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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1158342
審判番号 不服2005-1830  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-03 
確定日 2007-05-28 
事件の表示 平成11年特許願第337049号「管理作業車」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 5日出願公開、特開2001-150969〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【一】手続の経緯
本願は、平成11年11月29日の出願であって、平成16年9月16日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成16年11月18日付けで明細書を補正する手続補正書が提出されたところ、その補正が、平成16年12月27日付けで、平成18年法律第55号による改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるとして、平成14年法律第24号による改正前特許法第53条第1項の規定により決定をもって却下され、同日付けで拒絶査定がなされたのに対して、平成17年2月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合に該当する明細書についての手続補正がなされたものである。

【二】平成17年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 走行台車に搭載されたエンジン、このエンジンによって駆動される油圧ポンプ、及び走行車輪を駆動する油圧モータを備え、前記油圧ポンプと前記油圧モータが並列に接続された閉回路を構成する管理作業車において、前記油圧ポンプと前記油圧モータの間に分集流弁を設け、この分集流弁と前記油圧モータの間の通路に油圧モータのキャビテーション防止のための補給回路を設けたことを特徴とする管理作業車。」
と補正された。なお、下線は対比の便のため当審が付したものである。

上記補正は、「補給回路」について、「油圧モータのキャビテーション防止のための」と限定する補正を行うものと認められる。
上記補正は、「補給回路」について限定事項を付加するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正を行うものと認められる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号による改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「実願昭55-86371号(実開昭57-9624号)のマイクロフィルム」(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されていると認められる。

