記載されている(注;審判請求書第13頁の記載を援用した)。

(16)甲第17号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第17号証(特開2003-119997号公報)には、「タイル張り外断熱工法及び構造」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【請求項1】 建物の躯体の外面に断熱材を張り付けた後、該断熱材の外面に下地層を形成し、この下地層の上に防水性及び透湿性を有した接着剤を介してタイルを張り付けることを特徴とするタイル張り外断熱工法。」(【特許請求の範囲】)
(ロ)「【0011】なお、断熱材の外面に第1層目のモルタルを塗布し、この第1層目のモルタルの上にネットを配置し、該ネットを覆うように短繊維混入モルタルを塗着して第2層目のモルタルを形成し、第2層目のモルタルの硬化後にアンカー金具を躯体に打ち込んで該ネット及び前記断熱材を固定し、その後、前記接着剤を介してタイルを張り付けることにより、タイルをしっかりと張付けることができる。また、第1層目及び第2層目のモルタルとして短繊維入り樹脂モルタルを用いることにより、アンカー効果によってネットの張付強度を高めることができる。」

(17)甲第18号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第18号証(特開2003-13513号公報)には、「外断熱部材の製造方法及び外断熱PCコンクリート板の製造方法」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【請求項1】 平板状の断熱材の一側の面上にグラスフアイバーメッシュをモルタル接着剤を塗布することにより敷設し、乾燥した後、該グラスフアイバーメッシュが敷設された面に仕上げ材を塗布して得られることを特徴とする外断熱部材の製造方法。」(【特許請求の範囲】)

(18)甲第19号証の記載事項
甲第19号証のカタログには、その第4頁に、接着剤、断熱材、ベースコート、補強メッシュ、トップコートの順で積層された外断熱構造が示されているとともに、また、第6?7頁に、無機質接着モルタルの塗布作業、補強メッシュの施工作業、ベースコートの塗布作業を、それぞれ示す写真が掲載されている。

(19)甲第20号証の記載事項
甲第20号証のカタログには、その第1?2頁に、断熱材、ベースコート、スタンダードメッシュ、フィニッシュコートの順で積層された外断熱構造が示されているとともに、また、第10頁に、このような外断熱構造に関する施工手順1?9が示されている。

(20)甲第21号証の記載事項
甲第21号証のカタログには、その第2頁に、適応下地、ドレージシステム、透湿EPS、ファイバーメッシュ、、ベースコート、フィニッシュコートの順で積層された外断熱構造が示されている。

(21)甲第22号証の記載事項
甲第22号証のカタログには、外断熱構造に関する施工手順1?4が示されている。

(22)甲第23号証の記載事項
甲第23号証の平成15年12月1日付けの「フレックスパネルに於ける販売契約書」には、次の記載がある。
(イ)「第11条 本契約の商品(フレックスパネル)は甲が開発し、特許を出願しているものである。(P20302070)特許番号030893
乙は取引の過程に於いて知り得た本商品の技術的及びそれに付帯する情報を漏洩させてはならない。また、甲以外の会社及び工場等に本契約の商品(製品)を生産させてはならない。」

