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審決分類 |
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B01D 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない B01D 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B01D 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない B01D 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正しない B01D 審判 訂正 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正しない B01D |
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管理番号 | 1158016 |
審判番号 | 訂正2005-39221 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2005-12-02 |
確定日 | 2007-06-01 |
事件の表示 | 特許第3597700号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.経緯 本件特許第3597700号は、平成10年4月27日に特許出願され、その設定登録後に特許無効審判が請求され、当該無効審判につき審決(送達日:平成17年8月12日)がなされ、平成17年9月7日に当該審決につき訴えの提起〔平成17年(行ケ)678号〕がなされ、平成17年12月2日付けで本件訂正審判請求書が提出され、その後、平成18年2月22日付けで訂正拒絶理由が通知されたところ、請求人より平成18年3月29日付けで当該訂正審判に係る手続補正書及び同日付けで意見書が提出されたものである。 II.平成18年3月29日付け手続補正の採否 II-1.補正事項 平成18年3月29日付け手続補正書は、審判請求書に添付された訂正明細書を、当該補正書で補正される審判請求書に添付された訂正明細書に記載のとおり補正しようとするものであり、この補正は、次の補正事項を含むものである。 以下、特許時の明細書を必要に応じて「特許明細書」といい、また、審判請求書に添付された訂正明細書を必要に応じて「訂正明細書」という。 【補正事項a】特許明細書の請求項1における、 「・・・、前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、・・・」につき、 「・・・、前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、・・・」に訂正するものを、 「・・・、前記個別の金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、・・・」に補正する。 【補正事項b】特許明細書の請求項1における、 「・・・、前記フィルタは、・・・、金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し、・・・」につき、 「・・・、前記フィルタは、・・・、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、・・・」に訂正するものを、 「・・・、前記フィルタは、・・・、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、・・・」に補正する。 【補正事項c】特許明細書の請求項1における、 「・・・、前記フィルタは、・・・、かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成されており、・・・」につき、 「・・・、前記フィルタは、・・・、かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており、・・・」に訂正するものを、 「・・・、前記フィルタは、・・・、かつ前記個別の金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており、・・・」に補正する。 【訂正事項d】特許明細書の請求項1における、 「・・・、金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により、・・・、金属製フィルタに対してフィルタを取り付け、レンジフードの換気口に装着できるフィルタ装置。」につき、 「・・・、個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、・・・、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき、排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置。」に訂正するものを、 「・・・、個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、・・・、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき、排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置。」に補正する。 II-2.補正についての判断 II-2-1.補正事項aについて 補正事項aは、具体的には、訂正明細書の請求項1における「前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり」との記載につき、その「前記金属製フィルタ要素」を「前記個別の金属製フィルタ要素」に補正するものである。 これによれば、「剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり」とされる物の対象物が、「前記金属製フィルタ要素」から「前記個別の金属製フィルタ要素」に置き換わったことになる。 更に、その訂正内容につき検討すると、当該補正事項aは、「前記金属製フィルタ要素」、すなわち、少なくとも単一の金属製フィルタ要素が上記の剛性で方形プレート状で挿入可能な形態を具備するとしていたところ、当該補正事項aにより、「個別の金属製フィルタ要素」、すなわち、それぞれの又は全ての金属製フィルタ要素が、上記の剛性で方形プレート状で挿入可能な形態を具備すると、実質上、置き換えられたものであるということができるものであり、また、当該補正事項は、少なくとも、そのように置き換える態様を含むものである。 してみれば、当該補正事項aは、訂正事項を変更し、更には、訂正内容を変更するので、訂正請求書の要旨を変更するといえる。 II-2-2.補正事項bについて 補正事項bは、具体的には、訂正明細書の請求項1における「前記フィルタは、・・・、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・被包」を、「前記フィルタは、・・・、かつ排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・被包」に補正するものである。 これによれば、当該訂正事項bは、フィルタが関連するところの「排気口のうち前記要素に対応する部分」を「排気口のうち前記要素に対応して通気する部分」に置き換えるものである。 更に、その訂正内容につき検討すると、補正事項bでは、当該部分が「通気する」ことを別途付加し、「対応」するところの対象が「部分」から「通気する」又は「通気する部分」に変移させるものである。 そうであれば、当該補正事項bは、訂正事項を変更し、更には、訂正内容を変更するので、訂正請求書の要旨を変更するといえる。 II-2-3.補正事項cについて 補正事項cは、具体的には、訂正明細書の請求項1におけるフィルタの形状につき、「前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に」を、「前記個別の金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に」に補正するものである。 これによれば、フィルタの形状が、「前記金属製フィルタ要素」に対応した相似形状から、「前記個別の金属製フィルタ要素」に対応した相似形状に置き換わったことになる。 更に、その訂正の内容を検討すると、当該補正事項cは、フィルタの形状が、「前記金属製フィルタ要素」、すなわち、少なくとも一の金属製フィルタ要素に対応して相似形状であるとしていたところ、当該補正事項cにより、フィルタの形状が、「個別の金属製フィルタ要素」、すなわち、それぞれの金属製フィルタ要素に対応して相似形状であると、実質上、置き換えられたものであるということができるものであり、また、当該補正事項は、少なくとも、そのように置き換える態様を含むものである。 してみれば、当該補正事項cは、訂正事項を変更し、更には、訂正内容を変更するので、訂正請求書の要旨を変更するといえる。 II-2-4.補正事項dについて 補正事項dは、具体的には、訂正明細書の請求項1における「・・・、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する・・・」を、「・・・、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応して通気する部分を部分的に覆う内方域に位置する・・・」に補正するものである。 これによれば、当該訂正事項dは、上記訂正事項bと同じように、フィルタが関連するところの「排気口のうち前記要素に対応する部分」を「排気口のうち前記要素に対応して通気する部分」に置き換え、更に、その訂正内容につき検討すると、当該部分が「通気する」ことを別途付加し、「対応」するところの対象が「部分」から「通気する」又は「通気する部分」に変移させるものである。 そうであれば、当該補正事項dは、訂正事項を変更し、更には、訂正内容を変更するので、訂正請求書の要旨を変更するといえる。 II-3.補正についての結論 上記補正事項a?dは、平成17年12月2日付け本件審判請求書の要旨を変更するものであって、特許法第131条の2第1項の規定を満たさないものであり、したがって、当該補正事項を含む平成18年3月29日付け手続補正は認めることはできない。 III.審判請求書の要旨 本件訂正審判請求は、特許明細書を、訂正明細書に記載のとおりに訂正することを求めるものであって、その訂正は、次の訂正イを含むものである。 《訂正事項イ》 特許明細書の請求項1における 「【請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって、前記金属製フィルタのフロント面をカバー可能なフィルタと、このフィルタの周縁部に取り付けられ、かつフィルタを、前記フロント面で緊張させて前記金属製フィルタに取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており、前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、前記フィルタは、不織布で構成されているとともに、金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し、かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成されており、金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、金属製フィルタに対してフィルタを取り付け、レンジフードの換気口に装着できるフィルタ装置。」