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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1157028
審判番号 不服2004-25274  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2007-05-10 
事件の表示 平成10年特許願第265816号「印刷装置、印刷方法、印刷システムおよび記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月21日出願公開、特開2000- 79742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成10年9月4日の出願であって、平成16年10月28日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月9日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年12月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正前後の特許請求の範囲を比較すると、請求項数が13から7に減少しており、特に「印刷装置」の発明として請求された請求項は、補正前の請求項1?6から請求項1?4に減少している。その内容を検討すると、補正前請求項2が削除されたことは一見して明らかであり、補正前請求項6の「前記一時停止している間に印刷環境を変更する印刷環境変更手段」は、補正後の請求項1記載の「前記印刷の印刷環境を変更する旨の指示を前記操作表示手段及び前記情報処理装置のいずれからも受け付け可能であり、前記操作表示手段或いは前記情報処理装置から指示された前記印刷環境を変更する旨の指示」を行う手段に該当するから、補正前請求項6も削除されているものと認める。
そうである以上、補正後請求項1?4は、補正前の請求項1,3,4,5にこの順に対応しているものと認める。
補正後請求項1の記載は次のとおりである(下線部が補正箇所。補正前請求項1については、後記「第3 1」を参照。)。
「情報処理装置から受信した印刷データを指定された部数印刷する印刷装置において、
前記印刷装置への操作入力を受け付け、メッセージを表示する操作表示手段と、
印刷を開始した後、所定の時期で該印刷を一時停止する停止手段と、
前記停止手段により一時停止したことを前記操作表示手段と前記情報処理装置とへ報知する報知手段と、
該報知後、前記印刷の印刷環境を変更する旨の指示を前記操作表示手段及び前記情報処理装置のいずれからも受け付け可能であり、前記操作表示手段或いは前記情報処理装置から指示された前記印刷環境を変更する旨の指示に基づいて前記印刷の印刷環境を変更してから印刷を再開する印刷再開手段とを備えたことを特徴とする印刷装置。」

2.補正目的違反
(1)本件補正後の「操作表示手段」は補正前請求項1には存在しなかった発明特定事項である。すなわち、「前記印刷装置への操作入力を受け付け、メッセージを表示する操作表示手段」を追加することは、「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」に該当せず、特許法17条の2第4項2号にいう「特許請求の範囲の減縮」には当たらない。
(2)「前記印刷の印刷環境を変更する旨の指示を前記操作表示手段及び前記情報処理装置のいずれからも受け付け可能であり、前記操作表示手段或いは前記情報処理装置から指示された前記印刷環境を変更する旨の指示に基づいて前記印刷の印刷環境を変更してから印刷を再開する印刷再開手段」については、一見すると補正前請求項1の「前記印刷を再開する印刷再開手段」を限定したものに見える。
しかし、補正前請求項1を引用する同請求項6に「前記一時停止している間に印刷環境を変更する印刷環境変更手段を備えた」とある以上、補正前請求項1の「前記印刷を再開する印刷再開手段」には、「印刷環境変更手段」は含まれないと解さなければならない。
すなわち、実質的には、補正前請求項1記載の「印刷再開手段」と同請求項6記載の「印刷環境変更手段」を併せたものを更に限定したものが、補正後請求項1記載の「印刷再開手段」である。
そうである以上、本件補正は、補正前請求項1には発明特定事項として存在しなかった「印刷環境変更手段」を追加したものであるから、(1)と同様の理由により特許法17条の2第4項2号にいう「特許請求の範囲の減縮」には当たらない。
(3)以上のとおりであり、請求項1の補正は、誤記の訂正や明りようでない記載の釈明にも該当しないから、本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反している。

3.独立特許要件欠如
(1)補正発明の認定
仮に、請求項1の補正が特許請求の範囲の減縮に該当するとした場合の判断を以下において行う。本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、同記載は1.で述べたとおりである。