(23)甲第24号証の記載事項
本件特許の出願日前に出願された先願特許である甲第24号証(特許第3622090号公報)には、「外断熱壁材、又は床材等の建築下地材の製造方法と、この方法で製造される外断熱壁材、又は床材等の建築下地材、並びに外壁の構築工法、又は屋外床面の構築工法」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(イ)「【請求項5】
発泡プラスチック、軽量ボード等の断熱ボードと、この断熱ボードに設けた薄地のモルタル層と、この薄地のモルタル層に設けたメッシュとでなる建築下地材において、
このメッシュの周辺部は、この断熱ボードの周辺部より内側に位置し、この両周辺部間に前記薄地のモルタル層を露出して設け、このメッシュと薄地のモルタル層により当該建築下地材の表面を形成した構成であって、
この構成の建築下地材を、建屋の壁面に隣接して設け、この際、当該隣接した建築下地材の目地に、目地用メッシュを設け、少なくとも前記露出した薄地のモルタル層を隠蔽し、前記建屋の全体をメッシュで隠蔽し、
この隠蔽した建屋のメッシュの上に、上塗り塗装して、当該建屋の外壁を構築する構成とした外壁の構築工法。」(【特許請求の範囲】)
(ロ)「【0002】
【従来の技術】
従来、この種の外断熱壁材としては、特開平7-331761号の断熱成形板及びその施工法がある(文献(1)とする)。その内容は、断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した板状成形物で、断熱材の側端面より粗布がはみ出している断熱成形板と、この断熱成形板を施工する際に、板状成形物を、下地面に接着剤により貼付けるとともに、その目地部に、はみ出し粗布部分を配置して接着剤により貼付け、このはみ出し粗布部分に、必要に応じて化粧仕上材を塗布する施工法である。この発明は、施工が容易で、施工後の接合目地部の強度が優れていることを特徴とする。また実用新案登録第3013305号の施工用発泡樹脂ボードがある(文献(2)とする)。この考案は、発泡樹脂からなる施工用ボードと、ラスとで構成し、このラスが発泡樹脂の表面に一体的に融着された構造である。この考案は、ラスの耐剥離効果が確保できること、また施工用ボード自体の強度の向上が図れること、又は発泡樹脂の断熱・防水等の特性により、別途断熱材、防水シート等の付設をなくし得ることで、作業効率の向上等が図れること等の特徴がある。
また従来施工されている、断熱外壁工法は、通常、外壁面に防水シートを張装し、発泡ボードを接着又はビス止め等を介して取付け、その後、メッシュを同様な方法で貼付ける。そして、施工壁地(発泡ボードとメッシュの表面)及び目地部にモルタルを塗布した後に、目地部にメッシュを同様にして取付ける。そして、余分のモルタルを除去して、略1日程度養生する。この養生後に上塗り材を塗布する工法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記文献(1)は、断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した板状成形物で、断熱材の側端面より粗布がはみ出している構成である。しかし、このはみ出している粗布は、板状成形物を製造する際に邪魔となり、成形に難渋すること、また施工に際しては、板状成形物からの粗布の剥離に技術と、手間を要すること、等の課題が考えられる。そして、このはみ出し粗布が四周辺方向では、前述の課題はことのほか大変である。また文献(2)は、発泡樹脂とラス及びモルタル外壁材との組合せの施工用発泡樹脂ボードである。しかし、この考案は、モルタル層を有する構造である。従って、本発明が意図する軽量で、施工の容易な建築下地材とは、内容的に異なる。また本発明が意図する特徴は達成できない問題点がある。
【0004】
尚、前述した従来の断熱外壁工法は、何れも左官職人等の職人による施工であり、左官職人の手当ての困難性、コストの上昇、施工期間の拡大、又は手間を要すること、等の課題を抱えている。そして問題となるのが、目地部のラスの取付け(張装)、モルタルの塗布等である。この作業が大変であること、熟練を要すること、等の課題があり、早急な解決が望まれているとともに、市場性の拡充に障害となっていることが判明した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、左官職人による施工を要さず、素人でも施工できる建築下地材の製造方法の提供と、殊に目地部の施工が簡便で、手間、熟練と時間を要せず行える建築下地材の製造方法の提供とを意図する。また(建屋)の目地部からの亀裂、雨水の浸入、断熱効果の拡充が図れる建築下地材を、確実、精度よく製造すること、又は簡便に製造すること、等を意図して建築下地材の製造方法を提供する。さらに衝撃に役立つ物を提供する。またベランダ、ルーフバルコニー等の屋外床の下地材として役立つ建築下地材を提供する。」

