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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 その他 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1158551 |
審判番号 | 不服2006-17471 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-10 |
確定日 | 2007-06-07 |
事件の表示 | 特願2002-222979「ビンゴゲーム装置およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日出願公開、特開2004- 57661〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年7月31日の出願であって、平成15年11月20日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成16年1月22日付けで手続補正がなされ、さらに平成17年3月9日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し同年5月11日付けで手続補正がなされたが、平成18年6月28日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がなされ、これに対し同年8月10日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年9月1日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年9月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年9月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 種類の異なる色、文字、図形、又は記号を表した複数のマスからなるビンゴシートを1枚ずつ複数のプレイヤーに配布する配布手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテムを前記複数のプレイヤーが獲得するために前記表示画面に表示されたアイテム獲得ゲームを進行する進行手段と、 前記アイテム獲得ゲーム終了後に、前記複数のプレイヤーが獲得した前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置することを前記複数のプレイヤーが指定するための指定手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で所定の方向の列に前記当りマスが並んだときにビンゴ完成と判断する判断手段とを備えたビンゴゲーム装置であって、 前記アイテム獲得ゲームにおいて前記進行手段により進行する各種イベントあるいはゲームを行うことにより、前記当りマスとするためのアイテム、または前記複数のプレイヤーのうちの自分以外の他のプレイヤーが前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを禁止するための配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得し、 前記アイテム獲得ゲームで獲得した前記配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが前記指定手段により前記自分以外の他のプレイヤーの前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを特徴とするビンゴゲーム装置。 【請求項2】 前記当りマスとするためのアイテムは、前記複数のプレイヤーが前記指定手段により、前記アイテムと同一の種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスにのみ配置する通常アイテムと、すべての種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスに配置するスターアイテムとがあることを特徴とする請求項1記載のビンゴゲーム装置。 【請求項3】 種類の異なる色、文字、図形、又は記号を表した複数のマスからなるビンゴシートを1枚ずつ複数のプレイヤーに配布する配布手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテムを前記複数のプレイヤーが獲得するために前記表示画面に表示されたアイテム獲得ゲームを進行する進行手段と、 前記アイテム獲得ゲーム終了後に、前記複数のプレイヤーが獲得した前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置することを前記複数のプレイヤーが指定するための指定手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で所定の方向の列に前記当りマスが並んだときにビンゴ完成と判断する判断手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。」 と補正された。 当該手続補正における請求項1は、補正前(平成16年1月22日付け手続補正)の請求項1に記載された「・・・アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得することができるアイテム獲得ゲームを進行する進行手段」を「・・・アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得するために前記表示画面に表示されたアイテム獲得ゲームを進行する進行手段」とし、また、同じく「前記アイテム獲得ゲームは、前記複数のプレイヤーのうちの自分以外の他のプレイヤーが前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを禁止するための配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得することができるものである」としていたところを「前記アイテム獲得ゲームにおいて前記進行手段により進行する各種イベントあるいはゲームを行うことにより、前記当りマスとするためのアイテム、または前記複数のプレイヤーのうちの自分以外の他のプレイヤーが前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを禁止するための配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得し、 