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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680029 審決 特許
無効200680151 審決 特許
無効200680197 審決 特許
無効200680012 審決 特許
無効200680259 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G06Q
審判 全部無効 2項進歩性  G06Q
管理番号 1159180
審判番号 無効2006-80138  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-07-25 
確定日 2007-05-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3734168号発明「発注条件を自動設定する売買注文処理システム及び売買注文の処理方法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判に係る手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成14年 7月19日 出願
平成17年10月28日 設定登録(特許第3734168号)
平成18年 7月25日 本件無効審判請求
同年10月18日 答弁書・訂正請求書
平成19年 1月22日 口頭審理
同年 2月13日 上申書(請求人)
同月21日 上申書(被請求人)

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成18年10月18日付け訂正請求書により請求人が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,
(ア) 特許請求の範囲について,訂正前の請求項1を削除し,訂正前の請求項2を請求項1に繰り上げ,訂正前の請求項3,4を削除し,訂正前の請求項5を請求項2に繰り上げ,訂正前の請求項6を削除する。
(イ) 上記特許請求の範囲の訂正に対応して,特許明細書の段落【0013】,【0034】を訂正し,段落【0022】,【0030】?【0033】を削除し,段落【0050】の「始値」の誤記を「終値」に訂正する。
というものである。

2 訂正の目的の適否,新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項(ア)は,請求項1,3,4,6を削除し,従属形式で記載された請求項2,5を,それぞれ,独立形式で記載された請求項とし,訂正後の請求項1,2とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,上記訂正事項(イ)は,特許請求の範囲の訂正に伴い,発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させると共に,明白な誤記を訂正するものであるから,明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とするものである。
そして,上記訂正事項(ア),(イ)のいずれも,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

3 むすび
したがって,本件訂正は,特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合し,同条第5項の規定によって準用する特許法第126条第2,3項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

第3 本件発明に対する判断
1 本件発明
本件特許第3734168号の請求項1,2に係る発明(以下「本件発明1」,「本件発明2」という。)は,本件訂正により訂正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲1,2に記載された以下のとおりのものである。

【本件発明1】
「注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文を取引市場に発注するための売買注文処理システムであって,
前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を,前記売買注文の識別情報と関連付けて格納する注文内容格納手段と,
前記売買注文を発注するために前記注文者から指定された発注条件を,前記売買注文の識別情報と関連付けて,発注トリガとして格納する発注トリガ格納手段と,
前記注文条件及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するための確定条件を,前記売買注文の識別情報と関連付けて,確定トリガとして格納する確定トリガ格納手段と,
前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置において変化するデータが,前記確定トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに合致するかを監視する確定トリガ監視手段と,
前記確定トリガ監視手段において前記確定トリガの合致を検出すると,前記識別情報をキーに前記注文内容格納手段に格納された前記確定トリガに対応する注文内容を特定し,前記注文内容に含まれる注文条件に含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する注文条件の更新,及び前記識別情報をキーに前記発注トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに対応する発注トリガを特定し,前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する発注トリガの更新を実行する条件更新手段と,
前記時価格納装置において変化するデータが,前記発注トリガ格納手段に格納された発注トリガに合致するかを監視する発注トリガ監視手段と,
前記発注トリガ監視手段において前記発注トリガの合致を検出すると,前記識別情報をキーに前記注文内容格納手段に格納された前記発注トリガに対応する注文内容を特定し,前記注文内容に含まれる注文条件に従った注文の執行指示を,前記商品にかかる取引市場システムに送信する注文執行手段と,
を備えていて,
前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていて,
前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており,
前記確定トリガ監視手段は,前記時価格納装置において前記始値を監視し,
前記条件更新手段は,前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して,前記指値及び前記指定価格を,前記始値を基準にした価格に更新すること
を特徴とする売買注文処理システム。」

【本件発明2】
「注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文を売買注文処理システムによって取引市場に発注する売買注文の処理方法であって,
前記売買注文処理システムが,前記注文者の操作する端末装置から,前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を受け付けて,前記売買注文の識別情報と関連付けて注文内容格納部に格納するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記売買注文を発注するために前記注文者から指定された発注条件を,前記売買注文の識別情報と関連付けて,発注トリガとして発注トリガ格納部に格納するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記注文条件及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するための確定条件を,前記売買注文の識別情報と関連付けて,確定トリガとして確定トリガ格納部に格納するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置,時刻を計測する時刻計測装置,前記注文者の発注した売買注文の約定状況又は前記注文者の保有資産の状況の少なくとも一つに関する取引情報を格納する取引情報格納装置のうち,少なくとも一つの装置において変化するデータが,前記確定トリガ格納部に格納された前記確定トリガに合致するかを監視するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記確定トリガに合致するかを監視するステップにおいて前記確定トリガの合致を検出すると,前記識別情報をキーに前記注文内容格納部に格納された前記確定トリガに対応する注文内容を特定し,前記注文内容に含まれる注文条件に含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する注文条件の更新,及び前記識別情報をキーに前記発注トリガ格納部に格納された前記確定トリガに対応する発注トリガを特定し,前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する発注トリガの更新を実行するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記時価格納装置,前記時刻計測装置,前記取引情報格納装置のうち,少なくとも一つの装置において変化するデータが,前記発注トリガ格納部に格納された発注トリガに合致するかを監視するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記発注トリガに合致するかを監視するステップにおいて前記発注トリガの合致を検出すると,前記識別情報をキーに前記注文内容格納部に格納された前記発注トリガに対応する注文内容を特定し,前記注文内容に含まれる注文条件に従った注文の執行指示を,前記商品にかかる取引市場システムに送信するステップと,
を有していて,
前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていて,
前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており,
前記確定トリガを監視するステップでは,前記売買注文処理システムは前記時価格納装置において前記始値を監視し,
前記更新を実行するステップでは,前記売買注文処理システムは前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して,前記指値及び前記指定価格を,前記始値を基準にした価格に更新すること
を特徴とする売買注文の処理方法。」

2 当事者の主張
2-1 請求人の主張
請求人は,本件発明1,2に係る特許を無効とするとの審決を求め,その理由として,本件発明1,2は,本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明と実質的に同一であるか,同発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張し,その証拠方法として次の証拠を提出している。
(ア) 甲第1号証:国際公開第00/51043号パンフレット
(イ) 甲第2号証:特開平6-301681号公報

2-2 被請求人の主張
一方,被請求人は,本件審判請求は成り立たないとの審決を求め,本件発明1,2は,審判請求人が提出した証拠に記載された発明と同一ではなく,同発明にに基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないと主張する。