6.当審の判断
6-1 無効理由(1)について(特許法第29条第2項の規定違反)
(1)対比
そこで、本件発明1と甲2発明とを対比すると、その機能ないし構造から見て、甲2発明における「断熱材」は本件発明1における「断熱材」に、甲2発明における「粗布」は本件発明1における「メッシュ材」に、甲2発明における「はみ出し粗布部分」は本件発明1における「延出部」に、甲2発明における「板状成形物」ないし「断熱成形板」は本件発明1における「建築用部材」に、甲2発明における「(表面材4と同一ないしは類似の成分を有している)接着剤」は本件発明1における「樹脂及びセメントの混合物」に、甲2発明における「断熱成形板の施工法」は本件発明1における「外断熱工法」に、それぞれ相当するといえる。
また、甲2発明における「断熱成形板1を(建造物の壁面、天井、床面等の施工面である)下地面5にその裏面を押し貼り接着」する点は、本件発明1における「建築用部材を、下地用構造用合板の表面に複数枚敷き詰める工程」と「敷き詰められた前記建築用部材を、前記下地用構造用合板に対して固定する工程」に相当するといえる。
さらに、甲2発明における「(予め、工場などで最適の条件で)断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した板状成形物であって、断熱材や表面材の側端面より粗布がはみ出している断熱成形板」と、本件発明1における「パネル状の断熱材、及び該断熱材の表面に貼着され前記断熱材の表面積よりも大きく形成されるとともに前記断熱材の縁部から延出された延出部を有し、柔軟性のある折畳み可能な材質より形成されるメッシュ材が備えられた建築用部材」とは、共に「パネル状の断熱材、及び該断熱材の表面に貼着され前記断熱材の表面積よりも大きく形成されるとともに前記断熱材の縁部から延出された延出部を有し、柔軟性のある折畳み可能な材質より形成されるメッシュ材が備えられた建築用部材」点で一応共通するといえる。
同様に、甲2発明における「はみ出し粗布部分を断熱板の接合面に(目地部で重ね合わせるように)配置」する点と、本件発明1における「固定された前記建築用部材のうち隣接する建築用部材の前記延出部同士を重ね合わせ、前記隣接する建築用部材のいずれか一方の表面にメッシュ材を3重構造となるように折畳む工程」とは、共に「固定された前記建築用部材のうち隣接する建築用部材の前記延出部同士を重ね合わせる工程」である点で共通するといえる。
また同様に、甲2発明における「はみ出し粗布部分」を断熱板の接合面に配置して「(表面材4と同一ないしは類似の成分を有している)接着剤により貼付ける」点と、本件発明1における「折畳まれた前記メッシュ材及び前記建築用部材の表面に、樹脂及びセメントの混合物を平坦に塗布する工程」とは、共に「前記メッシュ材の(延出部の)表面に、樹脂及びセメントの混合物を平坦に塗布する工程」点で共通するといえる。

そうすると、両者は、
「パネル状の断熱材、及び該断熱材の表面に貼着され前記断熱材の表面積よりも大きく形成されるとともに前記断熱材の縁部から延出された延出部を有し、柔軟性のある折畳み可能な材質より形成されるメッシュ材が備えられた建築用部材を、下地用構造物の表面に複数枚敷き詰める工程と、
敷き詰められた前記建築用部材を、前記下地用構造物に対して固定する工程と、
固定された前記建築用部材のうち隣接する建築用部材の前記延出部同士を重ね合わせる工程と、
前記メッシュ材の(延出部の)表面に、樹脂及びセメントの混合物を平坦に塗布する工程と
を備える外断熱工法。」である点で一致し、次の点で相違するということができる。

(相違点1)建築用部材を複数敷き詰める下地用構造物に関して、本件発明が「下地用構造用合板」であるのに対して、甲2発明が、「(建造物の壁面、天井、床面等の施工面である)下地面」である点。

(相違点2)建築用部材を用いた外断熱工法の手順に関して、本件発明が「メッシュ材が備えられた建築用部材」を敷き詰める工程を経た後に、「折畳まれた前記メッシュ材及び前記建築用部材の表面に」樹脂及びセメントの混合物を平坦に塗布する工程を採用しているのに対して、甲2発明が、メッシュ材に加えて「表面材」(樹脂及びセメントの混合物)を予め備えた建築用部材を敷き詰める工程を経た後に、メッシュ材の延出部を「断熱板の接合面に」表面材と同じ成分の接着剤により貼付けるという工程を用いている点。

(相違点3)延出部同士の重ね合わせ態様に関して、本件発明が「隣接する建築用部材の前記延出部同士を重ね合わせ、前記隣接する建築用部材のいずれか一方の表面にメッシュ材を3重構造となるように折畳む」という重ね合わせ態様を採用しているのに対して、甲2発明が、「断熱板の接合面に(目地部で重ね合わせるように)配置」するという重ね合わせ態様を採用している点。

(2)相違点の検討
そこで、上記の相違点1?3について検討する。

(相違点1について)
建造物の壁面や天井、床面等に構造用合板を設けることは、建築技術分野において、例を示すまでもなく、従来より普通に採用されている技術である。
してみると、甲2発明における「下地面」(下地用構造物)として、上記周知の構造用合板が設けられた建造物の壁面等を選択することは、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。