前記アイテム獲得ゲームで獲得した前記配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが前記指定手段により前記自分以外の他のプレイヤーの前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行う」とすることにより、アイテム獲得ゲームが表示画面に表示されている点を限定するとともに、前記アイテム獲得ゲームにおいて、前記複数のプレイヤーが「前記当りマスとするためのアイテム」も獲得するものと限定し、かつ、「前記配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが前記指定手段により前記自分以外の他のプレイヤーの前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行う」点を追加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、当該手続補正における請求項3は、補正前(平成16年1月22日付け手続補正)の請求項3に記載された「・・・アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得することができるアイテム獲得ゲームを進行する進行手段」を「・・・アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得するために前記表示画面に表示されたアイテム獲得ゲームを進行する進行手段」とすることにより、アイテム獲得ゲームが表示画面に表示されている点を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1?3に記載された発明(以下、「本願補正発明1?3」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)特許法第30条の適用について 請求人は、平成17年3月9日付けの拒絶理由通知において審査官が提示した、週刊ファミ通、株式会社エンターブレイン、第17巻第26号、p124-125(以下、「引用文献1」という。)について、特許法第30条第1項の規定が適用され、引用例から除外されるべきである旨主張しているので、まずこの点について検討する。 請求人は、以下のような主張をしている。 a.審判請求の理由(5.理由2について)における主張 本願は、特許法第30条第1項の規定の適用を受けて出願したもので、同条第4項により新規性の喪失の例外証明書提出書を提出し、[物件名]刊行物の複写(ファミ通キューブ8月号)を添付しました。 上記「ファミ通キューブ8月号」は、引用文献1の「週刊ファミ通」と同一の出版社「株式会社エンターブレイン」から刊行されたものです。本願発明の内容を含むゲームソフトの紹介原稿を上記出版社へ提出し、それに基づいて当該出版社が雑誌原稿を作成し、「ファミ通」の週刊誌及び月刊誌にゲーム紹介記事として掲載したものです。 引用文献1は、審査便覧(「審査基準」とあるが誤記と認める。)42.45Aにいう「一の公開と密接不可分の関係にある他の公開」であると考えます。よって、審査便覧(同上)10.38Aにより「週刊ファミ通」に関する証明書面の提出が省略されたものであって、引用文献1は、引用例から除外されるべきものと考えます。 b.平成18年12月6日付けの上申書における主張 本件は、特許法第30条第1項の規定の適用を申請して出願したものであり、同条第4項により「新規性の喪失の例外証明書提出書」を平成14年8月29日に提出しました。合わせて、【物件名】刊行物の複写(ファミ通キューブ8月号)である「月刊ファミ通キューブ+アドバンス,株式会社エンターブレイン,2002年8月号、2002年6月21日発行」を添付しました。 上記「月刊ファミ通キューブ+アドバンス」は、引用文献1(週刊ファミ通,株式会社エンターブレイン,2002年6月28日,第17巻第26号,p.124-125)の「週刊ファミ通」と同一の出版社「株式会社エンターブレイン」から刊行されたものであり、上記引用文献1の「週刊ファミ通」よりも先の発行日となっております。 引用文献1の「週刊ファミ通」は、審査便覧(「審査基準」とあるが誤記と認める。)42.45Aにいう「一の公開と密接不可分の関係にある他の公開」であり、審査便覧(同上)10.38Aにより、上記引用文献1の「週刊ファミ通」に関する「証明する書面」の提出が省略されていても差し支えないものであると考えます。(中略) 従いまして、上記引用文献1の「週刊ファミ通」は、引用発明として取り扱われるものではないので、本願の請求項3に係る発明は、上記引用文献1の「週刊ファミ通」によって拒絶されないと考えます。 特許法第30条の条文及び特許庁ホームページに掲載されている審査便覧10.38Aと42.45Aの内容は、以下のとおりである。 「特許法第30条: 特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、電気通信回線を通じて発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、同条第1項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。 2 特許を受ける権利を有する者の意に反して第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、前項と同様とする。 3 特許を受ける権利を有する者が政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官が指定するものに、パリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又はパリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国のいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官が指定するものに出品することにより、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、第1項と同様とする。 