(2)引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-158076号公報(以下「引用例1」という。)には、
「ホスト側から転送される情報を受信する受信部と、
記録指示、モード設定指示、及び印刷条件の設定指示を行う指示入力部と、
受信部が受信した情報から印刷条件情報を検出する第一検出手段と、
受信部が受信した情報から画情報を検出する第二検出手段と、
第一検出手段が検出した印刷条件情報及び指示入力部から入力された通常印刷/仮印刷の選 択モードを記憶する記憶手段と、
第二検出手段が検出した画情報を蓄積する蓄積手段と、
指示入力部から記録指示がなされた場合に記憶手段の選択モードを確認し、同モードが仮印刷モードであったときには、蓄積手段に蓄積画情報を保持させながらその1ページ分の画情報のみを読出す読出し制御手段と、
記録部と、
指示入力部からの記録指示と記憶手段の仮印刷モードの確認に基づいて、記録部により読出し制御手段が読出した1ページ分の画情報を記憶手段の印刷条件情報に従って仮印刷させた後、待機モードにする記録制御手段と、
指示入力部からの印刷条件の設定指示があった場合に、記憶手段の印刷条件情報を書換える書換え手段
とを具備したことを特徴とする仮印刷が可能なプリンタ。」(1頁左下欄5行?右下欄13行)との発明(以下「引用発明1」という。)が記載されており、それに関連して以下のア?ウの記載が図示とともにある。
ア.「ホスト側が印刷条件情報と画情報の他に通常印刷/仮印刷の選択情報を送信する場合において、第一検出手段がその選択情報も検出し、記憶手段が同選択情報を優先的に記憶することとした請求項(1)の仮印刷が可能なプリンタ。」(1頁右下欄14?18行)
イ.「従来から、レーザープリンタ等のベージプリンタにおいては、左右・上下の余白や印刷方向等の印刷条件を設定てきるようになっているが、この条件はオペポートからの指定入力やホスト側からの制御コマンドでの指定、または内蔵されたメモリスイッチによる指定等によって設定されている・・・前記のようにして設定された印刷条件が適正であるか否かについては、実際に用紙へ印刷を行わなければ判断できないことが多い。
従って、期待した印刷結果が得られないような場合には、一旦印刷を注視させてホスト側やプリンタ側で印刷条件を設定し直し、再度ホスト側から画情報を転送させて印刷を行うことになる。」(2頁左上欄16行?右上欄13行)
ウ.「仮印刷モードか設定されている場合には、記録制御手段9はlページ分の印刷が終了した時点て記録部8を待機状態にする。
即ち、オペレータはその状態で仮印刷された1ページ分の出力原稿をみて、その印刷条件の適否を判断する。」(3頁右上欄9?14行)