(相違点2について)
ところで、本件発明は、「断熱材」に「延出部を有するメッシュ材」を備えた「建築用部材」を予め用意した後に、これを下地面に固定し、その後、延出部を3重構造に折り畳み、折り畳みメッシュ材の表面に樹脂セメント混合物を平坦に塗布するという工程を用いるものである。
すなわち、本件発明は、メッシュ材と断熱材とを予め備えた「建築用部材」を下地用構造物に敷き詰めるに際して、メッシュ材の表面に樹脂セメント混合物を平坦に塗布するという工程を、施工の全行程を通じて一つの工程で行うものであって、これを施工の最終工程部分で行うこととしたものということができる。
(ちなみに、本件特許明細書の段落【0005】には、【発明が解決しようとする課題】につき「従って、工場にて断熱材101の表面にセメント層102を塗布する作業に加えて、施工現場でもジョイント処理のためにセメント層102を塗布する作業が行われ、全体としての作業効率を著しく下げる結果を招いていた。」との記載が、また、段落【0024】には、「このように、本実施の形態によると、従来の工法、すなわち建築用部材3の継ぎ目部に継ぎ足し用のメッシュ材を使用し、これをセメント層で塗り込むというジョイント処理を行う必要がなく、工場で建築用部材3を作製してから現場で外壁1が形成されるまでの、全体としての作業工程を短縮し、より効率的な施工が可能となる。」との記載がある。)

他方、甲第2号証の「【発明が解決しようとする課題】」を記載した段落【0003】?【0005】を参酌すると、従来技術に「下地面への断熱材の接着工程、断熱材への粗布などの補強材の接着工程、及び補強材を介して表面材を断熱材への塗装仕上げ施工するなどの多くの作業工程があり、かつ、各作業工程は接着剤の調合、塗布、硬化の作業と養生期間を要した。」という点や「また、上記の各工程は施工現場で行われるので、気温や天候などの変化により、作業時間、施工期間、断熱効果、仕上り外観などに変化があり、工程や性能の標準化にも問題があった。」という点につき解決すべき課題があったところ、甲2発明は、このような従来技術における課題を解決するために、段落【0019】?【0020】に記載されているように「本発明の断熱成形板は、予め、工場などで最適の条件で断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した断熱成形板であるので品質が良い。」及び「下地面への施工現場では、断熱成形板の接合部となる目地部分で、はみ出し粗布部分を重ねて接着剤または前記の表面材で接着施工するので、繊維と複合化されて、断熱成形板と同等の強度と寸法変化率に施工することができる。」という効果を奏することを期待したものといえる。
すなわち、甲2発明は、上記「予め、工場などで最適の条件で断熱材と粗布と表面材とを積層一体化した断熱成形板」を用いることを前提としつつ、「下地面への施工現場では、断熱成形板の接合部となる目地部分で、はみ出し粗布部分を重ねて接着剤または前記の表面材で接着施工する」という手順を採用したものであって、これを言い換えれば、予め、工場などで製造される断熱成形板に、粗布のみならず「表面材」をも予め積層一体化した構成を採用することとし、その後の施工現場では、断熱成形板の接合部となる目地部分に表面材を接着施工するという表面材の塗布につき二段階の施工手順をその課題解決のための必須手順としたものであるということができる。

そして、審判請求人が提出した証拠を見ても、メッシュ材と断熱材とを予め備えた「建築用部材」を用意し、これを現場で敷き詰めて施工する場合に、そのメッシュ材の表面に樹脂セメント混合物を平坦に塗布するという工程を、当該施工の全行程の内の最終工程部分とすることが、従来より当業者において周知ないし公知の技術であったということを示す証拠を見出すことができない。
(ちなみに、甲第3号証、甲第16?18号証や甲第19?21号証のカタログには、外断熱構造に関する施工手順の最終工程部分においてメッシュ材の表面に樹脂セメント混合物等を平坦に塗布するという工程を行うことが示されているものの、これらの外断熱構造に関する施工手順は、いずれもメッシュ材と断熱材とを予め備えた建築用部材を用意して行うものではない。)

以上のことから、相違点2に係る本件発明1の施工手順は、審判請求人が提出した証拠らによっては、当業者が容易に想到し得たものということができない。

(相違点3について)
審判請求人が提出した証拠を見ても、外断熱構造の施工手順におけるメッシュ材の表面に樹脂セメント混合物等を平坦に塗布する工程の前に、相互に隣接するメッシュ材の重なり合う部分同士を重ね合わせてから、いずれか一方の側の表面に(メッシュ材を)3重構造となるように折畳むようにするという重ね合わせ態様を採用することが、従来より当業者において周知ないし公知の技術であったということを示す証拠を見出すことができない。
(ちなみに、甲第3号証には、断熱材2の表面に接着される平坦状保持シ-ト5の側端部5aの裏面側に、折返保持シ-ト4の端部4aの表面側を重ね合わせるように接着剤6により固定させた重ね合わせ態様が示されているに止まるし、また、甲第4?14号証には、各種シート状の部材の重ね合わせを3重構造等とした折畳み態様が示されているものの、いずれも相互に隣接するシート状の部材の重なり合う部分同士を重ね合わせてから、いずれか一方の側の表面に3重構造となるように折畳むという重ね合わせ態様を採用したものではない。さらに、甲第15号証には、壁パネルの接合部における防水シートに関して、「両防水シート12,72の側端部の裏面どうしを両面防水テープ21にて接着し折り返した折り返し部22」を形成することは記載されているものの、当該折り返し部22は接合部の隙間に挟み付けられることにより、当該接合部においても適切かつ十分な防水施工ができることとしたものであって、当該折り返し部22をいずれか一方の防水シートの表面に3重構造となるように折畳むものではない。)