を、 「【請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され、かつ複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバー可能なフィルタと、このフィルタの周縁部に取り付けられ、かつフィルタを、前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており、前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、前記フィルタは、不織布で構成されているとともに、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており、個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき、排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置。」に訂正する。 上記の訂正事項イは、具体的には、請求項1における、 訂正事項(イ-1)「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって、前記金属製フィルタの・・・、かつフィルタを、前記フロント面で緊張させて前記金属製フィルタに取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており、」を、 「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され、かつ複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって、個別の金属製フィルタ要素の・・・、かつフィルタを、前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており、」に訂正し、 訂正事項(イ-2)「前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、」を、「前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、」に訂正し、 訂正事項(イ-3)「前記フィルターは、・・・金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し、」を、「前記フィルターは、・・・個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、」に訂正し、 訂正事項(イ-4)「かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成されており、」を、「かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており、」に訂正し、 訂正事項(イ-5)「金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、金属製フィルタに対してフィルタを取り付け、レンジフードの換気口に装着できる」を、「個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき、」に訂正し、 訂正事項(イ-6)「フィルタ装置。」を、「排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置。」に訂正するものである。 IV.訂正拒絶理由及び請求人の主張 IV-1.訂正拒絶理由の概要 平成18年2月22日付け訂正拒絶理由は、以下の理由を含むものである。 【訂正拒絶理由1】上記訂正事項(イ-2)及び(イ-4)は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、ないしは、明りょうでない記載の釈明の何れを目的とするものにも該当せず、当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第1項ただし書きに規定される要件を満たし得ない。 【訂正拒絶理由2】上記訂正事項(イ-3)及び(イ-6)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものではなく、当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第3項に規定する要件を満たしていない。 【訂正拒絶理由3】上記訂正事項(イ-2)及び(イ-4)は、特許請求の範囲の請求項1で規定される内容を拡張するものであり、当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第4項に規定される要件を満たし得ない。 【訂正拒絶理由4】本件出願は、上記訂正事項(イ-3)及び(イ-6)の特定事項を有する点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。したがって、当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。 【訂正拒絶理由5】訂正明細書の請求項1及び2に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物である下記引用例5又は16に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。したがって、本件審判請求の訂正は特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。 【訂正拒絶理由6】訂正明細書の請求項1?3に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物である下記引用例1?16に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件審判請求の訂正は特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。 記 引用例1:実願昭60-146162号(実開昭62-56117号)のマイクロフィルム 引用例2:実公平6-11056号公報 引用例3:実願平3-31109号(実開平4-118119号)のマイクロフィルム 引用例4:実願昭55-127345号(実開昭57-50631号)のマイクロフィルム 引用例5:実願平1-69332号(実開平3-10136号)のマイクロフィルム 引用例6:実願昭54-127351号(実開昭56-46728号)のマイクロフィルム 引用例7:実願昭57-9656号(実開昭58-111821号)のマイクロフィルム 引用例8:実公昭54-45019号公報 引用例9:実願昭57-120218号(実開昭59-25029号)のマイクロフィルム 引用例10:特開平6-137622号公報 引用例11:実願平4-248号(実開平5-54941号)のCD-ROM 引用例12:実願平2-122840号(実開平4-78918号)のマイクロフィルム 引用例13:実願平2-8325号(実開平3-98922号)のマイクロフィルム 引用例14:特開平9-72589号公報 引用例15:特開平8-145428号公報 引用例16:特開平9-192428号公報 引用例17:「工業材料活用ハンドブック」、株式会社工業調査会、1989年1月25日、第142?145頁 IV-2.請求人の主張 請求人は、意見書等により下記甲第1?9号証を提出すると共に、審判請求書及び意見書おいて、本件訂正請求は特許法第126条第1項ただし書きに規定する要件を満たすとともに、特許法第126条第3項?第5項の規定に適合するものである旨主張する。 記 甲第1号証:「日本国語大辞典 第二版 第11巻」、株式会社小学館、2001年11月20日、第457頁 甲第2号証:「マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版」株式会社日刊工業新聞社、1996年9月30日、第534頁 甲第3号証:三菱電機株式会社のホームページ「商品紹介デルタキャッチ形レンジフードファンについて」、2006年3月13日 甲第4号証:インターネット検索、冨士工行株式会社、住山孝治著「レンジフードの最新動向と課題」 甲第4号証の2:「40年のあゆみ サステナブル社会に貢献する工業会活動」、キッチン・バス工業会、表紙と第1?3頁 甲第5号証:インターネット検索、「GREENHECK」TYPES OF COMMERCIAL KITCHEN VENTILATION HOODS 甲第6号証:インターネット検索、「US Appliance」Gaggenau 36”Coanda Wall Mount Hood 甲第7号証:平成18年3月24日、株式会社アーランド榎本晶仁作成による「試験成績証明書」 甲第8号証:「大漢語林」、株式会社大修館書店、平成4年4月25日、第177、178及び1261頁 甲第9号証:インターネット検索、「ガゲナウAH600-790レンジフード」ガゲナウ・ビルトイン機器総輸入販売元株式会社、2006年3月13日 V.訂正の適否の判断 V-1.訂正拒絶理由1(訂正の目的の適否)について V-1-1.訂正事項(イ-1)について 当該訂正事項(イ-1)は、具体的には、前段の「金属製フィルタ」を「複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタ」と訂正し、また、後段の「金属製フィルタ」(2箇所)を「個別の金属製フィルタ要素」と訂正するものであり、このように、当該訂正事項(イ-1)は、金属製フィルタにつきそれが複数の金属フィルタ要素からなることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 したがって、訂正事項(イ-1)は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する目的に該当する。 V-1-2.訂正事項(イ-2)について 当該訂正事項(イ-2)は、訂正前の当該特定事項にあっては、金属製フィルタが概念的には複数の金属製フィルタ(要素)を含み、その金属製フィルタが、剛性で方形プレート状に形成され、上下端部が排気口の溝ないしはスリットに挿入可能であったところ、訂正後の当該特定事項にあっては、金属製フィルタ要素のみが規定され、「個別」の金属製フィルタ要素と規定されないのであるから、複数の金属製フィルタ要素のうち一部の金属製フィルタは、剛性ではなく、方形プレート状ではなく、或いは、上下端部が溝ないしはスリットに挿入可能でない態様(例えば、側端部で別異の係止手段により係止可能)を含み得るものである。 このように、訂正前のものでは、金属製フィルタが複数の金属製フィルタからなる場合には、その全てが剛性で方形プレート状に形成され、上下端部が排気口の溝ないしはスリットに挿入可能であったところ、訂正後のものではそれを満たさない態様を含むことになるものである。 なお、訂正後の請求項1の記載では、「個別の金属製フィルタ要素」と「金属製フィルタ要素」とが使い分けられているものである。 そうであれば、上記(イ-2)の訂正は発明を拡張させることから、その訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、誤記又は誤訳の訂正、ないしは、明りょうでない記載の釈明を目的とするいずれのものにも該当しない。 V-1-3.訂正事項(イ-4)について 当該訂正事項(イ-4)は、訂正前の当該特定事項にあっては、金属製フィルタが概念的には複数の金属製フィルタ(要素)を含み、フィルタが、全て、金属フィルタに対応した相似形状の平面方形状であったところ、訂正後の当該特定事項にあっては、「個別の」金属製フィルタ要素と規定されないことから、一部のフィルタが相似形状の平面方形状を呈さないところの態様が含まれることになる。 このように、訂正後のものは、訂正前の特定事項を満たさない態様を含むことになる。 なお、訂正後の請求項1の記載では、「個別の金属製フィルタ要素」と「金属製フィルタ要素」とが使い分けられているものである。 