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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1158550
審判番号 不服2006-16319  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-27 
確定日 2007-06-07 
事件の表示 特願2002-325478「集積回路のパターン設計方法、露光マスクの作成方法、および集積回路装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年6月3日出願公開、特開2004-157475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年(2002年)11月8日に出願された特願2002-325478号の出願に係り、原審における平成17年6月29日付の拒絶理由通知に対し、平成17年9月5日付の意見書とともに同日付の明細書を補正する手続補正書が提出され、前記拒絶理由により平成18年6月19日付で拒絶査定され、その後、前記拒絶査定を不服として、平成18年7月27日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求の日から30日以内の平成18年8月28日付の明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成18年8月28日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年8月28日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成18年8月28日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成17年9月5日付の手続補正により補正された特許請求の範囲についての
「【請求項1】 集積回路の回路パターンを設計するための第1の設計データのうちの少なくとも一部の部分データに対し、前記回路パターンを転写する際に用いる露光マスクのスペック値を考慮した被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さいと判断された場合、前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記部分データを修正する工程と、
前記修正された部分データを用いて前記第1の設計データを更新して第2の設計データを作成する工程と、
を含む集積回路のパターン設計方法であって、
前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出することを特徴とする集積回路のパターン設計方法。
【請求項2】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程から前記部分データを修正する工程までを、前記部分データごとに前記第1の設計データの全てのデータに対して行うことを特徴とする請求項1に記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項3】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程、および前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程を、前記第1の設計データの全てのデータに対して一括して行うとともに、
前記一括して算出されたリソグラフィ工程の裕度の中に前記必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さい部分が含まれていた場合、この小さい部分に対応する前記部分データを前記第1の設計データの中から検出し、
検出された前記部分データに対する前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が、前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記部分データを修正することを特徴とする請求項1に記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項4】 前記露光マスクのスペック値として、前記露光マスクの寸法に関するもの、前記露光マスクが位相シフトマスクの場合にはその透過率または位相差に関するもの、前記露光マスクのマスク欠陥に関するもの、および前記露光マスクのマスクパターンの描画エラーに関するもの、あるいはそれらのうちの幾つかを組み合わせたものを用いることを特徴とする請求項1?3のうちのいずれかに記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項5】 前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎとして、フォーカスの揺らぎ、および露光量の揺らぎのうちの少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項1に記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項6】 集積回路の回路パターンを設計するための設計データのうちの少なくとも一部の部分データに対し、前記回路パターンを転写する際に用いる露光マスクの第1のスペック値を考慮した被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さいと判断された場合、前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように、前記第1のスペック値のうち前記算出されたリソグラフィ工程の裕度を前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さくせしめているスペック値を変更する工程と、
前記変更されたスペック値を用いて前記第1のスペック値を更新して、第2のスペック値を設定する工程と、
前記回路パターンを転写するためのマスクパターンを前記第2のスペック値に基づいて前記露光マスクに形成する工程と、
を含む露光マスクの作成方法であって、
前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出することを特徴とする露光マスクの作成方法。
【請求項7】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程から前記スペック値を変更する工程までを、前記部分データごとに前記設計データの全てのデータに対して行うことを特徴とする請求項6に記載の露光マスクの作成方法。
【請求項8】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程、および前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程を、前記設計データの全てのデータに対して一括して行うとともに、
前記一括して算出されたリソグラフィ工程の裕度の中に前記必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さい部分が含まれていた場合、この小さい部分に対応する前記スペック値を前記第1のスペック値の中から検出し、
検出された前記スペック値に対する前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が、前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記スペック値を変更することを特徴とする請求項6に記載の露光マスクの作成方法。
【請求項9】 前記露光マスクの第1および第2のスペック値として、前記露光マスクの寸法に関するもの、前記露光マスクが位相シフトマスクの場合にはその透過率または位相差に関するもの、前記露光マスクのマスク欠陥に関するもの、および前記露光マスクのマスクパターンの描画エラーに関するもの、あるいはそれらのうちの幾つかを組み合わせたものを用いることを特徴とする請求項6?8のうちのいずれかに記載の露光マスクの作成方法。
【請求項10】 前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎとして、フォーカスの揺らぎ、および露光量の揺らぎのうちの少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項8に記載の露光マスクの作成方法。
【請求項11】 請求項6?10のうちのいずれかに記載の露光マスクの作成方法により作成された露光マスクを用いて被処理基板上にパターン転写を行うリソグラフィ工程を含むことを特徴とする集積回路装置の製造方法。」
の記載を、
「【請求項1】 集積回路の回路パターンを設計するための第1の設計データのうちの少なくとも一部の部分データに対し、前記回路パターンを転写する際に用いる露光マスクのスペック値を考慮した被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さいと判断された場合、前記集積回路の回路パターンのうち、前記リソグラフィ工程の裕度の値が必要とされる裕度の値よりも小さいと判断された回路パターン部分のみ設計変更を行うことにより、前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記第1の設計データの部分データを修正する工程と、
前記修正された部分データを用いて前記第1の設計データを更新して第2の設計データを作成する工程と、
を含む集積回路のパターン設計方法であって、
前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いることを特徴とする集積回路のパターン設計方法。
【請求項2】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程から前記部分データを修正する工程までを、前記部分データごとに前記第1の設計データの全てのデータに対して行うことを特徴とする請求項1に記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項3】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程、および前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程を、前記第1の設計データの全てのデータに対して一括して行うとともに、
前記一括して算出されたリソグラフィ工程の裕度の中に前記必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さい部分が含まれていた場合、この小さい部分に対応する前記部分データを前記第1の設計データの中から検出し、
検出された前記部分データに対する前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が、前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記部分データを修正することを特徴とする請求項1に記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項4】 前記露光マスクのスペック値として、前記露光マスクの寸法に関するもの、前記露光マスクが位相シフトマスクの場合にはその透過率または位相差に関するもの、前記露光マスクのマスク欠陥に関するもの、および前記露光マスクのマスクパターンの描画エラーに関するもの、あるいはそれらのうちの幾つかを組み合わせたものを用いることを特徴とする請求項1?3のうちのいずれかに記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項5】 前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎとして、フォーカスの揺らぎ、および露光量の揺らぎのうちの少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項1に記載の集積回路のパターン設計方法。
【請求項6】 集積回路の回路パターンを設計するための設計データのうちの少なくとも一部の部分データに対し、前記回路パターンを転写する際に用いる露光マスクの第1のスペック値を考慮した被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さいと判断された場合、前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように、前記露光マスクの第1のスペック値のうち前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度を満たさないスペック値のみを変更する工程と、
前記変更されたスペック値を用いて前記第1のスペック値を更新して、第2のスペック値を設定する工程と、
前記回路パターンを転写するためのマスクパターンを前記第2のスペック値に基づいて前記露光マスクに形成する工程と、
を含む露光マスクの作成方法であって、
前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いることを特徴とする露光マスクの作成方法。
【請求項7】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程から前記スペック値を変更する工程までを、前記部分データごとに前記設計データの全てのデータに対して行うことを特徴とする請求項6に記載の露光マスクの作成方法。
【請求項8】 前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程、および前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程を、前記設計データの全てのデータに対して一括して行うとともに、
前記一括して算出されたリソグラフィ工程の裕度の中に前記必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さい部分が含まれていた場合、この小さい部分に対応する前記スペック値を前記第1のスペック値の中から検出し、
検出された前記スペック値に対する前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が、前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記スペック値を変更することを特徴とする請求項6に記載の露光マスクの作成方法。
【請求項9】 前記露光マスクの第1および第2のスペック値として、前記露光マスクの寸法に関するもの、前記露光マスクが位相シフトマスクの場合にはその透過率または位相差に関するもの、前記露光マスクのマスク欠陥に関するもの、および前記露光マスクのマスクパターンの描画エラーに関するもの、あるいはそれらのうちの幾つかを組み合わせたものを用いることを特徴とする請求項6?8のうちのいずれかに記載の露光マスクの作成方法。
【請求項10】 前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎとして、フォーカスの揺らぎ、および露光量の揺らぎのうちの少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項6に記載の露光マスクの作成方法。
【請求項11】 請求項6?10のうちのいずれかに記載の露光マスクの作成方法により作成された露光マスクを用いて被処理基板上にパターン転写を行うリソグラフィ工程を含むことを特徴とする集積回路装置の製造方法。」
と補正することを含むものである。