〔あ〕「本考案は例えばトラクタ或いは各種農作業車の走行輪を油圧力によって駆動する装置に関し、左右走行輪を駆動する左右の走行駆動油圧モータを、デフロック油圧回路を形成すべく並列接続した一対の絞り弁を介して油圧ポンプに並列接続することにより、……各種農作業を能率良く行えるようにした移動作業車の油圧走行駆動装置を提供しようとするものである。」(明細書1頁11行?2頁4行参照)
〔い〕「エンジン(1)によって駆動する油圧ポンプ(17)と、駆動油路(18)を介して前記ポンプ(17)に並列接続する左右油圧モータ(19)(20)とを備え、各モータ(19)(20)によって左右の前走行輪(4)(4)を夫々独立駆動すると共に、ミッションケース(3)に内蔵する機械式ミッション(図示省略)を介して左右の後走行輪(5)(5)を駆動するように形成する。」(明細書2頁18行?3頁4行参照)
〔う〕「前記油圧ポンプ(17)にフリーホィール油圧回路(21)を並列接続すると共に、ブリッジ型に接続するチェックバルブ(22)(23)(24)(25)と、前記ポンプ(17)の吐出油を各バルブ(22)(24)を介して印加するリリーフ弁(26)とによって前記回路(21)を構成し、……チャージポンプ(28)のチャージ油路(29)を各バルブ(23)(25)に接続させ、前記切換弁(27)を操作してリリーフ弁(26)の背圧油のアンロードを中断しているとき、各バルブ(22)(25)及び(23)(24)を非導通状態とし、各バルブ(23)(25)を介してポンプ(28)のチャージ油を駆動油路(18)に印加する」(明細書3頁5?16行参照)
〔え〕「前記ポンプ(17)と各モータ(19)(20)間の駆動油路(18)にデフロック油圧回路(30)を組込むと共に、減圧値が同一の一対の絞り弁(31)(32)によって前記回路(30)を構成し、各弁(31)(32)にデフロック操作用開閉弁(33)(34)を夫々並列接続し、前記ポンプ(28)のチャージ油を背圧油として各開閉弁(33)(34)に印加するデフロック作動切換弁(35)を設け、前記切換弁(35)を介してポンプ(28)のチャージ油を開閉弁(33)(34)に印加してこれらを開動しているとき、ポンプ(17)の吐出油を各モータ(19)(20)にこの負荷に比例させて分配印加し、各モータ(19)(20)に差動作用を持たせる一方、前記切換弁(35)操作によって各開閉弁(33)(34)を閉動しているとき、ポンプ(17)の吐出油を各モータ(19)(20)に絞り弁(31)(32)を介して略均一に印加させ、各モータ(19)(20)の差動作用を中断するように形成する。」(明細書4頁3?17行参照)
〔お〕「前記油圧モータ(19)にブレーキ油圧回路(36)を並列接続すると共に、ブリッジ形に接続するチェックバルブ(37)(38)(39)(40)と、前記モータ(19)の吐出油を各バルブ(37)(39)を介して印加するリリーフ弁(41)とによって前記回路(36)を構成し、第1ブレーキ作動切換弁(42)並びにブレーキ力調節弁である可変リリーフ弁(43)を介してリリーフ弁(41)の背圧油をアンロード制御し、チャージポンプ(28)のチャージ油路(29)を各バルブ(38)(40)に接続させ、各バルブ(38)(40)に印加するチャージ油をリリーフ弁(43)に絞り弁(44)を介して印加する。」(明細書4頁18?5頁8行参照)
〔か〕「前記油圧モータ(20)にブレーキ油圧回路(48)を並列接続すると共に、ブリッジ型に接続するチェックバルブ(49)(50)(51)(52)と、前記モータ(20)の吐出油を各バルブ(49)(52)を介して印加するリリーフ弁(53)とによって前記回路(48)を構成し、第1ブレーキ作動切換弁(54)並びにブレーキ力調節弁である可変リリーフ弁(55)を介してリリーフ弁(53)の背圧油をアンロード制御し、チャージポンプ(28)のチャージ油路(29)を各バルブ(50)(51)に接続させ、各バルブ(50)(51)に印加するチャージ油をリリーフ弁(55)に絞り弁(56)を介して印加する。」(明細書6頁11行?7頁1行参照)
〔き〕「前記油圧モータ(20)及びブレーキ油圧回路(48)の吸入及び吐出側にブレーキ操作用開閉弁(57)(58)を組込み、前記ポンプ(28)のチャージ油を背圧油として各開閉弁(57)(58)に印加する第2ブレーキ作動切換弁(59)を設け、上記切換弁(54)によってリリーフ弁(53)の背圧油のアンロードを中断してリリーフ弁(53)を閉支持し、且つ前記切換弁(59)を介してポンプ(28)のチャージ油を開閉弁(57)(58)に印加してこれらを開動しているとき、前記ポンプ(17)の吐出油が前記モータ(20)に設定圧で印加され、前記モータ(20)の通常回転によって前走行輪(4)を走行駆動する一方、前記切換弁(54)操作によってリリーフ弁(55)を介してリリーフ弁(53)の背圧油をアンロードしてリリーフ弁(53)を作動させ、且つ前記切換弁(59)操作によって各開閉弁(57)(58)を閉動しているとき、前記リリーフ弁(55)の背圧調節によってリリーフ弁(53)の背圧油をアンロード制御し、前記モータ(20)の吐出油は、バルブ(49)或いは(52)、リリーフ弁(53)、バルブ(51)或いは(50)を介してモータ(20)の吸入側に戻り、このときに前記リリーフ弁(53)を開放するための抵抗がモータ(20)に負荷され、リリーフ弁(55)によって設定されるリリーフ弁(53)の抵抗がモータ(20)のブレーキ力となり、前走行輪(4)を制動するように形成する。」(明細書7頁1行?8頁3行参照)