4 第1項又は前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明が第1項又は前項の規定を受けることができる発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。」 「審査便覧10.38A: 特許を受ける権利を有する者がした複数回にわたる公開が互いに密接不可分の関係にある場合の特許法第30条第4項の手続について 特許を受ける権利を有する者が、特許出願前に出願に係る発明を複数回にわたって公開した場合であって、第2回以降の公開が最先の公開と互いに密接不可分の関係にあるとき(→42.45A)は、特許法第30条第4項に規定された手続において、第2回以降の公開に関する「証明する書面」の提出は省略されていても差し支えないこととする。」 「審査便覧42.45A: 複数回の公開行為について、特許法第30条第1項又は第3項の規定の適用を受けるための手続が適法になされた場合の取り扱い 1.特許を受ける権利を有する者が、特許出願前に出願に係る発明を複数回に亘って公開した場合において、それらの公開行為について、特許法第30条第1項又は第3項の適用を受けるための手続が適法になされた場合には、その適用をすべて認める。 なお、「該当するに至った日から6月以内にその者が特許出願したとき」における6月以内の起算日である該当するに至った日は、最先の公開の日である。 参考:昭56-審判第2240号 審決 (注1)経緯 拒絶査定不服審判(昭56-審判第2240号)の審決において、特許法第30条の適用について、「特許法第30条第1項は、刊行物への発表等の公開行為によって公知になった発明を救済するための例外を規定し、その行為があっても発明の新規性を維持せしめることを法律上擬制したものであり、・・・出願発明について、その出願前に複数の公開行為がなされ、これらについての特許法第30条適用の申出手続が適法である場合は、その適用をすべて容認することが立法趣旨からみても妥当であると認められ、・・・」との判断が示された(なお、その審決は確定している)ので、上記1のとおり取り扱うこととする。 (注2) 一の公開(上記1の複数回の公開のいずれか一の公開)と密接不可分の関係にある他の公開は一の公開として取り扱うこととする。 その際、他の公開についての特許法第30条第4項に規定された手続において、他の公開に関する「証明する書面」の提出は省略可能である(→10.38A)。 ここで言う「一の公開と密接不可分の関係にある他の公開」とは、他の公開が公開者の意思によっては律し切れないものであって、一の公開と互いに密接不可分の関係にあるような他の公開をいい、たとえば、「数日に亘らざるを得ない試験、試験とその当日配布される説明書、刊行物の初版と再版、予稿集と学会発表、学会発表とその講演集、同一学会の巡回的講演、博覧会出品と出品物に関するカタログ」等がそれに当たる。 2.特許法第30条第1項又は第3項の「該当するに至った日」と特許出願の間に第三者が「該当するに至った発明」と同一の発明を公開した場合において、その公開が「該当するに至った発明」の公開に基づく場合(注)には、その特許出願に係る発明は第三者の公開によって特許法第29条第1項各号の一に該当するに至らなかったものとする。 (注) 「第三者の公開が該当するに至った発明の公開に基づく場合」とは、例えば、「第三者による刊行物への転載」のような場合をいう。 (説明) 特許出願人(発明者)自身の意思によっては律し切れない公開があった場合に特許法第30条第1項又は第3項の適用が受けられないものとすると、同条の立法の趣旨が生かされないこととなってしまうので、上記のように取り扱うものとする。」 請求人が挙げている審査便覧42.45Aの1.には、「特許を受ける権利を有する者が、特許出願前に出願に係る発明を複数回に亘って公開した場合において、それらの公開行為について、特許法第30条第1項又は第3項の適用を受けるための手続が適法になされた場合には、その適用をすべて認める。」とあり、複数回の公開行為があった場合には、すべての公開行為について特許法第30条第1項又は第3項の適用を受けるための手続が適法になされることを原則としていることがわかる。 また、特許法第30条第4項の「第29条第1項各号の一に該当するに至つた発明が第1項又は前項の規定を受けることができる発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。」との規定は、発明を第29条第1項各号の一に該当するに至らせる事情が複数回あったときには、全部の事情について証明する書面を提出するのを要求しているものと解釈される。なぜなら、審査官や第三者等が、当該特許出願に係る発明について、どのような事情で同法第30条第1項又は第3項の規定の適用を受けることができるのかが完全に把握できないと、その後の審査又は審判請求等において、同法第49条第2号や同法第123条第1項第2号に該当するか否かの判断に支障をきたすおそれがあるからである。 その上で、審査便覧42.45Aの1.(注2)では、「一の公開(上記1の複数回の公開のいずれか一の公開)と密接不可分の関係にある他の公開は一の公開として取り扱うこととする。」という例外的な取り扱いについて言及するとともに、「ここで言う「一の公開と密接不可分の関係にある他の公開」とは、他の公開が公開者の意思によっては律し切れないものであって、一の公開と互いに密接不可分の関係にあるような他の公開をいい」という制限を付している。そして、そのような条件に合致するものとして、「数日に亘らざるを得ない試験、試験とその当日配布される説明書、刊行物の初版と再版、予稿集と学会発表、学会発表とその講演集、同一学会の巡回的講演、博覧会出品と出品物に関するカタログ」を例示している。 さらに、審査便覧10.38Aには、第2回以降の公開が最先の公開と互いに同便覧42.45Aにいう密接不可分の関係にあるとき、特許法第30条第4項に規定された手続において、第2回以降の公開に関する「証明する書面」の提出は省略されていても差し支えない旨記載されている。 このような取り扱いについて、特許法第30条の規定に照らして、その意義を考えるに、同条第1項及び第3項は、特許を受ける権利を有する者が刊行物等に発表したこと等により、公知等となった発明であっても、その発表日等から6月以内に出願し、同条第4項の手続を行えば、その刊行物等を同法第29条第1項及び第2項の証拠としない旨の規定であり、同法第30条第2項は、特許を受ける権利を有する者の意に反して公知等となった発明であっても、その公知日から6月以内に出願を行えば、その事実によって同法第29条第1項及び第2項が適用されることが無い旨の規定であるところ、同法第30条第2項については事前の手続を要しないことを考慮しつつ、同条第4項の「証明する書面」に記載されていなくても、審査又は審判請求等において、同法第49条第2号や同法第123条第1項第2号に該当するか否かの判断に支障をきたすおそれがないと言える場合について例外的な取り扱いを行っても良いとすべきであり、具体的には、特許を受ける権利を有する者による発表等であって、かつ、以下の条件のいずれかを満たすものについて行われるのが適当であると解釈される。 (a)同条第4項の証明する書面に、同様の他の発表等がなされたことが記載されている場合における該他の発表等 (b)同条第4項の証明する書面に記載された発表等に基づいて他の発表等がなされたことが明らかに把握できる場合における該他の発表等 (c)同条第4項の書面にその全容を記載できない特別の理由がある発表等である場合における該書面に記載できなかった発表等 そこで、「ファミ通キューブ8月号」と引用文献1の「週刊ファミ通」(以下、「両刊行物」という。)が、そのような関係にあるか吟味してみると、確かに請求人の主張するとおり、両刊行物ともに同一の出版社「株式会社エンターブレイン」から刊行され、両刊行物の掲載内容が近いことは認められるが、 (a')同条第4項の書面における「ファミ通キューブ8月号」には、引用文献1の「週刊ファミ通」に同様の発表がなされたことは記載されておらず、 (b')同「ファミ通キューブ8月号」の発表に基づいて引用文献1の「週刊ファミ通」の発表がなされることはあり得ず(詳細は後述)、 (c')両刊行物の発表は別々のものであることが明らかであるから、 引用文献1の「週刊ファミ通」で発表された発明が、特許法第30条第1項又は第3項の適用を受けられるものであるとは言えない。 さらに、引用文献1の「週刊ファミ通」に「マジカルパーク」の紹介記事が掲載されることを、請求人が知らなかったとする合理的な理由は見出せず、請求人もそのような主張はしていないので、引用文献1の「週刊ファミ通」に記載されている発明が、特許法第30条第2項の適用を受けられるものであるとも言えない。 したがって、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(週刊ファミ通、株式会社エンターブレイン、第17巻第26号、p124-125)は、特許法第30条第1項乃至第3項の適用を受けることができないので、引用文献1に記載された発明は、同法第29条第1項第3号に該当する発明である。 ・「ファミ通キューブ8月号」の発表に基づいて引用文献1の「週刊ファミ通」の発表がなされることはあり得ないとした理由: 「ファミ通キューブ8月号」の発売日は、上記上申書における請求人の主張及び週刊ファミ通,株式会社エンターブレイン,2002年6月28日,第17巻第26号,p.216の「EDITORIAL INFORMATION」の記載から見て、平成14年6月21日であると認められ、引用文献1の「週刊ファミ通」の発売日は、独立行政法人工業所有権総合情報館(平成14年6月時点)の受入印及び上記「EDITORIAL INFORMATION」の記載から見て、平成14年6月14日であると認められるところ、平成14年6月21日に発売された「ファミ通キューブ8月号」の発表内容に基づいて、平成14年6月14日に発売された引用文献1の「週刊ファミ通」の記事が作成されることはあり得ない。 請求人は、平成18年12月6日付けの上申書において、「ファミ通キューブ8月号」は、引用文献1の「週刊ファミ通」よりも先の発行日となっている旨主張しているが、この種の刊行物の発行日は、実際の発売日とは異なる日付となっているのが通例であるから、そのような場合には、特許法第29条第1項第3号における「日本国内又は外国において頒布された」時は、刊行物に記載されている発行日ではなく、それら刊行物の販売又は配布が開始された時とすべきである。 (3)引用文献1に記載されている発明 引用文献1には、任天堂株式会社製のビデオゲーム装置「ゲームキューブ」(登録商標)用のゲームソフトである「マジカルパーク」について、以下のような説明がある。 a.「ゲームの舞台となるマジカルパークは、ドナルドのおじさん"スクルージ・マックダック"が造った遊園地。このマジカルパーク内で手に入るアイテムをビンゴシートに並べて揃えるのが目的です。」(124頁2段目左側、タイトル「ディズニーの仲間たちとテーマパークで盛り上がろう!」欄) b.「●マジカルビンゴツアー 4人のキャラクターがそれぞれビンゴシートを持ち、アイテムを集めていき、ラインを完成させることを競うモード。」(124頁3段目左側、タイトル「遊べるモードは4つ」欄) c.「それでは みんなに ビンゴカードを くばろう」(124頁2段目右側、タイトル「マジカルパークで遊んじゃおう」欄、右側の絵の吹き出し) d.「ここでは"マジカルビンゴツアー"と"ペアツアー"のゲームの流れを紹介します。・・・その先で発生するイベントやアトラクションでクリスタルとアイテムを入手し、ビンゴシートに並べていこう!」(125頁左側1段目、タイトル「マジカルビンゴツアーをご案内いたします」欄) e.「ルーレットを回して行く場所が決定されたら、全員でその場所へ移動。そこでイベントが発生したり、アトラクションをプレイしたりします。・・・どのアイテムがビンゴシートのどの枠に入るかをきちんと確認してから、ほしいアイテムを買いましょう。また、相手のジャマができるアイテムが売られていることも。見逃さずに購入して、うまく使っていきましょう。」(125頁右側2段目、タイトル「アトラクションやショップでアイテムを入手しよう!」欄) f.「アトラクションが終了したら、"ビンゴタイム"に突入。入手したアイテムをビンゴシートに配置し、並べていきましょう。アイテムの土台の色が青なら、ビンゴシートの青色の部分に置くことができるわけ。ほかに、どこにでも置ける貴重なアイテムや時間が経つにつれて変化するアイテムなどがあります。また、ほかのプレイヤーのジャマをするアイテムもこのときに使用可能。・・・そして、誰かが開始時に設定したライン数だけ完成させたら、感動のエンディングが待っているはず!?」(125頁右側3段目、タイトル「ビンゴタイムでアイテムを使おう!」欄) また、引用文献1の125頁右側2段目、タイトル「アトラクションやショップでアイテムを入手しよう!」欄の絵、125頁右側3段目のタイトル「シートを完成させよう!」欄の絵及び上記fの記載によれば、4人のキャラクターが1枚ずつ複数の異なる色を付けた複数の部分からなるビンゴシートを持ち、これらを表示画面に表示しているものと認められる。 