(3)補正発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「ホスト」及び「画情報」は、補正発明の「情報処理装置」及び「印刷データ」にそれぞれ相当するから、引用発明1を「情報処理装置から受信した印刷データを印刷する印刷装置」ということができる。
引用発明1の「指示入力部」が「メッセージを表示する」ことについて、直接的記載は引用例1にはないかもしれないが、何を指示したか(これもメッセージである)を表示しなければ、円滑に指示入力できないこと、及びメッセージを表示する「指示入力部」が周知であることからみて、「指示入力部」は「メッセージを表示する」と解する。したがって、それは補正発明の「前記印刷装置への操作入力を受け付け、メッセージを表示する操作表示手段」に相当する。
引用発明1の「記録制御手段」は、「1ページ分の画情報を記憶手段の印刷条件情報に従って仮印刷させた後、待機モードにする」のであり、「待機モードにする」ということは「印刷を一時停止する」ことにほかならない。また、「1ページ分の画情報を記憶手段の印刷条件情報に従って仮印刷させた後」は、補正発明でいう「印刷を開始した後、所定の時期」に該当するから、引用発明1は「印刷を開始した後、所定の時期で該印刷を一時停止する停止手段」を備える。
補正発明の「印刷環境」について、本願明細書には出願当初から一貫して「印刷環境、例えばマージン、用紙サイズ、フォント等」(段落【0054】)との記載があり、他方引用例1には「左右・上下の余白や印刷方向等の印刷条件」(引用例1の記載イ)とあるから、これら「印刷環境」と「印刷条件」には表現上の相違しかないものと認める。
引用発明1の「書換え手段」は「指示入力部からの印刷条件の設定指示があった場合に、記憶手段の印刷条件情報を書換える」手段であり、書換え後には当然印刷を再開すると解すべきであるから、「前記印刷の印刷環境を変更する旨の指示を前記操作表示手段から受け付け可能であり、前記操作表示手段から指示された前記印刷環境を変更する旨の指示に基づいて前記印刷の印刷環境を変更してから印刷を再開する印刷再開手段」を備える点では、補正発明と引用発明1は一致する。
したがって、補正発明と引用発明1とは、
「情報処理装置から受信した印刷データを印刷する印刷装置において、
前記印刷装置への操作入力を受け付け、メッセージを表示する操作表示手段と、
印刷を開始した後、所定の時期で該印刷を一時停止する停止手段と、
前記印刷の印刷環境を変更する旨の指示を前記操作表示手段から受け付け可能であり、前記操作表示手段から指示された前記印刷環境を変更する旨の指示に基づいて前記印刷の印刷環境を変更してから印刷を再開する印刷再開手段とを備えた印刷装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉補正発明が「印刷データを指定された部数印刷する」と限定しているのに対し、引用発明1には同限定がない点。
〈相違点2〉補正発明が「前記停止手段により一時停止したことを前記操作表示手段と前記情報処理装置とへ報知する報知手段」を備え、「印刷再開手段」の動作(印刷環境を変更する旨の指示の受け付け及び印刷環境の変更を含む。)を「該報知後」としているのに対し、引用発明1がそのような「報知手段」を備えるかどうか不明な点。
〈相違点3〉印刷環境の変更に当たり、補正発明では「操作表示手段」からだけでなく「情報処理装置」からも受け付け可能であり、「前記操作表示手段或いは前記情報処理装置から指示された前記印刷環境を変更する旨の指示に基づいて前記印刷の印刷環境を変更」するのに対し、引用発明1では「ホスト」(情報処理装置)から受け付け可能とはされていない点。

(4)相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
〈相違点1について〉
本件出願当時、印刷データを指定された部数印刷する印刷装置は周知であり、引用発明1の「仮印刷モード」は印刷枚数が多いほど適したモードであるから、相違点1に係る補正発明の構成を採用することはせいぜい設計事項というべきである。

〈相違点2について〉
まず、一時停止したことを操作表示手段に報知する点について検討する。操作表示手段(指示入力部)は、印刷装置の状態をオペレータに知らせ、オペレータの操作を容易ならしめる役割を担っているから、「指示入力部からの印刷条件の設定指示」をする以上、設定指示をすべき状態であること(「停止手段により一時停止したこと」に等しい)を操作表示手段に表示することは設計事項というべきである。操作表示手段に表示するからには、その前提として操作表示手段へ報知することは当然である。
そうすると、相違点2において検討すべきは、停止手段により一時停止したことを情報処理装置へ報知することの容易性につきる。
引用例1は、平成2年10月23日に出願された特願平2-285213号の公開公報であるから、引用発明1は平成2年に発明されたと認めることができる。引用発明1が発明された当時は、ホストと印刷装置は、1対1の関係で接続されることが多く、またホストは単一のタスクしか実行できないものが多かった。
これに対し、本件出願当時には、ホストとなるべきものは汎用のパソコンであり、そのほとんどはマルチタスクを実行でき、ホストと印刷装置の接続関係も1対1ではなく、1対多、多対1又は多対多の関係になっている場合が多くなっていた。そのため、ホストと印刷装置は離れた位置に設置されることも多くなっていた。
マルチタスクを実行できるホストであれば、印刷装置に対して印刷指令を送ってから他のタスクを実行することも当然想定すべきであるところ、停止手段により一時停止したことをホスト(情報処理装置)へ報知されなければ、オペレータは他のタスクの実行を行うことなく、離れた位置に設置された印刷装置まで出向かなければ、いつ一時停止したのかが判らない。
また、本件出願当時には、印刷用紙不足、トナー不足、紙詰まり等種々の印刷装置の状態をホストに報知することが、例を挙げるまでもなく周知であった。
これらのことを考慮すれば、停止手段により一時停止したこと(これは、印刷装置の状態の1つである。)を、オペレータが印刷装置まで出向かなくとも認識できるように、印刷装置からホスト(情報処理装置)に対して一時停止の情報を報知することは、当業者にとって想到容易というべきである。
以上のとおりであるから、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

