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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680092 審決 特許
無効200680032 審決 特許
無効200680280 審決 特許
無効200680043 審決 特許
無効200680077 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1157713
審判番号 無効2006-80064  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-14 
確定日 2007-05-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3673621号発明「チップ型発光素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3673621号に係る発明についての出願の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成 9年 7月30日 特許出願
平成17年 4月28日 設定登録
平成18年 4月14日 本件特許無効審判請求
平成18年 7月13日 訂正請求並びに答弁書提出
平成18年10月26日 口頭審理
平成18年12月 4日 無効理由通知(起案日)
平成18年12月20日 訂正請求

第2 訂正の可否に対する判断
被請求人(ローム株式会社)は平成18年7月13日付け及び平成18年12月20日付けで訂正請求を行い訂正を求めたが、先の訂正請求は特許法第134条の2第4項の規定によりみなし取り下げとなるため、以下では平成18年12月20日付け訂正請求により訂正を求める事項についてのみ検討する。

1.訂正事項
平成18年12月20日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)により訂正を求める事項は、次のとおりである。

[訂正事項1]
訂正前の請求項1における「その一部が前記第1の端子電極の側部まで延びた延出部」を「その一部が前記第1の端子電極の側部まで延び、前記発光素子チップの側部を超えて前記第1の端子電極が設けられた前記絶縁性基板の端部側に延びた延出部」と訂正する。
[訂正事項2]
訂正前の請求項1における「該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ」を「前記発光素子チップと前記保護素子とを結ぶ直線が前記絶縁性基板の前記両端部を結ぶ直線に対して斜めとなるように該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ」と訂正する。
[訂正事項3]
訂正前の請求項2における「ワイヤボンディングにより接続されてなるチップ型発光素子」を「ワイヤボンディングにより接続され、前記発光素子チップの上面の高さが前記ダイオードチップの上面の高さより高くなるように構成されてなるチップ型発光素子」と訂正する。
[訂正事項4]
訂正前の明細書【0010】の記載「本発明によるチップ型発光素子は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされる保護素子とからなり、前記第2の端子電極は、その一部が前記第1の端子電極の側部まで延びた延出部を有し、該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ、該保護素子は前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されている。
また、本発明によるチップ型発光素子の他の形態は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされ、前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるダイオードチップとからなり、前記第1の端子電極は前記発光素子チップがボンディングされる部分とワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、前記第2の端子電極は前記ダイオードチップがボンディングされる部分とワイヤボンディングされるパッド部とが分離するように形成され、前記発光素子チップの前記第2の端子電極と接続する電極は前記第2の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記ダイオードチップの前記第1の端子電極と接続する電極は前記第1の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続されている。」を、
「本発明によるチップ型発光素子は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされる保護素子とからなり、前記第2の端子電極は、その一部が前記第1の端子電極の側部まで延び、発光素子チップの側部を超えて第1の端子電極が設けられた絶縁性基板の端部側に延びた延出部を有し、発光素子チップと保護素子とを結ぶ直線が絶縁性基板の両端部を結ぶ直線に対して斜めとなるように該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ、該保護素子は前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されている。
また、本発明によるチップ型発光素子の他の形態は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされ、前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるダイオードチップとからなり、前記第1の端子電極は前記発光素子チップがボンディングされる部分とワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、前記第2の端子電極は前記ダイオードチップがボンディングされる部分とワイヤボンディングされるパッド部とが分離するように形成され、前記発光素子チップの前記第2の端子電極と接続する電極は前記第2の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記ダイオードチップの前記第1の端子電極と接続する電極は前記第1の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、発光素子チップの上面の高さがダイオードチップの上面の高さより高くなるように構成されている。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張変更の存否
(1)訂正事項1について
本件特許公報明細書に「前記発光素子チップの側部を超えて前記第1の端子電極が設けられた前記絶縁性基板の端部側に延び」との記載は無いが、図2から、第2の端子電極2から第1の端子電極1の側部まで延びる延出部2bが、LEDチップ3の側部を超えて延びている構成がみてとれる。
したがって、訂正事項1は「延出部」について具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(2)訂正事項2について
本件特許公報明細書に、保護素子が「前記発光素子チップと前記保護素子とを結ぶ直線が前記絶縁性基板の前記両端部を結ぶ直線に対して斜めとなるように」マウントされることの記載はないが、図2から、延出部2bの先端にマウントされたツェナーダイオードチップ5とLEDチップ3とを結ぶ直線が絶縁性基板10の両端部を結ぶ直線に対して斜めである配置関係がみてとれる。
したがって、訂正事項2は「保護素子」のマウント態様について具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(3)訂正事項3について
本件特許公報明細書【0024】に「また、保護素子の高さがLEDチップの高さより低くなるように、保護素子の下に凹部を形成して凹部内に保護素子をボンディングしたり、LEDチップの下にスペーサを介してLEDチップの上面が高くなるようにボンディングすることにより、保護素子による光の遮光の影響を少なくすることができる。」と記載のとおり、訂正事項3は本件特許公報明細書に記載された事項である。
したがって、訂正事項3は「発光素子チップ」と「ダイオードチップ」との上面高さについて具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(4)訂正事項4について
上記(1)?(3)のとおり、訂正事項1乃至3は特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。そして、訂正事項4は、訂正事項1乃至3による特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。

