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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1158207
審判番号 不服2002-22433  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-21 
確定日 2007-05-25 
事件の表示 平成 6年特許願第 22592号「自動取引装置の現金自動補充方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月29日出願公開,特開平 7-230514〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成6年2月21日 出願
平成14年10月11日付け 拒絶査定
同年11月21日 審判請求
同年12月9日付け 手続補正書
平成18年5月30日付け 平成14年12月9日付け手続補正の却下の決定
同年6月20日付け 拒絶理由通知
同年8月28日付け 意見書・手続補正書
同年10月24日付け 拒絶理由通知(最後)
平成19年1月4日付け 意見書・手続補正書

第2 平成19年1月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年1月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成19年1月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,本件補正前の
「【請求項1】 取引に必要な現金の払出し,及び預け入れを行う現金ユニットと,
装置の操作位置に顧客等がいるか否かを検知する顧客センサと,
前記現金ユニット,顧客センサ等の制御を行う制御部を備えると共に,
前記現金ユニットには,取引に必要な現金を払出したり,預け入れた現金を収納するスタッカと,補充のための現金や,回収した現金を収納する現金金庫と,現金を鑑別する鑑別部とを備え,
出金取引が行われて,前記スタッカ内の現金が減少し,予め設定した現金自動補充開始条件を満たした場合,前記制御部の制御で,現金金庫からスタッカへの現金自動補充処理を行う自動取引装置の現金自動補充方法において,
一顧客取引終了後,前記カセット内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出し,且つ,前記現金金庫に補充該当金種がある場合に前記現金自動補充開始条件を満たしたのち,さらに,顧客センサによりタイマ部により計測した一定時間(t1)継続して顧客を検知しない状態が続いた際に前記現金自動補充処理を起動することにより,現金を現金金庫から繰り出し鑑別部へ搬送し,鑑別部での鑑別結果に基づいてスタッカに補充し,
前記現金自動補充処理を行なっている際,顧客センサにより,一定時間(t2)継続して顧客を検知した場合,
前記現金自動補充処理を停止させるために現金金庫から繰り出して現金をカセットに搬送し,スタッカ内,現金金庫内の現金の確認を行い,現金自動補充処理の停止を終了したのち,顧客の操作を開始するよう制御することを特徴とする自動取引装置の現金自動補充方法。」
から,本件補正後の
「【請求項1】 取引に必要な現金の払出し,及び預け入れを行う現金ユニットと,
装置の操作位置に顧客等がいるか否かを検知する顧客センサと,
前記現金ユニット,顧客センサ等の制御を行う制御部を備えると共に,
前記現金ユニットには,取引に必要な現金を払出したり,預け入れた現金を収納するスタッカと,補充のための現金や,回収した現金を収納する現金金庫と,現金を鑑別する鑑別部とを備え,
出金取引が行われて,前記スタッカ内の現金が減少し,予め設定した現金自動補充開始条件を満たした場合,前記制御部の制御で,現金金庫からスタッカへの現金自動補充処理を行う自動取引装置の現金自動補充方法において,
一顧客取引終了後,前記スタッカ内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出し,且つ,前記現金金庫に補充該当金種がある場合に前記現金自動補充開始条件を満たしたのち,さらに,顧客センサによりタイマ部により計測した一定時間(t1)継続して顧客を検知しない状態が続いた際に前記現金自動補充処理を起動することにより,現金を現金金庫から繰り出し鑑別部へ搬送し,鑑別部での鑑別結果に基づいてスタッカに補充し,
前記現金自動補充処理を行なっている際,顧客センサにより,一定時間(t2)継続して顧客を検知した場合,
前記現金自動補充処理を停止させるために現金金庫から繰り出して現金をカセットに搬送し,スタッカ内,現金金庫内の現金の確認を行い,現金自動補充処理の停止を終了したのち,顧客の操作を開始するよう制御することを特徴とする自動取引装置の現金自動補充方法。」
と補正された。