これらの記載a?f、引用文献1記載に基づく上記の認定及び引用文献1の記載がコンピュータを備えるビデオゲーム装置用のゲームソフトの説明であることを考慮すれば、引用文献1には、 「種類の異なる色を付けた複数の部分からなるビンゴシートを1枚ずつ4人のキャラクターに配る手段と、 前記4人のキャラクターに配られたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数の部分の1つに置くことのできるアイテムを前記4人のキャラクターが集めるために、イベントを発生させたり、アトラクションをプレイさせたりする手段と、 前記アトラクションが終了したら、前記4人のキャラクターが入手したアイテムをビンゴシートに配置するための手段と、 前記4人のキャラクターに配られたビンゴシートのうちの誰かのビンゴシートでラインが完成したらエンディングとする手段とを備えたビンゴツアーゲーム装置であって、 前記イベントや前記アトラクションによって、前記複数の部分の1つに置くことのできるアイテム、または、ほかのキャラクターのジャマをするアイテムを前記4人のキャラクターが入手し、 前記イベントやアトラクションで入手した前記ほかのキャラクターのジャマをするアイテムを使用可能なビンゴツアーゲーム装置。」 の発明(以下「引用装置発明」という。)及び 「種類の異なる色を付けた複数の部分からなるビンゴシートを1枚ずつ4人のキャラクターに配る手段と、 前記4人のキャラクターに配られたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数の部分の1つに置くことのできるアイテムを前記4人のキャラクターが集めるために、イベントを発生させたり、アトラクションをプレイさせたりする手段と、 前記アトラクションが終了したら、前記4人のキャラクターが入手したアイテムをビンゴシートに配置するための手段と、 前記4人のキャラクターに配られたビンゴシートのうちの誰かのビンゴシートでラインが完成したらエンディングとする手段として、 コンピュータを機能させるためのプログラム。」 の発明(以下「引用プログラム発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (4)本願補正発明1及び3との対比 まず、引用プログラム発明と本願補正発明3とを比較すると、引用プログラム発明の「種類の異なる色を付けた」は、本願補正発明3の「種類の異なる色を表した」に相当し、以下同様に、「複数の部分」は「複数のマス」に、「4人のキャラクター」は「複数のプレイヤー」に、「配る手段」は「配布する配布手段」に、「配られた」は「配布された」に、「前記複数の部分の1つに置くことのできるアイテム」は「前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテム」に、「集める」は「獲得する」に、「イベントを発生させたり、アトラクションをプレイさせたりする手段」は「アイテム獲得ゲームを進行する進行手段」に、「前記アトラクションが終了したら」は「前記アイテム獲得ゲーム終了後に」に、「入手したアイテム」は「獲得した前記当りマスとするためのアイテム」に、「ビンゴシートに配置する」は「前記複数のマスのうちの1つに配置する」に、「ビンゴシートのうちの誰かのビンゴシートで」は「ビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で」に、「ラインが完成したら」は「所定の方向の列に前記当りマスが並んだときに」に、それぞれ相当する。 そして、引用文献1の記載やビデオゲーム装置の背景技術からみて、以下のことが言える。 a.引用プログラム発明における「イベント」や「アトラクション」は、125頁右側2段目のタイトル「アトラクションやショップでアイテムを入手しよう!」欄の絵から見て、前記4人のキャラクターに配られたビンゴシートを表示する表示画面に表示されて行われるものと認められる。 b.引用プログラム発明において「入手したアイテムをビンゴシートに配置するため」には、4人のキャラクターが、どのアイテムをビンゴシートの複数の部分のどこに配置するかを指定するための指定手段があることは、その背景技術からみて自明である。 c.引用プログラム発明における「エンディングとする手段」は、「ビンゴシートでラインが完成した」ときに、いわゆる「ビンゴ」が完成したことを判断し、エンディングを知らせるものであることが自明である。 以上を総合すると、両者は、 「種類の異なる色を表した複数のマスからなるビンゴシートを1枚ずつ複数のプレイヤーに配布する配布手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテムを前記複数のプレイヤーが獲得するために前記表示画面に表示されたアイテム獲得ゲームを進行する進行手段と、 前記アイテム獲得ゲーム終了後に、前記複数のプレイヤーが獲得した前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置することを前記複数のプレイヤーが指定するための指定手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で所定の方向の列に前記当りマスが並んだときにビンゴ完成と判断する判断手段として、 コンピュータを機能させるためのプログラム。」 の点で一致しており、相違点はない。 次に、引用装置発明と本願補正発明1とを比較すると、引用装置発明の「種類の異なる色を付けた」は、本願補正発明1の「種類の異なる色を表した」に相当し、以下同様に、「複数の部分」は「複数のマス」に、「4人のキャラクター」は「複数のプレイヤー」に、「配る手段」は「配布する配布手段」に、「配られた」は「配布された」に、「前記複数の部分の1つに置くことのできるアイテム」は「前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテム」に、「集める」は「獲得する」に、「イベントを発生させたり、アトラクションをプレイさせたりする手段」は「アイテム獲得ゲームを進行する進行手段」に、「前記アトラクションが終了したら」は「前記アイテム獲得ゲーム終了後に」に、「入手したアイテム」は「獲得した前記当りマスとするためのアイテム」に、「ビンゴシートに配置する」は「前記複数のマスのうちの1つに配置する」に、「ビンゴシートのうちの誰かのビンゴシートで」は「ビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で」に、「ラインが完成したら」は「所定の方向の列に前記当りマスが並んだときに」に、「ビンゴツアーゲーム装置」は「ビンゴゲーム装置」に、「前記イベントや前記アトラクションによって」は「各種イベントあるいはゲームを行うことにより」に、「入手し」は「獲得し」に、「前記イベントや前記アトラクション」は「前記アイテム獲得ゲーム」に、それぞれ相当する。 