3 甲号証の記載事項
3-1 甲第1号証
(1) 甲第1号証には,以下の事項が記載されている(なお,甲第1号証の記載については,対応する特表2002-543481号公報の記載を翻訳文として採用する。)。
(ア)「【請求項1】データ通信ネットワークを通じて物件,証券,債券,外国為替,先物,指数などを売買する自動売買発注方法において,前記段階は,
コンピュータシステムで売買を望む対象を特定し,買取り条件と売込み条件を含む自動売買条件を書き込む段階;
前記自動売買条件に応じて売込み及びあるいは買取りを前記データ通信ネットワークを通じて発注する段階;
前記データ通信ネットワークを通じて前記売込みあるいは買取りへの発注が約定されたかどうかを確認する段階;及び,
前記売込みあるいは買取りへの発注中のいずれかの一つが約定された場合,コンピュータが前記あらかじめ決定された売買条件に応じて新たな売込み及びあるいは買取りを前記データ通信ネットワークを通じて発注する段階を含む自動売買発注方法。
【請求項11】データ通信ネットワークを通じて韓国証券取引所のコンピ
ュータシステムに接続可能なユーザーのコンピュータシステムを含むシステムにおいて,前記システムは,
前記ユーザーコンピュータシステムのユーザーインターフェース;
前記ユーザーインターフェースを通じて前記コンピュータシステムに書き込まれる前記株の品目コード,前記株持主の口座番号を含む基礎情報データを記憶するための記憶装置;
前記ユーザーインターフェースを通じて前記コンピュータシステムに書き込まれる前記株売買をするための希望売込み値,希望売込み数量,希望買取り値および希望買取り量を含む株自動売買条件データを記憶するための売買条件制御モジュール;及び,
前記株自動売買条件が成し遂げられたかどうかを判断し,成し遂げられた場合には,前記データ通信ネットワークを通じて前記自動株売買条件に応じて前記品目の株売買を発注するための売買発注制御モジュールを含む株自動発注システム。」(特許請求の範囲【請求項1】,【請求項11】)
(イ)「【0016】(発明の概要)
この発明は前述の種々の問題を解決するためになされたものであり,この発明の目的は,市場の変動なり新たな情報にさほどに気を配らずに投資可能な売買自動発注方法およびシステムを提供することにある。」
(ウ)「【0027】前記ユーザーのコンピュータ(10)のモジュール(14,16)の一部あるいは全部は証券会社のコンピュータ(20)に統合されることができる。ユーザーは単にユーザーインターフェース(12)を通じて証券会社のコンピュータに接続するように構成されることができる。さらに,ユーザーが証券取引所のコンピュータシステム(20)に直接接続して株売買を発注するのが法律によって許される国においては,証券会社のコンピュータシステム(20)はユーザーのコンピュータ(10)に統合されることができる。証券会社が顧客にとって代わり株を投資する場合には,ユーザーのコンピュータ(10)のハードウェアおよびソフトウェアの資源は証券会社のコンピュータシステム(20)に統合される。」
(エ)「【0036】自動売買条件は,最初の売買が成立されたことを前提とするものである。自動売買条件を設定するために,売込みあるいは買取りを選択するための欄(412,422),単価および数量を定量あるいは定率として選択するための欄(414,418,424,428),および単価あるいは数量を定量あるいは定率として書き込むための欄(416,420,426,430)が提供される。
【0037】自動売買の1次条件として,この例では最初の売買で買取った100株(420)を27,000ウォンで売込む(412)ものと設定した。自動売買の2次条件は1次条件による売買が約定されたことを前提として同一の株を1次条件による売買価より20%安値で(424,426)1次売買による売買量に比べて200%の量を(428,430)買取る(422)ものと設定した。つまり,21,600ウォンで200株を買取る条件である。かかる自動売買条件は適切な数だけ,例えば,5次条件あるいは10次条件まで同一の方式で設定することができる。自動売買条件はユーザーが確認ボタン(432)を押すことによって確定される。ところで,自動売買条件はいつでもユーザーが修正,変更できるように許される。
【0038】かかる最初の売買が約定された後,すぐさま株の相場(現在の価格)とはかかわりなしに1次条件による売込みがコンピュータによって発注される。つまり,図3の段階(306)で自動売買条件が買取りなのか売込みなのかを判断し,図4のごとく売込みに設定された場合,段階(310)に進んで売込み条件が充足されるかを判断する。売込み条件への判断は設定された売込み量の株を持っているか,売込み指定価が許容売買の売値の範囲(つまり,上限価および下限価の範囲)内にあるのかどうかなどを判断するのである。条件が充足される場合,売込みがコンピュータによって自動的に発注され(段階316),前記発注が約定されたかどうかを確認する(段階318)。前記売込み発注が当日に約定されない場合,売込み発注が約定される時まで毎日同一の発注がコンピュータによって発生される。発注が約定された場合,口座残高および株残量を更新し(段階320),あらかじめ設定された自動売買2次条件に応じて条件が充足されるかどうかを判断し,充足される場合,すぐさま新たに発注される。つまり,実際には売買が約定される次第2次売買が発注されるのである。かかる方式で自動売買条件が設定されたことから,自動でコンピュータによって株売買が発注される。設定された自動売買条件がすべて約定されると自動売買は停止される。この発明で自動売買の終了は適切な方法でユーザーに通知される。かかる通知は,例えば,ピーピー,E-mail,あるいは携帯電話などを通じてユーザーに通知することが含まれることができる。かかる通知方法は公知の技術を利用して実現することができる。
【0039】実施態様1は買取りあるいは売込み条件が充足されたかどうかを判断する段階(308,310)前に,前日の終値を受信する段階(304),およびエラー(段階312)を通知する段階を含む。我が国のように,株売買への発注が上限価および下限価の範囲内でのみ可能な場合には,設定された売買値がその範囲にあるのかを判断すべきであり,その範囲を逸脱する場合,段階(312)でエラーが発生する。さらに,売買発注量の一部だけが約定された場合,売買発注価とその他の価格で売買が約定された場合(かかる場合の処理については後述する)などにおいては,口座残高および株残量が予想したとおりに残っていない場合が発生してエラーが発生することができる。エラーが発生すると,自動売買は停止され,エラーの発生を適切な方法でユーザーに通知することができる。エラーが通知されると,ユーザーは自動売買条件を変更,修正することで,自動売買を続けざまに進ませることができる。
【0040】前記実施態様1によれば,ユーザーは株市場の変動を継続的に見極めなくても自己の望むとおりに株を売買することができる。
【0041】この発明の実施態様2は図3の段階(304)で前日の終値ばかりか,自動売買条件により投資株の現在の値段を受信して照合する段階を含む。前記実施態様1おいては現在の値段とはかかわりなしに株売買を発注するのだが,投資額が多い場合,その他の投資家に自己の株投資への戦略をあらわにする短所がある。したがって,実施態様2は株市場の現在の値段を設定された自動売買条件の設定された値段に到達した場合,株の売込みあるいは買取りを発注するようにするか,あるいは現在の値段を設定された自動売買売込み値より所定価(例えば,5%)が低い場合,株の売込みを発注するようにするか,現在の値段を設定された自動売買の買取り値より所定価(例えば,4%)が高い場合,株の買取りを発注するようにするのである。
【0042】実施態様2は,図4における自動売買条件設定欄に売買発注時期を限定する設定欄を追って提供し,図3の段階(308)および(310)で設定された売買発注時期条件と現在の価格を照合することによって具現されることができる。その場合,時期条件が充足されない場合には,エラー(312)を発生せずに,時期条件が充足される時まで段階(308)および(310)は継続してチエックすべきである。実施態様2による時期条件の照合手段は公知技術を利用して図2の売買発注制御モジュール(14)と売買条件制御モジュール(16)に統合されることができる。」
(オ)「【0045】自動売買条件で基準量(602)は,毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を設定する。欄(604)には株売買時に要される証券会社の歩合(および税金)の料率を書き込む。これは必須的なものではないが,株を売買した後の収益率の勘定に足しになれる。自動売買で買取り値および売込み量の欄(606,608,610,612)に設定する。買取り値は毎度の売込み値より所定割合の安値で設定するか,所定額の低値で設定することができる。図6おいては売込み値より毎度500ウォンと安値を自動買取り値として設定した。自動買取り量もまた欄(610)で定量あるいは定率で設定することができる。欄(612)が空欄の場合,毎度の自動買取り発注は基準量の設定値(602)のごとく100株となる。欄(612)には+および-符号が使用されうるし,+記号が使用された場合,定量あるいは定率分だけ自動買取り発注量が増し,-記号が使用された場合は定量あるいは定率分だけ減るようになる。」
(カ)「【0047】ユーザーは欄(626)で目標収益率又は収益率を設定することができる。目標収益率が設定されないと,ユーザーが立ち入って自動売買を中止させないかぎり自動売買は継続される。ところで,毎度にわたって自動売買時にコンピュータが収益率を計算するということは決して容易なものでないことから,所定の収益率を達成した場合は,自動売買を自動的に中止するようにするのが望ましい。」
(キ)「【0063】前述の本願発明の実施態様1?実施態様4は,図1,2に示すシステムによって具現される。証券取引所のコンピュータシステム(30)なり,インターネットに接続されたその他のコンピュータシステム(図示せず)などから受信された情報は,売買条件制御モジュール(16)によってユーザーがすでに設定しておいた自動売買条件と照合されて買取り条件あるいは売込み条件を充足させるかを判断する。判断の結果,充足される場合,売買発注制御モジュール(14)によって証券会社のコンピュータシステム(20)の売買遂行モジュール(24)に買取りあるいは売込みを発注する。かかる判断および売買発注は,自動発注システムが開始された以後から実際の時間で市場情報を受信しつつ繰返し行われて一日に数回にわたって売買が発注することができる。売買発注制御モジュール(14)によって売買が発注された以後には,口座制御モジュール(26)によって口座の残高および株の残量の限度から外れていないかを判断し,売買が発注された売買は前記売買遂行モジュール(24)によって証券取引所のコンピュータシステム(30)に伝送される。前記証券取引所のコンピュータシステムの売買約定制御モジュール(34)においては,前記最終発注を受信してその他の証券会社からの売買発注と照合し,適切な値段が形成された場合,売買を成立させるようになり,売買を約定されたことを売買遂行モジュール(24)に通報する。売買遂行モジュール(24)は約定された値段および数量を口座制御モジュール(26)および売買条件制御モジュール(14)に再度通報し,その通報に応答して口座制御モジュール(26)は残高および残量に対する情報を修正し,売買条件制御モジュール(14)は,実際に約定された売買条件を別途に記憶させてユーザーの指示なり設定状態によって売買条件を更新する。」
(ク)「【0066】上述の如き,この発明の株売買自動発注方法およびシステムによって投資家は発注への書き込みに要される時間なり,株市場の状況を見極めるのに要される時間の損失を減らすことができ,証券会社は売買発注を書き込んで管理するための時間と費用を減らせることになる。さらに,株売買発注に必要なデータの書き込みを誤まるおそれを根源から排除することができるうえ,かかる誤まりの書き込みによる投資への損失を前もって食い止めることができる。」
(2) 上記(ア)?(ク)の記載を検討すると,甲第1号証には,次の(a)?(e)の事項が記載されているということができる。
(a) 甲第1号証に記載された発注条件を自動設定する売買注文処理システム及び売買注文発注方法は,ユーザーからの株の売買注文を証券取引所に発注するものであり,売買条件制御モジュールと売買発注制御モジュールが証券会社コンピュータシステムに備えられ,ユーザーコンピュータには,証券会社コンピュータシステムへの接続を可能にするユーザーインターフェースが備えられる。
(b) 売買注文制御モジュールには,ユーザーによって指定される最初の売買条件と自動売買条件が設定され,
最初の売買条件は,指値注文に係る株の銘柄,売り・買いの選択,単価及び株数であり,
自動売買条件は,最初の売買注文に係る銘柄の株について,指値注文に係る売り・買いの選択,単価及び株数である。
自動売買条件の単価は,約定した売買の売買価を基準に,定量・定率の加減算の形式で設定でき,自動売買条件の株数は,約定した売買の売買量を基準に,定量・定率の加減算の形式で設定でき,未確定の変数を含むものである。
自動売買条件は,複数設定できる。
(c) 売買発注制御モジュールは,売買が成立するかを確認し,売買が成立すると,約定した売買の売買価及び売買量を基準に,自動売買条件の単価及び株数を決定し,決定した注文内容で自動的に発注する。
自動発注は,売込み発注については,現在の株の価格が自動売買条件で決定した売込み単価より所定価(例えば,5%)低い場合,買取り発注については,買取り単価より所定価(例えば,4%)高い場合という発注条件が設定され,発注条件が満たされた時点で実行されるから,この発注条件の価格は,指定価格である。
自動売買条件で決定する単価は,未確定の変数を含むから,発注条件の指定価格も未確定の変数を含むものである。
(d) 売買の成立及び売買価並びに売買量は,証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買発注制御モジュールに通知され,現在の株の価格は,証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールから得られる。
売買発注制御モジュールが売買の成立及び売買価並びに売買量の通知を受けることは,自動売買条件及び発注条件に含まれる未確定の変数を確定するための契機となる。
(e) 発注に先立ち,前日の終値が受信され,発注価格が上限価と下限価の間にあるかを判断し,逸脱する場合はエラーとなり,発注はされない。
前日の終値は,上限値・下限値を設定する基準値として用いられる。
(3) してみると,甲第1号証には,次の2つの発明(以下「甲1発明1」,「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。

【甲1発明1】
「ユーザーからの株の売買注文を証券取引所に発注するための売買注文処理システムであって,
売買条件制御モジュールと売買発注制御モジュールとを備えており,
売買条件制御モジュールは,
前記ユーザーから指定された自動売買条件が設定され,
売買発注制御モジュールは,
前記売買注文を発注するために前記ユーザーから指定された発注条件が設定され,
前記自動売買条件及び前記発注条件に含まれる未確定の変数を確定する条件が設定され,
証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを確認し,
前記売買の成立及び売買価並びに売買量の通知を受けると,前記売買条件制御モジュールに設定された前記自動売買条件に含まれる未確定の変数を確定し,前記売買発注制御モジュールに設定された前記発注条件に含まれる未確定の変数を確定し,
前記証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールから得られる現在の株の価格が前記売買発注制御モジュールに設定された発注条件を満たすかを判定し,
前記発注条件を満たすと判定すると,前記発注条件に対応する売買注文を,前記自動売買条件に従って証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールに送信するものであり,
前記自動売買条件には,指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注条件には,前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されており,
前記確定する条件には,前記売買注文の対象銘柄の前記証券市場における売買の成立が設定されており,
前記売買発注制御モジュールは,売買の成立が通知されたかを確認し,
前記売買発注制御モジュールは,売買の成立が通知されると,前記指値及び前記指定価格を前記通知された売買価を基準にした価格に更新する
売買注文処理システム。」

