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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1157792
審判番号 不服2006-9629  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2007-05-17 
事件の表示 特願2004-374084「プラズマディスプレイパネルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年6月2日出願公開、特開2005-141244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年4月30日に特許出願された特願平9-112377号を基礎とする国内優先権主張に係る平成10年4月28日に出願した特願平10-118608号の特許出願の一部を、平成15年7月18日に分割出願した特願2003-276769号の、さらに分割した前記特許出願の一部を、平成16年12月24日に分割出願した特願2004-374084号であって、原審において平成17年12月26日付の拒絶理由を通知したところ、平成18年3月10日付の意見書及び同日付の特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正書が提出され、前記拒絶理由により平成18年4月4日付で拒絶査定がなされ、その後、前記拒絶査定を不服として平成18年5月11日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求の日から30日以内の平成18年5月31日に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成18年5月31日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年5月31日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成18年5月31日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成18年3月10日付の手続補正に基づいて補正された特許請求の範囲についての、
「【請求項1】 プラズマディスプレイパネルのガラス基板に形成された電極と複数のフレキシブル基板の電極とを連続した接着剤シートを介して重ね合わせ、上記ガラス基板の電極と上記フレキシブル基板の電極とを上記接着剤シートが上記フレキシブル基板の上記電極の延設方向と直交する方向にはみでた状態に接合し、上記ガラス基板の電極が形成された表面側の複数のフレキシブル基板上に、上記はみだした接着剤シートに接するように樹脂を連続して塗布するとともに、隣り合う複数のフレキシブル基板の間の上記接着剤シートに接するように樹脂を塗布し、その後、上記樹脂を硬化することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。」
の記載を、
「【請求項1】 プラズマディスプレイパネルのガラス基板に形成された電極と複数のフレキシブル基板の電極とを連続した接着剤シートを介して重ね合わせ、上記ガラス基板の電極と上記フレキシブル基板の電極とを上記接着剤シートが上記フレキシブル基板の上記電極の延設方向と直交する方向にはみでた状態で、かつ、はみだした接着剤シートで上記ガラス基板の電極と上記フレキシブル基板の電極の接続部分の上記ガラス基板の上記電極の延設方向と直交する方向の側面全てを覆うように接合し、上記ガラス基板の電極が形成された表面側の複数のフレキシブル基板上に、上記はみだした接着剤シートに接するように樹脂を連続して塗布するとともに、隣り合うフレキシブル基板の間の上記接着剤シートに接するように樹脂を塗布し、その後、上記樹脂を硬化することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】 上記はみだした接着剤シートが傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。」
と補正するものである。

2 本件補正についての検討
(1)本件補正が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否か、すなわち、同法第17条の2第1項第4号(拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内に補正するとき)の規定によりなされた特許請求の範囲についてする補正が、同法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的に該当する補正であるか否かについて検討する。

(2)当審の判断
ア 本件補正における請求項1(これを「新請求項1」という。以下同じ。)についての補正は、本件補正前の請求項1(これを「旧請求項1」という。以下同じ。)の「はみでた状態に接合し、」の発明特定事項を、「はみでた状態で、かつ、はみだした接着剤シートで上記ガラス基板の電極と上記フレキシブル基板の電極の接続部分の上記ガラス基板の上記電極の延設方向と直交する方向の側面全てを覆うように接合し、」と限定することにより、旧請求項1の前記発明特定事項を減縮するための補正であるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定されている「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

イ また、新請求項1についての本件補正における、旧請求項1の「隣り合う複数のフレキシブル基板の間」の記載を、「隣り合うフレキシブル基板の間」とする補正は、旧請求項1の前記「隣り合う複数のフレキシブル基板の間」の記載の冗長な記載を明りようにするための補正であるから、特許法第17条の2第4項第4号に規定されている「明りようでない記載の釈明」を目的とする補正に該当する。