2 本件補正についての検討
(1)本件補正が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否か、すなわち、同法第17条の2第1項第4号の規定によりなされた特許請求の範囲についてする補正が、同法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的に該当する補正であるか否かについて検討する。

(2)本件補正の内容
ア 本件補正により、本件補正前の請求項1(本件補正前の請求項1を「旧請求項1」といい、本件補正後の請求項1を「新請求項1」などということがある。以下同様。)の発明特定事項として、新請求項1に「前記集積回路の回路パターンのうち、前記リソグラフィ工程の裕度の値が必要とされる裕度の値よりも小さいと判断された回路パターン部分のみ設計変更を行うことにより、」という発明特定事項が追加された。

イ 本件補正により、旧請求項1に記載されていた「前記部分データ」が、新請求項1では、「前記第1の設計データの部分データ」と補正された。

ウ 本件補正により、旧請求項1に記載されていた「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出すること」という発明特定事項が、新請求項1では、「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いること」に補正された。

エ 本件補正により、旧請求項6に記載されていた「前記第1のスペック値」が、新請求項6では、「前記露光マスクの第1のスペック値」と補正された。

オ 本件補正により、旧請求項6に記載されていた「第1のスペック値のうち前記算出されたリソグラフィ工程の裕度を前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さくせしめているスペック値を変更する工程」という発明特定事項が、新請求項6では、「第1のスペック値のうち前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度を満たさないスペック値のみを変更する工程」に補正された。

カ 本件補正により、旧請求項6に記載されていた「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出すること」という発明特定事項が、新請求項6では、「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いること」に補正された。

キ 本件補正により、旧請求項10に記載されていた「請求項8」の引用請求項が、新請求項10では、「請求項6」に補正された。

(3)本件補正について当審の判断
ア 上記本件補正のうちの「ア」、「イ」及び「エ」の各補正は、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する補正である。

イ また、上記本件補正のうちの「キ」の補正は、同法第17条の2第4項第3号の「誤記の訂正」を目的とするものに該当する補正である。

ウ 一方、上記本件補正のうちの「ウ」及び「カ」の各補正は、本件補正前の「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出すること」という発明特定事項が、「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いること」の発明特定事項に補正されたものであり、かかる補正は、本件補正前の「リソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、……前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出すること」のような、トートロジー(tautology:同語反復)による冗語表現のために明りようでなかった前記発明特定事項の記載を、本件補正により、「リソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、……前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いること」に補正して、冗語表現を形式的に一応解消するためになされた補正であると認められる。
しかしながら、前記「ウ」及び「カ」の各補正における「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いること」の記載の中の「プロセスの揺らぎを用いること」の技術的に意味するところが、下記「(4)独立特許要件の有無についての検討」の「イ」欄に後述する理由により、明りようであるとはいえず、本件補正前の記載が、本件補正により明りようになったとは少なくともいえないから、前記「ウ」及び「カ」の各補正は、同法第17条の2第4項第4号の「明りようでない記載の釈明」を目的とするものに該当する補正と認めることができない。

エ また、上記本件補正のうちの「オ」の補正は、本件補正前の「第1のスペック値のうち前記算出されたリソグラフィ工程の裕度を前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さくせしめているスペック値を変更する工程」という発明特定事項を、「第1のスペック値のうち前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度を満たさないスペック値のみを変更する工程」に補正するものである。
しかしながら、前記「オ」の補正では、本件補正前の前記発明特定事項と本件補正後の前記発明特定事項との間に、実質的な意味の相違が認められず、単に同じ意味で形式的に相違するの他の表現に言い換えただけの補正と認められるから、前記「オ」の補正は、同法第17条の2第4項第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げるところの、
第1号:第三十6条第5項に規定する請求項の削除
第2号:特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
第3号:誤記の訂正
第4号:明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
のいずれの目的にも該当しない補正である。

オ まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的のいずれにも該当しない補正を含むものである。

(4)独立特許要件の有無についての検討
上記のとおり、本件補正に係る請求項1及び請求項6についての補正が、少なくとも特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正を含んでいるので、本件補正後の請求項1及び請求項6に記載された発明が、それぞれ特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについても、さらに検討する。

ア 上記「(2)本件補正の内容」の「ウ」及び「カ」欄に前述したとおり、本件補正により、旧請求項1及び旧請求項6のそれぞれにおける本件補正前の「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出すること」という発明特定事項が、新請求項1及び新請求項6のそれぞれにおいて、「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いること」の発明特定事項に補正された。

イ しかしながら、上記「(3)本件補正について当審の判断」の「ウ」欄にも前述したとおり、本件補正後の新請求項1及び新請求項6に係る「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いることを特徴とする」の記載の中の「プロセスの揺らぎを用いること」の記載は、「プロセスの揺らぎ」の記載そのものの意味が明りようでないばかりでなく、「プロセスの揺らぎを用いること」の技術的な意味も明りようであるとはいえない。
しかも、この場合において、「……リソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、……前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いることを特徴とする」と記載されていて、「前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度(A)」と「前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎ(B)」との関係が、これを端的に書けば「……工程は、Aとして、Bを用いることを特徴とする」と表現されていることからすると、AとBの両者の意味・内容は、文法的に「同等」又は「同格」であるはずのものと考えられるところ、「前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度(A)」と「前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎ(B)」とは、技術的観点からみて、「裕度(A)」と「揺らぎ(B)」の両者が技術的に「同等」又は「同格」の意味・内容のものであるということができない。
したがって、上記の理由により、「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎを用いること」の記載全体の意味も、明りようであるということができない。

ウ 以上のことから、本件補正後の新請求項1及び新請求項6に係る発明の発明特定事項が、明確であるということができない。

エ したがって、本件補正後の新請求項1及び新請求項6に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する「特許を受けようとする発明が明確であること。」の要件を満たしていないから、本願特許出願は拒絶されるべきものであるので、新請求項1及び新請求項6に係る発明は、結果的に特許を受けることができないものである。

オ まとめ
以上のとおり、本件補正後の特許請求の範囲に記載された請求項1及び請求項6に係る発明が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定するところの「特許出願の際独立して特許を受けることができるもの」に適合していない。

3 むすび
以上のとおりであり、本件補正が特許法第17条の2第4項の規定に適合していない補正を含んでいるばかりでなく、本件補正後の特許請求の範囲に記載された請求項1及び請求項6に係る発明についての補正が、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定するところの「本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」という独立特許要件をも満たしていないから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」欄に前述した理由により、平成18年8月28日付の手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき本願発明は、平成17年9月5日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(上記「第2」の「1 補正の内容」欄を参照)。
「【請求項1】 集積回路の回路パターンを設計するための第1の設計データのうちの少なくとも一部の部分データに対し、前記回路パターンを転写する際に用いる露光マスクのスペック値を考慮した被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さいと判断された場合、前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記部分データを修正する工程と、
前記修正された部分データを用いて前記第1の設計データを更新して第2の設計データを作成する工程と、
を含む集積回路のパターン設計方法であって、
前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出することを特徴とする集積回路のパターン設計方法。」(以下、これを「本願発明1」という。)