2 補正の適否
(1) 本件補正は,平成6年改正前特許法(以下,単に「特許法」という。)第17条の2第1項第4号に掲げる場合において,特許請求の範囲についてする補正であるから,その補正は,同条第3項第1号?第4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。
(2) 本件補正の目的について,請求人は,平成19年1月4日付け意見書において,「特許請求の範囲に記載の「カセット」は,「スタッカ」の誤りであり,「前記カセット」を「前記スタッカ」に補正することは誤記の訂正に相当する。」と主張している。
(3) 検討するに,本件補正前の請求項1に記載された「カセット」に関し,願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には,
「【0079】そして,BRU13には,搬送路ユニット14,紙幣出入口9,係員金庫(紙幣カセット)16,紙幣スタッカ(Fスタッカ)18,紙幣スタッカ(Mスタッカ)19,紙幣スタッカ(Rスタッカ)20等が設けてある。」
「【0081】(1) :係員金庫(紙幣カセット)16は,補充のための紙幣を収納したり,或いは回収した紙幣を収納したりする金庫であり,係員により着脱される。」
等と記載されており,当初明細書等において,「カセット」と「スタッカ」とは異なる構成要素として明確に記載されているから,本件補正前の請求項1における「カセット」を「スタッカ」の誤記ということはできない。
そして,本件補正の目的が請求項の削除,特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明に該当しないことは明らかである。
(4) したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項第1号?第4号に掲げる事項を目的とするものではない。

なお,請求人は,「特許請求の範囲に記載の「カセット」は,「スタッカ」の誤りであ」ると主張しつつ,本件補正前の請求項1に記載された「前記現金自動補充処理を停止させるために現金金庫から繰り出して現金をカセットに搬送し」の部分における「カセット」については何ら補正をせず,本件補正後も「カセット」のままであり,「特許請求の範囲に記載の「カセット」は,「スタッカ」の誤りであ」るとの請求人の主張は,本件補正の内容と整合しないものである。

3 むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願明細書及び図面
平成19年1月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の明細書及び図面は,平成18年8月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面である。

2 最後の拒絶理由通知
平成18年10月24日付け拒絶理由通知(最後)の概要は,以下のとおりである。
「平成18年8月28日付けの手続補正で補正された請求項1における「前記カセット内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出し」は,願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)のいずれにも記載されていないので,上記補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
したがって,上記補正は,特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反するものである。」

3 当審の判断
(1) 検討するに,当初明細書等には,
「【0110】この場合,BRUメカ制御部49では,メモリ38内の情報(補充開始枚数),及び現金管理部42内の情報(現金カウンタの値)を参照して,紙幣スタッカ18?20内の紙幣が,補充開始枚数以下になっていて,かつ係員金庫16に補充該当金種がある場合に,現金自動補充開始条件を満たしていると判断する。」
と記載されており,「スタッカ」内の紙幣が補充開始枚数以下になっていることを,現金自動補充開始条件を満たす1つの要件とすることが記載されているが,「カセット」内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを,現金自動補充開始条件を満たす要件とすることは記載されていないし,自明の事項でもない。
そして,「カセット」に関し,当初明細書等には,
「【0079】そして,BRU13には,搬送路ユニット14,紙幣出入口9,係員金庫(紙幣カセット)16,紙幣スタッカ(Fスタッカ)18,紙幣スタッカ(Mスタッカ)19,紙幣スタッカ(Rスタッカ)20等が設けてある。」
「【0081】(1) :係員金庫(紙幣カセット)16は,補充のための紙幣を収納したり,或いは回収した紙幣を収納したりする金庫であり,係員により着脱される。」
等と記載されており,当初明細書等において,「カセット」と「スタッカ」とは異なる構成要素として明確に記載されているから,本件補正前の請求項1における「カセット」を「スタッカ」の誤記ということもできない。
(2) してみると,平成18年8月28日付けの手続補正で補正された請求項1における「前記カセット内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出し」は,当初明細書等に記載されていないので,上記補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

4 特許法第29条第2項について
上記3のとおり,本願は,本件補正が却下され,平成18年8月28日付けの手続補正が,特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていないので,拒絶すべきものであるところ,仮に,本件補正が適法であるとして,上記第2の[理由]1に摘記した本件補正後の請求項1に係る発明が特許法第29条の規定により特許を受けることができるものであるかについて,更に検討する。

