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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C23F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C23F |
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管理番号 | 1156828 |
審判番号 | 不服2005-8436 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-06 |
確定日 | 2007-05-09 |
事件の表示 | 特願2001-364871「防食用材料」拒絶査定不服審判事件〔平成15年6月13日出願公開、特開2003-166087〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本願は、平成13年11月29日の出願であって、平成16年12月1日付で拒絶理由通知がなされ、平成17年2月4日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成16年12月1日付拒絶理由通知書に記載した理由によって、平成17年4月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月6日付で手続補正書が提出されたものである。 [2]平成17年6月6日付手続補正についての補正却下の決定 <補正却下の決定の結論> 平成17年6月6日付手続補正を却下する。 <理由> [2-1]補正の内容 平成17年6月6日付手続補正は、特許請求の範囲を、 「【請求項1】パーライト、珪藻土、ポリビニルアルコール及びポリ酸化エチレンから成る群から選択される固体状有孔性材料とケイ酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩、安息香酸塩から成る群から選択される沈殿皮膜を形成できる腐食抑制剤と、金属亜鉛を含んで成ることを特徴とする防食用材料。 【請求項2】有孔性材料と、腐食抑制剤と、金属亜鉛のみから成る請求項1に記載の防食用材料。 【請求項3】パーライト、珪藻土、ポリビニルアルコール及びポリ酸化エチレンから成る群から選択される固体状有孔性材料とケイ酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩、安息香酸塩から成る群から選択される沈殿皮膜を形成できる腐食抑制剤と、金属亜鉛及び亜鉛塩を含んで成ることを特徴とする防食用材料。 【請求項4】有孔性材料と、腐食抑制剤と、金属亜鉛及び亜鉛塩のみから成る請求項3に記載の防食用材料。 【請求項5】亜鉛塩が、硫酸亜鉛、塩化亜鉛及び/又は硝酸亜鉛である請求項3又は4に記載の防食用材料。 【請求項6】パーライト、珪藻土、ポリビニルアルコール及びポリ酸化エチレンから成る群から選択される固体状有孔性材料と、ケイ酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩、安息香酸塩から成る群から選択される沈殿皮膜を形成できる腐食抑制剤と、金属亜鉛を含んで成ることを特徴とする防食用充填材料。 【請求項7】パーライト、珪藻土、ポリビニルアルコール及びポリ酸化エチレンから成る群から選択される固体状有孔性材料と、ケイ酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩、安息香酸塩から成る群から選択される沈殿皮膜を形成できる腐食抑制剤と、金属亜鉛を含んで成ることを特徴とする防食用土壌置換材。」とする補正を含むものである。 [2-2]補正の目的 上記手続補正は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正であるから、同条第4項各号に掲げる事項を目的とするものか否かについて、以下検討する。 まず、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮という目的に該当するか否かについてみるに、補正後の請求項6、請求項7は、夫々補正前の請求項6、請求項7に対応し、防食用充填材料、防食用土壌置換材の成分に腐食抑制剤を夫々付加して成分組成を減縮したものといえる。また、補正前の請求項1?5の防食用材料に対応して、補正後の特許請求の範囲には、請求項1?5の防食用材料が記載されている。しかしながら、補正後の請求項1?5の防食用材料は、いずれもケイ酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩、安息香酸塩から成る群から選択される沈殿皮膜を形成できる腐食抑制剤を必須成分として含有するのに対し、補正前の請求項1?5のうち、該腐食抑制剤を含み得るように記載されているのは、同請求項1、2のみであり、同請求項3?5には、そのように記載されていない。即ち、同請求項3?5では、防食用材料が固体状有孔性材料と金属亜鉛から成る、又は固体状有孔性材料と金属亜鉛及び亜鉛塩から成るものとされており、それ以外の成分は防食用材料から排除されている。これに対し、補正後の請求項1?5では、いずれも上述したとおり上記腐食抑制剤を必須成分として含有するのであるから、補正後の請求項1?5に記載された防食用材料は、いずれも補正前の請求項3?5に記載された防食用材料の成分組成の範囲から逸脱しており、同請求項3?5に記載された防食用材料を減縮したものとはいえない。 以上のとおり、補正後の請求項1?5に記載された防食用材料はいずれも、補正前の請求項3?5に記載された防食用材料を減縮したものとはいえず、補正前の請求項3?5に対応する請求項は、補正後の請求項1?5に存在しない。 そうすると、補正前の請求項3?5は当該補正により削除されたとも解し得るが、その場合には、補正後の請求項3?5が新たに付加されたか、補正前の請求項1、2が補正後の請求項1?5に分けられたことになるので、当該補正は、補正前の請求項の項数を増加する補正を含むものとなり、補正前の請求項を減縮したことにはならない。 したがって、当該補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮には該当しない。 次に、その他の目的要件についてみるに、上記の補正前の請求項3?5に記載された防食用材料の範囲を逸脱する補正、又は上記の補正前の請求項1、2の項数を増加する補正は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正に該当しないことは明らかであり、また、同項第4号に掲げる、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない。 [2-3]むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反しているので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [3]本願発明 平成17年6月6日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?7に係る発明は、平成17年2月4日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】パーライト、珪藻土、ポリビニルアルコール及びポリ酸化エチレンから成る群から選択される固体状有孔性材料と固体状腐食抑制剤を含んで成ることを特徴とする防食用材料。」 [4]引用刊行物の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-106966号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】OH価5?150、ガラス転移温度-10?50℃である軟質アクリルポリオールと、体質顔料、比重が0.03?0.9の中空顔料、防錆顔料及び溶剤とを含んでなる第1液と、ポリイソシアネート系硬化剤を含有してなる第2液とからなることを特徴とする、防食組成物。」(【特許請求の範囲】、【請求項1】)、 (1b)【発明の実施の形態】として、「【0017】中空顔料としては、中空ガラス質球状粉体、火山灰系中空顔料、パーライト、シラスバルンなどを広く用いることができる。・・・使用する中空顔料は、施工時の衝撃で破壊されない程度の機械的強度を有することが肝要である。」(段落【0017】)、 「【0019】防錆顔料としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸亜鉛などが好ましく用いられ得る。」(段落【0019】)、 (1c)本発明の防食組成物の効果について、「【0028】・・・ (a)硬化後においても長期にわたりゴム弾性を維持し、柔軟性に優れているので、特に耐衝撃性に優れている。 (b)被防食部に対する密着性に優れている。 (c)耐候性、耐紫外線性に優れ、劣化しにくく、また長期耐用性にすぐれている。さらに、環境の気温変化による劣化が少ない。 (d)経時劣化が少なく、クラックが生じにくい。 (e)中空顔料を使用することにより、硬化後の防食材の目減りを効果的に防止することができる。」(段落【0028】)、 (1d)本発明の防食組成物の適用方法について、「【0029】上記のような本発明の防食組成物は、特に、構造体に結合されたボルト・ナット等の金属締結部の周囲を防食材料で封止する方法に適用するうえで特に好適である。・・・ 【0030】本発明による防食方法においては、金属締結部を含む被防食部の周囲を上記防食組成物によって封止するに際し、防食処理を施すべき金属締結部の周囲に型枠を固定配置し、該型枠内に上記防食組成物を充填し、これを硬化させた後、型枠を除去する」(段落【0029】、【0030】)が記載されている。 [5]対比・判断 引用刊行物には、軟質アクリルポリオールと、体質顔料、比重が0.03?0.9の中空顔料、防錆顔料及び溶剤とを含んでなる第1液と、ポリイソシアネート系硬化剤を含有してなる第2液とからなる防食組成物が記載されている(摘記(1a)参照)。 そして、同引用刊行物には、上記中空顔料として、施工時の衝撃で破壊されない程度の機械的強度を有するパーライト等を、また上記防錆顔料として、モリブデン酸亜鉛等を夫々用い得ることが記載されており(摘記(1b)参照)、また、上記防食組成物の効果として、長期にわたりゴム弾性を維持し、耐衝撃性、被防食部に対する密着性、耐候性、耐紫外線性、長期耐用性に優れ、環境の気温変化による劣化、経時劣化が少なく、クラックが生じにくく、中空顔料を使用することにより、硬化後の防食材の目減りを効果的に防止できることが記載されており(摘記(1c)参照)、また、上記防食組成物の適用方法として、該組成物を構造体に結合されたボルト・ナット等の金属締結部の周囲に充填し、該金属締結部を封止することが記載されている(摘記(1d)参照)。 これらの事項を総合すると、引用刊行物には、「施工時の衝撃で破壊されない程度の機械的強度を有する中空顔料であるパーライトとモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸亜鉛等の防錆顔料を含んでなる、金属の被防食部の周囲に充填して用いる防食組成物」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明における「施工時の衝撃で破壊されない程度の機械的強度を有する中空顔料であるパーライト」は、「パーライト・・・から選択される固体状有孔性材料」に該当する。また、引用発明における「モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸亜鉛等の防錆顔料」は、防食組成物中に防錆顔料として含まれるので、固体状腐食抑制剤に該当する。 そうすると、両発明は、「パーライト・・・から選択される固体状有孔性材料と固体状腐食抑制剤を含んで成る防食用材料。」の点で一致し、構成において実質的に相違するところがない。 したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明である。 [6]むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。 また、上記のとおり本願発明が特許を受けることができないため、他の請求項に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-07 |
結審通知日 | 2007-03-08 |
審決日 | 2007-03-23 |
出願番号 | 特願2001-364871(P2001-364871) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C23F)
P 1 8・ 113- Z (C23F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松本 要、木村 孔一 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
市川 裕司 宮崎 園子 |
発明の名称 | 防食用材料 |
代理人 | 森 浩之 |
代理人 | 森 浩之 |
代理人 | 森 浩之 |