【甲1発明2】
「ユーザーからの株の売買注文を売買注文処理システムによって証券取引所に発注する売買注文の処理方法であって,
前記売買注文処理システムが,前記ユーザーのコンピュータシステムから,前記売買注文に係る自動売買条件を受け付けて,売買条件制御モジュールに設定するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記売買注文を発注するために前記ユーザーから指定された発注条件を売買発注制御モジュールに設定するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記自動売買条件及び発注条件に含まれる未確定の変数を確定する条件を売買条件制御モジュールに設定するステップと,
前記売買注文処理システムが,商品取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されたかを確認するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記確認するステップにおいて売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されたことを確認すると,前記売買条件制御モジュールに設定された自動売買条件に含まれる未確定の変数を確定し,前記売買発注制御モジュールに設定された発注条件に含まれる未確定の変数を確定するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールから得られる現在の株の価格が前記売買発注制御モジュールに設定された発注条件を満たすかを判定するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記判定するステップにおいて前記発注条件を満たすと判定すると,前記発注条件に対応する売買注文を,前記自動売買条件に従って証券取引所コンピュータシステムに送信するステップと,
を有していて,
前記自動売買条件には,指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注条件には,前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されており,
前記確定する条件には,前記売買注文の対象銘柄の前記証券市場における売買の成立が通知されることが設定されており,
前記確認するステップでは,前記売買注文処理システムは,売買の成立が通知されたかを確認し,
前記確定するステップでは,前記売買注文処理システムは,売買の成立が通知されると,前記指値及び前記指定価格を,前記通知された売買価を基準にした価格に更新する
売買注文の処理方法。」

3-2 甲第2号証
(1) 甲第2号証には,以下の事項が記載されている。
(ケ)「【請求項1】オーダ側カスタマの呈示する売買注文情報と,ヒット側カスタマの呈示する売買注文情報とのマッチング処理を電子的に行うことで取り引きの成立を実現する構成を採る電子ディーリングシステムにおいて,
最新取引価格に対しての相対的な変位価格を設定する設定手段(5) と,
最新取引価格が決定されるときに,該最新取引価格と上記変位価格とから判定価格を算出する算出手段(8) と,
最新取引価格が決定されるときに,オーダ側カスタマの呈示する呈示オーダ価格と上記判定価格との大小関係を判定することで,該呈示オーダ価格にとって現市場状況下において不利となる状態が発生したのか否かを検出する検出手段(9)と,
上記検出手段(9) が不利状態の発生を検出するときにアラーム音を出力するアラーム手段(10)とを備えることを,
特徴とする電子ディーリングシステム。」
(コ)「【0007】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,このような従来技術に従っていると,オーダ側カスタマは,自らの呈示したオーダが市場においてどのような状態にあるのかをディスプレイ画面を介して常時監視していかなくてはならず,負荷がかかるとともに,有利な取引状態の発生や不利な取引状態の発生を見逃してしまうことがあるという問題点があった。
【0008】本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって,オーダ側カスタマの呈示する売買注文情報と,ヒット側カスタマの呈示する売買注文情報とのマッチング処理を電子的に行うことで取り引きの成立を実現する構成を採る電子ディーリングシステムにあって,カスタマの負荷の低減を実現するとともに,カスタマにとって確実な取り引きを実現可能とする新たな電子ディーリングシステムの提供を目的とする。」
(サ)「【0011】一方,端末2は,最新取引価格に対しての相対的な変位価格を設定する設定手段5と,設定手段5の設定する変位価格を管理する設定値管理手段6と,自端末を操作するオーダ側カスタマの呈示するオーダ情報を管理する呈示オーダ情報管理手段7と,最新取引価格が決定されるときに,その最新取引価格と設定された変位価格とから判定価格を算出する算出手段8と,現市場状況下においてオーダ側カスタマの呈示する呈示オーダにとって有利となる状態が発生したのか,不利となる状態が発生したのかを検出する検出手段9と,検出手段9が有利/不利状態の発生を検出するときにアラーム情報を出力するアラーム手段10とを備える。
【0012】【作用】本発明では,マッチング手段4が最新取引価格を決定すると,算出手段8は,その最新取引価格から設定手段5の設定する買い変位価格を差し引くことで買い判定価格を算出するとともに,その最新取引価格と設定手段5の設定する売り変位価格とを加算することで売り判定価格を算出する。
【0013】このようにして,判定価格が算出されると,検出手段9は,呈示オーダ情報管理手段7の管理する呈示オーダ価格と算出された判定価格との大小関係を判定することで,その呈示オーダ価格にとって現市場状況下において不利となる状態が発生したのか否かを検出する。すなわち,買い呈示オーダ価格が買い判定価格以下となる不利状態の発生や,売り呈示オーダ価格が売り判定価格以上となる不利状態の発生を検出するのである。」
(シ)「【0025】このような表示形態をとる相場情報は,ホストシステム20の実行するマッチング処理に従って取り引きが成立することで逐次更新されていくことになるが,この更新されていく相場情報は,宅内制御装置24,30を介して,例えば2秒毎に端末25,31に転送されていくことになる。この相場情報のデータ転送は,更新された相場情報そのものを直接転送していくことで実行することも可能であるが,先に出願の特願平5-40077号で開示したように,前サイクルの相場情報との差分情報を利用していく方法を用いると,データ転送量を減らすことができるので好ましい。
【0026】図6に,端末25,31に展開されるアラーム処理プログラムのプログラム構成例を図示する。
図中は,40は第1のアラーム処理プログラムであって,ベストレートが変化するときにアラーム情報を出力するよう動作するもの,41は第2のアラーム処理プログラムであって,ヒットされた呈示オーダに対してアラーム情報を出力するように動作するもの,42は第3のアラーム処理プログラムであって,規定以上の不利な状態に移行する呈示オーダに対してアラーム情報を出力するよう動作するもの,43は第4のアラーム処理プログラムであって,規定以上の有利な状態に移行する呈示オーダに対してアラーム情報を出力するよう動作するもの,44は第5のアラーム処理プログラムであって,ベストレートが設定絶対価格よりも有利な状態に移行するときにアラーム情報を出力するよう動作するものである。」
(ス)「【0030】なお,カスタマは,「CALL LEVEL」のフィールド欄に対して,第3のアラーム処理プログラム42を起動させるべく「YOUR ORDERS FAR 」をデータインするときには,続けて,図1で説明した売り/買い変位価格をデータインする必要があり,また,第4のアラーム処理プログラム43を起動させるべく「YOUR ORDERS CLOSE 」をデータインするときには,続けて,図1で説明した売り/買い変位価格をデータインする必要があり,また,第5のアラーム処理プログラム44を起動させるべく「PRICE LEVEL REACH 」をデータインするときには,続けて,上述の設定絶対価格(売りと買いの2種類がある)をデータインする必要がある。」
(セ)「【0035】一方,チェックフラグがOFFモードであると判断するときには,ステップ6に進んで,ステップ4で検索した買い呈示オーダのオーダ価格と,ステップ3で算出した買いチェック値との大小関係を比較する。この比較処理により,「買いチェック値≧買い呈示オーダ価格」であると判断するときには,ステップ7に進んで,買いブザーを鳴らすことでアラーム情報を出力するとともに,チェックフラグをONモードに設定してから,次の買い呈示オーダの処理に進むべくステップ4に戻る。これに対して,「買いチェック値<買い呈示オーダ価格」であると判断するときには,買いブザーを鳴らすことなく次の買い呈示オーダの処理に進むべくステップ4に戻る。
【0036】このようにして,自オーダテーブルに展開される全ての買い呈示オーダを順次取り出して,「買いチェック値≧買い呈示オーダ価格」となる買い呈示オーダについては,一度だけ買いブザーを鳴らしていくよう処理する。
【0037】一方,ステップ4で,自オーダテーブルの全ての買い呈示オーダについての処理が終了することを判断すると,ステップ8に進んで,内部テーブルに展開される上述の売り変位価格(売りPOINT)を抽出し,続いて,ステップ9で,ステップ1で抽出した最新取引価格とステップ9で抽出した売り変位価格とを加算することで売りチェック値を算出する。」
(ソ)「【0039】一方,チェックフラグがOFFモードであると判断するときには,ステップ12に進んで,ステップ10で検索した売り呈示オーダのオーダ価格と,ステップ9で算出した売りチェック値との大小関係を比較する。この比較処理により,「売りチェック値≦売り呈示オーダ価格」であると判断するときには,ステップ13に進んで,売りブザーを鳴らすことでアラーム情報を出力するとともに,チェックフラグをONモードに設定してから,次の売り呈示オーダの処理に進むべくステップ10に戻る。これに対して,「売りチェック値>売り呈示オーダ価格」であると判断するときには,売りブザーを鳴らすことなく次の売り呈示オーダの処理に進むべくステップ10に戻る。
【0040】このようにして,自オーダテーブルに展開される全ての売り呈示オーダを順次取り出して,「売りチェック値≦売り呈示オーダ価格」となる売り呈示オーダについては,一度だけ売りブザーを鳴らしていくよう処理する。
【0041】この図8の処理フローを実行することで,第3のアラーム処理プログラム42は,例えば,最新取引価格が“120.00”で,買い変位価格が“10(≡0.10)”で,売り変位価格が“20(≡0.20)”であるときには,買いチェック値“119.90”と売りチェック値“120.20”とを算出して,図10(a)に示すように,「買いチェック値≧買い呈示オーダ価格」となる買い呈示オーダ価格ゾーンを買いブザー鳴動対象とするとともに,図10(b)に示すように,「売りチェック値≦売り呈示オーダ価格」となる売り呈示オーダ価格ゾーンを売りブザー鳴動対象として,図11(a)に例示するように,最新取引価格が更新されることで,買い呈示オーダ価格がこの買い呈示オーダ価格ゾーンに入るときには,一度だけ買いブザーを鳴らすとともに,図11(b)に例示するように,最新取引価格が更新されることで,売り呈示オーダ価格がこの売り呈示オーダ価格ゾーンに入るときには,一度だけ売りブザーを鳴らすよう処理する。」
(タ)「【0045】この違いにより,この図9の処理フローを実行することで,第4のアラーム処理プログラム43は,例えば,最新取引価格が“120.00”で,買い変位価格が“10(≡0.10)”で,売り変位価格が“20(≡0.20)”であるときには,買いチェック値“119.90”と売りチェック値“120.20”とを算出して,図12(a)に示すように,「買いチェック値≦買い呈示オーダ価格」となる買い呈示オーダ価格ゾーンを買いブザー鳴動対象とするとともに,図12(b)に示すように,「売りチェック値≧売り呈示オーダ価格」となる売り呈示オーダ価格ゾーンを売りブザー鳴動対象として,図13(a)に例示するように,最新取引価格が更新されることで,買い呈示オーダ価格がこの買い呈示オーダ価格ゾーンに入るときには,一度だけ買いブザーを鳴らすとともに,図13(b)に例示するように,最新取引価格が更新されることで,売り呈示オーダ価格がこの売り呈示オーダ価格ゾーンに入るときには,一度だけ売りブザーを鳴らすよう処理する。」
(2) 上記(ケ)?(タ)の記載を総合すると,甲第2号証には,次の2つの発明(以下「甲2発明1」,「甲2発明2」という。)が記載されているということができる。

