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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C09K
管理番号 1159175
審判番号 訂正2007-390038  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2007-03-29 
確定日 2007-06-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3790591号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第3790591号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3790591号及び本件訂正審判の手続の経緯は,以下のとおりである。
・平成8年11月28日に特許出願(特願平8-317853号)
・平成17年12月6日付けで拒絶理由を通知
・平成18年2月10日に意見書及び手続補正書を提出
・平成18年3月6日付けで特許査定
・平成18年4月7日に特許権の設定登録
・平成19年3月29日に本件訂正審判を請求


2.請求の要旨
本件訂正審判の請求の要旨は,特許第3790591号の明細書を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書のとおり,すなわち下記(1)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項1
明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除する。


3.当審の判断
(1)訂正の目的の適否,新規事項の有無及び拡張・変更の存否について
訂正事項1は,訂正前の請求項3を削除するものであるから,訂正事項1に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,しかも,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
したがって,訂正事項1に係る訂正は,特許法第126条第1項第1号に掲げる事項を目的とするものであって,かつ,同条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

(2)独立特許要件について
訂正明細書の請求項1?2に係る発明(以下,「訂正発明」という。)は,審判請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものである。
そして,訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見当たらない。
したがって,訂正事項1に係る訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合するものである。


4.むすび
以上のとおりであるから,本件審判の請求は,特許法第126条第1項ただし書きに掲げる事項を目的とし,かつ,同条第3項ないし第5項の規定に適合する。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
効果終了時点が目視可能な機能材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】油溶性染料と界面活性剤とを溶解させた揮散性薬剤を、油溶性染料に対して非染色性の担体に担持せしめたことを特徴とする効果終了時点が目視可能な機能材。
【請求項2】上記担体が、セルロースビーズ、セルローススポンジ及び紙のセルロース多孔質体又は親水性繊維で形成された織布、不織布、又はケイ酸カルシウム、アルミナ、シリカゲル、ゼオライトの親水性多孔質素材である請求項1記載の効果終了時点が目視可能な機能材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤など揮散性薬剤を使用した機能材、特に効果の終了時点を目視によって確認することが可能な機能材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、芳香剤等の揮散性薬剤に、揮散性の染料を混合し、揮散性薬剤と共に、染料を同時に揮散させて、色彩の減色によって、薬剤の減少、即ち、薬効を視覚的に確認できるようにしたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のものは、揮散性薬剤の揮散と染料の揮散とが時間的に必ずしも一致しないので、揮散性薬剤が残存しているのに、染料が先に揮散してしまうと、薬効も終了したと判断せざるを得ず、薬剤が無駄になったり、反対に揮散性薬剤が全部揮散してしまっているのに、染料が残っていると、薬効のないものをそのまま使用してしまうという問題があった。
【0004】
一方、揮散性薬剤の揮散に伴い、呈色性有機化合物自体が化学変化を生じることによる変色によって薬効を視覚的に確認しようとするものがある。この場合、上記のような薬効終了時点と変色との時差は生じないが、揮散性薬剤と呈色性有機化合物との組合せが重要であり、使用できる揮散性薬剤が限定されるという欠点がある。また、使用可能なものでも薬剤の揮散に伴い、呈色性有機化合物の色彩を帯びてくるものがほとんどであるので、薬効終了というイメージと結びつかないという欠点もある。
【0005】
そこで、この発明は、揮散性薬剤の揮散と色調の変化を直接関連付けることにより、薬効の終了時期を確実に目視によって確認することができると共に、油溶性染料を溶解することができる揮散性薬剤が例外なく使用可能で、色彩の減色によって薬剤の減少を視覚的に確認することができる機能材を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、油溶性染料と界面活性剤とを溶解させた揮散性薬剤を、セルロースビーズ等の親水性素材やワックス等、油溶性染料に対して非染色性、すなわち、なじみの悪い担体に担持せしめて機能材としたものである。
【0007】
上記担体に担持させられた油溶性染料は、揮散性薬剤が存在している場合には、薬液中に溶解している。このため、担体表面が、染料が溶解した薬液によって覆われるので、担体が色彩を呈する(図1の概念図)。
【0008】
そして、揮散性薬剤が揮散して、薬剤中の油溶性染料の濃度が高くなると、界面活性剤が凝集剤として機能し、油溶性物質に対してなじみの悪い担体表面で、油溶性染料が局所的に凝集析出して大きな固まりとなる。これにより、凝集析出した染料の固まりは、固まりの一部が担体の表面から顔を出すだけになるので、染料の色彩は目立たず、全体としては担体自体の色彩を呈する(図2の概念図参照)。
【0009】