4-1 引用例
(1) 平成18年6月20日付け拒絶理由通知で引用された特開平3-171281号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「1.紙幣を収納し出金指令に応答して収納している紙幣を出金する第1の紙幣収納手段と,補充紙幣を収納する第2の紙幣収納手段を有し,該第1の紙幣収納手段の紙幣量に応じて該第2の紙幣収納手段から該第1の紙幣収納手段に紙幣を補充し,さらに,取引終了後,規定時間内に次の取引の要求がないことに応答して,上記補充を開始することを特徴とする現金自動取引装置。
2.前記補充が開始された後,該補充を中断し取引処理に入ることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の現金自動取引装置。
3.前記取引の要求に応答して,前記補充を中断し取引処理に入ることを特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の現金自動取引装置。
4.前記規定時間以内に次の取引の要求があったことに応答して,前記補充を抑止することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の現金自動取引装置。」(特許請求の範囲)
(イ)「第6図は,本発明に関係する部品のみを記した入出金部の紙幣搬送機構ブロック図を示す。図中,60は顧客と紙幣の出し入れを行う入出金口,61は紙幣受取箱,62は受取箱の紙幣を1枚ずつ搬送路へ送り出す紙幣分離箱,63は紙幣カセット用一時スタッカ,64は取り扱う全金種の紙幣を収納する紙幣収納カセット,65は紙幣一時スタッカ,66は補充用の紙幣を収納する紙幣収納箱,67は紙幣の真偽鑑定および金種判別を行う紙幣鑑別箱,68は萬円券のみを収納する萬円券収納箱,69は千円券のみを収納する千円券収納箱,70?74は紙幣の搬送先を振り分けるゲートを示す。第6図の例は後述のごとく入金紙幣を出金用として還流する機能を有するが,本発明に取っては還流機能は必須の機能ではない。」(2頁右上欄19行?左下欄13行)
(ウ)「第5図は,従来技術による出金取引のタイミンムチャートを示したものであり,図に示す如く中央装置10からの回答メッセージ33を受信した後,出金紙幣計数処理34を行い,出金紙幣を含むその他当該取引に使用した全媒体の抜取操作35が完了した時点で,萬円券収納箱および千円券収納箱の紙幣残量枚数がある規定枚数以上であった場合は出金紙幣に対する各金種別紙幣収納箱への紙幣補充は行わず,図に示す如く次の取引までT2の時間41だけ待機することになる。各金種別紙幣収納箱が規定枚数以下であった場合は,各金種別紙幣収納箱が満杯になるまで紙幣収納箱66より紙幣の補充を行い,しかもこの補充動作が完了するまでは,全ての取引を待たせるようにしている。
一方,第3図は本発明における出金取引例のタイムチャートを示したものであり,全媒体の抜取りが完了し,1件取引が終了するとタイマ130をセットし,規定時間経過しても次の取引が行われなかった場合はタイムアウト検出時点37より出金取引で放出した分の紙幣の補充動作38を行うようにしている。
第4図は,タイムアウト検出以前に次の取引が行われた場合のタイムチャートを示したものであり,図に示す如く,次取引開始時点でタイマ動作36を停止させ,次取引を優先させて受付けるようにしている。したがって紙幣の補充動作を客待ち時間T2の間に行い,しかも顧客取引を優先して受付けることができるため,従来技術の一括して補充する動作を省くことができ,取引の最繁忙時間帯と補充動作が重なった場合の取引時間が全体として短縮することになる。」(3頁左下欄4行?右下欄14行)
(エ)「先ず,出金取引の場合について説明する。
・・・(中略)・・・デコードされた結果,当該出金取引が許可された場合は信号路502が真値となり,出金紙幣計数指令回路119が起動されて萬円券収納箱68および千円券収納箱69より指定の枚数だけ紙幣受取箱61に出金紙幣が搬送される。」(4頁左上欄2行?16行)
(オ)「次に入金取引の場合について説明する。