【甲2発明1】
「オーダ側カスタマからの外国為替等の売買注文が市場においてどのような状態にあるのかを監視し,有利な取引状態又は不利な取引状態が発生するとアラーム情報を出力する電子ディーリングシステムであって,
前記オーダ側カスタマが呈示する前記売買注文を管理する呈示オーダ情報管理手段と,
最新取引価格に対しての相対的な変位価格を設定する設定手段と,
前記設定手段の設定する変位価格を管理する設定値管理手段と,
前記市場において最新取引価格が決定されると,この最新取引価格と前記設定値管理手段に管理された変位価格とから判定価格を算出する算出手段と,
前記呈示オーダ情報管理手段に管理された前記売買注文と前記判定価格との大小関係を判定することにより,現市場状況下において前記オーダ側カスタマの呈示する売買注文にとって有利となる状態が発生したのか,不利となる状態が発生したのかを検出する検出手段と,
前記検出手段が有利又は不利となる状態を検出するときにアラーム情報を出力するアラーム手段と
を備える電子ディーリングシステム。」

【甲2発明2】
「オーダ側カスタマからの外国為替等の売買注文が市場においてどのような状態にあるのかを電子ディーリングシステムによって監視し,有利な取引状態又は不利な取引状態が発生するとアラーム情報を出力する方法であって,
前記電子ディーリングシステムが,前記オーダ側カスタマにより呈示された前記売買注文を呈示オーダ情報管理手段により管理するステップと,
前記電子ディーリングシステムが,前記オーダ側カスタマが操作する端末の設定手段から設定された最新取引価格に対しての相対的な変位価格を設定値管理手段により管理するステップと,
前記電子ディーリングシステムが,前記市場において最新取引価格が決定されると,算出手段により,この最新取引価格と前記設定値管理手段に管理された変位価格とから判定価格を算出するステップと,
前記電子ディーリングシステムが,検出手段により,前記呈示オーダ情報管理手段に管理された前記売買注文と前記判定価格との大小関係を判定することにより,現市場状況下において前記オーダ側カスタマの呈示する売買注文にとって有利となる状態が発生したのか,不利となる状態が発生したのかを検出するステップと,
前記電子ディーリングシステムが,アラーム手段により,前記検出手段が有利又は不利となる状態を検出するときにアラーム情報を出力するステップと
を有しているアラーム情報を出力する方法。」

4 対比・判断
4-1 本件発明1について
4-1-1 甲1発明1との対比
(1) 本件発明1と甲1発明1とを対比するに,甲1発明1の「ユーザーからの株の売買注文」,「証券取引所」が本件発明1の「注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文」,「取引市場」にそれぞれ相当することは明らかである。
また,甲1発明1の「売買条件制御モジュール」は,自動売買条件が設定されるのであるから,本件発明1の「注文内容格納手段」に相当する。
また,甲1発明1の「売買注文制御モジュール」は,発注条件が設定され,未確定の変数を確定する条件が設定され,未確定の変数を確定し,発注条件を満たすかを判定し,売買注文を自動売買条件に従って証券取引所コンピュータシステムに送信するのであるから,本件発明1の「発注トリガ格納手段」,「確定トリガ格納手段」,「条件更新手段」,「発注トリガ監視手段」及び「注文執行手段」に相当する。
また,本件発明の「確定トリガ監視手段」における「監視」の具体的内容は,確定トリガに合致するデータが発生したかを検出することであるところ,甲1発明1の「売買注文制御モジュール」は,売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを検出して確認するものであるから,甲1発明1の「売買注文制御モジュール」の証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを確認する機能は,本件発明1の「確定トリガ監視手段」の確定トリガに合致するデータが発生したかを検出する機能に共通する(以下,この共通する機能を実現する手段を「検出手段」という。)。
また,甲1発明1の「証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュール」は,発注条件を満たすかを判定するためのデータである現在の株の価格を保持するものであるから,本件発明1の「時価格納装置」に相当する。
(2) してみると,本件発明1と甲1発明1とは,
「注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文を取引市場に発注するための売買注文処理システムであって,
前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を,格納する注文内容格納手段と,
前記売買注文を発注するために前記注文者から指定された発注条件を,発注トリガとして格納する発注トリガ格納手段と,
前記注文条件及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するための確定条件を,確定トリガとして格納する確定トリガ格納手段と,
変化するデータが,前記確定トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに合致するかを検出する検出手段と,
前記検出手段において前記確定トリガの合致を検出すると,前記注文内容に含まれる注文条件に含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する注文条件の更新,及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する発注トリガの更新を実行する条件更新手段と,
時価格納装置において変化するデータが,前記発注トリガ格納手段に格納された発注トリガに合致するかを監視する発注トリガ監視手段と,
前記発注トリガ監視手段において前記発注トリガの合致を検出すると,前記注文内容に含まれる注文条件に従った注文の執行指示を,前記商品にかかる取引市場システムに送信する注文執行手段と,
を備えていて,
前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていること
を特徴とする売買注文処理システム。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

〔相違点1の1〕本件発明1の注文内容,発注トリガ及び確定トリガは,いずれも,「売買注文の識別情報と関連付け」られ,また,「識別情報をキーに」「確定トリガに対応する注文内容を特定」,「確定トリガに対応する発注トリガを特定」及び「発注トリガに対応する注文内容を特定」するのに対し,甲1発明1では,そのようになっているか特定されていない点。
〔相違点1の2〕本件発明1の検出手段は,「前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置において変化するデータが,前記確定トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに合致するかを監視する」ものであるのに対し,甲1発明1の検出手段は,証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを確認するものである点。
〔相違点1の3〕本件発明1は,「前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており」,「前記確定トリガ監視手段は,前記時価格納装置において前記始値を監視し」,「前記条件更新手段は,前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して,前記指値及び前記指定価格を,前記始値を基準にした価格に更新する」のに対し,甲1発明1は,確定トリガには売買の成立が設定されており,売買の成立が通知されたかを確認し,売買の成立の通知が確認されると,指値及び前記指定価格を,前記通知された売買価を基準にした価格に更新する点。

4-1-2 相違点1の1?1の3についての判断
(1) 相違点1の1について
甲1発明1の売買注文処理システムは,証券会社のコンピュータシステムに備えられているものであり,証券会社のコンピュータシステムは,通常,複数の売買注文を受け付けるのであるから,甲1発明1の売買注文処理システムが各売買注文に識別情報を付して管理していることは明らかである。
そして,複数のデータ項目からなるデータを管理する際,単一のテーブルで管理する手法と,関連付けとなる識別情報を用いて複数のテーブルに分割して管理する手法は,データ管理の技術としていずれも周知の手法であり,単一のテーブルで管理するか,関連付けとなる識別情報を用いて複数のテーブルに分割して管理するかは,当業者が適宜選択する事項である。
してみると,甲1発明1において,注文内容,発注トリガ及び確定トリガを売買注文の識別情報と関連付けて,それぞれの格納手段に格納することは,当業者が容易に想到し得ることである。
そして甲1発明1において,注文内容,発注トリガ及び確定トリガを,売買注文の識別情報と関連付けて,それぞれの格納手段に格納する構成を採用すれば,識別情報をキーに,確定トリガに対応する注文内容を特定,確定トリガに対応する発注トリガを特定及び発注トリガに対応する注文内容を特定する構成となることは,直ちに導出される事項である。
したがって,甲1発明1において,相違点1の1に係る構成を得ることは,当業者が容易に想到し得ることである。
(2) 相違点1の2について
本件発明1の確定トリガ監視手段は,時価格納装置のデータが確定トリガに合致するかを監視するところ,この動作は,発注トリガ監視手段において,時価格納装置のデータが発注トリガに合致するかを監視する動作と同様なものであり,確定トリガ監視手段が時価格納装置に主体的かつ継続的にアクセスし,時価格納装置からデータをして取得し,取得したデータが確定トリガに合致するかを自ら検出するものであると解される。
これに対し,甲1発明1の売買発注制御モジュールは,証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるのを確認するものであり,証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールのデータを取得して確定トリガとの合致を検出するものではない。
そして,甲1発明1において,証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールには,現在の株の価格,すなわち,商品の時価に関する情報が格納されているだけであるから,甲1発明1の売買発注制御モジュールが証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールに主体的かつ継続的にアクセスし,証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールからデータを取得しても,この取得したデータから,先の売買注文が成立したかを検出することはできない。
してみると,甲1発明1に,本件発明1の確定トリガ監視手段の検出機能と共通する手段があるとしても,証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを確認する構成に代えて,証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールのデータを取得して確定トリガとの合致を検出する構成,すなわち,前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置において変化するデータが,前記確定トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに合致するかを監視する構成を採用することはできない。
したがって,甲1発明1において,相違点1の2に係る構成を得ることは,当業者といえども容易に想到し得ることではない。
(3) 相違点1の3について
(a) 甲第2号証には,オーダ側カスタマからの外国為替等の売買注文が市場においてどのような状態にあるのかを監視し,有利な取引状態又は不利な取引状態が発生するとアラーム情報を出力する電子ディーリングシステムが記載されており,最新取引価格及び変位価格から判定価格を算出することは記載されているが,始値に係る記載は認められないから,当業者といえども,甲1発明1に甲第2号証を適用して,相違点1の3に係る構成を得ることはできない。
(b) 請求人は,「甲第1号証には時価を監視する記載があり(0041等),「始値」は高値,安値,現在値と共に四本値を構成する時価の一種であるから,甲第1号証でも「始値」を監視することを包含していると言える。トリガを更新する基準として,投資家やシステム設計者(当業者)が時価を用いたければ時価を設定し,約定価格を用いたければ約定価格を設定すればいいだけで,これらは選択的な事項にすぎない。そして,何れの選択肢も甲第1号証にに開示されている。」と主張する。
しかし,請求人が指摘する,甲第1号証における時価(現在の値段)に係る記載は,時価と指定価格とを比較し,時価が発注条件を満たした場合に,売買注文を発注するというものや,指値が許容売買の売値の範囲内にあるのかを判断するというものであり,時価に基づいて自動売買条件及び発注条件に含まれる未確定の変数を確定することは,記載も示唆もされていない。
そもそも,甲1発明1は,いわゆるリレー注文を自動的に発注するためのシステムであり,先の注文が約定することを契機とし,証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから通知される先の注文の約定価格に基づいて次の注文の指値及び指定価格を決定するものであるから,先の注文の約定価格以外の株価を用いて,次の注文の指値及び指定価格を決定したのでは,リレー注文の意味をなさないものとなる。
したがって,甲1発明1において,約定価格を他の株価に置き換えることは,甲1発明1をリレー注文として無意味なものにすることになるから,甲1発明1において,約定価格を他の株価に置き換えることには,阻害要因があるというべきである。
もちろん,甲1発明1において,先の注文の約定価格が始値となる場合もあり得るが,そのような場合でも,次の注文の指値及び指定価格を決定するために用いられる価格は,あくまでも証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから通知される先の注文の約定価格そのものであって,証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュールから得られる始値ではない。
してみると,請求人が主張するように,始値を含む四本値が株価として周知のものであり,始値を参考に株取引を行うことが紹介されていたとしても,当業者が,甲1発明1において,約定価格を始値に置き換えることを着想することはない。
(c) したがって,甲1発明1において,相違点1の3に係る構成を得ることは,当業者といえども容易に想到し得ることではない。