そうであれば、当該訂正事項(イ-4)の訂正は発明を拡張させることから、その訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、誤記又は誤訳の訂正、ないしは、明りょうでない記載の釈明を目的とするいずれのものにも該当しない。 V-1-4.訂正の目的の適否の結論 以上のとおり、上記訂正事項(イ-2)及び(イ-4)は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、ないしは、明りょうでない記載の釈明の何れを目的とするものにも該当せず、当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第1項ただし書きに規定される要件を満たし得ない。 V-2.訂正拒絶理由2(新規事項の追加の有無)について V-2-1.訂正事項(イ-3)について 当該訂正事項(イ-3)は、具体的には、請求項1におけるフィルターのサイズにつき、「金属製フィルタのフロント面を被包可能な」ものを、「個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能な」ものに訂正するものである。 このように、当該訂正事項においては、「排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで」個別の金属製フィルタ要素を被包可能なとのことを請求項1の記載に付加するものである。 ところが、上記「排気口のうち前記要素に対応する部分」とはどのような部分をいうのか全く不明となっている。 すなわち、上記「排気口」はレンジフードの排気口を意味し、上記「要素」は金属製フィルタ要素を意味するものとしても、要素は全て排気口内に存在するものであるから、当該排気口と要素との関係から規定しようとする内容を把握することなどできない。 また、当該特定事項を除く請求項1に記載の発明ではレンジフードの排気口は複数存在するとは規定されないところ、上記特定事項は「排気口のうち・・・」と記載されるのであるから本件フィルタ装置においては排気口が複数存在することを前提としているようにも解されるものであり、当該特定事項は、請求項1の他の記載並びに当分野の技術常識とは整合しないものである。 更に、当該「排気口のうち前記要素に対応する部分」との特定事項が、「個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、」の特定事項の後段に記載されることからみて、上記「排気口のうち前記要素に対応する部分」とは、金属製フィルタ要素の裏面につき規定したものであると解したとしても、その場合も、当該特定事項を除く請求項1に記載の発明では、レンジフードの排気口に装着された金属製フィルタ要素の裏面にはフィルターと紐状体とが存在するだけであって、要素に対応する部分は見いだせず、金属製フィルタ要素の裏面につき、排気口のうち「要素に対応する部分」ないしは「要素に対応しない部分」とは、どのような部分であるか特定することなどできるものではない。 したがって、「排気口のうち前記要素に対応する部分」との箇所を特定することはできないものである。 なお、甲第1及び8号証の記載をみても当該特定事項の意味するところが明らかになるものでもない。 そうであれば、当該訂正により付加しようとする特定事項は不明瞭な事項を含むという外はなく、そのように不明瞭なものを含む特定事項の付加が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたといえるものではない。 なお、当該訂正事項のうち、「排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能な」が、「フィルタ(ないしは紐状体)が、金属製フィルタ要素におけるその裏面側の内方域を部分的に被包可能な」と訂正するものであると仮定しても、その特定事項は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載される事項から、自明なこととして導き出せない。すなわち、「フィルタが内方域を部分的に被包」とは「フィルタが内方域を完全に全部被包」する以外の形態の全ての被包の形態を包含するものであるところ、特許明細書又は図面では、「フィルタ2は、・・・金属製フィルタをカバー又は被包する」(段落0012)及び「フィルタ2は、各金属製フィルタ要素・・・をカバー又は被包可能な広さを有している。」(段落0014)と記載され、その第1図及び3図ではフィルタが金属製フィルタの裏面の特定領域を覆う例が示され、かつ、紐状体が収縮する等の構成を備えているとしても、それらのことからフィルタが内方域を「部分的に」被包するとの上記の広い概念を自明なこととして導き出すことができないし、また、そもそも、「内方域」との概念についても、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されずまた自明なこととして導き出すことはできないものである。 したがって、当該訂正事項の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができず、また、当該訂正部分が「フィルタ(ないしは紐状体)が・・・内方域を部分的に被包」することを意味すると仮定したとしても、その特定事項の訂正については願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができない。 V-2-2.訂正事項(イ-6)について 上記V-2-1.の箇所で記載した理由と同じ理由により、訂正事項(イ-6)の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたということができない。 V-2-3.新規事項の追加の有無の結論 以上のとおり、訂正事項(イ-3)及び(イ-6)の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものではなく、当該訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第3項に規定する要件を満たしていない。 V-3.訂正拒絶理由3(拡張・変更の存否)について 訂正事項(イ-2)及び(イ-4)は、上記V-1.で記載したとおり、特許請求の範囲の請求項1で記載される内容を拡張するものであり、これらの訂正事項を含む本件審判請求の訂正は特許法第126条第4項に規定する要件を満たしていない。 V-4.訂正拒絶理由4及び6について(独立特許要件の有無) 平成17年12月2日付け審判請求書における本件訂正のうち、まず、特許明細書の請求項1の上記訂正事項(イ-1)の訂正は前記したとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、このように、請求項1に関する本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的としてなされたものを含むので、以下に、訂正後の請求項1に係る発明につき独立特許要件の有無を検討する。 V-4-1.訂正拒絶理由4(特許法第36条第6項第2号の適否)について 上記V-2.における訂正事項(イ-3)及び(イ-6)の訂正についての箇所で記載したとおり、訂正後の請求項1における「前記フィルタは、・・・、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、」及び「排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する」との記載が、不明ないしは不明瞭であり、また、その意味するところが一義的に定まらない。 そうすると、特許を受けようとする訂正後の請求項1の発明が明確であるということができない。 したがって、訂正後の請求項1に係る発明につき、本件特許出願が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 V-4-2.訂正拒絶理由6(特許法第29条第2項の違反)について V-4-2-1.訂正発明 訂正明細書の請求項1には、以下のことが記載されている。 【請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され、かつ複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバー可能なフィルタと、このフィルタの周縁部に取り付けられ、かつフィルタを、前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されており、前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり、前記フィルタは、不織布で構成されているとともに、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており、個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき、排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置するフィルタ装置。」(以下、必要に応じて、「訂正発明」という) 上記V-4-1.で記載したとおり、訂正発明の特定事項である「前記フィルタは、・・・、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、」及び「排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する」についての記載が不明ないしは不明瞭であって、その意味するところが一義的に定まらないものであるが、本願の願書に添付された図1?3に記載された態様を規定しているものと仮定して、発明の進歩性の有無につき検討する。 V-4-2-2.引用例の記載 V-4-2-2-1.引用例3〔実願平3-31109号(実開平4-118119号)のマイクロフィルム〕の記載 (C-1)「[実用新案登録請求の範囲] [請求項1]レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部材の下面に着脱自在に装着されるフィルターであって、一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からなるシート状フィルターと、上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻き込み状態で係止させる係止部材とからなることを特徴とするレンジフード用フィルター装置。」(第2頁左欄第1?9行) (C-2)「ところで、この種のレンジフードは、例えば図5に示すように、該フードのハウジングに回転排気ファンを内蔵させると共に、ハウジングの下面に、前記ファンに臨む排気口をガスレンジに向かって開口してあり、該吸気口にはガード用金網等のフィルター部材が、吸気口を囲む開口周壁を覆う状態で張設され、金網等のフィルター部材を介して排気されるようになっている。 しかしながら、レンジフードは頻繁に使用されるために、上記金網等のフィルター部材のみで使用すると頻繁に洗浄が必要になり、金網内部に付着した油を洗浄除去するのが面倒であると共に、洗浄を怠って放置しておくと付着し凝固した油が滴状となってガスレンジ上に落下するという不衛生な事態をまねく問題があった。」(第4頁第13?23行) (C-3)「一方、この様な問題を解決するものとして不織布によるフィルター面を形成したアルミニューム枠体をレンジフードの吸気口に着脱自在に装着して、アルミニューム枠体ごと使い捨てにしたフィルターが提案されており、業界内で浅型と称されるレンジフードが利用されている。 [考案が解決しようとする課題] しかしながら、この提案のフィルターは、浅型のレンジフードには適用可能であるが、深型のレンジフードのフィルターに使用すると、深型のレンジフードはフード自体が大型であり、しかもデザインを重視した製品であるので、外部に露出して取り付けることはデザインを低下させるため、フードの内部に収める必要があり、フードの内面に沿って取り付けるのが面倒であった。」