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である特開2002-131882号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「マスクパターン補正方法、マスクパターン補正装置、マスクパターン補正プログラムを格納した記録媒体、及び半導体装置の製造方法」に関し、図面の記載とともに次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定のデザインルールに従って設計された、半導体装置の光露光工程において使用するマスクの設計パターンから、露光量と焦点距離の変動に対するプロセス裕度が所定の基準値に達していないパターンを抽出する第1ステップと、
前記プロセス裕度が前記基準値を満たすように前記パターンを補正する第2ステップと
を少なくとも具備することを特徴とするマスクパターン補正方法。
【請求項2】 補正の前後で前記パターンのパターンピッチが一定に保持されているか否かを判定する第3ステップをさらに具備することを特徴とする請求項1記載のマスクパターン補正方法。
【請求項3】 補正後の前記パターンが、前記デザインルールを満たしているか否かを判定する第4ステップをさらに具備することを特徴とする請求項1又は2記載のマスクパターン補正方法。
【請求項4】 前記第2ステップにおいて補正された前記パターンがラインパターンである場合、
前記第4ステップは、前記ラインパターンが、前記デザインルールに規定する最小ライン寸法及び最小スペース寸法以上のライン寸法及びスペース寸法を有するパターンであるか否かを判定するステップである
ことを特徴とする請求項3記載のマスクパターン補正方法。
【請求項5】 前記第2ステップにおいて補正された前記パターンが配線パターンである場合、
補正後の前記配線パターンのライン寸法が、配線容量の許容範囲内に収まっているか否かを判定する第5ステップを
さらに有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1記載のマスクパターン補正方法。
【請求項6】 前記第1ステップは、
前記設計パターンを用いて光露光工程のシミュレーションを行い、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出する第1作業と、
前記転写パターンを用いて、露光量と焦点距離を振ったときのパターン寸法の変動量を算出する第2作業と、
前記パターン寸法の変動量が基準値以上であるか否かを判定することにより、前記プロセス裕度を判定する第3作業と
から構成されていることを特徴とする請求項1記載のマスクパターン補正方法。」
「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、半導体装置の光露光工程で用いるマスクを補正するマスクパターン補正方法、マスクパターン補正装置、及びマスクパターン補正プログラムを格納した記録媒体、及びこのマスクを用いた光露光工程を含む半導体装置の製造方法に関する。」
「【0009】 本発明はこのような従来技術の問題点を解決するために成されたものであり、その目的は、半導体ウェハ上にプロセス裕度及び補正精度が高いパターンを形成するマスクパターン補正方法、マスクパターン補正装置及びマスクパターン補正プログラムを格納した記録媒体を提供することである。
【0010】 本発明の他の目的は、集積度が高い半導体チップを歩留り良く製造する半導体装置の製造方法を提供することである。」
「【0011】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、所定のデザインルールに従って設計された、半導体装置の光露光工程において使用するマスクの設計パターンから、露光量と焦点距離の変動に対するプロセス裕度が所定の基準値に達していないパターンを抽出する第1ステップと、プロセス裕度が基準値を満たすようにパターンを補正する第2ステップとを少なくとも具備するマスクパターン補正方法であることである。
【0012】 ここで、デザインルールは、マスクパターンを設計するうえでの設計基準であり、光露光技術、エッチング加工技術などのいわゆる微細加工技術において、製造することができる最小のライン寸法、スペース寸法などを規定している。このデザインルール上では製造可能なパターンであっても、光露光工程における露光量或いは焦点距離などの変動により、実際にはパターン寸法が大きく変動してしまうパターンが存在する。この露光量或いは焦点距離などの変動によるパターン寸法の変動量が大きい場合、「プロセス裕度」が基準値に達していないと判断し、設計パターンに対して補正を施す。プロセス裕度の基準値は、デザインルール、微細加工精度、素子の電気特性などを勘案して定められる。
【0013】 本発明の第1の特徴によれば、マスクの設計パターンに対して、プロセス裕度の補正を行うことができる。また、この補正の対象となるマスクの設計パターンは、デザインルールに従って作成されたものである。従って、デザインルールに対してプロセス裕度に関するルールを加えたり、或いはデザインルールを制限することなく、プロセス裕度が基準値に満たないパターンを補正することができる。また、プロセス裕度が基準値を常に満たすパターンを半導体ウェハ上に形成し、且つ補正精度の高いマスクパターンを形成することができる。
【0014】 本発明の第1の特徴において、補正の前後で前記パターンのパターンピッチが一定に保持されているか否かを判定する第3ステップをさらに具備することが望ましい。パターンにプロセス裕度の補正を施すことで、補正の前後でパターンピッチが変化する場合が考えられる。そこで、補正後のパターンに対して、パターンピッチの変化の有無を判定し、パターンピッチの変化がある場合に、該当するパターンに対して再度プロセス裕度の補正を施す。つまり、第3ステップにおいてデザインルールを満たしていないと判定された場合、第2ステップに戻り、プロセス裕度を満たし、且つパターンピッチが一定に保持されるまで繰り返し補正を行うことで、補正精度をより高めることができる。
【0015】 本発明の第1の特徴において、補正後のパターンが、デザインルールを満たしているか否かを判定する第4ステップをさらに具備することが望ましい。パターンにプロセス裕度の補正を施すことで、プロセス裕度は満たすがデザインルールを満たさなくなる場合が考えられる。そこで、補正後のパターンに対して、デザインルールに規定する最小ライン寸法及び最小スペース寸法を満たすか否かを判定し、デザインルール違反を発見した場合に、該当する設計パターンに対して再度プロセス裕度の補正を施す。つまり、第4ステップにおいてデザインルールを満たしていないと判定された場合、第2ステップに戻り、プロセス裕度及びデザインルールを同時に満たすまで繰り返し補正を行うことで、補正精度をより高めることができる。なお、第4ステップは、第2ステップの後に行えばよく、第3ステップとの前後関係は特に問わない。
【0016】 本発明の第1の特徴において、第2ステップにおいて補正されたパターンがラインパターンである場合、第4ステップは、ラインパターンが、デザインルールに規定する最小ライン寸法及び最小スペース寸法以上のライン寸法及びスペース寸法を有するパターンであるか否かを判定するステップであることが望ましい。さらに、第2ステップにおいて補正されたパターンが配線パターンである場合、補正後の配線パターンのライン寸法が、配線容量の許容範囲内に収まっているか否かを判定する第5ステップを有することが望ましい。配線パターンにプロセス裕度の補正を施すことで、プロセス裕度は満たすが配線容量が基準値より大きくなる場合が考えられる。そこで、補正後の配線パターンのライン寸法が、配線容量の許容範囲内におさまっているか否かを判定し、許容範囲を越えている場合には、該当する設計パターンに対して再度プロセス裕度の補正を施す。つまり、第5ステップにおいて配線容量が許容範囲内におさまっていないと判定された場合、第2ステップに戻り、プロセス裕度及び容量基準を同時に満たすまで繰り返し補正を行うことで、補正精度をより高めることができる。なお、第5ステップは、第2ステップの後に行えばよく、第3ステップ或いは第4ステップとの前後関係は特に問わない。
【0017】 本発明の第1の特徴において、第1ステップは、
(1)設計パターンを用いて光露光工程のシミュレーションを行い、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出する第1作業と、
(2)転写パターンを用いて、露光量と焦点距離を振ったときのパターン寸法の変動量を算出する第2作業と、
(3)パターン寸法の変動量が基準値以上であるか否かを判定することにより、プロセス裕度を判定する第3作業と
から構成されていることが望ましい。
【0018】 本発明の第1の特徴において、第2ステップの後に、補正された設計パターンがウェハ上に転写及び加工される際、所望パターン寸法または所望パターン形状が形成できなくなる場合に、所望パターン寸法または所望パターン形状を得るために補正された設計パターンを更に近接効果補正を施すことが望ましい。補正後の設計パターンに対して必要な近接効果補正を行うことで、より高精度なマスクパターン補正を行うことができるようになる。
【0019】 また、補正対象のマスクは、配線パターンなどのライン系或いはコンタクトホール系であることが望ましい。ライン系の場合、ライン及びそれに隣接するスペースとの関係からプロセス裕度の判定を行うことができ、コンタクトホール系の場合、コンタクト径及び隣接するコンタクト間距離の関係からプロセス裕度の判定を行うことができる。さらに、コンタクトホール系で作成された補正ルールが、コンタクトホールの各々の辺に独立して適用されることが望ましい。」
「【0025】 処理制御部3は、露光量(ドーズ量)及び焦点距離(フォーカス)に対するプロセス裕度が、予め定められた所定の基準値に達していないパターンを設計パターンから抽出するパターン抽出部6と、抽出されたパターンをプロセス裕度が基準値を満たすように補正するパターン補正部7と、補正後のパターンピッチが補正前のパターンピッチに対して、一定に保持されているか否かをチェックするパターンピッチチェック部8と、補正後のパターンの配線容量が許容範囲内に収まっているか否かをチェックする配線容量チェック部9と、補正後のパターンがデザインルールを満たしているか否かをチェックするデザインルールチェック部10と、補正後の設計パターンの必要な部分に対して近接効果補正(OPC)パターンを付して、近接効果補正を施す近接効果補正(OPC)部11とから少なくとも構成されている。」
「【0026】 パターン抽出部6は、所定のデザインルールに従って設計された、半導体装置の光露光工程において使用するマスクの設計パターンから、露光量と焦点距離の変動に対するプロセス裕度が所定の基準値に達していないパターンを抽出する機能を有する。
【0027】 また、パターン抽出部6は、
(1)設計パターンを用いて光露光工程のシミュレーションを行い、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出する手段と、
(2)転写パターンを用いて、露光量と焦点距離の条件を振ったときのパターン寸法の変動量を算出する手段と、
(3)パターン寸法の変動量が基準値よりも大きいか否かを判定することにより、プロセス裕度を判定する手段と
から構成されている。これらの機能手段は、それぞれ専用のハードウェアで構成しても良く、通常のコンピュータシステムのCPUを用いて、ソフトウェアで実質的に等価な機能を有する機能手段としてそれぞれを構成してもよい。
【0028】 処理制御部3には、入出力制御部25を介して、操作者からのデータや命令などの入力を受け付ける入力装置4及びパターン補正結果を出力する出力装置5がそれぞれ接続されている。入力装置4はキーボード、マウス、ライトペンまたはフロッピーディスク装置などで構成されている。また出力装置5はディスプレイ装置やプリンタ装置などにより構成されている。
【0029】 マスクパターン補正装置26には、マスクパターン設計装置12が接続されている。マスクパターン設計装置12は、半導体装置の光露光工程において使用するマスクを設計する機能を有する。設計パターンデータは、マスクパターン補正装置26に送信され、データ記憶部1に格納される。
【0030】 図1に示した処理制御部3で実行される各処理の入力データは、データ記憶部1に格納され、プログラム命令はプログラム記憶部2に格納される。そしてこれらのデータ及びプログラム命令は必要に応じてCPUに読み込まれ、CPUの内部の処理制御部3によって、制御処理が実行されるとともに、各工程で発生した数値情報などのデータはRAMや磁気ディスクなどのデータ記憶部1に格納される。」
「【0031】 次に、図2乃至図4を参照して、処理制御部3で実行されるマスクパターン補正の処理手順を説明する。ここで重要なことは以下に示すとおりである。即ち、従来技術では設計パターンを変更することなく、マスクパターンがウェハ上に転写されない場合にOPCなどの手法でマスクパターンを補正していた。これに対して、本発明は設計パターンからプロセス裕度が基準値を満たしていないパターンを抽出し、抽出されたパターンのプロセス裕度が基準値を満たすように設計パターンを補正し、補正された設計パターンがウェハ上に転写されない場合は、OPCなどの手法でさらにマスクパターンを補正する。
【0032】 図2は、本発明の第1の実施の形態に係るマスクパターン補正方法の全体構成を示すフローチャートである。なお、第1の実施の形態においては、ラインとスペースとから構成される配線パターンについてそのラインとそれに隣接するスペースとの関係に着目する。そして、ラインとスペースの関係から得られるプロセス裕度が基準値を満たさない配線パターンを抽出して、抽出された配線パターンのプロセス裕度が基準値を満たすように補正する方法について述べる。」
「【0033】 (イ)まず、ステップS01において、マスクの設計パターンをCPU内に読み込み、ラインとスペースの関係から得られるプロセス裕度が基準値に達していない配線パターンを設計パターンから抽出する。デザインルール上では製造可能な配線パターンであっても、光露光工程における露光量或いは焦点距離などの変動により、実際にはパターン寸法が大きく変動してしまう配線パターンが存在する。この露光量或いは焦点距離などの変動によるパターン寸法の変動量が大きい配線パターンは、プロセス裕度が基準値に達していない配線パターンであると判断され、設計パターンから抽出される。ここで、ステップS01は、ステップS011乃至S016から構成される。図3は、ステップS01の詳細な構成を示すフローチャートである。
【0034】 まず、ステップS011において、設計パターンから、任意の配線パターンを選び出す。選出する配線パターンの数は、単数であっても構わないが、複数であることが望ましい。図4(a)は、ステップS011において選出された3つの配線パターン(13?15)の一例を示す。選出された配線パターン(13?15)のライン寸法(L1、L2、L3)及びスペース寸法(S1、S2)が設計パターンデータから読み出される。
【0035】 次に、ステップS012において、露光量及び焦点距離の条件を振って、露光工程のシミュレーションを行う。図4(b)は、図4(a)に示した配線パターン(13?15)のシミュレーション結果(転写パターン)を示す。実線は、図4(a)に示した設計パターンを示す。破線は、露光量及び焦点距離の条件を所定範囲内で振ったときの最大ライン寸法及び最小ライン寸法の転写パターンを示す。ここでいう所定範囲とは、実際の光露光工程において想定しうる露光量及び焦点距離の変動範囲であることが望ましい。
【0036】 次に、ステップS013において、各配線パターン(13?15)について、最大ライン寸法と最小ライン寸法の間隔(パターン寸法の変動量)16を算出する。図4(b)に示すように、配線パターン13の変動量16に比して、配線パターン14及び配線パターン15の変動量16が大きい。
【0037】 次に、ステップS014において、各配線パターン(13?15)について、変動量16が基準値以上であるか否かを判定する。変動量16が基準値以上である場合(ステップS014においてYES)、ステップS015へ進み、プロセス裕度が基準値に達していない配線パターン(プロセス裕度未達パターン)であると判断され、設計パターンから抽出される。変動幅16が基準値よりも小さい場合(ステップS014においてNO)、ステップS015を飛ばしてステップ016へ進む。つまり、プロセス裕度が基準値を満たしている配線パターンであると判断され、プロセス裕度の補正対象から外される。なおここでは、図4(b)に示した配線パターン13の変動量は基準値よりも小さいと判断され、パターン14及びパターン15の変動量16は基準値以上であると判断されるものとする。
【0038】 次に、ステップS016において、設計パターンの中でまだパターン選出(S011)されていない配線パターンがあるか否かを判定する。設計パターン中の総ての配線パターンがすでに選出されている場合(ステップS016においてYES)、ステップS02へ進む。設計パターン中の総ての配線パターンがまだ選出されていない場合(ステップS016においてNO)、ステップS011へもどり、まだ選出されていない配線パターンに対して上記ステップを行う。そして、設計パターン中の総ての配線パターンが選出されるまで、このループを繰り返す。」
「【0039】 (ロ)次に、ステップS02において、プロセス裕度未達パターンとして抽出された配線パターンに対して、プロセス裕度が基準値を満たすように補正を施す。変動量16が基準値以上である配線パターン14及び配線パターン15に対して、変動量16が基準値よりも小さくなるように、図4(c)に示すように、ライン寸法及びスペース寸法を補正する。例えば、配線パターン14のライン寸法をL2からL2’まで広げ、配線パターン13とのスペース寸法をS1からS1’まで狭める。配線パターン15に対しても同様に、ライン寸法及びスペース寸法を補正する。なお、変動量16が基準値よりも小さくなるように補正するには、露光工程のシミュレーションとパターン補正作業とを連動させ、変動量16が基準値よりも小さくなるまでシミュレーションと補正作業を繰り返し行えばよい。」
「【0046】 (ト)最後に、ステップS07において、設計パターンデータに基づいてマスクを製作する。」
「【0049】 本発明の第1の実施の形態によれば、設計パターンが配線パターンである場合において、設計パターンからプロセス裕度が基準値に達していない配線パターンを抽出してプロセス裕度の補正を施すことができる。従って、プロセス裕度が基準値を常に満たす配線パターンのマスクに形成することができる。また、プロセス裕度と同時に、配線容量、パターンピッチ、デザインルールなどのチェック、及びOPC補正を行うことで、補正精度の高いマスクパターンを形成することができる。また、デザインルールに対してプロセス裕度に関するルールを加えたり、或いはデザインルールを制限することなく、プロセス裕度が基準値に満たないパターンを補正することができる。」