4-1-3 甲2発明1との対比・判断
(1) 本件発明1と甲2発明1とを対比すると,甲2発明1の「外国為替等の売買注文」,「呈示オーダ情報管理手段」は,本件発明1の「価格が変動する商品の売買注文」,「注文内容格納手段」に相当する。
(2) したがって,両者は,
「価格が変動する商品の売買注文に係るシステムであって,
前記売買注文の注文内容を,格納する注文内容格納手段
を備えるシステム。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

〔相違点1の4〕本件発明1は,「注文者から委託を受けた売買注文を取引市場に発注するための売買注文処理システム」であるのに対し,甲2発明1は,売買注文が市場においてどのような状態にあるのかを監視し,有利な取引状態又は不利な取引状態が発生するとアラーム情報を出力する電子ディーリングシステムである点。
〔相違点1の5〕本件発明1は,「発注トリガ格納手段」,「確定トリガ格納手段」,「確定トリガ監視手段」,「条件更新手段」,「発注トリガ監視手段」及び「注文執行手段」とを備え,
「前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていて,
前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており,
前記確定トリガ監視手段は,前記時価格納装置において前記始値を監視し,
前記条件更新手段は,前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して,前記指値及び前記指定価格を,前記始値を基準にした価格に更新する」のに対し,
甲2発明1は,「最新取引価格に対しての相対的な変位価格を設定する設定手段」,「前記設定手段の設定する変位価格を管理する設定値管理手段」,「前記市場において最新取引価格が決定されると,この最新取引価格と前記設定値管理手段に管理された変位価格とから判定価格を算出する算出手段」及び「前記呈示オーダ情報管理手段に管理された前記売買注文と前記判定価格との大小関係を判定することにより,現市場状況下において前記オーダ側カスタマの呈示する売買注文にとって有利となる状態が発生したのか,不利となる状態が発生したのかを検出する検出手段」を備える点。
(3) 相違点1の4について検討するに,甲2発明1は,市場に呈示した売買注文が市場においてどのような状態にあるのかを監視し,有利な取引状態又は不利な取引状態が発生するとアラーム情報を出力するというものであるから,甲2発明1において,アラーム情報が出力された際,オーダ側カスタマが市場に呈示した売買注文をどのようにするかを考慮することはあるとしても,甲2発明1が売買注文の処理を行うことはない。
したがって,甲第1号証に,ユーザーからの株の売買注文を証券取引所に発注するための売買注文処理システムが記載されているとしても,甲2発明1のシステムを売買注文処理システムに変更することは,当業者といえども想到し得ない事項である。
(4) 相違点1の5について検討するに,甲2発明1の,最新取引価格と変位価格とに基づいて未確定の変数を含む判定価格を算出するという構成と,本件発明1の,確定トリガの合致を検出すると注文条件及び発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するという構成とは,市場で形成される価格に基づいて未確定の変数を含む価格を確定させるという点で類似するものであるが,甲2発明1の,最新取引価格と変位価格に基づいて算出される判定価格は,市場に呈示した売買注文が有利又は不利の取引状態にあるかを判定するために用いられるものであり,本件発明1の注文条件や発注トリガ,すなわち,売買注文の指値や指定価格として用いられるものではない。
そもそも,甲2発明1で監視する最新取引価格は,市場において次々と形成されていくものであって,そのような最新取引価格を監視するからこそ,最新取引価格が決定したときに,呈示した売買注文が市場において有利な取引状態又は不利な取引状態になったかの変化を判定することができるのであ。
これに対し,仮に,始値に基づいて判定価格を算出するのでは,市場がどのように変化しても始値は不変であり,同じ判定価格によって判定される結果,同じ判定結果しか出力しないから,呈示した売買注文が市場において有利な取引状態又は不利な取引状態になったかの変化を判定することはできない。
したがって,甲2発明1において,最新取引価格を始値とすることは,甲2発明1を無意味なものとするから,甲2発明1において,最新取引価格を始値とすることには,阻害要因があるというべきである。
してみると,始値を含む四本値が周知のものであり,始値を参考に株取引を行うことが紹介されていたとしても,甲2発明1において,相違点1の5に係る構成を得ることは,当業者といえども容易に想到することではない。

4-2 本件発明2について
4-2-1 甲1発明2との対比
(1) 本件発明2と甲1発明2とを対比するに,甲1発明2の「ユーザーからの株の売買注文」,「証券取引所」が本件発明2の「注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文」,「取引市場」にそれぞれ相当する。
また,甲1発明2の「売買条件制御モジュール」は,本件発明2の「注文内容格納部」に相当する。
また,甲1発明2の「売買注文制御モジュール」は,本件発明2の「発注トリガ格納部」,「確定トリガ格納部」の機能を有する。
また,本件発明の「監視するステップ」は,確定トリガに合致するデータが発生したかを検出することであるところ,甲1発明2の「確認するステップ」は,売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを検出して確認するものであるから,甲1発明2の「確認するステップ」の証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを確認する処理手順は,本件発明1の「監視するステップ」の確定トリガに合致するデータが発生したかを検出する処理手順に共通する。
また,甲1発明2の「証券取引所コンピュータシステムの株価制御モジュール」は,発注条件を満たすかを判定するためのデータである現在の株の価格を保持するものであるから,本件発明1の「時価格納装置」に相当する。
(2) してみると,本件発明2と甲1発明2とは,
「注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文を売買注文処理システムによって取引市場に発注する売買注文の処理方法であって,
前記売買注文処理システムが,前記注文者の操作する端末装置から,前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を受け付けて,注文内容格納部に格納するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記売買注文を発注するために前記注文者から指定された発注条件を,発注トリガとして発注トリガ格納部に格納するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記注文条件及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するための確定条件を,確定トリガとして確定トリガ格納部に格納するステップと,
前記売買注文処理システムが,変化するデータが,前記確定トリガ格納部に格納された前記確定トリガに合致するかを検出するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記確定トリガに合致するかを検出するステップにおいて前記確定トリガの合致を検出すると,前記注文内容に含まれる注文条件に含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する注文条件の更新,及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する発注トリガの更新を実行するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記時価格納装置において変化するデータが,前記発注トリガ格納部に格納された発注トリガに合致するかを監視するステップと,
前記売買注文処理システムが,前記発注トリガに合致するかを監視するステップにおいて前記発注トリガの合致を検出すると,前記注文内容に含まれる注文条件に従った注文の執行指示を,前記商品にかかる取引市場システムに送信するステップと,
を有していて,
前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていること
を特徴とする売買注文の処理方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

〔相違点2の1〕本件発明2の注文内容,発注トリガ及び確定トリガは,いずれも,「売買注文の識別情報と関連付け」られ,「識別情報をキーに」「確定トリガに対応する注文内容を特定」,「確定トリガに対応する発注トリガを特定」及び「発注トリガに対応する注文内容を特定」されるのに対し,甲1発明2では,そのようになっているか特定されていない点。
〔相違点2の2〕本件発明2の検出するステップは,「前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置において変化するデータが,前記確定トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに合致するかを監視する」処理を実行するのに対し,甲1発明2の検出するステップは,証券取引所コンピュータシステムの売買約定制御モジュールから売買の成立及び売買価並びに売買量が通知されるかを確認する処理を実行する点。
〔相違点2の3〕本件発明2は,「前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており」,「前記確定トリガを監視するステップでは,前記売買注文処理システムは前記時価格納装置において前記始値を監視し」,「前記更新を実行するステップでは,前記売買注文処理システムは前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して,前記指値及び前記指定価格を,前記始値を基準にした価格に更新する」のに対し,甲1発明2は,確定トリガには売買の成立が設定されており,売買が成立したかを確認し,売買が成立すると,指値及び前記指定価格を,前記売買価を基準にした価格に更新する点。

4-2-2 相違点2の1?2の3についての判断
(1) 相違点2の1について
上記4-1-2の(1)で述べたのと同じ理由により,甲1発明2において,相違点2の1に係る構成を得ることは,当業者が容易に想到し得ることである。
(2) 相違点2の2について
上記4-1-2の(2)で述べたのと同じ理由により,甲1発明2において,相違点2の2に係る構成を得ることは,当業者といえども容易に想到し得ることではない。
(3) 相違点2の3について
上記4-1-2の(3)で述べたのと同じ理由により,甲1発明2において,相違点2の3に係る構成を得ることは,当業者といえども容易に想到することではない。

4-2-3 甲2発明2との対比・判断
(1) 本件発明2と甲2発明2とを対比すると,甲2発明2の「外国為替等の売買注文」,「呈示オーダ情報管理手段」は,本件発明2の「価格が変動する商品の売買注文」,「注文内容格納手段」に相当する。
(2) したがって,両者は,
「価格が変動する商品の売買注文を処理システムによって処理する売買注文の処理方法であって,
前記処理システムが,前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を受け付けて,注文内容格納部に格納するステップと,
を有する売買注文の処理方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

〔相違点2の4〕本件発明2は,「注文者から委託を受けた売買注文を取引市場に発注する売買注文の処理方法」であるのに対し,甲2発明2は,売買注文が市場においてどのような状態にあるのかを監視し,有利な取引状態又は不利な取引状態が発生するとアラーム情報を出力する方法である点。
〔相違点2の5〕本件発明2は,「発注トリガを発注トリガ格納部に格納するステップ」,「確定トリガを確定トリガ格納部に格納するステップ」,「時価格納装置において変化するデータが確定トリガに合致するかを監視するステップ」,「注文条件の更新及び発注トリガの更新を実行するステップ」,「時価格納装置において変化するデータが発注トリガに合致するかを監視するステップ」及び「注文の執行指示を取引市場システムに送信するステップ」とを有していて,
「前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて,
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていて,
前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており,
前記確定トリガを監視するステップでは,前記売買注文処理システムは前記時価格納装置において前記始値を監視し,
前記更新を実行するステップでは,前記売買注文処理システムは前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して,前記指値及び前記指定価格を,前記始値を基準にした価格に更新する」のに対し,
甲2発明2は,「前記電子ディーリングシステムが,前記オーダ側カスタマにより呈示された前記売買注文を呈示オーダ情報管理手段により管理するステップ」,「前記電子ディーリングシステムが,前記オーダ側カスタマが操作する端末の設定手段から設定された最新取引価格に対しての相対的な変位価格を設定値管理手段により管理するステップ」,「前記電子ディーリングシステムが,前記市場において最新取引価格が決定されると,算出手段により,この最新取引価格と前記設定値管理手段に管理された変位価格とから判定価格を算出するステップ」,及び「前記電子ディーリングシステムが,検出手段により,前記呈示オーダ情報管理手段に管理された前記売買注文と前記判定価格との大小関係を判定することにより,現市場状況下において前記オーダ側カスタマの呈示する売買注文にとって有利となる状態が発生したのか,不利となる状態が発生したのかを検出するステップ」を有する点。
(4) 相違点2の4について検討するに,上記4-1-3(3)で述べたのと同じ理由により,甲2発明2において,相違点2の4に係る構成を得ることは,当業者といえども容易に想到し得ることではない。
(5) 相違点2の5について検討するに,上記4-1-3(4)で述べたのと同じ理由により,甲2発明2において,相違点2の5に係る構成を得ることは,当業者といえども容易に想到し得ることではない。