ウ 新請求項2についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲に、新たな請求項2を設けることにより、本件補正前の特許請求の範囲に新たな請求項を増加させようとする補正(以下、これを「増項補正」という。)である。
しかしながら、本件補正における前記増項補正においては、本件補正前に旧請求項2という請求項は存在していないから、「本件補正前の当該旧請求項2(存在しない)に記載された発明」と「本件補正後の当該新請求項2に記載される発明」とが、本件補正の前後を通じて、1対1の関係にはないことが明らかである。
したがって、本件補正における前記増項補正は、特許法第36条第5項の規定により補正前の当該旧請求項2(存在しない)に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるとはいえないから、新請求項2についての本件補正は、特許法第17条の2第4項の第1号、第2号、第3号及び第4号に規定されているところの、
第1号:第三十6条第5項に規定する請求項の削除
第2号:特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
第3号:誤記の訂正
第4号:明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
のいずれの目的にも該当しない補正であることが明らかである。
したがって、本件補正における新請求項2についての補正は、特許法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的のいずれにも該当しない補正である。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合していない補正を含んでいるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、特許法第17条の2第4項についての補正の目的違反の判断に関しては、知的財産高等裁判所第3部の平成17年4月25日言い渡しの平成17年(行ケ)第10192号審決取消請求事件の確定判決文を参照されたい。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」欄に前述した理由により、平成18年5月31日付の手続補正が却下されたことにより、本願発明は、平成18年3月10日付の手続補正に基づいて補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(上記「第2」の「1 補正の内容」欄を参照)。
「【請求項1】 プラズマディスプレイパネルのガラス基板に形成された電極と複数のフレキシブル基板の電極とを連続した接着剤シートを介して重ね合わせ、上記ガラス基板の電極と上記フレキシブル基板の電極とを上記接着剤シートが上記フレキシブル基板の上記電極の延設方向と直交する方向にはみでた状態に接合し、上記ガラス基板の電極が形成された表面側の複数のフレキシブル基板上に、上記はみだした接着剤シートに接するように樹脂を連続して塗布するとともに、隣り合う複数のフレキシブル基板の間の上記接着剤シートに接するように樹脂を塗布し、その後、上記樹脂を硬化することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。」(以下、これを「本願発明1」という。)

2 引用刊行物
(1)原審における拒絶理由に引用された刊行物であって本願の国内優先権主張日前に頒布された特開平5-190612号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「熱圧着方法および圧着用部材」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】回路パターンを有するガラス基板に、回路パターンを有する少なくとも一個以上のフレキシブル回路基板を加圧ツールによって熱圧着し電気接続する圧着方法において、加圧ツールとフレキシブル回路基板の間に加圧単位に分割した平板部材を設けたことを特徴とする熱圧着方法。
【請求項2】複数個のフレキシブル回路基板を一括して圧着するための圧着用部材であって、平板部材の加圧部を個々のフレキシブル回路基板単位に分割したことを特徴とする圧着用部材。」
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、フレキシブル回路基板(以下FPCと呼ぶ)の熱圧着方法と、熱膨張に伴うFPCのずれを防止する為に用いられる圧着用部材に関するものである。
【0002】【従来の技術】 近年、OA機器の表示装置として、液晶ディスプレイや、プラズマディスプレイなどの、薄型表示装置の需要が多い。これら表示装置の駆動ICの実装方法として、フレキシブル回路基板を利用した、TAB(Tape Automated Bonding)実装がある。以下、従来のガラス基板へのFPCの実装方法について、図5?図16を参照しながら説明する。
【0003】 図5に、一例として、配線パターン12を有するガラス基板4にFPCフィルム2を異方性導電膜3により熱圧着する概略図を示す。通常ガラス基板4には、配線パターン12としてITOなどの透明電極や、アルミまたは、Crなどの金属薄膜が用いられる。
【0004】 異方性導電膜3としては、接着樹脂のフィルム中に導電材料を分散したものを使用する。導電材料としては、Niや半田の金属粒子、またはカーボン及びAuなどが金属皮膜された、プラスチック粒子が用いられている。接着材は、熱可塑系と熱硬化系に大別できる。熱可塑系接着剤としては、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン)などのスチレン系ブロックコポリマが使用されており、比較的低温で軟化することができることから、安定した接続作業が可能である。熱硬化系接着材としては、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリル樹脂等があり、熱可塑系の接着剤と比較すると、高温での安定性や、外部からの応力に強く、高い信頼性がある。異方導電膜3の厚みは通常10?40μm程度、幅2?3mmのテープ状のものが使用されている。
【0005】 FPC2は、ベースフィルムと呼ばれるポリイミドのフィルムにCuなどで配線されたものが使用される。ベースフィルムの厚みとしては、30?70μm程度のものが用いられ、Cuリードとしては、10?35μmのものがもちいられる。
【0006】 ガラス基板4へのFPC2の実装方法としては、まずガラス基板4の配線パターン12部に異方性導電膜3を、加圧、加熱して仮付けする。接着剤の種類により加熱温度は異なり、例えば熱可塑系の接着材であれば、80?140℃、熱硬化系の接着剤であれば、60?100℃の温度で加熱される。加圧力は、3?10Kgf/cm2である。
【0007】 次に異方性導電膜3を仮付けしたガラス基板4に、FPC2の電極を位置合わせして、重ね合わせた後、加圧ツール5によって、本圧着される。本圧着の加熱温度も接着材の種類によって異なり、熱可塑系で120?150℃程度、熱硬化系で、170?190℃である。加圧力は、20?60kgf/cm2で、20?30秒程度の間加圧される。
【0008】 熱圧着された結果、異方導電膜3の中の導電性微粒子は、FPC2の電極と、ガラス基板4の電極とに挟まれ、二つの配線は、導電性微粒子を仲介して、電気的に接続される。通常加圧後の導電微粒子は1?3μm程度までつぶすことにより、安定した接続が得られる。隣接した配線パターン間では、導電性微粒子は、樹脂中に分散しており、導電性はない。FPCの圧着状態を図9、図10に示す。」