更に、訂正事項1乃至4は、本件特許公報明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.むすび
以上のとおり、上記訂正事項は、特許法第134条の2第1項ただし書き各号の規定に適合すると共に、同条第5項において読み替えて準用する同法126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求による訂正を認めるので、本件特許に係る発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定される、次のものである。
「【請求項1】
絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされる保護素子とからなり、前記第2の端子電極は、その一部が前記第1の端子電極の側部まで延び、前記発光素子チップの側部を超えて前記第1の端子電極が設けられた前記絶縁性基板の端部側に延びた延出部を有し、前記発光素子チップと前記保護素子とを結ぶ直線が前記絶縁性基板の前記両端部を結ぶ直線に対して斜めとなるように該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ、該保護素子は前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるチップ型発光素子。」(以下、「本件特許発明1」という。)
「【請求項2】
絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされ、前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるダイオードチップとからなり、前記第1の端子電極は前記発光素子チップがボンディングされる部分とワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、前記第2の端子電極は前記ダイオードチップがボンディングされる部分とワイヤボンディングされるパッド部とが分離するように形成され、前記発光素子チップの前記第2の端子電極と接続する電極は前記第2の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記ダイオードチップの前記第1の端子電極と接続する電極は前記第1の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記発光素子チップの上面の高さが前記ダイオードチップの上面の高さより高くなるように構成されてなるチップ型発光素子。」(以下、「本件特許発明2」という。)

第4 請求人の主張(無効理由)
請求人(小林武)は、「特許第3673621号の請求項1及び請求項2に係る特許は、これを無効にする」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第5号証を提示し、以下の理由により、本件発明に係る特許は無効にすべきものであると主張している。

[無効理由1](新規性の欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、いずれも本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[無効理由2](進歩性の欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、いずれも本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


甲第1号証:特許第3673621号特許掲載公報
甲第2号証:実願昭52-101361号(実開昭54-29653号)
のマイクロフィルム
甲第3号証:特開平1-146376号公報
甲第4号証:実願昭50-81876号(実開昭51-162670号)
のマイクロフィルム
甲第5号証:平成16年10月15日付け意見書

なお、請求人は甲第3号証及び甲第4号証を平成18年10月26日の口頭審理において取り下げた(「第1回口頭審理調書」参照)。

第5 被請求人の主張
これに対して、被請求人(ローム株式会社)は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は審判請求人の負担とする」との審決を求める旨主張している。

第6 当審の判断
1.甲第2号証の記載事項
甲第2号証(実願昭52-101361号(実開昭54-29653号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「この考案は上記の点に鑑みてなされたもので、超小形化が図れ、かつ十分な機械的強度を有するとともに、実装が容易で、しかも受動、能動素子の内蔵が可能な小形発光ダイオードを提供することを目的とする。
この考案に係る小形発光ダイオードは、上面に発光ダイオードペレットマウント用の導電パターンを形成するとともに、側面に外部電極用の導電パターンを形成したセラミック印刷基板を用い、この印刷基板の上面の導電パターンに発光ダイオードペレットをボンディングし、モールドしたことを要旨とするものである。」(第2頁18行?第3頁9行)
(2)「第1図(a)(b)はこの考案の一実施例を示すもので、セラミック基板1の上面に発光ダイオードペレット2をボンディングするための導電パターン3を形成するとともに、側面に外部電極用導電パターン4を前記導電パターン3と連なるように形成し、上面の導電パターン3に発光ダイオード2をマウントして金線5により片側の電極を他の上面の導電パターンにボンディング(ワイヤボンディング)し、その上にエポキシ樹脂で半球状のモールド部6を設けている。」(第3頁12行?第4頁1行)
(3)「第6図はこの考案の別の他の実施例を示すもので、シリコンダイオードなどを発光ダイオードペレットと共にボンディングした場合である。この実施例ではセラミック印刷基板1の上面に発光ダイオードペレット2をボンディングするための導電パターン41、シリコンダイオードペレット7をボンディングするための導電パターン42及び抵抗体リード用の導電パターン43を形成し、パターン41に発光ダイオードペレット2を、パターン42にシリコンダイオードペレット7をそれぞれボンディングし、またパターン41と43の間に抵抗体8を印刷している。なお、基板1の側面に外部電極用の導電パターンを形成することは第1図(a)(b)と同様である。
上記構成の発光ダイオードは第7図に示すように結線され、ダイオード7は発光ダイオード2の逆電圧保護用ダイオードとなり、また抵抗8は電流制限用の抵抗となる。このような回路もセラミック印刷基板を用いることにより、極めて小形に、かつ容易に構成することができる。」(第6頁1?20行)
(4)第6図から、導電パターン41及び導電パターン42がセラミック印刷基板1の表面に設けられていること、発光ダイオードペレット2が導電パターン41にマウントされ、そのp側電極およびn側電極が導電パターン41および導電パターン42と電気的に接続されていること、シリコンダイオードペレット7が導電パターン42にマウントされていること、導電パターン42の一部が導電パターン41の側部まで延びた延出部を有していること、及び、延出部の先端にシリコンダイオードペレット7がマウントされていること、が見てとれる。
また、第6図からは、導電パターン41は発光ダイオードペレット2がボンディングされる部分とワイヤボンディングされるワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成されていること、導電パターン42はシリコンダイオードペレット7がボンディングされる部分とワイヤボンディングされるワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成されていること、発光ダイオードペレット2の導電パターン42と接続する電極が導電パターン42のパッド部とワイヤボンディングにより接続されていること、及び、シリコンダイオードペレット7の導電パターン41と接続する電極が導電パターン41のパッド部とワイヤボンディングにより接続されていること、が見てとれる。