そして、本件発明は、この相違点3に係る構成であるところの「隣接する建築用部材の前記延出部同士を重ね合わせ、前記隣接する建築用部材のいずれか一方の表面にメッシュ材を3重構造となるように折畳む」という工程を採用することによっても、相互に隣接する建築用部材の表面に設けられた(柔軟な特性を備えた)メッシュ材の接合箇所において、例えば、後記した公知例におけるような一方のメッシュ材を持ち上げてその下方に他方の延出部を挿入して重ね合わせるという重ね合わせ作業を要するものと異なり、建物の壁面等、例えば、垂直な壁面を対象として行われる施工作業時に、柔軟な特性を備えたメッシュ材の接合箇所での重ね合わせ作業やその表面に表面材を平坦に塗布する作業をより簡潔なものとする効果が期待できるものということができる(乙第1号証の写真【2】?【5】参照)。)

以上のことから、甲2発明におけるメッシュ材の延出部同士を重ね合わせる態様を、相違点3に係る本件発明1の構成のものと変更することは、審判請求人が提出した証拠を検討して見ても、当業者が容易に想到し得たものということができない。

なお、審判請求人は、平成19年2月9日付け上申書において、甲第30号証の拒絶理由通知書に引用された「引用文献2(実開昭55-71243号公報)」を「公知例」として提示し、本件発明の施工手順が当業者により容易に想到できる旨を主張している。
しかしながら、上記公知例は、本件の審判請求書により提出された多数の証拠中に含まれていなかったものであることは勿論のこととして、口頭審理の時点に至った段階においても証拠として何ら提示されていなかったものである。そうすると、その審理が最終段階に至ったところの本件無効審判事件において、当該公知例を審判請求時に提示されていた無効理由とは異なる無効理由を構成するところの証拠として新たに採用することに被請求人が同意しないことも明らかであり、審判合議体が当該公知例を用いて職権による無効理由を改めて通知する等の手続きをすることも、口頭審理における(請求人の)上申書の提出を許容することとした経緯を考慮すれば信義則上からも許されないというべきである(審判請求人は、これを証拠として後日改めて無効審判を請求することも可能である)。
したがって、上記公知例はこれを改めて証拠として採用しない。

ところで、上記公知例を証拠とする新たな無効理由から成る無効審判の請求も今後に想定されることから、上記公知例に関して、以下のことを付言する。
要するに、公知例(実開昭55-71243号公報)には、「断熱材」と「延出部を有するメッシュ材」(凹凸が生じるように編まれた合成樹脂等から成るラス材)とを備えた「建築用部材」(断熱下地材)を用意し、これを下地面に固定し、当該延出部を他方のメッシュ材へ重ねた後に、メッシュ材の表面に樹脂セメント混合物(モルタルやプラスター)を平坦に塗布するという工程を用いた点が開示されているといえるものの、そのメッシュの延出部の処理工程については、当該延出部を他方のメッシュ材へ重ね合わせるという工程が開示されているに止まるものである。
すなわち、上記公知例の存在により上記「(相違点2について)」で「当業者が容易に想到し得たものということができない」とした点が、仮に容易に想到し得たものということができるといえても、当該公知例によっては、上記「(相違点3について)」で「当業者が容易に想到し得たものということができない」とした点であるところの本件発明の「隣接する建築用部材の前記延出部同士を重ね合わせ、前記隣接する建築用部材のいずれか一方の表面にメッシュ材を3重構造となるように折畳む工程」を採用した点までが、直ちに当業者により容易に想到し得たということができないことが明らかである。
そして、本件発明1の上記3重構造となるように折畳むという工程を採用した点を当業者が容易に想到し得たといえる証拠を見出すことができないことは上述したとおりであり、また、本件発明1は、このような工程を採用することによっても、相互に隣接する建築用部材の表面に設けられた(柔軟な特性を備えた)メッシュ材の接合箇所において、公知例におけるような一方のメッシュ材を持ち上げてその下方に他方の延出部を挿入して重ね合わせるという重ね合わせ作業を要するものと異なり、建物の壁面等、例えば、垂直な壁面を対象として行われる施工作業時に、柔軟な特性を備えたメッシュ材の接合箇所での重ね合わせ作業やその表面に表面材を平坦に塗布する作業をより簡潔なものとする効果が期待できるものということができることも上述したとおりである。