そして、引用刊行物1の【図5】には、配線パターン12が形成されたガラス基板4の上に、テープ状の異方性導電膜3を介して、3個のフレキシブル回路基板FPC2が間隔を開けて配置され、それらを上方から加圧部材10、緩衝材13及び加圧ツール5からなる加圧手段により一括して加圧する熱圧着状態図が示されており、前記【図5】におけるテープ状の異方性導電膜3は、該異方性導電膜3の長さが3個のフレキシブル回路基板FPC2の巾の合計した長さよりも充分に長い状態で介在されていることからみて、ガラス基板4の電極と、テープ状の異方性導電膜3を介して重ね合わされる3個のフレキシブル回路基板FPC2の電極とは、前記テープ状の異方性導電膜3の両端部が複数のフレキシブル回路基板FPC2の配列方向にはみでた状態で電気的に接続されることが、前記【図5】の図示から看取できる。
そうすると、上記引用刊行物1における前記摘記事項及び添付図面における記載からみて、引用刊行物1には、次の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。
「プラズマディスプレイなどの薄型表示装置におけるITOなどの透明電極、アルミ又はCrなどの金属薄膜からなる配線パターン12を有するガラス基板4に、Ni、半田の金属粒子又はカーボン及びAuなどが金属皮膜されたプラスチック粒子からなる導電材料を熱可塑系又は熱硬化系の接着樹脂のフィルム中に分散した、厚みが10?40μm程度、幅が2?3mmのテープ状の異方性導電膜3を介して、ポリイミドのベースフィルムにCuなどで配線された配線パターン11を有する複数個のフレキシブル回路基板FPC2を一括して、加圧ツール5によって熱圧着して、ガラス基板4の電極とフレキシブル回路基板FPC2の電極とを電気接続する、ガラス基板4へのフレキシブル回路基板FPC2の実装方法において、
まずガラス基板4の配線パターン12部に異方性導電膜3を加圧加熱して仮付けし、
次に異方性導電膜3を仮付けしたガラス基板4にフレキシブル回路基板FPC2の電極を位置合わせして重ね合わせた後、加圧ツール5によって本圧着することにより、
複数のフレキシブル回路基板FPC2の電極とガラス基板4の電極とに挟まれ、前記テープ状の異方性導電膜3の両端部が複数のフレキシブル回路基板FPC2の配列方向にはみでた状態で、
ガラス基板4の電極と複数のフレキシブル回路基板FPC2の電極とが、
テープ状の異方導電膜3の中の導電性微粒子を介して電気的に接続される、プラズマディスプレイなどの薄型表示装置におけるガラス基板4へのフレキシブル回路基板FPC2の実装方法」