よって、上記(1)?(4)の記載事項からみて、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「セラミック印刷基板1と、セラミック印刷基板1の表面に設けられる導電パターン41および導電パターン42と、導電パターン41にマウントされ、p側電極およびn側電極が導電パターン41および導電パターン42と電気的に接続される発光ダイオードペレット2と、導電パターン42にマウントされるシリコンダイオードペレット7とからなり、導電パターン42の一部は導電パターン41の側部まで延びた延出部を有し、延出部の先端にシリコンダイオードペレット7がマウントされ、シリコンダイオードペレット7は発光ダイオードペレット2の逆電圧保護用ダイオードとなる発光ダイオード」(以下、「甲第2号証発明1」という。)
「セラミック印刷基板1と、セラミック印刷基板1の表面に設けられる導電パターン41および導電パターン42と、導電パターン41にマウントされ、p側電極およびn側電極が導電パターン41および導電パターン42と電気的に接続される発光ダイオードペレット2と、導電パターン42にマウントされ、発光ダイオードペレット2の逆電圧保護用ダイオードとなるシリコンダイオードペレット7とからなり、導電パターン41は発光ダイオードペレット2がボンディングされる部分とワイヤボンディングされるワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、導電パターン42はシリコンダイオードペレット7がボンディングされる部分とワイヤボンディングされるワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、発光ダイオードペレット2の導電パターン42と接続する電極が導電パターン42のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、シリコンダイオードペレット7の導電パターン41と接続する電極が導電パターン41のパッド部とワイヤボンディングにより接続されてなる発光ダイオード」(以下、「甲第2号証発明2」という。)

2.対比
以下、本件特許発明1及び本件特許発明2と甲第2号証発明1及び甲第2号証発明2とを、それぞれ対比する。

(1)本件特許発明1に対して
ア.甲第2号証発明1の「セラミック印刷基板1」,「導電パターン41」,「導電パターン42」,「発光ダイオードペレット2」,「シリコンダイオードペレット7」及び「発光ダイオード」は、本件特許発明1の「絶縁性基板」,「第1の端子電極」,「第2の端子電極」,「発光素子チップ」,「保護素子」及び「チップ型発光素子」に、それぞれ相当する。
イ.甲第2号証発明1では「シリコンダイオードペレット7は発光ダイオードペレット2の逆電圧保護用ダイオードとなる」ように結線しているのであるから、甲第2号証発明1は本件特許発明1の「該保護素子は前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続される」との構成を有している。

よって、上記ア.?イ.によれば、両者は「絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極が前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされる保護素子とからなり、前記第2の端子電極は、その一部が前記第1の端子電極の側部まで延びた延出部を有し、該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ、該保護素子は前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるチップ型発光素子。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明1は、「該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極」を有するのに対して、甲第2号証発明1では、第1の端子電極が端部に形成されていない点。
[相違点2]
本件特許発明1は、「p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される」のに対して、甲第2号証発明1では、p型電極は第2の端子電極に接続され、n型電極は第1の端子電極に接続されている点。
[相違点3]
本件特許発明1は、「発光素子チップの側部を超えて前記第1の端子電極が設けられた前記絶縁性基板の端部側に延びた延出部を有し、前記発光素子チップと前記保護素子とを結ぶ直線が前記絶縁性基板の前記両端部を結ぶ直線に対して斜めとなるように該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ」ているのに対して、甲第2号証発明1では、延出部は発光素子チップの側部を超えて延びてはおらず、発光素子チップと保護素子とを結ぶ直線が絶縁性基板の前記両端部を結ぶ直線に対して並行である点。