そうしてみると、引用刊行物の上記摘記事項及び図面の図示からみて、前記引用刊行物には、次の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。
「処理制御部3が、露光量(ドーズ量)及び焦点距離(フォーカス)に対するプロセス裕度が、予め定められた所定の基準値に達していないパターンを設計パターンから抽出するパターン抽出部6と、抽出されたパターンをプロセス裕度が基準値を満たすように補正するパターン補正部7とを有し、
ラインとスペースの関係から得られるプロセス裕度が、デザインルール、微細加工精度、素子の電気特性などを勘案して予め定められたプロセス裕度の基準値を満たさない配線パターンを前記パターン抽出部6が抽出する第1ステップと、抽出された配線パターンのプロセス裕度が基準値を満たすように前記パターン補正部7が補正する第2ステップとからなり、半導体ウェハ上にプロセス裕度及び補正精度が高いパターンを形成するマスクパターン補正方法であって、
前記パターン抽出部6が、所定のデザインルールに従って設計された、半導体装置の光露光工程において使用するマスクの設計パターンから、露光量と焦点距離の変動に対するプロセス裕度が所定の基準値に達していないパターンを抽出する第1ステップは、前記設計パターンを用いて光露光工程のシミュレーションを行い、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出する第1作業と、前記転写パターンを用いて、露光量と焦点距離の条件を振ったときのパターン寸法の変動量を算出する第2作業と、前記パターン寸法の変動量が基準値以上であるか否かを判定することにより、前記プロセス裕度を判定する第3作業とから構成されており、
まず、前記パターン抽出部6が、露光量或いは焦点距離などの変動によるパターン寸法の変動量が大きい配線パターンを、プロセス裕度が基準値に達していない配線パターンであると判断して、設計パターンから抽出するに際しては、ステップS011において、設計パターンから、任意の配線パターンを選び出し、ステップS012において、露光量及び焦点距離の条件を振って、露光工程のシミュレーションを行い、ステップS013において、各配線パターン(13?15)について、最大ライン寸法と最小ライン寸法の間隔(パターン寸法の変動量)16を算出し、ステップS014において、各配線パターン(13?15)について、変動量16が基準値以上であるか否かを判定し、変動量16が基準値以上である場合に、ステップS015へ進み、プロセス裕度が基準値に達していない配線パターン(プロセス裕度未達パターン)であると判断され、設計パターンから抽出される一方で、変動幅16が基準値よりも小さい場合には、ステップS015を飛ばしてステップ016へ進み、プロセス裕度が基準値を満たしている配線パターンであると判断され、プロセス裕度の補正対象から外されるとともに、ステップS016において、設計パターンの中でまだパターン選出(S011)されていない配線パターンがあるか否かを判定し、設計パターン中の総ての配線パターンがすでに選出されている場合には、ステップS02へ進み、設計パターン中の総ての配線パターンがまだ選出されていない場合には、ステップS011へもどり、まだ選出されていない配線パターンに対して上記ステップを行い、設計パターン中の総ての配線パターンが選出されるまで、このループを繰り返すことにより、ステップS01において、マスクの設計パターンをCPU内に読み込み、ラインとスペースの関係から得られるプロセス裕度が基準値に達していない配線パターンを設計パターンから抽出し、
次に、前記パターン補正部7が、ステップS02において、変動量16が基準値以上である配線パターンに対して、変動量16が基準値よりも小さくなるように、ライン寸法及びスペース寸法を補正することにより、プロセス裕度未達パターンとして抽出された配線パターンに対しプロセス裕度が基準値を満たすように補正を施して、ステップS07において、設計パターンデータに基づいてマスクを製作するようにした、
設計パターンからプロセス裕度が基準値を満たしていないパターンを抽出し、抽出されたパターンのプロセス裕度が基準値を満たすように設計パターンを補正するマスクパターン補正方法」

