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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C |
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管理番号 | 1159238 |
審判番号 | 不服2006-16812 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-03 |
確定日 | 2007-06-14 |
事件の表示 | 特願2002-312750「リニアガイド装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 8日出願公開、特開2003-130051〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成5年10月20日に出願された実願平5-56711号を特許法第46条第1項の規定により平成9年10月2日に特許出願に変更した特願平9-269501号の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成14年10月28日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月4日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「案内レールに跨架されて該案内レール上を相対直線移動するスライダの移動方向の面に、表面と裏面と側面とで囲まれたコ字形の空間を内側に有する部材を取付け、この空間を有する部材の前記空間に、案内レールの外面に潤滑剤を供給するための、潤滑剤を含ませた部材を収容したことを特徴とするリニアガイド装置。」 2 引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-46216号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (a)「〈産業上の利用分野〉 本発明は直線案内の防塵装置に関し、レール表面(案内面)に油を供給し切粉等を捕獲、変性させることにより、直線案内の耐久性を向上させたものである。」(第1頁左欄第17行乃至同頁右欄第1行) (b)「1は例えば工作機械のテーブルに敷設されたレールである。このレール1上には、直線案内(例えば転がり案内)2が摺動自在に支持されている。直線案内2はレール1に沿ってレール1上を走行可能に配設されているものである。詳しくは、金床形断面のレール1に門型形状の直線案内2が跨るように配設されている。 この直線案内2は、断面門型のブロック3と、このブロック3の一端面(レール1の延在する方向の一側面)に固着されたエンドプレート4と、を有している。」(第3頁上段左欄第6行乃至第16行) (c)「この直線案内2の走行方向の側面には、ガイド面への異物や木の切屑等の侵入を防ぐための防塵装置6が取り付けられている。 この防塵装置6は、油塗布部材であるフェルト7と、このフェルト7を包持するフェルトハウジング8と、ワイパー9と、を有している。 これらのフェルト7、フェルトハウジング8、および、ワイパー9は、いずれも上記直線案内2と同型、すなわち門型形状であり、レール1に跨るように配設される。 フェルト(油塗布部材)7は、所定の厚さで、かつ、フェルトハウジング8よりもやや小さい略コの字形状(門型)の部材であって、フェルトハウジング8に嵌合、包持される。このフェルト7の内壁形状はレール1の外壁形状とほぼ同一に形成されており、フェルト7の内壁面はレール1の外表面に弾性的に摺接している。」(第3頁上段左欄末行乃至同頁上段右欄第16行) (d)「フェルトハウジング8はコの字形状の部材であり、その内部に油路を有している。そして、チューブ10を介して外部から供給された油を、この油路を介してフェルト7に供給可能になっている。 ワイパー9は同じく略コの字形状の板材で形成され、その内壁は上記レール1表面に摺接するように形成されている。ワイパー9がレール1上を摺動するとレール1表面に付着している微小な異物や木の切屑等を除くことができる。 なお、このワイパー9はフェルトハウジング8を挟んで、直線案内2の走行方向の側面(エンドプレート4)にネジ11により4カ所で固着されている。」(第3頁上段右欄第17行乃至同頁下段左欄第9行) (e)「以上の構成に係る防塵装置6をその側面に取り付けた直線案内2をレールに嵌合し、摺動させる。その結果、フェルト7に含浸している油がレール1表面全体に塗布され、所定の厚さの油膜が常に形成される。」(第3頁下段左欄第11行乃至第15行) 上記(b)乃至(d)の摘示、並びに第1図より、油塗布部材7は、ワイパー9の側面とフェルトハウジング8とエンドプレート4の側面とで囲まれた空間に収容されている点、及びこの空間は直線案内2の移動方向の面に設けられている点が認められる。 