(2)本件特許発明2に対して
ア.甲第2号証発明2の「セラミック印刷基板1」,「導電パターン41」,「導電パターン42」,「発光ダイオードペレット2」,「シリコンダイオードペレット7」及び「発光ダイオード」は、本件特許発明2の「絶縁性基板」,「第1の端子電極」,「第2の端子電極」,「発光素子チップ」,「ダイオードチップ」及び「チップ型発光素子」に、それぞれ相当する。
イ.甲第2号証発明2は「発光ダイオードペレット2の逆電圧保護用ダイオードとなるシリコンダイオードペレット7」なる構成を有するのであるから、甲第2号証発明2は本件特許発明2の「前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続される」との構成を有している。

よって上記ア.?イ.によれば、両者は、「絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされ、前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるダイオードチップとからなり、前記第1の端子電極は前記発光素子チップがボンディングされる部分とワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、前記第2の端子電極は前記ダイオードチップがボンディングされる部分とワイヤボンディングされるパッド部とが分離するように形成され、前記発光素子チップの前記第2の端子電極と接続する電極は前記第2の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記ダイオードチップの前記第1の端子電極と接続する電極は前記第1の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続されたチップ型発光素子」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点4]
本件特許発明2は、「該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極」を有するのに対して、甲第2号証発明2では、第1の端子電極が端部に形成されていない点。
[相違点5]
本件特許発明2は、「p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される」のに対して、甲第2号証発明2では、p型電極は第2の端子電極に接続され、n型電極は第1の端子電極に接続されている点。
[相違点6]
本件特許発明2は、発光素子チップの上面の高さがダイオードチップの上面の高さより高くなるように構成されてなるのに対して、甲第2号証発明2では、発光素子チップの上面の高さとダイオードチップの上面の高さとの関係は不明である点。

3.判断
上記相違点及び他の無効理由について、以下に検討する。

(1)本件特許発明1について
ア.相違点1について
甲第2号証の第6図に記載されたチップ型発光素子は、抵抗体8を有することから、抵抗体リード用の導電パターン43が基板の端面に形成されている。
しかしながら、抵抗体は適宜配置されるものであり、抵抗体を設けない構成は周知(第1図参照)であることから、当該周知な構成を用いて相違点1の如く構成することは当業者が適宜なし得る設計事項である。
イ.相違点2について
発光素子チップのp側電極とn側電極とを、第1の端子電極或いは第2の端子電極のどちらと接続するかは、配線設計上の単なる選択であって、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。
ウ.相違点3について
甲第2号証には、相違点3に係る構成は記載されておらず、当該構成を選択する示唆もなされていないことから、発光素子チップと第2の端子電極の延出部及び発光素子チップと保護素子との配置関係を相違点3の如く構成することは、甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得る事項ではない。

(2)本件特許発明2について
ア.相違点4について
甲第2号証の第6図に記載されたチップ型発光素子は、抵抗体8を有することから、抵抗体リード用の導電パターン43が基板の端面に形成されている。
しかしながら、抵抗体は適宜配置されるものであり、抵抗体を設けない構成は周知(第1図参照)であることから、当該周知な構成を用いて相違点4の如く構成することは当業者が適宜なし得る設計事項である。
イ.相違点5について
発光素子チップのp側電極とn側電極とを、第1の端子電極或いは第2の端子電極のどちらと接続するかは、配線設計上の単なる選択であって、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。
ウ.相違点6について
甲第2号証には、相違点6に係る構成は記載されておらず、当該構成を選択する示唆もなされていないことから、発光素子チップの上面の高さをダイオードチップの上面の高さより高くなるよう構成することは、甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得る構成ではない。

(3)当審より通知した無効理由について
平成18年12月4日付け無効理由通知にて、請求項1に記載した「第1の端子電極の側部」が第1の端子電極における如何なる部分を示しているのか不明であるから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨通知した点は、平成18年12月20日付け訂正請求書にて「本件の図1において第1の端子電極1の正面(図1中の左右方向)に第2の端子電極2が位置している」(a-2-1)と説明されたことにより、「第1の端子電極の側部」が如何なる部分を示しているのか明確となった。