(2)原審における拒絶理由に引用された刊行物であって本願の国内優先権主張日前に頒布された特開平5-217501号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「表示パネルのリード接続法」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は表示パネルのリード接続法に関し、特に銀を含有するリードの接続端子のマイグレーションの発生を防止する表示パネルのリード接続法に関する。
【0002】【従来の技術】 近年、表示パネルは、グラフィックで高密度のものの需要が高まりつつある。しかし、給電用の電極接続端子が銀ペーストの厚膜プリント法で形成されているものでは、高密度になると、しだいに端子間距離が狭くなりマイグレーションの発生に対して不利となってきている。
【0003】 このような銀端子への接続は、従来、金属リードを半田付けするという方法で行われていたが、このような半田付は、熟練した作業者が必要であり、かつ、工数を要していた。従って、生産性向上の面から熟練した作業者が必要でなく、工数も低減可能な異方性導電物質を介したFPC(フレキシブル・プリント・サーキット)の熱圧着方式が注目されるようになってきた。
【0004】 図3(a)?(c)は従来のプラズマディスプレイパネルのリード接続法の一例を説明するリード接続部の平面図及びそのA-A′,B-B′線断面図である。
【0005】 図3(a)?(c)に示すように、バックックプレート2[当審注:「バックプレート2」の明らかな誤記と認める。]上に銀ペーストを用いて厚膜プリント法で形成された給電用銀電極端子3は、配列方向に延びた板状の異方性導電物質4を介してFPC6上に形成されたCu箔でできたFPCの電極リード5へ熱圧着される。
【0006】 その後、機械的強度と耐湿性を得るため補強ガラス板7を配置し、紫外線硬化型樹脂8で固定及び防湿コートしている。なお、耐湿性は、マイグレーションの耐性を向上させる。」