以上の点を総合すると、引用例には、 「レール1に跨るように配設されて該レール1上を走行する直線案内2の移動方向の面に、ワイパー9の側面とフェルトハウジング8とエンドプレート4の側面とで囲まれた空間を設け、この空間に、レール1表面全体に塗布され、所定の厚さの油膜が形成される油を含浸している油塗布部材7を収容した直線案内装置。」の発明(以下、引用発明」という。)が記載されているものと認める。 3 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「レール1」は、その配置、機能からみて、前者の「案内レール」に相当し、以下同様に、「直線案内2」は「スライダ」に、「直線案内装置」は「リニアガイド装置」に相当する。 したがって、後者の「レール1に跨るように配設されて該レール1上を走行する直線案内2」は、前者の「案内レールに跨架されて該案内レール上を相対直線移動するスライダ」に相当する。 また、後者の油塗布部材7を収容するための「ワイパー9の側面とフェルトハウジング8とエンドプレート4の側面とで囲まれた空間」は、上記(b)乃至(d)の摘示、並びに第1図によれば、コ字形であることは明らかであるので、前者の「コ字形の空間」に対応する。 そして、後者の「油塗布部材7」と前者の「潤滑剤を含ませた部材」は、ともにコ字形の空間に収容される部材である点で、共通している。 してみると、両者は、本願発明の表記にならえば、 「案内レールに跨架されて該案内レール上を相対直線移動するスライダの移動方向の面に、コ字形の空間を設け、この空間に部材を収容したリニアガイド装置。」である点で一致し、次の点で相違している。 〈相違点1〉 本願発明は、スライダの移動方向の面に、「表面と裏面と側面とで囲まれたコ字形の空間を内側に有する部材を取付け」るのに対し、引用発明は、直線案内2の移動方向の面に、ワイパー9の側面とフェルトハウジング8とエンドプレート4の側面とで囲まれた空間を設けるものであって、本願発明の如く、表面と裏面と側面とで囲まれたコ字形の空間を単一の部材で形成していない点。 〈相違点2〉 本願発明は、「この空間を有する部材の前記空間に、案内レールの外面に潤滑剤を供給するための、潤滑剤を含ませた部材を収容した」のに対し、引用発明は、この空間に、レール1表面全体に塗布され、所定の厚さの油膜が形成される油を含浸している油塗布部材7を収容したもので、油塗布部材7に潤滑剤を含ませたとの明示がない点。 4 相違点の判断 〈相違点1〉について 引用発明は、本願発明の「コ字形の空間」に対応する「空間」を「ワイパー9の側面とフェルトハウジング8とエンドプレート4の側面」で形成しているが、この空間を、単に、表面と裏面と側面とを有する単一の部材で形成することに、格別の困難性は認められない。 したがって、引用発明において、直線案内2の移動方向の面に、ワイパー9の側面とフェルトハウジング8とエンドプレート4の側面とで囲まれた空間を設けるのに代えて、本願発明の如く、表面と裏面と側面とで囲まれたコ字形の空間を内側に有する部材を取付けることは、当業者が容易に想到し得るものと認める。 〈相違点2〉について 一般的に機械部品に用いられる油は潤滑性を有しているので、引用発明における「油塗布部材7」に供給される「油」にも程度の差こそあれ潤滑性が存在することは明らかであるので、「油塗布部材7」も潤滑剤を含ませたものであると一応いえる。 そして、引用例では、グリースニップル5から潤滑剤としてのグリースを供給しているものの、引用発明における油塗布部材7に供給される油にも、潤滑剤を含ませることを妨げる特段の事情は窺えず、しかも、直線状に案内する機構において、案内部材の外面を潤滑するために、部材に潤滑剤を含ませることが、周知技術であること(例えば、拒絶査定の備考欄に示した特開平2-176216号公報、実願平1-64519号(実開平3-4927号)のマイクロフィルム参照)を参酌すれば、引用発明において当該「油」に潤滑剤を含ませることに格別の困難性は認められない。 したがって、引用発明において、油塗布部材7に潤滑剤を含ませて、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認める。 そして、本願発明の効果は、引用例に記載された発明、及び前記周知技術から、当業者であれば予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。 5 むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明、及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-11 |
結審通知日 | 2007-04-17 |
審決日 | 2007-05-02 |
出願番号 | 特願2002-312750(P2002-312750) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡野 卓也 |
特許庁審判長 |
溝渕 良一 |
特許庁審判官 |
大町 真義 山岸 利治 |
発明の名称 | リニアガイド装置 |
代理人 | 内藤 嘉昭 |
代理人 | 崔 秀▲てつ▼ |
代理人 | 森 哲也 |