したがって、この色調の変化により、揮散性薬剤の揮散状態、すなわち、薬効の有無を確認することが可能となる。
【0010】
なお、図1、図2において、符号1は担体、2は染料を示している。
【0011】
この発明で使用する揮散性薬剤としては、後述の油溶性染料を溶解させる親油性のものであり、芳香剤として使用されるリモネン、リナロール、シトラール、カルボン、アントラニル酸メチル、抗菌・防カビ剤として使用されるアリルイソチオシアネート、オクチルアルデヒド、オイゲノール、ブロムシンナミルアルデヒド、精油・消臭剤として使用されるヒバ油、ヒノキ油、ユーカリ油、防虫剤として使用されるピレスロイド、ハッカ油、その他忌避剤、フェロモン等がある。
【0012】
油溶性染料としては、分散染料、例えば、C.I.Disp.Yellow64、C.I.Disp.Yellow54、C.I.Disp.Red60、C.I.Disp.Blue60、C.I.Disp.Blue56、C.I.Disp.Blue334、油溶染料、例えば、C.I.Solvent Yellow33、C.I.Solvent Red52、C.I.Solvent Blue11、建染染料、例えば、C.I.Vat Yellow1、C.I.Vat Red1、C.I.Vat Blue1、硫化染料、例えば、C.I.Sulphur Yellow1、C.I.Sulphur Red3、C.I.Sulphur Blue1、媒染染料、例えば、C.I.Mordant Yellow3、C.I.Mordant Red11、C.I.Mordant Blue1、アゾイック染料、例えば、C.I.Azoic Yellow2、C.I.Azoic Red2、C.I.Azoic Blue6、等がある。
【0013】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、例えば、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、陽イオン界面活性剤、例えば、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、両性界面活性剤、例えば、カルボキシベタイン型、非イオン界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル等があり、特に、陰イオン界面活性剤が良好である。
【0014】
界面活性剤を使用しない場合、揮散性薬剤が揮散して薬剤中の油溶性染料の濃度が高くなっても、油溶性染料が凝集析出しにくく、界面活性剤が存在する場合のように、大きな固まりは形成されずに、担体表面全体に染料が膜状に析出するため、色彩変化を判別しにくい。界面活性剤の使用量としては、油溶性染料に対し、10?300重量%が好ましい。10重量%未満では界面活性剤の効果が得にくい場合があり、300重量%を超えると、薬剤が揮散しきらないうちに凝集析出を起こしてしまい、薬効が終了したものと勘違いする場合があるからである。
【0015】
次に、油溶性染料を界面活性剤と共に溶解させた揮散性薬剤を担持させる担体としては、油溶性染料に対して非染色性、即ち、なじみの悪いもの、例えば、セルロースビーズ、セルローススポンジ、及び紙等のセルロース多孔質体、又は、親水性繊維で形成された織布、不織布、又は、ケイ酸カルシウム、アルミナ、シリカゲル、ゼオライト等の親水性多孔質素材、又は、鉱物ワックス(オゾケライト)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス)、天然ワックス(脂肪酸、カルナバワックス、ライスワックス)等のワックスを使用する。これは、担体として、油溶性染料に対してなじみの良いものを使用した場合、担体自体が油溶性染料によって染色されて、揮散性薬剤が揮散しても、染料が凝集せず、色彩が変化しないからと考えられる。また、上記ワックス類を溶融し、これに揮散性薬剤、油溶性染料、界面活性剤を混練し、この混練液を上記親水性多孔質素材の孔部に包埋すると、薬効の目視確認に加え、徐放性も具備できるのでより好ましい。
【0016】
【実施例】
この発明の実施例と比較例として、以下の実験を行い、その結果を表1に示す。
【0017】
〔実施例1〕
親油性の揮散性薬剤であるアリルイソチオシアネート(以下、「AIT」という、関東化学(株)社製)10gに、油溶性染料であるC.I.Disp.Blue60を2mg、界面活性剤であるナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物3mgを溶解させた液体を、セルロースビーズ(レンゴー(株)社製 ビスコパール)5gに含浸させた。この含浸ビーズを室温に放置してAITを完全に揮散させた。また、色調は、作製時とAITが完全に揮散した時のビーズの色を目視で判断した。なお、揮散後、AIT10gに上記ビーズを含浸すると白色になったビーズが再び青色に戻った。
【0018】
〔実施例2〕
油溶性染料をC.I.Disp.Red60に代えた以外は、実施例1と同じである。
【0019】
〔実施例3〕
揮散性薬剤を、リモネン(ナカライテスク(株)社製)に代えた以外は、実施例1と同じである。
【0020】
〔実施例4〕
担体を、ケイ酸カルシウム(徳山曹達(株)社製 フローライトRM40)に代えた以外は、実施例1と同じである。
【0021】
〔実施例5〕
AIT10gとC.I.Disp.Blue60を2mgとナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物を3mgとパラフィンワックス(日本精蝋(株)社製)5gを加熱溶融して混線した液体を、セルロースビーズ6gに含浸させた。AITの色調の判断は、実施例1と同じである。
【0022】
〔実施例6〕
油溶性染料をC.I.Azoic Red2に代えた以外は実施例1と同じである。
【0023】
〔実施例7〕
界面活性剤をポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ナカライテスク(株)社製)に代えた以外は実施例1と同じである。
【0024】
〔比較例1〕
C.I.Disp.Blue60を、顔料のPigment R.146に代えた以外は、実施例1と同じである。
【0025】
〔比較例2〕
C.I.Disp.Blue60を、水溶性染料のAcid Blue112に代え、揮散性薬剤をエタノールに代えた以外は、実施例1と同じである。
【0026】
〔比較例3〕
ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物3mgを添加しない以外は、実施例1と同じである。
【0027】
〔比較例4〕
ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物3mgを添加しない以外は実施例6と同じである。
【0028】
〔比較例5〕
担体を、油溶性染料に対し染色性の発泡ポリウレタンに代えた以外は実施例1と同じである。
【0029】
【表1】