入金紙幣を紙幣受取箱61に投入されると入金紙幣投入完了検出回路106により紙幣投入完了が検出される。入金紙幣計数指令回路107が起動され,紙幣受取箱に投入された入金紙幣が紙幣分離箱62,ゲート73,ゲート74,紙幣鑑別箱67,ゲート70およびゲート71を経由して,・・・(中略)・・・,紙幣収納箱66が満杯でないときはAND回路202によりゲートされて紙幣一時スタッカ65への取込み指令回路100が起動されて紙幣一時スタッカ65収納される。・・・(中略)・・・デコードされた結果,当該入金取引が許可された場合は,信号路500が真値となり,入金紙幣取り込み指令回路111が起動され,・・・(中略)・・・紙幣収納箱66が満杯でないときはAND回路204によりゲートされて紙幣収納箱66への紙幣取り込み指令回路113が起動され,一時スタッカ65に一時保持されている入金紙幣を紙幣収納箱66に収納する。」(4頁右上欄14行?右下欄8行)
(カ)「以上に説明した如く,1件の取引が終了すると取引終了検出回路123の出力信号が真値となり,この出力信号によりタイマ130をセットして時間監視を開始する。予めタイマに設定した規定の時間が経過するとタイムアウト検出回路131の出力信号が真値となり,紙幣補充許可信号発生回路132の出力信号を真値にする。この信号は紙幣収納箱66が空でなく,かつ,萬円券収納箱または千円券収納箱のいずれかが満杯でないときに真値となるAND回路208の出力信号でゲートすることにより,紙幣補充指令回路126を起動する。
一方,規定時間経過以前に次の取引の入力が開始されると取引開始検出回路125の出力信号が真値となり,この出力信号によりタイマ130を停止かつクリアすると同時に紙幣補充許可信号発生回路132をリセットすることにより,紙幣補充指令回路126の起動が停止することができる。
また,規定時間が経過して補充動作が開始された後に,次の取引の入力が開始された場合も,取引開始検出回路125の出力信号が真値となり,この出力信号により紙幣補充許可信号発生回路132がリセットされ,紙幣補充指令回路126の起動が停止される。これにより,補充動作は中断され次の取引を受付けることができる。」(5頁左上欄3行?右上欄6行)
(2) 上記(ア)?(カ)の記載を検討するに,引用例1の現金自動取引装置は,入金取引及び出金取引を行うものであり,入出金口への紙幣の出し入れを実行する入出金部を有し,この入出金部が制御部により制御されることは,明らかである。
そして,入出金部には,紙幣を収納し出金指令に応答して収納している紙幣を出金する萬円券収納箱及び千円券収納箱と,入金される紙幣を収納する紙幣一時スタッカと,補充のための紙幣及び入金された紙幣を収納する紙幣収納箱と,紙幣の真偽鑑定及び金種判別を行う紙幣鑑別箱とが備えられているといえる。
してみると,引用例1には,
「入金取引及び出金取引に必要な紙幣の出し入れを行う入出金部と,
前記入出金部の制御を行う制御部を備えると共に,
前記入出金部には,出金取引に必要な紙幣を出金する萬円券収納箱及び千円券収納箱並びに入金取引で入金された紙幣を収納する紙幣一時スタッカと,補充のための紙幣及び入金された紙幣を収納する紙幣収納箱と,紙幣の真偽鑑定及び金種判別を行う紙幣鑑別箱とを備え,
出金取引が行われて,前記萬円券収納箱及び千円券収納箱内の紙幣が減少し,所定の条件を満たした場合,前記制御部の制御で,紙幣収納箱から萬円券収納箱及び千円券収納箱への紙幣自動補充処理を行う現金自動取引装置の紙幣自動補充方法において,
一件の取引終了後,前記萬円券収納箱及び千円券収納箱内の紙幣量に応じて,紙幣収納箱が空でない場合に前記所定の条件を満たしたのち,さらに,タイマにセットした規定時間が経過しても次の取引の要求がないことに応答して,上記補充を開始することにより,紙幣を紙幣収納箱から萬円券収納箱及び千円券収納箱に補充し,
前記紙幣自動補充を行っている際,次の取引の入力が開始された場合,
前記紙幣自動補充処理を中断させるための処理を行い,紙幣自動補充処理を中断したのち,次の取引を受付けるよう制御する現金自動取引装置の紙幣自動補充方法。」
の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

