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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1159184 |
審判番号 | 不服2002-24714 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-24 |
確定日 | 2007-04-13 |
事件の表示 | 平成10年特許願第502269号「バルサルタンの固体経口剤形」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月31日国際公開、WO97/49394、平成12年 5月30日国内公表、特表2000-506540〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年6月18日(パリ条約による優先権主張1996年6月27日、イギリス)の国際出願(特願平10-502269号)であって、平成14年9月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年1月23日付で手続補正がなされたものである。 2.平成15年1月23日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年1月23日付の手続補正を却下する。 [理由] (A)当該補正書において特許請求の範囲の請求項の数が6から42となり、請求項の数は36項増加している。このような請求項の増加は特許法第17条の2第4項の1?4号の何れを目的とするものでもない。 (B)請求項1についての補正は限定的減縮を目的とするものであるが、以下に示すように補正後の発明は引用例1(特開平4-235149号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、独立して特許を受けることができないものである。したがって、この補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の要件を満たしていない。 (1)補正後の本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成15年1月23日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願補正発明」という。) 「 a)バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量を含む活性成分;および b)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤; を含み、活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35重量%以上の量で存在する圧縮固体経口剤を、 (i)活性成分および薬学的に許容される添加剤を粉砕混合すること; (ii)粉砕混合した添加剤および活性成分を圧縮して混合圧縮体とすること; (iii)混合圧縮体を粒状に変換すること;ならびに (iv)顆粒を圧縮して固体経口剤形とすること; のステップを含む乾燥圧縮法によって、水の非存在下で製造する方法。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-235149号公報(以下、引用例1という。)には、 「例93 各々100mgの有効成分、例えば(S)-N-(1-カルボキシ-2-メチル-プロプ-1-イル)-N-ペンタノイル-N-〔2′-1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イルメチル〕-アミンを次のように調製できる; 組成(10,000個の錠剤) 有効成分 100.0g ラクトース 100.0g コーンスターチ 70.0g タルク 8.50g ステアリン酸マグネシウム 1.50g ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.36g セラック 0.64g 水 適 量 塩化メチレン 適 量 有効成分、ラクトース、および40gのコーンスターチを混合し、ペースト(15gのコーンスターチおよび水から加温してうる)で湿潤化し次いで造粒する。顆粒を乾燥し、残りのコーンスターチ、タルクおよびステアリン酸カルシウムを添加し、顆粒と混合する。混合物を圧縮し、錠剤(重量:280mg)を得、これをヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびセラックの塩化メチレン溶液でコートする、被覆錠剤の最終重量:283mg」(段落【0060】、47頁91欄25行?92欄22行)と記載されている。 (3)対比 上記引用例において(S)-N-(1-カルボキシ-2-メチル-プロプ-1-イル)-N-ペンタノイル-N-〔2′-1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イルメチル〕-アミンは(S)-N-(1-カルボキシ-2-メチル-プロプ-1-イル)-N-ペンタノイル-N-〔2′-(1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イルメチル〕-アミンの誤記であることは明らかであり、「(S)-N-(1-カルボキシ-2-メチル-プロプ-1-イル)-N-ペンタノイル-N-〔2′-(1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イルメチル〕-アミン」はバルサルタンに相当し、ラクトース、コーンスターチ、タルク、ステアリン酸マグネシウムを添加剤として、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラックをコーティング剤として用い、湿式造粒法により錠剤を得ている。 