4-3 まとめ
してみると,甲第1号証,甲第2号証のいずれを主引用例として検討しても,本件発明1,2が本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明と実質的に同一であるということはできず,また,同発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうこともできない。

5 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件発明1及び本件発明2についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
発注条件を自動設定する売買注文処理システム及び売買注文の処理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文を取引市場に発注するための売買注文処理システムであって、
前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を、前記売買注文の識別情報と関連付けて格納する注文内容格納手段と、
前記売買注文を発注するために前記注文者から指定された発注条件を、前記売買注文の識別情報と関連付けて、発注トリガとして格納する発注トリガ格納手段と、前記注文条件及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するための確定条件を、前記売買注文の識別情報と関連付けて、確定トリガとして格納する確定トリガ格納手段と、
前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置において変化するデータが、前記確定トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに合致するかを監視する確定トリガ監視手段と、
前記確定トリガ監視手段において前記確定トリガの合致を検出すると、前記識別情報をキーに前記注文内容格納手段に格納された前記確定トリガに対応する注文内容を特定し、前記注文内容に含まれる注文条件に含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する注文条件の更新、及び前記識別情報をキーに前記発注トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに対応する発注トリガを特定し、前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する発注トリガの更新を実行する条件更新手段と、
前記時価格納装置において変化するデータが、前記発注トリガ格納手段に格納された発注トリガに合致するかを監視する発注トリガ監視手段と、
前記発注トリガ監視手段において前記発注トリガの合致を検出すると、前記識別情報をキーに前記注文内容格納手段に格納された前記発注トリガに対応する注文内容を特定し、前記注文内容に含まれる注文条件に従った注文の執行指示を、前記商品にかかる取引市場システムに送信する注文執行手段と、
を備えていて、
前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて、
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていて、
前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており、
前記確定トリガ監視手段は、前記時価格納装置において前記始値を監視し、
前記条件更新手段は、前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して、前記指値及び前記指定価格を、前記始値を基準にした価格に更新すること
を特徴とする売買注文処理システム。
【請求項2】注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文を売買注文処理システムによって取引市場に発注する売買注文の処理方法であって、前記売買注文処理システムが、前記注文者の操作する端末装置から、前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を受け付けて、前記売買注文の識別情報と関連付けて注文内容格納部に格納するステップと、
前記売買注文処理システムが、前記売買注文を発注するために前記注文者から指定された発注条件を、前記売買注文の識別情報と関連付けて、発注トリガとして発注トリガ格納部に格納するステップと、
前記売買注文処理システムが、前記注文条件及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するための確定条件を、前記売買注文の識別情報と関連付けて、確定トリガとして確定トリガ格納部に格納するステップと、
前記売買注文処理システムが、前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置において変化するデータが、前記確定トリガ格納部に格納された前記確定トリガに合致するかを監視するステップと、
前記売買注文処理システムが、前記確定トリガに合致するかを監視するステップにおいて前記確定トリガの合致を検出すると、前記識別情報をキーに前記注文内容格納部に格納された前記確定トリガに対応する注文内容を特定し、前記注文内容に含まれる注文条件に含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する注文条件の更新、及び前記識別情報をキーに前記発注トリガ格納部に格納された前記確定トリガに対応する発注トリガを特定し、前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する発注トリガの更新を実行するステップと、
前記売買注文処理システムが、前記時価格納装置において変化するデータが、前記発注トリガ格納部に格納された発注トリガに合致するかを監視するステップと、前記売買注文処理システムが、前記発注トリガに合致するかを監視するステップにおいて前記発注トリガの合致を検出すると、前記識別情報をキーに前記注文内容格納部に格納された前記発注トリガに対応する注文内容を特定し、前記注文内容に含まれる注文条件に従った注文の執行指示を、前記商品にかかる取引市場システムに送信するステップと、
を有していて、
前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて、
前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていて、
前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており、
前記確定トリガを監視するステップでは、前記売買注文処理システムは前記時価格納装置において前記始値を監視し、
前記更新を実行するステップでは、前記売買注文処理システムは前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して、前記指値及び前記指定価格を、前記始値を基準にした価格に更新すること
を特徴とする売買注文の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、株式や債券、商品先物等の価格が変動する商品について、注文者から委託を受けた条件付の売買注文を取引市場に発注するための売買注文処理システム及び売買注文の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの普及と株式売買委託手数料の完全自由化を背景に、1999年頃よりインターネットを利用した株式等金融商品のオンライン取引が、個人投資家層を対象に急速に拡大した。そうした状況下で、多くの証券会社がオンライン取引に参入し、サービスの利便性向上や情報提供の充実などを進めている。
【0003】
株式取引は、証券会社を通じて証券取引所や店頭市場において行われるが、一般に投資家が証券会社に売買を委託する際には、価格を指定せずに売買を委託する成行注文と、価格を指定して売買を委託する指値注文を選択することができる。上記のオンライン取引においても、成行注文、指値注文のいずれかを端末画面から選択して注文できるようになっているのが一般的である。
【0004】
そうした中で本願の出願人は、成行注文、指値注文以外に対して条件を付したいくつかの注文方法が選択できる独自のオンライン取引システムを構築して、サービスを提供している(http://www.kabu.com/)。このシステムにおいては、注文を発注するタイミングや株価を条件として指定する「条件注文」、「条件注文」において指値とは逆方向で条件を設定する「逆指値注文」、他の注文の約定を条件に次の注文を発注する「リレー注文」、買い注文と同時に売り注文を予約する「Uターン注文」、指値注文でありながら一定の条件の下に条件を訂正する「W指値注文」などを受付けることができるので、投資家は多様な取引方法を活用することにより、金融商品の価格変動リスクの管理に対応することができる。
【0005】
これらの条件付注文は、いずれも国内の証券取引所においては受付けることができない注文形態であるが、売買を取次ぐ証券会社において条件制御を行うことにより、取引所で定められた注文形態に依存することなく、初めて実現可能となったものである。この条件制御は、条件が多様になるほど特に条件が成就したか否かの監視が煩雑になり、人手により行われる従来の証券会社においては事実上対応が困難である。上記の注文のうち、発注条件を指定する「条件注文」、「逆指値注文」、「リレー注文」、「Uターン注文」について、本件出願人は発注条件を指定したトリガ監視により実現しており、その発明の内容は特開2001-155086号に開示されている。
【0006】
上記の発明においては、発注条件として株価や時刻、他の注文の約定を指定すると、これらをトリガにして市場における時価や時刻、注文の約定状況をリアルタイムで監視し、トリガに該当すると注文を発注する。このようにトリガを用いて条件の監視を自動化することにより、投資家が指定した条件に達した場合に注文を発注する条件付注文の受付が可能となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの注文方法の提供により、投資家は一定の抵抗値を超えた価格で買い注文を入れたり、下落傾向が表れた場合のロスカットの売り注文を予め設定するなど、多様な注文方法によりリスク管理を行えるようになった。しかしながら、これらの方法においては、条件の設定自体は投資家自身が行わなければならないので、適切な条件を設定するためには、投資家がマーケット等の状況を見た上で条件を入力しなければならないという問題が生じている。
【0008】
例えば、ある銘柄の株価について500円が上値抵抗線となっているので、「500円になれば510円の指値で買い注文」を発注する、という逆指値注文を設定したとする。図3の例においては、490円で引けた翌日に、何らかの好材料が出たために始値が510円で寄り付くと、そのまま指値510円の買い注文が発注され、約定してしまう。しかしながら、その日の株価の方向性についての確認がされていないために、寄り付き後に材料への反応が限定的と判断されて売りが集中すると、株価はそのまま抵抗線以下に下げてしまう、ということも起こり得る。
【0009】
また、ある銘柄の株価について480円が下値支持線となっているので、これを下回る場合を条件にして、ロスカットの目的で470円の指値で売り注文を出すという逆指値注文を設定したとする。図5の例においては、その後に上昇傾向が続き510円まで上昇しているが、ここで何らかの悪材料が出たことにより当日の寄付きは490円に急落している。しかしながら480円になるまでは売り注文が出されないので、売り注文を出すタイミングが遅れて損失を縮小する機会を逸してしまうことになる。
【0010】
こうした問題点に対しては、投資家自身が日々刻々と変化するマーケットを監視して、その時点で最適と思われる注文を出すことにより解消され得るが、そもそもの条件付注文の目的は投資家のマーケットの監視負担を軽減することにある。従って、現状可能な注文方法のみにおいては、投資家の条件付注文に対するニーズを充足するものではないとも言える。
【0011】
別の見方をすれば、条件付注文において発注される売買注文の指定価格は投資家が設定しなければならないが、実際は設定されるべき基準になる価格はマーケットの状況により刻々と変動するものである。この指定価格をマーケットの変化に対応して自動的に設定できるようにすれば、投資家の監視負担をさらに軽減することができる。
【0012】