〈相違点3について〉
引用発明1は「受信部が受信した情報から印刷条件情報を検出する第一検出手段」を有しているから、ホスト(情報処理装置)にて印刷条件を設定し、それを印刷装置に送信し、印刷装置側で印刷条件を認識すること自体は、もともと可能である。
もちろん、引用発明1において、ホストで設定する印刷条件は、印刷停止時のものではなく、印刷開始前のものであるが、印刷開始前にホストにて印刷条件を設定する以上、オペレータはホストで印刷条件を設定することに慣れ親しんでいると考えるべきである。
引用発明1では、印刷環境を変更(印刷条件の再設定)するに当たり、指示入力部(操作表示手段)にて行うのであるが、ホストで設定するのと同様の印刷条件を指示入力部で設定できるとしても、その設定の仕方までが同一であるとの保証はない。ホストで設定する場合には、通常キーボードで行うと解されるところ、印刷装置の指示入力部に同様のキーボードが存する可能性が乏しいからである。
そうであれば、印刷環境を変更するに当たり、ホストでの変更を可能とすることは当業者にとって想到容易というべきであり、それを印刷装置としてみれば、印刷の印刷環境を変更する旨の指示を情報処理装置から受け付け可能とすることにほかならない。
もっとも、印刷の印刷環境を変更する旨の指示を情報処理装置から受け付け可能とした場合、引用発明1にもともと備わっている「指示入力部からの印刷条件の設定指示」を省略する(その場合には、相違点3に係る補正発明の構成には至らない。)ことも考えられるから、さらに審究する。
引用発明1において、印刷環境を変更するのは印刷を一時停止した時であり、出力原稿をオペレータが確認した後行われる。そして、出力原稿確認に当たっては、印刷装置まで出向き(ホストと印刷装置が離れている場合が想定されることは前示のとおりである。)、印刷条件が適正であるか確認するのであるから、確認した段階では、オペレータは印刷装置近辺に位置する。そうであれば、わざわざホストに戻らなくとも印刷条件を再設定できるように、印刷装置にて再設定できるようにすることは設計事項の範囲内というべきである。
また、従来技術に関してではあるが、引用例1には「期待した印刷結果が得られないような場合には、一旦印刷を注視(審決注;「中止」の誤記と認める。)させてホスト側やプリンタ側で印刷条件を設定し直し、再度ホスト側から画情報を転送させて印刷を行うことになる。」(記載イ)と、印刷条件の再設定をホスト側やプリンタ側のどちらで行ってもよい旨の記載もある。
そればかりか、引用例1の記載アによれば、「通常印刷/仮印刷の選択」がホスト側とプリンタ側のどちらですることも可能とされており、印刷条件再設定についても、「通常印刷/仮印刷の選択」と同様に、ホスト側とプリンタ側の両方での設定を可能とすることに困難性があるとは到底認めることができない。
そして、印刷条件再設定について、ホスト側とプリンタ側の両方での設定を可能とすれば、相違点3に係る補正発明の構成に至ることはいうまでもない。
したがって、相違点3に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