(3)まとめ
したがって、本件発明は、甲第2号証ないし甲第22号証の記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものということができない。

6-2 無効理由(2)について(冒認出願に相当するか否か)
審判請求人は、甲第24号証の先願特許に係る発明(請求項5に係る発明)の冒認出願に相当する行為があったといえるから、その特許は特許法第123条第1項第6号を類推適用して無効とすべきであると主張する。

そこで、最初に、本件発明が甲第24号証の先願特許の請求項5に係る発明(以下、「先願特許発明」という。)と同一の発明であるといえるか否かについて検討する。

(1)対比
先願特許発明は、先願特許明細書の特許請求の範囲の請求項5に記載された次のとおりのものである。
「発泡プラスチック、軽量ボード等の断熱ボードと、この断熱ボードに設けた薄地のモルタル層と、この薄地のモルタル層に設けたメッシュとでなる建築下地材において、
このメッシュの周辺部は、この断熱ボードの周辺部より内側に位置し、この両周辺部間に前記薄地のモルタル層を露出して設け、このメッシュと薄地のモルタル層により当該建築下地材の表面を形成した構成であって、
この構成の建築下地材を、建屋の壁面に隣接して設け、この際、当該隣接した建築下地材の目地に、目地用メッシュを設け、少なくとも前記露出した薄地のモルタル層を隠蔽し、前記建屋の全体をメッシュで隠蔽し、
この隠蔽した建屋のメッシュの上に、上塗り塗装して、当該建屋の外壁を構築する構成とした外壁の構築工法。」

そこで、本件発明と先願特許発明とを対比すると、その機能ないし構造から見て、先願特許発明の「断熱ボード」は本件発明1の「パネル状の断熱材」に、先願特許発明の「メッシュ」は本件発明1の「メッシュ材」に、先願特許発明の「建築下地材」は本件発明の「建築用部材」に、先願特許発明の「薄地のモルタル層」は本件発明の「樹脂及びセメントの混合物」に、それぞれ相当するといえる。
しかしながら、先願特許発明においては、「建築下地材」の「薄地のモルタル層に設けたメッシュ」は、「このメッシュの周辺部は、この断熱ボードの周辺部より内側に位置」するというものであるから、その隣接した建築下地材の目地に設けられるところの先願特許発明における「目地用メッシュ」に相当するものを、本件発明が備えていないことは明らかである。
すなわち、先願特許発明は、「このメッシュの周辺部は、この断熱ボードの周辺部より内側に位置し、この両周辺部間に前記薄地のモルタル層を露出して設け、このメッシュと薄地のモルタル層により当該建築下地材の表面を形成した」ものであり、「この構成の建築下地材を、建屋の壁面に隣接して設け、この際、当該隣接した建築下地材の目地に、目地用メッシュを設け、少なくとも前記露出した薄地のモルタル層を隠蔽し、前記建屋の全体をメッシュで隠蔽」するものである。
これに対して、本件発明は、その従来技術における「建築用部材100の継ぎ目に、継ぎ足し用メッシュ材104を継ぎ足し、この継ぎ足し部105にセメント層102を上塗りする処理(ジョイント処理)が必要となっていた」ことを解決するために、「該断熱材の表面に貼着され前記断熱材の表面積よりも大きく形成されるとともに前記断熱材の縁部から延出された延出部を有し、柔軟性のある折畳み可能な材質より形成されるメッシュ材が備えられた建築用部材」という構成を採用したものであるといえる。
そうすると、両者の発明は、その構成から見ても明らかに相違するものであって、その目的から見ても、相互に相容れるところの無い異質のものであることが明らかである。
(要するに、先願特許発明は、甲第24号証の段落【0003】の発明が解決しようとする課題の項の記載から見て、甲第2号証の従来技術の存在を前提として、「はみ出し部分」が板状成型物を製造する際に邪魔であるので、施工に際して、別途、目地用メッシュを設けることとして、板状成型物を製造する際にはこれを設けないようにしたことを発明の特徴点とするものであって、先願特許発明はその施工手順から見れば、「継ぎ足し用メッシュ」を使用するところの本件特許明細書に記載の従来技術と同様の手順を用いたものであるといえる。
他方、本件発明は、施工に際して、このような目地用メッシュを用いるものではなく、「断熱材」と「延出部を有するメッシュ材」とを備えた「建築用部材」を用意するという工程を採用したものである。)