よって、上記(1)?(3)のとおりであるから、請求人が主張する無効理由1及び無効理由2に理由はなく、また、他に本件特許発明1及び2を無効とすべき理由を発見しない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1及び2の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
チップ型発光素子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされる保護素子とからなり、前記第2の端子電極は、その一部が前記第1の端子電極の側部まで延び、前記発光素子チップの側部を超えて前記第1の端子電極が設けられた前記絶縁性基板の端部側に延びた延出部を有し、前記発光素子チップと前記保護素子とを結ぶ直線が前記絶縁性基板の前記両端部を結ぶ直線に対して斜めとなるように該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ、該保護素子は前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるチップ型発光素子。
【請求項2】絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされ、前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるダイオードチップとからなり、前記第1の端子電極は前記発光素子チップがボンディングされる部分とワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、前記第2の端子電極は前記ダイオードチップがボンディングされる部分とワイヤボンディングされるパッド部とが分離するように形成され、前記発光素子チップの前記第2の端子電極と接続する電極は前記第2の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記ダイオードチップの前記第1の端子電極と接続する電極は前記第1の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記発光素子チップの上面の高さが前記ダイオードチップの上面の高さより高くなるように構成されてなるチップ型発光素子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は保護素子が設けられているチップ型発光素子に関する。さらに詳しくは、交流電圧駆動または静電気などにより発光素子に逆方向電圧や所定の電圧以上の順方向電圧が印加される場合にも発光素子がその静電気などにより破壊しにくいように保護素子が設けられているチップ型発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話機やPHSなどの携帯機器の小形化に伴い、それらに用いられる発光素子なども軽薄短小化が要求され、小形で薄型のチップ型発光素子が用いられている。
【0003】
この種の小形で薄型のチップ型発光素子は図5(a)に示されるように、基板10の両端部に端子電極1、2が形成され、一方の端子電極1と接続され端子電極の一部となる電極上に発光ダイオード(以下、LEDという)チップ3がボンディングされてその下部電極が端子電極1と直接接続され、その上部電極が金線4により他方の端子電極2とワイヤボンディングされて、それぞれ電気的に接続されている。LEDチップ3は、たとえば図5(b)に示されるように、GaAsやGaPなどからなるn型半導体層41とp型半導体層42との接合によるpn接合面(発光層)43が形成され、その両面に電極44、45が設けられることにより構成されている。この基板10の表面側には、透明または乳白色のエポキシ樹脂などからなる樹脂によりLEDチップ3や金線4を被覆して保護するパッケージ6が形成されている。
【0004】
このような発光素子は、ダイオード構造になっているため、逆方向の電圧が印加されても電流が流れない整流作用を利用して、直流電圧を両電極間に印加しないで交流電圧を印加することにより、交流で順方向電圧になる場合にのみ電流が流れて発光する光を利用する使用方法も採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常の半導体発光素子は、一般にGaAs系やGaP系やチッ化ガリウム系などの化合物半導体が用いられているが、これらの化合物半導体を用いた場合には、逆方向に印加される電圧に対して弱く、半導体層が破壊することがある。とくに、チッ化ガリウム系化合物半導体においては、その逆方向の耐圧が50V程度と低く逆方向の印加電圧に対してとくに破壊しやすいこと、またバンドギャップエネルギーが大きいため、GaAs系などを用いた発光素子より動作電圧も高くなること、などのため交流電圧の印加で半導体発光素子が破損したり、その特性が劣化するという問題がある。
【0006】
また、交流電圧を印加する駆動でなくても、外部からサージ電圧などの大きな電圧が印加される場合、チッ化ガリウム系化合物半導体では順方向電圧でも150V程度で破壊されやすいという問題がある。
【0007】
これらの逆放向電圧や静電気の印加に対する破壊を防止するため、半導体発光素子が組み込まれる回路内で、半導体発光素子と並列で半導体発光素子と逆方向にツェナーダイオードを組み込むことが行われる場合もある。しかし、回路内に組み込まれる前の製造工程や出荷に伴う搬送工程、または回路基板に組み込む際などのハンドリング時に静電気で破壊したり、外部回路でLEDの他にダイオードなどを組み込むスペースや工数を必要とするという問題がある。