4-2 対比
(1) そこで,本願発明(以下「前者」という。)と引用例1発明(以下「後者」という。)とを対比すると,後者の「紙幣」,「入出金部」,「出金取引に必要な紙幣を出金する萬円券収納箱及び千円券収納箱並びに入金取引で入金された紙幣を収納する紙幣一時スタッカ」,「補充のための紙幣及び入金された紙幣を収納する紙幣収納箱」,「紙幣の真偽鑑定及び金種判別を行う紙幣鑑別箱」が前者の「現金」,「現金ユニット」,「取引に必要な現金を払出したり,預け入れた現金を収納するスタッカ」,「補充のための現金や,回収した現金を収納する現金金庫」,「現金を鑑別する鑑別部」にそれぞれ対応する。
また,後者の「所定の条件」は,紙幣自動補充処理を開始するか否かを判定するための条件であるから,前者の「予め設定した現金自動補充開始条件」に対応する。
また,後者の「タイマにセットした規定時間」は,その間に次の顧客がいないことを条件に,紙幣自動補充処理を開始するか否かを判定するための時間であるから,前者の「タイマ部により計測した一定時間(t1)」に相当する。
(2) そうすると,両者は,
「取引に必要な現金の払出し,及び預け入れを行う現金ユニットと,
前記現金ユニットの制御を行う制御部を備えると共に,
前記現金ユニットには,取引に必要な現金を払出したり,預け入れた現金を収納するスタッカと,補充のための現金や,回収した現金を収納する現金金庫と,現金を鑑別する鑑別部とを備え,
出金取引が行われて,前記スタッカ内の現金が減少し,予め設定した現金自動補充開始条件を満たした場合,前記制御部の制御で,現金金庫からスタッカへの現金自動補充処理を行う自動取引装置の現金自動補充方法において,
一顧客取引終了後,前記スタッカ内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出し,且つ,前記現金金庫に補充該当金種がある場合に前記現金自動補充開始条件を満たしたのち,さらに,顧客センサによりタイマ部により計測した一定時間(t1)継続して顧客を検知しない状態が続いた際に前記現金自動補充処理を起動することにより,現金を現金金庫から繰り出し鑑別部へ搬送し,鑑別部での鑑別結果に基づいてスタッカに補充し,
前記現金自動補充処理を行なっている際,顧客センサにより,一定時間(t2)継続して顧客を検知した場合,
前記現金自動補充処理を停止させるために現金金庫から繰り出して現金をカセットに搬送し,スタッカ内,現金金庫内の現金の確認を行い,現金自動補充処理の停止を終了したのち,顧客の操作を開始するよう制御することを特徴とする自動取引装置の現金自動補充方法。」
である点で一致し,下記の点で相違する。
〔相違点1〕前者の自動取引装置は,「装置の操作位置に顧客等がいるか否かを検知する顧客センサ」を備え,「顧客センサにより」「継続して顧客を検知しない状態が続いた際」顧客がいないとし,「顧客センサにより,一定時間(t2)継続して顧客を検知した場合」顧客がいるとするのに対し,後者は,顧客センサを備えておらず,取引の入力があると顧客がいるとし,取引の入力がないと顧客がいないとする点。
〔相違点2〕前者の制御部は,「顧客センサ等」の制御も行うのに対し,後者はそうでない点。
〔相違点3〕前者は,現金自動補充開始条件として「前記スタッカ内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出」するのに対し,後者はそうでない点。
〔相違点4〕前者は,現金金庫から繰り出した現金を「鑑別部へ搬送し,鑑別部での鑑別結果に基づいて」スタッカに補充するのに対し,後者は,鑑別部の作用が特定されていない点。
〔相違点5〕前者は,現金自動補充処理を停止させるために「現金金庫から繰り出して現金をカセットに搬送し,スタッカ内,現金金庫内の現金の確認を行」うのに対し,後者は,現金自動補充処理を停止させるための処理が特定されていない点。