(2)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である特開平7-175204号公報(以下、「周知技術文献1」という。)には、「フォトマスク、フォトマスクの製造方法、露光方法及び半導体装置の製造方法」に関し、図面の記載とともに次の事項が記載されている。
「【請求項5】 光透過領域と遮光領域を有するフォトマスクの製造方法において、
あらかじめ設定したデフォーカス裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内の複数個のデフォーカス、マスクパターンサイズの値の組み合わせを設定し、更に露光量を変化させて、得られる転写パターンを求め、該パターンが設計時における許容条件を満たすか否かを判定し、これより前記においてあらかじめ設定したデフォーカス裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内全てにおいて該許容条件を満たす露光量の範囲である露光量裕度を求め、
マスクパラメータが、該露光量裕度を最大にする構成で設定されていることを特徴とするフォトマスクの製造方法。」
「【請求項14】 光透過領域と遮光領域を有するフォトマスクの製造方法において、
あらかじめ設定した露光量裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内の複数個の露光量、マスクパターンサイズの値の組み合わせを設定し、更にデフォーカスをジャストフォーカス近傍で変化させて、得られる転写パターンを求め、該パターンが設計時における許容条件を満たすか否かを判定し、これより前記においてあらかじめ設定した露光量裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内全てにおいて該許容条件を満たすデフォーカスの範囲であるデフォーカス裕度を求め、
マスクパラメータが、該デフォーカス裕度を最大にする構成で設定されていることを特徴とするフォトマスクの製造方法。」
「【請求項23】 光透過領域と遮光領域を有するフォトマスクの製造方法において、
あらかじめ設定した露光量裕度、デフォーカス裕度の範囲内の複数個の露光量、デフォーカスの値の組み合わせを設定し、更にマスクパターンサイズ裕度を変化させて、得られる転写パターンを求め、該パターンが設計時における許容条件を満たすか否かを判定し、これより前記においてあらかじめ設定した露光量裕度、デフォーカス裕度の範囲内全てにおいて該許容条件を満たすマスクパターンサイズの範囲であるマスクパターンサイズ裕度を求め、
マスクパラメータが、該マスクパターンサイズ裕度を最大にする構成で設定されていることを特徴とするフォトマスクの製造方法。」
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、フォトマスク、フォトマスクの製造方法、露光方法及び半導体装置の製造方法に関する。本発明は、各種パターン状画像形成に使用できるフォトマスク、該フォトマスクの製造方法、該フォトマスクを使用する露光方法及び該フォトマスクを使用した半導体装置の製造方法として利用でき、例えば、半導体装置製造工程において各種パターン形成技術等に用いられるフォトマスク、その製造方法、このフォトマスクを用いる露光方法として利用することができ、更にこれを適用した露光装置、更には半導体装置の製造方法として具体化できるものであり、例えば、メモリ素子、論理演算素子、CCD素子、LCD素子等の半導体装置の製造方法に利用することができるものである。」
「【0011】 また、パターンの微細化に伴い、これまで問題にならなかったマスクパターンサイズのばらつきの転写パターンへの影響が大きな問題として顕在化しつつあるが、従来技術においては、これまでマスクパターンサイズのばらつきを考慮して評価を行うことは不可能であった。マスクパターンサイズのばらつきを考慮しないことは、即ち、マスクパターンサイズが常に設計サイズと一致して一定であるとの条件のもとで評価が行われて来たことを意味する。しかしながら、実際にはマスク作製工程におけるプロセス上のばらつきにより、マスクパターンサイズのばらつきを完全に無くすることは不可能である。よって必然的にマスクパターンサイズのばらつきを該評価に反映させることが適正な条件設定のためには不可欠であったにも拘らず、従来技術ではこれが不可能であった。
【0012】【発明の目的】 本発明は、上記従来技術の問題点を解決して、多数のパラメータ、例えば3個以上のパラメータについても、それらの相関関係を見い出すことができ、これらの相関により最適条件を求めることができ、実際の条件との乖離も小さく、各種性能の定量的な把握が可能で、時間とコストの低減も図ることができ、マスクパターンサイズのばらつきなどの影響をも考慮できて、実際の最適化が可能であるフォトマスク、フォトマスクの製造方法、露光方法及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。」
「【0020】 本出願の請求項5の発明は、光透過領域と遮光領域を有するフォトマスクの製造方法において、あらかじめ設定したデフォーカス裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内の複数個のデフォーカス、マスクパターンサイズの値の組み合わせを設計し、更に露光量を変化させて、得られる転写パターンを求め、該パターンが設計時における許容条件を満たすか否かを判定し、これより前記においてあらかじめ設定したデフォーカス裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内全てにおいて該許容条件を満たす露光量の範囲である露光量裕度を求め、マスクパラメータが、該露光量裕度を最大にする構成で設定されていることを特徴とするフォトマスクの製造方法であって、これによって上記目的を達成するものである。
【0021】 この発明においては、露光量裕度を求める場合に、あらかじめ設定したデフォーカス裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内の複数個のデフォーカス、マスクパターンサイズの値の組み合わせを設定するが、この設定は、該あらかじめ設定したデフォーカス裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内をできるだけ細かく網羅する組み合わせで設定することが好ましい。更にこの組み合わせに基づき、各組み合わせについて、露光量を変化させて、得られる転写パターンを求めるのであるが、この露光量を変化させてその各場合に得られる転写パターンを求めるのは、シミュレーション等を用いる計算による操作でも、実験等による実測によるものでも、双方を組み合わせて求めるのでもよい。
【0022】 上記求める転写パターンは、代表的にはフォトリソグラフィー時の転写レジストパターンであり、かかる転写レジストパターンを求める態様で好ましく実施できる。各種手段により求めた各場合の転写パターンが、設定時における許容条件を満たすか否かを判定し、即ち例えば該パターンにおいて、パターンサイズ、パターン面積、あるいはパターン形状等が、設計時(半導体装置形成用マスクであれば、半導体装置設計時)における許容条件を満たすか否かを判定する。この判定に基づいて、前記あらかじめ設定したデフォーカス裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内全てにおいて許容条件を満たす露光量の範囲即ち露光量裕度を求めるのである。この露光量裕度を最大とするように、少なくともいずれかのマスクパラメータを設定する。このマスクパラメータとしては、例えば、設計パターンの形状及びサイズ、光透過領域の透過率及び位相、遮光領域の透過率及び位相等のマスクパラメータを挙げることができる。
【0023】 上記のようにしてマスク設計の最適化条件を求めることができ、これによって最適なマスクを製造することができる。
【0024】 このマスク設計の最適化条件を求める際、同時に、露光条件の最適化条件を定めるようにすることができる。」
「【0039】 本出願の請求項14の発明は、光透過領域と遮光領域を有するフォトマスクの製造方法において、あらかじめ設定した露光量裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内の複数個の露光量、マスクパターンサイズの値の組み合わせを設定し、更にデフォーカスをジャストフォーカス近傍で変化させて、得られる転写パターンを求め、該パターンが設定時における許容条件を満たすか否かを判定し、これより前記においてあらかじめ設定した露光量裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内全てにおいて該許容条件を満たすデフォーカスの範囲であるデフォーカス裕度を求め、マスクパラメータが、該デフォーカス裕度を最大にする構成で設定されていることを特徴とするフォトマスクの製造方法であって、これによって上記目的を達成するものである。
【0040】 この発明においては、デフォーカス裕度を求める場合に、あらかじめ設定した露光量裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内の複数個の露光量、マスクパターンサイズの値の組み合わせを設定するが、この設定は、該あらかじめ設定した露光量裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内をできるだけ細かく網羅する組み合わせで設定することが好ましい。更にこの組み合わせに基づき、各組み合わせについて、デフォーカスをジャストフォーカス近傍で変化させて、得られる転写パターンを求めるのであるが、このデフォーカスを変化させてその各場合に得られる転写パターンを求めるのは、シミュレーション等を用いる計算による操作でも、実験等による実測によるものでも、双方を組み合わせて求めるのでもよい。
【0041】 上記求める転写パターンは、代表的にはフォトリソグラフィー時の転写レジストパターンであり、かかる転写レジストパターンを求める態様で好ましく実施できる。各種手段により求めた各場合の転写パターンが、設定時における許容条件を満たすか否かを判定し、即ち例えば該パターンにおいて、パターンサイズ、パターン面積、あるいはパターン形状等が、設計時(半導体装置形成用マスクであれば、半導体装置設計時)における許容条件を満たすか否かを判定する。この判定に基づいて、前記あらかじめ設定した露光量裕度、マスクパターンサイズ裕度の範囲内全てにおいて許容条件を満たすデフォーカスの範囲即ちデフォーカス裕度を求めるのである。このデフォーカス裕度を最大とするように、少なくともいずれかのマスクパラメータを設定する。このマスクパラメータとしては、例えば、設計パターンの形状及びサイズ、光透過領域の透過率及び位相、遮光領域の透過率及び位相等のマスクパラメータを挙げることができる。
【0042】 上記のようにしてマスク設計の最適化条件を求めることができ、これによって最適なマスクを製造することができる。
【0043】 このマスク設計の最適化条件を求める際、同時に露光条件の最適化条件を定めるようにすることができる。」
「【0058】 本出願の請求項23の発明は、光透過領域と遮光領域を有するフォトマスクの製造方法において、あらかじめ設定した露光量裕度、デフォーカス裕度の範囲内の複数個の露光量、デフォーカスの値の組み合わせを設定し、更にマスクパターンサイズ裕度を変化させて、得られる転写パターンを求め、該パターンが設計時における許容条件を満たすか否かを判定し、これより前記においてあらかじめ設定した露光量裕度、デフォーカス裕度の範囲内全てにおいて該許容条件を満たすマスクパターンサイズの範囲であるマスクパターンサイズ裕度を求めることにより該マスクパターンサイズ裕度を求め、マスクパラメータが、該マスクパターンサイズ裕度を最大にする構成で設定されていることを特徴とするフォトマスクの製造方法であって、これによって上記目的を達成するものである。
【0059】 この発明においては、マスクパターンサイズ裕度を求める場合に、あらかじめ設定した露光量裕度、デフォーカス裕度の範囲内の複数個の露光量、デフォーカスの値の組み合わせを設定するが、この設定は、該あらかじめ設定した露光量裕度、デフォーカス裕度の範囲内をできるだけ細かく網羅する組み合わせで設定することが好ましい。更にこの組み合わせに基づき、各組み合わせについて、マスクパターンサイズを変化させて、得られる転写パターンを求めるのであるが、このデフォーカスを変化させてその各場合に得られる転写パターンを求めるのは、シミュレーション等を用いる計算による操作でも、実験等による実測によるものでも、双方を組み合わせて求めるのでもよい。
【0060】 上記求める転写パターンは、代表的にはフォトリソグラフィー時の転写レジストパターンであり、かかる転写レジストパターンを求める態様で好ましく実施できる。各種手段により求めた各場合の転写パターンが、設定時における許容条件を満たすか否かを判定し、即ち例えば該パターンにおいて、パターンサイズ、パターン面積、あるいはパターン形状等が、設計時(半導体装置形成用マスクであれば、半導体装置設計時)における許容条件を満たすか否かを判定する。この判定に基づいて、前記あらかじめ設定した露光量裕度、デフォーカス裕度の範囲内全てにおいて許容条件を満たすマスクパターンサイズの範囲即ちマスクパターンサイズ裕度を求めるのである。このマスクパターンサイズ裕度は、少なくともいずれかのマスクパラメータが、該マスクパターンサイズ裕度を最大にするように設定する。このマスクパラメータとしては、例えば、設計パターンの形状及びサイズ、光透過領域の透過率及び位相、遮光領域の透過率及び位相等のマスクパラメータを挙げることができる。
【0061】 上記のようにしてマスク設計の最適化条件を求めることができ、これによって最適なマスクを製造することができる。」
「【0262】【発明の効果】 上述したように、本発明によれば、多数のパラメータ、例えば3個以上のパラメータについてそれらの相関関係を見い出すことができ、これらの相関により最適条件を求めることができ、実際の条件との乖離も小さく、各種性能の定量的な把握が可能で、時間とコストの低減も図ることができ、マスクパターンサイズのばらつきなどの影響をも考慮できて、実際の最適化が可能であるフォトマスク、フォトマスクの製造方法、露光方法及び半導体装置の製造方法を提供することができた。
【0263】 例えば具体的には、本発明を利用することにより、露光工程におけるパラメータ、マスクの製造パラメータを、実際のプロセスに即して、定量的に評価することができた。特に、露光量裕度、デフォーカス、マスクパターンサイズをパラメータとして選択し、これらの相互関係を露光装置の種々の露光条件において正確に評価することによって、歩留まりよく例えば、半導体装置を製造することができるとともに、製造プロセスの構築を効率良く、かつ低コストで構築することが可能となった。」