(第4頁下から第5行?第5頁第6行) (C-4)「本考案は、上記従来および提案のレンジフード用フィルターの問題に鑑みて成されたものであり、深型のレンジフードの金網製フィルター部材を利用して取り付けることができる簡便でかつ安価な使い捨て式のレンジフード用フィルターを提供することを目的とするものであり、レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部材の下面に着脱自在に装着されるフィルターであって、一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からなるシート状フィルターと、上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻き込み状態で係止させる係止部材とからなることを特徴とするレンジフード用フィルター装置である。」(第5頁第14?22行) (C-5)「なお、図1から図4に示した本考案のレンジフード用フィルター装置Aは、いずれもシート状フィルター2を下面側にして図5に示すように、深型のレンジフードBの吸気口に、金網製のフィルター部材4とともにフード内面の係止金具等10を利用して着脱自在に係止させて使用される。 また、油煙の吸着によってシート状フィルター2が汚れると、金網製フィルター部材4をフード内面から一旦取り外してシート状フィルター2を除去し、ついで新たなシート状フィルター2と係止部材3を前記フィルター部材4に装着して、レンジフードに再び取り付ける。なお、油煙で汚れたシート状フィルター2は、不織布製の柔軟なものであるので小さく丸めて日常のゴミとともに廃棄することができる。」(第7頁下から第5行?第8頁第6行) V-4-2-2-2.引用例4〔実願昭55-127345号(実開昭57-50631号)のマイクロフィルム〕の記載 (D-1)「キッチン用レンジフード換気扇の前面カバーのガード(金属製のさく)第3図を網袋(ナイロンネット)で包み込みネジ止めする事に依って本体の換気扇第2図及び換気扇をとり囲んでいる箱第1図eに油汚れ等をつきにくくする事を特徴とする。」(第1頁第4?10行) (D-2)「そこで本考案の網袋(ナイロンネット)使用のフィルターであるがガード第3図を網袋で包み込む事によって二重のフィルターとなり、しかもネットであるので排気力もおとさず、しかもネットが汚れを充分吸収して、換気扇への汚れを遮断出来る。」(第2頁第17行?第3頁第2行) V-4-2-2-3.引用例5〔実願平1-69332号(実開平3-10136号)のマイクロフィルム〕の記載 (E-1)「実用新案登録請求の範囲 1.換気口に取付けられる換気扇カバーであって、該換気扇カバーが、フィルタと、該フィルタの周縁部に設けられ、かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有することを特徴とする換気扇カバー。 2.換気口に着脱自在に取付けられた長尺状支持部材により、請求項1記載の換気扇カバーが支持された状態で取付けられていることを特徴とする換気扇カバーの取付構造。」(第1頁第4?13行) (E-2)「しかしながら、換気扇が取付けられた換気口は、効率的に換気するため、換気部の容積や換気量等に応じて種々の大きさに設定されている。例えば、家庭の台所用換気扇、レンジフード用換気扇や業務用換気扇等では、自ずから換気量が異なり、換気量に応じた大きさの換気口が必要である。従って、上記構造の換気扇カバーでは、大きさの異なる換気口に対処できず、多種類の換気扇カバーを用意する必要がある。また上記換気扇カバーは、その構造が複雑で、枠体等を必要とするため、コスト高となる。 上記の点に鑑み、ウーリーナイロン製の筒状の生地のうち一方の開口部を結束し、他方の開口部の周縁部を袋状とし、該袋状部にゴム紐を通した換気扇カバーが提案されている(実開昭59-25029号公報参照)。 一方、換気扇は、換気口の前面が遮蔽部材で遮蔽されたタイプの換気扇と、換気口の前面が遮蔽されていない開口状態のタイプの換気扇とに大別される。また前者のタイプの換気扇としては、汚れた羽根を遮蔽し、美観をよくするため、換気口の前面が美装パネル等の遮蔽部材で覆われ、該パネルの側方開口部から吸引する換気扇や、換気口の前面が横方向等に並設された格子部材からなる遮蔽部材で遮蔽された換気扇が知られている。しかしながら、このタイプの換気扇に前記従来の換気扇カバーを適用すると、結束部を有しているため、外観が著しく損なわれる。 また後者のタイプの換気扇に適用すると、フィルタがナイロン製生地で形成されているため、換気扇の吸引力により、換気扇カバーが換気扇に吸込まれ虞がある。従って、換気扇の羽根が損傷したり、モータの負荷が増大したり、故障したりする原因ともなり、排気が阻害される場合がある。さらには、ナイロン製生地で形成されたフィルタは燃え易く、安全性が十分でない。」(第2頁第5行?第3頁末行) (E-3)「本考案の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、換気口の大きさが異なっていても、容易に取付けることができる安価な換気扇カバーを提供することにある。 また本考案の他の目的は、換気扇の前面が遮蔽されているか否かに拘わらず、柔軟なフィルタであっても外観が良好で換気扇へ吸込まれることのない換気扇カバーの取付構造を提供することにある。」(第4頁第1?8行) (E-4)「上記構成の換気扇カバーによれば、フィルタの周縁部には、該周縁部を収縮可能な紐状体が設けられているため、換気口を換気扇カバーで被冠し、・・・紐状体を収縮性材料で形成することにより、換気口の大きさが異なっていても換気扇カバーを容易に取付けることができる。」(第4頁第15?末行) (E-5)「換気扇カバーは、フィルタ(1)と、該フィルタ(1)の周縁部に設けられた収縮性紐状体(2)とを有してい。より詳細には、フィルタ(1)は、その中央部を余した周縁部が全周に亘り内方へ折曲され、開口部(4)を有する袋状に形成されている。」(第5頁末行?第6頁第4行) (E-6)「なお、フィルタ(1)は、通気性を有する材料で形成されていればよいが、難燃性不織布で形成されているのが好ましい。」(第6頁第4?7行) (E-7)「またフィルタ(1)のうち開口部(4)の周縁は、フィルタ(1)と固着又は縫合することにより、環状挿通孔(3)が形成されている。この環状挿通孔(3)には、フィルタ(1)の周縁部の長さよりも短く、収縮性を有する材料、例えば、合成ゴム等からなる環状の紐状体(2)が配されている。」(第6頁第14?末行) (E-8)「上記構造の換気扇カバーによると、換気口の前面が遮蔽部材等で遮蔽された換気扇に適用する場合には、紐状体(2)を伸張させ、開口部(4)を大きくした状態で、換気口(5)を換気扇カバーで被冠し、換気口(5)の枠部材(6)の端部等に紐状体(2)を掛止した状態で紐状体(2)を解放することにより、換気扇カバーを容易に取付けることができる。また取付け状態においては、フィルタ(1)が上記遮蔽部材により支持されるので、柔軟なフィルタ(1)であっても、換気扇(7)の吸引力によりフィルタ(1)が換気口(5)に吸引されることがない。さらには、フィルタ(1)の中央部が取付状態において平面部(1a)を形成するので、換気口のフィルタ(1)は面一となり、美観を損ねることはない。なお、フィルタ(1)の大きさや紐状体(2)の伸縮力を調整することにより、異なる大きさの換気口(4)にも容易に取付けることができる。」(第7頁第1?17行) (E-9)「また伸縮性紐状体(2)は、環状挿通孔(3)に収容された状態で配されている必要はなく、縫合等の適宜の手段によりフィルタ(1)の周縁部と少なくとも部分的に一体に設けてもよい。」(第9頁第14?17行) V-4-2-3.対比・検討(引用例5に記載される発明との対比) 引用例5には、換気扇カバーとその取付構造に関する事項が記載されており、その具体的な構成につき検討する。 引用例5の前記摘示(E-1)では、「換気口に取付けられる換気扇カバーであって、該換気扇カバーが、フィルタと、該フィルタの周縁部に設けられ、かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有する換気扇カバー」が示される。 そして、引用例5の前記摘示(E-2)で「レンジフード用換気扇・・・換気量に応じた大きさの換気口が必要である。・・・・多種類の換気扇カバーを用意する必要がある。」と記載され、また、前記摘示(E-3)で「本考案の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、換気口の大きさが異なっていても、容易に取付けることができる安価な換気扇カバーを提供することにある。」と記載され、これらの記載によれば、そこで記載される換気扇カバーはレンジフード用換気扇に取付けるものを含むものである。 また、当該フィルタは、前記摘示(E-6)によれば、不織布で形成されているものであり、当該収縮可能な紐状体は、前記摘示(E-7)によれば、合成ゴム等からなる環状の外形を有するものである。 以上のことから、引用例5には、 「換気口に取付けられるレンジフード用換気扇カバーであって、該換気扇カバーが、不織布からなるフィルタと、該フィルタの周縁部に設けられ、かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー」に関する発明(以下、適宜、「引用例5発明」という)が記載されているということができる。 そこで、訂正発明と引用例5発明とを対比する。 引用例5発明の「換気扇カバー」、「フィルタ」、「収縮可能な環状紐状体」、「換気口」は、訂正発明の「フィルタ装置」、「フィルタ」、「リング状伸縮性紐状体」、「排気口」にそれぞれ相当する。 よって、両者は、 「フィルタ装置であって、フィルタと、このフィルタの周縁部に取り付けられるリング状伸縮性紐状体とで構成され、前記フィルタは、不織布で構成されている、レンジフードの排気口に装着できるフィルタ装置」である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点A】フィルタ装置が、訂正発明では、「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され、かつ複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うための」ものであるのに対して、引用例5発明では、レンジフードの換気口に取り付けられるものの、上記事項が明示されない点 【相違点B】当該フィルタが、訂正発明では、「個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバー可能な」ものであるのに対して、引用例5発明では、そのことが示されず、当該事項が明示されない点 【相違点C】当該リング状伸縮性紐状体が、訂正発明では、「フィルタを、前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるための」ものであるのに対し、引用例5発明では、金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず、当該事項が明示されない点 【相違点D】当該金属製フィルタ要素につき、訂正発明では、「前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されているとともに、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である」とするのに対して、引用例5発明では、金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず、また、そのような使用法が示されず、当該事項が明示されない点 【相違点E】当該フィルタにつき、訂正発明では、「前記フィルタは、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており、個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき、」とするのに対して、引用例5発明では、金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず、当該事項が明示されない点 【相違点F】当該フィルタ装置につき、訂正発明では、「排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する」とするのに対して、引用例5発明では、金属製フィルタないしは金属製フィルタ要素が示されず、当該事項が明示されない点 以下、上記相違点A?Fに関する事項が容易に想到できるか否かにつき検討する。 