等の記載が認められる。
そして、上記〔お〕及び〔か〕に摘示のとおり、チャージポンプ(28)のチャージ油路(29)のチャージ油を、ブレーキ油圧回路(36)及び(48)の各バルブ(38)(40)及び(50)(51)に印加することが記載され、また、第3図を参照すると、前記各チェックバルブ(38)及び(50)は、絞り弁(31)(32)とデフロック操作用開閉弁(33)(34)とからなる各並列回路と前記モータ(19)(20)の間の通路に、チャージ油路(29)からのチャージ油を供給する方向に向けて配置されているものと認められる。
したがって、引用刊行物には、
“エンジン(1)によって駆動される油圧ポンプ(17)、及び左右の前走行輪(4)(4)を駆動する左右油圧モータ(19)(20)を備え、前記油圧ポンプ(17)と前記左右油圧モータ(19)(20)が並列に接続された閉回路を構成するトラクタ或いは各種農作業車において、前記油圧ポンプ(17)と前記左右油圧モータ(19)(20)の間に一対の絞り弁(31)(32)によって構成されるデフロック油圧回路(30)を設けると共に、各絞り弁(31)(32)にデフロック操作用開閉弁(33)(34)を夫々並列接続し、絞り弁(31)(32)とデフロック操作用開閉弁(33)(34)とからなる各並列回路と前記左右油圧モータ(19)(20)の間の通路に、チャージ油路(29)のチャージ油が供給される向きに、チェックバルブ(38)(50)を接続したトラクタ或いは各種農作業車”
の発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)上記引用刊行物に記載された発明の「トラクタ或いは各種農作業車」は「管理作業車」と認められ、本願補正発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「エンジン(1)」が前者の「エンジン」に相当し、以下同様に、後者の「油圧ポンプ(17)」が前者の「油圧ポンプ」に、後者の「前走行輪(4)(4)」が前者の「走行車輪」に、後者の「左右油圧モータ(19)(20)」が前者の「油圧モータ」に、それぞれ相当するものと認められる。
そして、後者の「各絞り弁(31)(32)にデフロック操作用開閉弁(33)(34)を夫々並列接続し」た2組の並列回路は、分流弁を構成するものと認められる。
また、後者の「絞り弁(31)(32)とデフロック操作用開閉弁(33)(34)とからなる各並列回路と前記左右油圧モータ(19)(20)の間の通路に、チャージ油路(29)のチャージ油が供給される向きに、チェックバルブ(38)(50)を接続した」構成は、絞り弁(31)(32)とデフロック操作用開閉弁(33)(34)とからなる各並列回路と前記左右油圧モータ(19)(20)の間の通路に補給回路を設けた構成と認められる。
したがって、両者は、
「エンジンによって駆動される油圧ポンプ、及び走行車輪を駆動する油圧モータを備え、前記油圧ポンプと前記油圧モータが並列に接続された閉回路を構成する管理作業車において、前記油圧ポンプと前記油圧モータの間に分流弁を設け、この分流弁と前記油圧モータの間の通路に補給回路を設けた管理作業車」
で一致し、次の点で相違すると認められる。
[相違点A]
本願補正発明では、前記「エンジン」が「走行台車に搭載されたエンジン」であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、前記「エンジン」が「走行台車に搭載された」ものか否か明確でない点
[相違点B]
本願補正発明では、「前記油圧ポンプと前記油圧モータの間に分集流弁を設け、この分集流弁と前記油圧モータの間の通路に補給回路を設け」、前記「補給回路」を「油圧モータのキャビテーション防止のための補給回路」としたのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「前記油圧ポンプと前記油圧モータの間に分流弁を設け、この分流弁と前記油圧モータの間の通路に補給回路を設け」ているものの、前記「分流弁」が「集流弁」を構成するものか否か、また、前記「補給回路」が「油圧モータのキャビテーション防止のため」のものか否か明確でない点