(3)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である特開2002-72440号公報(以下、「周知技術文献2」という。)には、「マスクの製造方法」に関し、図面の記載とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、フォトマスク、位相シフトマスク等のマスクの製造方法に関する。」
「【0006】【発明が解決しようとする課題】 上記したように、従来のマスクの製造方法では、多数の良不品の判断項目の内の1項目でも仕様を満たさないものが有れば不良品としているため、マスクの歩留まりが、極めて低いという問題があった。
【0007】 本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、歩留まりを向上させることができるマスクの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明者は、従来の不良品とされたマスクについて、種々の分析の結果、以下の事実を見出した。
【0009】 即ち、一般に、フォトマスクの仕様は、半導体ウェハへのパターン露光において、所望の露光裕度を得るために必要で、各項目が全て仕様値ぎりぎりの値になった場合でも、所望の露光裕度が得られるように決められているが、実際のフォトマスクでは、全ての項目が仕様値ぎりぎりの値になることは、極めて希で、殆どのフォトマスクは、ある項目は仕様値を越えても、他の項目は余裕を持って仕様値の中に収まっていることが多く、仮に、仕様値を越える項目が存在しても、他の項目が余裕を持って仕様値に収まっている場合には、仕様値を越える項目による露光裕度の減少分が、余裕を持って仕様値に収まっている項目の露光裕度の増加分を下回れば、全体としては所望の露光裕度を得ることができる。例えば、図3の表に示すように、従来不良品とされていたハーフトン型位相シフトマスクの測定例において、例えば、出来上がったマスクのパターン寸法平均値の目標値からのズレが、13nmで仕様値の±10nmを越えていても、そのマスクのパターン寸法面内均一性が4nm(3σ)と仕様値である8nm(3σ)より余裕を持って小さい値であった場合、実際に、このマスクをウェハ露光しデフォーカス裕度と露光量裕度を測定すると所望の露光裕度を得ることが出来ることを確認した。
【0010】 そして、本発明者は、フォトマスクの場合は、露光裕度を決めている主項目は、パターン寸法の平均値及び面内均一性であるので、マスクパターン形成後、該パターンの平均値及び面内均一性を測定し、この測定データから露光裕度を計算し、所望の露光裕度を有するマスクを良品と判断し、更に、ウエハ露光裕度を確認すべく、このマスクを用いて、ウエハ露光し、露光裕度の評価を行った。その結果、実用上において、充分に良品マスクであり、このような所望の露光裕度を有するマスクを良品マスクとして救済できることを確認した。
【0011】 また、ハーフトーン型位相シフトマスクの場合は、パターン寸法の平均値及び面内均一性の他に、半遮光部の透過率の平均値及び面内均一性と半遮光部の位相シフト量の平均値及び面内均一性を測定し、これらのデータから露光裕度を計算し、所望の露光裕度が得られるか否かを判断し、レベンソン型位相シフトマスクの場合は、パターン寸法の平均値及び面内均一性の他に、光透過部の位相シフト量の平均値及び面内均一性を測定し、これらのデータから露光裕度を計算し、所望の露光裕度が得られるか否かを判断すれば、従来、不良マスクされていたマスクの内、簡単に、良品マスクとして救済でき、マスクの歩留まりを向上させることができることを見出し、本発明のマスクの製造方法を発明するに至った。
【0012】 まず、上記目的を達成するために、第1の発明(請求項1)に係わるフォトマスクの製造方法では、フォトマスクのパターン形成後、該パターンの寸法を測定し、該パターン寸法の平均値及び面内均一性を求める工程と、前記平均値及び面内均一性から前記フォトマスクを使用した場合の露光裕度を計算により求める工程と、前記露光裕度が所望の露光裕度を有するか否かで前記フォトマスクの良否を判断する工程とを含むことを特徴としている。
【0013】 この発明によれば、測定したパターン寸法の平均値および面内均一性のデータから、露光裕度を計算し、所望の露光裕度が得られるか否かで良否を判断している。
【0014】 従って、パターン寸法の平均値及び面内均一性のどちらかの仕様値を満たさなく、従来、不良品とされたマスクおいて、所望の露光裕度を得ることが可能なマスクを良品として救済できるため、マスクの歩留まりを著しく向上させることができる。」