(3)原審における拒絶理由に引用された刊行物であって本願の国内優先権主張日前に頒布された特開平6-223896号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、「パネルの実装構造および実装方法」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】 この発明はパネルの実装構造および実装方法に関する。より詳しくは、例えば液晶,EL,プラズマ等の表示パネルのような周縁部に電極端子が配設されたパネルを実装する構造および方法に関する。」
「【0007】 そこで、この発明の目的は、液晶パネルのような周縁部に電極端子が配設された各種パネルを、小型軽量,高信頼性かつ低コストで実装できるパネルの実装構造および実装方法を提供することにある。」
「【0012】 また、少なくとも上記パネル周縁部と上記フレキシブル配線板とが重なっている箇所および上記フレキシブル配線板に搭載された駆動用ICは、所定の保護用樹脂で覆われているのが望ましい。」
「【0014】 また、この発明のパネルの実装方法は、片面の周縁部に沿って複数配設された電極端子を有するパネルの上記電極端子に、上記パネルを駆動するための駆動用ICを搭載したフレキシブル配線板を電気的に接続するとともに、上記フレキシブル配線板に、外部から与えられた信号を伝達する回路配線を電気的に接続するパネルの実装方法において、上記パネルの周縁部に、上記電極端子よりも下層に、上記周縁部に沿って延び、絶縁層を挟んで上記各電極端子と電気的に絶縁された回路配線を設けるとともに、上記回路配線と導通し、所定の箇所で上記絶縁層を貫通して上記電極端子と同一層をなす中継端子を設け、上記フレキシブル配線板の片面で、上記パネル周縁部の上記中継端子,電極端子と対応する箇所に、上記駆動用ICにつながる入力端子,出力端子を設け、上記パネルの周縁部と上記フレキシブル配線板とを対向させて、上記中継端子,電極端子と上記入力端子,出力端子とを位置合わせし、上記中継端子,電極端子と上記入力端子,出力端子とを異方導電材を介して電気的に接続することを特徴としている。」
「【0020】 また、前述のように本構造は信頼性が従来構造より高いが、少なくとも上記パネル周縁部と上記フレキシブル配線板とが重なっている箇所および上記フレキシブル配線板に搭載された駆動用ICは、所定の保護用樹脂で覆われている場合、上記パネル周縁部の中継端子,電極端子と上記フレキシブル配線板の入力端子,出力端子との接続箇所に、水分,NaCl,H2Sガスなどの有害物質が侵入するのが防止される。また、駆動用ICが強固に固定されて、駆動用ICのインナーリードが断線しにくくなるとともに、全体として、振動,衝撃に対する耐性が更に高まる。したがって、パネルの信頼性がより向上して、極めて苛酷な条件でも使用できる。」
「【0027】 実装にあたっては、液晶パネル20の周縁部とフレキシブル配線板4とを対向させて、上記中継端子45,電極端子3と上記入力端子44,出力端子42とをそれぞれ1対1で位置合わせする。そして、図3に示すように、上記中継端子45,電極端子3と上記入力端子44,出力端子42とを、異方導電材95を介して圧接または熱圧着する。これにより、上記中継端子45,電極端子3と上記入力端子44,出力端子42とを一括して電気的に接続する。また、図1に示すように、バスライン73のうち液晶パネル20のコーナー上の部分に、外部から駆動用の信号を供給するためのコネクタを接続する。また、入力端子44、出力端子42の接続は異方導電材95によっても良いが、半田や光硬化樹脂等その他の材料を使っても良い。」
「【0031】 また、図5(a),(b),図6(a),(b)に示すように、液晶パネル20の周縁部とフレキシブル配線板4,4′,…とが重なっている箇所や駆動用IC5を、従来構造ではクラックが入りやすく使用困難であった剛性の高いエポキシ系,紫外線硬化型の保護用樹脂6で強固に覆っても良い。もちろん、従来同様、シリコーン系の軟らかな樹脂で覆っても良い。なお、図5(a),(b)は図1のものに保護用樹脂6を設けた例、図6(a),(b)はパネル周縁部からはみ出たフレキシブル配線板を折り曲げたものに保護用樹脂6を設けた例を示している。上記樹脂6によって、端子同士45,44;3,42の接続箇所や駆動用IC5に対して水分,NaCl,H2Oガスなどの有害物質が侵入するのを妨げることができる。したがって、液晶モジュールの信頼性を高めることができる。また、図6(c)に示すように、液晶パネル20の周縁部上でフレキシブル配線板4を折り曲げて2つ重ねにし、フレキシブル配線板4全体を保護用樹脂6で覆っても良い。」
「【0037】 また、少なくとも上記パネル周縁部と上記フレキシブル配線板とが重なっている箇所および上記フレキシブル配線板に搭載された駆動用ICは、所定の保護用樹脂で覆われている場合、上記パネル周縁部の中継端子,電極端子と上記フレキシブル配線板の入力端子,出力端子との接続箇所に、水分,NaCl,H2Sガスなどの有害物質が侵入するのを妨げることができる。また、駆動用ICを強固に固定できることから、駆動用ICのインナーリードが断線しにくくなるとともに、全体として、振動,衝撃に対する耐性が更に高まる。したがって、パネルの信頼性を向上させて、極めて苛酷な条件でも使用することができる。」
「【0040】 また、この発明のパネルの実装方法では、上記パネル周縁部の中継端子,電極端子と上記フレキシブル配線板の入力端子,出力端子とを異方導電材を介して電気的に接続するので、端子同士を一括して接続でき、接続工程を1回で済ませることができる。したがって、工数を減少させて、コストを低下させることができる。」