【相違点A及びBについて】 引用例5発明におけるレンジフード用換気扇カバーは、その換気扇の換気口に取付けられ、したがって、当該カバーのフィルタは換気口を覆うものであり、また、当該カバーは、その用途からみて明らかなように調理用排ガスを浄化するために用いられるものである。 一方、レンジフードの分野においては、フード内の排気口の位置に、剛性で四角形板状の金属フィルタ(訂正発明の「金属製フィルタ」及び「金属製フィルタ要素」に相当)を着脱自在に設け、かつ、その金属フィルタの表面側を不織布からなるフィルタで覆うことは、本件出願前の周知・慣用技術[必要ならば、引用例13(第1頁第5?17行、第5頁第12?16行、第7頁下から第3行?第8頁第7行、第9頁第9?14行及び第5図及び第9図)、引用例3〔前記(C-4)、(C-5)及び図5〕、等の記載を参照]となっており、この周知・慣用技術においては、そのフィルタは、「レンジフードのフード内の排気口の位置に着脱自在に設けられた剛性で四角形板状の金属フィルタにつき、その表面側を覆う」という使用形態で用いられるということができる。 そして、当該周知・慣用技術におけるフィルタは、引用例5発明のものと同じように、調理用排ガス処理機器の排出口部位において調理用排ガスを浄化する目的で用いられることは明白なことであり、また、それは、引用例5発明のものと同じように不織布という材料からなるものである。 更に、レンジフードの分野においては、フード内の排気口の位置に設けられる金属フィルタを複数個で構成することは、本件出願前における周知事項[必要ならば、引用例3〔前記(C-4)、(C-5)及び図5〕、引用例14(第2頁左欄第43行?右欄第10行、5頁左欄第38?42行、第5頁右欄第12?14行及び図8)、引用例15(段落0014、0015、0017及び図2)、等を参照]に外ならない。 そうであれば、引用例5発明の「不織布からなるフィルタと、該フィルタの周縁部に設けられ、かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー」を、使用目的及び使用材料が共通する上記周知・慣用のフィルタの使用形態で用いること、すなわち、「レンジフードのフード内の排気口の位置に着脱自在に設けられた剛性で四角形板状の金属フィルタにつき、その表面側を覆う」という使用形態で用いることに何等の困難も伴わないものであり、そして、その場合、上記周知事項の教示に従いフード内に当該金属製フィルタを複数個設けること、また、当該カバーで複数の金属フィルタを個別に覆うようにすることは当業者であれば直ちに想到することができるものである。 この場合、調理用排ガスを浄化する目的で当該カバーで当該金属フィルタを個別に覆うのであるから、当該カバーのフィルタにより金属フィルタのフロント面を個別にカバーするように覆うこと、すなわち、個別の金属フィルタのフロント面をカバー可能なフィルタとすることは、当業者であれば当然のこととしてなし得るものである。 以上のことから、引用例5発明の当該カバーを、「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設された、複数の金属フィルタで構成された金属フィルタを覆う」ためのものとすること、引用例5発明のカバーのフィルタを、「個別の金属フィルターのフロント面をカバー可能」なものとすることは当業者が直ちに想到できるものである。 してみれば、甲第5号証発明において、そのカバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いることにより、また、上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い、上記相違点A及びBに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が直ちに想到できるものである。 【相違点Cについて】 上記相違点A及びBについての箇所で説示したとおり、引用例5発明において、そのレンジフード用換気扇カバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いることにより、また、上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い、当該カバーで個別の金属フィルタのフロント面をカバーするように覆うことは当業者が容易に想到できるものである。 そして、引用例5発明の当該カバーは、その前記摘示(E-5)及び第1図の記載からみて明らかなように浅い袋状の外観を呈し、かつ、前記摘示(E-8)により、その袋の出口部に設けられた伸縮可能な環状紐状体の収縮力により物品(換気口)に取り付けられるものであり、そしてまた、上記したとおり金属フィルタは板状の外観を呈するものである。 してみれば、引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにする場合には、必然的に、カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い、かつ、カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され、これにより、更に必然的に、カバーのフィルタは個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり、かつ、裏面に位置する環状紐状体の収縮力で、フィルタが、金属フィルタのフロント面で緊張されて、金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである。 また、そのようにすることは、引用例1に記載の技術からみても困難なく適宜実施できるものである。すなわち、引用例1において、筒織裁断物とその廻りに配置したゴム体からなるフィルター(実用新案登録請求の範囲を参照)を、ガードに取り付ける場合には、当該筒織裁断物をガードのフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面に至るようになし、かつ、当該ゴムをガードの裏面に位置させる(第6及び7図を参照)ようにすることが、実質上、記載されるものであり、このように、繊維製フィルタ(筒織裁断物)と伸縮性紐状体(ゴム体)からなるフィルターを略板状物品(ガード)に取り付ける場合には、繊維性フィルタを、板状物品のフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面にまで伸びるように配置し、かつ、伸縮性紐状体を板状物品の裏面に配置させる構造が教示されるのであるから、上記のように、引用例5発明のカバーを個別の金属フィルタに適用する場合には、カバーのフィルタが金属フィルタの前面を覆ったうえでその裏面に至るようになし、かつ、その環状紐状体を金属フィルタの裏面に配置させることとなし、これにより、カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面を被包し、かつ、金属フィルタの裏面に位置する環状紐状体の収縮力で、フィルタを金属フィルタのフロント面で緊張させて金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けるようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 このように、引用例5発明のレンジフード用換気扇カバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いることにより、また、上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い、個別の金属フィルタのフロント面をカバーするように覆うようにした場合において、その収縮可能な環状紐状体を、「フィルタを、前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるための」ものとすることは、自ずと導き出されるものであり、少なくとも、当業者が困難なく適宜なし得るものである。 してみれば、引用例5発明において、相違点A及びBに係る特定事項に加えて、上記相違点Cに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 【相違点Dについて】 上記相違点A及びBについての箇所で説示したとおり、引用例5発明において、そのレンジフード用換気扇カバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いることにより、また、上記の周知事項である金属フィルタを複数個で構成するとの教示に従い、当該カバーで個別の金属フィルタのフロント面をカバーするように覆うことは当業者が容易に想到できるものである。 この場合、当該周知・慣用の技術の使用形態においては、金属フィルタは剛性で四角形板状に形成されているものである。 そして、金属フィルタの如きフィルタ部材をレンジフードの排気口に設置する場合、排気口の上下部に設けた溝に挿入することにより同部材を取付けることは、本件出願前に周知・慣用事項〔必要ならば、引用例13(第2頁第7?16行及び第9図)、引用例14(第2頁左欄第43行?右欄第10行、第5頁左欄第38?42行、第5頁右欄第7?14行及び図8)等の記載を参照〕となっている。 してみれば、引用例5発明において、そのカバーを上記周知・慣用技術の使用形態で用いるときには、被カバー部材である金属フィルタが剛性で方形プレート状に形成することは当然のこととして具備するものであるし、また、その金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し、フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する上記周知・慣用事項を適用し、「金属フィルタは、上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である」とすることに何らの困難も伴わない。 したがって、引用例5発明において、上記相違点A?Cに係る特定事項に加えて、当該相違点Dに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 【相違点Eについて】 [前記フィルタは、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し]との特定事項aについて 上記相違点Cについての箇所で説示したとおり、引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には、必然的に、カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い、かつ、カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され、これにより、更に必然的に、カバーのフィルタは個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり、かつ、裏面に位置する環状紐状体の収縮力で、フィルタが、金属フィルタのフロント面で緊張されて、金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである。また、そのようにすることは、引用例1に記載の技術からみても困難なく適宜実施できるものである。 この場合、当該フィルタは、金属フィルタの裏面に配置する環状紐状体の収縮力により、少なくとも金属フィルタの周縁部を含む裏面の一部を覆い、被包することになるものである。 そして、カバーのフィルタが金属フィルタを上記の如く覆い被包する場合において、当該フィルタが金属フィルタの裏面を覆う範囲(ないしは被包程度)に関し、訂正発明のように「前記フィルタは、・・・、個別の金属フィルタの裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属フィルタを被包可能なサイズを有し」とすることは当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎないものである。 すなわち、(1)フィルタが金属フィルタの裏面の中央位置(ないしは中心位置)まで覆うように被包すれば、金属フィルタの表裏に二重に存在するフィルタにより排ガスの浄化程度を高進させることができ、フィルタの装着をより確実なものとすることができる等の利点がある反面、フィルタを表裏二重に配することからフィルタ材料を多く消費し、単位面積単位時間当たりの排ガス処理量を減ずる虞がある等の欠点が生ずるものであり、一方、フィルタが金属製フィルタ要素の裏面の周端部のみを覆うように被包すれば、消費するフィルタ材料が節約でき、排ガス処理量を減ずる虞がなくなる利点がある反面、その裏面での汚れ除去が低減し、フィルタの装着がより不完全なものとなる虞が生ずる等の欠点が生じ易いものであり、以上のことは当業者にとって自明なこととして把握できるものであり、ないしは、極めて容易に予測できるものである〔なお、更に必要であれば、排気口でフィルタを表裏二重に配置することの利点等については、引用例4の前記(D-2)、等を参照し、また、被包の態様については、引用例1の第6及び7図と引用例4の第4図、等を参照されたい。〕。(2)そうであれば、カバーのフィルタが金属フィルタを上記の如く覆い被包する場合において、その被包する範囲については、排ガスの浄化性、フィルタ材料の節約性、フィルタの装着性等を考慮して適宜設定できる設計事項に外ならないものであり、したがって、訂正明細書の第1図又は第3図で示される如き金属製フィルタ要素の裏面の領域を被包できるように、フィルターサイズないしは被包するところの金属製フィルタ要素のサイズを設定して、訂正発明の上記特定事項を具備するようにすることに何等の困難も伴わない。 また、上記相違点Cについての箇所で説示したとおり、引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにする場合には、「カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面をカバー」するに至ることは明白なことである。 そうすると、引用例5発明において、相違点A?Dに係る特定事項に加え、当該特定事項aを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており]との特定事項bについて 一般に、板状体を柔軟シート体で被包する場合には、該シート体と該板状体との平面形状が不一致であると、被包後に該シート体と該板状体との間に不必要な空間が発生したり、体裁が損なわれたり、また、該板状体に対して該シート体の材料に過不足が発生するなどの不都合が生ずるものであり、このことは、その該シート体に収縮性紐状体が取り付けられているか否かにかかわらず、当業者が自明なこととして把握できる。 してみれば、引用例5発明のカバーのフィルタで金属フィルタのフロント面を被包する場合には、上記不都合を避けるために、カバーのフィルタの形状を(紐状体を取り付ける前の形状を)、金属フィルタの四角形、すなわち、方形状にあわせて、訂正発明のように「個別の金属フィルタに対応した相似形状の平面方形状」に形成することは、当業者が当然のこととして実施し得るものであり、むしろそのようにしないことの方が不自然でさえある。 そうすると、引用例5発明において、相違点A?Dに係る特定事項及び上記特定事項aに加え、当該特定事項bを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき]との特定事項cについて 上記相違点Cについての箇所で説示したとおり、引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には、カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され、カバーのフィルタは金属フィルタの前面を被包することになるものである。 そして、そのようにカバーの伸縮可能な環状紐状体が金属フィルタの裏面に配置され、カバーのフィルタは金属フィルタの前面を被包することになれば、必然的に、その裏面に配置された当該環状紐状体の収縮により、前記金属フィルタのフロント面の当該フィルタには緊張力又は牽引力が作用するようになるものであって、その作用の下に当該フィルタが金属フィルタに取付けられることになる。その結果、上記相違点Dについての箇所で記載したとおり、金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し、フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する周知・慣用事項を適用した場合においては、当該フィルタは金属フィルタによりレンジフードの排気口に装着できるようになるものである。 そうすると、引用例5発明において、相違点A?Dに係る特定事項及び上記特定事項aとbに加え、当該特定事項cを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 【相違点Fについて】 上記相違点Cについての箇所で説示したとおり、引用例5発明の袋状のカバーを板状の個別の金属フィルタに適用して金属フィルタのフロント面を覆うようにした場合には、必然的に、カバーのフィルタは金属フィルタのフロント面の全てを覆い、かつ、カバーの伸縮可能な環状紐状体は金属フィルタの裏面に配置され、これにより、更に必然的に、カバーのフィルタは個別の金属フィルタのフロント面を被包することになり、かつ、裏面に位置する環状紐状体の収縮力で、フィルタが、金属フィルタのフロント面で緊張されて、金属フィルタに個別に固定ないしは取り付けられるに至るものである。また、そのようにすることは、引用例1に記載の技術からみても容易に導き出せるものである。 この場合、引用例5発明の環状紐状体は、そのフィルタと同じように、個別の金属フィルタの裏面に位置するだけでなく、その環状紐状体の収縮に対応して個別の金属フィルタの裏面に位置するものであり、したがって、環状紐状体が、「個別の金属製フィルタの裏面のうち、環状紐状体の収縮に対応し、位置する」ことができるものである。 また、この場合、上記相違点Eの特定事項aについての箇所で記載したとおり、そのカバーのフィルタは、「・・・排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・」とのサイズを有するようにすることは当業者が適宜なし得るものであり、したがって、当該フィルタがそのようなサイズを有する場合には、当該フィルタを「排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置」に位置させることができるものである。 更に、この場合、当該環状紐状体は、該カバーのフィルタにおけるその周縁部に位置するものであって、カバーのフィルタの周縁部と、略、同じ位置に存在するものであるので、当該フィルタが「排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置」に位置するときは、当該環状紐状体を「排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置」に位置させることができるものである。 そして、上記相違点Dについての箇所で記載したとおり、金属フィルタのレンジフードの排気口への設置に際し、フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する周知・慣用事項を適用した場合においては、引用例5発明のカバーのフィルタないしはカバーは金属フィルタによりレンジフードの排気口に装着でき、その装着状態において、そのフィルタ及び環状紐状体の位置につき、上記したとおり、本件特定事項のように設定することは、当業者が困難なく適宜実施できるものである。 そうすると、引用例5発明において、相違点A?Eに係る特定事項に加え、当該相違点Fに係る特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 そして、引用例5発明において相違点A?Fに係る特定事項を具備することにより、ないしは、組み合わせて具備することによって格別予想し難い効果を奏したといえるものではない。 したがって、訂正発明は、引用例5、1?4及び6?16に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 V-4-2-4.対比・検討(引用例3に記載される発明との対比) 引用例3には、その前記摘示(C-1)及びその図5によれば、「レンジフードの吸気口に配設された金網等からなる二つのフィルター部材の下面に、各々、着脱自在に装着されるレンジフード用フィルター装置であって、一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からなるシート状フィルターと、上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻き込み状態で係止させる係止部材とからなるレンジフード用フィルター装置」に関する発明(以下、適宜、「引用例3発明」という)が記載されている。 そこで、訂正発明と引用例3発明とを対比する。 引用例3発明の「レンジフードの吸気口」、「金網等からなるフィルター部材」(以下、適宜、「金網フィルター部材」という)及び「金網等からなる二つのフィルター部材」(以下、適宜、「二つの金網フィルター部材」という)は、訂正発明の「レンジフードのフード内の排気口」、「金属製フィルタ要素」及び「金属製フィルタ」にそれぞれ相当する。 また、引用例3発明における金網フィルター部材は、前記摘示(C-5)によれば、訂正発明と同じようにレンジフードのフード内の吸気口に着脱自在に係止されるということができるものであり、また、金属からなるものであるので訂正発明と同じように剛性であるということができるものであり、更に、その図1等の記載からみると訂正発明と同じように方形プレート状に形成されているものである。 そして、引用例3発明の「レンジフード用フィルター装置」は、訂正発明のように、レンジフードのフード内の吸気口に着脱可能に配設され、二つの金網フィルター部材で構成された金網フィルター部材を、前記(C-5)と図1及び5の記載からみて明らかなとおり、覆うものであり、この点で、訂正発明の「フィルタ装置」に相当するということができる。 