【0008】
一方、チップ型発光素子は、縦×横が1.6mm×2.5mm?0.8mm×1.6mm程度と非常に小形で、ダイオードなどを外付きで付属させるのは難しく、内蔵するにも横に並べて配置すると基板の横幅を大きくしなければならず、また一方の端子電極に縦に並べて配置するとLEDチップを基板の中央部に配置しにくいか、ダイオードのワイヤボンディングをLEDチップを跨いで行わなければならず、発光の邪魔になったりワイヤの接触が生じやすいという問題がある。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、小形で非常に薄型でありながら、逆方向電圧や静電気などのサージ電圧の印加に対して強く、取扱が容易なチップ型発光素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によるチップ型発光素子は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされる保護素子とからなり、前記第2の端子電極は、その一部が前記第1の端子電極の側部まで延び、発光素子チップの側部を超えて第1の端子電極が設けられた絶縁性基板の端部側に延びた延出部を有し、発光素子チップと保護素子とを結ぶ直線が絶縁性基板の両端部を結ぶ直線に対して斜めとなるように該延出部の先端部に前記保護素子がマウントされ、該保護素子は前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されている。
また、本発明によるチップ型発光素子の他の形態は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面の両端部に設けられる第1および第2の端子電極と、前記第1の端子電極にマウントされ、p側電極およびn側電極がそれぞれ前記第1および第2の端子電極と電気的に接続される発光素子チップと、前記第2の端子電極にマウントされ、前記発光素子チップに印加され得る少なくとも逆方向電圧に対して前記発光素子チップを保護するように前記第1および第2の端子電極の間に電気的に接続されるダイオードチップとからなり、前記第1の端子電極は前記発光素子チップがボンディングされる部分とワイヤボンディング用のパッド部とが分離するように形成され、前記第2の端子電極は前記ダイオードチップがボンディングされる部分とワイヤボンディングされるパッド部とが分離するように形成され、前記発光素子チップの前記第2の端子電極と接続する電極は前記第2の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、前記ダイオードチップの前記第1の端子電極と接続する電極は前記第1の端子電極のパッド部とワイヤボンディングにより接続され、発光素子チップの上面の高さがダイオードチップの上面の高さより高くなるように構成されている。
【0011】
ここに保護素子とは、発光素子チップに印加され得る逆方向電圧を短絡したり、発光素子チップの動作電圧より高い所定の電圧以上の順方向電圧をショートさせ得る素子を意味し、ツェナーダイオードやトランジスタのダイオード接続、MOSFETのゲートとソースまたはドレインとを短絡した素子またはこれらの複合素子、ICなどを含む。また、端子電極には発光素子が組み込まれる回路基板などと接続される電極部分と一体に形成されている金属部分のすべてを含む。
【0012】
この構造にすることにより、比較的チップ面積の大きいLEDチップが第1の端子電極上にマウントされ、保護素子が第2の端子電極にマウントされているため、LEDチップをチップ型発光素子のほぼ中心部に配置しながら保護素子を内蔵することができる。
【0013】
前記発光素子チップがチッ化ガリウム系化合物半導体からなり、前記保護素子がツェナーダイオードであれば、とくに逆電圧に弱く、また順方向でも高電圧の印加に弱いチッ化ガリウム系化合物半導体が用いられる青色系のチップ型発光素子において、逆電圧やサージ電圧などの印加に対して保護されるため好ましい。とくに保護素子としてツェナーダイオードが用いられることにより、発光素子チップに順方向にサージなどの高電圧が印加されてもツェナーダイオードのツェナー特性により、発光素子チップにダメージを与えることなく保護されると共に、通常の動作には何等の異常を来さない。ここにチッ化ガリウム系化合物半導体とは、III族元素のGaとV族元素のNとの化合物またはIII族元素のGaの一部がAl、Inなどの他のIII族元素と置換したものおよび/またはV族元素のNの一部がP、Asなどの他のV族元素と置換した化合物からなる半導体をいう。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しながら本発明の半導体発光素子について説明をする。
【0015】