3 当審の判断
(1)対比
本願発明1と上記引用発明とを比較すると、
引用発明における
ア 「所定のデザインルールに従って設計された、半導体装置の光露光工程において使用するマスクの設計パターン」、
イ 「前記設計パターンを用いて光露光工程のシミュレーションを行い、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出する第1作業と、前記転写パターンを用いて、露光量と焦点距離の条件を振ったときのパターン寸法の変動量を算出する第2作業」、
ウ 「露光量(ドーズ量)及び焦点距離(フォーカス)に対するプロセス裕度」、
エ 「デザインルール、微細加工精度、素子の電気特性などを勘案して予め定められたプロセス裕度の基準値」、
オ 「前記パターン寸法の変動量が基準値以上であるか否かを判定することにより、前記プロセス裕度を判定する第3作業」、
カ 「ステップS014において、各配線パターン(13?15)について、変動量16が基準値以上であるか否かを判定し、変動量16が基準値以上である場合に、ステップS015へ進み、プロセス裕度が基準値に達していない配線パターン(プロセス裕度未達パターン)であると判断され、設計パターンから抽出される」、
キ 「変動量16が基準値以上である配線パターンに対して、変動量16が基準値よりも小さくなるように、ライン寸法及びスペース寸法を補正することにより、プロセス裕度未達パターンとして抽出された配線パターンに対しプロセス裕度が基準値を満たすように補正を施して、」及び
ク 「半導体ウェハ上にプロセス裕度及び補正精度が高いパターンを形成するマスクパターン補正方法」のそれぞれが、
本願発明1の
ア 「集積回路の回路パターンを設計するための第1の設計データ」、
イ 「被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程」、
ウ 「前記算出されたリソグラフィ工程の裕度」、
エ 「前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度」、
オ 「前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程」、
カ 「前記算出されたリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さいと判断された場合」、
キ 「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記部分データを修正する工程」及び
ク 「集積回路のパターン設計方法」
にそれぞれ相当する。