そして、活性成分の錠剤すなわち圧縮固体経口剤の全重量に対する割合は、100.0/283.0x100(%)=35.3%であり、補正前の発明の請求項1に記載された、「活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35(重量)%以上の量で存在する」という範囲内のものである。 そこで本願補正発明と引用例1の例93の錠剤の製法とを対比すると,両者は,バルサルタンを含む活性成分および圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤を含み、活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35重量%以上の量で存在する圧縮固体経口剤を製造する方法である点で一致し,引用例1記載の発明が湿式顆粒圧縮法により錠剤を製造しているのに対して、本願補正発明は、 「(i) 活性成分および薬学的に許容される添加剤を破砕混合すること; (ii) 粉砕混合した添加剤および活性成分を圧縮して混合圧縮体とすること; (iii) 混合圧縮体を粒状に変換すること;ならびに (iv) 顆粒を圧縮して固体経口剤形とすること; のステップを含む乾燥圧縮法によって、水の非存在下で製造する方法」 である点で相違する。 (4)判断 (i)?(iv)のステップを含む乾燥圧縮法によって、水の非存在下で圧縮固体経口剤形すなわち錠剤を製造する方法は製剤学上の「乾式顆粒圧縮法」に相当するものですでに広く知られている技術である。(「新・薬剤学総論(改訂第3版)、岡野定輔編著、株式会社南江堂発行、1987年4月10日 改訂第3版発行、第123頁、第138頁?139頁」、「製剤学、仲井 由宣他1名編、株式会社南山堂発行、1977年10月15日 2刷発行、第136頁」、及び「薬剤学、清水 藤太郎著、株式会社南山堂発行、昭和33年11月15日 改訂第9版発行、第308?309頁」を参照。) そして、錠剤を製するための通常の製法である顆粒圧縮法のうちで、乾式顆粒圧縮法は水、熱に対し不安定なものや、流動性が低くかさ高いものに適当な方法であることもよく知られているから、薬物の性状に応じこの方法を採用することは、当業者が容易に行いうることである。 そして、本願補正発明の作用効果も当業者の予測の範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、請求人は審判請求理由補充書中で、「バルサルタンを含む圧縮固体経口剤を乾燥圧縮法により製造するに当り、圧縮段階(ii)の混合圧縮体を特定の圧密力で形成することにより崩壊速度が速い圧縮固体経口剤が得られる」旨、また審尋に対する回答書中で、「バルサルタンの非常に嵩高く、綿毛状で、粘着性であるという性質のために製剤分野の専門家ならば先ずは湿式圧縮法を検討し、さらに物質のカプセル化や圧縮を考慮するのが普通であり、当業者が乾式造粒法の適用を考えることは普通にはあり得ないことであり、乾式造粒法により湿式造粒法に見られる不利益、例えばバルサルタンの稠密化のために溶媒を使用して顆粒の形成を行うことを回避して高用量かつ小容量の固体経口製剤を調製できたことは予想外の結果であり、バルサルタンが綿毛状で、粘着性であるにもかかわらず問題となることなくこれに適用できたことも予想外の結果である。」旨主張しているが、上記のとおり乾式顆粒圧縮法はむしろ流動性が低くかさの大きい原料に対し適当であることが知られている方法であるし、バルサルタンを含む圧縮固体経口剤を乾燥圧縮法により製造するに当り、所望の崩壊速度が得られる圧縮処理条件を設定することは当業者であれば当然考慮すべきことである。 したがって、上記主張は採用できない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成15年1月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年6月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 a)バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量を含む活性成分 および b)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤 を含み、活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35(重量)%以上の量で存在する圧縮固体経口剤」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 引用例1の例93には、バルサルタンを有効成分として100.0g、および添加剤であるラクトース 100.0g、コーンスターチ 70.0g、タルク 8.50g、ステアリン酸マグネシウム 1.50gを含む、バルサルタンが全重量 283.0gに対し35.3重量%存在する圧縮固体錠剤すなわち圧縮固体経口剤が記載されており、引用例1の例93には 「 a)バルサルタンの有効量を含む活性成分 および b)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤 を含み、活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35重量%以上の量で存在する圧縮固体経口剤」が記載されているといえるから、本願発明は引用例1に記載された発明と同一である。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は引用例1に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-15 |
結審通知日 | 2006-03-22 |
審決日 | 2006-04-05 |
出願番号 | 特願平10-502269 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨永 保 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 吉住 和之 |
発明の名称 | バルサルタンの固体経口剤形 |
代理人 | 小島 一晃 |
代理人 | 岩崎 光隆 |
代理人 | 青山 葆 |