〈補正発明の独立特許要件の判断〉
相違点1?3に係る補正発明の構成を採用することは、せいぜい設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、仮に本件補正が特許法17条の2第4項2号に該当するとすれば、同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第4項の違反しており、仮に同項2号に該当するとしても、同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年8月23日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「情報処理装置から受信した印刷データを指定された部数印刷する印刷装置において、
前記印刷を開始した後、所定の時期で該印刷を一時停止する停止手段と、
前記停止手段により一時停止したことを前記情報処理装置へ報知する報知手段と、
該報知後、前記印刷を再開する印刷再開手段とを備えたことを特徴とする印刷装置。」

2.本願発明の進歩性の判断その1
本願発明と引用発明1とは、
「情報処理装置から受信した印刷データを印刷する印刷装置において、
前記印刷を開始した後、所定の時期で該印刷を一時停止する停止手段と、
前記印刷を再開する印刷再開手段とを備えた印刷装置。」である点で一致し、「第2[理由]3(3)」で述べた相違点1及び次の相違点2’において相違する(相違点1については、「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)
〈相違点2’〉本願発明が「前記停止手段により一時停止したことを前記情報処理装置へ報知する報知手段」を備え、「印刷再開手段」の動作を「該報知後」としているのに対し、引用発明1がそのような「報知手段」を備えるかどうか不明な点。
相違点1については「第2[理由]3(4)」で検討したとおり、せいぜい設計事項である。
相違点2’については、相違点2’に条件を付した相違点2に係る補正発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることを「第2[理由]3(4)」で説示した。そうである以上、相違点2’に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは当然である。
そして、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3.本願発明の進歩性の判断その2
原審では、特開平10-119365号公報(以下「引用例2」という。)を主たる引用例と捉えていたので、引用例2記載の発明に基づく進歩性についても検討する。
引用例2には、
「画像情報を記憶する記憶手段と、
用紙に画像を印刷する印刷部と、
前記記憶手段に記憶された前記画像情報に基づいて前記印刷部を制御する印刷制御手段と、
プルーフモードを設定するプルーフモード設定手段と、
このプルーフモード設定手段により前記プルーフモードが設定されている場合に複数部を印刷するとき前記印刷部が2部目を印刷する動作を停止するプルーフモード制御手段と、
印刷再開命令を入力する印刷再開命令入力部と、
前記プルーフモード制御手段により前記印刷部の印刷動作が停止した状態で前記印刷再開命令入力部により印刷再開命令が入力されたとき前記印刷動作を再開する印刷再開手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。」(【請求項1】)との発明(以下「引用発明2」という。)が記載されており、それに関連した説明として、「画像処理装置としては、例えばホストコンピュータに接続されるプリンタがある。」(段落【0002】)との記載がある。
引用発明2も、段落【0002】同様、ホストコンピュータ(本願発明の「情報処理装置」に相当)に接続され、そこから印刷データを受信し印刷するものと解さなければならない。
引用発明2は「複数部を印刷」するものであり、その部数は当然指定されている。
引用発明2において「印刷部が2部目を印刷する動作を停止する」ことは、本願発明において「前記印刷を開始した後、所定の時期で該印刷を一時停止する」ことと異ならないから、引用発明2は本願発明の「停止手段」を備える。
したがって、本願発明と引用発明2とは、
「情報処理装置から受信した印刷データを指定された部数印刷する印刷装置において、
前記印刷を開始した後、所定の時期で該印刷を一時停止する停止手段と、
前記印刷を再開する印刷再開手段とを備えた印刷装置。」である点で一致し、先に検討した相違点2’において相違するのみである(「引用発明1」を「引用発明2」と読み替える。)。
そして、前示のとおり、相違点2’に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-07 
結審通知日 2007-03-13 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願平10-265816
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桐畑 幸▲廣▼石原 徹弥畑井 順一  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
國田 正久
発明の名称 印刷装置、印刷方法、印刷システムおよび記憶媒体  
代理人 池田 浩  
代理人 別役 重尚  
代理人 後藤 夏紀  
代理人 二宮 浩康  
代理人 村松 聡  

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