本発明は、これらの問題に対応してなされたものであり、条件付注文における発注条件をマーケットの状況に対応して自動的に設定し、投資家の監視負担とこれに伴う注文変更の作業負担を軽減し、投資にかかるリスク管理を容易に行えるシステムを提供することを課題とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
これらの課題を解決するために、本発明は、注文者から委託を受けた価格が変動する商品の売買注文を取引市場に発注するための売買注文処理システムであって、前記売買注文の執行について前記注文者から指定された注文条件を含む前記売買注文の注文内容を、前記売買注文の識別情報と関連付けて格納する注文内容格納手段と、前記売買注文を発注するために前記注文者から指定された発注条件を、前記売買注文の識別情報と関連付けて、発注トリガとして格納する発注トリガ格納手段と、前記注文条件及び前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定するための確定条件を、前記売買注文の識別情報と関連付けて、確定トリガとして格納する確定トリガ格納手段と、前記商品の時価に関する情報を格納する時価格納装置において変化するデータが、前記確定トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに合致するかを監視する確定トリガ監視手段と、前記確定トリガ監視手段において前記確定トリガの合致を検出すると、前記識別情報をキーに前記注文内容格納手段に格納された前記確定トリガに対応する注文内容を特定し、前記注文内容に含まれる注文条件に含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する注文条件の更新、及び前記識別情報をキーに前記発注トリガ格納手段に格納された前記確定トリガに対応する発注トリガを特定し、前記発注トリガに含まれる未確定の変数を確定した数値に更新する発注トリガの更新を実行する条件更新手段と、前記時価格納装置において変化するデータが、前記発注トリガ格納手段に格納された発注トリガに合致するかを監視する発注トリガ監視手段と、前記発注トリガ監視手段において前記発注トリガの合致を検出すると、前記識別情報をキーに前記注文内容格納手段に格納された前記発注トリガに対応する注文内容を特定し、前記注文内容に含まれる注文条件に従った注文の執行指示を、前記商品にかかる取引市場システムに送信する注文執行手段と、を備えていて、前記注文条件には指値注文の指値が未確定変数として指定されていて、前記発注トリガには前記売買注文の対象銘柄の指定価格が未確定変数として指定されていて、前記確定トリガには前記売買注文の対象銘柄の前記取引市場における始値が設定されており、前記確定トリガ監視手段は、前記時価格納装置において前記始値を監視し、前記条件更新手段は、前記始値が確定すると前記時価格納装置から前記始値を取得して、前記指値及び前記指定価格を、前記始値を基準にした価格に更新することを特徴とする。
【0014】
この発明は、売買注文を発注するタイミングを監視する発注トリガに加えて、このトリガに設定された発注条件を確定するための条件を監視する確定トリガを設けることにより、確定トリガがマーケット等の変化を監視して自動的に適切な発注条件を定めることができる。
【0015】
ここで対象となる「価格が変動する商品」とは、典型的なものとして株式や債券、オプション等の金融商品が該当するが、取引市場において売買されるものであれば商品先物等であってもよい。「取引市場」は証券会社等の取次業者間で上記の商品の取引が可能な市場であればよく、証券取引所のような会員組織で運営される取引所に限られず、オプション商品のように発行会社が取引市場の役割を果たす場合もある。
【0016】
「発注条件」とは、条件注文において「価格がX円になれば」「注文Aが約定すれば」というように、委託を受けた注文を発注するために指定された条件のことである。「注文条件」とは、「成行で100株の売り」「Y円の指値で100株の買い」というように、売買注文の執行について指定された条件のことである。
【0018】
このような確定トリガ監視手段は、マーケットの状況等に合わせて変更することが望ましい発注条件や注文条件について、適切な変更のタイミングを自動的に捉えて、発注条件と注文条件の一部を適切な内容に更新する。確定トリガに該当して発注条件が確定すると、この発注条件を発注トリガ監視手段で監視し、指定されたタイミングで売買注文が発注される。
【0019】
確定トリガ及び発注トリガが監視する対象は、株価などの商品価格、大引けなどの市場における時刻のタイミング、他の注文の約定状況などの取引履歴、含み損益などの保有資産状況のいずれであってもよい。
【0021】
ここで「未確定の変数」とは、当日の「始値」や「注文Aの約定価格」など、注文時点では値が確定しておらず、その後の市場価格や約定の状況により定まる価格を指定した変数のことをいう。このような指定を行って発注条件や注文条件を自動的に更新することにより、条件注文の発注後の事情変化を織り込んで発注条件や注文条件を設定することができる。
【0023】
ここで「始値」とは、市場において当日の寄付きで付いた値段のことである。このように構成すると、条件付注文の発注条件や注文条件を、当日の市場の状況を反映した形で、自動的に設定することができる。
【0024】
例えば先に示した図3の例に対して、本発明によれば図4の例の通り、「始値+10円になれば、始値+20円の買い注文」を発注する、という条件を指定することができる。この例では510円で寄り付いて始値が付いたものの、その後の株価が上下して方向感が定まらないうちは、注文は発注されない。従って、図3の例のようにその後株価が下落すれば買い注文は発注されず、逆に530円に達して上昇基調が確認された場合にのみ買い注文が発注されることになる。
【0034】
尚、本発明は、本発明にかかる売買注文処理システムに対応して、該システムを用いた売買注文の処理方法として構成することもできる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。尚、ここでは証券会社が株式の売買注文を取扱う例について説明するが、本発明は価格が変動する商品の販売を取次ぐ者であれば証券会社には限られず、商品先物等の取次業者も含まれる。また、取扱う商品も株式に限定されるものではなく、設定されるトリガについても以下に説明する例に限定されるものではない。
【0036】
図1は、本発明の概要を示す図である。図2は、本発明にかかる売買注文処理システムの構成の一例を示すブロック図である。図3、図4は、それぞれ現在のシステム、本発明のシステムによる条件注文の第一の例を示す図である。図5、図6は、それぞれ現在のシステム、本発明のシステムによる条件注文の第二の例を示す図である。図7は、現在のシステムによる条件注文のトリガの設定の一例を示す図である。図8は、本発明のシステムによる条件注文の発注トリガ及び確定トリガの設定の一例を示す図である。図9は、本発明のシステムによる条件注文で、発注条件及び注文条件が確定した場合の一例を示す図である。図10は、本発明にかかる注文データベースとトリガデータベースの構成の一例を示す図である。図11は、本発明による売買注文処理のフローチャートである。図12、図13、図14は、それぞれ本発明による売買注文処理フローの第一、第二、第三の例である。
【0037】
図1は、本発明にかかる売買注文処理システムを証券会社が利用する場合の概要を示している。インターネットを利用したオンライン証券取引においては、インターネットを通じて顧客端末と接続された証券会社のシステムは、顧客端末からの指示に従い、発注システムを介して証券取引市場に注文を発注する。
【0038】
現在の条件付注文では、この発注システムに対して発注のタイミングを指示するトリガ2が設けられている。トリガ2は設定された市場価格(例えばある銘柄についての株価)、時間(例えば大引け10分前)又は取引結果(例えば他の注文の約定)を監視して、発注条件に該当すると発注システムに発注の指示を行う。
【0039】
本発明においては、このトリガ2に設定される発注条件を確定するために、新たなトリガとしてトリガ1を設けている。トリガ1も同様に設定された市場価格(例えばある銘柄についての始値)、時間(例えば始値が設定されている場合の市場が始まる時間)又は取引結果(例えば他の注文の約定)を監視して、確定条件に該当するとトリガ2の発注条件に確定した条件を書き込む。これによって、投資家は予め発注条件を一定値に定めなくても、その時の市場の条件に合致した発注条件を自動的に設定することができる。
【0040】
図2は、本発明にかかる売買注文処理システムの構成を示している。売買注文処理システム100は、入力処理部110、注文データベース120、トリガ監視部130、トリガデータベース140、発注処理部150及びタイマー160から構成されており、トリガ監視部130は時価データベース200を参照できるよう構成されている。尚、時価データベース200は売買注文処理システム100の内部に設置されていてもよい。また、売買注文処理システム100は、インターネット等の通信ネットワークを通じて、顧客端末300と接続されている。
【0041】
オンライン取引を行う投資家は、顧客端末300から注文内容と発注条件を入力する。この発注条件には、例えば「X銘柄が始値+10円になれば、始値+20円の指値で100株の買い」というように、発注条件の中に「始値」のような未確定の変数を含んでいる。
【0042】
入力された注文を入力処理部110が受信すると、その内容は注文データベース120に書き込まれる。ここで注文データベース120の当該注文に関するレコードには、注文条件は未確定の変数(上記の例で言えば「始値+20円」)が含まれた状態で書き込まれるとともに、発注条件が付されている旨の記録(例えば「トリガ設定」のフィールドに「ON」と記録)がされる。
【0043】
また、入力処理部110は受信した注文から発注条件に関するデータを抽出し、トリガデータベース140に書き込む。このうち発注条件に関するデータは発注トリガテーブル141に、発注条件等を確定するデータは確定トリガテーブル142に書き込まれる。ここで発注トリガテーブル141の当該トリガに関するレコードには、発注条件は未確定の変数(上記の例で言えば「始値+10円」)が含まれた状態で書き込まれるとともに、確定条件が付されている旨の記録(例えば「トリガ設定」のフィールドに「ON」と記録)がされる。
【0044】
発注トリガテーブル141及び確定トリガテーブル142に書き込まれたトリガは、それぞれトリガ監視部130において、設定された条件が成就するか否かが監視される。トリガ監視部130には監視機能を有したエージェントプログラムを設定して、例えば注文データベース120において他の注文の約定を、タイマー160において市場におけるタイミングを、時価データベース200において特定の銘柄の時価を常時監視している。
【0045】
トリガ監視部130において、発注トリガが「ON」の状態になっていれば監視の条件が確定していないため、まず確定トリガとして設定された条件についての監視を行う。この条件が成就すると(上記の例で言えば「始値」が確定)、注文データベース120及び発注トリガテーブル141において未確定の変数となっていた条件(上記の例で言えば「始値+20円」と「始値+10円」)に、確定した数値が書き込まれる。併せて、発注トリガテーブル141においては、確定条件が確定して発注条件の監視が可能になった旨の記録(例えば「トリガ設定」のフィールドに「OFF」と記録)がされる。
【0046】
次に、トリガ監視部130は発注トリガに設定された発注条件の監視を行う。この条件が成就すると、注文データベース120に発注条件が解除された旨の記録(例えば「トリガ設定」のフィールドに「OFF」と記録)され、発注処理部150に対しては発注の指示がされ、市場に当該注文が発注される。
【0047】
次に、図3?6を用いて、本発明にかかるシステムによる条件付注文の具体例とその効果について説明する。図3及び図5は、先に説明したとおり、現在本件出願人が提供している条件注文により可能な注文の例を示している。
【0048】
図4では、本発明にかかるシステムにより「始値+10円になれば、始値+20円の買い注文」という注文を行った場合の例を示している。ここで、図3の例と同様に当日の始値が急騰して510円を付けたとすると、始値が510円と定まることにより、上記の注文も「520円になれば、530円の買い注文」の条件注文として確定する。その後は対象銘柄の現値が520円になるか否かの監視が行われ、520円になった時点で530円の注文が発注され、530円になった段階で買い注文が約定する。
【0049】
この場合の効果は、図3の例と比較した場合、予め発注条件が一定金額に定められていないため、当日の値動きの方向性を判断した上で注文が発注されるという効果がある。図4の例においては、仮に図3のような値動きをしたとしても、何らかの材料に伴う寄付きの急騰に関わらず思惑が外れて上昇傾向が継続されなかった場合には、注文は執行されないというメリットがある。