しかして、引用発明では、設計パターンから任意の配線パターンが選び出され、そして、ステップS016において、設計パターンの中でまだパターン選出(S011)されていない配線パターンがあるか否かを判定し、設計パターン中の総ての配線パターンがすでに選出されている場合には、ステップS02へ進み、設計パターン中の総ての配線パターンがまだ選出されていない場合には、ステップS011へもどり、まだ選出されていない配線パターンに対して上記ステップを行い、設計パターン中の総ての配線パターンが選出されるまで、このループを繰り返すことにより、ステップS01において、マスクの設計パターンをCPU内に読み込み、ラインとスペースの関係から得られるプロセス裕度が基準値に達していない配線パターンを設計パターンから抽出されるのであるから、引用発明の「設計パターンから選び出された任意の配線パターン」が、本願発明1の「少なくとも一部の部分データ」に相当する。
また、引用発明では、パターン補正部7が、ステップS02において、変動量16が基準値以上である配線パターンに対して、変動量16が基準値よりも小さくなるように、ライン寸法及びスペース寸法を補正することにより、プロセス裕度未達パターンとして抽出された配線パターンに対しプロセス裕度が基準値を満たすように補正を施してから、ステップS07において、設計パターンデータに基づいてマスクを製作するのであり、前記補正を施してからマスクを製作するときの設計パターンデータが当然に作成されることは明らかであるから、引用発明の「補正を施してからマスクを製作するときの設計パターンデータを作成すること」が、本願発明1の「前記修正された部分データを用いて前記第1の設計データを更新して第2の設計データを作成する工程」に相当する。
さらに、引用発明の半導体ウェハ上にプロセス裕度及び補正精度が高いパターンを形成するマスクパターン補正方法において、設計パターンを用いて光露光工程のシミュレーションを行い、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出する第1作業と、前記転写パターンを用いて、露光量と焦点距離の条件を振ったときのパターン寸法の変動量を算出する第2作業では、半導体ウェハ上でのリソグラフィ工程の裕度を算出するに際して、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出してから、前記転写パターンを用いて、露光量と焦点距離の条件を振ったときのパターン寸法の変動量を算出しているのであるから、引用発明の「露光量と焦点距離の条件を振ったときのパターン寸法の変動量」が、本願発明1の「前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎ」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記設計パターンを用いて光露光工程のシミュレーションを行い、露光量と焦点距離の条件を振ったときの転写パターンを算出する第1作業と、前記転写パターンを用いて、露光量と焦点距離の条件を振ったときのパターン寸法の変動量を算出する第2作業」が、本願発明1の「前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程」に相当すると同時に、本願発明1の「前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出すること」にも相当するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「集積回路の回路パターンを設計するための第1の設計データのうちの少なくとも一部の部分データに対し、被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度と前記被処理基板上において実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度とを比較する工程と、
前記算出されたリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度より小さいと判断された場合、前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度が前記実際に必要とされるリソグラフィ工程の裕度と同等以上の大きさになるように前記部分データを修正する工程と、
前記修正された部分データを用いて前記第1の設計データを更新して第2の設計データを作成する工程と、
を含む集積回路のパターン設計方法であって、
前記被処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する工程は、前記リソグラフィ工程における前記被処理基板上の寸法変動の許容値に対する裕度として、前記リソグラフィ工程におけるプロセスの揺らぎの裕度を算出することを特徴とする集積回路のパターン設計方法」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点:処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出するに際して、本願発明1が「回路パターンを転写する際に用いる露光マスクのスペック値を考慮」するのに対し、引用発明では、露光マスクのスペック値を考慮しているか否か不明である点。

(2)相違点についての検討
上記周知技術文献1には、「露光工程におけるパラメータ、マスクの製造パラメータを、実際のプロセスに即して、定量的に評価すること」、及び「露光量裕度、デフォーカス、マスクパターンサイズをパラメータとして選択し、これらの相互関係を露光装置の種々の露光条件において正確に評価すること」が開示されている。
また、上記周知技術文献2には、「フォトマスクの場合は、露光裕度を決めている主項目は、パターン寸法の平均値及び面内均一性であるので、マスクパターン形成後、該パターンの平均値及び面内均一性を測定し、この測定データから露光裕度を計算」すること、及び「ハーフトーン型位相シフトマスクの場合は、パターン寸法の平均値及び面内均一性の他に、半遮光部の透過率の平均値及び面内均一性と半遮光部の位相シフト量の平均値及び面内均一性を測定し、これらのデータから露光裕度を計算し、所望の露光裕度が得られるか否かを判断し、レベンソン型位相シフトマスクの場合は、パターン寸法の平均値及び面内均一性の他に、光透過部の位相シフト量の平均値及び面内均一性を測定し、これらのデータから露光裕度を計算」することが開示されている。
このように、露光量裕度、デフォーカス、マスクパターンサイズ、或いは、パターン寸法の平均値及び面内均一性、さらには半遮光部の透過率の平均値及び面内均一性と半遮光部の位相シフト量の平均値及び面内均一性、又は光透過部の位相シフト量の平均値及び面内均一性等を回路パターンを転写する際に用いる露光マスクのスペック値として考慮に入れることは、本願特許出願時の周知技術であるといえる。
そうすると、引用発明に前記周知技術を適用して、処理基板上でのリソグラフィ工程の裕度を算出する際に、リソグラフィ工程の裕度として、回路パターンを転写する際に用いる露光マスクのスペック値を考慮したリソグラフィ工程の裕度を算出するように変更して、本願発明1の前記相違点に係る「回路パターンを転写する際に用いる露光マスクのスペック値を考慮」する構成を得ることは、当業者が容易に想到できることである。

そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

(3)まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであり、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-05 
結審通知日 2007-04-10 
審決日 2007-04-23 
出願番号 特願2002-325478(P2002-325478)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森内 正明
辻 徹二
発明の名称 集積回路のパターン設計方法、露光マスクの作成方法、および集積回路装置の製造方法  
代理人 村松 貞男  
代理人 河野 哲  
代理人 中村 誠  
代理人 橋本 良郎  
代理人 鈴江 武彦  

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