(2)次に、上記各相違点について検討する。
(2-1)相違点Aについて
エンジンを走行台車に搭載した構成の管理作業車は、例示するまでもなく、本願出願前周知のものと認められるから、引用刊行物に記載されたものにおいて、「エンジン」を「走行台車に搭載されたエンジン」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(2-2)相違点Bについて
油圧ポンプからの圧油を油圧モーターに対して正逆両方向に供給して、該油圧モータにより走行車輪を前進と後進の両方向に駆動可能とする作業車は、本願出願前周知のものと認められる(例えば、実願平1-94244号(実開平3-33264号)のマイクロフィルム、実願平4-39020号(実開平5-91948号)のCD-ROM、実願平5-47004号(実開平7-17859号)のCD-ROM、等参照)。
したがって、上記引用刊行物に記載された発明において、油圧ポンプからの圧油を油圧モーターに対して正逆両方向に供給する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その構成を採用する際、上記引用刊行物に記載された発明における「分流弁」を「分集流弁」とすることは、当業者が適宜なし得ることであるので、上記引用刊行物に記載された発明を、「前記油圧ポンプと前記油圧モータの間に分集流弁を設け、この分集流弁と前記油圧モータの間の通路に補給回路を設け」たものとすることは、前記本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
次に、「補給回路」について検討する。
本願補正発明において、油圧モータがポンプ作用をして、油圧モータのキャビテーションが生じるような場合は、「分集流弁」が「分流弁」として作用しているときであり、上記引用刊行物に記載された発明における「補給回路」は、「分流弁」と「油圧モータ」との間に、1つのチェックバルブ(38)又は(50)を介在させる構成であるから、本願補正発明の「油圧モータのキャビテーション防止のための補給回路」の実施例に示された構成と対比して、回路構成に相違は認められない。
また、上記引用刊行物に記載された発明においても、急停止、又は傾斜地の降下時等に、分流弁の通路抵抗のため吸い込みにくい状況となって、油圧モータがポンプ作用をして、油圧モータのキャビテーションが生じるような場合には、分流弁と油圧モータの間の通路の負圧によって、チェックバルブ(38)又は(50)を通じてチャージ油路(29)より、分流弁と油圧モータの間の通路にチャージ油の補給が行われると認められる。
したがって、上記引用刊行物に記載された発明における「補給回路」は、本願補正発明の「油圧モータのキャビテーション防止のための補給回路」としての機能を果たし得るものと認められ、本願補正発明のものと実質上相違しない。
よって、相違点Bにおける本願補正発明の構成は、前記本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
(3)請求人の主張について
(3-1)審判請求人は、審判請求書の手続補正書において、概略
i)引用刊行物に開示される補給回路については、「チェック弁38,40が同時に開になるのではなく、モータの出口側(46側)のチェック弁40が開の時、モータの入口側(45)のチェック弁38は高圧油のため、閉じる。」、「ポンプのキャビテーション防止のために、常に、モータ出口側の低圧ラインよりチャージ油が補給される。」
ii)本願補正発明の「補給回路」については、「H.S.T.回路に分集流弁を設けた場合、モータのキャビテーションという新たな欠点が生ずる。つまり、H.S.T.回路を有する作業車では、急停止時、急降坂時に油圧モータが車体の慣性により回されてポンプ作用を起こし、モータ入口側より油を吸い込もうとするが、分集流弁がある場合、分集流弁の通路抵抗のために吸い込みにくい状態となり、油圧モータの入口側が負圧となってキャビテーション現象が発生する。本願発明はこのような分集流弁を設けたために発生する欠点をもなくすためになされたものであり、分集流弁と油圧モータの間の通路に補給回路を設けること(本願請求項1)によって、油を油圧モータの油流入側(入口側)より補給し(本願明細書[0008]、図1参照)、これにより分集流弁を設けた場合の新たな欠点であるモータのキャビテーションを防止するものである。」
iii)引用刊行物には、「このようなH.S.T.回路に分集流弁を設けた場合に生ずる新たな欠点」、「欠点をなくすための手段」については、何ら記載がなく、「モータではなくポンプのキャビテーションを防止するための補給回路を開示する」にすぎない
旨、主張する。
(3-2)しかしながら、
i)引用刊行物に記載された発明において、油圧モータ(19)の入口側のチェックバルブ(38)が高圧油のため閉じ、ポンプのキャビテーション防止のために、油圧モータ(19)の出口側の低圧ラインへチャージ油が補給されるのは、油圧モータ(19)がモータとして作用する通常の運転状態のときであって、油圧モータ(19)がポンプ作用をして油圧モータのキャビテーションが生じるような場合に、油圧モータ(19)の入口側が高圧になっているとは認められない。
ii)分集流弁を設けたために、急停止時、急降坂時に油圧モータが車体の慣性により回されてポンプ作用を起こし、モータ入口側より油を吸い込もうとするが、分集流弁の通路抵抗のために吸い込みにくい状態となり、油圧モータの入口側が負圧となって、キャビテーション現象が発生する欠点について、引用刊行物に格別な言及がないとしても、このような欠点は、「(2-2)相違点Bについて」で論じたとおり、引用刊行物に記載された発明の「補給回路」(「絞り弁(31)(32)とデフロック操作用開閉弁(33)(34)とからなる各並列回路と前記左右油圧モータ(19)(20)の間の通路に、チャージ油路(29)のチャージ油が供給される向きに、チェックバルブ(38)(50)を接続した」構成)によって、解決されていると認められる。
iii)したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)このように、本願補正発明は、その発明を特定する事項が、上記引用刊行物に記載された事項及び上記本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、作用効果も、上記引用刊行物に記載された事項及び上記本願出願前周知の事項から予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本願補正発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合しないものであり、平成18年法律第55号による改正前特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する平成14年法律第24号による改正前特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【三】本願発明について
1.本願発明
平成17年2月3日付けの手続補正は上記のとおり却下された。
そして、平成16年11月18日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記平成17年2月3日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に係る発明と同一の発明であり、したがって、前説示の理由と同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、前審における平成16年12月27日付けの補正却下の決定の結論に誤りはない。
よって、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年7月9日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 走行台車に搭載されたエンジン、このエンジンによって駆動される油圧ポンプ、及び走行車輪を駆動する油圧モータを備え、前記油圧ポンプと前記油圧モータが並列に接続された閉回路を構成する管理作業車において、前記油圧ポンプと前記油圧モータの間に分集流弁を設け、この分集流弁と前記油圧モータの間の通路に補給回路を設けたことを特徴とする管理作業車。」

2.引用例
本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である前記「実願昭55-86371号(実開昭57-9624号)のマイクロフィルム」(以下、同様に「引用刊行物」という。)には、前記「【二】平成17年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.引用例」に記載したとおりの事項が記載されているものと認める。

3.対比・判断
本願発明は、前記「【二】平成17年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.対比・判断」で検討した本願補正発明から、「補給回路」についての限定事項である「油圧モータのキャビテーション防止のための」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項のすべてを含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「【二】平成17年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.対比・判断」に記載したとおり、上記引用刊行物に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用刊行物に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-28 
結審通知日 2007-04-02 
審決日 2007-04-13 
出願番号 特願平11-337049
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔中屋 裕一郎  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 大町 真義
常盤 務
発明の名称 管理作業車  
代理人 風早 信昭  

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