よって、両者は、 「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され、かつ複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって、前記金属製フィルタ要素は剛性で方形プレート状に形成されている、フィルタ装置」である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点イ】フィルタ装置につき、訂正発明では、「個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバー可能なフィルタと、このフィルタの周縁部に取り付けられ、かつフィルタを、前記フロント面で緊張させて前記個別の金属製フィルタ要素に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されている」という特定事項を具備するのに対して、引用例3発明では、そのレンジフード用フィルター装置は、訂正発明のようにフィルタとリング状伸縮性紐状体とで構成されておらず、したがって、当該特定事項を具備しない点 【相違点ロ】該金属製フィルタ要素が、訂正発明では、「上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり」という特定事項を具備するのに対して、甲第3号証発明ではそのことが明示されない点 【相違点ハ】当該フィルタ装置につき、訂正発明では、「前記フィルタは、不織布で構成されているとともに、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し、かつ前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており、個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき」という特定事項を具備するのに対して、引用例3発明では、そのレンジフード用フィルター装置は、不織布を含み、金網フィルター部材に取り付けられ、金網フィルター部材のフロント面をカバーするものであるものの、訂正発明のようにフィルタとリング状伸縮性紐状体とで構成されておらず、したがって、当該特定事項を全て具備しない点 【引用例ニ】当該フィルタ装置につき、訂正発明では、「排気口への装着状態において、紐状体が、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつフィルタが排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に位置する」とするのに対して、引用例5発明では、そのことが具体的に示されない点 以下、上記相違点につき検討する。 【相違点イについて】 引用例3発明におけるレンジフード用フィルター装置は不織布からなるシート状フィルターから構成されるものであって、前記(C-2)及び(C-3)で示されるように調理用排ガスを浄化するために用いられ、前記(C-5)と図1及び図5の記載からみて明らかなように、調理用排ガスを排出するレンジフードの吸気口前面に配設された二つの金網フィルター部材のフロント面を個別にカバーするものである。 更に、引用例3発明におけるレンジフード用フィルター装置は、金網フィルター部材に着脱自在に装着されるものである。 一方、調理用排ガスを処理する当該分野においては、「不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状伸縮性紐状体とからなり、その外観が浅い袋状の形状をなす調理用排ガス浄化用カバー体を、その紐状体の収縮力により、調理用排ガス処理機器の前面に位置する部材に着脱自在に取り付けること」は、本件出願前に周知・慣用事項[必要ならば、引用例5〔前記摘示(E-2)の台所用換気扇及びレンジフード用換気扇に関する記載、(E-6)?(E-8)及び第1図〕、引用例11(第2頁左欄第2?6行、第3頁第4?5行、第3頁第9?12行、第4頁第21?22行及び図1)、実公平7-12824号公報(第2頁左欄第6?14行、第3頁左欄第8?15行、第3頁左欄第28?48行及び第1図)等を参照]となっており、この場合、その不織布フィルター部は調理用排ガスを処理するために用いられることはその用途からみて明らかなことである。 このように、引用例3発明のレンジフード用フィルター装置と当該周知・慣用のカバー体とは、不織布を用いる点でフィルター部ないしはシート状フィルターの材質が同じものであり、かつ、調理用排ガスを処理するという点でも同じ機能を有するものであり、そのうえ、両者は、共に、調理用排ガス処理機器の前面に位置する部材に着脱自在に取り付け得るものである。 してみれば、引用例3発明において、個別に金網フィルター部材のフロント面をカバーし、金網フィルター部材に取り付けられているところのレンジフード用フィルター装置を、上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるところのカバー体で、個別に、置換することは当業者が適宜なし得るものであり、その際、個別の金網フィルター部材に対して当該カバー体を取り付けることに何等の困難も伴わない。 この場合、「カバー体」、「不織布フィルター部」及び「リング状収縮性紐状体」は、訂正発明の「フィルタ装置」、「フィルタ」及び「リング状収縮性紐状体」にそれぞれ相当する。 そして、引用例3発明のプレート状の金網フィルターに、袋状の当該カバー体を適用する場合、調理用排ガスの浄化漏れがないように、このカバー体の不織布フィルター部が金網フィルター部材のフロント面全面をカバーないしは覆うようにすることは当業者が当然のこととして実施するものであり、これにより、必然的に、カバー体のリング状収縮性紐状体は金網フィルター部材の裏面に位置することになって不織布フィルター部が金網フィルター部材の前面を被包することになり、かつ、裏面に位置するリング状収縮性紐状体が、その収縮力で不織布フィルター部を金網フィルター部材のフロント面で緊張させて金網フィルター部材に固定ないしは取り付けられるようになるものである。 このことは、引用例1に記載の技術からみても容易に導き出せるものである。すなわち、引用例1において、筒織裁断物とその廻りに配置したゴム体からなるフィルター(実用新案登録請求の範囲を参照)を、ガードに取り付ける場合には、当該筒織裁断物をガードのフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面に至るようになし、かつ、当該ゴムをガードの裏面に位置させる(第6及び7図を参照)ようにすることが、実質上、記載されるものであり、このように、繊維製フィルタ(筒織裁断物)と伸縮性紐状体(ゴム体)からなるフィルターを略板状物品(ガード)に取り付ける場合には、繊維性フィルタを、板状物品のフロント面の全面を完全に覆ったうえでその裏面にまで伸びるように配置し、かつ、伸縮性紐状体を板状物品の裏面に配置させる構造が教示されるのであるから、上記のように、引用例3発明の金網フィルター部材に上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるカバー体を適用する場合、上記教示に従い、不織布フィルター部が金網フィルター部材のフロント面を覆ったうえでその裏面に至るようになし、かつ、カバー体のリング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置させることにより、その不織布フィルター部が金網フィルター部材のフロント面を被包し、かつ、裏面に位置するリング状収縮性紐状体がその収縮力で不織布フィルター部を金網フィルター部材のフロント面で緊張下に金網フィルター部材に固定ないしは取り付けるようになすことは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 以上のとおり、引用例3発明において、そのレンジフード用フィルタ装置を、上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けたリング状収縮性紐状体とからなるところのカバー体で置換することにより、そのカバー体(フィルタ装置)が「個別の金網フィルター部材のフロント面をカバー可能な不織布フィルター部と、この不織布フィルター部の周縁部に取り付けられ、かつ不織布フィルター部を、前記フロント面で緊張させて前記個別の金網フィルター部材に取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成されている」との特定事項を自ずと具備するようになるものであり、ないしは、その特定事項を具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 したがって、引用例3発明において、必要に応じて引用例1に記載の技術を参照して、上記周知・慣用事項を適用することにより、相違点イに係る特定事項を具備するようにすることは、当業者が適宜なし得ることに過ぎない。 【相違点ロについて】 引用例3発明の金網フィルター部材につき、その図1の記載をみれば、金網フィルター部材の両端面(ないしは上端部及び下端部)が共に厚みの薄い平板形状を呈していることがわかる。そうであれば、レンジフードの吸気口に溝(又はスリット)が設けられている場合には、引用例3発明の金網フィルター部材は、本件発明1と同じように、「その上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり、下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能である」といえるものである。したがって、この特定事項は、両者の実質上の相違点とはなり得ないものである。 仮に、そうでないとしても、引用例3発明の金網フィルター部材の如きフィルター部材につき、吸気口の上下部に設けた溝に当該フィルター部材を挿入することにより同部材を着脱自在に取付けることは、本件出願前に慣用事項[必要ならば、引用例13〔第2頁第7?16行及び第9図〕、引用例14(第2頁左欄第43行?右欄第10行、第5頁左欄第38?42行、第5頁右欄第12?14行及び図8)等の記載を参照]となっており、したがって、引用例3発明において、その金網フィルタ部材のレンジフードの吸気口への設置に際し、当該慣用事項の技術を適用し、当該特定事項のようにすることに、何らの困難性も伴わない。 そうすると、この特定事項は、両者の実質的な相違点とはならないものであり、仮に、そうでないとしても、引用例3発明において、上記慣用事項を適用することにより当業者が適宜なし得るものである。 【相違点ハについて】 [前記フィルタは、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し]との特定事項Aについて 上記相違点イについての箇所で説示したとおり、引用例3発明において、金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を、上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること、そして、その場合、リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置すること、かつ、不織布フィルター部で金網フィルター部材のフロント面を被包することは、当業者が適宜実施できるものである。 この場合、当該不織布フィルター部は、金網フィルター部材の裏面に配置するリング状収縮性紐状体の収縮力により、少なくとも金網フィルター部材の周縁部を含む裏面の一部を覆い、被包することになるものである。 そして、前記相違点Eの特定事項aについての箇所で記載した理由と同じ理由により、不織布フィルター部が金網フィルター部材を上記の如く覆い被包する場合において、金網フィルター部材の裏面において当該不織布フィルター部が覆い被包する範囲については、排ガスの浄化性、不織布フィルター部材料の節約性、不織布フィルター部の装着性等を考慮して適宜設定できる設計事項に外ならないものであり、したがって、訂正明細書の第1図又は第3図で示される如き金属製フィルタ要素の裏面の領域を被包できるように、不織布フィルター部のサイズないしは被包するところの金網フィルター部材のサイズを設定して、訂正発明のように「個別の金網フィルター部材の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金網フィルター部材を被包可能なサイズを有し」との特定事項を具備するようにすることに何等の困難も伴わない。 