そして、引用文献1の記載やビデオゲーム装置の背景技術からみて、以下のことが言える。 a'.引用装置発明における「イベント」や「アトラクション」は、125頁右側2段目のタイトル「アトラクションやショップでアイテムを入手しよう!」欄の絵から見て、前記4人のキャラクターに配られたビンゴシートを表示する表示画面に表示されて行われるものと認められる。 b'.引用装置発明において「入手したアイテムをビンゴシートに配置するため」には、4人のキャラクターが、どのアイテムをビンゴシートの複数の部分のどこに配置するかを指定するための指定手段があることは、その背景技術からみて自明である。 c'.引用装置発明における「エンディングとする手段」は、「ビンゴシートでラインが完成した」ときに、いわゆる「ビンゴ」が完成したことを判断し、エンディングを知らせるものであることが自明である。 d.引用装置発明において「前記イベントや前記アトラクション」が、「イベントを発生させたり、アトラクションをプレイさせたりする手段」により進行されていることは、自明である。 e.引用装置発明の「ほかのキャラクターのジャマをするアイテム」と、本願補正発明1の「前記複数のプレイヤーのうちの自分以外の他のプレイヤーが前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを禁止するための配置禁止アイテム」とは、「他のプレイヤーの邪魔をするアイテム」という点では共通している。 f.本願補正発明1における「前記配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが前記指定手段により前記自分以外の他のプレイヤーの前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うこと」は、「他のプレイヤーの邪魔をするアイテムを前記複数のプレイヤーが使用する」点で引用装置発明と共通している。 以上を総合すると、両者は、 「種類の異なる色を表した複数のマスからなるビンゴシートを1枚ずつ複数のプレイヤーに配布する配布手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテムを前記複数のプレイヤーが獲得するために前記表示画面に表示されたアイテム獲得ゲームを進行する進行手段と、 前記アイテム獲得ゲーム終了後に、前記複数のプレイヤーが獲得した前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置することを前記複数のプレイヤーが指定するための指定手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で所定の方向の列に前記当りマスが並んだときにビンゴ完成と判断する判断手段とを備えたビンゴゲーム装置であって、 前記アイテム獲得ゲームにおいて前記進行手段により進行する各種イベントあるいはゲームを行うことにより、前記当りマスとするためのアイテム、または他のプレイヤーの邪魔をするアイテムを前記複数のプレイヤーが獲得し、 前記アイテム獲得ゲームで獲得した前記他のプレイヤーの邪魔をするアイテムを前記複数のプレイヤーが使用するビンゴゲーム装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明1は、「配置禁止アイテム」が「前記複数のプレイヤーのうちの自分以外の他のプレイヤーが前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを禁止するための」ものであるのに対し、引用装置発明の「ほかのキャラクターのジャマをするアイテム」は、どのようにしてほかのキャラクターのジャマをするものか明確でない点。 [相違点2] 本願補正発明1は、「配置禁止アイテム」を「前記指定手段により前記自分以外の他のプレイヤーの前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行う」ものであるのに対し、引用装置発明は、「ほかのキャラクターのジャマをするアイテム」をどのように使用するものであるのか明確でない点。 (5)本願補正発明3についての判断 2.(4)の項で述べたように、本願補正発明3は、引用プログラム発明との相違点がなく、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)本願補正発明1についての判断 [相違点1、2]についての検討 引用装置発明においては、「ほかのキャラクターのジャマをするアイテム」が、どのように使用され、どのようにしてほかのキャラクターのジャマをするものか明確ではないが、引用文献1には、「ほかのキャラクターのジャマをするアイテム」について、「たとえば、相手のビンゴシートのマスをずらして、ビンゴの完成を阻止するなんてこともできます。」と記載されているので(125頁右側3段目、タイトル「ビンゴタイムでアイテムを使おう!」欄)、少なくともほかのキャラクターのビンゴシートの部分に作用するものであることが分かる。 そして、原査定の拒絶の理由に引用された、GAMEST、株式会社新声社、第12巻第21号、p230-231、1997年12月15日発行(以下、「引用文献2」という。)には、ビデオゲーム装置である「セガサターン」(登録商標)用のゲームソフトである「花組コラムス」について、以下のような説明がある。 a.基本的には、画面上から3つ連なった宝石パーツをボタンで入れ替え、同じ色の宝石をタテ、ヨコ、ナナメのいずれかに3つ以上ならべて消していけばOK。ただし色の種類はたくさんあるので、適当に置くだけでは画面上まで積み上がってゲームオーバーになってしまう。 と、ここまでは、「普通のコラムス」のお話。「花コラ」では対戦という形式をとっている関係上、また違った知識やテクニックが必要とされることになる。(230頁1段目、タイトル「とりあえず消してみる」欄) b.「このLIPSで「攻撃」を選ぶと、相手フィールドに時宝石を降らせることができる。この時宝石にはカウント(白い丸)がついており、この状態では同じ色を並べても消えてくれない。」(230頁5段目、第2?8行) c.「どんなに自分のフィールドが埋まろうが、相手が先に詰まってしまえば勝ちだ。」