したがって、他の構成要件につき検討するまでもなく、本件発明は、先願特許発明と同一の発明であるということができないことは明らかである。

(2)まとめ
上記(1)で検討したとおり、本件発明は、先願特許発明と同一の発明であるということができないのであるから、本件発明が先願特許発明の冒認出願であるから無効とすべきという請求人の主張も理由がないことは明らかである。

ちなみに、審判請求書の第37頁には、「本件は完全な形での冒認であるとはいい難い」との記載があるように、審判請求人は、冒認でないことを暗に認めていると解される。
そして、審判請求書の同上第37頁に記載された「123条第1項第6号を類推適用」すべき旨の主張に関して、甲第23号証の契約の違反があったという点についても、甲第23号証の契約書の第11条に規定された「本契約の商品(フレックスパネル)は甲が開発し、特許を出願しているものである。(P20302070)特許番号030893」が先願特許発明の特許出願を意味するとしても、上述したように、本件発明は先願特許発明と同一の発明であるということができないのであるから、被請求人に対して守秘義務違反があったということもできない。

6-3 無効理由(3)について(特許法第17条の2第3項の規定違反)
要するに、審判請求人は、本件特許明細書の段落【0015】の「また、継ぎ足し用のメッシュ材を用いることなく、断熱材の表面に貼着されたメッシュ材と延出部とは一体で形成されるため、剥がれ落ちる恐れがなく、」という記載事項は、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。甲第25号証参照)の段落【0024】に「また、断熱材6の表面に貼着されたメッシュ材7と延出部8とは一体で形成されるため、剥がれ落ちる恐れがなく、より強固に断熱材の継ぎ目を接合できる。」との記載があったものを、甲第1号証の補正書によって補正されたことにより追加されたものであり、上記記載事項は新規事項の追加に該当するものであるから、本件発明の特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反して特許されたものであると主張する。

ところで、本件特許明細書の段落【0015】には、「本発明の外断熱工法によれば、隣接する建築用部材の延出部同士を重ね合わせ、いずれか一方の表面に折畳む(折畳む工程)ことによって、建築用部材の継ぎ目部の表面において、メッシュ材が、断熱材の表面に貼着されたメッシュ材、折り畳まれた一方の延出部のメッシュ材、及び隣接する他方の延出部のメッシュ材の3重構造となる。また、継ぎ足し用のメッシュ材を用いることなく、断熱材の表面に貼着されたメッシュ材と延出部とは一体で形成されるため、剥がれ落ちる恐れがなく、より強固に断熱材の継ぎ目を接合できる。さらに、建築用部材の継ぎ目部に継ぎ足し用のメッシュ材を使用し、これを樹脂及びセメントの混合物で塗り込むというジョイント処理を行う必要がなく、工場で建築用部材を作製してから現場で外壁が形成されるまでの、全体としての作業工程を短縮し、より効率的な施工が可能となる。」との記載がある。
他方、当初明細書の段落【0024】には、「このように、本実施の形態によると、従来の工法、すなわち建築用部材の継ぎ目部に継ぎ足し用のメッシュ材を使用し、これをセメント層で塗り込むというジョイント処理を行う必要がなく、工場で建築用部材3を作製してから現場で外壁1が形成されるまでの、全体としての作業工程を短縮し、より効率的な施工が可能となる。また、ジョイント処理に係る作業内容を単純化し、より簡単に施工することができるため、さらに作業効率を向上させることができる。加えて、継ぎ足し用のメッシュ材を使用しないことにより、部材の管理を簡略化し、作業者の負担を軽減することが可能となる。また、断熱材6の表面に貼着されたメッシュ材7と延出部8とは一体で形成されるため、剥がれ落ちる恐れがなく、より強固に断熱材の継ぎ目を接合できる。さらに、可撓性のある断熱材6、柔軟性のある樹脂を混合させた混合物4、及び補強材であるメッシュ材7を組み合わせることにより、例えば湾曲した形状の外壁1に沿って折り曲げて使用することがあっても、塗装のひび割れや剥落を起こさず施工できる。」(注;下線は当審が付記した。)との記載があるとともに、
その段落【0009】には、「本発明の建築用部材によれば、断熱材の表面に貼着されたメッシュ材は、断熱材の表面積よりも大きく、断熱材の縁部から延出された延出部を備えることにより、継ぎ足し用のメッシュ材を用いることなく、隣接する断熱材同士を接合することができる。従って、建築物の外側に敷き詰められた建築用部材において、隣接する断熱材同士の継ぎ目に段差や隙間が生じることがあっても、隣接する建築用部材のメッシュ材から延出された延出部同士を重ね合わせ、この重ね合わされたメッシュ材をどちらか一方の建築用部材の表面に折り畳み、そして、敷き詰められた建築用部材の表面全体に、樹脂及びセメントの混合物と塗料とが塗布されることで、折り畳まれたメッシュ材が継ぎ目にて生じる段差や隙間を埋め合わせ、隣接する建築用部材同士を隙間無く接合することができる。」(注;下線は当審が付記した。)との記載がある。
そうすると、当初明細書の上記段落【0024】の「また、断熱材6の表面に貼着されたメッシュ材7と延出部8とは一体で形成されるため、剥がれ落ちる恐れがなく、より強固に断熱材の継ぎ目を接合できる。」の記載中における「断熱材6の表面に貼着されたメッシュ材7と延出部8」は、同上段落【0024】の「継ぎ足し用のメッシュ材を使用しない」「メッシュ材7と延出部8」であること、すなわち、上記段落【0009】の「断熱材の縁部から延出された延出部を備えることにより、継ぎ足し用のメッシュ材を用いることなく、隣接する断熱材同士を接合することができる」「断熱材の表面に貼着されたメッシュ材」であることが明らかである。
したがって、審判請求人が指摘するところの記載事項である本件特許明細書の段落【0015】における「また、継ぎ足し用のメッシュ材を用いることなく、断熱材の表面に貼着されたメッシュ材と延出部とは一体で形成されるため、剥がれ落ちる恐れがなく、」の点は、これと同趣旨の事項が当初明細書に記載されていたことが明らかであるから、当初明細書の記載事項から自明な事項であって、新規事項であるということはできない。