また、上記相違点イについての箇所で説示したとおり、引用例3発明において、金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を、上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換した場合には、「カバー体のフィルター部は金属フィルタのフロント面をカバー」するに至ることは明白なことである。 そうすると、引用例3発明において、上記周知・慣用事項を適用する場合に、当該特定事項Aのようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [前記金属製フィルタ要素に対応した相似形状の平面方形状に形成されており]との特定事項Bについて 一般に、板状体を柔軟シート体で被包する場合には、該シート体と該板状体との平面形状が不一致であると、被包後に該シート体と該板状体との間に不必要な空間が発生したり、体裁が損なわれたり、また、該板状体に対して該シート体の材料に過不足が発生するなどの不都合が生ずるものであり、このことは、その該シート体に収縮性紐状体が取り付けられているか否かにかかわらず、当業者が自明なこととして把握できる。 してみれば、引用例3発明において、金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を、上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換し、その不織布フィルターで金網フィルター部材を被包する場合には、上記不都合を避けるために、不織布フィルターの形状を、金網フィルター部材の四角形、すなわち、方形状にあわせて、訂正発明のように「個別の金網フィルター部材に対応した相似形状の平面方形状」に形成することは、当業者が当然のこととして実施し得るものであり、むしろそのようにしないことの方が不自然でさえある。 そうすると、引用例3発明において、上記周知・慣用技術の用途に適用する場合に、当該特定事項Bのようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 [個別の金属製フィルタ要素の裏面での紐状体の収縮により、前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させて、個別の金属製フィルタ要素に対してフィルタを取り付け、レンジフードの排気口に装着でき]との特定事項Cについて 上記相違点イについての箇所で説示したとおり、引用例3発明において、金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を、上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること、そして、その場合、リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置することは、当業者が適宜実施できるものである。 そして、このようにリング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置すれば、必然的に、その紐状体の収縮により、前記金網フィルター部材のフロント面の不織布フィルター部に緊張力又は牽引力が作用するものであり、その結果、当該フィルター部が金網フィルター部材に取り付けられ、レンジフードの吸気口に装着できるように至るものである。 そうすると、引用例3発明に周知・慣用事項となっているカバー体を適用した場合に当該特定事項Cを具備することは、少なくとも当業者が適宜実施できるものに外ならない。 以上のとおり、引用例3発明に周知・慣用事項となっているカバー体を適用した場合に、当該相違点ハに係る特定事項を具備するようにすることは、当業者が困難なく適宜なし得るものである。 【相違点ニについて】 上記相違点イについての箇所で説示したとおり、引用例3発明において、金網フィルター部材に取り付けられているレンジフード用フィルター装置を、上記周知・慣用事項となっているところの不織布フィルター部とその周縁部に設けられたリング状収縮性紐状体を有するカバー体で置換すること、そして、その場合、リング状収縮性紐状体を金網フィルター部材の裏面に配置することは、当業者が適宜実施できるものである。 この場合、引用例3発明のリング状収縮性紐状体は、その不織布フィルター部と同じように、個別の金網フィルター部材の裏面に位置するだけでなく、その紐状体の収縮に対応して個別の金網フィルター部材の裏面に位置するものであり、したがって、当該リング状収縮性紐状体が、「個別の金網フィルター部材の裏面のうち、リング状収縮性紐状体の収縮に対応し、位置する」ことができるものである。 また、この場合、上記相違点ハの特定事項Aについての箇所で記載したとおり、そのカバー体の不織布フィルター部は、「・・・排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで・・・」とのサイズを有するようにすることは当業者が適宜なし得るものであり、したがって、当該不織布フィルターがそのようなサイズを有する場合には、当該不織布フィルター部を「排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置」に位置させることができるものである。 更に、この場合、当該リング状収縮性紐状体は、該カバー体の不織布フィルター部におけるその周縁部に位置するものであって、カバーにおける不織布フィルター部の周縁部と、略、同じ位置に存在するものであるので、当該不織布フィルター部が「排気口のうち前記金網フィルター部材に対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置」に位置するときは、当該リング状収縮性紐状体を「排気口のうち前記金属フィルタに対応する部分を部分的に覆う内方域に及ぶ位置」に位置させることができるものである。 そして、引用例3発明において、引用例3発明において、周知・慣用事項となっているカバー体を適用し、かつ、フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入するところの相違点ロについての箇所で記載した慣用事項を適用した場合においては、カバー体の不織布フィルター部ないしはカバー体は、金網フィルター部材によりレンジフードの排気口に装着でき、その装着状態において、そのカバー体の不織布フィルター部及び金網フィルター部材の位置を上記したとおりに設定して、本件特定事項のようにすることは、当業者が困難なく適宜実施できるものである。 以上のとおり、引用例3発明において、周知・慣用事項(必要ならば、相違点イについての箇所を参照)となっているカバー体を適用し、かつ、フィルタ部材をレンジフードの排気口の溝に挿入する慣用事項(必要ならば、相違点ロについての箇所を参照)を適用した場合において、当該特定事項ニを具備するようにすることは当業者が困難なく適宜なし得るものである。 そして、引用例3発明において、上記相違点イ?ニに係る特定事項を具備することにより、ないしは、組み合わせて具備することにより格別予想し難い効果を奏したといえるものでもない。 したがって、訂正発明は、引用例3、1、2及び4?17に記載された発明と周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 V-4-2-5.請求人の主張について 請求人は、審判請求書第16頁第1行?第21頁第7行において、訂正発明が「前記フィルタは、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し」との特定事項を具備することにより奏するところの効果、すなわち、油煙等の捕捉性及び油分の捕捉性につき、縷々、主張するので、以下に検討する。 (1)特許明細書又は願書に最初に添付した明細書及び図面(この項では、単に、「明細書」という)には「前記フィルタは、個別の金属製フィルタ要素のフロント面をカバーし、個別の金属製フィルタ要素の裏面のうち、紐状体の収縮に対応し、かつ排気口のうち前記要素に対応する部分を部分的に覆う内方域に及んで個別の金属製フィルタ要素を被包可能なサイズを有し」との特定事項が記載されておらず、また、当該特定事項が明細書に記載されないのであるから、当然のこととして、明細書には訂正発明が当該特定事項を具備することにより請求人の主張するような作用・効果につき教示ないしは示唆されるものは何もないのである。 そうであれば、請求人の主張する訂正発明の奏する効果は明細書の記載に基づかないものであり、本件訂正発明の進歩性を検討するに当り斟酌すべきものではない。 (2)請求人は、甲第2?6及び9号証を提出し、レンジフードにおいては排ガス流にコアンダ効果が生ずる旨主張し、更に、甲第7号証の試験成績証明書を提示する。 しかし、甲第3?6及び9号証では、誘導板、整流板、Wall等の特別の部材を別途設けるものであるし、また、甲第7号証では、フードが二方の壁に接するという特殊な配置のもとに更にファン位置が偏芯した排気装置を用いるものであって、その試験は訂正発明の主たる適用対象である本邦一般家庭の厨房条件下において行われたものとはいえない。なお、甲第2号証はコアンダ効果を説明するだけのものである。 (3)仮に、請求人の主張するように、金属製フィルタ要素の裏面の通気口を被包するフィルタは、排気ガスからの油煙等の捕捉性を幾分なりとも改善するという効果を奏するものであるとしても、そのように金属製フィルタ要素の裏面の通気口を被包すれば、フィルタが金属製フィルタのフロント面に加え裏面にも存在することになり、これにより、油煙等の捕捉性が改善されることは当然のこととして予測できるものであり、訂正発明が奏するというその効果は当業者の予測の域をでないものである。 また、油分の捕捉性については、通常フィルタ装置は油分が付着・流下する前に定期的に取り替えるものであってその効果はそもそも格別のものとはいえないものであり、仮に油分の捕捉性について何等かの効果があるとしても、金属製フィルタ要素の裏面に不織布からなるフィルタが存在すれば、そのフィルタはそれに接する油分を自ずと吸収・捕捉・保持するに至るようになるものであり、その場合の効果は自明なこととして把握できるものである。 (3)このように、請求人の主張する効果は、明細書の記載に基づかないものであり、また、その程度の効果は引用例1?17及び周知技術から容易に予測できるものである。 V-4-3.独立特許要件についての結論 訂正後の本件請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、これらの理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるとはいえない。 VI.まとめ よって、本件審判の訂正請求は、特許法第126条第1項ただし書き、及び、同条第3項?第5項の規定に適合しないので、当該請求を認めることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-27 |
結審通知日 | 2006-05-01 |
審決日 | 2006-05-15 |
出願番号 | 特願平10-117489 |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Z
(B01D)
P 1 41・ 853- Z (B01D) P 1 41・ 537- Z (B01D) P 1 41・ 856- Z (B01D) P 1 41・ 832- Z (B01D) P 1 41・ 121- Z (B01D) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
多喜 鉄雄 |
特許庁審判官 |
板橋 一隆 斉藤 信人 |
登録日 | 2004-09-17 |
登録番号 | 特許第3597700号(P3597700) |
発明の名称 | レンジフードのフィルタ装置 |
代理人 | 鍬田 充生 |
代理人 | 松村 信夫 |