3 対比
本願発明1と前記引用発明とを比較すると、引用発明における「プラズマディスプレイなどの薄型表示装置」において、ガラス基板4にフレキシブル回路基板FPC2が実装されたものをプラズマディスプレイパネルと表現することは、当業者において自明のことであることを参酌すれば、引用発明における「ガラス基板4のITOなどの透明電極、アルミ又はCrなどの金属薄膜からなる配線パターン12」、「複数個のフレキシブル回路基板FPC2にポリイミドのベースフィルムにCuなどで配線された配線パターン11」、「Ni、半田の金属粒子又はカーボン及びAuなどが金属皮膜されたプラスチック粒子からなる導電材料を熱可塑系又は熱硬化系の接着樹脂のフィルム中に分散した、厚みが10?40μm程度、幅が2?3mmのテープ状の異方性導電膜3」及び「プラズマディスプレイなどの薄型表示装置におけるガラス基板4へのフレキシブル回路基板FPC2の実装方法」のそれぞれは、本願発明1における「ガラス基板に形成された電極」、「複数のフレキシブル基板の電極」、「連続した接着剤シート」及び「プラズマディスプレイパネルの製造方法」のそれぞれに相当する。
そして、引用発明の「複数のフレキシブル回路基板FPC2の配列方向」と、本願発明1の「フレキシブル基板の上記電極の延設方向と直交する方向」とは同一の方向を意味していることは明らかであるから、引用発明の「複数のフレキシブル回路基板FPC2の電極とガラス基板4の電極とに挟まれ、前記テープ状の異方性導電膜3の両端部が複数のフレキシブル回路基板FPC2の配列方向にはみでた状態」は、本願発明1における「上記接着剤シートが上記フレキシブル基板の上記電極の延設方向と直交する方向にはみでた状態」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「プラズマディスプレイパネルのガラス基板に形成された電極と複数のフレキシブル基板の電極とを連続した接着剤シートを介して重ね合わせ、上記ガラス基板の電極と上記フレキシブル基板の電極とを上記接着剤シートが上記フレキシブル基板の上記電極の延設方向と直交する方向にはみでた状態に接合するプラズマディスプレイネルの製造方法」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点1:本願発明1では「上記ガラス基板の電極が形成された表面側の複数のフレキシブル基板上に、上記はみだした接着剤シートに接するように樹脂を連続して塗布するとともに、隣り合う複数のフレキシブル基板の間の上記接着剤シートに接するように樹脂を塗布し、その後、上記樹脂を硬化する」のに対し、引用発明では前記構成を有していない点。