本発明の半導体発光素子は、その一実施形態の平面および断面の説明図が図1に示されるように、絶縁性基板10の表面の両端部に第1および第2の端子電極1、2が設けられ、第1の端子電極1の一端部は絶縁性基板10の中央部付近まで延びている。そして、第1の端子電極1の先端部側にLEDチップ3がボンディングされている。LEDチップ3のn側電極39は第1の端子電極1と、p側電極38は第2の端子電極2と一体に形成されたパッド2aと、それぞれ金線4により接続されている。さらに、第2の端子電極2の先端部に保護素子であるツェナーダイオードチップ5がボンディングされ、第1および第2の端子電極1、2間にLEDチップ3と逆方向になるように電気的に接続されている。そして、その周囲が樹脂パッケージ6により覆われている。図1に示される例では、樹脂パッケージ6の外周にさらに反射ケース9が設けられている。
【0016】
絶縁性基板10は、たとえばガラスクロスに耐熱性のBT樹脂を含浸させたBTレジンなどの絶縁性の基板からなっている。また、LEDチップ3は、たとえば青色系(紫外線から黄色)の発光色を有するチップの一例の断面図が図3に示されるように形成される。すなわち、たとえばサファイア(Al2O3単結晶)などからなる基板31の表面に、GaNからなる低温バッファ層32が0.01?0.2μm程度、クラッド層となるn形層33が1?5μm程度、InGaN系(InとGaの比率が種々変わり得ることを意味する、以下同じ)化合物半導体からなる活性層34が0.05?0.3μm程度、p形のAlGaN系(AlとGaの比率が種々変わり得ることを意味する、以下同じ)化合物半導体層35aおよびGaN層35bからなるp形層(クラッド層)35が0.2?1μm程度、それぞれ順次積層されて、その表面に電流拡散層37を介してp側電極38が形成されている。また、積層された半導体層33?35の一部が除去されて露出したn形層33にn側電極39が設けられることにより形成されている。
【0017】
ツェナーダイオードチップ5は、通常のシリコン半導体などからなり、不純物濃度の高い半導体のpn接合に大きい逆方向電圧を印加すると電子がトンネル効果によってpn接合を通って流れる現象を利用したものである。この逆方向の電流が流れ始める電圧(ツェナー電圧)はその不純物濃度により設定される。したがって、このツェナー電圧をLEDチップ3の動作電圧より高い所定の電圧に設定しておき、LEDチップ3とツェナーダイオード5とが並列で逆方向になるように第1および第2の端子電極1、2に接続することにより、LEDチップ3の動作に支障を来すことはない。
【0018】
このLEDチップ3を図1に示されるように、第1の端子電極1の先端部にボンディングし、n側電極39およびp側電極38がそれぞれ第1の端子電極1および第2の電極2と一体に形成されたパッド部2aと電気的に接続されるように、金線4によりワイヤボンディングをする。また、ツェナーダイオードチップ5を第2の端子電極2の先端部にボンディングし、その正電極を第1の端子電極と一体に形成されたパッド部1aと金線4により電気的に接続する。このとき、負電極はダイボンディングの際の導電性接着剤により第2の端子電極2と電気的に接続されている。なお、LEDチップ3も上下両面にそれぞれn側電極およびp側電極が設けられる構造のものであれば、ツェナーダイオードチップ5と同様に一方の電極はワイヤボンディングによらなくても導電性接着剤により電気的に接続される。そして、絶縁性基板10の周囲に反射ケース9を形成し、その内部のLEDチップ3やツェナーダイオードチップ5を含めたこれらの周囲がLEDチップ3により発光する光を透過する透明または乳白色のエポキシ樹脂などによりモールドすることにより、樹脂パッケージ6で被覆された本発明のチップ型発光素子が得られる。
【0019】
図2は図1の変形例を示す図で、図1(a)と同様に樹脂パッケージの部分を除去した平面説明図である。この例は、第2の端子電極2の一部を第1の端子電極1の側部まで延ばし、その延出部2bにツェナーダイオードチップ5が設けられたものである。この構造にすることにより、第1のリード1とツェナーダイオードチップ5の正電極とを接続する金線4を短くすることができ、接触事故などを防止しやすい。すなわち、このような構造にしても、LEDチップ3が一方の第1の端子電極1に設けられ、ツェナーダイオードチップ5が他方の第2の端子電極2に設けられているため、LEDチップ3を絶縁性基板10のほぼ中央部に配置しながら保護素子5を内蔵することができる。
【0020】
本発明によれば、LEDチップとツェナーダイオードチップとがそれぞれ別々の端子電極にボンディングされているため、LEDチップがほぼ中央に配置されると共に、保護素子が内蔵された非常に小形のチップ型発光素子を実現できる。この保護素子が内蔵されたチップ型発光素子は、図4にその等価回路図が示されているように、LEDチップ3と並列にツェナーダイオードチップ5がその極性がLEDチップ3と逆になるように接続されている。そのため、LEDチップ3を駆動する電源が交流電源であっても、LEDチップ3に順方向の電圧になる位相のときは、ツェナーダイオードチップ5には逆方向電圧でツェナー電圧より低い電圧であるため電流は流れず、LEDチップ3に電流が流れて発光する。また、交流電源がLEDチップ3に逆方向の電圧になる位相のときは、ツェナーダイオードチップ5を介して電流が流れる。そのため、交流電圧がLEDチップ3に対して逆方向の電圧の位相となるときでも、LEDチップ3には逆方向の電圧は殆ど印加されない。また、静電気が印加される場合、その静電気がLEDチップ3の逆方向であればツェナーダイオードチップ5を介して放電し、LEDチップ3に順方向である場合はその電圧がツェナー電圧より高ければツェナーダイオードチップ5を介して放電するためLEDチップ3を保護し、ツェナー電圧より低ければLEDチップ3を介して放電するが、その電圧は低い電圧であるためLEDチップ3を損傷することはない。その結果、逆方向の電圧や静電気のサージに対して弱いLEDチップ3であってもLEDチップ3に高い電圧が印加されず、LEDチップ3を破損したり、劣化させたりすることがない。