【0050】
図6では、本発明にかかるシステムにより「終値-10円になれば、終値-20円の売り注文」という注文を行った場合の例を示している。ここでは、前日終値は505円に対して「495円になれば、485円の売り注文」の条件注文が発注されているので、図5の例と同様に当日の始値が急落して490円を付けたとすると、上記の注文が自動的に発注される。その後は485円になった段階で売り注文が約定する。
【0051】
この場合の効果は、図5の例と比較した場合、前日終値との変動幅を見て発注条件が設定されるため、毎日条件を変更しなくても、前日から当日の値動きの方向性を判断した上で自動的に注文が発注されるという効果がある。図6の例を図4の例と比べると、急落というイレギュラーな値動きに対してより迅速に対応することができるため、この例では15円高く売り注文を約定することに成功している。
【0052】
上記の例は、いずれもいわゆる「逆指値注文」の例であるが、「逆指値注文」は相場の方向性が変わるリスクを回避するため、値動きの方向性を確認した上で注文を発注することを本質にするものなので、指定する条件はより直近の相場の動きを反映するものであることが望ましいため、本発明による注文方法の効果が顕著に表れるものである。
【0053】
次に、図7?9を用いて、現在本願の出願人が提供しているシステム及び本発明にかかるシステムによる条件付注文のトリガの設定例について説明する。
【0054】
図7は、現在本願の出願人が提供している条件注文により可能な注文の例として、注文Aは、「X銘柄が500円になれば、510円の指値で100株買い」という条件が設定されている。ここでトリガには「X銘柄の現値が500円」という条件が設定されており、この条件を時価データベースで監視して、X銘柄が500円になると510円の指値注文が発注される。
【0055】
これに対して、図8の通り、本発明にかかるシステムを利用した注文Bは、「X銘柄が始値+10円になれば、始値+20円の指値で100株買い」という条件が設定されている。トリガ1には確定トリガとして「X銘柄の始値」という条件が設定されており、この条件を時価データベースで監視する。また、トリガ2には「X銘柄の現値が始値+10円」という未確定の変数を含む発注条件が発注トリガとして設定されているが、この時点ではトリガの条件が確定しないため、トリガの監視は行われていない。
【0056】
図9では、X銘柄の始値が500円となったため、注文条件及び発注条件がそれぞれ「X銘柄が510円になれば、520円の指値で100株買い」、「X銘柄の現値が510円」と確定している。ここでトリガ2の条件が確定するため、この後は「X銘柄の現値が510円」という条件を時価データベースで監視し、X銘柄が510円になると520円の指値注文が発注される。
【0057】
図10は、本発明にかかる注文データベースとトリガデータベースの構成の一例を示している。注文データベースには、委託を受けた注文それぞれについてのレコードが設けられ、それぞれのレコードには注文を特定するコードである「注文ID」、指値注文の条件を記した「注文条件」、トリガの有無を示した「トリガ設定」などのフィールドが設けられている。
【0058】
また、トリガデータベースの発注トリガテーブルには、発注トリガが設定された注文それぞれについてのレコードが設けられ、それぞれのレコードには対象となる注文を特定するコードである「注文ID」、発注条件を記した「発注トリガ」、トリガの有無を示した「トリガ設定」などのフィールドが設けられている。また、トリガデータベースの確定トリガテーブルには、確定トリガが設定された注文それぞれについてのレコードが設けられ、それぞれのレコードには対象となる注文を特定するコードである「注文ID」、確定条件を記した「確定トリガ」、確定トリガが確定した場合に書き込む項目を示す「確定項目」などのフィールドが設けられている。ここで「注文ID」は、それぞれのトリガとして記録された条件が成就した場合に、該当する注文を関連付ける役割を果たしている。
【0059】
尚、発注トリガテーブル及び確定トリガテーブルについては、図10の例ではそれぞれ異なるテーブルを設けることとしているが、これらのテーブルはトリガコード等を設けてトリガの性質を区別できるよう設定することにより、同一のテーブル内に記録するよう構成してもよい。
【0060】
ここで「X銘柄が始値+10円になれば、始値+20円の指値で100株買い」という条件付注文を受け付けると、注文データベースの注文条件欄には「null+20円」が記録され、発注条件が付されていることからトリガ設定欄には「ON」と記録される。また発注トリガテーブルの発注トリガ欄には「null+10円」と、トリガ設定欄には「ON」と記録され、さらに確定トリガテーブルの確定トリガ欄には「始値」と、確定項目欄にはそれぞれ「発注トリガ」「注文条件」と記録される。
【0061】
ここで、確定トリガに設定された始値が確定すると、確定項目欄である「発注トリガ」「注文条件」には、それぞれ「null」の部分に始値の金額を当てはめて、それぞれの金額が定数として確定する。また、発注トリガについてはトリガ設定が「OFF」とされて、発注条件の監視がスタートする。さらに、発注トリガに設定された価格に達すると、注文データベースのトリガ設定が「OFF」とされて、当該注文が市場に発注される。
【0062】
次に、図11を用いて、本発明による売買注文処理のフローチャートについて説明する。この例では、トリガ1として確定トリガが、トリガ2として発注トリガが設定されている。
【0063】
まず、トリガ1の確定条件について監視が行われ(S01)、トリガ1の条件が成就しない場合には監視が継続される(S02?S01)。一方、トリガ1の条件が成就すると(S02)、トリガ2と注文条件についての未確定の部分が確定し(S03)、次にトリガ2の発注条件について監視が行われる(S04)。
【0064】
トリガ2の条件が成就しない場合には監視が継続される(S05?S04)。一方、トリガ2の条件が成就すると(S05)、S03で確定した条件に従って、市場に当該注文が発注される(S06)。
【0065】
図12?図14は、本発明による売買注文処理フローの具体例を示している。図12は始値を基準に条件を設定する例、図13は前日終値を基準に条件を設定する例、図14は他の注文の約定を基準に条件を設定する例である。
【0066】
図12は、「X銘柄が始値+10円になれば、始値+20円の指値で100株買い」という条件注文Aの例である。トリガ1には「X銘柄の始値」という確定トリガが設定され、トリガ監視部がX銘柄の寄付と始値についての監視を行う。X銘柄が500円で寄り付くと始値が確定し、注文Aの注文条件及び発注条件もそれぞれ確定する。
【0067】
次に、トリガ2では、「X銘柄の現値が始値+10円」と設定されていた発注トリガが「X銘柄の現値が510円」と確定し、トリガ設定がOFFになって監視部がX銘柄の時価の監視を開始する。X銘柄の現値が510円になると注文データベースのトリガ設定がOFFになって、発注処理部から「X銘柄を520円の指値で100株買い」の注文が発注される。
【0068】
図13は、「Y銘柄が終値-10円になれば、終値-20円の指値で100株売り」という条件注文Bの例である。トリガ1には「Y銘柄の終値」という確定トリガが設定され、トリガ監視部がY銘柄の大引けと終値についての監視を行う。Y銘柄は大引けに500円となって終値が確定すると、注文Bの注文条件及び発注条件もそれぞれ確定する。
【0069】
次に、トリガ2では、「Y銘柄の現値が終値-10円」と設定されていた発注トリガが「Y銘柄の現値が490円」と確定し、トリガ設定がOFFになって監視部がY銘柄の時価の監視を開始する。Y銘柄の現値が490円になると注文データベースのトリガ設定がOFFになって、発注処理部から「Y銘柄を480円の指値で100株売り」の注文が発注される。
【0070】
図14は、「Z銘柄の注文Cが約定すれば、注文Cの約定価格+20円になれば注文Cの約定価格+50円の指値で100株売り」という条件注文Dの例である。このような注文は、ある買い注文が約定した後に、上昇傾向が確認できれば利益確定の売り注文を自動的に発注したい場合に有効である。
【0071】
トリガ1には「注文Cが約定」という確定トリガが設定され、トリガ監視部が注文Cの約定について注文データベースを監視する。注文Cが約定して約定価格が確定すると、注文Dの注文条件及び発注条件もそれぞれ確定する。
【0072】
次に、トリガ2では、「Z銘柄の現値が注文Cの約定価格+20円」と設定されていた発注トリガが「Z銘柄の現値が520円」と確定し、トリガ設定がOFFになって監視部がZ銘柄の時価の監視を開始する。Z銘柄の現値が520円になると注文データベースのトリガ設定がOFFになって、発注処理部から「Z銘柄を550円の指値で100株売り」の注文が発注される。
【0073】
図12?図14の例の他にも、トリガ1及びトリガ2については様々な設定が可能であり、発注トリガであるトリガ2に対して、トリガ1が発注条件を定める確定トリガとなるものであればよい。例えば、トリガ1は注文を受けた顧客の保有資産残高を監視して、ある銘柄の含み益が一定値に達した場合に、さらに一定の利幅を乗せて売り注文を発注するような設定も可能である。
【0074】
【発明の効果】
本発明により、条件付注文を発注する投資家は、条件付注文における発注条件をマーケットの状況に対応して自動的に設定することが可能になり、市場の監視負担とこれに伴う注文変更の作業負担を軽減することができる。これらの負担軽減は、投資の専門家でない個人投資家であっても投資にかかるリスク管理を容易に行えるという効果があり、昨今我が国で求められている個人投資家の育成と投資家保護の養成にも資するものである。
【0075】
また、証券会社などの売買取次業者にとっても、多様な投資家のニーズに対応できるマーケットインフラを提供し、顧客サービスを向上させるという効果がある。取引所においては極めて多数の注文を正確に処理しなければならないために、複雑な条件が付された注文を受付けることが困難であることから、証券会社等の仲介者においてこのような条件制御機能を設けることは、極めて効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を示す図である。
【図2】本発明にかかる売買注文処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】現在のシステムによる条件注文の第一の例を示す図である。
【図4】本発明のシステムによる条件注文の第一の例を示す図である。
【図5】現在のシステムによる条件注文の第二の例を示す図である。
【図6】本発明のシステムによる条件注文の第二の例を示す図である。
【図7】現在のシステムによる条件注文のトリガの設定の一例を示す図である。
【図8】本発明のシステムによる条件注文の発注トリガ及び確定トリガの設定の一例を示す図である。
【図9】本発明のシステムによる条件注文で、発注条件及び注文条件が確定した場合の一例を示す図である。
【図10】本発明にかかる注文データベースとトリガデータベースの構成の一例を示す図である。
【図11】本発明による売買注文処理のフローチャートである。
【図12】本発明による売買注文処理フローの第一の例である。
【図13】本発明による売買注文処理フローの第二の例である。
【図14】本発明による売買注文処理フローの第三の例である。
【符号の説明】
100 売買注文処理システム
110 入力処理部
120 注文データベース
130 トリガ監視部
140 トリガデータベース
141 発注トリガテーブル
142 確定トリガテーブル
150 発注処理部
160 タイマー
200 時価データベース
300 顧客端末
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-03-28 
結審通知日 2007-04-03 
審決日 2007-04-16 
出願番号 特願2002-211831(P2002-211831)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (G06Q)
P 1 113・ 113- YA (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 満  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 赤穂 隆雄
岩間 直純
登録日 2005-10-28 
登録番号 特許第3734168号(P3734168)
発明の名称 発注条件を自動設定する売買注文処理システム及び売買注文の処理方法  
代理人 山口 康明  
代理人 白石 康広  
代理人 土生 哲也  
代理人 矢口 太郎  
代理人 白石 康広  
代理人 土生 哲也  

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