(230頁左下の絵の説明) すなわち、自分のフィールドと相手フィールドにおいて、同じ色の宝石を3つ以上並べて消していくことを競うビデオゲーム装置において、相手フィールドに「時宝石」を降らせ、相手が同じ色を並べて消すことを禁止する攻撃を選べることが記載されている。 さらに、引用装置発明と引用文献2に記載されたビデオゲーム装置は、アイテム又は宝石を複数個並べることを競うゲームである点で共通しており、また、一方のプレイヤーが自分の持つ石(アイテムに相当)をゲーム盤の特定位置に配置することにより、相手の持つ石の該特定位置と関連する位置への配置を禁止するルールは、囲碁における「コウ」として、従来広く一般に知られているので、引用装置発明において、「ほかのキャラクターのジャマをするアイテム」を、ほかのキャラクターのビンゴシートの複数の部分の1つに配置して、ほかのキャラクターが入手したアイテムをその配置された部分に置くことができなくなるように使用することは、当業者にとって格別困難なことではない。 よって、本願補正発明1は、引用装置発明、引用文献2記載の技術及び上記従来広く一般に知られている事項に基づき、当業者が容易に想到し得るものである。 さらに、本願補正発明1の作用効果も、引用装置発明等から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の技術及び上記従来広く一般に知られている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (7)本願補正発明2との対比及び判断 本願補正発明2は、本願補正発明1の構成要件の1つである「当りマスとするためのアイテム」について、「前記複数のプレイヤーが前記指定手段により、前記アイテムと同一の種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスにのみ配置する通常アイテムと、すべての種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスに配置するスターアイテムとがあること」を追加したものである。 しかし、引用文献1には、前記複数の部分の1つに置くことのできるアイテムとして、前記4人のキャラクターが、前記アイテムの土台の色と同一の色を付けた部分に置くことができるアイテムと、どこにでも置ける貴重なアイテムがあることについても記載されており(特に、上記摘記事項e.125頁右側3段目、タイトル「ビンゴタイムでアイテムを使おう!」欄を参照)、「前記アイテムの土台の色と同一の色を付けた部分に置くことができるアイテム」は、本願補正発明2の「前記アイテムと同一の種類の色を表したマスにのみ配置する通常アイテム」に相当し、同様に「どこにでも置ける貴重なアイテム」は、「すべての種類の色を表したマスに配置するスターアイテム」に相当しているので、引用文献1には、引用装置発明に本願請求項2に記載された構成を追加した発明も記載されている。 よって、本願補正発明2も、引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の技術及び上記従来広く一般に知られている事項に基づき、当業者が容易に想到し得るものである。 さらに、本願補正発明1、2の作用効果も、引用装置発明等から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明2は、引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の技術及び上記従来広く一般に知られている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (8)記載不備 本件補正後の前記請求項1には、「配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得し」、「前記アイテム獲得ゲームで獲得した前記配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが前記指定手段により前記自分以外の他のプレイヤーの前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行う」と記載されているが、獲得したアイテムをビンゴシートに配置してビンゴ完成を競うゲームを行う装置において、「配置禁止アイテム」を無条件に獲得でき、かつ、無条件に配置できたのでは、いずれのプレイヤーもビンゴ完成を達成できず、ゲームが成立しない。 すなわち、少なくとも「配置禁止アイテム」については、その獲得条件又はそれを配置できる条件を特定する構成がなければ、ビデオゲーム装置として有効に機能しない。 よって、前記請求項1に係る発明は明確でない。 同様に前記請求項2に記載されている「スターアイテム」についても、無条件に獲得でき、かつ、無条件に配置できたのでは、最初のプレイヤーが必ずビンゴ完成を達成してしまい、ゲームが成立しない。 よって、前記請求項2に係る発明は明確でない。 したがって、平成18年9月1日付けの手続補正における請求項1、2の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (9)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成18年9月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明(以下、「本願発明1?5」という。)は、平成16年1月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 (1)補正前の本願発明 「【請求項1】 種類の異なる色、文字、図形、又は記号を表した複数のマスからなるビンゴシートを1枚ずつ複数のプレイヤーに配布する配布手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテムを前記複数のプレイヤーが獲得することができるアイテム獲得ゲームを進行する進行手段と、 前記アイテム獲得ゲーム終了後に、前記複数のプレイヤーが獲得した前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置することを前記複数のプレイヤーが指定するための指定手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で所定の方向の列に前記当りマスが並んだときにビンゴ完成と判断する判断手段とを備えたビンゴゲーム装置であって、 前記アイテム獲得ゲームは、前記複数のプレイヤーのうちの自分以外の他のプレイヤーが前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを禁止するための配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得することができるものであることを特徴とするビンゴゲーム装置。 