【0030】
【発明の効果】
この発明によれば、以上のように、揮散性薬剤の揮散に直接関連して色調が変化する、具体的には減色する、即ち、薬効の終了時期を確実に目視によって確認することができ、また、油溶性染料を溶解する揮散性薬剤が例外なく使用可能であり、さらに、薬効終了後、揮散性薬剤を添加することにより再利用も可能な機能材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
揮散性薬剤の薬液中に染料が溶解して担体表面を覆っている状態を示したこの発明の概念図
【図2】
揮散性薬剤が揮散して担体表面に染料が局所的に凝集析出して担体表面が露出する状態を示したこの発明の機能材の概念図
【符号の説明】
1 担体
2 染料
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-05-01 
結審通知日 2007-05-08 
審決日 2007-05-23 
出願番号 特願平8-317853
審決分類 P 1 41・ 851- Y (C09K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 岩瀬 眞紀子
安藤 達也
登録日 2006-04-07 
登録番号 特許第3790591号(P3790591)
発明の名称 効果終了時点が目視可能な機能材  
代理人 田川 孝由  
代理人 鳥居 和久  
代理人 東尾 正博  
代理人 鳥居 和久  
代理人 鎌田 文二  
代理人 東尾 正博  
代理人 田川 孝由  
代理人 鎌田 文二  

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