6-4 無効理由(4)について(特許法第29条第1項柱書きの規定違反)
審判請求人は、本件発明はメッシュ材の3重構造から仕上げ材を厚く塗布する必要があるために仕上げ材の使用塗り厚限度を超えるので、その結果、ひび割れが生じるものであり、実際上実施不可能である旨を主張する。

しかしながら、答弁書によれば、本件特許発明の外断熱工法は、多数の当業者によって実際に良好な施工が行われていること、並びに、被請求人が提出した乙第1号証の写真には、ひび割れを生じることがないような実施が可能であることが示されている。
そして、本件発明の属する技術分野の技術常識からすれば、本件発明の「柔軟性のある折畳み可能な材質より形成されるメッシュ材」は3重構造に折り畳まれた状態にあっても、その柔軟性の特性から見て、上記乙第1号証の写真【5】にも示されるように、その塗布工程における塗布膜の厚さが塗り厚限度を超えるものとなるとは理解できないし、かつまた、その塗布膜の厚さは当業者が必要に応じて適宜調整することにより、このような3重構造の折り畳み構造部分であってもひび割れを生じることがないように施工することは、施工する者の技術が所定のレベルに達していれば、普通に実施できることというべきである。
さらに、上述したように、実際の施工に際してこのようなひび割れを生じるか否かは、結局のところ施工する者の技術が所定のレベルに達しているか否かによっても左右されるものであるといえるところ、請求人が提出した証拠が示す塗布膜のひび割れ現象が、被請求人が主張するように施工する者の技術不足を原因とするものではないという証拠も何ら示されていない。

以上のことから、本件発明の特許が特許法第29条第1項柱書きの規定に違反するという請求人の主張は採用できない。

6-5 無効理由(5)について(特許法第39条第1項の規定違反)
本件発明が甲第24号証の請求項5に係る発明(先願特許発明)と同一の発明ではなく、両者が異なる発明であることは、上記「6-2 無効理由(2)について」の(1)で説示したとおりである。

したがって、本件発明が特許法第39条第1項の規定に違反して特許されたものであるから無効とすべきという請求人の主張は採用できない。

7.むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、審判請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-07 
結審通知日 2007-03-13 
審決日 2007-03-22 
出願番号 特願2004-189601(P2004-189601)
審決分類 P 1 113・ 1- Y (E04B)
P 1 113・ 55- Y (E04B)
P 1 113・ 4- Y (E04B)
P 1 113・ 152- Y (E04B)
P 1 113・ 121- Y (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
青山 敏
登録日 2005-08-19 
登録番号 特許第3710808号(P3710808)
発明の名称 外断熱工法  
代理人 大矢 正代  
代理人 大矢 広文  
代理人 竹中 一宣  
代理人 前田 勘次  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