4-3 判断
(1) 相違点1について
自動取引装置において,装置の操作位置に顧客がいるか否かを検知する顧客センサを設けることは,平成18年6月20日付け拒絶理由通知で引用した特開平2-311986号公報(以下「引用例2」という。),特開昭60-73781号公報(以下「引用例3」という。),特開昭63-233468号公報(以下「引用例4」という。)に記載されており,周知の事項である。
そして,引用例2には,顧客センサが顧客を検出したとき紙幣の補給を中止することが開示されており,引用例3,4には,顧客センサが所定時間顧客を検出しないとき顧客がいないと判定して,装置の動作を開始することが開示されている。
そして,顧客センサが所定時間継続して顧客を検出したとき顧客がいると判定することは,平成18年6月20日付け拒絶理由通知で引用した特開昭62-286166号公報(以下「引用例5」という。),特開平2-244297号公報(以下「引用例6」という。),特開平6-35425号公報(以下「引用例7」という。)に開示されており,周知の事項である。
してみると,後者において,取引の入力があると顧客がいるとし,取引の入力がないと顧客がいないとする構成に代えて,装置の操作位置に顧客がいるか否かを検知する顧客センサを設け,顧客センサにより一定時間継続して顧客を検知した場合顧客がいるとし,顧客センサにより継続して顧客を検知しない状態が続いた際顧客がいないとする構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ることである。
(2) 相違点2について
後者において,顧客センサを採用すれば,制御部が顧客センサ等の制御も行う構成となることは,直ちに導出される事項である。
(3) 相違点3について
引用例1の上記(ウ)には,従来技術として,「各金種別紙幣収納箱が規定枚数以下であった場合は,各金種別紙幣収納箱が満杯になるまで紙幣収納箱より紙幣の補充を行」うことが記載され,また,引用例2には,「・・・自動取引処理装置において,前記固定金庫内の紙幣の不足または過剰を判定する紙幣量判定手段と,・・・」(特許請求の範囲)と記載されており,スタッカ内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出して,現金の自動補充を開始することは,周知の事項である。
引用例1の上記(カ)には,萬円券収納箱または千円券収納箱のいずれかが満杯でないときに自動補充を開始することが記載されているが,後者において,スタッカが満杯でないときに自動補充を開始する構成に代えて,スタッカ内の紙幣が補充開始枚数以下になったことを検出して,自動補充を開始する構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
(4) 相違点4について
引用例2には,「この紙幣を搬送して鑑別部57を通過させ,金種や痛みの程度等を鑑別する(n33)。すなわち,カートリッジ51には一万円札と千円札が区別されずに収納されているため繰り出したのちこれを鑑別する必要があり,また,顧客が投入した紙幣のなかには再使用できないほど傷んだ紙幣もあるためこれを鑑別する。この鑑別結果をn34で判定し,一万円ならば一万円収納部53へこの紙幣を搬送する(n35,n36)。・・・一方,カートリッジ51から繰り出された紙幣が千円札ならばn42→n43に進み,補充/回収要否フラグを参照して千円収納部がニアフルであるか否かを判断する。ニアフルでなければこの紙幣を千円収納部54に搬送して収納し(n44),n33に戻る。」(4頁右下欄11行?5頁左上欄12行)と記載されているから,後者において,現金金庫から繰り出した現金を鑑別部へ搬送し,鑑別部での鑑別結果に基づいてスタッカに補充することは,当業者が容易に想到し得ることである。
(5) 相違点5について
引用例2には,「これら紙幣回収動作,紙幣補充動作は,顧客の接近,取引開始が検出されたとき強制的に終了されるが,この場合,まず紙幣の繰り出しを中止し,搬送中の紙幣の処理を終えて動作を終了する。」(5頁右上欄14行?17行)と記載されており,自動取引装置において現金自動補充処理を停止させる際には,搬送中の紙幣をスタッカ又は現金金庫に搬送し,スタッカ及び現金金庫内の紙幣を確認することは,周知の事項である。
してみると,後者において,現金自動補充処理を停止させるために現金金庫から繰り出して現金をカセットに搬送し,スタッカ内,現金金庫内の現金の確認を行うことは,当業者が容易に想到し得ることである。
(6) 作用効果について
本願発明の作用効果についてみても,引用例1発明及び引用例2?7から当業者が予測し得る程度のものであり,格別のものとはいえない。

5 むすび
以上のとおり,本願は,平成18年8月28日付けの手続補正が,特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていないので,拒絶すべきものである。
そして,仮に,平成19年1月4日付けの手続補正が適法であるとしても,該手続補正後の請求項1に係る発明は,引用例1?7に記載された発明,並びに周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-09 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-03 
出願番号 特願平6-22592
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
P 1 8・ 573- WZ (G06Q)
P 1 8・ 55- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿波 進  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 山本 穂積
森次 顕
発明の名称 自動取引装置の現金自動補充方法  
代理人 山谷 晧榮  
代理人 今村 辰夫  
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