【請求項2】 前記当りマスとするためのアイテムは、同一の種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスにのみ配置できる通常アイテムと、すべての種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスに配置できるスターアイテムとがあることを特徴とする請求項1記載のビンゴゲーム装置。 【請求項3】 種類の異なる色、文字、図形、又は記号を表した複数のマスからなるビンゴシートを1枚ずつ複数のプレイヤーに配布する配布手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートを表示画面に表示する表示手段と、 前記複数のマスのうちの1つを当りマスとするためのアイテムを前記複数のプレイヤーが獲得することができるアイテム獲得ゲームを進行する進行手段と、 前記アイテム獲得ゲーム終了後に、前記複数のプレイヤーが獲得した前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置することを前記複数のプレイヤーが指定するための指定手段と、 前記複数のプレイヤーに配布されたビンゴシートのいずれか1枚のビンゴシート上で所定の方向の列に前記当りマスが並んだときにビンゴ完成と判断する判断手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。 【請求項4】 前記アイテム獲得ゲームは、前記複数のプレイヤーのうちの自分以外の他のプレイヤーが前記当りマスとするためのアイテムを前記複数のマスのうちの1つに配置する指定を行うことを禁止するための配置禁止アイテムを前記複数のプレイヤーが獲得することができるものであることを特徴とする請求項3記載のプログラム。 【請求項5】 前記当りマスとするためのアイテムは、同一の種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスにのみ配置できる通常アイテムと、すべての種類の色、文字、図形、又は記号を表したマスに配置できるスターアイテムとがあることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のプログラム。」 (2)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記「2.(3)及び2.(5)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明1における「アイテム獲得ゲーム」について「前記進行手段により進行する各種イベントあるいはゲームを行うことにより」と「前記当りマスとするためのアイテム」の構成を削除するとともに、「配置禁止アイテム」を配置する指定を行う構成を削除したものであり、本願発明2は、前記2.(7)で検討した本願補正発明2における追加の構成を、本願発明1に追加したものである。 また、本願発明3は、前記2.で検討した本願補正発明3と同一であり、本願発明4は、本願発明1と同様の手段を備えたプログラムの発明、本願発明5は、本願発明2と同様の手段を備えたプログラムの発明である。 そうすると、本願発明1、2の構成要件を全て含み、さらに構成要件を追加した本願補正発明1、2が、前記「2.(6)、(7)」に記載したとおり、引用装置発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の技術及び上記従来広く一般に知られている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明4、5については、本願発明1、2と同様の手段を備えたプログラムの発明であるから、同じく引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の技術及び上記従来広く一般に知られている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本願発明3は、前記2.で検討した本願補正発明3と同一であるから、前記「2.(5)」に記載したとおり、引用プログラム発明との相違点がなく、引用文献1に記載された発明である。 (4)記載不備 平成16年1月22日付け手続補正の請求項1、2、4、5においても、「配置禁止アイテム」及び「スターアイテム」の獲得条件や配置条件を特定する構成は記載されていないので、前記前記「2.(8)」で述べたように、前記請求項1、2、4、5に係る発明は明確でなく、請求項1、2、4、5の記載は特許法第36条第6項第2号に適合しない。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明1、2、4、5は、引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の技術及び上記従来広く一般に知られている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願発明3は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。 さらに、平成16年1月22日付け手続補正の請求項1、2、4、5に係る発明は明確でなく、請求項1、2、4、5の記載は特許法第36条第6項第2号に適合しないので、本願は特許法第36条第6項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-04 |
結審通知日 | 2007-04-10 |
審決日 | 2007-04-24 |
出願番号 | 特願2002-222979(P2002-222979) |
審決分類 |
P
1
8・
09-
Z
(A63F)
P 1 8・ 537- Z (A63F) P 1 8・ 113- Z (A63F) P 1 8・ 575- Z (A63F) P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 秋山 斉昭 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
宮本 昭彦 藤田 年彦 |
発明の名称 | ビンゴゲーム装置およびプログラム |
代理人 | 平田 忠雄 |