4 相違点についての検討
(1)相違点1について
上記引用刊行物2〔特開平5-217501号公報〕には、「異方性導電物質を介したFPC(フレキシブル・プリント・サーキット)の熱圧着方式でなされた、プラズマディスプレイパネルのリードの接続端子のマイグレーションの発生を防止する表示パネルのリード接続法に関して、バックプレート2上に銀ペーストを用いて厚膜プリント法で形成された給電用銀電極端子3が、配列方向に延びた板状の異方性導電物質4を介してFPC6上に形成されたCu箔でできたFPCの電極リード5へ熱圧着され、機械的強度と耐湿性を得るために、さらに前記給電用銀電極端子3を紫外線硬化型樹脂8で固定及び防湿コートして、マイグレーションの耐性を向上させる」技術が記載されている。そして、引用刊行物2の【図3】の(a)?(c)の図示から、配列方向に延びた板状の異方性導電物質4に接するように、紫外線硬化型樹脂8がFPC6の表面及び裏面に連続して塗布されている記載が看取できる。
このように、バックプレート2(本願発明1の「ガラス基板」に相当する。)の給電用銀電極端子3が形成された表面側の複数のFPC6(本願発明1の「フレキシブル基板」に相当する。)上に、複数のFPC6の配列方向に延びた板状の異方性導電物質4(本願発明1の「連続した接着剤シート」に相当する。)に接するように紫外線硬化型樹脂8(本願発明1の「樹脂」に相当する。)を連続して塗布するとともに、隣り合う複数のFPC6の間の板状の異方性導電物質4に接するように紫外線硬化型樹脂8で固定及び防湿コートすることにより、マイグレーションの耐性を向上させる実装技術は、本願の国内優先権主張日前に頒布された刊行物に記載された発明である。
そして、引用刊行物2に記載の発明において、固定及び防湿コート用の樹脂として、紫外線硬化型樹脂8がコートされる以上、該紫外線硬化型樹脂8がコートされた後に、紫外線照射により硬化される工程を経ることとなるのは、当業者において自明の事項である。
また、上記引用刊行物3〔特開平6-223896号公報〕にも、「パネル周縁部の中継端子、電極端子とフレキシブル配線板の入力端子、出力端子とを異方導電材を介して端子同士を一括して電気的に接続接続できる、プラズマ等の表示パネルのような周縁部に電極端子が配設されたパネルを実装する方法に関して、パネル20のガラス基板2の周縁部とフレキシブル配線板4とを対向させて、上記中継端子45、電極端子3と上記入力端子44、出力端子42とをそれぞれ1対1で位置合わせし、上記中継端子45、電極端子3と上記入力端子44、出力端子42とを、異方導電材95を介して圧接または熱圧着することにより、上記中継端子45、電極端子3と上記入力端子44、出力端子42とを一括して電気的に接続し、さらにパネル20の周縁部とフレキシブル配線板4、4′、…とが重なっている箇所を、剛性の高いエポキシ系、紫外線硬化型の保護用樹脂6で覆うことにより、前記保護用樹脂6によって、端子同士45、44;3、42の接続箇所に対して水分、NaCl、H2Oガスなどの有害物質が侵入するのを妨げ、信頼性を高める」技術が記載され、そして、引用刊行物3の【図5】の(a)及び(b)には、保護用樹脂6が、パネル20の周縁部とフレキシブル配線板4、4′、…とが重なっている箇所を連続して塗布されることが図示されている。
上記引用刊行物3のかかる記載から、ガラス基板2(本願発明1の「ガラス基板」に相当する。)の中継端子45、電極端子3が形成された表面側の複数のフレキシブル配線板4(本願発明1の「フレキシブル基板」に相当する。)上に、異方導電材95(本願発明1の「接着剤シート」に相当する。)に接するように紫外線硬化型の保護用樹脂6(本願発明1の「樹脂」に相当する。)を連続して覆うことにより、端子同士45、44;3、42の接続箇所に対して水分、NaCl、H2Oガスなどの有害物質が侵入するのを妨げ、信頼性を高める実装技術は、本願の国内優先権主張日前に頒布された刊行物に記載された発明である。
そして、引用刊行物3に記載の発明においても、端子同士の接続箇所を覆う樹脂として紫外線硬化型の保護用樹脂6が採用されていることから、該紫外線硬化型の保護用樹脂6が塗布された後に、紫外線照射により硬化される工程を経ることとなるのは、引用刊行物2に記載の紫外線硬化型樹脂8の場合と同じく、当業者において自明の事項である。
そうすると、引用発明に、引用刊行物2及び引用刊行物3に記載されている発明を適用することにより、引用発明の「複数のフレキシブル回路基板FPC2の電極とガラス基板4の電極とに挟まれ、前記テープ状の異方性導電膜3の両端部が複数のフレキシブル回路基板FPC2の配列方向にはみでた状態」にあるテープ状の異方性導電膜3も、紫外線硬化型樹脂8又は紫外線硬化型の保護用樹脂6で塗布されることとなるから、本願発明1の相違点1に係る前記「上記ガラス基板の電極が形成された表面側の複数のフレキシブル基板上に、上記はみだした接着剤シートに接するように樹脂を連続して塗布するとともに、隣り合う複数のフレキシブル基板の間の上記接着剤シートに接するように樹脂を塗布し、その後、上記樹脂を硬化する」の構成とすることは、引用発明、並びに、引用刊行物2及び引用刊行物3にそれぞれ記載された発明に基いて、当業者が困難性を伴うことなく容易に想到し得ることである。

そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明、並びに、引用刊行物2及び引用刊行物3にそれぞれ記載された発明から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

(2)まとめ
したがって、本願発明1は、上記引用発明、並びに、引用刊行物2及び引用刊行物3にそれぞれ記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、上記引用発明、並びに、引用刊行物2及び引用刊行物3にそれぞれ記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-14 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-02 
出願番号 特願2004-374084(P2004-374084)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森内 正明
森口 良子
発明の名称 プラズマディスプレイパネルの製造方法  
代理人 青山 葆  
代理人 和田 充夫  

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