【0021】
一方、本発明のチップ型発光素子では、LEDチップ3が第1の端子電極にボンディングされて、ツェナーダイオードチップ5は第2の端子電極2の空いている部分を利用してボンディングされているため、両方のチップを近付け過ぎて光を遮断したり(ツェナーダイオードの方が背が高いためすぐ隣に配置されるとその方向の光が遮断される)、ダイボンディング材の流れなどによる接触事故(両方のチップ間にダイボンディング材がセリ上がってショートする虞れがある)や、ワイヤボンディング不良の発生(端子電極上にダイボンディング材が流れるとワイヤボンディングをし辛くなったり、ワイヤボンディングをすることができなくなる)などを防止することができる。その結果、小形で超薄型の、しかも静電気や逆方向の電圧の印加に対して非常に強い保護素子が内蔵されたチップ型の発光素子が得られる。
【0022】
前述の例では、保護素子としてツェナーダイオードチップを用いたが、チップでなくてパッケージングされた製品状のものを使用してもよい。また、ツェナーダイオードでなくても通常のダイオードでも、LEDチップに対する逆方向の電圧に対して保護することができる。さらに、ダイオードでなくても、トランジスタをダイオード接続したものや、MOSFETのゲートとソースまたはドレインとを接続したもの、またはこれらを組み合わせてツェナーダイオードと同様に両方向に保護する複合素子またはICなど、ダイオードと同様にLEDチップを保護することができる素子であればよい。
【0023】
また、前述の例では、発光素子としてチッ化ガリウム系化合物半導体を用いた青色系の半導体発光素子であったが、チッ化ガリウム系化合物半導体はとくに逆方向の電圧や高電圧により破壊されやすいため効果が大きいが、これに限定されるものではなく、GaAs系、AlGaAs系、AlGaInP系、InP系などの赤色系や緑色系の発光素子についても、保護素子が設けられることにより同様に逆方向電圧や静電気に対して強い半導体発光素子が得られる。
【0024】
さらに、前述の例では、透明樹脂の部分に保護素子が設けられていたが、反射ケースの下に保護素子の少なくとも一部を設けるようにすれば、LEDチップからの光が遮られることなく上方に反射させることができる。また、保護素子の高さがLEDチップの高さより低くなるように、保護素子の下に凹部を形成して凹部内に保護素子をボンディングしたり、LEDチップの下にスペーサを介してLEDチップの上面が高くなるようにボンディングすることにより、保護素子による光の遮光の影響を少なくすることができる。
【0025】
さらに、前述の例では、LEDチップ3の周囲を被覆する樹脂パッケージ6の外周に反射ケース9を備えるタイプであったが、反射ケースを備えないで、LEDチップ3で発光する光に対して透明な樹脂だけで被覆する構造のチップ型発光素子であっても同様である。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、LEDチップと保護素子が別々の端子電極上にマウントされているため、LEDチップがほぼ中央に配置されて輝度を充分に保持しながら保護素子を内蔵した小形のチップ型発光素子が得られる。その結果、逆方向電圧の印加や静電気による高電圧の印加に対しても損傷することがなく、信頼性が大幅に向上する薄型の発光素子が得られる。また、素子内に内蔵されているため、半製品や製品の状態での取扱もアースバンドの使用や静電気除去の特別な注意を払う必要がなくなり、作業効率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の半導体発光素子の一実施形態の平面および断面の説明図である。
【図2】
図1の変形例を示す図である。
【図3】
図1のLEDチップの一例の断面説明図である。
【図4】
図1の半導体発光素子の接続関係の等価回路図である。
【図5】
従来のチップ型発光素子の一例の斜視説明図である。
【符号の説明】
1 第1の端子電極
2 第2の端子電極
3 LEDチップ
5 ツェナーダイオードチップ
10 絶縁性基板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-02-27 
結審通知日 2007-03-02 
審決日 2007-03-19 
出願番号 特願平9-204684
審決分類 P 1 113・ 113- YA (H01L)
P 1 113・ 121- YA (H01L)
P 1 113・ 537- YA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 吉田 禎治
吉野 三寛
登録日 2005-04-28 
登録番号 特許第3673621号(P3673621)
発明の名称 チップ型発光素子  
代理人 堀井 豊  
代理人 野田 久登  
代理人 酒井 將行  
代理人 仲村 義平  
代理人 深見 久郎  
代理人 深見 久郎  
代理人 酒井 將行  
代理人 森田 俊雄  
代理人 野田 久登  
代理人 堀井 豊  
代理人 仲村 義平  
代理人 森田 俊雄  

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